JP2018135225A - 誘電体薄膜及び電子部品 - Google Patents

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Abstract

【課題】高温負荷耐性の高い誘電体薄膜及び電子部品を提供する。【解決手段】誘電体薄膜であって、化学式ABO3で表されるペロブスカイト型構造を有する化合物からなり、AサイトにBa、Srおよび希土類を含み、BサイトにTiを含み、前記希土類は、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gdからなる群から選択される少なくとも1種であり、前記希土類の含有量が、Ti100mol%に対して、0.5mol%より大きく15mol%より小さい。【選択図】図1

Description

本発明は、誘電体薄膜及び電子部品に関する。
高周波用フィルタ、高周波用アンテナ、フェーズシフタ等の高周波チューナブルデバイスには、可変容量素子(チューナブル素子)として、上部電極及び下部電極とこの両電極間に形成された誘電体層から構成される薄膜キャパシタ等が組み込まれている。このような薄膜キャパシタを構成する誘電体薄膜には、高い誘電率を有するチタン酸ストロンチウム(ST:SrTiO3)、チタン酸バリウムストロンチウム(BST)、チタン酸バリウム(BT:BaTiO3)等のペロブスカイト型酸化物を用いて形成された誘電体薄膜が使用されている。
特許文献1には、誘電体薄膜のリーク電流特性を向上すべく、チタン酸バリウムストロンチウム(BST)系複合ペロブスカイト膜からなる誘電体薄膜を形成するための誘電体薄膜形成用組成物であって、チタン酸バリウムストロンチウム(BST)系複合ペロブスカイト膜が、一般式Ba1-xSrxTiy3(式中0.2<x<0.6、0.9<y<1.1)で示され、Al(アルミニウム)がドープされ、ペロブスカイトAサイト原子100原子%に対する前記Alのドープ量が0.1原子%以上15原子%以下の範囲にある誘電体薄膜形成用組成物が開示されている。
特開2014−144881号公報
近年求められる、より膜厚を低下させた誘電体膜を有するキャパシタを形成するときに、従来の構成では、高温負荷試験に対する十分な信頼性を発揮できないという問題がある。これは、酸素空孔の拡散を抑制する効果が不十分であるためと考えられる。
例えば特許文献1に記載の技術では、アルミニウムの置換は酸素空孔由来の電子を安定化させるため、リーク電流を低下させることはできるものの、酸素空孔自体の動きや電極からの電荷注入への抑制には効果がないため、高温負荷試験に対する適切な信頼性を確保できない。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、高温負荷耐性の高い誘電体薄膜及び電子部品を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するため、誘電体薄膜の一態様は、化学式ABO3で表されるペロブスカイト型構造を有する化合物からなり、AサイトにBa、Srおよび希土類を含み、BサイトにTiを含み、前記希土類は、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gdからなる群から選択される少なくとも1種であり、前記希土類の含有量が、Ti100mol%に対して、0.5mol%より大きく15mol%より小さい。
また、上記の目的を達成するため、電子部品の一態様は、誘電体薄膜が一対の電極の間に配置された構造を備えるものである。
本発明によれば、高温負荷耐性の高い誘電体薄膜及び電子部品を提供することができる。
本実施形態に係る電子部品の概略断面図である。
(誘電体薄膜)
本実施形態に係る誘電体薄膜は、化学式ABO3で表されるペロブスカイト型構造を有する化合物からなる。ペロブスカイト型構造は化学式ABO3で表されるが、Bに対するAの比率(A/B)が必ずしも1である必要はなく、比率は0.91より大きく1.11より小さい範囲であればよい。
本実施形態に係る誘電体薄膜は、AサイトにBa、Srおよび希土類を含み、BサイトにTiを含む。
希土類は、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gdからなる群から選択される少なくとも1種が用いられる。希土類の含有量は、Ti100mol%に対して、0.5mol%より大きく15mol%より小さい。このように本実施形態では、ペロブスカイト型構造のAサイトの一部が高濃度の比較的イオンサイズの大きい3価のドナーである希土類により占められる。
本実施形態に係る誘電体薄膜は、BサイトにZrをさらに含んでいてもよい。この場合には、希土類の含有量は、Ti及びZrの合計100mol%に対して、0.5mol%より大きく15mol%より小さくなるように設定される。Zrは、ペロブスカイト型構造のBサイトに配置される。
好ましくは、Ti100mol%に対して、ペロブスカイト型構造を維持する範囲で、Baの含有量が4.5mol%より大きく、Srの含有量が100mol%より小さい。また、BサイトにZrを含む場合には、好ましくは、Ti及びZrの合計100mol%に対して、ペロブスカイト型構造を維持する範囲で、Baの含有量が4.5mol%より大きく、Srの含有量が100mol%より小さい。
本実施形態に係る誘電体薄膜は、他の成分を含んでいてもよい。例えば、誘電体薄膜は、Caを含んでいてもよい。Caはペロブスカイト型構造のAサイトに配置される。また、誘電体薄膜は、アルカリ金属、遷移金属、Cl、S、P等を微量含有していてもよい。
本実施形態に係る誘電体薄膜は、例えば、Ba、Sr、Tiおよび希土類の前駆体溶液を準備し、前駆体溶液を用いた金属有機化合物分解法(MOD)により成膜し、酸素雰囲気および酸素フローの条件下で熱処理することにより製造される。この前駆体溶液に含まれる金属元素の割合が、そのまま誘電体薄膜における金属元素に割合に反映される。
ただし、本実施形態に係る誘電体薄膜の製造方法に限定はなく、金属有機化合物分解法(MOD)に限らず同様の膜の微構造が得られるのであれば、例えば溶液法ならばゾルゲル法、気相法であればMOCVD法、CVD法、スパッタリング、PLDなどであってもよい。
本実施形態によれば、(Ba,Sr)TiO3の一部を高濃度の比較的イオンサイズの大きい3価のドナーである希土類(La,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd)で置換した組成とすることにより、高温負荷耐性の高い誘電体薄膜を得ることができる。これは、電子を放出するドナーを高濃度で含むことにより、電荷補償としてのカチオン空孔が生じ、誘電体としての高抵抗を維持しつつ、酸素空孔を強く安定化させるものと思われる。この結果、酸素空孔の再配置などによるキャリアの生成が起こりにくくなり、高温負荷耐性が高くなるものと思われる。
(電子部品)
図1は、本実施形態に係る誘電体薄膜を備える電子部品としての薄膜キャパシタの概略断面図である。なお、図1においては、薄膜キャパシタの構造における特徴の少なくとも一部を説明するのに必要な構成を抽出して記載しているが、薄膜キャパシタが不図示の構成を備えることを妨げるものではない。
薄膜キャパシタは、本実施形態に係る誘電体薄膜40が一対の電極30,50の間に配置された構造を備える。すなわち、薄膜キャパシタは、基板20と、下部電極30と、誘電体薄膜40と、上部電極50とを備える。また、薄膜キャパシタは、下部電極30に電気的に接続された電極52を備える。
基板20は、矩形形状を有する。基板20は、例えばシリコンなどの半導体基板である。薄膜キャパシタは、基板20の表面に、例えば酸化シリコンなどの絶縁膜22を有する。絶縁膜22は、絶縁膜22の下に形成される基板20及び絶縁膜22の上に形成される下部電極30と密着する材料により形成される。また、基板20は、例えばアルミナなどの絶縁材料により形成されてもよい。この場合、絶縁膜22は、基板20上に形成されなくともよい。
下部電極30の材料に限定はなく、例えばPt、Cu、Ag、Au、Al、Ni、Cr、Ti等からなる金属又はこれらの金属を含む導電体が使用される。下部電極30は、異なる材料から形成された複数の層を有するように形成されてもよい。
誘電体薄膜40は、下部電極30の表面を覆うように形成される。誘電体薄膜40は、上述した組成をもつペロブスカイト型構造を有する化合物である。
上部電極50の材料に限定はなく、例えばPt、Cu、Ag、Au、Al、Ni、Cr、Ti等からなる金属又はこれらの金属を含む導電体が使用される。上部電極50は、異なる材料から形成された複数の層を有するように形成されてもよい。
電極52は、下部電極30に対して電気的に接続された電極である。電極52は、下部電極30の上面において上部電極50が形成される一部の領域以外の領域に形成される。また、電極52は、誘電体薄膜40に形成された開口を充填するように形成される。
本実施形態によれば、上述した組成の誘電体薄膜を用いることにより、高温負荷時における素子の信頼性が高い薄膜キャパシタを提供できる。
(実施例)
以下、本発明を実施例および比較例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(試料の作製)
キャパシタ構造を有する試料1−27を得るための条件を示す。まず薄膜の基材に4インチのSi基板を用意した。Si基板上にはSiO2膜が形成され、SiO2膜上に、前駆体溶液を用いた金属有機化合物分解法(MOD)により(Ba,Sr)TiO3[BST]の膜を電極の密着層として形成した。密着層は化学量論組成のBST原料溶液をスピンコートで基板上に成膜し、350℃で乾燥させ、その後、O2フロー条件下にて650℃で15分の熱処理を行うことで得た。その後、直流スパッタリング法によりPtを150nm膜として成膜して、下部電極とした。さらに続けて、誘電体薄膜を形成するため、表1に示す割合で金属元素を含む前駆体溶液を密着層と同様にスピンコートによって成膜し、350℃で乾燥させ、成膜と乾燥を3回繰り返した。その後、650℃で30min熱処理をした。上部電極を形成するために、メタルマスクを用い、表面に500μm□のPt上部電極を直流スパッタリング法によって形成した。その後、誘電体薄膜の結晶化のため基板をO2フロー条件下にて750℃で60分熱処理し、薄膜キャパシタを得た。焼き上がりの誘電体薄膜を断面で確認したところ、粒状のグレインが集まった組織構造である約100nm厚みの膜であった。またXRDにて、ペロブスカイト多結晶由来の回折パターンを確認した。誘電体薄膜の組成分析を行い、表1に示した組成比であることも確認した。
なお、実施例では、前駆体溶液にはカルボン酸塩およびアルコキシドを用いたが、有機金属化合物であれば原料の選択は本発明の効果に影響はない。また、MODに限らず同様の膜の微構造が得られるのであれば、例えば溶液法ならばゾルゲル法、気相法であればMOCVD法、CVD法、スパッタリング、PLDなどであってもよい。
(試料の評価)
このようにして基板上に複数形成された薄膜キャパシタについて、温度可変ステージを有する薄膜試験用のプローバーに接続したLCRメーターを用いて、室温で100箇所の容量測定を行い、平均の誘電率を得た。
また、同様に高温負荷試験を25箇所で行った。その際ピンホールの影響と思われる容量測定が行えないポイントは除外した。高温負荷試験は、温度185℃にて3Vの電圧を印加して、その絶縁抵抗の経時変化を測定した。絶縁抵抗値が200kΩ以下になった試料を故障と判定し、故障時間のワイブルプロットから50%の平均故障時間(MTTF)を求めた。MTTFが50h以下のものを高温負荷特性が悪いとした。
試料1−27の薄膜キャパシタの試験結果を表2に示す。※印を付していない番号の試料は、本実施例の誘電体膜であり、誘電率も高温負荷試験に対して高い信頼性も得ることができた。
試料1のように、Laを含んでいてもその添加量が少ないものは、初期の抵抗値が低く高温負荷耐性も極めて低くなった。一方で、試料6のようにLaの添加量が多すぎるものは、二次相を生じており高温負荷に対する十分な信頼性を高める効果が確認できなった。
試料16のように、Tiに対してBaとSrおよび希土類の割合が多すぎるもの(化学量論比が上に外れすぎているもの)は、炭酸塩や水酸化物の二次相が生じており、高温負荷に対する十分な信頼性が得られなかった。また試料19のように、Tiに対してBaとSrの割合が少なすぎる(化学量論比が下に外れすぎているもの)も十分な高温負荷に対する信頼性が得られなかった。
試料20−25のように、Tiの一部をZrに置き換えても、試料26のようにBa,Srの一部をCaに置き換えても、本発明の効果を得ることができた。
試料27のように、ドナーを全く含まない組成の誘電体膜では、初期の抵抗は低くはないが、故障が早く十分な高温負荷に対する信頼性を得ることが出来なかった。
なお、試料12のようにBaの比率が低く、Sr比率が高いものは、十分な高温負荷に対する信頼性を得ることはできるが、誘電率が低い傾向にあった。
以上、本発明の例示的な実施形態および実施例について説明した。
本実施形態に係る誘電体薄膜は、化学式ABO3で表されるペロブスカイト型構造を有する化合物からなり、AサイトにBa、Srおよび希土類を含み、BサイトにTiを含み、前記希土類は、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gdからなる群から選択される少なくとも1種であり、前記希土類の含有量が、Ti100mol%に対して、0.5mol%より大きく15mol%より小さい。これにより、高温負荷に対する信頼性が高い誘電体薄膜が得られる。
本実施形態に係る誘電体薄膜はBサイトにZrをさらに含んでいてもよく、この場合、希土類の含有量は、Ti及びZrの合計100mol%に対して、0.5mol%より大きく15mol%より小さい。このようにZrを含んでいても、高温負荷に対する信頼性が高い誘電体薄膜が得られる。
A/B比が1でなくてもよく、0.91より大きく1.11より小さい範囲内にあればよい。この範囲の化学量論比のずれであれば、高温負荷に対する信頼性が高い誘電体薄膜が得られる。
Ti100mol%に対して、Baの含有量が4.5mol%より大きく、Srの含有量が100mol%より小さいことが好ましい。また、BサイトにZrを含む場合には、Ti及びZrの合計100mol%に対して、Baの含有量が4.5mol%より大きく、Srの含有量が100mol%より小さいことが好ましい。これにより、誘電率が高く、高温負荷への信頼性が高い誘電体薄膜が得られる。
さらに、本実施形態に係る電子部品は、上述した組成の誘電体薄膜が一対の電極の間に配置された構造を備える。これにより、容量密度が高く、高温負荷時における信頼性が高い電子部品が得られる。
なお、以上説明した各実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るととともに、本発明にはその等価物も含まれる。即ち、各実施形態に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、各実施形態が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。また、各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせが可能であることは言うまでもなく、これらも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
20…基板、22…絶縁膜、30…下部電極、40…誘電体薄膜、50…上部電極、52…電極

Claims (6)

  1. 化学式ABO3で表されるペロブスカイト型構造を有する化合物からなり、
    AサイトにBa、Srおよび希土類を含み、BサイトにTiを含み、
    前記希土類は、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gdからなる群から選択される少なくとも1種であり、
    前記希土類の含有量が、Ti100mol%に対して、0.5mol%より大きく15mol%より小さい、
    誘電体薄膜。
  2. BサイトにZrをさらに含み、
    前記希土類の含有量は、Ti及びZrの合計100mol%に対して、0.5mol%より大きく15mol%より小さい、
    請求項1記載の誘電体薄膜。
  3. A/B比が0.91より大きく1.11より小さい範囲内にある、
    請求項1又は2に記載の誘電体薄膜。
  4. Ti100mol%に対して、Baの含有量が4.5mol%より大きく、Srの含有量が100mol%より小さい、
    請求項1または3に記載の誘電体薄膜。
  5. Ti及びZrの合計100mol%に対して、Baの含有量が4.5mol%より大きく、Srの含有量が100mol%より小さい、
    請求項2または3に記載の誘電体薄膜。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の誘電体薄膜が一対の電極の間に配置された構造を備える、電子部品。
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