JP6869745B2 - ショットピーニング加工装置及びショットピーニング加工方法 - Google Patents
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Description
ボイラの運転を継続することで、高温部用の伝熱管の内表面には、管内部を流れる高温高圧の水蒸気との接触、反応により、水蒸気酸化スケールが層として生成される。
内筒を加工対象配管の長手方向に移動させる内筒移動機構と、外筒を加工対象配管の端部に向けて移動させる外筒移動機構とを備えているので、加工対象配管の内面の所定の加工領域にショットピーニング加工を自動化することができ生産効率を向上させることができる。
図1には、本実施形態に係る伝熱管が適用されるボイラが示されている。
図2には、高温の燃焼ガスが流れる領域に設置した過熱器や再熱器である各熱交換器41,42,43,44に用いられる伝熱管パネル60が示されている。
伝熱管パネル60は、蒸気入口管寄せ(蒸気入口ヘッダ)61と蒸気出口管寄せ(蒸気出口ヘッダ)62との間にわたって連結されている。伝熱管パネル60を構成する複数の伝熱管(配管)63は、それぞれがU字形状とされ、並列に設けられている。同図において、紙面左側が炉の前側(燃焼ガス流れの上流側)となっており、紙面右側が炉の後側(燃焼ガス流れの下流側)となっている、したがって、矢印A1で示すように、燃焼ガスは蒸気入口管寄せ61側から蒸気出口管寄せ62に側に向かって流れるようになっている。蒸気入口管寄せ61から伝熱管63内に入った蒸気は、伝熱管63内を流れるに従い燃焼ガスによって加熱される。
ショットピーニング加工を施すことで、伝熱管63の内表面に所定の厚さ以上のショット加工層を形成させる。このショット加工層にはすべり線が形成され、ショット加工層の深層から表面層近傍へCrがすべり線に沿って拡散して供給される。これにより伝熱管63の内表面がCrリッチとなり、伝熱管63の内表面に緻密で耐食性が高いCrリッチ酸化物皮膜を形成させて、水蒸気酸化スケールの生成を抑制することができる。
噴射量:5〜25kg/min
噴射圧力:0.8〜0.95MPa
送り速度:400〜800mm/min
ショット粒の平均粒径:0.4〜1.0mm
ショット材:SUS304(略球形で、滑らかな表面を有する粒)
管内閉塞率は、下式に示すように、堆積した水蒸気酸化スケールSc1’,Sc2’が伝熱管63の流路断面積に占める割合である(図4参照)。
管内閉塞率[%]
=堆積した水蒸気酸化スケールの断面積÷伝熱管の流路断面積×100
例えば、所定の連続運転時間経過後の管内閉塞率を60%〜80%の適値を定めて、最小限必要なショットピーニング加工領域を導出して、入口側ショットピーニング加工領域L1及び出口側ショットピーニング加工領域L2を決める。これにより、伝熱管パネル60で燃焼ガスとの熱交換で加熱される蒸気温度に対して、少なくとも耐水蒸気酸化性の向上が必要な領域にショットピーニング加工を行い、伝熱管63の内表面における水蒸気酸化スケールの生成を効果的に抑制することが可能となる。
次に、図6及び図7を用いて、上述した伝熱管パネル60の製造方法について説明する。
先ず、製鉄メーカ等から直管のオーステナイト系ステンレス鋼管を受け入れる(ステップS11:材入)。このとき、製鉄メーカでは、直管に対して所定の熱処理が施されているものもあるが、本実施形態では、管内表面にはショットピーニング加工は施されていないものでも良い。
ここまで(ステップS11〜ステップS17)は、伝熱管パネル60に対して従来から用いられる形成手順であり、容易に確実に行うことができるものである。
本実施形態では、固溶化熱処理(ステップS17)を実施した後に、伝熱管63の内表面にショットピーニング加工(ステップS18)を施すので、伝熱管63は、耐応力腐食割れ性と耐水蒸気酸化性の両方の特性を備えることができる。
次に、伝熱管63にショットピーニング加工を行うショットピーニング加工装置について説明する。
内筒70aの中心軸線上には、内筒70aとともに移動するショット粒拡散コーン(ショット粒拡散部材)70cが設けられている。ショット粒拡散コーン70cは、円錐形状の外表面を有している。円錐形状の小径部が内筒70aの先端側に位置するように配置されている。このショット粒拡散コーン70cによって、後述するショット粒送り配管78によりショットノズル70へと供給されたショット粒が伝熱管63の内表面の全周に対して同時にショット粒を略均等に噴射することができる。
また、外筒70bと内筒70aとの間には、シールリング70hを少なくとも1箇所に設けてある。外筒70bに対して内筒70aを移動可能に支持するとともに、ショット粒や空気が漏出しないようにしている。
なお、図8では、1本の伝熱管63のみが示されているが、後述するように、複数の伝熱管63を同時にショットピーニング加工するようになっている。
ショットタンク76内に蓄積されたショット粒は、高圧空気が導入される混合部77に導かれ、高圧空気とともにショット粒送り配管78を介してショットノズル70へと供給される。
伝熱管押え治具81は、半円形状の横断面とされた溝部が複数形成され、伝熱管パネル60の各伝熱管63の荷重を支持して所定の鉛直位置を保持するとともに、水平面内の位置についても所定位置に配列されるように、ワーク支持台80の複数箇所に設置されても良い。また伝熱管押え治具81は、ショットノズル70の挿入側のみに設置し、他の位置では半円形状の横断面とされた溝部を持たない板状として、各伝熱管63の荷重を支持して所定の鉛直位置を保持するも各伝熱管63の水平面内の位置を限定しないものであっても良い。
このように、予め複数のバキューム管71を伝熱管63に取り付けておき、順次開閉弁71aの開閉動作を行うことでショットピーニング加工を複数の伝熱管63にわたって連続的に行うことができる。
次に、図20を用いて、上記構成のショットピーニング加工装置を用いた加工工程について説明する。
先ず、図13及び図14に示したように、ワーク支持台80に対して、伝熱管パネル60の各伝熱管63が水平に所定位置に配置されるように設置する(ステップS21)。このとき、伝熱管パネル60は、上下段のそれぞれに設置される。
図30には、上述したショットピーニング加工装置を用いて上述した加工条件でショットピーニング加工を施した伝熱管63の内表面のビッカース硬さ(Hv)を測定した結果が示されている。
図30の横軸は伝熱管63の内表面からの距離(μm)を示し、縦軸は基準化したビッカース硬さを示す。ビッカース硬さは、300Hvを1.0として基準化している。
同図から分かるように、伝熱管63の内表面から所定深さ(約60μm)までのビッカース硬さの減少割合が、該所定深さ(約60μm)からさらに内部(約200μm)までのビッカース硬さの減少割合よりも小さくなっている。すなわち、「(1)表面の硬度傾斜」が「(2)内面側の硬度傾斜」よりも小さい。
また、パス回数を2回(1往復)とすることで、伝熱管63の内表面の硬度分布はパス回数を1回とするものよりも均一化して、伝熱管63の内表面により均一な耐水蒸気酸化性を確保できるので、さらに好ましい。
複数の加工対象となる伝熱管63のそれぞれの一端部からショットノズル70を挿入し、複数の伝熱管63の内表面に対してショットピーニング加工を行う。ショットピーニング後のショット粒は、伝熱管63の他端部に接続された複数のバキューム管71から回収される。さらに、加工対象とされた伝熱管63の他端部に隣接する複数の伝熱管63に接続された他のバキューム管71を備えている。すなわち、伝熱管63に接続されているショットノズル70の数よりも、他のバキューム管71の数だけバキューム管71の数が多くなるように構成する。そして、この他のバキューム管71が接続されている伝熱管63を、ショットノズル70によって次に加工対象とする伝熱管63とすれば、加工対象の伝熱管63に都度バキューム管71を取り付けるのではなく、バキューム管71を次に加工対象とする伝熱管63に接続する段取りが省略して、次の加工対象の伝熱管63へのショットピーニング加工へ着手できるので、生産効率を向上させることができる。すなわち、複数のバキューム管71を加工対象とする伝熱管63より多くの伝熱管に予め取り付けておくという簡単な構成とすることで、ショットノズルに合せて加工対象となる伝熱管63が変わる毎にバキューム管71を取付けるための手間または自動接続設備を省略できるので、コストを低減できる。
60 伝熱管パネル
61 蒸気入口管寄せ(蒸気入口ヘッダ)
62 蒸気出口管寄せ(蒸気出口ヘッダ)
63 伝熱管(配管)
63a 蒸気入口部
63b 蒸気出口部
63c 折返し部
65 金物
70 ショットノズル
70a 内筒
70b 外筒
70b1 鍔部
70c ショット粒拡散コーン(ショット粒拡散部材)
70f 本体(外筒移動機構)
71 バキューム管(排気管)
72 バキューム管取付部
73 バキュームボックス
75 ショット回収分離ボックス
76 ショットタンク
77 混合部
78 ショット粒送り配管
80 ワーク支持台
81 伝熱管押え治具(固定治具)
81a 下方支持部
81b 中間支持部
81c 上方支持部
83a,b Y方向リニアガイド(配列方向移動機構)
84a,b Y方向リニアレール
89 X1方向リニアガイド
92 内筒送り装置(内筒移動機構)
92f 本体
94 X2方向リニアガイド
95 内筒固定部
96 弾性部
97 エアシリンダ
97a ピストン
98 すべり軸受
99 コイルバネ
100 押圧軸
101 ピニオン
102 支持ローラ
103 X3方向送りモータ
L1 入口側ショットピーニング加工領域
L2 出口側ショットピーニング加工領域
L3 非ショットピーニング加工領域
Sc1,Sc2 水蒸気酸化スケール
Sc1’,Sc2’ 堆積した水蒸気酸化スケール
Claims (8)
- 所定間隔を有して並べられて配列された複数の配管のうちの複数の加工対象配管のそれぞれの一端部から挿入され、各前記加工対象配管の内表面に対してショットピーニング加工を行う複数のショットノズルと、
前記加工対象配管のそれぞれの他端部に設けられてショット粒を回収するための複数の排気管と、
前記加工対象配管に隣接する1つ又は複数の配管の他端部に接続された他の排気管と、
を備えていることを特徴とするショットピーニング加工装置。 - 各前記排気管には、同じ前記加工対象配管に前記ショットノズルが接続されている場合には開とし、同じ前記加工対象配管に前記ショットノズルが接続されていない場合には閉とする開閉弁が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のショットピーニング加工装置。
- 各前記ショットノズルを、複数の前記配管が配列された配列方向に移動させる配列方向移動機構を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のショットピーニング加工装置。
- 前記ショットノズルは、ショット粒を噴射する内筒と、該内筒の外周側に位置するとともに先端部が前記加工対象配管の端部との間でシールされる外筒とを備え、
前記内筒を前記加工対象配管の長手方向に移動させる内筒移動機構と、
前記外筒を前記加工対象配管の端部に向けて移動させる外筒移動機構と、
を備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のショットピーニング加工装置。 - 前記内筒移動機構は、前記内筒が前記加工対象配管内で移動が規制されたことを検出する移動規制検出部を備えていることを特徴とする請求項4に記載のショットピーニング加工装置。
- 配列された複数の前記配管を所定位置に固定するための固定治具を備えていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のショットピーニング加工装置。
- 所定間隔を有して並べられて配列された複数の配管のうちの複数の加工対象配管のそれぞれに対して一端部から挿入され、各加工対象配管の内表面に対してショットピーニング加工を行うショットノズルと、
各前記ショットノズルを、前記配管が配列された配列方向に移動させる配列方向移動機構と、
を備えていることを特徴とするショットピーニング加工装置。 - 所定間隔を有して並べられて配列された複数の配管のうちの複数の加工対象配管のそれぞれの一端部からショットノズルを挿入する第1ショットノズル挿入工程と、
前記加工対象配管のそれぞれの他端部に、ショット粒を回収するための複数の排気管を接続する第1排気管接続工程と、
前記加工対象配管に隣接する1つ又は複数の配管の他端部に他の排気管を接続する第2排気管接続工程と、
各前記加工対象配管の内表面に対して各前記ショットノズルを用いてショットピーニング加工を行うショットピーニング加工工程と、
前記ショットピーニング加工工程の後に、前記第2排気管接続工程にて前記他の排気管が接続された前記配管に対して次の加工対象配管を選定して前記ショットノズルを挿入する第2ショットノズル挿入工程と、
を有することを特徴とするショットピーニング加工方法。
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