以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。本発明は、建物の外壁に用いるダブルスキン構造301であって、本発明に係るダブルスキン構造301においては、遮音ルーバー1が配されることを特徴としている。そこで、まず、本発明に用いる遮音ルーバー1が採用する騒音低減方法の原理について説明する。図1は本発明に用いる遮音ルーバー1の原理を説明する図である。
図1(A)はルーバーの斜視図である。ルーバーは、ルーバー羽根部材3が複数連続して配置されて構成されている。本例は、ルーバー羽根部材3が鉛直方向に所定の空間を空けて配置される場合を示しているが、ルーバー羽根部材3を水平方向に配列してルーバーを構成するようにしてもよい。
ルーバー羽根部材3は2つの主面4及び主面5を有しており、一のルーバー羽根部材3の主面4(主面5)と、それと隣り合うルーバー羽根部材3の主面5(主面4)との間の空間が、空気の流路或いは光の光路或いは音の伝搬路となる。このような空間を伝搬路100と称することとする。
ここで、図1(B)は、上記のような伝搬路100における内側の空間のみを抜き出して示す図である。ルーバー羽根部材3の間の空間である伝搬路100を騒音が伝搬するとき、伝搬路100の寸法断面(騒音伝搬方向に対して垂直な面)が騒音の波長に比べて半分以下の場合、騒音は当該空間内を平面波として一次元的に伝搬する。
以下、本明細書中の実施形態に係る伝搬路100においては、上流側に騒音源が存在し、騒音源からの騒音が下流側に伝搬されることを例として説明を行う。また、伝搬路100の長手方向は水平方向に設置されることを前提として説明するが、伝搬路100の設置方法はこのような例に限られない。
本発明に用いる遮音ルーバー1の伝搬路100においては、伝搬路100の上下で対向する2つの主面4及び主面5は、音響的に“ソフト”な状態であることを想定している。図1(B)に示すように、伝搬路100で対向する面が音響的に“ソフト”な状態、すなわち、主面4及び主面5の表面における音響インピーダンス比Zが0であるとき、上流側から伝搬してきた騒音は上流側へ反射され下流側へ伝搬しないことが知られている。
なお、本実施形態では、主面4及び主面5の表面における音響インピーダンス比Zが0である対向する2つの面が、鉛直方向で対向する例に基づいて説明を行っているが、表面における音響インピーダンス比Zが0である対向する2つの壁面が、水平方向で対向するものであってもよい。
これまでの技術(例えば、特許第3831263号公報や特許第5454369号公報に記載の技術)は、音響管の管長が1/4波長と等しくなる周波数及びその奇数倍の周波数で、当該音響管の管口での音響インピーダンス比Zが0となることを利用している。
一方、本発明に用いる遮音ルーバー1では、図2に示すような、背後に密閉された空洞を持つスリット構造による共鳴現象が生じる共鳴器10を利用する。図2(A)は共鳴器10の斜視図である。また、図2(B)は、図2(A)の共鳴器10のスリット状開口部50の長手方向を垂直で切って見た断面図である。
図2に示すように、本発明に用いる遮音ルーバー1に用いる共鳴器10は、基本的に、内側の空間が中空である四角柱状の筐体40から構成されている。共鳴器10を構成する筐体40の一面には、長手状のスリット状開口部50と、このスリット状開口部50の両側に配され、共鳴器10の内側の空間に延在する隔壁部60と、を有することを特徴としている。ここで、共鳴器10の各寸法は図2(B)に示す記号で表す。なお、スリット状開口部50が構成されている筐体40の一面と、隔壁部60とは互いに直交している。
共鳴器10の各寸法が波長に対して十分に小さい場合、スリット状開口部50における音響インピーダンス比Zは次式(1)で求めることができる。
ただし、fは騒音の周波数、cは音速、ρは媒質(空気)密度を表す。また、Vnは、スリット状開口部50と隔壁部60とで囲まれた、図2(B)の斜線部以外の空間の体積で、開口端補正を考慮して次式(2)で計算される。なお、式(2)における[ ]内の第2項が、開口端補正に関連する項である。また、図2(B)で斜線部の空間は、共鳴器として機能する共鳴器10の空気層に相当する。
また、Vは共鳴器10の空洞部の体積(空気層の体積)で、次式(3)で計算される。
また、Sは、スリット状開口部50(スリット開口)の面積で、次式(4)で計算される。
式(1)の右辺第1項のrは、共鳴器として機能する共鳴器10の隔壁部60表面と空気の間に生じる摩擦などの音響抵抗である。隔壁部60を金属など表面が平滑な材料で構成する場合、音響抵抗rは極めて小さな値となり、次式を満足する共鳴周波数fにおいてスリット状開口部50の開口における音響インピーダンス比Zがほぼ0となる。
このような共鳴器として機能する、2つの共鳴器10を、図3に示すように、伝搬路100の上下の内壁105に沿って対向配置すると、上記の周波数fにおいては対向するスリット部が音響的に“ソフト”な状態となり、上流側から伝搬してきた周波数fの騒音は上流側へ反射され下流側に伝搬しない。図3は本発明に用いる遮音ルーバー1を示す図であり、本発明に用いる遮音ルーバー1を、伝搬路100の長手方向(或いは、スリット状開口部50の長手方向)を垂直に切って見た断面図である。
図3に示すような伝搬路100の遮音ルーバー1によれば、共鳴器10の共鳴周波数において、対向した共鳴器10のスリット状開口部50における音響インピーダンス比がほぼ0となり、上流側から入射した騒音は上流側へ反射され下流側に伝搬することがない。
本発明の実施形態に示す遮音ルーバー1においては、共鳴器10はルーバー羽根部材3に埋設されるようにして設けられているが、必ずしも、このようにする必要はなく、共鳴器10は主面4、5に装着するようにしてもよい。
また、本実施形態に示す遮音ルーバー1においては、遮音ルーバー1を構成するルーバー羽根部材3の形態は1種類のみで、この同一形態のルーバー羽根部材3を複数配列することで遮音ルーバー1を構成するようにしているが、ルーバー羽根部材3の主面4、5の表面を、共鳴器10によって音響的に“ソフト”な状態とするのであれば、このような態様に限定されるものではない。
本実施形態に示す遮音ルーバー1では、一つの伝搬路100に、対向する共鳴器10が一対設けられるようにされているが、例えば2つ以上の共鳴器10が伝搬路100に設けられるような構成としてもよい。
なお、図1乃至図3に基づいて説明した遮音ルーバー1はさらなる実施形態を有するものであり、さらなる実施形態については、本願発明者による特願2016−188009号の記載を参照することで、本明細書中に援用するものである。
上記のような遮音ルーバー1がダブルスキン構造301に適用されることにより、本発明が構成される。図4は本発明の実施形態に係るダブルスキン構造301を示す図である。 図4(A)は本発明の実施形態に係るダブルスキン構造301の斜視図であり、 図4(B)は図4(A)の点線で囲った部分の拡大断面図である。
ダブルスキン構造301は、外側部材304と、この外側部材304の屋内側に所定間隔離れて設けられた内側部材305と、からなる建物の外壁部を構成するものである。外側部材304と内側部材305との間に形成される空間を空気層と称することする。また、ダブルスキン構造301の鉛直方向の端部を開口端部307と称する。
夏季においては、このようなダブルスキン構造301の空気層には、開口端部307から空気を流入させて、不図示の上方開口部から排出することで、日射の影響を緩和したり、室内温熱環境を改善したりする。しかし一方で、開口端部307が遮音欠損となり、開口端部307が無い場合と比較して、ダブルスキン構造301を有する外装壁の遮音性能は大きく低下してしまう。
そこで、本発明に係るダブルスキン構造301においては、空気層における良好な通気性を阻害することなく、騒音低減を図るために、上記のような遮音ルーバー1を外側部材304と内側部材305との間に配するようにしている。本実施形態では、ダブルスキン構造301の開口端部307に遮音ルーバー1を配しているが、遮音ルーバー1を設ける鉛直方向の高さがこれにのみ限定されるものではない。
以上のような、本発明に係るダブルスキン構造301においては、音響インピーダンス比を0とする共鳴器10が設けられた遮音ルーバー1が外側部材304と内側部材305との間に配される。遮音ルーバー1は、ルーバー羽根部材3間の空隙を通気経路として確保しつつ、その通気経路を騒音が伝搬することを防止する機能を有する。この機能により、ダブルスキン構造301の開口端部307から空気層内へ屋外騒音が伝搬することを防止する。その結果、本発明に係るダブルスキン構造301によれば、空気層内への外気導入と空気の流通は維持しつつも、開口端部307が遮音欠損となることを防ぎ、ダブルスキン構造301の遮音性能を向上することができる。
また、本発明に係るダブルスキン構造301によれば、開口端部307から空気層内へ屋外騒音が伝搬することを防止することで、内側部材305に入射する騒音の音圧レベルが低くなる。これにより、内側部材305に遮音性能の高い部材が不要になり、コストダウンが実現できる。例えば、厚さの薄いガラスで内側部材305を構成することが可能になる。
また、本発明に係るダブルスキン構造301に用いる遮音ルーバー1は同一断面の長尺体であるので、製作及び取付けが容易である。
なお、本実施形態に示す遮音ルーバー1を構成するルーバー羽根部材3は、共鳴器10をルーバー羽根部材3全体と一体化して、アルミニウムなどにより押出成形して製造することができる。
次に、遮音ルーバー1の他の例について説明する。図5は本発明に用いる他の遮音ルーバー1を示す図である。これまで説明した実施形態においては、伝搬路100の両側に共鳴器10を対向配置することで、ルーバー羽根部材3の主面4、5の表面を、音響的に“ソフト”な状態とするようにしていた。
これに対して、本実施形態では、伝搬路100の片側のみに共鳴器10を配置することで、音響的に“ソフト”な状態の再現を試みたものである。本実施形態に係る遮音ルーバー1において、図5(A)は共鳴器10を伝搬路100に「片側配置」した場合、また、また、図5(B)は共鳴器10を伝搬路100に「片側並列配置」した場合をそれぞれ示している。
2次元境界要素法を用いた数値解析手法によれば、共鳴器10を「対向配置」する方法は、他の配置方法と比較して騒音低減方法として有効であることが確認できるが、「片側配置」や「片側並列配置」などの配置方法にも十分な騒音低減効果を期待することができることがわかり、レイアウトなどの都合上、「片側配置」や「片側並列配置」しか採用し得ない場合には、このような配置を適宜採用することもできる。
以上、本発明に用いる遮音ルーバーにおいては、音響インピーダンス比が0となるスリット状開口部を有する共鳴器が伝搬路100に配されており、このような本発明に用いる遮音ルーバーによれば、構造が単純であるので、製造や輸送、施工工数の増加に伴うコストを低減することができる。
また、本発明に用いる遮音ルーバーによれば、様々な方向からの騒音に対処でき、十分な遮音性能を確保することが可能となる。
次に、遮音ルーバー1の他の例について説明する。まず、遮音ルーバー1を構成するルーバー羽根部材210単体を説明する。図6は本発明に用いる他の遮音ルーバー1に用いられるルーバー羽根部材210を示す図である。
遮音ルーバー1は、複数のルーバー羽根部材210が、所定の間隔を置いて配置されることで構成されるものである。ここで、図6乃至図9においては、ルーバー羽根部材210や遮音ルーバー1を、長手方向に対する断面で見たものである。したがって、ルーバー羽根部材210や遮音ルーバー1は、紙面の奥行き方向に長尺体としての長さを有するものである。
また、ルーバー羽根部材210における構成として、「直線部」などと呼称するが、実際の形状は平面部である。
ルーバー羽根部材210は、剛性があり、音響透過損失が大きい材料によって構成することが好ましく、例えば、アルミニウムなどを用いることができる。
ルーバー羽根部材210は、第1直線部231と、この第1直線部231と平行な第2直線部232と、第2直線部232から延在する放物線部240と、を有している。放物線部240は、音の反射部として機能する。
第1直線部231と、第2直線部232とは第3直線部233によって連結されており、第1直線部231と、第2直線部232と、第3直線部233とによって、囲まれた空間には、補強リブ260が設けられている。
ルーバー羽根部材210は、第1直線部231からは、第4直線部234を介して延在する円弧部250を有している。円弧部250は、音の反射部として機能する。
上記のようなルーバー羽根部材210が複数、全てのルーバー羽根部材210の第1直線部231及び第2直線部232が平行となるように、互いに、所定の間隔を置いて配置されることで、遮音ルーバー1が構成される。
すなわち、遮音ルーバー1においては、一のルーバー羽根部材210の第1直線部231が、他のルーバー羽根部材210の第2直線部232と、平行となるように配されている。図7は本発明に用いる他の遮音ルーバー1を示す図である。
図7に示すように、各ルーバー羽根部材210が固定されていれば、ルーバー羽根部材210を固定する方法としてはどのようなものを用いても構わない。また、図に示す遮音ルーバー1において、その左側が、設備機器などが設置されている騒音源側で、右側が受音側であるものとする。
複数のルーバー羽根部材210を図7に示すように配することで、隣り合うルーバー羽根部材210の間に、通気経路215が形成される。騒音源側(上流側)における通気経路215の開口を、第1開口211として定義する。また、受音側(下流側)における通気経路215の開口を、第2開口212として定義する。
本発明に用いる遮音ルーバー1を特徴付ける構造を以下に記す。第1として、第1直線部231及び第2直線部232によりなる平行対向する壁面で構成される通気経路(区間A)を有している。
また、本発明に用いる遮音ルーバー1の特徴的構造の第2として、放物曲面(区間B)を通気経路215の内壁として有している。
また、本発明に用いる遮音ルーバー1の特徴的構造の第3として、円弧曲面(区間C)を通気経路215の内壁として有している。
また、本発明に用いる遮音ルーバー1の特徴的構造の第4として、放物曲面(区間B)と円弧曲面(区間C)は点Dを共通の焦点とする。
また、本発明に用いる遮音ルーバー1の特徴的構造の第5として、通気経路215は騒音源側の第1開口211から区間A、区間B、区間Cの順で構成されている。
次に、本発明による遮音ルーバー1が通気経路215を透過する騒音を低減する原理を以下に説明する。また、本発明による遮音ルーバー1の原理を説明する図を図8、図9に示す。図において、矢印は騒音の音波の流れの方向を示している。
図8において、(0)に示すように、遮音ルーバー1における第1開口211には、様々な方向から騒音が入射する。
(1)に示すように、通気経路215の区間Aに入射した騒音は、区間Aの幅(31と32の距離)が半波長以下となる周波数では、区間Aを平面波として伝搬する。
次に、(2)に示すように、区間Aを平面波として伝搬し、区間Bの放物曲面で反射した音波は焦点Dに向けて収束する。
次に、(3)に示すように、焦点Dを通過した音波は、区間Cの円弧曲面に入射する。
次に、図9の(4)に示すように、区間Cの円弧曲面で反射した音波は再び焦点Dに向けて収束する。
続いて、(5)に示すように、焦点Dを通過した音波は、区間Bの放物曲面に入射する。
次に、(6)に示すように、区間Bの放物曲面で反射した音波は、区間Aを平面波として伝搬し、騒音源側の第1開口211へ再放射される。
以上のように、本発明に用いる遮音ルーバー1によれば、遮音ルーバー1の通気経路215を伝搬する騒音を騒音源側へ再放射することで、通気経路215を透過する騒音を低減し、遮音ルーバー1の遮音性能を向上することができる。
また、本発明に用いる遮音ルーバー1によれば、必要となる部品はルーバー羽根部材210のみであり、部品点数を抑制でき、構造が単純であるので、製造や輸送、施工工数の増加に伴うコストを低減することができる。
また、本発明に用いる遮音ルーバー1によれば、様々な方向からの騒音に対処でき、十分な遮音性能を確保することが可能となる。
本発明に用いる遮音ルーバー1によれば、騒音入射角によらず、通気経路215を透過する騒音を低減することができる。
また、本発明に用いる遮音ルーバー1によれば、 ルーバー羽根部材210のみで、ルーバー壁を構成できるので、部材点数を減らし、構造を単純化できる。
また、ルーバー羽根部材210本体は、同一断面図の長尺体であり、上記の部材点数の減少と構造の単純化と併せて、製造コストの低減、輸送コストの低減、設置が単純かつ効率的であることによる施工コストの低減などの効果が期待できる。
なお、図6乃至図9に基づいて説明した遮音ルーバー1はさらなる実施形態を有するものであり、さらなる実施形態については、本願発明者による特願2016−188011号の記載を参照することで、本明細書中に援用するものである。
上記のような遮音ルーバー1がダブルスキン構造301に適用されることにより、本発明が構成される。図10は本発明の実施形態に係るダブルスキン構造301を示す図である。 図10(A)は本発明の実施形態に係るダブルスキン構造301の斜視図であり、 図10(B)は図10(A)の点線で囲った部分の拡大断面図である。
本発明に係るダブルスキン構造301においては、空気層における良好な通気性を阻害することなく、騒音低減を図るために、上記のような遮音ルーバー1を外側部材304と内側部材305との間に配するようにしている。本実施形態では、ダブルスキン構造301の開口端部307に遮音ルーバー1を配しているが、遮音ルーバー1を設ける鉛直方向の高さがこれにのみ限定されるものではない。
以上のような、本発明に係るダブルスキン構造301においては、ルーバー羽根部材210の間に、形成される通気経路215中には、複数の反射部(240、250)が形成されると共に、前記通気経路215の第1開口211に入射した音が、前記複数の反射部(240、250)で反射され、前記第1開口211から出射される遮音ルーバー1が外側部材304と内側部材305との間に配される。遮音ルーバー1は、ルーバー羽根部材3間の空隙を通気経路として確保しつつ、その通気経路を騒音が伝搬することを防止する機能を有する。この機能により、ダブルスキン構造301の開口端部307から空気層内へ屋外騒音が伝搬することを防止する。その結果、本発明に係るダブルスキン構造301によれば、空気層内への外気導入と空気の流通は維持しつつも、開口端部307が遮音欠損となることを防ぎ、ダブルスキン構造301の遮音性能を向上することができる。
また、本発明に係るダブルスキン構造301によれば、開口端部307から空気層内へ屋外騒音が伝搬することを防止することで、内側部材305に入射する騒音の音圧レベルが低くなる。これにより、内側部材305に遮音性能の高い部材が不要になり、コストダウンが実現できる。例えば、厚さの薄いガラスで内側部材305を構成することが可能になる。
また、本発明に係るダブルスキン構造301に用いる遮音ルーバー1は同一断面の長尺体であるので、製作及び取付けが容易である。
ここで、以上で説明した遮音ルーバー1においては、第1開口211に入射した音波を、区間Aにおいて平面波とし、これを放物線部240よりなる区間Bの放物曲面で反射させ、いったん焦点Dを通過させた上で、円弧部250よりなる区間Cの円弧曲面で、再び焦点Dに向けて収束させ、さらに、放物線部240よりなる区間Bの放物曲面で反射させて、区間Aを平面波として伝搬させて、騒音源側の第1開口211に出射させる構成としているが、本発明に用いる遮音ルーバー1の実施形態はこれに限られるものではない。
本発明に用いる遮音ルーバー1は、遮音ルーバー1の第1開口211から、入射した音波を平面波とし、それを通気経路215中の複数の反射部で反射させて、再び第1開口211から騒音源側に出射させる、という構成であれば、実施形態で説明した放物曲面や円弧曲面などからなる反射部に限定されるものではない。
すなわち、本発明に用いる遮音ルーバー1は、通気経路215中の形状に特徴を持たせることで、遮音ルーバー1の第1開口211から入射した音波を、再び第1開口211から出射させる、という技術思想一切をも含むものである。
また、本発明に用いる遮音ルーバー1は、通気経路215中の形状に特徴を持たせることで、通気経路215中に音波の焦点を形成し、この焦点を活用して遮音を図る、という技術思想も含むものである。部品点数が増えてしまうというデメリットはあるが、例えば、実施形態における焦点Dに吸音材を配して、焦点Dにおいて吸音を図ることなども、本発明に用いる遮音ルーバー1に含まれるものである。
次に、本発明の他の実施形態について説明する。図11は本発明の他の実施形態に係るダブルスキン構造301を示す図である。図11(A)は本発明の他の実施形態に係るダブルスキン構造301の斜視図であり、図11(B)は図11(A)の点線で囲った部分の拡大断面図である。また、図12は遮音板330有無による騒音伝達を模式化した図であり、図12(A)は遮音板330がないダブルスキン構造を示しており、図12(B)は遮音板330がある本発明の実施形態に係るダブルスキン構造301を示している。
本発明の他の実施形態に係るダブルスキン構造301は、開口端部307において、内側部材305の主面に対して垂直な主面を有する遮音板330が、内側部材305に取り付けられるものである。この遮音板330としては内側部材305及び外側部材304の双方に取り付けるようにしても構わない。ここで、他の実施形態に係るダブルスキン構造301で用いる遮音板330は、低減したい騒音の周波数成分に対して、十分な遮音性能(音響透過損失)を持つものを用いる。
なお、本実施形態においては、内側部材305の主面に対して垂直な主面を有する遮音板330を内側部材305に取り付ける構成に基づいて説明するが、内側部材305に対して遮音板330を取り付ける際の態様がこれに限定されるものではない。
図11に示す実施形態では、空気層内への外気導入を阻害しないように間隔を確保した上で、開口端部307の下方に遮音板330を設置するようにしている。
遮音板330は、図中に矢印付き破線で示した、騒音源と外側部材304の下端とを結ぶ線より外側に先端が位置するように設置する。このように遮音板330を設置することで、騒音が直接空気層内に伝搬することを防止することができる。開口端部307から空気層内に伝搬する騒音は、遮音板の先端を回折することにより減衰する。
図12(A)に示すように、遮音板330がない場合は、騒音は、騒音源から直接あるいは内側部材305で反射した後、開口端部307を介して空気層内に伝搬する。一方で、上記のように遮音板330を設置した場合、図12(B)に示すように、騒音の伝搬経路が遮音板330により遮蔽され、遮音板330先端で回折減衰した後の騒音が、開口端部307を介して空気層内に伝搬する。
なお、図11に示す実施形態では、遮音板330の主面が水平に設置した例を示したが、遮音板330の主面は必ずしも水平になるように設置する必要はない。
次に、本発明の他の実施形態について説明する。図13は立設部335が設けられた遮音板330を説明する図である。また、図14は本発明の他の実施形態に係るダブルスキン構造301を示す図である。図14(A)は本発明の他の実施形態に係るダブルスキン構造301の斜視図であり、図14(B)は図14(A)の点線で囲った部分の拡大断面図である。
騒音源が遠方にあるなどの理由で騒音の入射角度が浅い場合、上方に立ち上げた立設部335を有する遮音板330を設置することで、騒音低減効果を維持しつつ遮音板330の張出しを最小限に抑えることができる(図13(A)参照)。
立ち上げた立設部335の先端が内側部材305の下端と同じ高さに位置するように遮音板330を設置すると、少なくとも開口端部307に対して俯角方向(下方)から入射する騒音について、直接空気層内に伝搬することを防止することができる。このような遮音板330は、騒音源が特定できない場合や騒音の入射角度が明確でない場合に有効である(図13(B)参照)。
図14に示すダブルスキン構造301では、立ち上げた立設部335の先端が内側部材305の下端より上方に位置するように遮音板330を設置するようにしたものであり、このような遮音板330を用いることで、より確実に開口端部307に対して俯角方向(下方)から入射する騒音について、直接空気層内に伝搬することを防止することができる。
次に、本発明の他の実施形態について説明する。遮音板330は、ダブルスキン構造301の空気層内に設置することも可能である。図15はそのような実施形態を示す図である。図15(A)は本発明の他の実施形態に係るダブルスキン構造301の斜視図であり、図15(B)は図15(A)の点線で囲った部分の拡大断面図である。図16は吸音材340を用いた他の実施形態に係るダブルスキン構造301を示す図である。
図15に示すように、本実施形態では、鉛直方向からみて2枚の遮音板330を互い違いに、かつ通気経路が迷路状になるように設置することで、空気層内を騒音が伝搬することを防止する。本実施形態においては、外側部材304に一枚の遮音板330を、また、内側部材305に一枚の遮音板330を取り付けるようにしている。
図15に示す実施形態では、2枚の遮音板330を使った例を示したが、より多数の遮音板330を互い違いに配置するようにしても良い。
遮音板330のうち、迷路状の通気経路を構成する面を吸音処理することで、より高い騒音低減効果を得ることができる。図16(A)は外側部材304に設けられた一枚の遮音板330の下方部に、吸音材340を取り付けた例を示している。
遮音板330は、空気層内のなるべく開口端部307に近い位置に設置する方が効果的である。 ただし、上記は開口端部307から離れた位置に遮音板330を設置することを否定するものではない。図16(B)は、遮音板330を多段階に設置し、かつ、遮音板330の下方部に吸音材340を取り付けた例を示している。図16(B)に示す例では、開口端部307から離れた位置にも遮音板330が配されることとなるが、このような配置により、騒音の伝搬をより確実に防止することができる。
ダブルスキン構造301における空気層内に外気を導入する開口端部307は、空気層内の空気の流通を確保するため、一般的に複数設けられている。本発明による遮音板330は、この内騒音源に近い開口端部307、或いはその近傍に配置すると効果的である。例えば、地上の道路交通騒音を騒音源として考える場合、2階以上では下方の開口端部307近くに配置する。ただし、これは騒音源から遠い開口端部307の近くに遮音板330を配置することの有効性を否定するわけではない。
これまで説明した実施形態では、騒音源が開口端部307より下方に位置する場合で、開口端部307はダブルスキン構造301の上下側に設けられていることを前提としたが(図1参照)、本発明、特に図15、図16に示す実施形態では、開口端部307が側面に設けられたダブルスキン構造301に対しても有効である。
以上のような本実施形態に係るダブルスキン構造301によれば、遮音板330により、開口端部307から空気層内に騒音が伝搬することを防止できる。また、本実施形態に係るダブルスキン構造301は、開口端部307が遮音欠損となることを防ぎ、ダブルスキン構造301の遮音性能を向上することができる。また、このとき、空気層内への外気導入と空気の流通は維持できる。
また、本実施形態に係るダブルスキン構造301においては、遮音板330は同一断面の長尺体で構成可能であり、製作及び取付けが容易である。
また、本実施形態に係るダブルスキン構造301によれば、開口端部307から空気層内へ屋外騒音が伝搬することを防止することで、内側部材305に入射する騒音の音圧レベルが低くなる。これにより、内側部材305に遮音性能の高い部材が不要になり、コストダウンが実現できる。例えば、厚さの薄いガラスで内側部材305を構成することが可能になる。
また、本実施形態に係るダブルスキン構造301では、遮音板330の回折減衰により騒音低減効果を得るため、共鳴器を用いた対策方法(例えば、特願2016-188010号参照)と比較して、周波数依存性が少ない。このため、交通騒音など幅広い周波数成分を持つ屋外騒音に対しても有効である。
また、本実施形態に係るダブルスキン構造301における遮音板330は、それより下階に対しては、上方からの日射を遮る庇としての機能を併せ持つ。これにより、建物内の音環境を改善すると共に、温熱環境を改善すること、建物の熱負荷を下げることで建物全体としてのエネルギー消費を低減することができる。
本発明に係るダブルスキン構造301の騒音低減効果について数値解析により実証を行ったのでその結果について示す。図17は数値解析対象を示す図である。
数値解析には2次元境界要素法を用いた。図17(A)は、遮音板330が設けられていない基本形となるダブルスキン構造301であり、内側部材305と外側部材304間の距離600mmとしたダブルスキン構造301である。
数値解析では、図17(A)に示すように俯角45度方向から音波を入射し、図中に破線で示した仮想面を図面上における上方向に通過する音響エネルギーを計算により求めた。
図17(A)に示す遮音板330を設置しない基本形を基準の条件として、図17(B)に示す遮音板330を配置した条件(以下、「遮音板B」の条件という)、及び、図17(C)に示す遮音板330、吸音材340を配置した条件(以下、「遮音板C」の条件という)において、仮想面を上方向に通過する音響エネルギーの低減量、即ち遮音板による騒音低減効果を求めた。なお、図17(B)は図11に示した実施形態に相当するものであり、図17(C)は図16に示した実施形態に類するものである。
図17(B)に示す「遮音板B」は、外側部材304下端から600mm下方に、遮音板330を設置した条件である。遮音板330の幅は1300mmとしており、俯角45度方向から入射する音波が直接開口部を介して空気層内に伝搬することを妨げている。
図17(C)に示す「遮音板C」は、ダブルスキン構造301の空気層内に遮音板330を互い違いに配置した条件である。互い違いに配置した遮音板330により、内側部材305と外側部材304の間の通気経路は、迷路状となる。迷路状の通気経路を構成する、上側の遮音板330の下面は、図示したように吸音材340を配している。吸音材340には、厚さ50mmのグラスウールを設置することを想定した。
図18は上記のような条件の下での数値解析の結果を示す図である。図18は基本形を基準とした「遮音板B」、「遮音板C」における遮音板や吸音材の効果の周波数特性を示すものである。
遮音板B、遮音板C共に、正の騒音低減効果が得られており、遮音板330の設置により空気層内に伝搬する騒音が低減できていることが確認できる。また、遮音板Bは63Hzから4kHz帯域まで、遮音板Cは250Hzから4kHzまで、いずれも幅広い周波数範囲に対して騒音低減効果が得られていることが確認できる。
以上の結果から、本発明で提案する遮音板330を配置する方法は、ダブルスキン構造301の内側部材305と外側部材304の間の空気層を伝搬する騒音を低減し、ダブルスキン構造301全体として遮音性能を向上する方法として有効であることが確認できた。