JP2018135276A - メタクリル酸の精製方法およびメタクリル酸結晶 - Google Patents
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Abstract
【課題】フェノールの含有量が少ないメタクリル酸結晶を提供する。【解決手段】メタクリル酸およびフェノールを含む原料を晶析槽内で冷却してメタクリル酸結晶を得る工程を含むメタクリル酸の精製方法であって、前記工程が回分式の晶析操作であり、前記原料を0.1℃/hr以下の速度で冷却することを特徴とするメタクリル酸の精製方法。【選択図】なし
Description
本発明は、メタクリル酸の精製方法およびメタクリル酸結晶に関する。
メタクリル酸は、イソブチレン、第3級ブチルアルコール、メタクロレインまたはイソブチルアルデヒドを分子状酸素で1段又は2段の反応で接触気相酸化して得られる。この生成物中には、目的物のメタクリル酸(沸点161℃/760mmHg、融点15℃)の他に、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、シトラコン酸、安息香酸、トルイル酸、テレフタル酸、アクリル酸等のカルボン酸類、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、メタクロレイン、ベンズアルデヒド、トルアルデヒド、フルフラール等のアルデヒト、フェノール等が副生物として含まれる。これらの不純物は、抽出や蒸留等の通常の精製手段である程度までは分離精製が可能であるが、不純物濃度の更なる低減が望まれている。
高純度のメタクリル酸を得る方法として、例えば特許文献1から3には、メタクリル酸を晶析操作により精製する方法が開示されている。
特許文献1から3に記載の方法では、メタクリル酸の純度を向上させることはできるが、メタクリル酸純度の更なる向上の観点から、特に不純物として含まれるフェノールの含有量を低減することが望まれている。
本発明は、フェノールの含有量が少ないメタクリル酸結晶を提供することを目的とする。
本発明は、以下の[1]から[8]である。
[1]メタクリル酸およびフェノールを含む原料を晶析槽内で冷却してメタクリル酸結晶を得る工程を含むメタクリル酸の精製方法であって、
前記工程が回分式の晶析操作であり、
前記原料を0.1℃/hr以下の速度で冷却することを特徴とするメタクリル酸の精製方法。
前記工程が回分式の晶析操作であり、
前記原料を0.1℃/hr以下の速度で冷却することを特徴とするメタクリル酸の精製方法。
[2]下記式で示される、前記原料中の前記フェノールの前記メタクリル酸結晶への分配係数が0.05以下である[1]に記載のメタクリル酸の精製方法。
分配係数(フェノール)=(メタクリル酸結晶中のフェノール濃度)/(原料中のフェノール濃度)。
[3]前記原料が、さらにフェノール以外のアルコールを含む[1]または[2]に記載のメタクリル酸の精製方法。
[4]下記式で示される、前記原料中の前記フェノール以外のアルコールの前記メタクリル酸結晶への分配係数が0.01以下である[3]に記載のメタクリル酸の精製方法。
分配係数(フェノール以外のアルコール)=(メタクリル酸結晶中のフェノール以外のアルコール濃度)/(原料中のフェノール以外のアルコール濃度)。
[5]前記フェノール以外のアルコールがメタノールである[3]または[4]に記載のメタクリル酸の精製方法。
[6]冷却開始時および冷却終了時の前記原料の温度が4〜8℃の範囲内である[1]から[5]のいずれかに記載のメタクリル酸の精製方法。
[7]前記原料を撹拌しながら冷却する[1]から[6]のいずれかに記載のメタクリル酸の精製方法。
[8]フェノールの濃度が200質量ppm以下であることを特徴とするメタクリル酸結晶。
本発明によれば、フェノールの含有量が少ないメタクリル酸結晶を提供することができる。
[メタクリル酸の精製方法]
本発明に係るメタクリル酸の精製方法は、メタクリル酸およびフェノールを含む原料を晶析槽内で冷却してメタクリル酸結晶を得る工程を含む。ここで、前記工程は回分式の晶析操作である。また、前記工程では前記原料を0.1℃/hr以下の速度で冷却する。本発明者らは、メタクリル酸およびフェノールを含む原料を冷却する際に、該原料を0.1℃/hr以下の速度で冷却することにより、フェノール含有量が少ないメタクリル酸結晶が得られることを見出した。以下、本発明に係る方法の詳細について説明する。
本発明に係るメタクリル酸の精製方法は、メタクリル酸およびフェノールを含む原料を晶析槽内で冷却してメタクリル酸結晶を得る工程を含む。ここで、前記工程は回分式の晶析操作である。また、前記工程では前記原料を0.1℃/hr以下の速度で冷却する。本発明者らは、メタクリル酸およびフェノールを含む原料を冷却する際に、該原料を0.1℃/hr以下の速度で冷却することにより、フェノール含有量が少ないメタクリル酸結晶が得られることを見出した。以下、本発明に係る方法の詳細について説明する。
本発明において精製対象である原料としては、メタクリル酸およびフェノールを含めば特に限定されないが、例えば直接酸化法やACH法等により製造される粗製メタクリル酸を用いることができる。直接酸化法では、例えば、イソブチレン、第3級ブチルアルコール、メタクロレイン及びイソブチルアルデヒドからなる群から選択される少なくとも一つの化合物を分子状酸素により1段又は2段の反応で接触気相酸化する。得られた反応ガスを凝縮して得た凝縮液、或いは該反応ガスの凝縮液に水を加える、又は該反応ガスを水に吸収させて得られるメタクリル酸水溶液から有機溶剤を用いてメタクリル酸を抽出する。該抽出液を蒸留することにより有機溶剤及び不揮発分を除去して粗製メタクリル酸を得ることができる。ACH法では、例えば、副生するメタクリル酸を抽出や蒸留により分離して粗製メタクリル酸を得ることができる。
本発明に係る方法で用いられる原料中に不純物として含まれるフェノールの濃度は、1000質量ppm以上、7000質量ppm以下であることが好ましく、2000質量ppm以上、6000質量ppm以下であることがより好ましく、3000質量ppm以上、5000質量ppm以下であることが更に好ましい。該濃度が1000質量ppm以上であることにより、必要以上のコストをかけずに原料として利用できる。また、該濃度が7000質量ppm以下であることにより、メタクリル酸結晶の品質への影響を低減できる。なお、原料中のフェノールの濃度は、ガスクロマトグラフィー(本体:GC−17A(製品名、(株)島津製作所製)、分析カラム:HP−FFAP(商品名、Agilent Technologies製))を用いて測定することができる。
本発明に係る原料には、フェノール以外にも、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シトラコン酸、安息香酸、マレイン酸、トルイル酸、テレフタル酸、アクリル酸、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、メタクロレイン、ベンズアルデヒド、トルアルデヒド、フルフラール等の不純物が含まれていてもよい。原料に含まれるこれらのフェノール以外の不純物の濃度は、合計10000質量ppm以下であることが好ましく、6000質量ppm以下であることがより好ましい。なお、該不純物の合計濃度は、前記フェノールの濃度と同様に測定することができる。
また、原料に第二成分として1種又は2種以上の極性有機物質を混合し、晶析操作を行ってもよい。第二成分として極性有機物質を混合すると、晶析の操作性が向上するため好ましい。
第二成分である極性有機物質としては、晶析の際にメタクリル酸と固溶体を形成しない極性有機物質であれば特に制限なく用いることができる。このような極性有機物質としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のフェノール以外のアルコール、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等が挙げられる。これらの中でも、極性有機物質としては、フェノール以外のアルコール、メタクリル酸メチル及びアクリル酸メチルからなる群から選択される化合物が好ましく、フェノール以外のアルコールがより好ましく、メタノールが更に好ましい。極性有機物質としては、これらの化合物を単独で用いることができ、2種以上を混合して用いることもできる。
原料が第二成分を含む場合、原料中の第二成分の含有量は、1〜35質量%であることが好ましく、3〜30質量%であることがより好ましく、3〜10質量%であることが更に好ましい。該含有量を1質量%以上とすることにより、メタクリル酸結晶が析出し始める温度、すなわち結晶析出温度と、メタクリル酸の凝固点との温度差が大きくなり、晶析操作が容易となる。また、該含有量を35質量%以下とすることにより、結晶析出温度が大幅に低下することがなく、冷却に多くのエネルギーやコストを必要としない。
本発明に係る方法において用いられる晶析装置は、回分式の晶析装置であれば特に限定されないが、例えば、「化学工学便覧 改訂第六版」丸善株式会社発行、平成11年、489〜523頁に記載されている装置を使用できる。また、BMC(Backmixing Column Crystallizer)型晶析器(新日鉄化学社:日本)、CDC(Cooling Disk Crystallizer)晶析装置(Gouda社:オランダ)、FFC(Falling Film Crystallizer)晶析装置(Sulzer Chemtech社:スイス)等を用いることもできる。特に、攪拌槽と、該攪拌槽の周面に外側から冷却媒体を接触させるための冷却ジャケットを備える冷却器とを備え、該攪拌槽の周面を伝熱面として熱交換により攪拌槽内を冷却し、攪拌槽内に懸濁結晶スラリーを保持することができる懸濁型ジャケット冷却式晶析槽(攪拌槽型晶析装置)が好ましい。
本発明に係る方法では、例えば前記晶析装置の晶析槽に前記原料を投入し、冷却することでメタクリル酸結晶を析出させる(晶析操作)。これにより、メタクリル酸結晶が析出したスラリーを得ることができる。該晶析操作は、経時的に結晶を析出、成長させる観点から回分式にて行う。また、冷却時には原料を攪拌しながら冷却することが、晶析槽内の温度分布、濃度分布ムラをなくす観点から好ましい。
原料を冷却する際の冷却速度は、0.1℃/hr以下であり、0.05℃/hr以下であることが好ましく、0.02℃/hr以下であることがより好ましく、0.01℃/hr以下であることが更に好ましい。該冷却速度が0.1℃/hr以下であることにより、フェノールの含有量が少ないメタクリル酸結晶が得られる。該冷却速度の範囲の下限は特に限定されないが、例えば0.001℃/hr以上とすることができる。なお、該冷却速度は、晶析槽内の原料の温度を該速度で低下させることを示す。例えば前記懸濁型ジャケット冷却式晶析槽を用いて晶析操作を行う場合には、ジャケット内に流通させる冷却媒体の温度の低下に伴い、晶析槽内の原料温度も連動して低下する。そのため、冷却媒体の温度制御を行う装置にて冷却速度を前記範囲内に設定することで、晶析槽内の原料の温度を前記範囲内の速度で低下させることができる。冷却速度は前記範囲内であれば変更可能であるが、一定速度で冷却を行う線形冷却が好ましい。
冷却開始時および冷却終了時の原料の温度は、4〜8℃の範囲内であることが好ましく、5〜7.5℃の範囲内であることがより好ましく、6〜7℃の範囲内であることがさらに好ましい。該温度が4℃以上であることにより、晶析槽内に過剰な結晶を存在させることなく運転を行うことができる。一方、該温度が8℃以下であることにより、一回分操作あたりの結晶の生産性を許容できる値に維持することが可能となる。なお、冷却開始から冷却終了までの間、原料の温度は前記温度範囲内であることが好ましい。冷却開始温度と冷却終了温度との差は特に限定されないが、0.1〜3℃であることが好ましく、0.2〜2℃であることがより好ましく、0.3〜1℃であることがさらに好ましい。
本発明の冷却速度の範囲内で冷却する時間は、3〜500時間が好ましく、3〜200時間がより好ましく、5〜100時間がさらに好ましい。冷却時間が3時間以上であることにより、フェノール濃度の低いメタクリル酸結晶を得ることが可能となる。一方、冷却時間が500時間以下であることにより、一回分操作あたりの結晶の生産性を許容できる値に維持することができる。
メタクリル酸結晶をより成長させる観点から、原料を冷却してメタクリル酸結晶を析出させた後、原料の温度を一度上昇させて晶析槽内の結晶の個数を低減させてから、本発明の冷却速度にて冷却を行うことが好ましい。例えば原料を7℃以下まで冷却してメタクリル酸結晶の析出が確認された後、原料温度を7℃を超える温度に上昇させて保持し、晶析槽内の結晶の個数を半分程度まで低減させてから、本発明の冷却速度にて冷却を行うことができる。なお、結晶の個数は目視にて確認することができる。
得られたメタクリル酸結晶を含むスラリーは、メタクリル酸結晶と母液とに分離することができる。これにより、メタクリル酸結晶を得ることができる。一方、分離される母液には、フェノールを含む濃縮された不純物、メタクリル酸、第二成分を添加した場合には第二成分が含まれる。
メタクリル酸結晶と母液とを分離する方法としては、固体と液体とを分離することができる方法であれば特に制限はない。例えば、ろ過装置、遠心分離装置等の公知の固液分離装置、およびこれらの組み合わせを用いることができる。また、分離を行う装置の具体例としては、例えば、清水忠造:“クレハ連続結晶精製装置による有機化合物の精製”、ケミカルエンジニアリング、第27巻、第3号(1982)、第49頁に掲載されているKCP装置等が挙げられる。なお、分離の操作の形式は回分式及び連続式のいずれでもよい。また、分離された母液からメタクリル酸や第二成分を回収し、再利用又は再精製することもできる。
原料中のフェノール濃度と、得られたメタクリル酸結晶中のフェノール濃度との関係は、原料中のフェノールのメタクリル酸結晶への分配係数が0.05以下であることが好ましく、0.04以下であることがより好ましく、0.03以下であることが更に好ましい。ここで、該分配係数は原料中のフェノールがメタクリル酸結晶へどの程度分配されたかを示す係数であり、下記式にて示される値である。
分配係数(フェノール)=(メタクリル酸結晶中のフェノール濃度)/(原料中のフェノール濃度)
前記分配係数が0.05以下であることにより、フェノールの含有量がより少ないメタクリル酸結晶を得ることができる。前記分配係数は低い方が好ましく、前記分配係数の範囲の下限は特に限定されない。
前記分配係数が0.05以下であることにより、フェノールの含有量がより少ないメタクリル酸結晶を得ることができる。前記分配係数は低い方が好ましく、前記分配係数の範囲の下限は特に限定されない。
また、原料が第二成分としてフェノール以外のアルコールを含む場合、原料中のフェノール以外のアルコールのメタクリル酸結晶への分配係数は0.01以下であることが好ましい。ここで、該分配係数は原料中のフェノール以外のアルコールがメタクリル酸結晶へどの程度分配されたかを示す係数であり、下記式にて示される値である。
分配係数(フェノール以外のアルコール)=(メタクリル酸結晶中のフェノール以外のアルコール濃度)/(原料中のフェノール以外のアルコール濃度)
前記分配係数が0.01以下であることにより、フェノール以外のアルコールの含有量がより少ないメタクリル酸結晶を得ることができる。前記分配係数は低い方が好ましく、前記分配係数の範囲の下限は特に限定されない。
前記分配係数が0.01以下であることにより、フェノール以外のアルコールの含有量がより少ないメタクリル酸結晶を得ることができる。前記分配係数は低い方が好ましく、前記分配係数の範囲の下限は特に限定されない。
なお、メタクリル酸結晶中のフェノール、フェノール以外のアルコールの濃度は、以下の方法により測定される。晶析槽内のメタクリル酸結晶を採取し、該メタクリル酸結晶の表面の母液を取り除くため、メタクリル酸結晶をキムワイプ(商品名、日本製紙クレシア(株)製)に載せ、折りたたむようにして表面の母液をふき取る。この操作を結晶の位置を変えて数度繰り返し、得られた結晶をバイアル瓶に移し、原料中のフェノール濃度測定と同様に、メタクリル酸結晶中のフェノール、フェノール以外のアルコールの濃度を測定する。
[メタクリル酸結晶]
本発明に係るメタクリル酸結晶は、フェノールの濃度が200質量ppm以下である。該メタクリル酸結晶は、本発明に係るメタクリル酸の精製方法により得ることができる。該メタクリル酸結晶のフェノールの濃度は、170質量ppm以下が好ましく、150質量ppm以下がより好ましく、120質量ppm以下が更に好ましい。該メタクリル酸結晶のフェノール濃度は200質量ppm以下であるため、該メタクリル酸結晶は、例えば各種メタクリル酸エステルの原料やコンクリート混和剤用途として用いることができる。特に熱可塑性樹脂用途等に好適に用いることができる。
本発明に係るメタクリル酸結晶は、フェノールの濃度が200質量ppm以下である。該メタクリル酸結晶は、本発明に係るメタクリル酸の精製方法により得ることができる。該メタクリル酸結晶のフェノールの濃度は、170質量ppm以下が好ましく、150質量ppm以下がより好ましく、120質量ppm以下が更に好ましい。該メタクリル酸結晶のフェノール濃度は200質量ppm以下であるため、該メタクリル酸結晶は、例えば各種メタクリル酸エステルの原料やコンクリート混和剤用途として用いることができる。特に熱可塑性樹脂用途等に好適に用いることができる。
晶析装置としては、攪拌機構を備えたガラス製懸濁型ジャケット冷却式晶析槽(125ml)を用いた。晶析操作は回分式にて行った。冷却媒体としては、エタブラインEC−Z(商品名、東京ファインケミカル(株)製)を用いた。冷却媒体の温度制御には、NTB−221(商品名、東京理化(株)製)を用いた。
メタクリル酸結晶中のフェノールおよびメタノールの濃度測定には、ガスクロマトグラフィー(本体:GC−17A(製品名、(株)島津製作所製)、分析カラム:HP−FFAP(商品名、Agilent Technologies製))を用いた。
(実施例1)
メタクリル酸(三菱レイヨン(株)製)に、メタノール、フェノールおよびアクリル酸を添加し、メタノールおよびフェノールを表1に示される濃度で、アクリル酸を0.19質量%含む原料を調製した。
メタクリル酸(三菱レイヨン(株)製)に、メタノール、フェノールおよびアクリル酸を添加し、メタノールおよびフェノールを表1に示される濃度で、アクリル酸を0.19質量%含む原料を調製した。
ガラス製懸濁型ジャケット冷却式晶析槽に前記原料を80ml入れ、小型攪拌子による攪拌下、設定温度6.5℃の冷却媒体をジャケットへ流通させた。晶析槽内の原料温度が6.9℃付近になったところで、晶析槽内にて結晶化が確認された。ここで冷却媒体の設定温度を7.3℃に変更し、攪拌を停止し、晶析槽内の結晶個数が減るまで待機した。晶析槽内の結晶個数が半分程度になったことを確認した後、冷却媒体の設定温度を7.0℃に変更し、該設定温度を6.5℃まで72時間かけて低下させ(冷却速度:0.0069℃/hr)、線形冷却を行った。なお、冷却媒体の設定温度の低下に伴い、晶析槽内の原料温度も連動して低下した。
前記設定温度が6.5℃に到達した時点で冷却を終了し、晶析槽内のメタクリル酸結晶をピンセットで採取した。採取したメタクリル酸結晶の表面の母液を取り除くため、メタクリル酸結晶をキムワイプ(商品名、日本製紙クレシア(株)製)に載せ、折りたたむようにして表面の母液をふき取った。この操作を結晶の位置を変えて数度繰り返し、得られた結晶をバイアル瓶に移し、フェノールおよびメタノールの濃度を測定した。結果を表1に示す。
(比較例1)
冷却媒体の設定温度を7.0℃から6.5℃まで2.2時間かけて低下させた(冷却速度:0.227℃/hr)こと以外は、実施例1と同様の方法で晶析操作を実施してメタクリル酸結晶を得て、アクリル酸濃度を測定した。結果を表1に示す。
冷却媒体の設定温度を7.0℃から6.5℃まで2.2時間かけて低下させた(冷却速度:0.227℃/hr)こと以外は、実施例1と同様の方法で晶析操作を実施してメタクリル酸結晶を得て、アクリル酸濃度を測定した。結果を表1に示す。
(比較例2)
冷却媒体の設定温度を7.0℃から6.5℃まで1.2時間かけて低下させた(冷却速度:0.417℃/hr)こと以外は、実施例1と同様の方法で晶析操作を実施してメタクリル酸結晶を得て、アクリル酸濃度を測定した。結果を表1に示す。
冷却媒体の設定温度を7.0℃から6.5℃まで1.2時間かけて低下させた(冷却速度:0.417℃/hr)こと以外は、実施例1と同様の方法で晶析操作を実施してメタクリル酸結晶を得て、アクリル酸濃度を測定した。結果を表1に示す。
(比較例3)
冷却媒体の設定温度を7.0℃から6.5℃まで0.7時間かけて低下させた(冷却速度:0.714℃/hr)こと以外は、実施例1と同様の方法で晶析操作を実施してメタクリル酸結晶を得て、アクリル酸濃度を測定した。結果を表1に示す。
冷却媒体の設定温度を7.0℃から6.5℃まで0.7時間かけて低下させた(冷却速度:0.714℃/hr)こと以外は、実施例1と同様の方法で晶析操作を実施してメタクリル酸結晶を得て、アクリル酸濃度を測定した。結果を表1に示す。
Claims (8)
- メタクリル酸およびフェノールを含む原料を晶析槽内で冷却してメタクリル酸結晶を得る工程を含むメタクリル酸の精製方法であって、
前記工程が回分式の晶析操作であり、
前記原料を0.1℃/hr以下の速度で冷却することを特徴とするメタクリル酸の精製方法。 - 下記式で示される、前記原料中の前記フェノールの前記メタクリル酸結晶への分配係数が0.05以下である請求項1に記載のメタクリル酸の精製方法。
分配係数(フェノール)=(メタクリル酸結晶中のフェノール濃度)/(原料中のフェノール濃度) - 前記原料が、さらにフェノール以外のアルコールを含む請求項1または2に記載のメタクリル酸の精製方法。
- 下記式で示される、前記原料中の前記フェノール以外のアルコールの前記メタクリル酸結晶への分配係数が0.01以下である請求項3に記載のメタクリル酸の精製方法。
分配係数(フェノール以外のアルコール)=(メタクリル酸結晶中のフェノール以外のアルコール濃度)/(原料中のフェノール以外のアルコール濃度) - 前記フェノール以外のアルコールがメタノールである請求項3または4に記載のメタクリル酸の精製方法。
- 冷却開始時および冷却終了時の前記原料の温度が4〜8℃の範囲内である請求項1から5のいずれか1項に記載のメタクリル酸の精製方法。
- 前記原料を撹拌しながら冷却する請求項1から6のいずれか1項に記載のメタクリル酸の精製方法。
- フェノールの濃度が200質量ppm以下であることを特徴とするメタクリル酸結晶。
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