JP2018131840A - 補強盛土壁の化粧被覆保護壁構築方法 - Google Patents
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Abstract
Description
補強盛土壁の代表的な構築方法として、テールアルメ工法、多数アンカー工法、及びジオテキスタイル工法が開示されている(例えば、非特許文献1)。
テールアルメ工法は、図1(a)に示すように、基礎コンクリートの上に構築された壁面材に複数の帯状鋼材を取り付け、盛土を敷き詰めることで、補強盛土壁を構築する。多数アンカー工法は、図1(b)に示すように、基礎コンクリートの上に構築された壁面材に、アンカーを設けたタイバー(丸鋼)を取り付け、盛土を敷き詰めることで、補強盛土壁を構築する。ジオテキスタイル工法は、図1(c)に示すように、壁面材に合成高分子からなる網を高さ方向に複数設け、盛土を敷き詰めることで、補強盛土壁を構築する。
テールアルメ工法やアンカー工法で構築された補強盛土壁は、約6〜8mmだけ前方に変位していることがわかる。一方、ジオテキスタイル工法で構築された補強盛土壁は、約30mm程度前方に変位し、ジオテキスタイル工法で構築された補強盛土壁が、最も変位量が大きいことが分かる。
このように、補強盛土壁の壁面が前方に孕み出し、変形すると、外観上好ましくないことに加え、長年、補強盛土壁の壁面材に荷重が加わることにより、壁面材に歪みや亀裂が生じ、地震により、壁面材に大きな荷重が加わった場合、壁面材が破壊するおそれがある。
しかし、補強盛土壁からの荷重が砕石層を介して、保護壁パネルに伝達されるため、保護壁パネルが前方に孕み出し、保護壁パネルの初期の構築位置を確実に維持することはできない。
補強盛土壁の壁面が概ね1年から3年経過する間に60mm程度極めてゆっくりとした速度で孕み出る変位をシリンダーとピストンの超低速度下での伸縮無抵抗作動効果により自動的に吸収し、かつ、台風や地震時に瞬間的に保護壁パネルに作用する荷重をピストンの瞬間移動によるシリンダーの内圧の瞬時高圧化に伴い、ピストンの移動がロック状態となることにより、補強盛土壁側に伝達し、保護壁パネルを安全に支保する。そのため、保護壁パネルは、初期の構築された状態(位置)が維持される。
このように、保護壁パネルが初期の構築された状態が維持されるため、保護壁全体が前方に傾くことが防止され、補強盛土壁を化粧被覆でき、外観を維持することができることに加え、保護壁パネル(保護壁)が崩壊する等のおそれも回避できる。
そして、この化粧被覆保護壁構築方法は、保護壁パネル6を予め所定の位置に立設されている支柱5に取り付け、支柱5と補強盛土壁4との間に、補強盛土壁4の壁面の孕み出し寸法以上の間隔を確保して、ピストン13を備える油圧式のシリンダー8を介在させて、支柱5と補強盛土壁4とを連結し、補強盛土壁4の壁面が概ね1年から3年経過する間に60mm程度極めてゆっくりとした速度で孕み出る変位をシリンダー8とピストン6の超低速度下での伸縮無抵抗作動効果により自動的に吸収する。
さらに、台風や地震時に瞬間的に保護壁パネル6に作用する荷重をピストン6の瞬間移動によるシリンダー8の内圧の瞬時高圧化に伴い、ピストン6の移動がロック状態となることにより、補強盛土壁4側に伝達し、保護壁パネル6を安全に支保することで、保護壁パネル6の初期の構築位置を維持する。
以下、本実施形態に係る化粧被覆保護壁構築方法を、図3及び図4を参照し具体的に説明する。
まず、金属製枠材(図示しない)を設置し、盛土1(盛土材)を敷き詰め、補強材2を前後方向Xに取り付ける(敷き詰める)。補強材2には、例えば、帯状の鋼材、棒状の鋼材、及び合成高分子製の網状鋼材(アラミド繊維をポリエチレンで被覆したグリッド状の補強材)等を使用することができる。
補強材2を取り付けた後、さらに高さ方向Yに盛土1を敷き詰める。また、グリッドベルト11を所定の間隔で、その先端を盛土1の側面から前方に突出させて設ける。このグリッドベルト11は、ベルト状の補強材であり、先端部分には接続部が形成されている。
この作業を所望の高さとなるまで繰り返し行い、盛土壁を構築する。その後、この盛土壁の前面に壁面材3を取り付けることで、補強盛土壁4を構築する(基礎工完了)。なお、グリッドベルト11は、壁面材3よりも前方に突出している。
次に、壁面材3の前方に、所定の間隔をあけて支柱5を立設する。そして、保護壁パネル6を支柱5に取り付け、補強盛土壁4の全面に保護壁(化粧被覆保護壁)7を構築し、補強盛土壁4を化粧被覆する。保護壁パネル6には、例えば、高さ方向Yの長さが200mmから300mmのものを使用できる。本実施形態では、保護壁パネル6は、高さ方向の長さが300mmのものを使用した例を示す。
なお、所定の間隔とは、補強盛土壁4から、補強盛土壁4の壁面の孕み出し寸法以上の間隔を意味する。
このシリンダー8の両端には、図4に示すように、接続孔8A,8Bが形成されている。図5に示すように、接続孔8Aを介して、ボルト9で締め付けることにより、支柱5とシリンダー8を連結する。同様に、接続孔8Bを介して、ボルト10で締め付けることにより、グリッドベルト11とシリンダー8を連結する。この際、シリンダー8は、シリンダー8の給油口12A,12Bが上向きとなるように連結する。シリンダー8を連結した後、給油口12A,12Bからシリンダー8内に油を注入する。
シリンダー8は、高さ方向Yや奥行き方向に複数設け、その個数及び接続位置は、適宜変更する。
支柱5と壁面材3との間に、シリンダー8を介在させることが、本実施形態における化粧被覆保護壁構築方法の大きな特長である。
補強盛土壁は、一年間で約3cm〜6cm前方に孕み出すだすことが知られている。これを時速に換算すると、約1μm/hとなる。そのため、補強盛土壁4の壁面材3は、極めてゆっくりとした速度で、前方に徐々に孕み出す。本実施形態で使用するシリンダー8とピストン6との間には、必ず隙間が形成されており、この隙間から油がしみ出すようにリークする。上述の通り、補強盛土壁4の壁面材3は、約1μm/hで孕み出し、ピストン6が伸縮することで、油が少しずつリークし、シリンダー8とピストン6間には圧力が発生しない。つまり、ピストン6は、無抵抗の状態で伸縮し、作動する。本実施形態では、上記の効果を「伸縮無抵抗作動効果」とよぶ。
そのため、保護壁パネル6は、初期の構築された状態(位置)で維持することができる。
保護壁パネル6が初期の構築された状態が維持されるため、保護壁7全体が前方に傾くことが防止され、補強盛土壁を化粧被覆でき、外観を維持することができることに加え、保護壁パネル6(保護壁7)が崩壊する等のおそれも回避できる。
前後方向Xから保護壁パネル6に荷重が加わった場合、シリンダー8は、ピストン13の瞬間移動によるシリンダー8の内圧の瞬時高圧化に伴い、ピストン13の移動がロック状態となる。ピストン13の移動がロック状態となることにより、保護壁パネル6への荷重は補強盛土壁4側に伝達され、保護壁パネル6を安全に支保することができる。
この場合も、保護壁7全体が前方に傾くことが防止され、補強盛土壁を化粧被覆でき、外観を維持することができることに加え、保護壁パネル6(保護壁7)が崩壊する等のおそれも回避できる。
本実施形態に係る化粧被覆保護壁構築方法では、保護壁パネル6と補強盛土壁4との間に砕石は充填されていないため、補強盛土壁4からの荷重は、保護壁パネル6に加わることがない。そのため、保護壁パネル6が初期の構築された状態を維持でき、保護壁パネル6を安全に支保することができる。
また、保護壁パネル6と壁面材3との間に形成された空間は、排出路として機能するため、水はけが良い。
2 補強材
3 壁面材
4 補強盛土壁
5 支柱
6 保護壁パネル
7 保護壁(化粧被覆保護壁)
8 シリンダー
9,10 ボルト
11 グリッドベルト
12A,12B 給油口
13 ピストン
X 前後方向
Y 高さ方向
Claims (1)
- 盛土材に補強材を介在させて締め固めて構築された補強盛土壁の壁面を化粧被覆保護する保護壁を構築する補強盛土壁の化粧被覆保護壁構築方法であって、
保護壁パネルを、予め所定の位置に立設されている支柱に取り付け、
前記支柱と前記補強盛土壁との間に、前記補強盛土壁の壁面の孕み出し寸法以上の間隔を確保して、ピストンを備える油圧式のシリンダーを介在させて、前記支柱と前記補強盛土壁とを連結し、
前記補強盛土壁の壁面が概ね1年から3年経過する間に60mm程度極めてゆっくりとした速度で孕み出る変位を、前記シリンダーと前記ピストンの超低速度下での伸縮無抵抗作動効果により自動的に吸収し、かつ、台風や地震時に瞬間的に前記保護壁パネルに作用する荷重を、前記ピストンの瞬間移動による前記シリンダーの内圧の瞬時高圧化に伴い、前記ピストンの移動がロック状態となることにより、前記補強盛土壁側に伝達し、前記保護壁パネルを安全に支保することで、前記保護壁パネルの初期の構築位置を維持する、
ことを特徴とする補強盛土壁の化粧被覆保護壁構築方法。
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