JP2018135565A - 伝熱管の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】所望厚さの硬化層を有する耐水蒸気酸化性に優れた伝熱管の製造方法を提供する。【解決手段】水蒸気酸化スケールが生成される環境下で使用されるオーステナイト系ステンレス鋼とされた伝熱管を製造する方法であって、水蒸気に接触する伝熱管の表面から所定深さまでのビッカース硬さの減合が、該所定深さからさらに内部までのビッカース硬さの減少割合よりも小さくなるように、伝熱管の表面に対してショットピーニング加工を行うショットピーニング加工工程を有する。【選択図】図30

Description

本発明は、耐水蒸気酸化性を有する伝熱管の製造方法に関するものである。
ボイラには、火炉で生成された高温の燃焼ガスが流れる領域に、過熱器や再熱器などの高温部用熱交換器が設置されている。高温部用熱交換器を構成する伝熱管の内部には、高温高圧の水蒸気が流れる。この高温部用の伝熱管には、一般的に、高温強度及び耐食性に優れるようにCr(クロム)を含有するオーステナイト系ステンレス鋼管が用いられている。
ボイラの運転を継続することで、高温部用の伝熱管の内表面には、管内部を流れる高温高圧の水蒸気との接触、反応により、水蒸気酸化スケールが層として生成される。
高温部用の伝熱管の材料であるオーステナイト系ステンレス鋼は、一般に線膨張係数が大きいため、ボイラ運転の発停や負荷変化時に、管内部を流れる流体の温度変化がある場合には、伝熱管と伝熱管の内表面に層として形成された水蒸気酸化スケールとの熱膨張差により、水蒸気酸化スケールの剥離が生じる。剥離した水蒸気酸化スケールは、落下し、伝熱管の鉛直下部領域にある曲げ部(折返し部)などに堆積して管閉塞を生じるおそれがある。管閉塞が生じると、伝熱管の噴破の要因になる場合がある。このため、ボイラの高温部で使用される伝熱管には、高温強度に加え、優れた耐水蒸気酸化性が要求される。
オーステナイト系ステンレス鋼とされた伝熱管の耐水蒸気酸化性を向上させるために、管内表面にショットピーニング加工を施すことが知られている(特許文献1及び2)。ショットピーニング加工は、管内表面にステンレス鋼等の粒子を所定の圧力で噴き付け、管内表面に所定の厚さ以上のショット加工層を形成させることで、管内表面に極めて薄くかつ緻密なCr量が多い酸化物皮膜を形成させて、水蒸気酸化スケールの生成を抑制する。
特開2012−201975号公報 特許第4492805号公報
しかし、ショットピーニング加工を施すにあたりショット加工層を増加するために、噴射圧力を過剰に大きくした加工を行う場合には、伝熱管の内表面を減肉するとともに荒らしてしまい、伝熱管の品質を損なうおそれがある。
また、特許文献1の図4では、管内表面から所定の深さまでのビッカース硬さの変化が示されているが、ビッカース硬さが単調に減少しているのが分かる。同文献には、表面のビッカース硬さが350Hv以上であれば耐水蒸気酸化性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼管が得られると記載されている(同文献の[0030])。しかし、上述のように硬度が単調に減少しているので、表面からは硬化層が所望厚さだけ得られているかが分からず、都度に管の断面にて硬度計測を行う確認が必要になる。もし硬化層が薄ければ、Crの拡散効果が得られず耐水蒸気酸化性が向上しないおそれがある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、適切な厚さの硬化層を有する耐水蒸気酸化性に優れた伝熱管の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の伝熱管の製造方法は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる伝熱管の製造方法は、水蒸気酸化スケールが生成される環境下で使用されるオーステナイト系ステンレス鋼とされた伝熱管を製造する方法であって、水蒸気に接触する前記伝熱管の表面から所定深さまでのビッカース硬さの減少割合が、該所定深さからさらに内部までのビッカース硬さの減少割合よりも小さくなるように、前記伝熱管の表面に対してショットピーニング加工を行うショットピーニング加工工程を有することを特徴とする。
ショットピーニング加工により、表面に硬度が高く粒界が細かい層が形成され、母材の内部の深層から表面層近傍へCrを表面へ導くことで、伝熱管の内表面に緻密で耐食性が高いCrリッチ酸化物皮膜を形成させて、耐水蒸気酸化性が向上する。しかし、ショットピーニング加工は、過度に行うと表面を荒らしてしまう。一方で、十分なショットピーニング加工を行わないと所望の硬化層を形成することができない。本発明者等は、鋭意検討した結果、以下のような適切なショットピーニング加工の条件を見出した。
すなわち、水蒸気に接触する伝熱管の表面から所定深さまでのビッカース硬さの減少割合が、この所定深さからさらに内部までのビッカース硬さの減少割合よりも小さくなるようにショットピーニングを行うこととした。つまり、表面から所定深さまでのビッカース硬さの減少割合を内部よりも小さくするように管理することで、表面側に加工硬化をある程度飽和させ、適正な厚さの硬化層を得ることができる。これは、過剰な噴射圧力を用いなくても所定の送り速度を与えてピーニングを行うことで可能となった。したがって、表面を荒らすことなく適正な厚さの硬化層が形成されることになり、耐水蒸気酸化性を向上させることができる。
さらに、本発明の伝熱管の製造方法では、前記ショットピーニング加工工程は、以下の条件で行われることを特徴とする。
噴射量:5〜25kg/min
噴射圧力:0.8〜0.95MPa
送り速度:400〜800mm/min
パス回数:2回(1往復)
ショット粒の平均粒径:0.4〜1.0mm
上記条件によってショットピーニングを行うと、表面を荒らすことなく適正な厚さの硬化層を得ることができる。なお、ショット材としては、好ましくは、SUS304(略球形で、滑らかな表面を有する粒)が用いられる。
さらに、本発明の伝熱管の製造方法では、前記表面から40μmにおけるビッカース硬さが、母材の硬度よりも100Hv以上高いことを特徴とする。
表面から40μmにおけるビッカース硬さが母材の硬度よりも100Hv以上高くされていれば、表面に十分な硬化層が形成されており、適切な耐水蒸気酸化性を確保することができる。
さらに、本発明の伝熱管の製造方法では、前記伝熱管に対して固溶化熱処理を行った後に、前記ショットピーニング加工工程を行うことを特徴とする。
伝熱管パネルの形成にあたり、管内表面にショットピーニング加工は施されていない直管を用いて溶接と曲げ加工を実施した後に、所定の温度で加熱して固溶化熱処理で残留応力を除去し、その後に伝熱管の内表面のショットピーニング加工を施すので、伝熱管パネルの形成が従来どおりの手順で容易に確実に行われるとともに、伝熱管は、耐応力腐食割れ性と耐水蒸気酸化性の両方の特性を備えることができ、信頼性を向上することができる。
水蒸気に接触する前記伝熱管の表面から所定深さまでのビッカース硬さの減少割合が、該所定深さからさらに内部までのビッカース硬さの減少割合よりも小さくなるように、伝熱管の表面に対してショットピーニング加工を行うこととしたので、適切な厚さの硬化層を有する耐水蒸気酸化性に優れた伝熱管を製造することができる。
本発明の一実施形態に係るボイラを示した概略構成図である。 伝熱管パネルを示した側面図である。 伝熱管内に水蒸気酸化スケールが生成された状態を示した模式図である。 伝熱管内に堆積した水蒸気酸化スケールを示した横断面図である。 伝熱管にショットピーニング加工を施す領域を示した側面図である。 伝熱管パネルの製造工程を示した図である。 伝熱管パネルの製造工程を示した図である。 ショットピーニング加工装置の全体構成を示した模式図である。 ショットピーニング加工装置で処理されるU字形状とされた伝熱管を示した正面図である。 ショットピーニング加工装置で処理される略直線形状とされた伝熱管を示した正面図である。 伝熱管に接続される前のショットノズルを示した側断面図である。 伝熱管に接続されたショットノズルを示した側断面図である。 ワーク支持台上に設置された伝熱管パネルの平面図である。 ワーク支持台上に設置された伝熱管パネルの側面図である。 伝熱管押え治具を用いて伝熱管を支持している状態を示した正面図である。 ショットノズルを移動させる機構を示した平面図である。 ショットノズルを移動させる機構を示した側面図である。 バキューム管取付部周りを示した斜視図である。 バキュームボックス周りを示した斜視図である。 ショットピーニング加工工程を示したフローチャートである。 ショットノズルをY方向に移動させる前の状態を示した平面図である。 ショットノズルをY方向に移動させて軸方向位置を合わせた状態を示した平面図である。 ショットノズルがX1方向に移動させられる前の状態を示した平面図である。 ショットノズルがX1方向に移動させられて伝熱管の端部に突き当てられた状態を示した平面図である。 外筒をエアシリンダによって移動させる構成を示した縦断面図である。 外筒をラックピニオンによって移動させる構成を示した縦断面図である。 図26に対して直交する面で切断して見た縦断面図である。 内筒を伝熱管の端部に位置させた状態を示した平面図である。 内筒をX2方向に移動させて伝熱管内を移動させた状態を示した平面図である。 伝熱管のビッカース硬さを示したグラフである。
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
[ボイラの全体構成]
図1には、本実施形態に係る伝熱管が適用されるボイラが示されている。
ボイラ10は、本実施形態では、炭素含有固体燃料を燃焼させるものとして、石炭を粉砕した微粉炭を燃料(炭素含有固体燃料)として用い、この微粉炭を燃焼バーナにより燃焼させ、この燃焼により発生した熱を給水や蒸気と熱交換して過熱蒸気を生成することが可能な石炭焚きボイラである。
ボイラ10は、火炉11と燃焼装置12と煙道13を有している。火炉11は、四角筒の中空形状をなして鉛直方向に沿って設置されている。火炉11は、壁面が、複数の蒸発管とこれらを接続するフィンとで構成され、給水や蒸気と熱交換することにより火炉壁の温度上昇を抑制している。具体的には、火炉11の側壁面には、複数の蒸発管が例えば鉛直方向に沿って配置され、水平方向に並んで配置されている。フィンは、蒸発管と蒸発管との間を閉塞して、火炉11内の燃焼ガスが火炉11より外気側へと漏出しないようなっている。
燃焼装置12は、火炉11を構成する火炉壁の鉛直下部側に設けられている。燃焼装置12は、火炉壁に装着された複数の燃焼バーナ21,22,23,24,25を有している。これら燃焼バーナ21,22,23,24,25は、火炉11の周方向に沿って均等間隔で複数配設されている。ただし、火炉の形状や一つの段における燃焼バーナの数、段数はこの実施形態に限定されるものではない。
各燃焼バーナ21,22,23,24,25は、それぞれ微粉炭供給管26,27,28,29,30を介して粉砕機31,32,33,34,35に連結されている。石炭が図示しない搬送系統で搬送されて、この粉砕機31,32,33,34,35に投入されると、ここで所定の大きさに粉砕され、図示しない搬送用空気により微粉炭供給管26,27,28,29,30から燃焼バーナ21,22,23,24,25に粉砕された石炭(微粉炭)が供給される。なお、粉砕機と燃焼バーナの数はこの実施形態に限定されるものではなく、また、同一の粉砕機から複数の微粉炭供給管を経由して複数の燃焼バーナへ微粉炭が供給されるようにしても良い。
火炉11には、各燃焼バーナ21,22,23,24,25の装着位置に風箱36が設けられており、この風箱36に空気ダクト37の一端部が連結されている。空気ダクト37の他端部には、送風機38が設けられている。
火炉11の鉛直方向上方には煙道13が連結されており、煙道13に蒸気を生成するための過熱器、蒸発器、節炭器といった複数の熱交換器41,42,43,44,45,46,47が配置されている。
燃焼バーナが火炉11内に微粉炭と空気との混合気を噴射することで火炎が形成され、燃焼ガスが生成されて煙道13に流れる。そして、燃焼ガスにより火炉壁および複数の熱交換器41,42,43,44,45,46,47を流れる給水や蒸気を加熱して過熱蒸気が生成され、生成された過熱蒸気を供給して図示しない蒸気タービンを回転駆動させる。蒸気タービンの回転軸には、図示しない発電機が接続されており、蒸気タービンの回転駆動によって発電機で発電が行われる。
煙道13には、排ガス通路48が連結されており、送風機38から空気ダクト37へ送気する空気と排ガス通路48を送気する排ガスとの間で熱交換を行うエアヒータ49が設けられている。また、排ガス通路48には、燃焼ガス中のNOxを除去するための脱硝装置50、燃焼ガスに含まれる煤塵を除去するための煤塵処理装置51、下流側へ燃焼ガスを引き込むための誘引送風機52などが設けられており、下流端部に煙突53が設けられている。
[伝熱管パネルの構成]
図2には、高温の燃焼ガスが流れる領域に設置した過熱器や再熱器である各熱交換器41,42,43,44に用いられる伝熱管パネル60が示されている。
伝熱管パネル60は、蒸気入口管寄せ(蒸気入口ヘッダ)61と蒸気出口管寄せ(蒸気出口ヘッダ)62との間にわたって連結されている。伝熱管パネル60を構成する複数の伝熱管63は、それぞれがU字形状とされ、並列に設けられている。同図において、紙面左側が炉の前側(燃焼ガス流れの上流側)となっており、紙面右側が炉の後側(燃焼ガス流れの下流側)となっている、したがって、矢印A1で示すように、燃焼ガスは蒸気入口管寄せ61側から蒸気出口管寄せ62に側に向かって流れるようになっている。蒸気入口管寄せ61から伝熱管63内に入った蒸気は、伝熱管63内を流れるに従い燃焼ガスによって加熱される。
図3は、伝熱管パネル60のうちの1本の伝熱管63を示した図である。伝熱管63は、蒸気入口管寄せ61に接続される蒸気入口部63aと、蒸気出口管寄せ62に接続される蒸気出口部63bと、蒸気入口部63a及び蒸気出口部63bよりも鉛直方向下方に位置するとともに、蒸気流路をU字状に折り返す折返し部63cとを備えている。
伝熱管63は、横断面が円形状とされており、本実施形態では材質がオーステナイト系ステンレス鋼とされている。
伝熱管63内に高温高圧の蒸気が流通を続けると、伝熱管63の内表面に水蒸気酸化スケールが生成されてゆく。水蒸気酸化スケールはFeなどの酸化物の層であり、成長して層厚さが増加する。本実施形態では、図3に示されているように、伝熱管パネル60の長手方向が鉛直上下方向に沿って設置されていて、蒸気入口部63aから鉛直方向下方にわたって水蒸気酸化スケールSc1が生成され、また蒸気出口部63bから鉛直方向下方にわたって水蒸気酸化スケールSc2が生成される。蒸気入口部63aよりも蒸気出口部63bの方が伝熱管63内を通過する蒸気が高温となる。このため、蒸気入口部63aよりも蒸気出口部63bの方が水蒸気酸化スケールの生成速度が速くなり、水蒸気酸化スケールが生成され易くなるので、所定厚さ以上となる水蒸気酸化スケールは、蒸気出口部63bの水蒸気酸化スケールSc2の方が蒸気入口部63aの水蒸気酸化スケールSc1よりも鉛直上下方向に長い距離にわたって形成されることが、観察で判明した。
オーステナイト系ステンレス鋼は、線膨張係数が約16〜17×10−6と一般的な鋼管の線膨張係数(約11〜12×10−6)よりも大きいために、水蒸気酸化スケールの線膨張係数(約10〜12×10−6)との差が一層に大きくなる。このため、ボイラ10の運転発停や負荷変化時などに管内部を流れる流体の温度変化を生じると、伝熱管63と、伝熱管63の内表面に形成された水蒸気酸化スケールSc1,Sc2との熱膨張差により、水蒸気酸化スケールSc1,Sc2の剥離が生じる。剥離した水蒸気酸化スケールは、重力で破線矢印の方向へと落下し、符号Sc1’,Sc2’で示したように、伝熱管63の鉛直下部領域にある折返し部63c付近に他領域より多く堆積することが、観察で判明した。
図4には、折返し部63cに堆積した水蒸気酸化スケールSc1’,Sc2’が示されている。同図に示すように、水蒸気酸化スケールSc1’,Sc2’は、伝熱管63内の蒸気流路を狭めて、更に堆積量が増加すると伝熱管63内の蒸気流路を閉塞させる。
上述のような水蒸気酸化スケールSc1’,Sc2’による管内閉塞率(後述)を所定値以内に抑えるために、水蒸気酸化スケールSc1,Sc2の成長速度を緩和するショットピーニング加工が伝熱管63の内表面に施されている。具体的には、図5に示すように、蒸気入口部63aから折返し部63cに到る途中位置までの入口側ショットピーニング加工領域L1にわたってショットピーニング加工が施されており、かつ、蒸気出口部63bから折返し部63cに到る途中位置までの出口側ショットピーニング加工領域L2にわたってショットピーニング加工が施されている。入口側ショットピーニング加工領域L1及び出口側ショットピーニング加工領域L2を除く領域、すなわち折返し部63cを含む鉛直方向下方の領域にはショットピーニング加工が施されていない非ショットピーニング加工領域となっている。
ショットピーニング加工を施すことで、伝熱管63の内表面に所定の厚さ以上のショット加工層を形成させる。このショット加工層にはすべり線が形成され、ショット加工層の深層から表面層近傍へCrがすべり線に沿って拡散して供給される。これにより伝熱管63の内表面がCrリッチとなり、伝熱管63の内表面に緻密で耐食性が高いCrリッチ酸化物皮膜を形成させて、水蒸気酸化スケールの生成を抑制することができる。
本実施形態でのショットピーニングの加工条件は以下の通りである。
噴射量:5〜25kg/min
噴射圧力:0.8〜0.95MPa
送り速度:400〜800mm/min
ショット粒の平均粒径:0.4〜1.0mm
ショット材:SUS304(略球形で、滑らかな表面を有する粒)
出口側ショットピーニング加工領域L2は、入口側ショットピーニング加工領域L1よりも大きくされて、効果的に水蒸気酸化スケールの生成量を抑制している(L2>L1)。これは、図3を用いて説明したように、蒸気出口部63b側の方が蒸気入口部63aよりも水蒸気酸化スケールの生成速度が速く、蒸気出口部63b側の方が蒸気入口部63a側よりも水蒸気酸化スケールが鉛直上下方向に長い領域にわたって形成されるからである。
入口側ショットピーニング加工領域L1及び出口側ショットピーニング加工領域L2は、所定の連続運転時間経過後の管内閉塞率が所定値以下となるように決定されている。所定の連続運転時間は、例えば、定期点検までの期間が用いられる。
管内閉塞率は、下式に示すように、堆積した水蒸気酸化スケールSc1’,Sc2’が伝熱管63の流路断面積に占める割合である(図4参照)。
管内閉塞率[%]
=堆積した水蒸気酸化スケールの断面積÷伝熱管の流路断面積×100
堆積した水蒸気酸化スケールの断面積は、水蒸気酸化スケール落下量に基づいて決定される。水蒸気酸化スケール落下量は、運用時の管内温度、スケール成長速度、伝熱管材料成分等をパラメータとし、試験やシミュレーションから求められる。
例えば、所定の連続運転時間経過後の管内閉塞率を60%〜80%の適値を定めて、最小限必要なショットピーニング加工領域を導出して、入口側ショットピーニング加工領域L1及び出口側ショットピーニング加工領域L2を決める。これにより、伝熱管パネル60で燃焼ガスとの熱交換で加熱される蒸気温度に対して、少なくとも耐水蒸気酸化性の向上が必要な領域にショットピーニング加工を行い、伝熱管63の内表面における水蒸気酸化スケールの生成を効果的に抑制することが可能となる。
[伝熱管パネルの製造工程]
次に、図6及び図7を用いて、上述した伝熱管パネル60の製造方法について説明する。
先ず、製鉄メーカ等から直管のオーステナイト系ステンレス鋼管を受け入れる(ステップS11:材入)。このとき、製鉄メーカでは、直管に対して所定の熱処理が施されているものもあるが、本実施形態では、管内表面にはショットピーニング加工は施されていないものでも良い。
次に、直管を所定の長さに切断し、端部に開先を加工し(ステップS12)、自動TIG溶接によって各直管を連続的に接続して、必要長さの直管とする(ステップS13)。
その後、曲げ加工装置によって、連続的に接続した直管の曲げ加工を行う(ステップS14)。これにより、U字形の伝熱管パネル60が形成される。なお、直管の曲げ加工を行う際は、ステップS13での溶接箇所を避けることが好ましい。
次に、各伝熱管63を束ねるように複数の金物65を取り付け(ステップS15)、伝熱管63に対して溶接する(ステップS16)。
そして、図7に示すように、伝熱管パネル60を加熱炉内に設置し、所定の温度まで加熱して固溶化熱処理(ST:solution treatment)を行い、残留応力を除去して耐応力腐食割れ性を保持する(ステップS17)。
ここまで(ステップS11〜ステップS17)は、伝熱管パネル60に対して従来から用いられる形成手順であり、容易に確実に行うことができるものである。
その後、各伝熱管63の内表面のショットピーニング加工を必要とする領域(入口側ショットピーニング加工領域L1及び出口側ショットピーニング加工領域L2)にショットピーニング加工を施す(ステップS18)。
そして、所定値内に歪みを修正した(ステップS19)後に、出荷する(ステップS20)。
一方、伝熱管63の内表面にショットピーニング加工は施した直管を材料として用いて(ステップS11に相当)、前述のステップS12〜ステップS17を実施すると、固溶化熱処理(ステップS17)によって、伝熱管63の内表面に施工したショットピーニング加工の効果が低下、または消失してしまい、水蒸気酸化スケールの生成を抑制できなくなる。そのため、伝熱管63の内表面にショットピーニング加工を行った直管を材料として用いる(ステップS11)場合は、固溶化熱処理(ステップS17)を施すことが出来ずに、耐応力腐食割れ性が低下して信頼性を損なう可能性がある。
本実施形態では、固溶化熱処理(ステップS17)を実施した後に、伝熱管63の内表面にショットピーニング加工(ステップS18)を施すので、伝熱管63は、耐応力腐食割れ性と耐水蒸気酸化性の両方の特性を備えることができる。
[ショットピーニング加工装置]
次に、伝熱管63にショットピーニング加工を行うショットピーニング加工装置について説明する。
図8には、伝熱管63の内表面にショットピーニング加工を行う装置の全体構成が模式的に示されている。
伝熱管63の一端である蒸気入口部63a又は蒸気出口部63bに対して、ショットノズル70が挿入される。ショットノズル70は、内筒70aと外筒70bとを有しており、外筒70bの端部が伝熱管63の一端に対して突き合わされてシール接続されており、内筒70aが伝熱管63の長手方向に移動するようになっている。
内筒70aの中心軸線上には、内筒70aとともに移動するショット粒拡散コーン70cが設けられている。ショット粒拡散コーン70cは、円錐形状の外表面を有している。円錐形状の小径部が内筒70aの先端側に位置するように配置されている。このショット粒拡散コーン70cによって、後述するショット粒送り配管78によりショットノズル70へと供給されたショット粒が伝熱管63の内表面の全周に対して同時にショット粒を略均等に噴射することができる。
また、外筒70bと内筒70aとの間には、シールリング70hを少なくとも1箇所に設けてある。外筒70bに対して内筒70aを移動可能に支持するとともに、ショット粒や空気が漏出しないようにしている。
内筒70aすなわちショット粒拡散コーン70cの移動距離は、ショットピーニング加工領域L1,L2に対応する長さとなっている。したがって、非ショットピーニング加工領域L3まではショット粒拡散コーン70cは移動しない。
なお、図8では、1本の伝熱管63のみが示されているが、後述するように、複数の伝熱管63を同時にショットピーニング加工するようになっている。
図9及び図10には、図8に示したショットピーニング加工装置で加工される伝熱管63が示されている。図9は、図5等を用いて説明したU字形状の伝熱管63である。また、図10に示したような略直線形状の伝熱管63’に対してもショットピーニング加工を行うことができる。
図8に示すように、伝熱管63の他端である蒸気出口部63b又は蒸気入口部63aに対して、ショット粒を回収するバキューム管(排気管)71を接続するためのバキューム管取付部72が取り付けられている。バキューム管取付部72の下流には、バキュームボックス73が設けられており、同時にショットピーニング加工を実施している他の各伝熱管63から回収されたショット粒が合流するようになっている。
バキュームボックス73の下流側には、ショット粒を回収して分離するためのショット回収分離ボックス75が設けられている。ショット回収分離ボックス75には、バキューム管71内を減圧して排気するための排気ポンプが接続されている。ショット回収分離ボックス75で分離されたショット粒は再利用されるが、粒径が小さくなるなどショットピーニング加工に不適となったショット粒は、サイクロンやメッシュフィルタなどで選別して再利用不可能なショット粒として系外へ排出される。
ショット回収分離ボックス75には、ショットタンク76が接続されている。ショットタンク76では、ショット回収分離ボックス75で回収されたショット粒が導かれて蓄積される。再生利用不可なショット粒が系外へ排出されて減量した場合は、新しいショット粒がショットタンク76で適宜に追加される。
ショットタンク76内に蓄積されたショット粒は、高圧空気が導入される混合部77に導かれ、高圧空気とともにショット粒送り配管78を介してショットノズル70へと供給される。
図11には、ショットピーニング加工を行う伝熱管63の端部からショットノズル70が離間された状態が示されている。ショット粒拡散コーン70cは、その軸部の基端部(同図において右端)が内筒70a内に設けられ、ショット粒が通過する貫通孔を有するコーン固定部70dに対してねじ止め等によって固定されている。これにより、ショット粒拡散コーン70cは、内筒70aの中心軸上に沿って固定される。
伝熱管63の内径d1とショットノズル70の内筒70aの内径d2とは略同等とされている。外筒70bの先端部には、例えばゴム製等のパッキン70eが取り付けられている。これにより、伝熱管63と外筒70bとがショット粒が漏出しないようシールされて接続されることになり、ショットピーニング加工時に空気やショット粒が外部へ漏出しないようにしている。また、伝熱管63と外筒70bとがシール接続されれば、本構造を限定するものでなく、パッキン70eを省略しても良い。また図示していないが、外筒70bの先端部の外周に筒状の短管を取り付けて、伝熱管63の一端と外筒70bの先端部とが短管との間で嵌め込み構造とすることで、シール接続されても良い。
図12に示すように、ショットノズル70はX1方向に往復動が可能で、外筒70bはX3方向に往復動可能となっており、内筒70aはX2方向に往復動可能となっている。すなわち、内筒70a及び外筒70bは、何れも同一方向(X方向)に往復動するものの、互いに独立して移動できるようになっている。この具体的な構成は、後に説明する。
図13には、水平方向に支持面を有するワーク支持台80上に設置された伝熱管パネル60の平面図が示されている。同図に示されているように、U字形状に曲げ加工され、伝熱管パネル60へと組み上げられ固溶化熱処理(ステップS17)を施した後の複数の伝熱管63が一平面状に並列に並べられている。伝熱管パネル60の各位置には、各伝熱管63を少なくともワーク支持台80のショットノズル70の挿入側(同図において右端)を所定位置に固定するための伝熱管押え治具81が設けられている。
伝熱管押え治具81は、半円形状の横断面とされた溝部が複数形成され、伝熱管パネル60の各伝熱管63の荷重を支持して所定の鉛直位置を保持するとともに、水平面内の位置についても所定位置に配列されるように、ワーク支持台80の複数箇所に設置されても良い。また伝熱管押え治具81は、ショットノズル70の挿入側のみに設置し、他の位置では半円形状の横断面とされた溝部を持たない板状として、各伝熱管63の荷重を支持して所定の鉛直位置を保持するも各伝熱管63の水平面内の位置を限定しないものであっても良い。
図14には、図13に示したワーク支持台80上に設置された伝熱管パネル60の側面図が示されている。同図に示されているように、鉛直方向上下のそれぞれの段に異なる伝熱管パネル60が設置されている。本実施形態のショットピーニング加工装置は、これら上下段の伝熱管パネル60,60を同時に処理できるものである。なお、ショットピーニング加工装置は、1段の伝熱管パネル60を処理できるもの、もしくは鉛直上下方向に3段以上を同時に処理できるものであってもよい。
図15に示されているように、固定治具としての伝熱管押え治具81は、上下段の伝熱管パネル60を併せて支持するものであり、下方支持部81aと、中間支持部81bと、上方支持部81cとを備えている。下方支持部81aの上面には、伝熱管63の外形状に対応した半円形状の横断面とされた複数の溝部が、伝熱管パネル60の各伝熱管63の所定ピッチに合致して形成されている。中間支持部81bの下面及び上面には、伝熱管63の外形状に対応した半円形状の横断面とされた複数の溝部が所定ピッチに合致して形成されている。上方支持部81cの下面には、伝熱管63の外形状に対応した半円形状の横断面とされた複数の溝部が所定ピッチに合致して形成されている。これら支持部81a,81b,81cを図示しないクランプ機構によって一体的に固定することにより、伝熱管パネル60の浮き上がりを防止するとともに、ワーク支持台80に対して鉛直方向と水平方向の所望位置に伝熱管パネル60を固定することができる。
図16及び図17には、ショットノズル70をX方向及びY方向に移動させる構成が開示されている。図16はショットノズル70を平面視した図であり、図17はショットノズル70を側面視した図である。なお、X(X1,X2,X3)方向とは、伝熱管63の直線部が延在する方向を示し、Y方向とは、X方向に直交するとともに同一伝熱管パネル60の各伝熱管63が並ぶ方向を示す。
本実施形態では、ショットノズル70は、第1Y方向リニアガイド83a上およびX1方向リニアガイド89上に設置されている。第1Y方向リニアガイド83aは、各伝熱管63が並ぶ方向へ移動する配列方向移動機構を構成するものである。また、本実施形態では、ショットノズル70は、上下段のそれぞれにY方向に2つずつ設けられ、各々が第1Y方向リニアガイド83aおよびX1方向リニアガイド89により個別に移動が可能としている。ただし、ショットノズル70は、Y方向に1つ、もしくは3つ以上設けても良い。
第1Y方向リニアガイド83aは、第1Y方向リニアレール84a上を走行する。第1Y方向リニアガイド83aには、第1Y方向送りモータおよびラックピニオン機構(図示せず)が取り付けられており、例えばそれによって、第1Y方向リニアガイド83aがY方向に往復動する。
第1Y方向リニアガイド83a上には、X1方向リニアガイド89が固定されている。X1方向リニアガイド89上にショットノズル70が固定されている。ショットノズル70は、外筒70bを固定支持する本体70fを備えている。本体70fは外筒70bを加工対象の伝熱管63の端部に向けてX1方向に移動させる外筒移動機構である。本体70fは、図17に示したように、上下のそれぞれのショットノズル70を支持し、上下段の伝熱管パネル60,60を同時に処理を可能とするものである。本体70fは、X1方向リニアガイド89上に固定されている。
本体70fには、例えばX1方向送りモータおよびラックピニオン機構(図示せず)が取り付けられており、それによって、ショットノズル70がX1方向に往復動する。
ショットノズル70の後方すなわち伝熱管パネル60から離間した側には、内筒70aをX2方向に往復動させるための内筒移動機構である内筒送り装置92が設けられている。内筒送り装置92は、Y方向に2つ設けられ、各々が第2Y方向リニアガイド83bおよびX2方向リニアガイド94により個別に移動が可能としている。内筒送り装置92は、X2方向リニアガイド94上に設置されており、上下段の各内筒70aを支持するための本体92fと、本体92fに取り付けられたX2方向送りモータおよびラックピニオン機構(図示せず)とを備えている。これにより内筒送り装置92がX2方向に往復動する。ここで、内筒送り装置92は、ショットノズル70に対して、少なくとも伝熱管63のショットピーニング加工領域(L1,L2)よりも長い距離を離間して設置されていて、ショット粒拡散コーン70cの移動距離を確保することが出来る。
X2方向リニアガイド94は、第2Y方向リニアガイド83b上に設置されている。第2Y方向リニアガイド83bは、第2Y方向リニアレール84b上を走行する。第2Y方向リニアガイド83bには、第2Y方向送りモータおよびラックピニオン機構(図示せず)が取り付けられており、それによって、第2Y方向リニアガイド83bがY方向に往復動する。
内筒送り装置92の本体92fに対して、内筒70aの端部が内筒固定部95を介して固定されている。内筒固定部95は、コイルバネ等の弾性部96を介して本体92fに固定されている。内筒固定部95は、内筒70aが伝熱管63内のどこかに接触したり突き当たったときに本体92fに対して接近するように相対移動するようになっている。この内筒固定部95の相対移動を検出する移動規制検出部として、本実施形態での例としてリミットスイッチ(図示せず)を本体92f内に設けておくことで、内筒70aが伝熱管63内に過剰に押し込まれて内筒70a等が損傷することを回避することができる。リミットスイッチの信号は、図示しない制御部へと送られ、制御部の指令によってX2方向送りモータ(図示せず)の駆動が停止される。
内筒70aの後端部すなわち伝熱管63に挿入される先端部とは反対側の端部は、内筒送り装置92内でショット粒送り配管78に接続されている。ショット粒送り配管78の上流側は、図8を用いて説明したように、高圧空気とともにショット粒を供給する混合部77を経由してショットタンク76に接続されている。
図18には、図8にて説明したバキューム管取付部72の具体的構成が示されている。同図に示されているように、バキューム管取付部72は、並列に並べられた複数の伝熱管63のそれぞれの他端部に取り付けられる。伝熱管63への取り付けは、例えばバキューム管取付部72の先端に設けたクランプ部72aによって行われる。クランプ部72aは蝶ネジを備えており、蝶ネジを締めることによってバキューム管取付部72が伝熱管63に対して気密に固定される。
バキューム管取付部72のそれぞれに接続されたバキューム管71は、図19に示すように、開閉弁71aを介してバキュームボックス73へと接続される。ショットピーニング加工を行う伝熱管63に接続されたバキューム管71の開閉弁71aのみが開とされ、ショットピーニング加工を行わない伝熱管63に接続されたバキューム管71の開閉弁71aは閉とされる。すなわち、ショットピーニング加工を行う伝熱管63に接続されたバキューム管71の開閉弁71aが順次閉から開へと制御され、それ以外の開閉弁71aは閉となり待機状態とされる。開閉弁71aの開閉動作は、図示しない制御部が行っても良い。
このように、予め複数のバキューム管71を伝熱管63に取り付けておき、順次開閉弁71aの開閉動作を行うことでショットピーニング加工を複数の伝熱管63にわたって連続的に行うことができる。
ショットピーニング加工装置の制御部は、ショットピーニング加工装置の各種制御を行うものであり、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等である。
[ショットピーニング加工工程]
次に、図20を用いて、上記構成のショットピーニング加工装置を用いた加工工程について説明する。
先ず、図13及び図14に示したように、ワーク支持台80に対して、伝熱管パネル60の各伝熱管63が水平に所定位置に配置されるように設置する(ステップS21)。このとき、伝熱管パネル60は、上下段のそれぞれに設置される。
そして、図18及び図19に示したように、バキューム管取付部72を用いてバキューム管71を複数の伝熱管63に対して取り付ける(ステップS22)。ショットピーニング加工を行う伝熱管63に対応する開閉弁71a(図19参照)のみを開とし、他の開閉弁71aは閉にしておく。これにより、バキューム管71を用いて排気を行う排気ラインが選択される。
その後、Y方向送りモータ(図示せず)を駆動させ、ショットノズル70および内筒送り装置92をY方向に変位させ、ショットピーニング加工を行う伝熱管63の直線部の長手軸線に軸方向位置を合わせる(ステップS23)。すなわち、図21に示したY方向に変位させる前の状態から、図22に示したように伝熱管63の長手方向軸線に外筒70bすなわち内筒70aの中心軸線が合致するように移動させる。
本実施形態においては、図22に示されている状態では、伝熱管パネル60のうち最も外側に位置する伝熱管63の入口63Ainに一方のショットノズル70を一致させ、この伝熱管63に対応する出口63Aoutから排気する。また、伝熱管パネル60の内最も内側に位置する伝熱管63の入口63Binに他方のショットノズル70を一致させ、この伝熱管63に対応する出口63Boutから排気する。このとき、図22に示すように伝熱管パネル60の内最も内側に位置する伝熱管63の入口63Binは、伝熱管63の出口63Aout側に配列される伝熱管63を選択しても良い。このように、U字形状とされた伝熱管63の一方の端部側に対して一方のショットノズル70を位置させ、伝熱管63の他方の端部側に位置する伝熱管63に対して他方のショットノズル70を位置させることで、ショットノズル70同士をより一層に干渉させることなく同時に1つの伝熱管パネル60につき2本の伝熱管63を処理できるようになっている。なお、図22では省略しているが、伝熱管63の排気側には上述したバキューム管71が取り付けられ、ショットピーニング加工を行う伝熱管63に対応する出口63Aout,63Boutに接続された開閉弁71aのみが開とされている。
次に、図23に示すように伝熱管63と外筒70bとが離間した状態から、X1方向送りモータ(図示せず)を駆動してショットノズル70および内筒送り装置92をX1方向に変位させ、図24に示すように伝熱管63の端部に対して外筒70bの端部を近接させる(ステップS24)。伝熱管63の端部固定位置を精度よく設置できる場合は、X1方向送りモータ(図示せず)の位置精度を管理することで、伝熱管63の端部に対して外筒70bの端部を突き当てるようにして、伝熱管63と外筒70bとの間に適正なシール性を得られるよう面圧を加えてもよい。
このとき、図25に示すように、ショットノズル70の本体70fに設けたエアシリンダ97を設け、本体70fに対して外筒70bを相対的にX3方向に移動させても良い(ステップS25)。エアシリンダ97に設けられたピストン97aの軸端は外筒70bの鍔部70b1に固定されている。エアシリンダ97によって外筒70bを伝熱管63の端部側に押圧することによって、過度な押圧力を付加することなく適正なシール性を得られるよう面圧を加えることができる。符号98は、外筒70bを軸線方向にガイドするすべり軸受である。
なお、図25に示したエアシリンダ97に代えて、図26及び図27に示すように、外筒70bの鍔部70b1を、コイルバネ99を介して押圧軸100で押圧するようにしても良い。押圧軸100は、押圧軸100に設けたラックに噛み合うピニオン101をX3方向送りモータ103によって回転させることによってX3方向に駆動される。押圧軸100は、複数対の支持ローラ102によって往復動可能に支持されている。このように、コイルバネ99を介して押圧することによって、伝熱管63と外筒70bとの間に適正なシール性を得られるよう面圧を加えることができる。
なお、ステップS24で説明したようにX1方向送りモータ(図示せず)によって伝熱管63と外筒70bとの間に適正なシール性を得られるよう面圧を加えることができる場合には、図25〜図27を用いて示した上述のステップS25は省略することもできる。
次に、X2方向送りモータ(図示せず)を駆動して、内筒70aを伝熱管63の端部から加工終了位置まで一定速度で移動させる(ステップS26)。内筒70aの移動範囲は、ショットピーニング加工領域L1,L2に対応する(例えば図5参照)。このとき、内筒70aからショット粒が連続的に供給され、ショット粒拡散コーン70cによって偏向させられたショット粒が伝熱管63の内表面の全周方向に略均一に噴き付けられる。すなわち、図28に示すように、ショット粒拡散コーン70cの先端が伝熱管63の先端部に位置した状態からショット粒の噴き付けを開始する。内筒70aは、図29に示すように、内筒送り装置92のX2方向送りモータ(図示せず)を駆動してX2方向に変位させられる。
そして、ステップS27では、X2方向送りモータ(図示せず)を逆方向に駆動して、内筒70aを引き抜く方向(X2逆方向)に変位させ、伝熱管63から引き抜く。このときも、伝熱管63の内表面に対してショット粒が噴き付けられる。したがって、ショットピーニング加工領域L1,L2においてショット粒の噴き付けは2パス(1往復)行われることになる。
その後、ステップS28において、伝熱管63内に滞留したショット粒をバキューム管71を介して回収した後、X1方向送りモータ(図示せず)を逆方向に駆動して外筒70bを伝熱管63から離間する方向(X1逆方向)へと移動させる。
以上により、本実施形態では上段2本及び下段2本の伝熱管63に対してショットピーニング加工が4個所で同時に行われる。
そして、上述したステップS22〜S28が繰り返し行われ、同一伝熱管パネル60の伝熱管63が順次処理される(ステップS29)。
全ての伝熱管63に対するショットピーニング加工が終了したら、バキューム排気を終了してショットピーニング加工工程が終了する(ステップS30)。
[伝熱管内表面の性状]
図30には、上述したショットピーニング加工装置を用いて上述した加工条件でショットピーニング加工を施した伝熱管63の内表面のビッカース硬さ(Hv)を測定した結果が示されている。
図30の横軸は伝熱管63の内表面からの距離(μm)を示し、縦軸は基準化したビッカース硬さを示す。ビッカース硬さは、300Hvを1.0として基準化している。
同図から分かるように、伝熱管63の内表面から所定深さ(約60μm)までのビッカース硬さの減少割合が、該所定深さ(約60μm)からさらに内部(約200μm)までのビッカース硬さの減少割合よりも小さくなっている。すなわち、「(1)表面の硬度傾斜」が「(2)内面側の硬度傾斜」よりも小さい。
また、伝熱管63の内表面のショット加工層の表面層のビッカース硬さ計測だけでは深さ方向で必要な硬化が得られているかが分からない。水蒸気酸化スケールの生成と抑制に関するデータの蓄積の結果として、伝熱管63の内表面から40μmにおけるビッカース硬さが母材の硬度(深層の硬度)よりも100Hv以上高くされていれば、表面に十分な硬化層が形成されており、適切な耐水蒸気酸化性を確保することができることが判明した。これにより、伝熱管63の内表面のショット加工層が薄くCrの拡散効果が得られず耐水蒸気酸化性が向上しないことを懸念して、都度に管の断面にて深さ方向での硬度分布を計測して確認を行うことが不要となり、管理が容易になる。
一方、所定深さ(約60μm)は、表面から40μm以上であることがさらに好ましい。耐水蒸気酸化性を確保するための硬度を得るには、表面から40μmおけるビッカース硬さが、母材の硬度よりも100Hv以上高くなっていることが好ましいが、所定深さを40μm以上とすれば、ビッカース硬さの減少割合小さいので、より確実に必要なビッカース硬さを有するショットピーニング加工層を得ることができる。
「(1)表面の硬度傾斜」は、ショットピーニングの加工条件について、噴射量と噴射圧力との関係も影響しているが、送り速度を400〜800mm/minとして比較的早くした上で、パス回数を2回(1往復)としたことによるものと推察される。すなわち、送り速度を早くしたことで、被ショットピーニング加工部分に対するショットピーニング処理時間が短くなるが、噴射圧力を高くして、ショットピーニングで被ショットピーニング加工部分に印加されるエネルギーがより深い領域まで及ぶようになる。さらにパス回数を1回ではなく2回(1往復)として、短くなったショットピーニング処理時間を補うようにしたことことによるものと推察される。これにより、表面側である伝熱管63の内表面から所定深さ(本実施形態では約60μm)までが十分にショットピーニング加工されて、加工硬化がある程度飽和したものと考えられる。
また、パス回数を2回(1往復)とすることで、伝熱管63の内表面の硬度分布はパス回数を1回とするものよりも均一化して、伝熱管63の内表面により均一な耐水蒸気酸化性を確保できるので、さらに好ましい。
また、表面から40μmにおけるビッカース硬さが、母材の硬度(例えば250μmよりも深い位置の硬度)よりも100Hv以上高くなっており、耐水蒸気酸化性を確保するための硬度が得られている。
以上の通り、「(1)表面の硬度傾斜」を小さくすることで、表面に所望厚さの硬化層を確保することができる。これにより、硬化層の深層から表面層近傍へと伝熱管63の内表面へと多くのCrを拡散させることができ、耐食性の高いCrリッチ酸化物皮膜が形成されて、耐水蒸気酸化性を向上させることができる。
本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
ショットピーニング加工により、表面に硬度が高く粒界が細かい層が形成され、母材の内部からCrを表面へ拡散して導くことで、耐食性の高いCrリッチ酸化物皮膜が形成されて、耐水蒸気酸化性が向上する。しかし、ショットピーニング加工は、過度に行うと表面を荒らしてしまう。一方で、十分なショットピーニング加工を行わないと所望の硬化層を形成することができない
そこで、本実施形態では、水蒸気に接触する伝熱管63の表面から所定深さまでのビッカース硬さの減少割合が、この所定深さからさらに内部までのビッカース硬さの減少割合よりも小さくなるようにショットピーニングを行うこととした。つまり、表面から所定深さまでのビッカース硬さの減少割合を内部よりも小さくするように管理することで、表面側に加工硬化をある程度飽和させ、適正な厚さの硬化層を得ることができる。これは、過剰な噴射圧力を用いなくても所定の送り速度を与えてピーニングを行えば可能である。したがって、表面を荒らすことなく適正な厚さの硬化層が形成されることになり、耐水蒸気酸化性を向上させることができる。
また、U字形のなどの伝熱管パネル60の形成にあたり、管内表面にショットピーニング加工は施されていない直管を用いて溶接と曲げ加工を実施した後に、所定の温度で加熱して固溶化熱処理で残留応力を除去し、その後に各伝熱管63の内表面のショットピーニング加工を施すこととした。これにより、伝熱管パネル60の形状の形成までが従来どおりの手順で容易に確実に行われるとともに、伝熱管63は、耐応力腐食割れ性と耐水蒸気酸化性の両方の特性を備えることができ、信頼性を向上することができる。
10 ボイラ
60 伝熱管パネル
61 蒸気入口管寄せ(蒸気入口ヘッダ)
62 蒸気出口管寄せ(蒸気出口ヘッダ)
63 伝熱管
63a 蒸気入口部
63b 蒸気出口部
63c 折返し部
65 金物
70 ショットノズル
70a 内筒
70b 外筒
70b1 鍔部
70c ショット粒拡散コーン
70f 本体
71 バキューム管(排気管)
72 バキューム管取付部
73 バキュームボックス
75 ショット回収分離ボックス
76 ショットタンク
77 混合部
78 ショット粒送り配管
80 ワーク支持台
81 伝熱管押え治具
81a 下方支持部
81b 中間支持部
81c 上方支持部
83a,b Y方向リニアガイド
84a,b Y方向リニアレール
89 X1方向リニアガイド
92 内筒送り装置
92f 本体
94 X2方向リニアガイド
95 内筒固定部
96 弾性部
97 エアシリンダ
97a ピストン
98 すべり軸受
99 コイルバネ
100 押圧軸
101 ピニオン
102 支持ローラ
103 X3方向送りモータ
L1 入口側ショットピーニング加工領域
L2 出口側ショットピーニング加工領域
L3 非ショットピーニング加工領域
Sc1,Sc2 水蒸気酸化スケール
Sc1’,Sc2’ 堆積した水蒸気酸化スケール

Claims (4)

  1. 水蒸気酸化スケールが生成される環境下で使用されるオーステナイト系ステンレス鋼とされた伝熱管を製造する方法であって、
    水蒸気に接触する前記伝熱管の表面から所定深さまでのビッカース硬さの減少割合が、該所定深さからさらに内部までのビッカース硬さの減少割合よりも小さくなるように、前記伝熱管の表面に対してショットピーニング加工を行うショットピーニング加工工程を有することを特徴とする伝熱管の製造方法。
  2. 前記ショットピーニング加工工程は、以下の条件で行われることを特徴とする請求項1に記載の伝熱管の製造方法。
    噴射量:5〜25kg/min
    噴射圧力:0.8〜0.95MPa
    送り速度:400〜800mm/min
    パス回数:2回(1往復)
    ショット粒の平均粒径:0.4〜1.0mm
  3. 前記表面から40μmにおけるビッカース硬さが、母材の硬度よりも100Hv以上高いことを特徴とする請求項1又は2に記載の伝熱管の製造方法。
  4. 前記伝熱管に対して固溶化熱処理を行った後に、前記ショットピーニング加工工程を行うことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の伝熱管の製造方法。
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