JP2018132180A - ロボット用転がり軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】単位時間当りの起動・停止動作の切換えの回数が多い場合であっても、簡易な構造で低トルクかつ小発熱を実現することができるロボット用転がり軸受を提供する。【解決手段】産業用ロボットの回転部位を回転自在に支持するロボット用の転がり軸受1は、軌道輪である内輪2および外輪3と、内輪2および外輪3間に介在する複数の転動体4と、転動体4を保持する保持器5と、転動体4の周囲に封入されるグリースなどの潤滑剤とを有し、内輪2、外輪3、および保持器5から選ばれる少なくとも1つの部材において、該部材の潤滑剤と接触する表面に固定された複数の繊維からなる植毛体6を有し、該繊維の先端部が転動体4の表面に接触している。【選択図】図1
Description
本発明はロボット用転がり軸受に関し、特に産業用ロボットの作動部位(アーム関節部など)に用いられる転がり軸受に関する。
自動車などの工業製品の製造ラインには、組み立て、溶接、塗装などのさまざまな産業用ロボットが用いられている。生産性の向上を目的としたタクトタイムの短縮のため、ロボットの運動速度が高められる傾向にある。ロボットの作動は連続回転ではなく、断続的な作動である。この作動速度を速めることは、ロボットアームの関節部などの回転部位に用いられる転がり軸受にとっては、単位時間当りの停止−起動−運転−停止動作の切換えの回数が増加し、その都度転がり軸受に加えられる加速度や減速度が大きくなり、それにともない軸受に生じるすべりが大きくなってきている。
従来、上記使用条件に対する寿命向上などの目的で、ロボット用転がり軸受を潤滑剤の面から改善する技術が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1では、ロボット用転がり軸受に封入するグリースの添加剤としてモリブデン酸金属塩を配合することで、転走面表面の早期剥離などを防止している。
また、ロボット用転がり軸受では、低トルクかつ小発熱が望まれており、これに対応するものとして所定構造のロボットアーム関節部用軸受装置が提案されている(特許文献2参照)。特許文献2では、ロボットアームの関節部に組み込まれる転がり軸受において、軸方向断面幅と半径方向断面高さとの断面寸法比を所定範囲にすることで、内外輪の変形を抑え、トルクや発熱の増大を防止している。
しかしながら、特許文献2のような構造を用いる場合であっても、グリースなどの潤滑剤の撹拌を防ぐことができず、トルクが増加して発熱する可能性を排除できない。特にロボット用軸受では、断続的な運転を行なうため、始動時のトルクが停止時のトルクより高くなり、短時間で起動毎にトルクの増減が繰り返される(トルクスパイク)。トルクスパイクは、ロボットの制御性にも悪影響を及ぼす。長寿命、メンテナンス頻度を少なくするなどの目的で潤滑剤の封入量を多くする場合には、顕著にこの問題が起こり得る。
また、潤滑剤の撹拌を防止するために、保持器や内外輪に特殊形状の凹部などを設ける場合では、製造コストが高くなる。このため、より簡易な構成によりロボット用軸受特有の上記トルクスパイクなどを防止することが望まれる。
本発明はこのような問題に対処するためになされたものであり、単位時間当りの起動・停止動作の切換えの回数が多い場合であっても、簡易な構造で低トルクかつ小発熱を実現することができるロボット用転がり軸受を提供することを目的とする。
本発明のロボット用転がり軸受は、産業用ロボットの回転部位を回転自在に支持するロボット用転がり軸受であって、該転がり軸受は、軌道輪である内輪および外輪と、上記内輪および外輪間に介在する複数の転動体と、上記転動体を保持する保持器と、上記転動体の周囲に封入される潤滑剤とを有し、上記内輪、上記外輪、および上記保持器から選ばれる少なくとも1つの部材において、該部材の上記潤滑剤と接触する表面に固定された複数の繊維からなる植毛体を有し、該繊維の先端部が上記転動体の表面に接触していることを特徴とする。
上記植毛体が、上記保持器の内径面および外径面から選ばれる少なくとも一方の面に固定されていることを特徴とする。特に、上記植毛体は、上記保持器の内径面および外径面から選ばれる少なくとも一方の面において、上記軌道輪の非軌道部と対向する領域を除いた部分に固定されていることを特徴とする。
上記植毛体が、上記軌道輪の軌道面に隣接する肩部に設けられていることを特徴とする。
上記潤滑剤がグリースであり、該グリースの封入量が、軸受内部の静止空間体積の80%をこえる体積比率となる量であることを特徴とする。ここで「静止空間体積」とは、転動体と保持器が回転してもグリースが静止できる空間(軸受回転時に転動体および保持器が通過しない空間)の体積である。
本発明のロボット用転がり軸受は、産業用ロボットの回転部位を回転自在に支持する軸受であり、軌道輪である内輪および外輪と、内輪および外輪間に介在する複数の転動体と、転動体を保持する保持器と、転動体の周囲に封入される潤滑剤とを有し、内輪、外輪、および保持器から選ばれる少なくとも1つの部材において、該部材の潤滑剤と接触する表面に固定された複数の繊維からなる植毛体を有し、該繊維の先端部が転動体の表面に接触しているので、植毛体がグリースなどを保持(キャッチ)し、転動体上に過多なグリースなどが供給されることを防止でき、かつ、繊維先端部から転動体に安定して油を供給できる。この結果、潤滑性に優れるとともにグリースなどの撹拌が抑制され、低トルクかつ小発熱となる。特に、単位時間当りの起動・停止動作の切換えの回数が多い場合であっても、トルクスパイクを低減でき、ロボットの制御性の向上が期待できる。さらに、保持器などの部材は既存の製品を利用しつつ、これに植毛体を設けるのみで上記効果が得られる。
また、このような植毛体を保持器の内外径面に設けて転動体に一部接触させつつ、軌道輪の非軌道部と対向する領域には設けないことで、上記効果を備えつつ、植毛体と軌道輪との接触によるトルクの増加も抑えることができる。
また、植毛体を軌道輪の軌道面(転走面)に隣接する肩部に設けることで、転動体の表面に植毛体の一部を接触させやすい。また、植毛体から滲み出した潤滑剤が肩部を通じて軌道面に一部供給されるので、軌道面における潤滑状態に優れる。
上記潤滑剤がグリースであり、該グリースの封入量が、軸受内部の静止空間体積の80%をこえる体積比率となる量であるので、長寿命であり、産業用ロボットにおけるメンテナンス頻度を少なくすることができる。また、グリース封入量がこのような範囲であっても、上記植毛体により、グリースなどの撹拌が抑制され低トルクかつ小発熱を維持できる。
本発明のロボット用転がり軸受は、産業用ロボットの回転部位を回転自在に支持する軸受である。特に、この転がり軸受は、単位時間当りの停止−起動−運転−停止動作の切換えの回数の多い箇所、例えば産業用ロボットのアームの関節部などに用いられる。
本発明のロボット用転がり軸受の一例を図1に基づき説明する。図1は、本発明の転がり軸受として、冠形保持器を組み込んだ深溝玉軸受の一部断面図であり、図2はこの冠形保持器の一部斜視図である。図1に示すように、転がり軸受1は、外周面に軌道面2aを有する内輪2と、内周面に軌道面3aを有する外輪3とが同心に配置される。内輪の軌道面2aと外輪の軌道面3aとの間に複数個の転動体4が介在して配置される。この複数個の転動体4が、冠形の保持器5により保持される。また、転がり軸受1は、内・外輪の軸方向両端開口部に設けられた環状のシール部材11を備え、内輪2と外輪3と保持器5とシール部材11とで構成される軸受内空間に封入されたグリース12によって潤滑される。この実施形態では、保持器5の内径面および外径面に植毛体6が接着固定されている。保持器5は転動体案内形式であり、その内外径面は軌道輪(内輪と外輪)と接触しない面である。
図2に基づいてこの保持器5を説明する。図2(a)はこの保持器の一部斜視図であり、図2(b)はこの保持器の展開図である。図2(a)に示すように、冠形の保持器5は、環状の本体7上面に周方向に一定ピッチをおいて対向一対の保持爪8を形成し、その対向する各保持爪8を相互に接近する方向にわん曲させるとともに、その保持爪8間に転動体である玉を保持するポケット9を形成したものである。隣接するポケット9の縁に形成された相互に隣接する保持爪8の背面相互間に、保持爪8の立ち上がり基準面となる平坦部10が形成される。該図に示すように、植毛体6は、保持器5の外径面と保持器5の内径面に接着固定されている。植毛体6は、ポケット9のエッジ部(本体および保持爪の内外径面とポケットとの境界部)に僅かにはみ出す形で設けられており、少なくとも一部(端部など)がポケット9内の転動体と接触している。
保持器5の内外径面の表面に、植毛体6を設けた構造とすることで、該部分にグリースが保持され、グリースの撹拌およびせん断や、転動体上に過多なグリースが供給されることを防止でき、トルクを低減できる。また平坦部10にも植毛体6を形成することができる。この場合、平坦部10の部分にもグリースを保持しやすく、更なるトルク低減が図れる。
また、図2に示すように、保持器5は、内輪の軌道面または外輪の軌道面に近接する領域5aと、内輪の肩部または外輪の肩部などの非軌道部(非軌道面)に近接する領域5bとを有する。この実施形態では、保持器5の内径面において、内輪の軌道面に近接する領域5aに植毛体6が形成され、軌道輪の非軌道部である内輪の肩部に対向する領域5bには植毛体6が形成されていない。また、保持器5の外径面においても同様に、外輪の軌道面に近接する領域に植毛体6が形成され、外輪の肩部に対向する領域には植毛体6が形成されていない。
図2に示すように、内外輪肩部に対向する領域5bは、本体7のポケット9の非開口側に位置し、軸方向に一定範囲を占めて円周方向に連続した領域であり、ポケット9に一部かかる範囲の領域である。領域5bに植毛体を形成すると、この植毛体と内外輪肩部とが摺接する場合がある。この領域5bに植毛体を設けないことで、植毛体と内外輪との接触によるトルクの増加などを防止できる。
植毛体は、繊維(短繊維)を植毛して形成される。植毛方法としては、静電植毛や静電吹き付け植毛があり、公知の方法を採用できる。静電植毛は、接着剤を塗布した基材(軸受構成部材)を対電極とし、高電圧電極により静電界を作り、その静電吸引力で短繊維を飛翔させ接着剤を塗布した形成部に立毛させる方法である。静電吹き付け植毛は、この静電吸引力に加え、短繊維をエアーで強制的に飛ばしながら接着剤を塗布した形成部に植毛する方法である。この方法では、静電吸引力により短繊維の一方の端面から接着剤に突き刺さる際、エアーでその繊維が基材表面に対して若干傾き固定される。静電植毛の場合と比べ、一本の短繊維が広い範囲の基材表面を覆うため、基材表面の短繊維の本数が減少し、密度が下がる。なお、いずれの方法においても植毛後に乾燥工程・仕上げ工程などを行なう。
植毛に用いる短繊維としては、植毛用短繊維として使用可能であれば特に限定されず、例えば、(1)ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ナイロンなどのポリアミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンテフタレートなどのポリエステル樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル、ビニロンなどの合成樹脂繊維、(2)カーボン繊維、グラスファイバーなどの無機繊維、(3)レーヨン、アセテートなどの再生繊維や、綿、絹、麻、羊毛などの天然繊維が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記の繊維の中でも、油による膨潤や溶解などが生じにくく化学的に安定であり、均質な繊維を多量に生産することができ、安価に入手することができるため、合成樹脂の短繊維を用いることが好ましい。繊維(短繊維)の形状としては、植毛体の形成箇所において、軸受機能に悪影響を与えるような他部材との干渉がない形状であれば特に限定されない。例えば、長さ0.5〜2.0mm、太さ0.5〜50デシテックスのものが好ましく、植毛体の短繊維の密度としては、植毛した面積あたりに繊維の占める割合が1〜40%が好ましい。低トルク性を重視する場合には、上記割合が1〜5%程度がより好ましい。植毛方法として静電吹き付け植毛を採用することで、上記割合1〜5%程度を達成でき、転動体との接触時にトルクを増加させにくくなる。その他、短繊維の断面形状は、円形や多角形状がある。多角形状断面の短繊維を利用することで、円形断面の短繊維よりも大きな表面積とすることができ、グリースや油をより保持しやすくなる
また、密度の異なる部分を組み合わせた植毛体としてもよい。例えば、転動体との接触部となるエッジ部などにおいては、上記割合を小さく(1〜5%)し、それ以外の部分でなる保持器内外径面などにおいては、上記割合を大きく(10〜40%)することが挙げられる。これにより、撹拌抵抗の増加を抑えながらグリースなどを多く保持しつつ、植毛体の接触によるトルクの増加も抑えることができる。
接着固定に用いる接着剤としては、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂などを主成分とする接着剤が挙げられる。例えば、ウレタン樹脂溶剤系接着剤、エポキシ樹脂溶剤系接着剤、酢酸ビニル樹脂溶剤系接着剤、アクリル樹脂系エマルジョン接着剤、アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体系エマルジョン接着剤、酢酸ビニル系エマルジョン接着剤、ウレタン樹脂系エマルジョン接着剤、エポキシ樹脂系エマルジョン接着剤、ポリエステル系エマルジョン接着剤、エチレン−酢酸ビニル共重合体系接着剤などが挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
図1および図2に示す例は冠形保持器であるが、本発明のロボット用転がり軸受では、波形保持器、玉用保持器、ころ用保持器などの保持器に植毛体を設ける形態としてもよい。また、保持器の材質については、金属材料や樹脂材料など、任意の材料を採用できる。図2に示す冠形保持器などは樹脂製である。例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ナイロン66樹脂、ナイロン46樹脂などのポリアミド樹脂を樹脂母材とし、炭素繊維、ガラス繊維などの強化繊維と、他の添加剤を配合した樹脂組成物を用いて、射出成形により製造される。
本発明のロボット用転がり軸受の他の例を図3に基づき説明する。図3は、深溝玉軸受の一部断面図である。図3に示す例では、転がり軸受1’の内輪2の肩部2bおよび外輪3の肩部3bに、それぞれ植毛体6が形成されている。植毛体6は、その繊維の先端部のみを転動体4の表面に接触させている。軌道面近傍の肩部に植毛体を設けることで、該肩部にグリースなどが保持されてその撹拌が抑制されるとともに、植毛体から滲み出した潤滑剤が肩部を通じて軌道面に供給されやすくなる。
また、植毛体は、保持器や軌道輪以外に、例えばシール部材の表面などに設けてもよい。また、これらを適宜組み合わせた形態とできる。いずれの形態においても、植毛体の少なくとも一部は、転動体と接触してグリースや油を供給できる位置に設ける。
本発明のロボット用転がり軸受は、上述のとおり、潤滑剤(潤滑油またはグリース)で潤滑される。これらの潤滑剤は内・外輪間の空間内に供給・封入され、転走面などに介在して潤滑がなされる。潤滑油としては、通常、転がり軸受に用いられるものであれば特に制限なく用いることができる。ロボット用転がり軸受では低トルク化を要求されることから、例えば、ポリオールエステル油、リン酸エステル油、ジエステル油などのエステル油が好適に使用できる。
また、潤滑剤としてグリースを使用する場合、グリースを構成する基油としては上記の潤滑油などが挙げられる。また、グリースを構成する増ちょう剤としては、通常、転がり軸受に用いられるものであれば特に制限なく用いることができる。例えば、アルミニウム石けん、リチウム石けん、ナトリウム石けん、複合リチウム石けん、複合カルシウム石けん、複合アルミニウム石けんなどの金属石けん系増ちょう剤やウレア系化合物が使用できる。その他、添加剤として、極圧剤、酸化防止剤、摩耗抑制剤、防錆剤、粘度指数向上剤、固体潤滑剤、油性剤などを適宜配合してもよい。
グリースの封入量は、所望の潤滑特性を確保できる範囲であれば特に限定されないが、軸受内空間における静止空間体積の80%(体積比率)をこえる量とすることが好ましい。本発明では所定の植毛体の配置により、グリースなどの撹拌を防止して、せん断抵抗を低減できるため、グリース封入量を上記のような多めの範囲としながらもトルクの低減が図れる。
以上、各図などに基づき本発明の実施形態を説明したが、本発明のロボット用転がり軸受はこれらに限定されるものではない。例えば、アンギュラ玉軸受、スラスト玉軸受、円筒ころ軸受、針状ころ軸受、スラスト円筒ころ軸受、スラスト針状ころ軸受、円すいころ軸受、スラスト円すいころ軸受、自動調心玉軸受、自動調心ころ軸受、スラスト自動調心ころ軸受などの任意の転がり軸受に適用できる。また、これらの転がり軸受に対して、シール部材(シールド板)の有無は問わず適用できる。
実施例および比較例
6204転がり軸受(深溝玉軸受)に使用可能な図2の形状の樹脂製冠形保持器を射出成形により製造した。樹脂材質は、ポリアミド66樹脂(ガラス繊維25体積%配合)である。実施例は、この保持器の図2に示す位置に、それぞれ接着剤を塗布し、静電植毛によりポリアミド66樹脂の短繊維(繊維長0.8mm、太さ3.3デシテックス)からなる植毛体を形成した。ポケットのエッジ部の植毛体は、繊維先端がポケット空間にはみ出して転動体と接触する状態であった。この保持器を6204転がり軸受(深溝玉軸受)に組み込み、軸受内空間にグリース(リチウム石けん+エステル油)を静止空間体積比で90体積%封入し、シールド板で封止して試験軸受とした。得られた試験軸受を下記のトルク測定試験に供し、トルクの経時変化を調べた。また、比較例は、植毛体を形成しない以外は実施例と同じ試験軸受を用意し、実施例と同様に下記のトルク測定試験に供し、トルクの経時変化を調べた。
6204転がり軸受(深溝玉軸受)に使用可能な図2の形状の樹脂製冠形保持器を射出成形により製造した。樹脂材質は、ポリアミド66樹脂(ガラス繊維25体積%配合)である。実施例は、この保持器の図2に示す位置に、それぞれ接着剤を塗布し、静電植毛によりポリアミド66樹脂の短繊維(繊維長0.8mm、太さ3.3デシテックス)からなる植毛体を形成した。ポケットのエッジ部の植毛体は、繊維先端がポケット空間にはみ出して転動体と接触する状態であった。この保持器を6204転がり軸受(深溝玉軸受)に組み込み、軸受内空間にグリース(リチウム石けん+エステル油)を静止空間体積比で90体積%封入し、シールド板で封止して試験軸受とした。得られた試験軸受を下記のトルク測定試験に供し、トルクの経時変化を調べた。また、比較例は、植毛体を形成しない以外は実施例と同じ試験軸受を用意し、実施例と同様に下記のトルク測定試験に供し、トルクの経時変化を調べた。
<トルク測定試験>
試験軸受を固定し、起動(回転数3600rpm)と停止を繰り返し、室温(25℃)雰囲気、外輪にアキシャル荷重20Nを負荷してロードセルで拘束し、内輪回転として、軸受で発生するトルク(N・mm)を算出した。
試験軸受を固定し、起動(回転数3600rpm)と停止を繰り返し、室温(25℃)雰囲気、外輪にアキシャル荷重20Nを負荷してロードセルで拘束し、内輪回転として、軸受で発生するトルク(N・mm)を算出した。
図4にトルク測定試験の結果をそれぞれ示す。なお、図4において、横軸は運転時間(時間(分))を縦軸はトルク(N・mm)をそれぞれ示す。
図4に示すように、比較例では、始動時のトルクが停止前のトルクより大幅に高くなり、トルクスパイクが見られるのに対して、実施例では、再始動時も低トルクを低く維持することができた。これは、実施例の軸受では、保持器の植毛体においてグリースを保持(キャッチ)し、グリースの撹拌を防止できているためと考えられる。
本発明のロボット用転がり軸受は、単位時間当りの起動・停止動作の切換えの回数が多い場合であっても、低トルクかつ小発熱を実現することができるので、産業ロボットのアーム関節部などの作動部位に用いられるロボット用転がり軸受として好適に利用できる。
1 転がり軸受(ロボット用転がり軸受)
2 内輪
3 外輪
4 転動体
5 保持器
6 植毛体
7 保持器本体
8 保持爪
9 ポケット
10 平坦部
11 シール部材
12 グリース
2 内輪
3 外輪
4 転動体
5 保持器
6 植毛体
7 保持器本体
8 保持爪
9 ポケット
10 平坦部
11 シール部材
12 グリース
Claims (5)
- 産業用ロボットの回転部位を回転自在に支持するロボット用転がり軸受であって、該転がり軸受は、軌道輪である内輪および外輪と、前記内輪および外輪間に介在する複数の転動体と、前記転動体を保持する保持器と、前記転動体の周囲に封入される潤滑剤とを有し、
前記内輪、前記外輪、および前記保持器から選ばれる少なくとも1つの部材において、該部材の前記潤滑剤と接触する表面に固定された複数の繊維からなる植毛体を有し、該繊維の先端部が前記転動体の表面に接触していることを特徴とするロボット用転がり軸受。 - 前記植毛体が、前記保持器の内径面および外径面から選ばれる少なくとも一方の面に固定されていることを特徴とする請求項1記載のロボット用転がり軸受。
- 前記植毛体は、前記保持器の内径面および外径面から選ばれる少なくとも一方の面において、前記軌道輪の非軌道部と対向する領域を除いた部分に固定されていることを特徴とする請求項2記載のロボット用転がり軸受。
- 前記植毛体が、前記軌道輪の軌道面に隣接する肩部に設けられていることを特徴とする請求項1記載のロボット用転がり軸受。
- 前記潤滑剤がグリースであり、該グリースの封入量が、軸受内部の静止空間体積の80%をこえる体積比率となる量であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項記載のロボット用転がり軸受。
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JP2017028480A JP2018132180A (ja) | 2017-02-17 | 2017-02-17 | ロボット用転がり軸受 |
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