以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
図1及び図2を参照して、一実施形態に係るパルス電源装置を含むプラズマ光源について説明する。図1は、一実施形態に係るパルス電源装置を含むプラズマ光源の概略構成図である。図2は、中心軸線に垂直な断面に沿った同軸状電極の断面図である。図1に示されるプラズマ光源1は、対向型プラズマフォーカス方式の光源であり、たとえば、半導体素子を製造するための露光装置に適用される。プラズマ光源1は、たとえば波長13.5nmの極端紫外光(EUV光)を発生可能に構成されている。プラズマ光源1は、EUV光を発生させることにより、微細なパターンを生成するフォトリソグラフィを可能にする。プラズマ光源1が露光装置に用いられる場合には、連続的なEUV光が必要となるので、プラズマ光源1にはパルス的に発光するEUV光を高い周波数で繰り返し出力することが要求される。
プラズマ光源1は、プラズマを発生させる一対の同軸状電極10と、同軸状電極10に電位差を生じさせる電圧印加装置20と、プラズマ媒体にレーザ光を照射するレーザ装置30と、プラズマ媒質を保持するプラズマ媒質供給部41と、を備える。
一対の同軸状電極10は、極端紫外光を放射するプラズマを発生し、プラズマを閉じ込める。一対の同軸状電極10は、チャンバ2内に収容されており、互いに対向するように配置されている。一対の同軸状電極10は、これらの間に延在する仮想の中央面Pに関して面対称に配置されている。一対の同軸状電極10の間には、一定の間隔(空間)が設けられている。チャンバ2には一又は複数の排気管3が設けられており、排気管3には真空ポンプ(図示せず)が接続される。チャンバ2内は所定の真空度に維持される。チャンバ2は、接地されている。
図1及び図2に示されるように、各同軸状電極10は、1本の中心電極11と、複数の外部電極12と、1つの絶縁体13とを備える。一方の同軸状電極10と、他方の同軸状電極10とは、共通かつ単一の中心軸線AXを有している。
中心電極11は、中心軸線AXに沿って延びる棒状の導電体である。中心軸線AXは、中心電極11の中心に位置している。中心電極11は、高温に対して損傷され難い金属からなる。中心電極11は、たとえばタングステン及びモリブデン等の高融点金属からなる。一対の同軸状電極10において、中心軸線AXは共通である。中心電極11の中心軸線AXは、上記した中央面Pに直交する。中央面Pに対向する中心電極11の先端面は、たとえば半球状をなしている。中心電極11の側面は、たとえば円錐状をなしている。
外部電極12は、中心電極11の周囲に配置された棒状の導電体である。外部電極12は、高温に対して損傷され難い金属からなる。外部電極12は、たとえばタングステン及びモリブデン等の高融点金属からなる。中央面Pに対向する外部電極12の先端面は、半球状等の曲面であってもよく、平面であってもよい。
外部電極12は、中心電極11に対して所定の間隔を有している。複数の外部電極12は、中心軸線AXを軸とした周方向に等間隔に(すなわち回転対称に)配置されている。具体的には、プラズマ光源1には、6本の外部電極12が設けられている。6本の外部電極12は、中心軸線AXを基準として60°ごとに配置されている。なお、外部電極12の本数は6本に限定されず、中心電極11及び外部電極12の大きさ及び形状、これらの間隔等に応じて適宜設定され得る。
中心電極11の周りに複数の外部電極12が配置されることにより、初期放電が、中心電極11と外部電極12との間に発生し得る。この初期放電は、面状放電に至る。面状放電は、電流シート又はプラズマシートとも呼ばれる。
絶縁体13は、たとえばセラミックからなる。絶縁体13は、たとえば円板状をなしている。絶縁体13は、中心電極11及び外部電極12の各基部を支持し、これらの間隔を規定する。絶縁体13は、中心電極11と外部電極12とを電気的に絶縁する。
電圧印加装置20は、各同軸状電極10に同極性又は逆極性の放電電圧を印加することにより、電位差を生じさせる。電圧印加装置20は、2台のパルス電源装置21,21を備える。パルス電源装置21の詳細は後述する。
レーザ装置30は、プラズマ媒質供給部41にレーザ光32を照射するレーザ発生装置31を備える。レーザ発生装置31は、レーザ光32の照射により、プラズマの媒体を放出させ、プラズマの初期放電(すなわち面状放電)を発生させる。レーザ発生装置31はたとえばYAGレーザであり、アブレーションを行うために基本波又は基本波の二倍波を短パルスのレーザ光として出力する。このレーザ光は、ビームスプリッタ(ハーフミラー)34及びミラー35等の光学素子により、少なくとも2本のレーザ光32a,32bに分岐する。レーザ光32a,32bは、プラズマ媒質供給部41に照射される。レーザ光32a,32bが照射されたプラズマ媒質43の表面では、アブレーションによってプラズマ媒質43の一部がプラズマ媒体である中性ガス又はイオン(媒質蒸気MV)となって、中心電極11と外部電極12との間に放出される。
レーザ光32a,32bの照射時には、各同軸状電極10の中心電極11と外部電極12とに対し、電圧印加装置20による放電電圧が印加されている。上述したアブレーションが発生すると、中心電極11と各外部電極12との間の放電が誘発され、さらに、この放電によって面状放電が形成される。複数の(少なくとも2本の)レーザ光が、中心軸線AXの周方向に間隔をあけて、同時に照射されることが好ましい。レーザ光の照射箇所が少ないほど、レーザ光は、中心電極11に対して回転対称な位置に照射されることが望ましい。プラズマ光源1では、レーザ照射点は、対向する2箇所に設定されている(図2参照)。なお、複数のレーザ光の同時照射は、ビームスプリッタ及びミラー等の光学素子を用い、光路長を合わせた複数の光路を形成することによって容易に達成され得る。
プラズマ媒質供給部41は、プラズマ光の発生に用いられるプラズマ媒質を保持する。プラズマ媒質供給部41は、固体又は液体であるプラズマ媒質43と、当該プラズマ媒質43を保持する保持部42と、を有する。プラズマ媒質43は、必要とされる紫外線の波長に応じて選択され得る。たとえば、13.5nmの紫外光が必要な場合は、プラズマ媒質43は、リチウム(Li)、キセノン(Xe)、及びスズ(Sn)等の少なくとも1つが用いられる。また、6.7nmの紫外光が必要な場合は、プラズマ媒質は、ガドリニウム(Gd)、及びテルビウム(Tb)等の少なくとも1つが用いられる。
プラズマ光源1は、1個の同軸状電極10に対して2個のプラズマ媒質供給部41を有する。なお、プラズマ媒質供給部41の個数は2個に限定されず、同軸状電極10の大きさ及び形状等に応じて適宜設定され得る。一対のプラズマ媒質供給部41は、同軸状電極10の周囲に配置されている。
次に、図3を参照してパルス電源装置の詳細を説明する。図3は、一実施形態に係るパルス電源装置の概略回路図である。なお、パルス電源装置21,21は同一の回路構成を有するので、ここでは一方のパルス電源装置21を用いて説明する。
パルス電源装置21は、中心電極11と中心電極11から離間するように配置された複数の外部電極12のそれぞれとの間にパルス放電のための出力電力を供給する装置である。パルス電源装置21は、端子22と複数の端子23(23a〜23f)とを備える。端子22は、同軸状電極10の中心電極11に接続され、端子23a〜23fは、各端子23に対応する外部電極12に接続されている。パルス電源装置21は、中心電極11の電位が外部電極12の電位よりも高くなるように放電電圧を印加することによって、出力電力を供給する。なお、パルス電源装置21は、中心電極11の電位が外部電極12の電位よりも低くなるように放電電圧を印加することによって、出力電力を供給してもよい。
パルス電源装置21は、単一の一次側回路50と、複数の二次側回路60(60a〜60f)と、制御装置70と、を備える。一次側回路50と複数の二次側回路60とは、互いに磁気結合している。具体的には、一次側回路50と複数の二次側回路60とは、単一のコア(鉄心)Bを介して磁気結合している。コアBは、鉄等の高透磁率の材料によって構成されている。コアBは、たとえば環状をなしている。コアBと後述するコイル部51(第1コイル部)及びコイル部61(第2コイル部)とによって昇圧トランスが構成される。
一次側回路50は、昇圧トランスの一次側の回路である。一次側回路50は、後述する二次側回路60のコンデンサC2(出力コンデンサ)を充電する。一次側回路50は、コイル部51と、電源52と、コンデンサC1と、スイッチング素子SW1,SW2と、ダイオードD1〜D4と、インダクタLと、を備える。
コイル部51は、後述のコイル部61との間で電力を送受信する。コイル部51は、コアBに巻き付けられた(巻き回された)導線であり、コアBを介してコイル部61と磁気的に結合されている。電源52は、コンデンサC1を充電するための電源である。電源52は、コンデンサC1に直流の高電圧を供給する。コンデンサC1は、電源52によって充電された電力を二次側回路60に供給するための電力蓄積部である。
スイッチング素子SW1,SW2は、電気的な開閉を切り替え可能な要素である。すなわち、スイッチング素子SW1,SW2の両端(コレクタ及びエミッタ)の間が導通状態であるオン状態と、遮断状態であるオフ状態と、に切り替えられる。スイッチング素子SW1,SW2としては、たとえばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)及びバイポーラトランジスタ等が用いられる。図3に示される例では、スイッチング素子SW1,SW2は、IGBTである。スイッチング素子SW1,SW2のゲート(制御端子)には、制御装置70から駆動信号がそれぞれ供給される。スイッチング素子SW1,SW2は、制御装置70から出力される駆動信号に応じて、オン状態及びオフ状態を切り替える。
ダイオードD1,D2は、スイッチング素子SW1,SW2とそれぞれ電気的に並列に接続されている還流ダイオードである。具体的には、ダイオードD1,D2のカソードはそれぞれスイッチング素子SW1,SW2のコレクタに接続され、ダイオードD1,D2のアノードはそれぞれスイッチング素子SW1,SW2のエミッタに接続されている。ダイオードD3,D4は、コイル部51の誘起エネルギーを回生するためのダイオードである。インダクタLは、突入電流を抑えるために設けられる。
コンデンサC1の一端は、スイッチング素子SW1のコレクタ、及びダイオードD3のカソードに接続される。コンデンサC1の他端は、スイッチング素子SW2のエミッタ、及びダイオードD4のアノードに接続される。スイッチング素子SW1のエミッタとダイオードD4のカソードとは互いに接続され、スイッチング素子SW2のコレクタとダイオードD3のアノードとは互いに接続されている。スイッチング素子SW1のエミッタとダイオードD4のカソードとの接続点と、スイッチング素子SW2のコレクタとダイオードD3のアノードとの接続点とは、インダクタL及びコイル部51を介して接続されている。
二次側回路60は、昇圧トランスの二次側の回路である。二次側回路60は、複数の外部電極12のそれぞれに対応して設けられる。本実施形態では、外部電極12の本数が6本であるので、6つの二次側回路60(60a〜60f)が設けられる。二次側回路60a〜60fは、同一の構成を有するので、ここでは二次側回路60aについて説明する。なお、以下の説明において、各二次側回路60a〜60fの要素を区別する場合には、当該要素を表す符号にa〜fを付して表現する。
二次側回路60aは、複数の外部電極12のうちの当該二次側回路60aに対応する外部電極12a(対応外部電極)と中心電極11との間に出力電力を供給する。二次側回路60aは、コイル部61と、コンデンサC2(出力コンデンサ)と、スイッチング素子SW3と、ダイオードD5〜D8と、を備える。
コイル部61は、コイル部51との間で電力を送受信する。コイル部61は、コンデンサC2の一端と他端との間に設けられている。コイル部61は、コアBに巻き付けられた導線であり、コアBを介してコイル部51と磁気的に結合されている。コンデンサC2は、外部電極12aと中心電極11との間に出力電力を供給するための電力蓄積部である。
スイッチング素子SW3は、電気的な開閉を切り替え可能な要素である。すなわち、スイッチング素子SW3の両端(コレクタ及びエミッタ)の間が導通状態であるオン状態と、遮断状態であるオフ状態と、に切り替えられる。スイッチング素子SW3としては、たとえばIGBT、MOSFET、及びバイポーラトランジスタ等が用いられる。図3に示される例では、スイッチング素子SW3は、IGBTである。スイッチング素子SW3のゲート(制御端子)には、制御装置70から駆動信号が供給される。スイッチング素子SW3は、制御装置70から出力される駆動信号に応じて、オン状態及びオフ状態を切り替える。
ダイオードD5は、スイッチング素子SW3と電気的に並列に接続されている還流ダイオードである。具体的には、ダイオードD5のカソードはスイッチング素子SW3のコレクタに接続され、ダイオードD5のアノードはスイッチング素子SW3のエミッタに接続されている。ダイオードD6〜D8は、逆流防止用のダイオードである。
コンデンサC2の他端は、コイル部61を介してダイオードD6のアノードに接続されている。ダイオードD6のカソードはスイッチング素子SW3のコレクタに接続されている。スイッチング素子SW3のエミッタは、コンデンサC2の一端に接続されている。また、コンデンサC2の一端は、ダイオードD7のアノードに接続され、コンデンサC2の他端はダイオードD8のカソードに接続されている。ダイオードD7のカソードは、端子22に接続されている。ダイオードD8のアノードは、端子23aに接続されている。スイッチング素子SW3は、コンデンサC2の一端とコンデンサC2の他端との電気的な接続を切り替えるためのスイッチともいえる。
二次側回路60aには、電圧計71と電流計72とが設けられている。電圧計71は、コンデンサC2と並列に接続されており、コンデンサC2の両端の電圧を計測する。電圧計71は、種々の手法によって電圧を計測する。電圧の計測は、たとえば、抵抗分圧を利用して行われる。電圧計71は、コンデンサC2の一端の電位が他端の電位よりも高い場合を正の値(正電圧)とし、コンデンサC2の他端の電位が一端の電位よりも高い場合を負の値(負電圧)として電圧値を出力する。電圧計71は、計測した電圧値を制御装置70に出力する。電流計72は、コンデンサC2の他端とコイル部61との間に直列に設けられており、コンデンサC2の他端から一端に向かう電流を計測する。電流計72は、種々の手法によって電流を計測する。電流の計測は、たとえば、CT方式、ホール素子方式、及びロゴスキーコイル方式等によって行われる。電流計72は、コンデンサC2の他端から一端に向かう電流を正として電流値を出力する。電流計72は、計測した電流値を制御装置70に出力する。なお、以下の説明において、「コンデンサC2の電圧」と表現することがあるが、コンデンサC2の電圧は、コンデンサC2の他端の電位を基準とした一端の電位を意味する。
制御装置70は、一次側回路50及び複数の二次側回路60を制御するコントローラである。制御装置70は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、並びに、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等のメモリといったハードウェアを含むコンピュータである。メモリに記憶されているコンピュータプログラムに基づくCPUの制御のもとで各ハードウェアを動作させることにより、制御装置70の機能が実現される。
具体的には、制御装置70は、各電圧計71によって計測された電圧値、及び各電流計72によって計測された電流値に基づいて、一次側回路50及び複数の二次側回路60を制御する。たとえば、制御装置70は、スイッチング素子SW1〜SW3を制御することによって、コンデンサC2を充電する充電処理を行う。制御装置70は、スイッチング素子SW1〜SW3を制御することによって、コンデンサC2に蓄積されている電力の極性を反転させる回生処理を行う。なお、コンデンサC2の他端から一端に電流を流すことによって、コンデンサC2の他端の電位が一端の電位よりも高い状態でコンデンサC2に蓄積されている電力の極性を反転させ、コンデンサC2の一端の電位が他端の電位よりも高くするための充電を回生充電という。
次に、図4〜図7を参照して、パルス電源装置21の動作を説明する。図4は、図3に示されるパルス電源装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。図5は、図3に示されるパルス電源装置の充電時の動作を説明するための図である。図6は、図3に示されるパルス電源装置の放電時の動作を説明するための図である。図7は、図3に示されるパルス電源装置の回生充電時の動作を説明するための図である。
プラズマ光源1の動作を開始したとき、各二次側回路60のコンデンサC2には電力が蓄積されていない。そこで、まず、電圧印加装置20は、コンデンサC2を充電する。具体的に説明すると、制御装置70が、まずスイッチング素子SW1〜スイッチング素子SW3をオン状態とすることでコンデンサC2の充電を開始する(時刻t0)。すると、図5に示されるように、コンデンサC1の一端からスイッチング素子SW1、インダクタL、コイル部51、及びスイッチング素子SW2を順に通ってコンデンサC1の他端に戻る経路に電流I1が流れる。コイル部51に電流I1が流れると、電磁誘導によってコイル部61に誘導起電圧が生じ、コンデンサC2の他端から、コイル部61、ダイオードD6、及びスイッチング素子SW3を通ってコンデンサC2の一端に戻る経路に電流I2が流れる。これにより、コンデンサC2の一端の電位が他端の電位よりも低くなり、コンデンサC2の充電が行われる。つまり、一次側回路50は、コイル部51及びコイル部61を介してコンデンサC2を充電する。
コンデンサC2の充電を行っている間、制御装置70は、各二次側回路60の電圧計71のうちの少なくとも1つによって計測される電圧値が、規定値に達したか否かを判定する。この電圧値は、コンデンサC2の電圧VPを電圧計71によって計測した値である。規定値は、放電に用いられる規定電力がコンデンサC2に充電された場合のコンデンサC2の電圧値であり、たとえば、5kVに設定される。この判定は、電圧値が規定値に達するまで定期的に繰り返される。そして、電圧値が規定値に達したと判定されると、制御装置70は、スイッチング素子SW1〜SW3をオフ状態とし、コンデンサC2の充電を停止する(時刻t1)。このとき、電圧印加装置20は、中心電極11と外部電極12との間に出力電力を供給している。つまり、電圧印加装置20は、中心電極11と外部電極12との間に放電電圧を印加している。そして、制御装置70は、放電(プラズマ光の放射)が行われたか否かを判定する。
ここで、プラズマ光の放射は、以下のように行われる。放電電圧が印加された状態で、レーザ装置30によって、プラズマ媒質供給部41のプラズマ媒質43にレーザ光32a,32bが照射される。その直後、複数の外部電極12のそれぞれと中心電極11との間で放電が生じる(時刻t2)。これにより、図6に示されるように、コンデンサC2の一端から、ダイオードD7、中心電極11、外部電極12、及びダイオードD8を順に通ってコンデンサC2の他端に戻る経路に電流I3(放電電流)が流れ、中心電極11の全周に亘って分布する面状放電が得られる。なお、図6では、図面の都合上、電流I3の経路を簡略化して示しているので、電流I3は中心電極11及び外部電極12を経由しないように描かれているが、実際には中心電極11及び外部電極12を経由する。その後、面状放電は中心電極11の先端に達したことで、その放電電流の出発点は中心電極11の側面から先端面に移行する。この電流の移行によって、一対の面状放電に伴って移動してきたリチウムを含むプラズマは収束し、高密度かつ高温になる。
この現象は中央面P(図1参照)を挟んだ同軸状電極10で進行するため、初期プラズマは、一方の同軸状電極10から他方の同軸状電極10に向かって押し出される。その結果、初期プラズマは、中心軸線AX(図1参照)に沿う両方向からの圧力を受けて同軸状電極10が対面する中間位置(すなわち中央面Pの位置)に移動し、プラズマ媒質を成分とする単一のプラズマが形成される。面状放電が発生している間は、プラズマの高密度化及び高温化が進行し、リチウムを含むイオンの電離が進行する。その結果、プラズマからは極端紫外光を含むプラズマ光が放射される。このプラズマ光はパルス的に放射されるので、上記一連の放電をパルス放電と呼ぶこともある。
このようにしてプラズマ光が放射され、コンデンサC2の他端の電位が一端の電位よりも高くなる。制御装置70は、放電(プラズマ光の放射)が行われたか否かを判定するために、たとえば、各二次側回路60の電圧計71のうちの少なくとも1つによって計測される電圧値が、所定の電圧閾値よりも低くなったかを判定する。電圧閾値は、放電が終了したことを判定可能なコンデンサC2の電圧値であり、たとえば、0Vに設定される。この判定は、電圧値が電圧閾値よりも低くなるまで定期的に繰り返される。
そして、電圧値が電圧閾値よりも低くなったと判定されると、制御装置70は、放電が行われたと判定し得るので、タイマ(不図示)を動作させる。そして、制御装置70は、放電の終了から所定の時間が経過したかを判定する。所定の時間は、コンデンサC2の回生充電が行われた際の再放電を防止するための時間であり、パルス放電のパルス幅(時間幅)よりも長く設定される。パルス放電は、たとえば、2マイクロ秒程度継続される。この判定は、所定の時間が経過するまで定期的に繰り返される。
そして、所定の時間が経過したと判定されると、制御装置70は、各二次側回路60のスイッチング素子SW3をオン状態とし、回生充電を開始する(時刻t3)。このとき、スイッチング素子SW1,SW2はオフ状態のままである。これにより、図7に示されるように、コンデンサC2の他端から、コイル部61、ダイオードD6、及びスイッチング素子SW3を順に通ってコンデンサC2の一端に戻る経路に電流I4(回生電流)が流れる。コイル部61に電流I4が流れると、電磁誘導によってコイル部51に誘導起電圧が生じ、コンデンサC1の他端から、ダイオードD4、インダクタL、コイル部51、及びダイオードD3を順に通って、コンデンサC1の一端に戻る経路に電流I5が流れる。これにより、コンデンサC1の回生充電も行われる。
たとえば、コンデンサC1の容量が、コンデンサC2の容量よりも大きい場合、コンデンサC2の充電時にコンデンサC1に蓄積されている電荷が減少するものの、減少した電荷量は、コンデンサC1の容量に対して大きくない。したがって、時刻t3において、コンデンサC1の回生充電及びコンデンサC2の回生充電は、同時に開始するが、コンデンサC1の回生充電はすぐに終了する。一方、コンデンサC2の回生充電は、開始時にコンデンサC1の回生充電と同期するので、大きな電流I4が流れるが、その後、コンデンサC2の回生充電はゆっくりと行われる。このため、電流I4の波形及び電流I5の波形は、図4に示されるような波形となる。
コンデンサC2の他端から一端に電流I4が流れることで、コンデンサC2に負電圧で充電されている電力が反転して正電圧に充電されていく。このとき、複数の二次側回路60のうちで、コンデンサC2の負電圧が最も大きい(つまり、コンデンサC2の電圧VPが最も低い)二次側回路60において、電流I4が流れ、コンデンサC2が正電圧に充電される。コンデンサC2が回生充電されている過程で、コンデンサC2の電圧VPが、他の二次側回路60のコンデンサC2の電圧VPと同じになると、それらの二次側回路60で同期して回生充電が行われる。二次側回路60は、コアBを介して互いに磁気結合されているので、各二次側回路60に流れる電流I4が相互に作用しながら回生充電されていく。
ここで、図8及び図9を参照して、回生充電について詳細に説明する。図8は、図7に示される回生充電のメカニズムを説明するための図である。図9は、図8の時点P2付近を拡大して示す図である。まず、二次側回路60a,60bのみが存在する場合の回生充電について説明する。なお、図8の(a)では、スイッチング素子SW3は省略されている。
図8の(a)に示されるように、放電後に外部電極12aに接続されているコンデンサC2aの電圧VPaが−4000VとなるようにコンデンサC2aが反転充電され、外部電極12bに接続されているコンデンサC2bの電圧VPbが−1000VとなるようにコンデンサC2bが反転充電されたとする。時刻t3において、スイッチング素子SW3a,SW3bがオン状態とされると、二次側回路60a,60bはLC回路となる。二次側回路60a,60bが独立している場合には、コンデンサC2a,C2bに充電された負電圧が反転して正電圧となる回生充電が継続的に行われる。しかし、コイル部61a,61bがコアB(トランス)によって磁気結合されていることから、以下のように動作する。
まず、図8の(b)に示されるフェーズP1では、コンデンサC2bの電圧VPbよりもコンデンサC2aの電圧VPaの方が低いので、二次側回路60aで反転(回生充電)が開始する。つまり、二次側回路60aにおいて、電流I4aがコンデンサC2aの他端からコイル部61a及びダイオードD6aを順に通って、コンデンサC2aの一端に流れ込む。これにより、コンデンサC2aの電圧VPaは増加していく。このとき、コイル部61aに電流I4aが流れると、電磁誘導によってコイル部61bに誘導起電圧が生じる。しかしながら、ダイオードD6bがあるので、二次側回路60bには逆電流は流れない。二次側回路60aにおいて、コンデンサC2aの電圧VPaがコンデンサC2bの電圧VPbである−1000Vに達するまで(時点P2)回生充電が継続される。
そして、フェーズP3では、図9の(a)に示されるように、コンデンサC2aの電圧VPaがコンデンサC2bの電圧VPbよりも高くなると、二次側回路60aにおいて流れている電流I4aが正弦波状に減少する。これにより、コイル部61bに誘導起電圧が生じ、二次側回路60bにおいて、コンデンサC2bの他端からコイル部61b及びダイオードD6bを順に通ってコンデンサC2bの一端に向かう経路に電流I4bが流れ始め、電流I4bは、電流I4aと逆位相で正弦波状に増加する。
二次側回路60bにおいて、電流I4bが流れることによって、コンデンサC2bの電圧VPbが増加していく。そして、コンデンサC2bの電圧VPbがコンデンサC2aの電圧VPaよりも高くなると、電流I4bが正弦波状に減少する。これにより、コイル部61aに誘導起電圧が生じ、二次側回路60aにおいて電流I4aが、電流I4bと逆位相で正弦波状に増加する。この動作を繰り返しながら、二次側回路60a,60bにおいて回生充電が進む。
そして、フェーズP4では、回生充電が終了し、コンデンサC2aの電圧VPaとコンデンサC2bの電圧VPbとは同電圧となる。損失が無視できる程度に小さい場合には、コンデンサC2a,C2bの電圧VPa,VPbは、回生充電前にコンデンサC2a,C2bに反転充電されていた電圧VPa,VPbの平均値の極性を反転した値(+2500V)となる。
続いて、二次側回路60a,60b,60cが存在する場合の回生充電について説明する。放電後に外部電極12aに接続されているコンデンサC2aの電圧VPaが−4000VとなるようにコンデンサC2aが反転充電され、外部電極12bに接続されているコンデンサC2bの電圧VPbが−3000VとなるようにコンデンサC2bが反転充電され、外部電極12cに接続されているコンデンサC2cの電圧VPcが−2000VとなるようにコンデンサC2cが反転充電されたとする。
二次側回路の数が2つの場合と同様に、コンデンサC2aの電圧VPaが最も高いので、二次側回路60aで反転充電(回生充電)が開始する。このとき、コイル部61b,61cに誘導起電圧が生じるが、ダイオードD6b,D6cがあるので、逆電流は流れず、コンデンサC2b,C2cの電圧VPb,VPcは変動しない。二次側回路60aにおいて、コンデンサC2aの電圧VPaがコンデンサC2bの電圧VPbである−3000Vに達するまで回生充電が継続する。
そして、コンデンサC2aの電圧VPaがコンデンサC2bの電圧VPbよりも高くなると、上述のフェーズP3と同様にして、電流I4aと電流I4bとが交互に流れ、コンデンサC2a,C2bの電圧VPa,VPbが増加する。このとき、コンデンサC2aの電圧VPaとコンデンサC2bの電圧VPbとは略同じである。この動作は、コンデンサC2a,C2bの電圧VPa,VPbがコンデンサC2cの電圧VPcである−2000Vに達するまで継続する。
そして、コンデンサC2a,C2bの電圧VPa,VPbがコンデンサC2cの電圧VPcよりも高くなると、二次側回路60a,60bにおいて流れている電流I4a,I4bが正弦波状に減少する。これにより、コイル部61cに誘導起電圧が生じ、二次側回路60cにおいて、コンデンサC2cの他端からコイル部61c及びダイオードD6cを順に通ってコンデンサC2cの一端に向かう経路に電流I4cが流れ始め、電流I4cは正弦波状に増加する。なお、電流I4cが流れ始めるときのコンデンサC2aの電圧VPa及びコンデンサC2bの電圧VPbには、わずかに差があり、コンデンサC2aの電圧VPa及びコンデンサC2bの電圧VPbのいずれが高いかはタイミングによる。ここでは、電圧VPc、電圧VPb、及び電圧VPaの順に高いとする。
二次側回路60cにおいて、電流I4cが流れることによって、コンデンサC2cの電圧VPcが増加していく。そして、コンデンサC2cの電圧VPcがコンデンサC2a,C2bの電圧VPa,VPbよりも高くなると、電流I4cが正弦波状に減少する。これにより、コイル部61bに誘導起電圧が生じ、二次側回路60bにおいて電流I4bが正弦波状に増加する。二次側回路60bにおいて、電流I4bが流れることによって、コンデンサC2bの電圧VPbが増加していく。そして、コンデンサC2bの電圧VPbがコンデンサC2a,C2cの電圧VPa,VPcよりも高くなると、電流I4bが正弦波状に減少する。これにより、コイル部61aに誘導起電圧が生じ、二次側回路60aにおいて電流I4aが正弦波状に増加する。
このような動作を繰り返しながら、二次側回路60a,60b,60cにおいて回生充電が進む。このような動作によって、二次側回路60a,60b,60cには、位相の異なる正弦波状の電流I4a,I4b,I4cが流れる。コンデンサC2a,C2b,C2cの電圧VPa,VPb,VPcは、微視的には位相の異なる正弦波の波形形状でありながら、巨視的にはほぼ同電圧となる。
そして、反転充電が終了し、コンデンサC2a,C2b,C2cの電圧VPa,VPb,VPcは同電圧となる。損失が無視できる程度に小さい場合には、コンデンサC2a,C2b,C2cの電圧VPa,VPb,VPcは、回生充電前にコンデンサC2a,C2b,C2cに反転充電されていた電圧VPa,VPb,VPcの平均値の極性を反転した値(+3000V)となる。
6つの二次側回路60が存在する場合でも同様に、コンデンサC2の電圧の最も低い二次側回路60から回生充電が始まり、コンデンサC2の電圧が次に低い二次側回路60と同電圧になった時点で、互いに作用しながら回生充電が進む。同様の動作が次々に進み、最終的に6つの二次側回路60が相互に作用しながら回生充電が進んでいく。最終的に、コンデンサC2a〜C2fの電圧VPa〜VPfは、回生充電前にコンデンサC2a〜C2fに反転充電されていた電圧VPa〜VPfの平均値の極性を反転した値に到達し、回生充電が完了する。
図4に戻って、パルス電源装置21の動作の説明を続ける。回生充電を開始した後、制御装置70は、回生充電が終了したか否かを判定する。この判定は、たとえば、各二次側回路60の電圧計71のうちの少なくとも1つによって計測される電圧値の時間変化を用いて行われる。具体的には、制御装置70は、電圧値の時間変化が、所定の第1範囲内であるか否かを判定する。回生充電が終了すると、コンデンサC2の電圧変化はほとんどなくなるので、第1範囲は、回生充電が終了したと判定し得る電圧値の時間変化に設定される。制御装置70は、電圧値の時間変化が第1範囲内であれば、回生充電が終了したと判定し、第1範囲外であれば、回生充電が終了していないと判定する。
また、この判定は、各二次側回路60の電圧計71によって計測された電圧値のうち、最大の電圧値及び最小の電圧値の差分を用いて行われてもよい。この場合、制御装置70は、上記差分が所定の第2範囲内であるか否かを判定する。回生充電が終了すると、各二次側回路60のコンデンサC2の電圧は略同電圧となるので、第2範囲は、回生充電が終了したと判定し得る最大の電圧値及び最小の電圧値の差分に設定される。制御装置70は、差分が第2範囲内であれば、回生充電が終了したと判定し、第2範囲外であれば、回生充電が終了していないと判定する。制御装置70は、さらに最小の電圧値の時間変化が、第1範囲内であるか否かの判定を行い、差分が第2範囲内であり、かつ、最小の電圧値の時間変化が第1範囲内である場合に、回生充電が終了したと判定してもよい。
また、制御装置70は、各二次側回路60の電流計72によって計測された電流値と予め定められた電流閾値とを比較することによって、回生充電が終了したか否かを判定してもよい。回生充電が終了すると、電流I4はほとんど流れなくなるので、電流閾値は、回生充電が終了したと判定し得る電流値に設定される。具体的には、制御装置70は、電流計72によって計測された電流値が電流閾値よりも小さい場合に回生充電が終了したと判定し、電流計72によって計測された電流値が電流閾値以上である場合に回生充電が終了していないと判定する。
制御装置70は、上記電圧値を用いた判定と上記電流値を用いた判定とを組み合わせて、回生充電が終了したか否かの判定を行ってもよい。また、制御装置70は、電圧値及び電流値から電力値を計算し、電力値の時間変化に基づいて、回生充電が終了したか否かの判定を行ってもよい。たとえば、制御装置70は、電力値の時間変化が所定の電力範囲内であるか否かを判定する。回生充電が終了すると、コンデンサC2の電力変化はほとんどなくなるので、電力範囲は、回生充電が終了したと判定し得る電力値の時間変化に設定される。制御装置70は、電力値の時間変化が電力範囲内であれば、回生充電が終了したと判定し、電力範囲外であれば、回生充電が終了していないと判定する。
この判定は、回生充電が終了するまで定期的に繰り返される。そして、回生充電が終了したと判定されると、制御装置70は、スイッチング素子SW1,SW2をオン状態とし、充電を開始する(時刻t4)。このとき、スイッチング素子SW3はオン状態のままである。そして、制御装置70は、各二次側回路60の電圧計71のうちの少なくとも1つによって計測される電圧値が、規定値に達したか否かを判定する。以降、上述の動作が繰り返される。
このように、複数の二次側回路60のそれぞれは、コンデンサC2の一端から中心電極11及び対応する外部電極12を介してコンデンサC2の他端に戻るように、コンデンサC2に蓄えられた電力を供給することによって出力電力を供給している。制御装置70は、スイッチング素子SW3を制御することによって、コンデンサC2の他端に戻った電力を一端に戻す回生充電を行い、回生充電後にコンデンサC2に蓄えられている電力が規定電力となるまでコンデンサC2を充電するように、一次側回路50を制御する。
以上説明したように、パルス電源装置21では、単一の一次側回路50によって複数の二次側回路60のコンデンサC2が充電される。そして、各コンデンサC2に蓄えられた電力が、コンデンサC2の一端から中心電極11及び外部電極12を介してコンデンサC2の他端に戻るように供給されることで、各コンデンサC2から中心電極11及び外部電極12の間にパルス放電のための出力電力が供給される。このため、出力電力を供給した後、コンデンサC2には、供給前の電力とは極性が反対の電力が蓄積される。プラズマの電気抵抗は非常に小さいので、プラズマで電力はほとんど消費されない。したがって、コンデンサC2から供給した出力電力の大部分がコンデンサC2に戻ってくる。
そして、各コンデンサC2の一端と他端との間にはコイル部61が設けられているので、コンデンサC2とコイル部61とでLC回路が構成される。これにより、コンデンサC2の他端からコイル部61を介して一端に向けて電流I4が流れ、コンデンサC2が回生充電される。そして、一次側回路50によって各コンデンサC2を再充電し、不足している電力を補うことで、パルス放電ごとの出力電力を均一化する。たとえば、コンデンサC2の電圧が5kVとなる出力電力でパルス放電させた後に、コンデンサC2の電圧が−4.5kVとなる電力がコンデンサC2に回収されたとする。回生充電により極性を反転させ、かつ0.5kVの電圧分の電力を一次側回路50によって補充することで、次のパルス放電のための充電が完了する。このように、パルス放電に用いられた電力を再利用することが可能となり、プラズマ光源1における電力消費量を低減することが可能となる。
しかしながら、インピーダンスが異なること等に起因して、コンデンサC2ごとに回収される電力が異なることがある。この電力の極性を単に反転した場合には、一次側回路50によって、不足している電力を補ったとしても、各コンデンサC2に蓄積されている電力を均一化することはできない。つまり、一次側回路50によって、各コンデンサC2を同時に再充電するので、コンデンサC2ごとに充電量を変えることはできない。このため、回生充電された状態でコンデンサC2に蓄積されている電力が不均一であれば、一次側回路50によって再充電した後のコンデンサC2に蓄積されている電力も不均一となる。このような状態で、パルス放電を行うと、初期プラズマが不均一となり、収束したプラズマの温度及び密度が上がらないおそれがある。その結果、プラズマ光の発光強度が低下する懸念がある。
これに対し、パルス電源装置21では、複数の二次側回路60のコイル部61は、同一のコアBに巻き付けられているので、互いに磁気的に結合している。このため、出力電力を供給した後にコンデンサC2に蓄積されている電力の大きさ(負電圧)が最も大きい、つまり、コンデンサC2の電圧が最も低い二次側回路60において、コンデンサC2の他端から一端に電流I4が流れ、コンデンサC2が回生充電される。コンデンサC2が回生充電されている過程で、コンデンサC2の電圧が、他の二次側回路60のコンデンサC2の電圧と同じになると、各コンデンサC2の電圧が等しくなるように、各二次側回路60に流れる電流I4が相互に作用しながら、コンデンサC2の他端から一端に流れ、各コンデンサC2が回生充電されていく。その結果、回生充電後の複数の二次側回路60のコンデンサC2それぞれに蓄積されている電力が均一化される。これにより、再利用される電力のばらつきを低減することが可能となる。
そして、一次側回路50によって、不足している電力を補うことにより、各コンデンサC2から供給される出力電力を均一化しつつ、パルス放電ごとの出力電力を均一化することができる。外部電極12ごとに出力電力が均一化されるので、初期プラズマが均質化されてプラズマの収束が向上し,高温かつ高密度のプラズマを形成することができる。また、パルス放電ごとに供給される出力電力が安定化することにより、プラズマ光の発光強度がパルス放電ごとにばらつくことが抑制される。その結果、プラズマ光源1の安定性を向上させることが可能となる。
複数の二次側回路60のそれぞれは、コイル部61を介してコンデンサC2の一端と他端とを電気的に接続し、又は電気的に切り離すためのスイッチング素子SW3を備えている。このスイッチング素子SW3により、コンデンサC2の一端と他端とをコイル部61を介して電気的に接続することによって、LC回路が構成される。これにより、回生充電を開始させることが可能となる。コンデンサC2の一端と他端とがコイル部61を介して常に接続されている場合には、パルス放電を行っている際に、コンデンサC2に戻った電力が回生充電されて、再放電を行う可能性がある。このため、パルス放電が開始されてから、パルス放電に要する時間よりも遅いタイミングで、制御装置70がスイッチング素子SW3をオン状態とすることにより、再放電を確実に防止することができる。
そして、回生充電後にコンデンサC2に蓄えられている電力が所定量となるまでコンデンサC2を充電するように、一次側回路50が制御される。この場合、回生充電を行った後にコンデンサC2が充電されるので、電力を確実に再利用することができる。このため、プラズマ光源1における電力消費量をさらに低減することが可能となる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。たとえば、パルス電源装置21は、プラズマ光源1以外にも用いられ得る。パルス電源装置21は、パルス的に繰り返し充電し、かつ複数の電極対に同電圧を印加するような装置(高い繰り返し周期でパルス電力を必要とする装置)に適用可能である。
また、一次側回路50は、高周波電源であってもよい。
また、パルス電源装置21は、中心電極11の電位が外部電極12の電位よりも低くなるように放電電圧を印加することによって、出力電力を供給してもよい。この場合、端子22が二次側回路60ごとに設けられ、各二次側回路60のダイオードD7のカソードは、対応する端子22に接続される。そして、各端子22は、二次側回路60と対応する外部電極12に接続される。また、パルス電源装置21が有する端子23の数は1つであり、各二次側回路60のダイオードD8のアノードは端子23に接続される。そして、端子23は中心電極11に接続される。