JP2018131576A - 油性インクジェットインク - Google Patents

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大貴 冨永
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Abstract

【課題】吐出安定性に優れるとともに、印刷物の黄変を防止する油性インクジェットインクを提供する。さらに、油性インクジェットインクの貯蔵安定性を良好に維持する。【解決手段】炭素数12〜20の高級アルコール系溶剤、炭素数12〜20の高級脂肪酸系溶剤、及び炭素数13〜30の脂肪酸エステル系溶剤からなる群から選択される1種以上を含む非水系溶剤と、色材と、フェノール系酸化防止剤と、リン系酸化防止剤とを含む、油性インクジェットインクである。【選択図】なし

Description

本発明は、油性インクジェットインクに関する。
インクジェット記録方式は、流動性の高いインクジェットインクを微細なノズルから液滴として噴射し、ノズルに対向して置かれた記録媒体に画像を記録するものであり、低騒音で高速印字が可能であることから、近年急速に普及している。このようなインクジェット記録方式に用いられるインクとして、水を主溶媒として含有する水性インク、重合性モノマーを主成分として高い含有量で含有する紫外線硬化型インク(UVインク)、ワックスを主成分として高い含有量で含有するホットメルトインク(固体インク)とともに、非水系溶剤を主溶媒として含有する、いわゆる非水系インクが知られている。非水系インクは、主溶媒が揮発性有機溶剤であるソルベントインク(溶剤系インク)と、主溶媒が低揮発性あるいは不揮発性の有機溶剤である油性インク(オイル系インク)に分類できる。ソルベントインクは主に有機溶剤の蒸発によって記録媒体上で乾燥するのに対して、油性インクは記録媒体への浸透が主となって乾燥する。
油性インクは、記録媒体として紙を用いた場合、紙の構成成分であるパルプの繊維間結合に対する影響が小さいために、印刷後の紙のカールやコックリングが発生し難く、また、紙への浸透が速いために見かけ上の乾燥性に優れる。さらに、溶媒が揮発し難いため、ノズルにおける目詰まりが生じにくく、ヘッドクリーニングの頻度を少なくできるため、高速印刷への対応が可能であるという利点を有する。
特許文献1には、インクの保存安定性を向上する非水系インク組成物として、分散剤にエステル構造を有する分散剤を用い、インク溶剤の60重量%以上を極性有機溶剤とし、さらにこの極性有機溶剤のうちエステル系溶剤を10重量%以上含むインクが提案されている。
特許文献1では、エステル構造を有する分散剤に対して、溶解性の高い極性有機溶剤を用いることで、顔料の凝集を防いで、保存安定性を高めようとしている。
特許文献2には、顔料と希釈溶剤と分散剤と酸化防止剤とからなる非水系インクジェットインクにおいて、インクのヨウ素価を25〜60の範囲とすることで、インク中で分散剤が付与する顔料粒子相互の安定性に必要な反発力と、溶剤に対する分散剤の充分な溶解性を得ることを可能として、インクの保存安定性を良好にすることが提案されている。
特許文献2では、希釈溶剤に不飽和脂肪酸エステルを用いて顔料粒子同士の反発力を利用して保存安定性を高めようとしている。一方で、インクのヨウ素価を60以下とし、また、酸化防止剤を用いることで、溶剤や分散剤の酸化を抑えようとしている。特許文献2では、酸化防止剤として、ヒンダードフェノール系化合物等の中から1種類を用いている。
特許文献3では、液晶表示装置に用いられるカラーフィルター用インクジェットインクにおいて、酸化防止剤を適切な割合で用いて、加熱工程により起こる樹脂成分の酸化を抑制し、輝度の低下を低減することが提案されている。カラーフィルターを作製する工程では、樹脂を硬化させるため、焼成等の加熱工程が複数回行われる。そのため、加熱工程の熱によってインク中の顔料及び硬化膜中の高分子成分などのインク材料が劣化し、輝度が低下するという問題点がある。
特許文献3では、1次酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤を用いることで、加熱工程により生じるラジカルを補足して、輝度の低下を低減することが提案されている。また、2次酸化防止剤としてリン系酸化防止剤及び/または硫黄系酸化防止剤を用いることで、加熱工程により生じる過酸化物をラジカルに変換される前に分解することができ、輝度の低下を低減することが提案されている。
特許文献4では、液晶表示装置に用いられる着色樹脂粒子組成物において、銅フタロシアニン青色顔料を用いる場合に、特定構造の分散剤と酸化防止剤とを併用し、かつ酸化防止剤の量を分散剤に対して特定の範囲に制御することにより、組成物中の分散剤及びバインダ樹脂等の高分子化合物の熱劣化や酸化を防止して、高コントラスト・高透過率、及び分散安定性の両立を実現することが提案されている。
特開2003−261808号公報 特開2005−290035号公報 特開2010−134278号公報 特解2011−57974号公報
特許文献3及び4では、いずれも液晶表示装置に用いられるカラーフィルター用インクに関するものであり、インクを基板に吐出後に加熱工程を経るため、この加熱による高分子化合物の酸化を抑制するために、酸化防止剤が用いられている。
このカラーフィルター用インクでは、非浸透性の基板に塗布されるため、溶剤は低沸点で揮発しやすいものが採用される。例えば、カラーフィルター用インクに、高級アルコール系溶剤、脂肪酸エステル系溶剤、高級脂肪酸系溶剤等の極性溶剤を用いる場合では、炭素鎖が短いものが好ましく用いられる。
普通紙などの浸透性記録媒体に用いられる油性インクジェットインクは、記録媒体に吐出された後に、記録媒体表面に色材が留まるようにインク中の溶剤が記録媒体に浸透しながら乾燥する。また、インクジェットヘッド内では、インクジェットノズル付近でインク中の溶剤が揮発しインクが高粘度化または固化すると、インクジェットノズルが目詰まりして、吐出の飛行曲がりや不吐出等の原因となることがある。そのため、油性インクジェットインクの溶剤には、ある程度の低揮発性の溶剤が好ましく用いられる。
インク溶剤にある程度の低揮発性の溶剤を用いる場合、インク吐出後に、印刷物を加熱しない場合でも、印刷物が黄変するという問題がある。これは、フェノール系酸化防止剤を用いる場合に特に観察される。
本発明の一目的としては、吐出安定性に優れるとともに、印刷物の黄変を防止する油性インクジェットインクを提供することである。さらに、油性インクジェットインクの貯蔵安定性を良好に維持することである。
本発明は以下を要旨とする。
(1)炭素数12〜20の高級アルコール系溶剤、炭素数12〜20の高級脂肪酸系溶剤、及び炭素数13〜30の脂肪酸エステル系溶剤からなる群から選択される1種以上を含む非水系溶剤と、色材と、フェノール系酸化防止剤と、リン系酸化防止剤とを含む、油性インクジェットインク。
(2)前記炭素数12〜20の高級アルコール系溶剤、前記炭素数12〜20の高級脂肪酸系溶剤、及び前記炭素数が13〜30の脂肪酸エステル系溶剤の合計量は、非水系溶剤全量に対し、50質量%以上である、(1)に記載の油性インクジェットインク。
(3)前記リン系酸化防止剤の量は、質量比で、前記フェノール系酸化防止剤の量に対して1.0以上である、(1)または(2)に記載の油性インクジェットインク。
(4)前記フェノール系酸化防止剤は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤である、(1)から(3)のいずれかに記載の油性インクジェットインク。
(5)前記リン系酸化防止剤は、亜リン酸エステル構造を有する化合物である、(1)から(4)のいずれかに記載の油性インクジェットインク。
本発明によれば、吐出安定性に優れるとともに、印刷物の黄変を防止する油性インクジェットインクを提供することができる。さらに、油性インクジェットインクの貯蔵安定性を良好に維持することができる。
以下、本発明を一実施形態を用いて説明する。以下の実施形態における例示が本発明を限定することはない。
本実施形態による油性インクジェットインク(以下、単にインクと称することがある。)としては、炭素数12〜20の高級アルコール系溶剤、炭素数12〜20の高級脂肪酸系溶剤、及び炭素数13〜30の脂肪酸エステル系溶剤からなる群から選択される1種以上を含む非水系溶剤と、色材と、フェノール系酸化防止剤と、リン系酸化防止剤とを含むことを特徴とする。
これによれば、吐出安定性に優れるとともに、印刷物の黄変を防止する油性インクジェットインクを提供することができる。さらに、油性インクジェットインクの貯蔵安定性を良好に維持することができる。
このインクによれば、非水系溶剤に、炭素数12〜20の高級アルコール系溶剤、炭素数12〜20の高級脂肪酸系溶剤、及び炭素数13〜30の脂肪酸エステル系溶剤からなる群から選択される1種以上が含まれることで、インクの貯蔵安定性を高め、吐出性能を改善することができる。これらの溶剤は、極性溶剤である一方で、揮発性が低いため、インク中で顔料の分散性を高めるとともに、インクジェットノズルの吐出部分で溶剤が揮発しないようにしてノズル目詰まりを防止することができる。
このインク成分、特に上記の溶剤が酸化されると、脂肪酸塩等の異物が析出することがあり、貯蔵安定性の低下、吐出性能の低下を引き起こすことがある。特に、不吐出の原因物質となる異物としては、例えば、上記の溶剤である高級アルコール系溶剤、高級脂肪酸系溶剤、脂肪酸エステル系溶剤の酸化・分解物である脂肪酸と、顔料中の不純物である2価金属イオン(ナトリウム、カルシウム等)とが結合した脂肪酸金属塩がある。脂肪酸金属塩は、ノズル周りに析出して、ノズルから吐出されるインクの飛行曲がりや、ノズルの不吐出の原因となることがある。
このインクにフェノール系酸化防止剤が含まれることで、インク成分の酸化を抑制し、異物の析出を防止することができる。
さらに、このインクにリン系酸化防止剤が含まれることで、印刷物の黄変を防止することができる。印刷物の黄変は、印刷物の印刷面に接した非印刷面が黄色くなる現象である。例えば、印刷物の印刷領域の周辺が黄色くなる現象、印刷物の印刷面の裏側が黄色くなる現象、印刷物の印刷面に非印刷面を重ねたときに非印刷面が黄色くなる現象等がある。また、インクの色味が薄い場合、印刷面が本来よりも黄色くなる現象がある。
これは、インク中でフェノール系酸化剤がパーオキシラジカルを補足し、酸化を防止する過程で、黄色を発色する構造をとるため、フェノール系酸化防止剤の作用によって印刷物が黄変することがある。そして、インクを用紙に吐出してから、インクが用紙に浸透し乾燥するまでの間にも、フェノール系酸化剤の作用によって印刷物の黄変が発生することがある。
これを防止するために、このインクにはリン系酸化防止剤が含まれる。インクにリン系酸化防止剤がさらに含まれることで、フェノール系酸化防止剤が過剰に酸化されて黄色を発色する構造をとる前に、リン系酸化防止剤が代わりに酸化されることで、酸化防止効果を維持したまま、印刷物の黄変を防止することができる。
この実施形態のインクは、炭素数12〜20の高級アルコール系溶剤、炭素数12〜20の高級脂肪酸系溶剤、及び炭素数13〜30の脂肪酸エステル系溶剤からなる群から選択される1種以上を含む非水系溶剤を含む。これらは、単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、この実施形態において、非水系溶剤には、1気圧20℃において同容量の水と均一に混合しない有機溶剤を用いることが好ましい。
上記の溶剤は、炭素鎖がある程度長いため、極性溶剤でありながら、低揮発性の溶剤である。そのため、インク中で顔料の分散性を高めるとともに、インクジェットノズル付近で溶剤の揮発を防いで吐出不良を防止することができる。
上記の溶剤は、インクが記録媒体に吐出された後に、記録媒体に浸透しながら乾燥する。その際に、溶剤とともにフェノール系酸化防止剤が記録媒体に浸透していくと、フェノール系酸化防止剤に起因して記録媒体の印刷面に接する面が黄変することがある。これに対し、このインクにリン系酸化防止剤を添加することで、このような黄変を防止することができる。
また、炭素鎖が短い溶剤は分解されやすく、低炭素数のアルコールや脂肪酸に分解されると、揮発して臭いの原因になる。そのため、油性インクジェットインクには、上記の溶剤のように炭素鎖がある程度長い溶剤を好ましく用いることができる。
炭素数12〜20の高級アルコール系溶剤は、例えば、飽和または不飽和の、直鎖または分岐鎖の高級アルコール系溶剤であってよい。この高級アルコール系溶剤は、脂肪族アルコールを好ましく用いることができる。脂肪族アルコールは、炭素鎖によってその他の非水系溶剤に対する親和性を高めることができる。また、この高級アルコール系溶剤は、酸化によって溶剤自体が黄変しないように、飽和アルコール系溶剤を好ましく用いることができる。
高級アルコール系溶剤の炭素数が12以上であることで、低揮発性であるため、インクジェットノズルでの溶剤の揮発を抑えて、ノズルの目詰まり等を防止して、吐出性能を改善することができる。高級アルコール系溶剤の炭素数が20以下であることで、インクが高粘度にならないように調整して、吐出性能とともに貯蔵安定性を改善することができる。
炭素数12〜20の高級アルコール系溶剤としては、例えば、イソラウリルアルコール(C12)、イソミリスチルアルコール(C14)、イソパルミチルアルコール(C16)、イソステアリルアルコール(C18)、オレイルアルコール(C18、不飽和)、イソエイコシルアルコール(C20)等を挙げることができる。かっこ内は、アルコールの炭素数を示す。
炭素数12〜20の高級脂肪酸系溶剤としては、例えば、飽和または不飽和の、直鎖または分岐鎖の高級脂肪酸系溶剤であってよい。ここで、脂肪酸はカルボキシ基を1つ有する鎖状のモノカルボン酸である。また、この高級脂肪酸系溶剤は、酸化によって溶剤自体が黄変しないように、飽和脂肪酸系溶剤を好ましく用いることができる。
高級脂肪酸系溶剤の炭素数が12以上であることで、低揮発性であるため、インクジェットノズルでの溶剤の揮発を抑えて、ノズルの目詰まり等を防止して、吐出性能を改善することができる。高級脂肪酸系溶剤の炭素数が20以下であることで、インクが高粘度にならないように調整して、吐出性能とともに貯蔵安定性を改善することができる。
炭素数12〜20の高級脂肪酸系溶剤としては、例えば、ラウリン酸(C12)、トリデシル酸(C13)、ミリスチン酸(C14)、ペンタデシル酸(C15)、パルミチン酸(C16)、イソパルミチン酸(C16)、ヘプタデカン酸(C17)、ステアリン酸(C18)、イソステアリン酸(C18)、オレイン酸(C18、不飽和)、リノール酸(C18、不飽和)、α−リノレン酸(C18、不飽和)、ノナデシル酸(C19)、エイコサン酸(C20)等を挙げることができる。かっこ内は、脂肪酸の炭素数を示す。
炭素数13〜30の脂肪酸エステル系溶剤は、例えば、炭素数7〜20、好ましくは炭素数10〜20の脂肪酸と、炭素数1〜20、好ましくは炭素数6〜20のアルコールとのエステルを用いることができる。ここで、脂肪酸エステルは、脂肪族モノカルボン酸である脂肪酸とアルコールとのエステルである。また、この脂肪酸エステル系溶剤は、酸化によって溶剤自体が黄変しないように、飽和脂肪酸エステル系溶剤を好ましく用いることができる。
脂肪酸エステル系溶剤ではなく、ジカルボン酸エステル、トリカルボン酸エステルでは、インク中で加水分解されるとジカルボン酸、トリカルボン酸が発生し、これらはインク中の顔料不純物であるカルシウム等の2価金属と塩を形成しやすい。これらの塩がインクジェットノズル近傍に析出すると、吐出性能が低下する一因となる。また、これらの塩がインク中に析出すると、貯蔵安定性が低下する一因となる。
脂肪酸エステル系溶剤の炭素数が13以上であることで、低揮発性であるため、インクジェットノズルでの溶剤の揮発を押さえて、ノズルの目詰まり等を防止して、吐出性能を改善することができる。脂肪酸エステル系溶剤の炭素数が30以下であることで、インクが高粘度にならないように調整して、吐出性能とともに貯蔵安定性を改善することができる。
脂肪酸エステル系溶剤の脂肪酸部分の炭素数が7以上、及び/または脂肪酸エステル系溶剤のアルコール部分の炭素数が6以上であることで、脂肪酸エステル系溶剤が加水分解によって分解されることを抑制することができ、さらに、分解物に揮発性の成分が含まれないようにすることができる。
炭素数13〜30の脂肪酸エステル系溶剤としては、例えば、イソノナン酸イソノニル(C18;C9−C9)、イソノナン酸イソデシル(C19;C9−C10)、ラウリン酸メチル(C13;C12−C1)、ラウリン酸イソプロピル(C15;C12−C3)、ラウリン酸ヘキシル(C18;C12−C6)、ミリスチン酸イソプロピル(C17;C14−C3)、パルミチン酸イソプロピル(C19;C16−C3)、パルミチン酸ヘキシル(C22;C16−C6)、パルミチン酸イソオクチル(C24;C16−C8)、オレイン酸メチル(C19;C18−C1)、オレイン酸エチル(C20;C18−C2)、オレイン酸イソプロピル(C21;C18−C3)、オレイン酸ブチル(C22;C18−C4)、オレイン酸ヘキシル(C24;C18−C6)、リノール酸メチル(C19;C18−C1)、
リノール酸エチル(C20;C18−C2)、リノール酸イソブチル(C22;C18−C4)、ステアリン酸ブチル(C22;C18−C4)、ステアリン酸ヘキシル(C24;C18−C6)、ステアリン酸イソオクチル(C26;C18−C8)、イソステアリン酸イソプロピル(C21;C18−C3)、大豆油メチル(C17〜19;C16〜18−C1)、大豆油イソブチル(C20〜22;C16〜18−C4)、トール油メチル(C19;C18−C1)、トール油イソブチル(C22;C18−C4)等を挙げることができる。かっこ内は、脂肪酸エステル全体の炭素数、脂肪酸部分の炭素数、アルコール部分の炭素数を示す。
上記した高級アルコール系溶剤、高級脂肪酸系溶剤、脂肪酸エステル系溶剤等の極性有機溶剤の沸点は、150℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましく、250℃以上であることがさらに好ましい。なお、沸点が250℃以上の非水系溶剤には、沸点を示さない非水系溶剤も含まれる。
インクは、非水系溶剤として、非極性溶剤、上記した極性有機溶剤以外のその他の極性有機溶剤を1種または2種以上を組み合わせてさらに含んでもよい。
非極性溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素系溶剤、脂環式炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤等の石油系炭化水素系溶剤を好ましく挙げることができる。
脂肪族炭化水素系溶剤及び脂環式炭化水素系溶剤としては、例えば、パラフィン系、イソパラフィン系、ナフテン系等の非水系溶剤を挙げることができる。市販品としては、0号ソルベントL、0号ソルベントM、0号ソルベントH、カクタスノルマルパラフィンN−10、カクタスノルマルパラフィンN−11、カクタスノルマルパラフィンN−12、カクタスノルマルパラフィンN−13、カクタスノルマルパラフィンN−14、カクタスノルマルパラフィンN−15H、カクタスノルマルパラフィンYHNP、カクタスノルマルパラフィンSHNP、アイソゾール300、アイソゾール400、テクリーンN−16、テクリーンN−20、テクリーンN−22、AFソルベント4号、AFソルベント5号、AFソルベント6号、AFソルベント7号、ナフテゾール160、ナフテゾール200、ナフテゾール220(いずれもJXエネルギー株式会社製);アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーM、エクソールD40、エクソールD60、エクソールD80、エクソールD95、エクソールD110、エクソールD130(いずれも東燃ゼネラル石油株式会社製)等を好ましく挙げることができる。
芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、グレードアルケンL、グレードアルケン200P(いずれもJXエネルギー株式会社製)、ソルベッソ100、ソルベッソ150、ソルベッソ200、ソルベッソ200ND(いずれも東燃ゼネラル石油株式会社製)等を好ましく挙げることができる。
石油系炭化水素系溶剤の蒸留初留点は、100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることが一層好ましい。蒸留初留点はJIS K0066「化学製品の蒸留試験方法」に従って測定することができる。
その他の極性有機溶剤として、炭素数12〜20の高級アルコール系溶剤以外のアルコール系溶剤、炭素数12〜20の高級脂肪酸系溶剤以外の脂肪酸系溶剤、炭素数13〜30の脂肪酸エステル系溶剤以外の脂肪酸エステル系溶剤、エーテル系溶剤等がインクに含まれてもよい。この場合、分散安定性、貯蔵安定性、インク粘度、吐出性能等の観点から、その配合量を制限することが好ましい。
油性インク中の非水系溶剤全量に対し、炭素数12〜20の高級アルコール系溶剤、炭素数12〜20の高級脂肪酸系溶剤、及び炭素数13〜30の脂肪酸エステル系溶剤の合計量は、10質量%以上であることが好ましく、より好ましくは30質量%以上であり、さらに好ましくは50質量%以上である。
油性インク中の非水系溶剤全量に対し、炭素数12〜20の高級アルコール系溶剤、炭素数12〜20の高級脂肪酸系溶剤、及び炭素数13〜30の脂肪酸エステル系溶剤の合計量は、特に制限されないが、100質量%以下であってよく、90質量%以下であることが好ましく、より好ましくは80質量%以下である。
炭素数12〜20の高級アルコール系溶剤、炭素数12〜20の高級脂肪酸系溶剤、及び炭素数13〜30の脂肪酸エステル系溶剤は、インク中に少なくとも1種が含まれればよく、2種以上が組み合わされて含まれてもよい。
炭素数12〜20の高級アルコール系溶剤、炭素数12〜20の高級脂肪酸系溶剤、及び炭素数13〜30の脂肪酸エステル系溶剤は、それぞれ独立的に、インク全量に対し、0〜90質量%の範囲で含まれてよく、好ましくは1〜80質量%であり、より好ましくは5〜80質量%である。
インクに含まれる色材としては、顔料、染料、またはこれらの組み合わせであってよい。
顔料としては、例えば、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、多環式顔料、染付レーキ顔料等の有機顔料、及び、カーボンブラック、金属酸化物等の無機顔料を用いることができる。アゾ顔料としては、溶性アゾレーキ顔料、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料等が挙げられる。フタロシアニン顔料としては、金属フタロシアニン顔料、無金属フタロシアニン顔料等が挙げられる。多環式顔料としては、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、チオインジゴ系顔料、アンスラキノン系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料、ジケトピロロピロール(DPP)等が挙げられる。カーボンブラックとしては、ファーネスカーボンブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。金属酸化物としては、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。これらの顔料は単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
顔料の平均粒子径は、吐出安定性と保存安定性の観点から、300nm以下であることが好ましく、より好ましくは200nm以下である。
インクに顔料が含まれる場合、顔料の分散安定性を高めるために、顔料分散剤を用いてもよい。
顔料分散剤としては、例えば、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、ビニルピロリドンと長鎖アルケンとの共重合体、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリエステルポリアミン等が挙げられる。なかでも、高分子分散剤を使用するのが好ましい。
顔料分散剤の市販品例としては、例えば、アイ・エス・ピー・ジャパン株式会社製「アンタロンV216(ビニルピロリドン・ヘキサデセン共重合体)」(商品名)、日本ルーブリゾール株式会社製「ソルスパース13940(ポリエステルアミン系)、16000、17000、18000(脂肪酸アミン系)、11200、24000、28000」(いずれも商品名)、EfkaCHEMICALS社製「エフカ400、401、402、403、450、451、453(変性ポリアクリレート)、46、47、48、49、4010、4055(変性ポリウレタン)」(いずれも商品名)、楠本化成株式会社製「ディスパロンKS−860、KS−873N4(高分子ポリエステルのアミン塩)」(いずれも商品名)、第一工業製薬株式会社製「ディスコール202、206、OA−202、OA−600(多鎖型高分子非イオン系)」(いずれも商品名)、ビックケミー・ジャパン社製「DISPERBYK2155、9077」、クローダジャパン株式会社製「HypermerKD2、KD3、KD11、KD12」等が挙げられる。
上顔料記分散剤の含有量は、顔料を十分にインク中に分散可能な量であれば足り、適宜設定できる。例えば、質量比で、顔料1に対し顔料分散剤を0.1〜5で配合することができる。
染料としては、当該技術分野で一般に用いられているものを任意に使用することができる。油性インクでは、染料は、インクの非水系溶剤に親和性を示すことで、貯蔵安定性がより良好となるため、油溶性染料を用いることが好ましい。
油溶性染料としては、例えば、アゾ染料、金属錯塩染料、ナフトール染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、カーボニウム染料、キノンイミン染料、キサンテン染料、シアニン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、フタロシアニン染料、金属フタロシアニン染料等を挙げることができる。これらは単独で、または複数種を組み合わせて使用してもよい。
色材の含有量としては、顔料及び染料の合計量で、インク全体に対し、0.1〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜15質量%であり、一層好ましくは2〜10質量%である。これによって、インクの呈色を適正にするとともに、インクの安定性を維持することができる。
このインクには、フェノール系酸化防止剤が含まれる。
フェノール系酸化防止剤は、分子内に、フェノール性ヒドロキシ基を有する化合物であることが好ましい。
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アルキルフェノール系化合物、ヒドロキノン系化合物、トコフェロール、トコトリエノール、またはこれらの組み合わせを用いることができる。なかでも、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、インク成分から発生しうるパーオキシラジカルを補足して、パーオキシラジカルに水素を供与し、活性の低いフェノキシラジカルとなる。これによって、パーオキシラジカルによるラジカル連鎖反応を抑制して、インク成分の酸化を防止することができる。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT);ブチルヒドロキシアニソール(BHA);1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(商品名:アデカスタブAO−20);4,4’,4’’−(1−メチルプロパニル−3−イリデン)トリス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)(商品名:アデカスタブAO−30);6,6’−ジ−tert−ブチル−4,4’−ブチリデンジ−m−クレゾール(商品名:アデカスタブAO−40);オクタデシル3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(商品名:アデカスタブAO−50);ペンタエリトリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:アデカスタブAO−60);3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(商品名:アデカスタブAO−80、SumilizerGA80(住友化学株式会社));1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルメチル)−2,4,6−トリメチルベンゼン(商品名:アデカスタブAO−330);住友化学株式会社製「Sumilizerシリーズ」;株式会社ADEKA製「アデカエコロイヤルAIN−320」;BASF社製「IRGANOXシリーズ」等を挙げることができる。かっこ内は、商品名であり、アデカスタブシリーズは株式会社ADEKAより入手可能である。
この実施形態のインクには、リン系酸化防止剤が含まれる。
リン系酸化防止剤は、分子内に、リン酸エステル構造または亜リン酸エステル構造を有する化合物であることが好ましい。特に亜リン酸エステル構造を有するリン系酸化防止剤が好ましい。
リン系酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリ(ノニルフェニル)ホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト等のトリフェニル構造を有する亜リン酸エステル;2−エチルヘキシルジフェニルホスファイト、イソデシルジフェニルホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、ジフェニルモノトリデシルホスファイト等のジフェニル構造を有する亜リン酸エステル;トリイソデシルホスファイト、トリス2−エチルヘキシルホスファイト、トリスデシルホスファイト、トリスラウリルホスファイト、トリストリデシルホスファイト、トリスステアリルホスファイト、トリスオレイルホスファイト等のアルキル基を有する亜リン酸エステル;3,9−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン;3,9−ビス(オクタデシルオキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン;2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)2−エチルヘキシルホスファイト;テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト;テトラフェニル(テトラトリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイトとフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)混合物;テトラ(C12〜C15アルキル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト;ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイトとビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトの混合物;ビス(デシル)ペンタエリスリトールジホスファイト;ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト;ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト等を挙げることができる。
これらのリン系酸化防止剤の市販例としては、例えば、株式会社ADEKA製「TPP、1178、2112、C、135A、3010、PEP−36、PEP−8、HP−10、1500」;城北化学工業株式会社製「JP−360、JP−351、JP−3CP、JP−650、JPM−308、JPM−311、JPM−313、JP−308E、JP−310、JP−312L、JP−333E、JP−318−E、JP−318−O、JPP−100、JPP−613M、JA−805、JPP−88、JPE−10、JPE−13R、JPP−2000PT」;BASF社製「IRGAFOS168」等を挙げることができる。
フェノール系酸化防止剤は、種類や使用環境によって異なるが、インク全体に対し0.01質量%以上含まれることが好ましく、より好ましくは0.05質量%以上であり、さらに好ましくは0.1質量%以上である。これによって、インク成分の酸化を防いで、不純物発生を防止し、吐出性能を改善することができる。
フェノール系酸化防止剤は、インク全体に対し10質量%以下含まれることが好ましく、より好ましくは3質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下である。これによって、余剰のフェノール系酸化防止剤自体が黄変することを防止することができる。
フェノール系酸化防止剤は、炭素数12〜20の高級アルコール系溶剤、炭素数12〜20の高級脂肪酸系溶剤、及び炭素数13〜30の脂肪酸エステル系溶剤の合計量100質量部に対し、0.001〜2.0質量部、特に0.01〜1.0質量部で配合されることが好ましい。
リン系酸化防止剤は、種類や使用環境によって異なるが、インク全体に対し0.01質量%以上含まれることが好ましく、より好ましくは0.05質量%以上であり、さらに好ましくは0.15質量%以上である。これによって、印刷物の黄変を防止することができる。
リン系酸化防止剤は、インク全体に対し10質量%以下で含まれることが好ましく、より好ましくは3質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下である。
リン系酸化防止剤は、炭素数12〜20の高級アルコール系溶剤、炭素数12〜20の高級脂肪酸系溶剤、及び炭素数13〜30の脂肪酸エステル系溶剤の合計量100質量部に対し、0.001〜2.0質量部、特に0.01〜1.0質量部で配合されることが好ましい。
フェノール系酸化防止剤の含有量(Ph)に対するリン系酸化防止剤の含有量(P)は、質量比「P/Ph」で、0.1以上であることが好ましく、より好ましくは0.5以上であり、さらに好ましくは1.0以上である。この質量比「P/Ph」は、5.0以下であることが好ましく、より好ましくは3.0以下であり、さらに好ましくは2.0以下である。
上記各成分に加えて、油性インクには、本発明の効果を損なわない限り、各種添加剤が含まれていてよい。添加剤としては、ノズルの目詰まり防止剤、その他の酸化防止剤、導電率調整剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、酸素吸収剤等を適宜添加することができる。これらの種類は、特に限定されることはなく、当該分野で使用されているものを用いることができる。
また、油性インクには、本発明の効果を損なわない限り、各種の樹脂成分、各種モノマー成分等が添加されてもよい。樹脂成分としてバインダ樹脂を添加する場合は、インク全量に対し10質量%以下、または5質量%以下、さらには1質量%以下に制限することが好ましい。モノマー成分として不飽和二重結合、グリシジル基、エポキシ基等を含む重合性モノマーを添加する場合は、インク全量に対し10質量%以下、または5質量%以下、さらには1質量%以下に制限することが好ましい。
油性インクジェットインクとしての粘度は、インクジェット記録システムの吐出ヘッドのノズル径や吐出環境等によってその適性範囲は異なるが、一般に、23℃において5〜30mPa・sであることが好ましく、5〜15mPa・sであることがより好ましく、約10mPa・s程度であることが、一層好ましい。
インクジェットインクを用いた印刷方法としては、特に限定されず、ピエゾ方式、静電方式、サーマル方式など、いずれの方式のものであってもよい。インクジェット記録装置を用いる場合は、デジタル信号に基づいてインクジェットヘッドから本実施形態によるインクを吐出させ、吐出されたインク液滴を記録媒体に付着させるようにすることが好ましい。
本実施形態において、記録媒体は、特に限定されるものではなく、普通紙、コート紙、特殊紙等の印刷用紙、布、無機質シート、フィルム、OHPシート等、これらを基材として裏面に粘着層を設けた粘着シート等を用いることができる。これらの中でも、インクの浸透性の観点から、普通紙、コート紙等の印刷用紙を好ましく用いることができる。
ここで、普通紙とは、通常の紙の上にインクの受容層やフィルム層等が形成されていない紙である。普通紙の一例としては、上質紙、中質紙、PPC用紙、更紙、再生紙等を挙げることができる。普通紙は、数μm〜数十μmの太さの紙繊維が数十から数百μmの空隙を形成しているため、インクが浸透しやすい紙となっている。
また、コート紙としては、マット紙、光沢紙、半光沢紙等のインクジェット用コート紙や、いわゆる塗工印刷用紙を好ましく用いることができる。ここで、塗工印刷用紙とは、従来から凸版印刷、オフセット印刷、グラビア印刷等で使用されている印刷用紙であって、上質紙や中質紙の表面にクレーや炭酸カルシウム等の無機顔料と、澱粉等のバインダーを含む塗料により塗工層を設けた印刷用紙である。塗工印刷用紙は、塗料の塗工量や塗工方法により、微塗工紙、上質軽量コート紙、中質軽量コート紙、上質コート紙、中質コート紙、アート紙、キャストコート紙等に分類される。
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。本発明は以下の実施例に限定されない。
<インク作製>
表1及び表2に、実施例及び比較例のインク処方及び評価結果を示す。
各表に示す処方にしたがって、各溶剤を混合し、これに顔料分散剤、フェノール系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤を添加し、さらに色材を添加してプレミックスした。続いて、この混合物をビーズミルにて約20分間で分散してインクを得た。
比較例1ではフェノール系酸化防止剤を用いなかった。比較例2ではリン系酸化防止剤を用いなかった。比較例3ではフェノール系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤を用いなかった。
各表に示す成分は、以下の通りである。
銅フタロシアニンブルー:DIC株式会社製「FASTOGEN Blue LA5380」。
カーボンブラック:三菱化学株式会社製「MA−230」。
パーマネントレッド2B:トーヨーカラー株式会社製「LIONOL RED TT−5701G」。
油溶性染料:オリヱント化学工業株式会社製「OIL BLUE 613」。
イソラウリルアルコール(C12):サソールケミカルズジャパン株式会社製「ISOFOL12」
イソステアリルアルコール(C18):日産化学株式会社製「ファインオキソコール18T」
イソパルミチン酸(C16):日産化学工業株式会社製。
イソステアリン酸(C18):高級アルコール工業株式会社製「イソステアリン酸EX」。
ミリスチン酸イソプロピル(C17):日光ケミカルズ株式会社製「NIKKOL IPM−100」。
パルミチン酸イソプロピル(C24):「日光ケミカルズ株式会社製「NIKKOL IPP」。
クエン酸トリブチル(C18):ユングブンツラワー・ジャパン株式会社製「CITROFOL BI」。
AFソルベント4号:JXエネルギー株式会社製「AFソルベント4号」。
AFソルベント5号:JXエネルギー株式会社製「AFソルベント5号」。
ソルスパース16000:日本ルーブリゾール株式会社製「ソルスパース16000」。
ソルスパース18000:日本ルーブリゾール株式会社製「ソルスパース18000」。
BHT:ジブチルヒドロキシトルエン、日揮ユニバーサル株式会社製「BHT」。
アデカスタブAO−50:ヒンダードフェノール系酸化防止剤、株式会社ADEKA製「アデカスタブAO−50」。
アデカスタブ1178:トリ(ノニルフェニル)ホスファイト、株式会社ADEKA製「アデカスタブ1178」。
アデカスタブ3010:トリイソデシルホスファイト、株式会社ADEKA製「アデカスタブ3010」。
<評価方法>
上記得られた各インクを用いて、以下の各評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
(印刷物の黄変)
得られた各インクを用いて、マット紙「写真用マット紙」(コクヨ株式会社製)に10枚へら引きした。この印刷物を10枚重ねて、室温環境下で1週間保管した。1週間後に、10枚重ねた束のうち一番上の印刷物の裏側の黄変具合を、目視で観察した。次の評価基準で評価した。
A:黄変が観察されなかった。
B:わずかに黄変していた。
C:明らかに黄変していた。
(吐出性能)
得られた各インクを、インクジェットプリンタ「オルフィスEX9050」(理想科学工業株式会社製)に導入し、40℃環境にて4週間保管し、1週間に1度、A4サイズの普通紙「理想用紙薄口」(理想科学工業株式会社製)に、主走査方向約51mm(ノズル600本)×副走査方向260mmのベタ画像を10時間連続印刷した。これを、インクをインクジェットンプリンタに導入してから4週間後まで継続し、4サイクル繰り返した。
インクをインクジェットンプリンタに導入してから4週間後の印刷により得られた印刷物(4サイクル目)を用いて、10時間連続印刷時の最後の印刷物のドットの着弾位置のズレが発生したノズルの個数を計測した。全ノズル数を100とした場合に対するズレが生じたノズル数の割合を算出し、吐出性能を、次の評価基準で評価した。
なお、ドットの着弾位置にズレが生じているということは、ノズルからのインク不吐出またはノズルから吐出したインク滴の飛行曲りが生じていることを示す。
A:ドット着弾位置ズレが発生したノズル数の割合が2%未満。
B:ドット着弾位置ズレが発生したノズル数の割合が2%以上10%未満。
C:ドット着弾位置ズレが発生したノズル数の割合が10%以上。
(貯蔵安定性)
得られた各インクを、密閉容器に入れて70℃環境で1週間放置した。放置前、及び放置後のインクの粘度を測定し、下記式によりインクの粘度変化率を算出した。
粘度変化率=[(1週間放置後の粘度値×100)/(放置前の初期粘度値)]−100(%)
算出された粘度変化率を用い、次の評価基準で評価した。
なお、粘度は、「MCR−302」(株式会社アントンパール・ジャパン)を用いて測定した23℃における値とした。
A:粘度変化率5%未満。
B:粘度変化率5%以上。
Figure 2018131576
Figure 2018131576
各表に示す通り、各実施例のインクでは、印刷物の黄変を防ぐことができ、吐出性能に優れた。また、貯蔵安定性も良好であった。
実施例1〜6を通して、フェノール系酸化防止剤0.01質量%以上、リン系酸化防止剤0.01質量%以上で効果を確認することができた。フェノール系酸化防止剤が0.1質量%以上であると吐出性能をより改善することができた。リン系酸化防止剤がフェノール系酸化防止剤と同量またはそれ以上であると黄変をより防ぐことができた。
実施例7では、脂肪酸エステル系溶剤のみを石油系炭化水素系溶剤と組み合わせたものであり、良好な結果であった。
実施例8では、高級アルコール系溶剤のみを石油系炭化水素系溶剤と組み合わせたものであり、良好な結果であった。
実施例9では、油溶性染料をもちいたものであり、良好な結果であった。
比較例1では、リン系酸化防止剤を用いない例であり、黄変が観察された。
比較例2では、フェノール系酸化防止剤を用いない例であり、吐出性能が十分でなかった。
比較例3では、フェノール系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤を用いない例であり、十分な結果が得られなかった。
比較例4では、クエン酸トリブチルを石油系炭化水素系溶剤と組み合わせたものであり、十分な結果が得られなかった。

Claims (5)

  1. 炭素数12〜20の高級アルコール系溶剤、炭素数12〜20の高級脂肪酸系溶剤、及び炭素数13〜30の脂肪酸エステル系溶剤からなる群から選択される1種以上を含む非水系溶剤と、色材と、フェノール系酸化防止剤と、リン系酸化防止剤とを含む、油性インクジェットインク。
  2. 前記炭素数12〜20の高級アルコール系溶剤、前記炭素数12〜20の高級脂肪酸系溶剤、及び前記炭素数が13〜30の脂肪酸エステル系溶剤の合計量は、非水系溶剤全量に対し、50質量%以上である、請求項1に記載の油性インクジェットインク。
  3. 前記リン系酸化防止剤の量は、質量比で、前記フェノール系酸化防止剤の量に対して1.0以上である、請求項1または2に記載の油性インクジェットインク。
  4. 前記フェノール系酸化防止剤は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤である、請求項1から3のいずれか1項に記載の油性インクジェットインク。
  5. 前記リン系酸化防止剤は、亜リン酸エステル構造を有する化合物である、請求項1から4のいずれか1項に記載の油性インクジェットインク。
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