JP2018123409A - 耐摩耗鋼板および耐摩耗鋼板の製造方法 - Google Patents

耐摩耗鋼板および耐摩耗鋼板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】低温靭性と耐摩耗性を高い水準で両立させた耐摩耗鋼板を提供する。【解決手段】質量%で、C:0.10〜0.23%、Si:0.1〜3.0%、Mn:0.50〜3.00%、P:0.025%以下、S:0.02%以下、Cr:0.2〜2.0%、Nb:0.005〜0.100%、Ti:0.005〜0.100%、Al:0.001〜0.100%、B:0.0005〜0.0100%およびN:0.01%以下を含み、残部Fe及び不可避不純物の成分組成と、鋼板の表面から板厚の1/4深さ位置における組織が体積率で90%以上のマルテンサイトであり、旧オーステナイト粒の平均粒径が15μm以下、かつ最大粒径が35μm以下である組織と、を有し、鋼板の表面から板厚の1/4深さ位置における硬さが、ブリネル硬さで360〜490HBW10/3000であるものとする。【選択図】なし

Description

本発明は、低温靭性と耐摩耗性を高い水準で両立させた耐摩耗鋼板に関するものである。また、本発明は耐摩耗鋼板の製造方法に関するものである。
建設、土木、鉱業などの分野で使用される産業機械、部品、運搬機器(例えば、パワーショベル、ブルドーザー、ホッパー、バケットコンベヤー、岩石破砕装置)などは、岩石、砂、鉱石などによるアブレッシブ摩耗、すべり摩耗、衝撃摩耗などの摩耗にさらされる。そのため、そのような産業機械、部品、運搬機器に用いられる鋼板には、寿命を向上させるために耐摩耗性に優れることが求められる。
鋼板の耐摩耗性は、硬さを高くすることで向上できることが知られている。そのため、多量のCとMn,Cr等の合金元素を添加した合金鋼に焼入等の熱処理を行うことによって得られる高硬度鋼が、耐摩耗鋼として幅広く用いられてきた。
一方、硬さを高くすると靭性が低下するが、そのような中で、高硬度と高靭性を両立させた耐磨耗鋼板が提案されてきた(特許文献1〜3参照)。
たとえば、特許文献1には、成分系とその加熱圧延・熱処理の最適化によって、板厚中心部の組織の制御とオーステナイト粒微細化の確保による板厚中心部までの均質な高硬度と高靱性の両立させた、表面ブリネル硬度HB≧470の厚手耐摩耗鋼板が開示されている。また、特許文献2には、炭素当量Ceqを低くする代わりに特性値Mrを所定の値に調整して、強度と耐摩耗性を確保しつつ、低温溶接割れ性と低温靱性を両立させた耐摩耗鋼板が開示されている。さらに、特許文献3には、成分指標値Haを所定の値に調整し、鋼片を1200℃〜1250℃の温度範囲に加熱して製造した、耐摩耗性と低温靱性に優れた耐摩耗鋼板が開示されている。
特許第4259145号 特許第3698082号 特許第3273404号
V.K.LAKSHMANAN: METALLURGICAL TRANSACTION A, Vol.15A(1984), p.541
ところで、上記特許文献1〜3は、いずれもNbを含む耐摩耗鋼板である。一般に、耐摩耗鋼板において、Nbを添加すると、靱性が改善される。これは、Nbが主にNbCとしておおよそ1000℃以下といった比較的低温で析出する元素であり、このNbCが結晶粒径の粗大化を抑制するピンニング粒子として作用するために、結晶粒径を微細化するためと考えられる。しかし、特許文献1〜3に記載された技術では、連続鋳造後のスラブ冷却時や熱間圧延後の鋼板冷却時に析出したNbCが、粗大化し、疎に分散しているので、NbC粒子が存在する所と存在しない所でピンニング効果が異なることになる。そのため、鋼板の組織は、大きな旧オーステナイト粒(以下、オーステナイト粒をγ粒とも称する)由来のマルテンサイトと小さな旧γ粒由来のマルテンサイトが混在した混粒組織となる。これは、NbCの高い固溶温度に起因する未固溶NbCの残存と、NbCの微細粒子の消滅および粗大粒子の更なる粗大化が進行するオストワルド成長と、を原因とするNb添加鋼特有の課題である。
また、シャルピー衝撃試験では、ノッチ近傍に存在する最も靭性の低い結晶粒組織(以下、単に組織とも称する) を起点に亀裂が発生し、鋼板の破壊が進行するため、混粒組織の場合は混在する大きさが異なる組織の内、最も粗大な組織の靭性値が支配的となる。そのため、さらに低温靭性を向上させるためには、混粒組織ではなく、平均的に結晶粒径が小さい整粒組織とする必要がある。
さらに、近年では、従来よりも厳しい環境下で産業機械や運搬機器などが使用されることも多い。それにともなって、鋼材にも従来よりも良好な特性が求められており、特により低い温度でも良好な低温靱性が要求されるようになっている。
本発明は、上記実状に鑑みてなされたものであり、低温靭性と耐摩耗性を高い水準で両立させた耐摩耗鋼板を提供することを目的とする。また、本発明は、前記耐摩耗鋼板を製造する方法について提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、以下の知見を得た。まず、熱間圧延前の加熱で、スラブ等の鋼素材に析出している粗大NbCを固溶させるために、非特許文献1に示された下記の(1)式で計算される溶解温度以上に鋼素材を加熱する。鋼素材の加熱に続いて行う熱間圧延では、鋼素材に導入された転位が再結晶の駆動力として消費されない温度域かつNbCの析出が生じる温度域で強圧下を行う。この圧延条件により、前記転位を核としてNbCを均一に微細分散させることができる。さらに、析出したNbCのオストワルド成長を抑制するため、熱間圧延後の鋼板を急速冷却して、微細なNbCが鋼板中に密に分散した状態を維持し、その後再加熱焼入れ処理を行う。これらのことから、靭性に優れた整粒旧γ粒組織が得られることを見出した。
T*=7920/(3.4−log[Nb][C]0.87)−273・・・(1)
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、その要旨構成は次のとおりである。
1.質量%で、
C :0.10〜0.23%、
Si:0.1〜3.0%、
Mn:0.50〜3.00%、
P :0.025%以下、
S :0.02%以下、
Cr:0.2〜2.0%、
Nb:0.005〜0.100%、
Ti:0.005〜0.100%、
Al:0.001〜0.100%、
B :0.0005〜0.0100%および
N :0.01%以下
を含み、残部Fe及び不可避不純物である成分組成を有し、
鋼板の表面から板厚の1/4深さ位置の組織が体積率で90%以上のマルテンサイトであり、旧オーステナイト粒の平均径が15μm以下、かつ最大径が35μm以下である組織を有し、
鋼板の表面から板厚の1/4深さ位置における硬さが、ブリネル硬さで360〜490HBW10/3000である耐摩耗鋼板。
2.前記成分組成は、さらに、質量%で、
Cu:0.01〜2.00%、
Ni:0.01〜5.00%、
Mo:0.01〜3.00%、
V :0.001〜1.000%、
W :0.01〜1.50%、
Ca:0.0001〜0.0200%、
Mg:0.0001〜0.0200%および
REM:0.0005〜0.0500%
から選択される一種または二種以上を含む、前記1に記載の耐摩耗鋼板。
3.質量%で、
C :0.10〜0.23%、
Si:0.1〜3.0%、
Mn:0.50〜3.00%、
P :0.025%以下、
S :0.02%以下、
Cr:0.2〜2.0%、
Nb:0.005〜0.100%、
Ti:0.005〜0.100%、
Al:0.001〜0.100%、
B :0.0005〜0.0100%および
N :0.01%以下
を含み、残部Fe及び不可避不純物である成分組成を有する鋼素材を、下記(1)式で表される温度T*℃以上1300℃以下に加熱し、
前記加熱された鋼素材を、該鋼素材の表面から板厚の1/4深さ位置の温度が1000℃以下850℃以上の範囲の総圧下率を30%以上とする熱間圧延を行って熱延鋼板とし、
前記熱延鋼板を、該熱延鋼板の表面から板厚1/4深さ位置の温度が800℃以下600℃以上の範囲を平均冷却速度1℃/s以上で冷却し、
その後、Ac3以上950℃以下の温度で前記熱延鋼板の再加熱を行った後、該鋼板の表面から板厚1/4深さ位置の温度が800℃以下300℃以上の範囲を平均冷却速度1℃/s以上で冷却する耐摩耗鋼板の製造方法。

T*=7920/(3.4−log[Nb][C]0.87)−273・・・(1)
4.前記鋼素材は、さらに、質量%で、
Cu:0.01〜2.00%、
Ni:0.01〜5.00%、
Mo:0.01〜3.00%、
V :0.001〜1.000%、
W :0.01〜1.50%、
Ca:0.0001〜0.0200%、
Mg:0.0001〜0.0200%および
REM:0.0005〜0.0500%
から選択される一種または二種以上を含む、前記3に記載の耐摩耗鋼板の製造方法。
5.さらに、前記鋼板を100〜350℃の温度で焼戻す、前記3または4に記載の耐摩耗鋼板の製造方法。
本発明によれば、結晶粒径のばらつきが小さい微細整粒組織とすることで、−60℃という低温でも優れた低温靭性を有し、かつ低温靭性と耐摩耗性を高い水準で両立した耐摩耗鋼板を提供することができる。ここで、優れた低温靭性とは、−60℃でのシャルピー衝撃試験による衝撃吸収エネルギーが35J以上であることを指し、また高い耐摩耗性とは、鋼板のブリネル硬さが360〜490HBW10/3000以上であることを指す。
[成分組成]
次に、本発明を実施する方法について具体的に説明する。本発明では、耐摩耗鋼板およびその製造に用いられる鋼素材が、上記した成分組成を有することが重要である。そこで、まず本発明において鋼の成分組成を上記のように限定する理由を説明する。なお、成分組成に関する「%」は、特に断らない限り「質量%」を意味するものとする。
C:0.10〜0.23%
Cは、マルテンサイト基地の硬さを高くするために必須の元素である。C含有量が0.10%未満であると、マルテンサイト組織中における固溶C量が少なくなるため、耐摩耗性が低下する。一方、C含有量が0.23%を超えると、溶接性および加工性が低下する。そのため、本発明ではC含有量を0.10〜0.23%とする。なお、好ましいC含有量の下限は、0.12%である。また好ましいC含有量の上限は、0.21%である。
Si:0.1〜3.0%
Siは、脱酸に有効な元素であるが、Si含有量が0.1%未満であると十分な効果を得ることができない。また、Siは、固溶強化による鋼の高硬度化に寄与する元素である。しかし、Si含有量が3.0%を超えると、延性および靭性が低下することに加えて、介在物量が増加する等の問題を生じる。そのため、Si含有量を0.1〜3.0%とする。 Si含有量は0.2〜2.8%であることが好ましいが、さらに、Si含有量の下限を0.3%とすることが好ましく、Si含有量の上限を2.2%とすることが好ましい。
Mn:0.50〜3.00%
Mnは、鋼の焼入れ性を向上させる機能を有する元素である。Mnを添加することにより、焼入れ後の鋼の硬さがさらに高くなり、その結果、耐摩耗性を向上させることができる。Mn含有量が0.50%未満であると前記効果を十分に得ることができないため、Mn含有量を0.50%以上とする。一方、Mn含有量が3.00%を超えると、溶接性と靭性が低下する。そのため、Mn含有量を3.00%以下とする。なお、好ましいMn含有量の下限は0.60%であり、さらに好ましくは0.70%である。また、好ましいMn含有量の上限は2.70%であり、さらに好ましくは2.40%であり、さらに好ましくは、2.10%である。
P:0.025%以下
Pは、脆化効果の大きい元素であり、多量に含有すると、鋼の靭性を低下させる。そのため、P含有量を0.025%以下とする。なお、P含有量を0.020%以下とすることがさらに好ましい。一方、Pは少ないほど好ましいため、P含有量の下限は特に限定されず、0%であってもよい。しかし、Pは不純物として鋼中に不可避的に含有される元素であるため、工業的には0%超であってもよい。なお、過度の低P化は精錬時間の増加やコストの上昇を招くため、P含有量を0.001%以上とすることが好ましい。
S:0.02%以下
Sは、鋼の靭性を低下させるため、S含有量を0.02%以下とする。S含有量を0.015%以下とすることがさらに好ましい。一方、Sは少ないほど好ましいため、S含有量の下限は特に限定されず、0%であってもよいが、工業的には0%超であってもよい。なお、過度の低S化は精錬時間の増加やコストの上昇を招くため、S含有量を0.0001%以上とすることが好ましい。
Cr:0.2〜2.0%
Crは、鋼の焼入れ性を向上させる機能を有する元素である。Crを添加することにより、焼入れ後の鋼の硬さがより高くなり、その結果、鋼板の耐摩耗性を向上させることができる。前記効果を得るためには、Cr含有量を0.2%以上とする必要がある。一方、Cr含有量が2.0%を超えると溶接性が低下する。そのため、Cr含有量を0.2〜2.0%とする。Cr含有量の好ましい下限は0.3%であり、さらに好ましくは0.4%である。また、Cr含有量の好ましい上限は1.8%であり、さらに好ましくは1.6%である。
Nb:0.005〜0.100%
Nbは、NbCとして析出することで結晶粒界の移動をピン止めし、結晶粒の成長を抑制する効果を有する元素である。前記効果を得るためには、Nb含有量を0.005%以上とする必要がある。一方、Nb含有量が0.100%を超えると、溶接性が低下する。そのため、Nb含有量を0.005〜0.100%とする。Nb含有量の好ましい下限は0.009%であり、さらに好ましくは0.011%である。また、Nb含有量の好ましい上限は0.070%であり、さらに好ましくは0.065%である。
Ti:0.005〜0.100%
Tiは、TiNとして析出することで結晶粒界の移動をピン止めし、粒成長を抑制する効果を有する元素である。前記効果を得るためには、Ti含有量を0.005%以上とすることが必要である。一方、Ti含有量が0.100%を超えると、鋼の清浄度が低下し、その結果、延性および靭性が低下する。そのため、Ti含有量を0.005〜0.100%とする。Ti含有量の好ましい下限は0.009%であり、さらに好ましくは0.024%である。また、Ti含有量の好ましい上限は0.060%であり、さらに好ましくは0.055%である。
Al:0.001〜0.100%
Alは、脱酸剤として有効であるとともに、窒化物を形成してオーステナイト粒径を小さくする効果を有する元素である。前記効果を得るためにはAl含有量を0.001%以上とする必要がある。一方、Al含有量が0.100%を超えると、鋼素材や鋼板の清浄度が低下し、その結果、延性および靭性が低下する。そのため、Al含有量を0.001〜0.100%とする。好ましくは、0.005〜0.080%の範囲である。
B:0.0005〜0.0100%
Bは、極微量の添加で焼入れ性を向上させることにより、鋼板の強度を向上させる効果を有する元素である。前記効果を得るためには、B含有量を0.0005%以上とする必要がある。一方、B含有量が0.0100%を超えると、溶接性が低下する。そのため、B含有量を0.0005〜0.0100%とする。なお、B含有量の好ましい下限は0.0007%であり、さらに好ましくは0.0009%である。また、B含有量の好ましい上限は0.0050%である。
N:0.01%以下
Nは、延性、靭性を低下させる元素であるため、N含有量を0.01%以下とする。一方、Nは少ないほど好ましいため、N含有量の下限は特に限定されず、0%であってもよい。しかし、Nは不純物として鋼中に不可避的に含有される元素であるため、工業的には0%超であってもよい。なお、過度の低N化は精錬時間の増加やコストの上昇を招くため、N含有量は0.0005%以上とすることが好ましい。
本発明の鋼板は、以上の成分を含み、残部がFeおよび不可避的不純物である。
本発明の鋼板は、上記した成分を基本組成とするが、さらに焼入れ性や溶接性の向上を目的として任意に、Cu:0.01〜2.00%、Ni:0.01〜5.00%、Mo:0.01〜3.00%、V:0.001〜1.000%、W:0.01〜1.50%、Ca:0.0001〜0.0200%、Mg:0.0001〜0.0200%、およびREM:0.0005〜0.0500%からなる群より選択される1種または2種以上を含有することができる。
Cu:0.01〜2.00%
Cuは、母材および靭性を大きく劣化させることなく焼入れ性を向上させることができる元素である。前記効果を得るために、Cu含有量を0.01%以上とする。一方、Cu含有量が2.00%を超えると、スケール直下に生成するCu濃化層に起因する鋼板割れが問題となる。そのため、Cuを添加する場合、Cu含有量を0.01〜2.00%とする。なお、Cu含有量は0.05〜1.50%とすることが好ましい。
Ni:0.01〜5.00%
Niは、焼入れ性を高めるとともに、靭性を向上させる効果を有する元素である。前記効果を得るために、Ni含有量を0.01%以上とする。一方、Ni含有量が5.00%を超えると製造コストの増加が問題となる。そのため、Niを添加する場合、Ni含有量を0.01〜5.00%とする。なお、Ni含有量は0.05〜4.50%とすることが好ましい。
Mo:0.01〜3.00%
Moは、鋼の焼入れ性を向上させる元素である。前記効果を得るために、Mo含有量を0.01%以上とする。しかし、Mo含有量が3.00%を超えると溶接性が低下する。そのため、Moを添加する場合、Mo含有量を0.01〜3.00%とする。なお、Mo含有量は0.05〜2.00%とすることが好ましい。
V:0.001〜1.000%
Vは、鋼の焼入れ性を向上させる効果を有する元素である。前記効果を得るために、V含有量を0.001%以上とする。一方、V含有量が1.000%を超えると、溶接性が低下する。そのため、Vを添加する場合、V含有量を0.001〜1.000%とする。
W:0.01〜1.50%
Wは、鋼の焼入れ性を向上させる効果を有する元素である。前記効果を得るために、W含有量を0.01%以上とする。一方、W含有量が1.50%を超えると、溶接性が低下する。そのため、Wを添加する場合、W含有量を0.01〜1.50%とする。
Ca:0.0001〜0.0200%
Caは、高温での安定性が高い酸硫化物を形成することで溶接性を向上させる元素である。前記効果を得るために、Ca含有量を0.0001%以上とする。一方、Ca含有量が0.0200%を超えると、清浄度が低下して鋼の靭性が損なわれる。そのため、Caを添加する場合、Ca含有量を0.0001〜0.0200%とする。
Mg:0.0001〜0.0200%
Mgは、高温での安定性が高い酸硫化物を形成することで溶接性を向上させる元素である。前記効果を得るためには、Mg含有量を0.0001%以上とする必要がある。一方、Mg含有量が0.0200%を超えると、Mgの添加効果が飽和して含有量に見合う効果が期待できず、経済的に不利となる。そのため、Mgを添加する場合、Mg含有量を0.0001〜0.0200%とする。
REM:0.0005〜0.0500%
REM(希土類金属)は、高温での安定性が高い酸硫化物を形成することで溶接性を向上させる元素である。前記効果を得るために、REM含有量を0.0005%以上とする。一方、REM含有量が0.0500%を超えると、REMの添加効果が飽和して含有量に見合う効果が期待できず、経済的に不利となる。そのため、REMを添加する場合、REM含有量を0.0005〜0.0500%とする。
[組織]
本発明の耐摩耗鋼板は、上記成分組成を有することに加えて、前記耐摩耗鋼板の表面から板厚の1/4深さ位置(以下、1/4位置と示す)の組織が、体積率で90%以上のマルテンサイトであり、旧γ粒の平均粒径が15μm以下、かつ旧γ粒の最大粒径が35μm以下である組織を有する。鋼の組織を上記のように限定する理由を以下に説明する。
マルテンサイトの体積率:90%以上
焼入れが不十分であるために、マルテンサイトに上部ベイナイトが混在する組織を持つ鋼材は、硬さ、靭性が悪くなる。マルテンサイトの体積率が90%未満の場合、その現象が顕著となる。そのため、マルテンサイトの体積率を90%以上とする。マルテンサイト以外の残部組織は特に限定されないが、フェライト、パーライト、オーステナイトおよびベイナイトの組織が存在していてもよい。一方、マルテンサイトの体積率が高いほどよいため、前記体積率の上限は特に限定されず、100%であってもよい。なお、耐摩耗鋼板が使用される環境では、鋼板の表層から板厚1/4位置までの硬さおよび靭性が重要となる。前記マルテンサイトの体積率は、鋼板の表層に近いほど大きくなるので、前記マルテンサイトの体積率を、耐摩耗鋼板の1/4位置で評価した。そして、マルテンサイトの体積率が高くなるにしたがって、鋼板の硬さおよび靭性も共に高くなる。前記マルテンサイトの体積率は、実施例に記載した方法で求めることができる。
旧オーステナイト粒の平均粒径:15μm以下
マルテンサイトの旧オーステナイト粒径(旧γ粒径)が小さくなるほど、脆性破壊の発生と伝播が生じ難くなり、靭性が高くなる。したがって、旧γ粒の平均粒径は脆性亀裂伝播の支配因子である。旧γ粒の平均粒径が15μmを超えると、脆性破壊亀裂の伝播が起こりやすくなり靭性が低下する。そのため旧γ粒の平均粒径を15μm以下とする。一方、旧γ粒の平均粒径は小さいほどよいため、下限は特に限定されないが、通常は平均粒径は1μm以上である。なお、通常は、鋼板の表層に近いほど旧γ粒径が小さくなるため、前記旧γ粒の平均粒径は、耐摩耗鋼板の板厚の1/4位置における旧γ粒の円相当直径の平均値とした。前記旧γ粒の平均粒径は、後述の実施例に記載した方法で求めることができる。
旧オーステナイト粒の最大粒径:35μm以下
鋼材の脆性破壊は、組織のうち、最も靭性が低い箇所を起点として発生する。旧オーステナイト粒径(旧γ粒径)が大きいほど靱性が悪くなるので、旧γ粒径が脆性亀裂発生の支配因子となる。また、脆性破壊発生、伝播時の全体の吸収エネルギーは、亀裂発生と伝播に要したエネルギーの和であるが、通常、亀裂発生時のエネルギーの方が大きい。そのため、全体の吸収エネルギーを大きくするには、旧γ粒径を小さくして、粗大な旧γ粒を少なくすることが重要である。
すなわち、旧γ粒の最大粒径が35μmを超えると、顕著に靭性が悪くなる。そのため旧γ粒の最大粒径を35μm以下とした。なお、通常は、鋼板の表層に近いほど旧γ粒径が小さくなるため、前記旧γ粒の最大粒径は、耐摩耗鋼板の板厚の1/4位置における旧γ粒の円相当直径の最大値とした。前記旧オーステナイト粒の最大径は、後述の実施例に記載した方法で求めることができる。
本発明では、前述したようにNbCを鋼板中に均一に微細分散させることで、旧γ粒の平均粒径を小さくかつ整粒組織とし、優れた低温靱性を得るものである。そのためには、板厚1/4位置で、NbCの数密度を5x105〜5x106/mm2とすることが有利である。この数密度が5x105/mm2よりも少ないと、旧γ粒の平均粒径を15μm以下にすること、または旧γ粒の最大粒径を35μm以下にすること、すなわち、微細かつ整粒組織を得ることが難しくなる。一方、NbCの数密度が5x106/mm2を超えると、旧γ粒が微細になりすぎて、鋼板の加工性が著しく悪くなる、おそれがある。
さらに、本発明の耐摩耗鋼板は、以下の硬さを有する。
[ブリネル硬さ]
ブリネル硬さ:360〜490HBW10/3000
鋼板の耐摩耗性は、硬さを大きくすることにより向上させることができる。鋼板の硬さとして、板厚1/4位置での硬さ試験の結果を代表値としたが、試験位置よりも表層側では焼入れ時の冷却速度が速いため、表層では板厚1/4位置と同等以上の硬さを有する。
硬さがブリネル硬さで360HBW未満の場合は、十分な耐摩耗性を得ることができない。一方、硬さがブリネル硬さで490HBW以上であると、曲げ加工性が劣化する。そのため、本発明では、板厚1/4位置での硬さを、ブリネル硬さで360〜490HBWとする。また、ブリネル硬さは、直径10mmのタングステン硬球を使用し、荷重3000kgfで測定した値とし、HBW10/3000と表記する。
また、本発明の耐摩耗鋼板は、以下の衝撃吸収エネルギーを有することが好ましい。
[衝撃吸収エネルギー]
近年は、より厳しい環境下で鋼材が使用されるようになっており、従来よりも低い温度でも良好な靱性を発揮させるには、シャルピー衝撃試験における、−60℃での衝撃吸収エネルギーが35J以上であることが好ましい。
[製造方法]
次に、本発明の耐摩耗鋼板の製造方法について説明する。
加熱温度:T*〜1300℃
鋼素材の加熱工程での加熱温度が、下記の式(1)で表されるT*℃より低いと、鋼素材の鋳造時に析出、成長し、疎に分布した粗大NbCが固溶せずにそのまま残存することになる。そのため、のちの焼入れ加熱時のNbCによるピンニング効果が、鋼材中で一様ではなくなり、混粒組織となる。つまり、NbCが存在しない所では粗大γ粒が成長するので、γ粒から変態するマルテンサイトも粗大化し、その結果、マルテンサイトも混粒になる。このような鋼素材から製造された鋼材では、靱性が低下する。
一方、前記加熱温度が1300℃よりも高いと、スケール生成量が多くなり鋼材歩留りが低下する。そのため、前記加熱温度をT*〜1300℃とする。なお、ここでの加熱温度は、鋼素材表面での温度とする。
T*=7920/(3.4−log[Nb][C]0.87)−273・・・(1)
熱間圧延:1000℃以下850℃以上の範囲での総圧下率が30%以上
通常、熱間圧延が行われる700〜1300℃程度の温度域でのNbCの優先析出サイトは、γ粒界上である。このような場合は、析出したNbC粒子の間隔が広く、NbCはまばらに分布する。NbCを、微細に分散させて析出させるには、圧延によって鋼素材中に導入された転位上にNbCを析出させる、歪み誘起析出の活用が有効である。
総圧下率が30%未満の場合、NbCの析出サイトとなる転位量が少ないため、NbCの分散状態がまばらとなる。また圧延温度が850℃未満の場合は、NbCの析出の大部分は既に完了しているため、歪み誘起析出によるNbCの析出量が少なくなる。したがって、NbCの分散状態はまばらとなり、オーステナイト粒が混粒組織となる。そして、熱間圧延後の焼入れ加熱で微細整粒γ粒組織が得られなくなるので、靭性が低下する。
一方、1000℃を超える温度で圧延すると、導入された転位が回復し、再結晶することによりNbCの析出以前に転位が消滅する。そのため、前記転位がNbCの析出サイトとならない。そのため、前記熱間圧延条件を、1000℃以下850℃以上の温度範囲での総圧下率を30%以上とする。なお、この温度は板厚1/4位置における温度とする。
ここでの圧下率は、可逆式圧延機を用いる場合は、各圧延パスでの入側の板厚に対する出側の板厚の比とし、連続式圧延機を用いる場合は、各圧延スタンドの入側の板厚に対する出側の板厚の比とする。また、総圧下率は、可逆式圧延機を用いる場合は圧延パスごとの圧下率の和、連続式圧延機を用いる場合は圧延スタンドごとの圧下率の和とする。
なお、ここでの温度は、鋼素材表面の温度とする。
熱間圧延後の800℃以下600℃以上の温度域の平均冷却速度:1℃/s以上
熱間圧延後の鋼板の冷却速度が1℃未満の場合、析出していたNbC粒子のオストワルド成長により、微細粒子が消失し、粗大粒子がさらに粗大化するので、NbCの分散状態は疎となる。その結果、マルテンサイトが混粒組織となるので、低温靱性が悪化する。そのため、冷却速度を1℃/s以上とした。なお、この冷却速度は板厚1/4位置での800〜600℃間の平均冷却速度である。冷却速度の上限は、特に規定はしないが、200℃/s程度で十分である。
なお、板厚1/4位置の温度は、鋼板表面の温度をもとに、伝熱計算で求めることができる。
焼入れの再加熱温度:Ac3〜950℃
前記の冷却終了後の鋼材に対して、焼入れを行う。
焼入れの再加熱温度がAc3未満の場合は、熱延後の組織が未変態のまま残存してしまい、硬さや靭性が低くなる。また、再加熱温度が950℃を超えると、γ粒の成長により旧γ粒径が粗大となるので、やはり靭性が低下する。そのため、焼入れ時の再加熱温度をAc3〜950℃とした。なお、Ac3は以下の(2)式で表される値を用いた。
Ac3(℃)=937−5722.765([C]/12.01−[Ti]/47.87)+56[Si]−19.7[Mn]−16.3[Cu]−26.6[Ni]−4.9[Cr]+38.1[Mo]+124.8[V]−136.3[Ti]−19[Nb]+3315[B]・・・(2)式
ここで、[ ]は該括弧内の元素の含有量(質量%)であり、該元素が添加されていない場合には0(ゼロ)とする。
なお、ここでの再加熱温度は、鋼板表面での温度とする。
焼入れの冷却速度:1℃/s以上
焼入れの冷却速度が1℃/s未満の場合、マルテンサイトの体積率が小さくなるので、硬さ、靭性が低下する。そのため、焼入れの冷却速度を1℃/s以上とする。なお、この冷却速度は板厚1/4位置での800〜300℃間の平均冷却速度である。冷却速度の上限は、特に規定はしないが、200℃/s程度で十分である。
前記焼入れの冷却停止温度は特に限定されないが、冷却停止温度が250℃よりも高いと、マルテンサイトの体積率が小さくなり、鋼板の硬さが低くなる場合があるため、250℃以下とすることが好ましい。一方、冷却停止温度の下限は特に限定されないが、不必要に冷却をし続けると製造効率が低下するため、冷却停止温度を20℃以上とすることが好ましい。
冷却停止温度は板厚1/4位置での温度である。
さらに、必要であれば、焼入れ後に100〜350℃の温度で焼戻す工程を設けることもできる。
焼戻し温度:100〜350℃
前記焼戻しの後に焼戻しを行う場合、焼戻し温度を100℃以上とすることにより、鋼板の靭性と加工性を向上させることができる。一方、焼戻し温度が350℃より高いと、マルテンサイトの著しい軟化が起こることがある。そのため、焼戻し温度を100〜350℃とする。焼戻しの時間は、適宜調整可能である。
焼戻し温度は、鋼板表面の温度である。
次に、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例は、本発明の好適な一例を示すものであり、本発明は、該実施例によって何ら限定されるものではない。
まず、連続鋳造法により、表1に示す成分組成のスラブを製造した。
Figure 2018123409
次に、得られたスラブに対して、加熱、熱間圧延、焼入れの各処理を順次行って鋼板を得た。さらに、一部の鋼板については、焼入れ後に焼戻しのための再加熱を行った。各工程の製造条件は、表2に示す通りである。なお、焼入れ後の冷却は、鋼板を移動させながら鋼板の表裏面より大流量で水を噴射して行った。鋼板温度は、鋼板表面の温度をもとに、伝熱計算で求めた。また、鋼板の焼入れ時の冷却は250℃以下まで行った。
得られた鋼板のそれぞれについて、以下に記す方法で、マルテンサイトの体積率、および旧γ粒径を測定した。測定結果を表2に示す。
[マルテンサイトの体積率]
得られた各鋼板の長手方向1/4かつ幅中央位置から、板厚1/4位置が観察面となるようにサンプルを採取した。該サンプルの表面を鏡面研磨し、さらにナイタール腐食した後、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて10mm×10mmの範囲を撮影した。撮影された像を、画像解析装置を用いて解析することによってマルテンサイトの面積分率を求め、その値を本発明におけるマルテンサイトの体積率とした。
[旧オーステナイト粒径]
旧オーステナイト粒径を測定するためのサンプルを、鋼板の長手方向1/4かつ幅方向中央から、板厚1/4位置が観察面となるように採取した。得られたサンプルの表面を鏡面研磨し、さらにピクリン酸で腐食した後、光学顕微鏡を用いて板の長手方向10mm分の範囲を倍率400倍で撮影した。撮影された像を、画像解析装置を用いて解析することにより、旧γ粒の平均粒径および最大粒径をそれぞれ求めた。なお、該旧オーステナイト粒径は、円相当直径として算出した。
さらに、得られた鋼板のそれぞれについて、以下に記す方法で、硬さとシャルピー衝撃吸収エネルギーを評価した。評価結果は、表2に示した通りである。
[硬さ(ブリネル硬さ)]
耐摩耗性の指標として、鋼板の板厚1/4位置での硬さを測定した。測定に用いた試験片は、鋼板の板厚1/4位置が試験面となるよう、上述のようにして得られた各鋼板から採取した。該試験片の表面を鏡面研磨した後、JIS Z2243(2008)に準拠してブリネル硬さを測定した。測定には直径10mmのタングステン硬球を使用し、荷重は3000kgfとし、10点で試験を行い、その平均値をブリネル硬さとした。
ブリネル硬さが360〜490HBW10/3000である場合を、耐摩耗性に優れると判断した。
[シャルピー吸収エネルギー]
シャルピー衝撃試験片として、JISVノッチ試験片(JIS Z2242(2005))を、鋼板の長手方向1/4かつ幅中央の板厚1/4位置から、試験片の長手方向が鋼板の長手方向と平行になるように採取した。板厚に応じて、適宜試験片幅が2.5mm、5mm、7.5mmのサブサイズ試験片を用いた。試験温度を−60℃とし、その他の試験条件はJIS Z2242(2005)に準拠してシャルピー衝撃試験を行い、−60℃での吸収エネルギーを求めた。(得られた吸収エネルギー)×10/(試験片幅)の式で試験片幅10mm相当に換算した値で評価した。試験片をそれぞれ6個用意し、6個の吸収エネルギー(換算後)の平均値をシャルピー吸収エネルギーとした。そして、−60℃での換算後の衝撃吸収エネルギーが35J以上である場合を、低温靱性に優れるとした。
Figure 2018123409
表2に示した結果から分かるように、本発明の条件を満たす耐摩耗鋼板は、ブリネル硬さ360HBW10/3000以上の優れた硬さと、−60℃という極低温での優れた低温靭性を兼ね備えていた。これに対して、本発明の条件を満たさない比較例の鋼板は、硬さおよび低温靭性の少なくとも一方が劣位であった。
例えば、C含有量が低いNo.14の鋼板では、マルテンサイト基地中の固溶C量が少なくなるため硬さが劣っている。No.15の鋼板は、C含有量が高いため、硬さが高くなりすぎている。No.16の鋼板は、Nb含有量が低いため、NbCのピンニング効果が小さく、旧γ粒径が粗大になったため低温靭性が低い。No.17の鋼板は、B含有量が低いため、焼入れ性が不足した結果、マルテンサイト体積率が低くなり、硬さが低い。No.18の鋼板は、熱間圧延時の加熱温度がNb固溶温度T*よりも低いので、連続鋳造時に析出し、疎に分散した粗大NbCが再固溶せずに残存するため、部分的に旧γ粒径が粗大な組織となった結果、低温靭性が低い。No.19の鋼板は、熱間圧延時の1000〜850℃間の総圧下率が低いので、歪み誘起析出効果が小さく、NbCが疎に分散したため、部分的に旧γ粒径が粗大な組織となった結果、低温靭性が低い。No.20の鋼板は、熱間圧延後の冷却速度が遅いため、NbCのオストワルド成長が起こり、NbCが疎に分散したため、部分的に旧γ粒径が粗大な組織となった結果、低温靭性が低い。No.21の鋼板は、焼入れの再加熱温度がAc3よりも低いため、マルテンサイト体積率が小さくなり、その結果、硬さが劣っている。No.22の鋼板は、焼入れの再加熱温度が高いため、旧オーステナイト粒径が大きくなり、その結果、低温靭性が劣っている。No.23の鋼板は、焼入れの再加熱後の冷却速度が低いため、マルテンサイト変態が生じず、その結果、硬さが劣っている。No.24の鋼板は、焼戻し温度が高いため、マルテンサイトの軟化が起こり、その結果、硬さが劣っている。
なお、鋼板の板厚1/4位置で分析装置付透過型電子顕微鏡にて50000倍の撮影を10視野分行い、NbC粒子の数密度を求めた。その結果、適合鋼はすべてNbCの数密度が5×105〜5×106/mm2に収まっていることを確認した。

Claims (5)

  1. 質量%で、
    C :0.10〜0.23%、
    Si:0.1〜3.0%、
    Mn:0.50〜3.00%、
    P :0.025%以下、
    S :0.02%以下、
    Cr:0.2〜2.0%、
    Nb:0.005〜0.100%、
    Ti:0.005〜0.100%、
    Al:0.001〜0.100%、
    B :0.0005〜0.0100%および
    N :0.01%以下
    を含み、残部Fe及び不可避不純物である成分組成を有し、
    鋼板の表面から板厚の1/4深さ位置の組織が体積率で90%以上のマルテンサイトであり、旧オーステナイト粒の平均径が15μm以下、かつ最大径が35μm以下である組織を有し、
    鋼板の表面から板厚の1/4深さ位置における硬さが、ブリネル硬さで360〜490HBW10/3000である耐摩耗鋼板。
  2. 前記成分組成は、さらに、質量%で、
    Cu:0.01〜2.00%、
    Ni:0.01〜5.00%、
    Mo:0.01〜3.00%、
    V :0.001〜1.000%、
    W :0.01〜1.50%、
    Ca:0.0001〜0.0200%、
    Mg:0.0001〜0.0200%および
    REM:0.0005〜0.0500%
    から選択される一種または二種以上を含む、請求項1に記載の耐摩耗鋼板。
  3. 質量%で、
    C :0.10〜0.23%、
    Si:0.1〜3.0%、
    Mn:0.50〜3.00%、
    P :0.025%以下、
    S :0.02%以下、
    Cr:0.2〜2.0%、
    Nb:0.005〜0.100%、
    Ti:0.005〜0.100%、
    Al:0.001〜0.100%、
    B :0.0005〜0.0100%および
    N :0.01%以下
    を含み、残部Fe及び不可避不純物である成分組成を有する鋼素材を、下記(1)式で表される温度T*℃以上1300℃以下に加熱し、
    前記加熱された鋼素材を、該鋼素材の表面から板厚の1/4深さ位置の温度が1000℃以下850℃以上の範囲の総圧下率を30%以上とする熱間圧延を行って熱延鋼板とし、
    前記熱延鋼板を、該熱延鋼板の表面から板厚1/4深さ位置の温度が800℃以下600℃以上の範囲を平均冷却速度1℃/s以上で冷却し、
    その後、Ac3以上950℃以下の温度で前記熱延鋼板の再加熱を行った後、該鋼板の表面から板厚1/4深さ位置の温度が800℃以下300℃以上の範囲を平均冷却速度1℃/s以上で冷却する耐摩耗鋼板の製造方法。

    T*=7920/(3.4−log[Nb][C]0.87)−273・・・(1)
  4. 前記鋼素材は、さらに、質量%で、
    Cu:0.01〜2.00%、
    Ni:0.01〜5.00%、
    Mo:0.01〜3.00%、
    V :0.001〜1.000%、
    W :0.01〜1.50%、
    Ca:0.0001〜0.0200%、
    Mg:0.0001〜0.0200%および
    REM:0.0005〜0.0500%
    から選択される一種または二種以上を含む、請求項3に記載の耐摩耗鋼板の製造方法。
  5. さらに、前記鋼板を100〜350℃の温度で焼戻す、請求項3または4に記載の耐摩耗鋼板の製造方法。
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