(実施例1)
本発明を具体的に説明する前に、まず概要を述べる。本発明の実施例1は、PoC端末装置に関する。音声通信の一例がPTT(Push to Talk)である。PTTでは、ユーザが、会話中にボタンを押し、会話終了時にボタンを解放する。また、PoC端末装置では、複数のPoC端末装置によってグループを形成することも可能である。PoC端末装置の基地局装置は、グループに対して、セッションを確立する。このような状況下において、グループ中の1つのPoC端末装置が、前記セッションにて音声データを送信し、グループ中の他のPoC端末装置が、前記セッションにて音声データを受信する。
他のPoC端末装置のユーザが、PoC端末装置からの音声を聞いており、音声が終了した場合に、当該音声に応答するような内容の音声を発したい場合がある。これは、PoC端末装置においてボタンが解放されて、他のPoC端末装置においてボタンが押し下げられることに相当する。このような他のPoC端末装置における伝送遅延時間が大きい場合、他のPoC端末装置においてボタンが押し下げられる前に、PoC端末装置においてボタンが再び押し下げられると、行き違いの通話が発生しうる。これに対応するために、本実施例に係るPoC端末装置は、最大の伝送遅延時間をもとに禁止期間を設定する。禁止期間とは、ボタンが押し下げられてもPoC端末装置が音声データを送信できない期間のことである。PoC端末装置は、ボタンが解放されることによって音声データの送信を終了した場合、禁止期間タイマを開始させる。また、禁止期間タイマが満了するまでにPoC端末装置のボタンが押し下げられても、PoC端末装置は音声データを送信しない。
図1は、通信システム100の構成を示す。通信システム100は、端末装置10と総称される第1端末装置10a、第2端末装置10b、第3端末装置10c、第4端末装置10d、基地局装置12、中継サーバ14を含む。第1端末装置10aは、通信部32、処理部34、操作部36、モニタ38、マイク40、スピーカ42、記憶部44、制御部46を含み、処理部34は、取得部50、設定部52を含む。なお、第2端末装置10bから第4端末装置10dも、第1端末装置10aと同様に構成されるが、図面を明瞭にするために、一部の構成要素あるいは全部の構成要素を省略する。また、通信システム100に含まれる端末装置10の数は「4」に限定されず、基地局装置12の数も「1」に限定されない。複数の基地局装置12が含まれる場合、それらはネットワークを介して接続される。
端末装置10は、PoCによるグループ通信を実行可能な装置である。図1では、第1端末装置10aが音声通信の送話側に相当し、第2端末装置10bから第4端末装置10dがPoCによる音声通信の受話側に相当するが、状況に応じてこれらの関係が変わってもよい。このような送話側から送信される音声データと、受話側において受信される音声データとを図2を使用しながら説明する。
図2は、通信システム100の動作概要を示す。図2では、送話側として第1端末装置10aを示し、受話側として第2端末装置10bを示す。第1端末装置10aからは「送信音声データ1」と示される音声データが送信される。この音声データは、伝送遅延時間Tdだけ遅延して、第2端末装置10bにおいて「受信音声データ1」として受信される。伝送遅延時間Tdは、第2端末装置10bから第4端末装置10dのそれぞれにおいて異なる。ここで、第1端末装置10aにおける音声データの送信が終了した後、伝送遅延時間Tdの間では第2端末装置10bにおいて音声データの受信がなされている。しかしながら、第1端末装置10aはこのことを認識していない。そのために、生じうる状況を図3を使用しながら説明する。
図3は、通信システム100の別の動作概要を示す。図1と同様に、第1端末装置10aでは「送信音声データ1」が送信され、第2端末装置10bでは「受信音声データ1」が受信され、伝送遅延時間はTdとされる。第2端末装置10bでは、「受信音声データ1」の受信終了後、応答するまでの時間Tm経過してから、「送信音声データ3」を送信する。一方、第1端末装置10aでは、伝送遅延時間Tdを認識していないので、「送信音声データ1」の送信終了後、伝送遅延時間Tdを経過する前に「送信音声データ2」を送信する。
このような音声データによる通話を第1端末装置10aから見ると、「音声データ1」、「音声データ2」の送信が続いてなされ、「音声データ2」の送信中に「音声データ3」の受信が発生する。一方、このような音声データによる通話を第2端末装置10bから見ると、「音声データ1」を受信してから、「音声データ3」を送信している間に、「音声データ2」の受信が発生する。なお、「音声データ3」の内容は、「音声データ1」の内容に対する応答であるので、理想的な通話は、「音声データ1」、「音声データ2」、「音声データ3」の順になされるべきである。つまり、複信通信の環境化でマルチキャストの音声通信をした場合、最も遅い音声受信先である第2端末装置10bから応答の送信が発生するまでの間に、音声送信元の第1端末装置10aが次の送信を開始してしまうと、行き違った通話になる可能性がある。図1に戻る。
通信部32は、基地局装置12を介して、他の端末装置10との間で音声通信を実行する。処理部34は、通信部32による通信を制御する。特に、処理部34は、PoC端末におけるグループ通話での通話処理を実行する。操作部36は、ボタン、タッチパネル等によって構成されており、ユーザからの入力を受けつける。ここで、ボタンは、PTTボタンに相当し、操作部36は、PTTボタンの押し下げによってPTTによる送話の指示を受けつける。一方、操作部36は、PTTボタンの解放によってPTTによる送話の終了を受けつける。操作部36は、受けつけた入力を処理部34へ出力する。
モニタ38は、処理部34からの画像、動画像、メッセージを受けつけ、それらを表示する表示部である。画面がタッチパネルである場合、モニタ38は、操作部36と一体的に構成される。マイク40は、通話の際に、ユーザからの音声を受けつけ、音声を音声信号に変換する。マイク40は、音声信号を処理部34へ出力する。スピーカ42は、通話の際に、処理部34からの音声信号を受けつけ、音声信号を音声として出力する。なお、スピーカ42は、警告音等を出力してもよい。記憶部44は、音声データ、最大の伝送遅延時間を記憶する。最大の伝送遅延時間については後述する。記憶部44への書込、記憶部44からの読出しは、処理部34によってなされる。制御部46は、端末装置10の動作を制御する。
操作部36のPTTボタンが押し下げられた場合、第1端末装置10aの取得部50は、複数の他の端末装置10のそれぞれとの伝送遅延時間のうち、最大の伝送遅延時間を取得する。ここで、伝送遅延時間は、第1端末装置10aから他の端末装置10への伝送遅延時間である。取得部50は、複数の他の端末装置10のそれぞれに対して、伝送遅延時間を測定するための測定用信号を音声データとは別に送信する。ここでは、取得部50が最大の伝送遅延時間を取得するための処理として、3つのパターンを説明するが、いずれかが実行されればよい。
図4(a)−(c)は、通信システム100のさらに別の動作概要を示す。ここで、「送話側」が第1端末装置10aに相当し、「受話側」が第2端末装置10bから第4端末装置10dのそれぞれに対応する。図4(a)は、1つ目のパターンを示す。送話側は、測定用信号として、送信時刻T1を送信する。中継サーバ14は送信時刻T1を中継する。受話側は、送信時刻T1を受信し、受信したときの現在時刻を取得する。受話側は、現在時刻から送信時刻T1を減算することによって、伝送遅延時間Tdを導出する。受話側は、伝送遅延時間Tdを送信する。中継サーバ14は、伝送遅延時間Tdを中継する。送話側は、伝送遅延時間Tdを応答として受信する。
前述のごとく、受話側は、第2端末装置10bから第4端末装置10dであるので、このような処理は、第2端末装置10bから第4端末装置10dのそれぞれに対してなされる。例えば、第1端末装置10aは、第2端末装置10bから第4端末装置10dのそれぞれに対して測定用信号を送信した後、第2端末装置10bから第4端末装置10dのそれぞれからの応答を受信する。第1端末装置10aの取得部50は、第2端末装置10bから第4端末装置10dのそれぞれから受信した伝送遅延時間Tdの中から、最大の伝送遅延時間を選択する。
図4(b)は、2つ目のパターンを示す。送話側は、測定用信号として、受信時刻を要求するための要求信号を送信する。その際、取得部50は、送信時刻T1を記憶する。中継サーバ14は要求信号を中継する。受話側は、要求信号を受信し、受信したときの現在時刻を受信時刻T2として測定する。受話側は、受信時刻T2を送信する。中継サーバ14は、受信時刻T2を中継する。送話側は、受信時刻T2を応答として受信する。第1端末装置10aの取得部50は、受信時刻T2から送信時刻T1を減算することによって、伝送遅延時間Tdを導出する。このような処理は、第2端末装置10bから第4端末装置10dのそれぞれに対してなされる。取得部50は、第2端末装置10bから第4端末装置10dのそれぞれに対して導出した伝送遅延時間Tdの中から、最大の伝送遅延時間を選択する。
図4(c)は、3つ目のパターンを示す。送話側は、測定用信号として、送信時刻T1を中継サーバ14に送信する。中継サーバ14は、送信時刻T1を受信すると、これをマルチキャスト送信する。受話側は、送信時刻T1を受信し、受信したときの現在時刻を取得する。受話側は、現在時刻から送信時刻T1を減算することによって、伝送遅延時間Tdを導出する。受話側は、伝送遅延時間Tdを送信する。中継サーバ14は、伝送遅延時間Tdを受信する。また、中継サーバ14は、第2端末装置10bから第4端末装置10dのそれぞれから受信した伝送遅延時間Tdの中から、最大の伝送遅延時間Tdmaxを選択する。中継サーバ14は、最大の伝送遅延時間Tdmaxを送信する。送話側は、最大の伝送遅延時間Tdmaxを応答として受信する。第1端末装置10aの取得部50は、受信した最大の伝送遅延時間Tdmaxを取得する。図1に戻る。取得部50は、最大の伝送遅延時間を記憶部44に記憶させる。
第1端末装置10aの処理部34は、操作部36のPTTボタンが押し下げられた状態において、マイク40から音声信号を受けつける。これは、送信対象となる音声データである。なお、音声データは、デジタル信号である。処理部34は、音声データに対する符号化処理を実行し、符号化処理を実行した音声信号(以下、これもまた「音声データ」という)を通信部32に出力する。通信部32は、第2端末装置10bから第4端末装置10dのそれぞれに音声データを送信する。この送信は、例えば、マルチキャスト送信に相当する。
第2端末装置10bから第4端末装置10dの通信部32は、第1端末装置10aからの音声データを受信する。処理部54は、受けつけた音声データを復号し、復号した音声データを音声信号としてスピーカ62から出力させる。
第1端末装置10aにおける操作部36のPTTボタンが解放されることによって、PTTが解除になる。設定部52は、記憶部44に記憶された最大の伝送遅延時間を取得する。設定部52は、最大の伝送遅延時間をもとに禁止期間を設定する。例えば、設定部52は最大の伝送遅延時間をそのまま禁止期間としてもよいし、最大の伝送遅延時間に一定の時間を加えることによって禁止期間としてもよい。
処理部34は、PTTを解除した場合、禁止期間タイマを開始する。処理部34は、禁止期間において操作部36のPTTボタンが押し下げられても、マイク40から新たな音声データを受けつけない。そのため、通信部32は、禁止期間にわたって、新たな音声データの送信を禁止する。なお、禁止期間において、モニタ38は、禁止期間であることを知らせるための画面を表示してもよい。禁止期間タイマが満了した場合、処理部34は、操作部36のPTTボタンの押し下げによる音声データを受付可能になり、通信部32は音声データを送信可能になる。その際、モニタ38は、禁止期間が終了したことを知らせるための画面を表示してもよい。
図5(a)−(d)は、通信システム100において第1端末装置10aのモニタ38が表示する画面の一例を示し、これは、禁止期間中に禁止期間であることを知らせるための画面の表示の一例に相当する。図5(a)は、第1端末装置10aの送信開始時(音声データ到達前)の表示を示す。この図においては第1端末装置10aの送話側端末装置名として「User0001」と、最大伝送遅延時間を有する受話側端末装置名とを表示する。ここでは、第2端末装置10bから第4端末装置10dの中で最大伝送遅延時間を有する端末装置である第2端末装置10b(ここでは第2端末装置10bまでの伝送遅延時間を5秒とする)を選択し、受話側端末装置名として「User0002」と表示する。第1端末装置10aのPTTボタンが押し下げられると送信が開始され、モニタ38上では第1端末装置10aの送話側端末装置名「User0001」と、第1端末装置10aからの音声データ送信開始後の経過時間A(1秒)と、第2端末装置10bの端末装置名「User0002」と、第2端末装置10bへの音声データ到達時点からの経過時間とした経過時間Bとを表示する(この時点では、受話側に音声データが到達していないとしているため経過時間Bを「−:−−」と表示する)。また同時に、送話側の通話状態が送話中であること(図5において「Calling」と表示する)も示される。
図示しないが、第1端末装置10aが音声データ送信開始後、経過時間Aが記憶部44に記憶された最大の伝送遅延時間(5秒)に達すると、第2端末装置10bに音声データが到達し、受信を開始したとして経過時間Bを0秒と表示する。図5(b)は、その後、経過時間Aが10秒に達した時点で第1端末装置10aが送話中の表示を示す。モニタ38上では経過時間Aを10秒として表示するとともに、第2端末装置10bが受信開始から5秒経過したとして経過時間Bを5秒と表示する。
次に、第1端末装置10aの音声データの送信終了時(禁止期間開始)の表示について図5(c)を用いて説明する。第1端末装置10aのPTTが解除されると、モニタ38上では第1端末装置10aの送話が終了したことを「Call End」として表示するとともに、経過時間A(15秒)の増加が止まる。その際の第2端末装置10bが音声データを受信してからの経過時間B(10秒)と、禁止期間であることの表示(図5において「Data sending. Wait a moment」と表示する)も示される。しかしながら、伝送の遅延があるためこの時点では最大伝送遅延時間を有する第2端末装置10bが音声データを受信し終えていない。そこで、記憶部44に記憶された最大の伝送遅延時間をもとに設定部52において禁止期間を設定する(ここでは最大の伝送遅延時間の5秒とする)。なお、禁止期間は、最大の伝送遅延時間以上の値であれば設定可能である。
図5(d)は、送話終了時(禁止期間中)の表示を示す。第1端末装置10aは、第1端末装置10aの送話終了後も第2端末装置10bが受信を続け、経過時間Bが第1端末装置10aの送話終了時の10秒から禁止期間として設定した5秒が経過した15秒に達した時点で受信を終了したものとみなす。この時点で、第2端末装置10bから第4端末装置10dまでの全ての端末装置が音声データの全ての受信を終了しているといえる。なお、禁止期間中には、第1端末装置10aのモニタ38上には、その期間を禁止期間としてその旨(図5において「Data sending. Wait a moment」と表示する)が示される。ここで経過時間Aは、第1端末装置10aから送信された音声データの時間長ということもできる。
さらに、ここでは禁止期間を最大の伝送遅延時間をもとに設定したが、送信終了時の経過時間Aと経過時間Bとの差分を禁止期間と設定してもよい。または、禁止期間を送信終了時から経過時間Bが第1端末装置10aの送話終了時の経過時間Aに達するまでの期間を禁止期間としてもよい。
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
以上の構成による通信システム100の動作を説明する。図6は、通信システム100による通信手順を示すシーケンス図である。これは前述の1つ目のパターンに相当する。第1端末装置10aにおいてPTTボタンが押し下げられる(S10)。第1端末装置10aは測定用信号を送信し(S12)、中継サーバ14は測定用信号を送信する(S14)。第2端末装置10bから第4端末装置10dは伝送遅延時間Tdを送信し(S16)、中継サーバ14は伝送遅延時間Tdを送信する(S18)。第1端末装置10aは音声データを送信し(S20)、中継サーバ14は音声データを送信する(S22)。第2端末装置10bから第4端末装置10dは音声データを受信する。
第1端末装置10aは音声データを送信し(S24)、中継サーバ14は音声データを送信する(S26)。第2端末装置10bから第4端末装置10dは音声データを受信する。第1端末装置10aは音声データを送信し(S28)、中継サーバ14は音声データを送信する(S30)。第2端末装置10bから第4端末装置10dは音声データを受信する。第1端末装置10aは、PTTを解除して、禁止期間タイマを開始する(S32)。第1端末装置10aにおいてPTTボタンが押し下げられる(S34)。第1端末装置10aはエラー応答を出力する(S36)。第1端末装置10aにおいてPTTボタンが押し下げられる(S38)。第1端末装置10aはエラー応答を出力する(S40)。第1端末装置10aは禁止期間タイマを終了する(S42)。
図7は、通信システム100による通信手順を示すフローチャートである。PTTボタンが押し下げられ(S100のY)、PTT押し下げ禁止フラグがオフであれば(S102のY)、通信部32はセッション要求を送信する(S104)。セッションが確立した場合(S106のY)、通信部32は測定用信号を送信し(S108)、伝送遅延時間を受信する(S110)。PTTが解除されなければ(S112のN)、通信部32は音声データを送信して(S114)、ステップ112に戻る。
PTTが解除された場合(S112のY)、伝送遅延時間があれば(S116のY)、処理部34はPTT押し下げ禁止フラグをオンにする(S118)。設定部52は禁止期間を設定し(S120)、処理部34は禁止期間タイマを開始する(S122)。モニタ38は禁止期間表示を開始する(S124)。禁止期間タイマが満了しなければ(S126のN)、処理部34は禁止期間タイマを更新して(S128)、ステップ126に戻る。禁止期間タイマが満了すれば(S126のY)、モニタ38は禁止期間表示を終了する(S130)。処理部34はPTT押し下げ禁止フラグをオフにする(S132)。
PTTボタンが押し下げられない場合(S100のN)、あるいはPTT押し下げ禁止フラグがオフでない場合(S102のN)、処理は終了される。セッションが確立しない場合(S106のN)、エラーが発生していれば(S134のY)、処理部34はエラー処理を実行して(S136)、処理は終了される。エラーが発生していなければ(S134のN)、通信部32はセッション要求を再送信し(S138)、ステップ106に戻る。伝送遅延時間がなければ(S116のN)、処理は終了される。
本実施例によれば、音声データの送信終了後、複数の他の端末装置のそれぞれとの伝送遅延時間のうちの最大の伝送遅延時間をもとにした禁止期間にわたって新たな音声データの送信を禁止するので、送話権を連続的に取得する状況を抑制できる。また、送話権を連続的に取得する状況が抑制されるので、送信機会を平等にできる。また、最大の伝送遅延時間をもとに禁止期間を設定するので、最大の伝送遅延時間を有する端末装置においても送信の機会を増加できる。また、音声データの送信終了後に禁止期間を設定するだけなので、簡易な処理によって、送信機会を平等にできる。また、第1端末装置から他の端末装置への伝送遅延時間を使用するので、伝送遅延時間の導出を容易にできる。また、測定用信号を音声データとは別に送信するので、音声データを送信するまでに伝送遅延時間を取得できる。
(実施例2)
次に、実施例2を説明する。本発明の実施例2も、実施例1と同様に、PoCにおいてグループ通話を実行するPoC端末装置に関する。実施例2に係るPoC端末装置は、実施例1と同様に、最大の伝送遅延時間をもとに禁止期間を設定する。しかしながら、禁止期間を設定するために使用する最大の伝送遅延時間の規定が、実施例1と実施例2とにおいて異なる。実施例2に係る通信システム100は、図1と同様のタイプである。ここでは、これまでとの差異を中心に説明する。
図8は、通信システム100の動作概要を示す。図8では、送話側として第1端末装置10aを示し、第1端末装置10aからの伝送遅延時間が最大の受話側として第2端末装置10bを示す。ここで、図8における第1伝送遅延時間Td1は、これまでの伝送遅延時間Tdに相当する。そのため、第2端末装置10bは、第1伝送遅延時間Td1が最大の端末装置10であるといえる。実施例2においては、第2端末装置10bから第1端末装置10aへの第2伝送遅延時間Td2も考慮する。第1伝送遅延時間Td1だけではなく、第2伝送遅延時間Td2も考慮する場合、禁止期間はさらに長くなる。また、第2端末装置10bにおいて、受信音声データの再生が終了してから、送信音声データの指示を入力するまでの時間、つまり応答するまでの時間はTmと示される。
図1の操作部36のPTTボタンが押し下げられた場合、第1端末装置10aの取得部50は、複数の他の端末装置10のそれぞれとの伝送遅延時間のうち、最大の伝送遅延時間を取得する。ここで、伝送遅延時間は、第1端末装置10aから他の端末装置10への第1伝送遅延時間と、他の端末装置10から第1端末装置10aへの第2伝送遅延時間との和である。取得部50は、複数の他の端末装置10のそれぞれに対して、伝送遅延時間を測定するための測定用信号を音声データとは別に送信する。ここでは、取得部50が最大の伝送遅延時間を取得するための処理として、4つのパターンを説明するが、いずれかが実行されればよい。
図9(a)−(d)は、通信システム100の別の動作概要を示す。ここでも、図4(a)−(c)と同様に、「送話側」が第1端末装置10aに相当し、「受話側」が第2端末装置10bから第4端末装置10dのそれぞれに対応する。図9(a)は、1つ目のパターンを示す。送話側は、測定用信号として、送信時刻T1を送信する。中継サーバ14は送信時刻T1を中継する。受話側は、送信時刻T1を受信し、受信したときの現在時刻を取得する。受話側は、現在時刻から送信時刻T1を減算することによって、第1伝送遅延時間Td1を導出する。受話側は、第1伝送遅延時間Td1と送信時刻T2を送信する。この送信時刻T2も測定用信号に相当する。中継サーバ14は、第1伝送遅延時間Td1と送信時刻T2を中継する。送話側は、第1伝送遅延時間Td1と送信時刻T2を応答として受信する。
送話側は、現在時刻から送信時刻T2を減算することによって、第2伝送遅延時間Td2を導出する。前述のごとく、受話側は、第2端末装置10bから第4端末装置10dであるので、このような処理は、第2端末装置10bから第4端末装置10dのそれぞれに対してなされる。第1端末装置10aの取得部50は、第2端末装置10bから第4端末装置10dのそれぞれに対する第1伝送遅延時間Td1と第2伝送遅延時間Td2の中から、最大の第1伝送遅延時間Td1maxと最大の第2伝送遅延時間Td2maxとを選択する。取得部50は、最大の第1伝送遅延時間Td1maxと最大の第2伝送遅延時間Td2maxとを加算することによって、伝送遅延時間Tdを導出する。
図9(b)は、2つ目のパターンを示す。送話側は、測定用信号として、送信時刻T1を送信する。中継サーバ14は送信時刻T1を中継する。受話側は、送信時刻T1を受信し、受信したときの現在時刻を取得する。受話側は、現在時刻から送信時刻T1を減算することによって、第1伝送遅延時間Td1を導出する。受話側は、第1伝送遅延時間Td1と送信時刻T2を送信する。
中継サーバ14は、第2端末装置10bから第4端末装置10dのそれぞれに対する第1伝送遅延時間Td1のうち、最大の第1伝送遅延時間Td1maxを選択する。また、中継サーバ14は、選択した最大の第1伝送遅延時間Td1maxを送信した端末装置10からの送信時刻T2をT2maxとして選択する。中継サーバ14は、Td1maxとT2maxとを送信する。送話側は、Td1maxとT2maxとを応答として受信する。送話側は、現在時刻から送信時刻T2maxを減算することによって、第2伝送遅延時間Td2を導出する。第1端末装置10aの取得部50は、最大の第1伝送遅延時間Td1maxと第2伝送遅延時間Td2とを加算することによって、伝送遅延時間Tdを導出する。
図9(c)は、3つ目のパターンを示す。送話側は、測定用信号として、送信時刻T1を送信する。中継サーバ14は、現在時刻から送信時刻T1を減算することによって、Td1aを導出する。中継サーバ14は、送信時刻T2を送信する。受話側は、送信時刻T2を受信し、受信したときの現在時刻を取得する。受話側は、現在時刻から送信時刻T2を減算することによって、Td1bを導出する。受話側は、Td1bと送信時刻T3を送信する。
中継サーバ14は、現在時刻から送信時刻T3を減算することによって、Td2bを導出する。中継サーバ14は、第2端末装置10bから第4端末装置10dのそれぞれに対するTd1bのうち、最大のTd1bmaxを選択するとともに、第2端末装置10bから第4端末装置10dのそれぞれに対するTd2bのうち、最大のTd2bmaxを選択する。中継サーバ14は、Td1a、Td1bmax、Td2bmax、送信時刻T4を送信する。送話側は、Td1a、Td1bmax、Td2bmax、送信時刻T4を応答として受信する。第1端末装置10aの取得部50は、現在時刻から送信時刻T4を減算することによって、Td2aを導出する。取得部50は、Td1a、Td1bmax、Td2bmax、Td2aを加算することによって、伝送遅延時間Tdを導出する。
図9(d)は、4つ目のパターンを示す。送話側は、測定用信号として、送信時刻T1を送信する。中継サーバ14は、現在時刻から送信時刻T1を減算することによって、Td1aを導出する。中継サーバ14は、送信時刻T2を送信する。受話側は、送信時刻T2を受信し、受信したときの現在時刻を取得する。受話側は、現在時刻から送信時刻T2を減算することによって、Td1bを導出する。受話側は、Td1bと送信時刻T3を送信する。
中継サーバ14は、現在時刻から送信時刻T3を減算することによって、Td2bを導出する。中継サーバ14は、Td1a、Td1b、Td2b、送信時刻T4を送信する。送話側は、Td1a、Td1b、Td2b、送信時刻T4を応答として受信する。第1端末装置10aの取得部50は、現在時刻から送信時刻T4を減算することによって、Td2aを導出する。取得部50は、第2端末装置10bから第4端末装置10dのそれぞれに対するTd1bのうち、最大のTd1bmaxを選択するとともに、第2端末装置10bから第4端末装置10dのそれぞれに対するTd2bのうち、最大のTd2bmaxを選択する。取得部50は、Td1a、Td1bmax、Td2bmax、Td2aを加算することによって、伝送遅延時間Tdを導出する。
図10は、通信システム100による通信手順を示すシーケンス図である。これは前述の1つ目のパターンに相当する。第1端末装置10aにおいてPTTボタンが押し下げられる(S200)。第1端末装置10aは測定用信号を送信し(S202)、中継サーバ14は測定用信号を送信する(S204)。第2端末装置10bから第4端末装置10dは第1伝送遅延時間Td1と測定用信号を送信し(S206)、中継サーバ14は第1伝送遅延時間Td1と測定用信号を送信する(S208)。第1端末装置10aは音声データを送信し(S210)、中継サーバ14は音声データを送信する(S212)。第2端末装置10bから第4端末装置10dは音声データを受信する。
第1端末装置10aは音声データを送信し(S214)、中継サーバ14は音声データを送信する(S216)。第2端末装置10bから第4端末装置10dは音声データを受信する。第1端末装置10aは音声データを送信し(S218)、中継サーバ14は音声データを送信する(S220)。第2端末装置10bから第4端末装置10dは音声データを受信する。第1端末装置10aは、PTTを解除して、禁止期間タイマを開始する(S222)。第1端末装置10aにおいてPTTボタンが押し下げられる(S224)。第1端末装置10aはエラー応答を出力する(S226)。第1端末装置10aにおいてPTTボタンが押し下げられる(S228)。第1端末装置10aはエラー応答を出力する(S230)。第1端末装置10aは禁止期間タイマを終了する(S232)。
本実施例によれば、第1端末装置から他の端末装置への第1伝送遅延時間と、他の端末装置から第1端末装置への第2伝送遅延時間との和を伝送遅延時間とするので、送信機会をより平等にするような禁止期間を設定できる。
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
本実施例1、2において、通信システム100は、PoC技術を用いた業務用無線を使用している。しかしながらこれに限らず例えば、PoC技術による業務用無線以外の無線通信システムが使用されてもよい。本実施例によれば、構成の自由度を向上できる。
本実施例1、2において、取得部50は、測定用信号は音声データとは別に送信している。しかしながらこれに限らず例えば、取得部50は、複数の他の端末装置10のそれぞれに対して、測定用信号を音声データに付随させて送信してもよい。本変形例によれば、測定用信号を音声データに付随させるので、測定用信号の送信頻度を向上できる。また、測定用信号の送信頻度が向上するので、禁止期間の設定精度を向上できる。