JP2018127832A - 墜落防止手すりにおける支柱根元補修工法 - Google Patents

墜落防止手すりにおける支柱根元補修工法 Download PDF

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Abstract

【課題】別途吸水ポンプを用いることなく固定支柱内の滞留水を外部に排出でき、固定支柱の根元部分を補修する充填材によって大きな発熱を伴うことなく補修を行うことができ、しかも作業性の優れた補修工法を提供する。【解決手段】下部が躯体1内に埋設された筒状の固定支柱10のうち、躯体1近傍の低い位置に対して下開孔31が形成される。エポキシ樹脂と硬化剤と骨材とを混合した充填材Cが、下開孔31を通してかつ該下開孔31付近の高さ位置から流下されつつ固定支柱10内に供給される。充填材Cと固定支柱10内に存在する滞留水Bとが置換されつつ、滞留水Bが下開孔31から排出される。充填材Cは、下開孔31の下端位置まで充填される。所定時間後、固定支柱10内の充填材Dの上面が下開孔31の下端位置よりも沈下しているとき、固定支柱10内に充填材Cを追加的に充填する。【選択図】 図4

Description

本発明は、墜落防止手すりにおける支柱根元補修工法に関するものである。
ベランダやバルコニ等の躯体に固定される墜落防止手すりは、下部が躯体内に埋設された固定支柱に対して、笠木や格子材等によって構成される囲い部材が取付けられた構造とされる。固定支柱のうち躯体内に埋設された部分は、通常は筒状とされることから、長期の使用に伴う固定支柱内部への水の浸入により、固定支柱を劣化させる原因となる。固定支柱は、墜落防止手すりの強度を確保する重要部材となることから、劣化が大きく進行しないうちに補強することが望まれる。
特許文献1には、墜落防止手すりにおける中空の固定支柱の補修のため、下部が躯体内に埋設された固定支柱のうち低い位置に対して穴を形成して、この穴から固定支柱の下部に滞留している水を吸引ポンプにより抜き取った後に、硬化性樹脂を、上記穴から注入して固定支柱内の下部に充填することが開示されている。
特許文献2には、中空の固定支柱の補修のため、下部が躯体内に埋設された固定支柱のうち低い位置に対して穴を形成して、硬化性樹脂を、上記穴を通して固定支柱の底壁付近にまで深く挿入したチューブを介して、固定支柱の底壁付近から供給することにより、硬化性樹脂と固定支柱の底部に滞留していた滞留水とを置換しつつ、固定支柱の下部に硬化性樹脂を充填するものが開示されている。
特開2005−213740号公報(特許第3743721号公報) 特開2009−270401号公報(特許第5130565号公報)
前述した各特許文献に記載のものでは、固定支柱の下部内に充填される充填材が硬化性樹脂(エポキシ樹脂)であることから、固定支柱の滞留水との置換によって劣化の進行を弱めるということは期待できるものの、固定支柱の下部つまり根元を補強するという点は期待できない。また、充填材として硬化性樹脂を用いることは、硬化に際しての発熱量が大きくなって固定支柱の膨張を招き、これを取り巻く躯体の損傷の要因ともなり、好ましくないものとなる。
さらに、特許文献2に記載のものでは、特許文献1のものに比して、吸水ポンプによる滞留水の排出を行わなくてもよいという利点を有する反面、充填材として用いられる硬化性樹脂(エポキシ樹脂)の比重は水の比重と大きな差がないため、滞留水との置換がスムーズに行われにくいものとなる。このため、硬化性樹脂の充填を相当にゆっくりと行う必要があり、作業性の悪いものとなる。なお、充填材を急速に充填すると、空気や滞留水の一部を巻き込む可能性が高くなってしまい、空気や滞留水の一部を巻き込み膨張した状態で硬化性樹脂が硬化すると、その分強度が低下してしまうことになり、また、膨張した硬化性樹脂により固定支柱の穴が塞されることにも繋がる。
以上に加えて、固定支柱の穴に通したチューブを利用して充填材を固定支柱の底壁付近から充填する場合には、充填材の充填状況を目視できないため、固定支柱の穴から多くの充填材を溢れさせていた。また、充填材を所定高さまで充填した後にチューブを引き抜く際に、チューブが引き抜かれた部分が空所となることから、この空所分の充填材をさらに充填しつつチューブの引き抜き作業を慎重に行う必要があることから、作業性が悪いものとなる。
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、別途吸水ポンプを用いることなく固定支柱内の滞留水を外部に排出でき、大きな発熱を伴わないようにしつつ固定支柱の根元部分の補強を十分に行うことができ、しかも作業性の優れた墜落防止手すりにおける支柱根元補修工法を提供することにある。
前記目的を達成するため、本発明にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、
筒状とされた固定支柱の下部が躯体内に埋設されてなる墜落防止手すりにおける支柱根元補修工法であって、
前記固定支柱のうち前記躯体の近傍となる低い位置に対して下開孔を形成する第1工程と、
エポキシ樹脂を主成分とする主剤と硬化剤と骨材とを混合して、流動性を有する充填材を得る第2工程と、
前記第2工程で得られた充填材を、前記下開孔を通してかつ該下開孔付近の高さ位置から流下させつつ前記固定支柱内に供給することにより、前記固定支柱内に存在する滞留水を該充填材で置換させつつ該下開孔から排出させて、該充填材を該下開孔の下端位置まで充填する第3工程と、
前記第3工程の後に、前記固定支柱内に充填された前記充填材を所定時間以上養生する第4工程と、
前記第4工程での養生中に、前記固定支柱内に充填された前記充填材の上面が前記下開孔の下端位置よりも沈降したか否かを確認する第5工程と、
前記固定支柱内に充填された前記充填材の上面が前記下開孔の下端位置よりも沈降したことが前記第5工程で確認されたときに、前記第2工程で得られた充填材を、前記下開孔を通して該下開孔の下端位置まで追加的に充填する第6工程と、
を備えているようにしてある。
上記解決手法によれば、充填材と滞留水との置換によって滞留水を下開孔から外部に排出するので、滞留水を排水するための吸水ポンプを別途用いる必要のないものとなる。また、充填材は、骨材を含むことから比重が大きいものとなり、このため、下開孔の高さ付近から充填材を充填しても、すみやかに下方へと移動して、空気や滞留水の一部を巻き込むことなく固定支柱の底壁に徐々に堆積させて、最終的に下開孔の下端位置までスムーズに充填材を充填することができる。また、上記解決手法では、下開孔から充填材の充填状況を目視することでき、下開孔から溢れ出る充填材の量を極力少なくすることができ、加えて、固定支柱の穴に通したチューブを利用して固定支柱の底壁付近から充填材を充填する場合に比して、チューブの引き抜きの際に形成される空所の問題ということを考慮する必要がないので、作業性向上の点で好ましいものとなる。さらに、上記解決手法では、充填材が骨材を含む分、充填材が硬化する際に発生する熱量を低減して、固定支柱の膨張を防止あるいは抑制することができ(熱害防止)、さらに躯体損傷の防止にも繋がる。さらに又、充填材が骨材を有することから、充填材の硬化後において固定支柱の根元の強度が高まり、補強効果も期待できる。以上に加えて、充填材が、流動性を有する状態のときに躯体のひび割れ部分等に浸入して、固定支柱内の充填材の上面高さが低下してしまうこともあるが、固定支柱内に充填材を追加的に充填することにより、硬化した状態において充填材を下開孔の下端位置にまで確実に充填しておくことができる(補修後の固定支柱内での結露水や雨水等の滞留防止)。
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、次のとおりである。
前記支柱根元補修工法について、前記第5工程または前記第6工程の後に、通気性を有すると共に前記固定支柱内の水を排水可能な排水通気キャップで施蓋する第7工程と、をさらに備えているようにすることができる。この場合、下開孔を通して雨水が固定支柱内に浸入してしまう事態を防止しつつ、結露等によって固定支柱内に発生した水を下開孔を通して外部に排出することができる。
また、前記支柱根元補修工法について、前記固定支柱の上部に対して上開孔を形成して、該上開孔と前記下開孔とを通して前記固定支柱内を外気が循環可能に設定する第8工程と、をさらに備えているようにすることができる。この場合、固定支柱内において上下の貫通孔を通して外気が循環されることから、固定支柱内が極力乾燥状態に保持されて、内部からの腐食を防止あるいは抑制する上で好ましいものとなる。
また、前記支柱根元補修工法について、前記上開孔を、通気性を有すると共に前記固定支柱内への水の浸入を防止する防水通気キャップで施蓋する第9工程と、をさらに備えているようにすることができる。この場合、上開孔を通して雨水が固定支柱内に浸入してしまう事態を防止する上で好ましいものとなる。
また、前記支柱根元補修工法について、前記硬化剤が、アミン系を主成分とし、
前記骨材が、シリカを主成分としている、
ようにすることができる。この場合、充填材として、入手容易な汎用品を用いた成分構成とすることができる。
本発明によれば、別途吸水ポンプを用いることなく固定支柱内の滞留水を外部に排出でき、且つ充填材注入の作業性に優れたものとなり、また、補修に用いた充填材により固定支柱の根元部分の大きな発熱や膨張を伴わず、さらには補強効果を得ることができるものとなる。
本発明により補修される対象となる固定支柱を含む墜落防止手すりの一例を示す図。 図1に示す墜落防止手すりにおける固定支柱部分をその側方から見た一部断面側面図。 図2の状態から、固定支柱の下部に下開孔を形成した状態を示す図。 図3の状態から、下開孔を通して充填材を充填する状態を示す図。 図4の状態から、固定支柱の上部に上開孔を形成した状態を示す図。 下開孔と上開孔とをそれぞれ防水通気キャップで施蓋した状態を示す図。
図1において、バルコニ等の躯体1に、墜落防止手すりAが設置されている。この墜落防止手すりAは、躯体1に下部が埋設された複数本の固定支柱10と、固定支柱10に取付けられた囲い部材20とを有する。囲い部材20は、隣合う固定支柱10に配設されるもので、本実施形態では、笠木21および格子材22とで構成されている。笠木21は、隣合う固定支柱10の上端部に架渡されると共に、固定具によって固定支柱10に固定されている。また、格子材22は、笠木21の下方位置において、隣合う固定支柱10の間に配設されると共に、固定具によって固定支柱10に固定されている。なお、本実施の形態では、囲い部材20に格子材22が用いられているが、格子材22の代わりにパネル材が用いられ、あるいは格子材とパネル材とが併用されていてもよい。また、囲い部材20としては、笠木21と格子材22等とを一体的に形成したものであってもよい。
図2に示すように、固定支柱10は、芯材11と支柱本体12とによって構成されている。芯材11は、鉄系金属によって筒状に形成されている(本実施形態では断面略四角形状の角筒)。支柱本体12は、アルミニウム系金属によって筒状(本実施形態では、芯材11の形状に対応して断面略四角形状の角筒)に形成されている。
本実施形態では、芯材11の上端部が、支柱本体12内における上下方向略中央部の位置に達しており、芯材11の下部が、躯体1の取付孔1a内に深く挿入されている。これに対して、支柱本体12は、その下部が若干取付孔1a内に挿入されているが、その下端が芯材11の下端よりも上方に位置している。なお、支柱本体12内の上端部まで芯材11の上端部が達する等、芯材11と支柱本体12の長さの関係は特に問わないものである。また、芯材11及び支柱本体12は、取付孔1a内に充填されたモルタル2等によって躯体1と一体化されている。
次に、本発明方法を用いて固定支柱10を補修する手法について、図2以下を参照しつつ説明する。なお、本発明による補修対象部位が、図1において符号αで示される。また、固定支柱10の補修に際しては、実施形態では、囲い部材20を固定支柱10に取付けたまま行うようにしてある。さらに、図2に示すように、補修前における固定支柱10内の底部には、長年の使用によって雨水が浸入して、滞留水Bが存在しているものとする。
まず、固定支柱10のうち躯体1近傍の低い位置に対して、ドリル加工等によって下開孔31が形成される。下開孔31が形成された直後の状態が図3に示される。このように、下開孔31は、固定支柱10の側面(格子材22側)に形成されることが好ましい。
この後、図4に示すように、下開孔31を通して、例えば手動式の充填用ノズル41によって、充填材が固定支柱10内に注入される。充填用ノズル41から吐出された充填材が符号Cで示され、固定支柱10内で流下(落下)する充填材Cが一点鎖線の矢印で示され、固定支柱10内に堆積された充填材が符号Dで示される。充填材Cは、後述するが、エポキシ樹脂を主成分とする主剤と硬化剤と骨材との混合物とされて、十分な流動性を有すると共に、骨材を含有することから比重が従来の硬化性樹脂(エポキシ樹脂)の比重に比して十分に大きくなっている。
充填材Cは、固定支柱10内に充填される直前に用意するのが好ましい。すなわち、エポキシ樹脂を主成分とする主剤と硬化剤とが混合され、この混合物にさらに骨材が混合されて充填材Cが得られ、この充填材Cが充填用ノズル41に充填される。なお、充填材Cについては後述する。
充填材Cを固定支柱10内に注入する際には、充填用ノズル41の先端41aを下開孔31内に浅く挿入した状態で行われる。このとき。充填用ノズル41の先端41aの高さ位置は、下開孔31の下端位置と同じかそれよりも高い位置に維持される。
充填用ノズル41から吐出された充填材Cは、滞留水Bを通して固定支柱10の底壁上に徐々に堆積されていく。固定支柱10内への充填材Cの充填の進行に伴って、固定支柱10内の滞留水Bの水面が徐々に上昇されて、やがて、下開孔31から外部へ排出され始める。充填用ノズル41からの充填材Cの充填状況と、下開孔31を通しての滞留水Bの排出状況とが、下開孔31から目視によって容易に確認することができる。
充填材Cの供給は、固定支柱10内に充填された充填材Dの上面が、下開孔31の下端位置に達するまで行われる。充填材Dが下開孔31の下端位置まで充填された状態が、図5に示される。滞留水Bは、その全量が下開孔31を通して外部へ排出された状態とされる。充填材Cを固定支柱10内に供給する際に、充填材Cの比重が大きいことから、空気や滞留水の一部を巻き込むことなく、滞留水Bとの置換がスムーズに行われる。また、下開孔31から充填材Dの充填状況を目視することでき、下開孔31から溢れ出る充填材の量を極力少なくすることができる。
充填材Dの充填が完了した図5の状態で、所定時間以上(本実施形態では24時間以上)養生される。この養生後は、充填材Dが十分に硬化された状態となる。この養生を行っている間、固定支柱10内に充填された充填材Dは、流動性を有する状態のときに、躯体1のひび割れ等の部分に浸入して、その上面高さ位置が、下開孔31の下端位置よりも低くなる場合がある。そのため、養生中において、固定支柱10内に充填された充填材Dの上面が下開孔31の下端位置よりも沈降したか否かを確認する。例えば、最初に充填材Dの充填が完了してから数時間後に、充填材D上面の沈降の有無を確認する。そして、充填材Dの上面の沈下が確認された場合は、充填材Dの高さ低下分だけ、充填用ノズル41から、下開孔31を通して固定支柱10内に充填材Cが充填(補充)されて、充填材Dの上面が下開孔31の下端位置とされる。
充填材Dが硬化した状態で、図5に示すように、固定支柱10の上部に上開孔32が例えばドリル加工等によって形成される。このように、上開孔32は、固定支柱10の側面(格子材22側)に形成されることが好ましい。この後、図6に示すように、下開孔31に対して排水通気キャップ33が取付けられ、上開孔32に対して防水通気キャップ34が取付けられる。なお、固定支柱10への上開孔32の形成は、省略されてもよく、この場合、防水通気キャップ34の取付けは行われない。また、下開孔31に対する排水通気キャップ33の取付けは、固定支柱10内に充填された充填材Dの上面が下開孔31の下端位置よりも沈降したか否かを確認し、充填材Dの上面の沈降が認められない状態であれば、適宜のタイミングで行うことができる。
排水通気キャップ33および防水通気キャップ34は、例えば略L字状とされた短尺の合成樹脂製のパイプ材を利用して形成されて、その一端側の開口部が各貫通孔31、32に嵌合、係止され、その他端側の開口部が下向き状態とされる。排水通気キャップ33および防水通気キャップ34が取付けられた図6の状態が、固定支柱10の根元の補強が完了した状態となる。実施形態では、各貫通孔31、32は互いに同一径とされて、各通気キャップ33、34は共通のものが用いられている。
各通気キャップ33、34によって、固定支柱10内に雨水が浸入することが防止される。固定支柱10内において上下の貫通孔31、32を通して外気が循環されることから、固定支柱10内が極力乾燥状態に保持されて、内部からの腐食が防止あるいは抑制される。固定支柱10内において結露等によって水が発生しても、固定支柱10内の水は、下開孔31から排水通気キャップ33を通して外部に排出される。
充填材Cが骨材を含むことから、固定支柱10の根元の補強効果も得られることになる。また、充填材Cが骨材を含むことから、その分固定支柱10内の充填材Dが硬化していく過程における発熱を抑制することができる(固定支柱10の膨張防止あるいは抑制)。
さらに、充填材Cは、従来の硬化性樹脂(エポキシ樹脂)に比して比重が大きくなる骨材を含むことから、下開孔31の高さ付近から固定支柱10内に充填されたときに、すみやかに(スムーズ)に固定支柱10の底壁へ向けて移動して、空気や滞留水Bの一部を巻き込むことなく、滞留水Bとの置換が確実に行われることになる。
さらに又、上述の支柱根元補修工法では、固定支柱10内に奥深くチューブを差し込んで固定支柱10の底壁付近から充填材を充填していく手法に比して、充填材の充填作業も容易となる。すなわち、下開孔31に通したチューブを利用して充填材を固定支柱10の底壁付近から充填する場合には、充填材を所定高さまで充填した後にチューブを引き抜く際に、チューブが引き抜かれた部分が空所となることから、この空所分の充填材をさらに充填しつつチューブの引き抜き作業を慎重に行う必要があるが、本発明ではこのような作業が不要となり、固定支柱10の下開孔31から多くの充填材Dが溢れ出ることもないので、充填材Cの充填作業や作業後の後始末も容易となる。勿論、滞留水Bを除去するための吸引ポンプのような大型の機器も必要としない。
なお、上開孔32を形成する時期は適宜選択することができ、例えば、固定支柱10内に充填された充填材Dの養生を行っている期間に上開孔32を形成したり(養生期間の有効利用)、下開孔31を形成する直前または直後に上開孔32を形成することもできる(孔あけ作業を2箇所まとめて行うことによる作業効率の向上)。
ここで、充填材Cは、エポキシ樹脂を主成分とする主剤と、アミン系を主成分とする硬化剤と、シリカを主成分とする骨材との混合物とされる。主剤と硬化剤との割合は、重量比で、例えば主剤2に対して硬化剤1とすることができる。また、骨材としては、シリカを主成分として、このシリカに対して複数種の金属酸化物を混合したものを用いることができる。複数種の金属酸化物として、例えば、酸化アルミ、酸化鉄、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ナトリウム及び酸化カリウムの混合物を用いている。このような骨材は微粉末状とされている(例えば粒径が0.01μm〜0.03μm)。主剤と硬化剤との混合物と骨材との割合は、重量比で、例えば、主剤と硬化剤との合計1に対して骨材1とすることができる。
充填材Cに占める骨材の割合は、比重を大きくするという観点から、重量比で30%以上、好ましくは40%以上とするのが好ましい。また、骨材の割合が多くなり過ぎると十分な流動性が得られにくいことから、充填材Cに占める骨材の割合は、重量比で70%以下、好ましくは60%以下とするのが好ましい。
以上実施形態について説明したが、本発明は実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載された範囲で適宜変更することができる。
本発明は、ベランダ、階段、廊下、屋上等に設置された墜落防止手すりの固定支柱の補修に利用することができる。
A:墜落防止手すり
B:滞留水
C:充填材
D:固定支柱内に堆積する充填材
1:躯体
1a:取付孔
2:モルタル
10:固定支柱
11:芯材
12:支柱本体
20:囲い部材
21:笠木
22:格子材
31:下開孔
32:上開孔
33:排水通気キャップ(下側)
34:防水通気キャップ(上側)
41:充填用ノズル
41a:充填用ノズルの先端
本発明は、墜落防止手すりにおける支柱根元補修工法に関するものである。
ベランダやバルコニ等の躯体に固定される墜落防止手すりは、下部が躯体内に埋設された固定支柱に対して、笠木や格子材等によって構成される囲い部材が取付けられた構造とされる。固定支柱のうち躯体内に埋設された部分は、通常は筒状とされることから、長期の使用に伴う固定支柱内部への水の浸入により、固定支柱を劣化させる原因となる。固定支柱は、墜落防止手すりの強度を確保する重要部材となることから、劣化が大きく進行しないうちに補強することが望まれる。
特許文献1には、墜落防止手すりにおける中空の固定支柱の補修のため、下部が躯体内に埋設された固定支柱のうち低い位置に対して穴を形成して、この穴から固定支柱の下部に滞留している水を吸引ポンプにより抜き取った後に、硬化性樹脂を、上記穴から注入して固定支柱内の下部に充填することが開示されている。
特許文献2には、中空の固定支柱の補修のため、下部が躯体内に埋設された固定支柱のうち低い位置に対して穴を形成して、硬化性樹脂を、上記穴を通して固定支柱の底壁付近にまで深く挿入したチューブを介して、固定支柱の底壁付近から供給することにより、硬化性樹脂と固定支柱の底部に滞留していた滞留水とを置換しつつ、固定支柱の下部に硬化性樹脂を充填するものが開示されている。
特開2005−213740号公報(特許第3743721号公報) 特開2009−270401号公報(特許第5130565号公報)
前述した各特許文献に記載のものでは、固定支柱の下部内に充填される充填材が硬化性樹脂(エポキシ樹脂)であることから、固定支柱の滞留水との置換によって劣化の進行を弱めるということは期待できるものの、固定支柱の下部つまり根元を補強するという点は期待できない。また、充填材として硬化性樹脂を用いることは、硬化に際しての発熱量が大きくなって固定支柱の膨張を招き、これを取り巻く躯体の損傷の要因ともなり、好ましくないものとなる。
さらに、特許文献2に記載のものでは、特許文献1のものに比して、吸水ポンプによる滞留水の排出を行わなくてもよいという利点を有する反面、充填材として用いられる硬化性樹脂(エポキシ樹脂)の比重は水の比重と大きな差がないため、滞留水との置換がスムーズに行われにくいものとなる。このため、硬化性樹脂の充填を相当にゆっくりと行う必要があり、作業性の悪いものとなる。なお、充填材を急速に充填すると、空気や滞留水の一部を巻き込む可能性が高くなってしまい、空気や滞留水の一部を巻き込み膨張した状態で硬化性樹脂が硬化すると、その分強度が低下してしまうことになり、また、膨張した硬化性樹脂により固定支柱の穴が塞されることにも繋がる。
以上に加えて、固定支柱の穴に通したチューブを利用して充填材を固定支柱の底壁付近から充填する場合には、充填材の充填状況を目視できないため、固定支柱の穴から多くの充填材を溢れさせていた。また、充填材を所定高さまで充填した後にチューブを引き抜く際に、チューブが引き抜かれた部分が空所となることから、この空所分の充填材をさらに充填しつつチューブの引き抜き作業を慎重に行う必要があることから、作業性が悪いものとなる。
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、別途吸水ポンプを用いることなく固定支柱内の滞留水を外部に排出でき、大きな発熱を伴わないようにしつつ固定支柱の根元部分の補強を十分に行うことができ、しかも作業性の優れた墜落防止手すりにおける支柱根元補修工法を提供することにある。
前記目的を達成するため、本発明にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、
筒状とされた固定支柱の下部が躯体内に埋設されてなる墜落防止手すりにおける支柱根元補修工法であって、
前記固定支柱のうち前記躯体の近傍となる低い位置に対して下開孔を形成する第1工程と、
エポキシ樹脂を主成分とする主剤と硬化剤と骨材とを混合して、流動性を有する充填材を得る第2工程と、
前記第2工程で得られた充填材を、前記下開孔を通してかつ該下開孔付近の高さ位置から流下させつつ前記固定支柱内に供給することにより、前記固定支柱内に存在する滞留水を該充填材で置換させつつ該下開孔から排出させて、該充填材を該下開孔の下端位置まで充填する第3工程と、
前記第3工程の後に、前記固定支柱内に充填された前記充填材を所定時間以上養生する第4工程と、
前記第4工程での養生中に、前記固定支柱内に充填された前記充填材の上面が前記下開孔の下端位置よりも沈降したか否かを確認する第5工程と、
前記固定支柱内に充填された前記充填材の上面が前記下開孔の下端位置よりも沈降したことが前記第5工程で確認されたときに、前記第2工程で得られた充填材を、前記下開孔を通して該下開孔の下端位置まで追加的に充填する第6工程と、
前記第5工程または前記第6工程の後に、通気性を有すると共に前記固定支柱内の水を排水可能な排水通気キャップで前記下開孔を施蓋する第7工程と、
前記固定支柱の上部に対して上開孔を形成して、該上開孔と前記下開孔とを通して前記固定支柱内を外気が循環可能に設定する第8工程と、
前記上開孔を、通気性を有すると共に前記固定支柱内への水の浸入を防止する防水通気キャップで施蓋する第9工程と、
を備え、
前記第3工程での前記充填材の充填を、充填用ノズルの先端を前記下開孔に浅く挿入した状態でもって、該充填材の充填状況を該下開孔を通して確認しつつ行う、
ようにしてある。
上記解決手法によれば、充填材と滞留水との置換によって滞留水を下開孔から外部に排出するので、滞留水を排水するための吸水ポンプを別途用いる必要のないものとなる。また、充填材は、骨材を含むことから比重が大きいものとなり、このため、下開孔の高さ付近から充填材を充填しても、すみやかに下方へと移動して、空気や滞留水の一部を巻き込むことなく固定支柱の底壁に徐々に堆積させて、最終的に下開孔の下端位置までスムーズに充填材を充填することができる。また、上記解決手法では、下開孔から充填材の充填状況を目視することでき、下開孔から溢れ出る充填材の量を極力少なくすることができ、加えて、固定支柱の穴に通したチューブを利用して固定支柱の底壁付近から充填材を充填する場合に比して、チューブの引き抜きの際に形成される空所の問題ということを考慮する必要がないので、作業性向上の点で好ましいものとなる。さらに、上記解決手法では、充填材が骨材を含む分、充填材が硬化する際に発生する熱量を低減して、固定支柱の膨張を防止あるいは抑制することができ(熱害防止)、さらに躯体損傷の防止にも繋がる。さらに又、充填材が骨材を有することから、充填材の硬化後において固定支柱の根元の強度が高まり、補強効果も期待できる。以上に加えて、充填材が、流動性を有する状態のときに躯体のひび割れ部分等に浸入して、固定支柱内の充填材の上面高さが低下してしまうこともあるが、固定支柱内に充填材を追加的に充填することにより、硬化した状態において充填材を下開孔の下端位置にまで確実に充填しておくことができる(補修後の固定支柱内での結露水や雨水等の滞留防止)。
また、前記支柱根元補修工法について、前記第5工程または前記第6工程の後に、通気性を有すると共に前記固定支柱内の水を排水可能な排水通気キャップで前記下開孔を施蓋する第7工程備えていることから、下開孔を通して雨水が固定支柱内に浸入してしまう事態を防止しつつ、結露等によって固定支柱内に発生した水を下開孔を通して外部に排出することができる。
さらに、前記支柱根元補修工法について、前記固定支柱の上部に対して上開孔を形成して、該上開孔と前記下開孔とを通して前記固定支柱内を外気が循環可能に設定する第8工程を備えていることから、固定支柱内において上下の貫通孔を通して外気が循環されることにより固定支柱内が極力乾燥状態に保持されて、内部からの腐食を防止あるいは抑制する上で好ましいものとなる。
さらに又、前記支柱根元補修工法について、前記上開孔を、通気性を有すると共に前記固定支柱内への水の浸入を防止する防水通気キャップで施蓋する第9工程を備えていることから、上開孔を通して雨水が固定支柱内に浸入してしまう事態を防止する上で好ましいものとなる。
以上に加えて、前記第3工程での前記充填材の充填を、充填用ノズルの先端を前記下開孔に浅く挿入した状態でもって、該充填材の充填状況を該下開孔を通して確認しつつ行うことから、下開孔から溢れ出る充填材の量を極力少なくすることができる。
前記解決手法を前提とした好ましい態様は、次のとおりである。
前記支柱根元補修工法について、前記硬化剤が、アミン系を主成分とし、
前記骨材が、シリカを主成分としている、
ようにすることができる。この場合、充填材として、入手容易な汎用品を用いた成分構成とすることができる。
本発明によれば、別途吸水ポンプを用いることなく固定支柱内の滞留水を外部に排出でき、且つ充填材注入の作業性に優れたものとなり、また、補修に用いた充填材により固定支柱の根元部分の大きな発熱や膨張を伴わず、さらには補強効果を得ることができるものとなる。
本発明により補修される対象となる固定支柱を含む墜落防止手すりの一例を示す図。 図1に示す墜落防止手すりにおける固定支柱部分をその側方から見た一部断面側面図。 図2の状態から、固定支柱の下部に下開孔を形成した状態を示す図。 図3の状態から、下開孔を通して充填材を充填する状態を示す図。 図4の状態から、固定支柱の上部に上開孔を形成した状態を示す図。 下開孔と上開孔とをそれぞれ防水通気キャップで施蓋した状態を示す図。
図1において、バルコニ等の躯体1に、墜落防止手すりAが設置されている。この墜落防止手すりAは、躯体1に下部が埋設された複数本の固定支柱10と、固定支柱10に取付けられた囲い部材20とを有する。囲い部材20は、隣合う固定支柱10に配設されるもので、本実施形態では、笠木21および格子材22とで構成されている。笠木21は、隣合う固定支柱10の上端部に架渡されると共に、固定具によって固定支柱10に固定されている。また、格子材22は、笠木21の下方位置において、隣合う固定支柱10の間に配設されると共に、固定具によって固定支柱10に固定されている。なお、本実施の形態では、囲い部材20に格子材22が用いられているが、格子材22の代わりにパネル材が用いられ、あるいは格子材とパネル材とが併用されていてもよい。また、囲い部材20としては、笠木21と格子材22等とを一体的に形成したものであってもよい。
図2に示すように、固定支柱10は、芯材11と支柱本体12とによって構成されている。芯材11は、鉄系金属によって筒状に形成されている(本実施形態では断面略四角形状の角筒)。支柱本体12は、アルミニウム系金属によって筒状(本実施形態では、芯材11の形状に対応して断面略四角形状の角筒)に形成されている。
本実施形態では、芯材11の上端部が、支柱本体12内における上下方向略中央部の位置に達しており、芯材11の下部が、躯体1の取付孔1a内に深く挿入されている。これに対して、支柱本体12は、その下部が若干取付孔1a内に挿入されているが、その下端が芯材11の下端よりも上方に位置している。なお、支柱本体12内の上端部まで芯材11の上端部が達する等、芯材11と支柱本体12の長さの関係は特に問わないものである。また、芯材11及び支柱本体12は、取付孔1a内に充填されたモルタル2等によって躯体1と一体化されている。
次に、本発明方法を用いて固定支柱10を補修する手法について、図2以下を参照しつつ説明する。なお、本発明による補修対象部位が、図1において符号αで示される。また、固定支柱10の補修に際しては、実施形態では、囲い部材20を固定支柱10に取付けたまま行うようにしてある。さらに、図2に示すように、補修前における固定支柱10内の底部には、長年の使用によって雨水が浸入して、滞留水Bが存在しているものとする。
まず、固定支柱10のうち躯体1近傍の低い位置に対して、ドリル加工等によって下開孔31が形成される。下開孔31が形成された直後の状態が図3に示される。このように、下開孔31は、固定支柱10の側面(格子材22側)に形成されることが好ましい。
この後、図4に示すように、下開孔31を通して、例えば手動式の充填用ノズル41によって、充填材が固定支柱10内に注入される。充填用ノズル41から吐出された充填材が符号Cで示され、固定支柱10内で流下(落下)する充填材Cが一点鎖線の矢印で示され、固定支柱10内に堆積された充填材が符号Dで示される。充填材Cは、後述するが、エポキシ樹脂を主成分とする主剤と硬化剤と骨材との混合物とされて、十分な流動性を有すると共に、骨材を含有することから比重が従来の硬化性樹脂(エポキシ樹脂)の比重に比して十分に大きくなっている。
充填材Cは、固定支柱10内に充填される直前に用意するのが好ましい。すなわち、エポキシ樹脂を主成分とする主剤と硬化剤とが混合され、この混合物にさらに骨材が混合されて充填材Cが得られ、この充填材Cが充填用ノズル41に充填される。なお、充填材Cについては後述する。
充填材Cを固定支柱10内に注入する際には、充填用ノズル41の先端41aを下開孔31内に浅く挿入した状態で行われる。このとき。充填用ノズル41の先端41aの高さ位置は、下開孔31の下端位置と同じかそれよりも高い位置に維持される。
充填用ノズル41から吐出された充填材Cは、滞留水Bを通して固定支柱10の底壁上に徐々に堆積されていく。固定支柱10内への充填材Cの充填の進行に伴って、固定支柱10内の滞留水Bの水面が徐々に上昇されて、やがて、下開孔31から外部へ排出され始める。充填用ノズル41からの充填材Cの充填状況と、下開孔31を通しての滞留水Bの排出状況とが、下開孔31から目視によって容易に確認することができる。
充填材Cの供給は、固定支柱10内に充填された充填材Dの上面が、下開孔31の下端位置に達するまで行われる。充填材Dが下開孔31の下端位置まで充填された状態が、図5に示される。滞留水Bは、その全量が下開孔31を通して外部へ排出された状態とされる。充填材Cを固定支柱10内に供給する際に、充填材Cの比重が大きいことから、空気や滞留水の一部を巻き込むことなく、滞留水Bとの置換がスムーズに行われる。また、下開孔31から充填材Dの充填状況を目視することでき、下開孔31から溢れ出る充填材の量を極力少なくすることができる。
充填材Dの充填が完了した図5の状態で、所定時間以上(本実施形態では24時間以上)養生される。この養生後は、充填材Dが十分に硬化された状態となる。この養生を行っている間、固定支柱10内に充填された充填材Dは、流動性を有する状態のときに、躯体1のひび割れ等の部分に浸入して、その上面高さ位置が、下開孔31の下端位置よりも低くなる場合がある。そのため、養生中において、固定支柱10内に充填された充填材Dの上面が下開孔31の下端位置よりも沈降したか否かを確認する。例えば、最初に充填材Dの充填が完了してから数時間後に、充填材D上面の沈降の有無を確認する。そして、充填材Dの上面の沈下が確認された場合は、充填材Dの高さ低下分だけ、充填用ノズル41から、下開孔31を通して固定支柱10内に充填材Cが充填(補充)されて、充填材Dの上面が下開孔31の下端位置とされる。
充填材Dが硬化した状態で、図5に示すように、固定支柱10の上部に上開孔32が例えばドリル加工等によって形成される。このように、上開孔32は、固定支柱10の側面(格子材22側)に形成されることが好ましい。この後、図6に示すように、下開孔31に対して排水通気キャップ33が取付けられ、上開孔32に対して防水通気キャップ34が取付けられる。また、下開孔31に対する排水通気キャップ33の取付けは、固定支柱10内に充填された充填材Dの上面が下開孔31の下端位置よりも沈降したか否かを確認し、充填材Dの上面の沈降が認められない状態であれば、適宜のタイミングで行うことができる。
排水通気キャップ33および防水通気キャップ34は、例えば略L字状とされた短尺の合成樹脂製のパイプ材を利用して形成されて、その一端側の開口部が各貫通孔31、32に嵌合、係止され、その他端側の開口部が下向き状態とされる。排水通気キャップ33および防水通気キャップ34が取付けられた図6の状態が、固定支柱10の根元の補強が完了した状態となる。実施形態では、各貫通孔31、32は互いに同一径とされて、各通気キャップ33、34は共通のものが用いられている。
各通気キャップ33、34によって、固定支柱10内に雨水が浸入することが防止される。固定支柱10内において上下の貫通孔31、32を通して外気が循環されることから、固定支柱10内が極力乾燥状態に保持されて、内部からの腐食が防止あるいは抑制される。固定支柱10内において結露等によって水が発生しても、固定支柱10内の水は、下開孔31から排水通気キャップ33を通して外部に排出される。
充填材Cが骨材を含むことから、固定支柱10の根元の補強効果も得られることになる。また、充填材Cが骨材を含むことから、その分固定支柱10内の充填材Dが硬化していく過程における発熱を抑制することができる(固定支柱10の膨張防止あるいは抑制)。
さらに、充填材Cは、従来の硬化性樹脂(エポキシ樹脂)に比して比重が大きくなる骨材を含むことから、下開孔31の高さ付近から固定支柱10内に充填されたときに、すみやかに(スムーズ)に固定支柱10の底壁へ向けて移動して、空気や滞留水Bの一部を巻き込むことなく、滞留水Bとの置換が確実に行われることになる。
さらに又、上述の支柱根元補修工法では、固定支柱10内に奥深くチューブを差し込んで固定支柱10の底壁付近から充填材を充填していく手法に比して、充填材の充填作業も容易となる。すなわち、下開孔31に通したチューブを利用して充填材を固定支柱10の底壁付近から充填する場合には、充填材を所定高さまで充填した後にチューブを引き抜く際に、チューブが引き抜かれた部分が空所となることから、この空所分の充填材をさらに充填しつつチューブの引き抜き作業を慎重に行う必要があるが、本発明ではこのような作業が不要となり、固定支柱10の下開孔31から多くの充填材Dが溢れ出ることもないので、充填材Cの充填作業や作業後の後始末も容易となる。勿論、滞留水Bを除去するための吸引ポンプのような大型の機器も必要としない。
なお、上開孔32を形成する時期は適宜選択することができ、例えば、固定支柱10内に充填された充填材Dの養生を行っている期間に上開孔32を形成したり(養生期間の有効利用)、下開孔31を形成する直前または直後に上開孔32を形成することもできる(孔あけ作業を2箇所まとめて行うことによる作業効率の向上)。
ここで、充填材Cは、エポキシ樹脂を主成分とする主剤と、アミン系を主成分とする硬化剤と、シリカを主成分とする骨材との混合物とされる。主剤と硬化剤との割合は、重量比で、例えば主剤2に対して硬化剤1とすることができる。また、骨材としては、シリカを主成分として、このシリカに対して複数種の金属酸化物を混合したものを用いることができる。複数種の金属酸化物として、例えば、酸化アルミ、酸化鉄、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ナトリウム及び酸化カリウムの混合物を用いている。このような骨材は微粉末状とされている(例えば粒径が0.01μm〜0.03μm)。主剤と硬化剤との混合物と骨材との割合は、重量比で、例えば、主剤と硬化剤との合計1に対して骨材1とすることができる。
充填材Cに占める骨材の割合は、比重を大きくするという観点から、重量比で30%以上、好ましくは40%以上とするのが好ましい。また、骨材の割合が多くなり過ぎると十分な流動性が得られにくいことから、充填材Cに占める骨材の割合は、重量比で70%以下、好ましくは60%以下とするのが好ましい。
以上実施形態について説明したが、本発明は実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載された範囲で適宜変更することができる。
本発明は、ベランダ、階段、廊下、屋上等に設置された墜落防止手すりの固定支柱の補修に利用することができる。
A:墜落防止手すり
B:滞留水
C:充填材
D:固定支柱内に堆積する充填材
1:躯体
1a:取付孔
2:モルタル
10:固定支柱
11:芯材
12:支柱本体
20:囲い部材
21:笠木
22:格子材
31:下開孔
32:上開孔
33:排水通気キャップ(下側)
34:防水通気キャップ(上側)
41:充填用ノズル
41a:充填用ノズルの先端

Claims (5)

  1. 筒状とされた固定支柱の下部が躯体内に埋設されてなる墜落防止手すりにおける支柱根元補修工法であって、
    前記固定支柱のうち前記躯体の近傍となる低い位置に対して下開孔を形成する第1工程と、
    エポキシ樹脂を主成分とする主剤と硬化剤と骨材とを混合して、流動性を有する充填材を得る第2工程と、
    前記第2工程で得られた充填材を、前記下開孔を通してかつ該下開孔付近の高さ位置から流下させつつ前記固定支柱内に供給することにより、前記固定支柱内に存在する滞留水を該充填材で置換させつつ該下開孔から排出させて、該充填材を該下開孔の下端位置まで充填する第3工程と、
    前記第3工程の後に、前記固定支柱内に充填された前記充填材を所定時間以上養生する第4工程と、
    前記第4工程での養生中に、前記固定支柱内に充填された前記充填材の上面が前記下開孔の下端位置よりも沈降したか否かを確認する第5工程と、
    前記固定支柱内に充填された前記充填材の上面が前記下開孔の下端位置よりも沈降したことが前記第5工程で確認されたときに、前記第2工程で得られた充填材を、前記下開孔を通して該下開孔の下端位置まで追加的に充填する第6工程と、
    を備えていることを特徴とする墜落防止手すりにおける支柱根元補修工法。
  2. 前記第5工程または前記第6工程の後に、通気性を有すると共に前記固定支柱内の水を排水可能な排水通気キャップで施蓋する第7工程と、をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の墜落防止手すりにおける支柱根元補修工法。
  3. 前記固定支柱の上部に対して上開孔を形成して、該上開孔と前記下開孔とを通して前記固定支柱内を外気が循環可能に設定する第8工程と、をさらに備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の墜落防止手すりにおける支柱根元補修工法。
  4. 前記上開孔を、通気性を有すると共に前記固定支柱内への水の浸入を防止する防水通気キャップで施蓋する第9工程と、をさらに備えていることを特徴とする請求項3に記載の墜落防止手すりにおける支柱根元補修工法。
  5. 前記硬化剤が、アミン系を主成分とし、
    前記骨材が、シリカを主成分としている、
    ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の墜落防止手すりにおける支柱根元補修工法。
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