JP2018123315A - 表面処理剤 - Google Patents
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Abstract
Description
(1)材料側の反応性
・物理的性質の変化:大きさ、形、強度、弾性、透明度など
・化学的性質の変化:親/疎水性、酸/塩基性、吸着性、透過性、溶出性など
(2)生体側の反応性
・組織適合性(多量の血液に触れない場合):細胞接着性、細胞増殖性、細胞活性化など
・血液適合性(多量の血液に触れる場合):抗血小板血栓性、抗凝固性、抗溶血性など
特に、血液適合性の向上を目指したバイオマテリアルの研究例は、そのニーズが高いことから多く存在する。血液適合性バイオマテリアルには、血小板を活性化して血栓を形成することなく、血液凝固因子などの血液中の生体分子との相互作用も抑制し、赤血球の溶血などにより血液を構成する細胞を破壊しないなどの特性が求められる。
[1] 有機系の樹脂材料に対する表面処理剤であって、下記式(1):
R1−(CH2CH2O)n−R2−A (1)
[式中、
R1は、−OCH3、−COOH、−ORA、−SRA、−RAであり、ここでRAは炭素数1〜18の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基である;
R2は、−RB−NHCO−、−CONH−RB−、−NHCO−または−CONH−であり、ここでRBは炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖のアルキレン、アルケニレン、アルキニレンである;
Aは、以下の式:
RC、RD、およびREは、それぞれ独立して水素または−OHであり、
RFは−CH2−CH(CH3)2または−COOHであり;および
nは、11〜2300の整数を表す]
で表される構造を有する化合物を含む、前記表面処理剤。
[2] 有機系の樹脂材料が、ビニル系のポリマー、ポリイミド系のポリマー、ポリスチレン、またはセルロース、である、上記[1]に記載の表面処理剤。
[3] 有機系の樹脂材料が、ポリプロピレンまたはポリスチレンである、上記[1]に記載の表面処理剤。
[4] 化合物が、下記式(2’)
で表される構造を有する、上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の表面処理剤。
[5] 化合物が、下記式(2)
で表される構造を有する、上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の表面処理剤。
[6] 上記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の表面処理剤を用いた樹脂材料の表面処理方法であって、上記樹脂材料の表面に、上記表面処理剤を溶剤に溶解してなる処理剤溶液を作用させて、上記表面処理剤を該表面に吸着させることを特徴とする表面処理方法。
[7] 上記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の表面処理剤を、樹脂材料の表面に吸着させることで、樹脂表面へのタンパク質の吸着を抑制する、タンパク質吸着抑制剤。
本明細書で特段に定義されない限り、本発明に関連して用いられる科学用語及び技術用語は、当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。
一態様において、本願は有機系の樹脂材料に対するタンパク質吸着を抑制するための表面処理剤であって、下記式(1):
R1−(CH2CH2O)n−R2−A
[式中、
R1は、−OCH3、−COOH、−ORA、−SRA、−RAであり、ここでRAは炭素数1〜18の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基である;
R2は、−RB−NHCO−、−CONH−RB−、−NHCO−または−CONH−であり、ここでRBは炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖のアルキレン、アルケニレン、アルキニレンである;
Aは、以下の式:
RC、RD、およびREは、それぞれ独立して水素または−OHであり、
RFは−CH2−CH(CH3)2または−COOHであり;および
nは、11〜2300の整数を表す]
で表される構造を有する化合物を含む、前記表面処理剤に関する。
上記表面処理剤に含まれる化合物について、RAは、好ましくは炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基である。
上記表面処理剤に含まれる化合物について、Aは、好ましくは以下の式:
で表されるコレステロール基である。ここにおいてRC、RD、およびREは、それぞれ独立して水素または−OHであり、好ましくは水素である。
で表される構造を有する化合物を含むものであってもよい。
特に好ましい態様において、表面処理剤は、下記式(2)
で表される構造を有する化合物を含むものであってもよい。
表面処理剤に含まれる化合物は、例えば国際公開第WO2014/148378号パンフレットに記載の方法など、当業者に公知の手法やそれらを適宜組み合わせることにより合成することができる。
一態様において、本願は上記表面処理剤を用いる有機系の樹脂材料の表面修飾方法または表面処理方法を提供する。有機系の樹脂材料については、上記「表面修飾剤」の項目において記載した通りである。上記表面修飾方法または表面処理方法は、上記樹脂材料の表面に、上記表面処理剤を溶剤に溶解してなる処理剤溶液を作用させて、上記表面処理剤を該表面に吸着させる工程を含む。溶剤は、特に限定されないが、例えば水、各種緩衝液、生理食塩水であり、好ましくは水である。好ましい態様において、上記表面修飾方法または表面処理方法は、本願の表面処理剤の水溶液を有機系の樹脂材料上で静置する工程を含む。
以下の構造式で表されるChol−PEG:
を用い、ポリプロピレンの表面修飾を行った場合のタンパク質吸着抑制効果について、表面修飾の際の処理濃度依存性を検討した。また、コレステロール基の有無による効果を検討すべく、以下の構造式で表されるNH2−PEG:
方法
Chol−PEG 1mg/ml、2mg/ml、5mg/ml、NH2−PEG 1mg/mlを、ポリプロピレン製のプレートのウェルにそれぞれ50μL添加し、24時間静置した(n=3)。24時間後、溶液を取り除き、ドライヤーでウェルを完全に乾燥させた。蒸留水でウェルを2回洗浄した。Chol−PEGまたはNH2−PEGで表面修飾せずに抗原を添加したウェルをポジティブコントロール(「+」)とし、Chol−PEGまたはNH2−PEGで表面修飾せず、抗原を添加もしないウェルをネガティブコントロール(「−」)とした。「+」、「NH2−PEG」、「Chol−PEG 1mg/ml」、「Chol−PEG 2mg/ml」および「Chol−PEG 5mg/ml」のウェルに抗原(ニワトリγ−グロブリン、1μg/mL)を50μL/ウェル、「−」のウェルに1×PBS(−)を50μL/ウェルで添加し、5分間静置した。各ウェルを洗浄液(0.05% Tween 20、PBS(−))で2回洗浄した。全てのウェルに1×1次抗体(ウサギ抗ニワトリポリクローナル抗体、バイオ・ラッド ラボラトリーズ株式会社、1μg/mL)を50μL/ウェルで添加し、5分間静置した後、各ウェルを洗浄液で2回洗浄した。続いて1×2次抗体(ヤギ抗ウサギ抗体西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合体、バイオ・ラッド ラボラトリーズ株式会社、#166-2400JEDU(ELISA イムノ Explorer キット)附属品)を50μL/ウェルで添加し、5分静置した後、各ウェルを洗浄液で2回洗浄した。HRP酵素基質である3,3’、5、5’−テトラメチルベンジジン(TMB)(バイオ・ラッド ラボラトリーズ株式会社、#1662402)を50μL/ウェルずつ加えて10分間静置した。2M硫酸を50μL/ウェルずつ加えて反応を止めた。450nmの吸光度を測定した。
結果を図1に示す。Chol−PEGを添加したウェルはネガティブコントロールと同等の低い吸光度を示し、抗原の吸着を抑制したことが示された。また、1mg/mL以上の濃度範囲では濃度依存性は観察されず、1mg/mLのChol−PEGによる処理で十分なタンパク質吸着抑制効果が得られることが明らかとなった。
Chol−PEG 1mg/mlを、ポリプロピレン製のプレートのウェルにそれぞれ50μL添加し、1、3、6、18または24時間静置した。その後は実施例1と同様に処理し、Chol−PEGによる表面修飾の際の処理時間の長さによる影響を検討した。
表面処理剤の構造によるタンパク質吸着抑制効果への影響を検証するために、実施例1において記載したChol−PEG、NH2−PEGの他、以下の構造式の化合物:
および、
を用い、ポリプロピレン表面修飾によるタンパク質吸着抑制効果を検討した。
Chol−PEG、NH2−PEG、St−PEG、DEAE−PEG、APe−DEAE−PEG、およびGu−PEGの各1mg/mlのサンプル溶液を、ポリプロピレン製のプレートのウェルにそれぞれ50μL添加し、室温で24時間静置した。蒸留水でウェルを2回洗浄した。実施例1と同様に、ポジティブコントロール(「+」)およびネガティブコントロール(「−」)を設けた。「+」、「NH2−PEG」、「Chol−PEG」、「DEAE−PEG」、「APe−DEAE−PEG」、および「Gu−PEG」のウェルには抗原ニワトリγ-グロブリン、1μg/mL)を50μL/ウェル、「−」のウェルにPBS(−)を50μL/ウェルで添加し、5分間静置した。各ウェルを洗浄液(0.05% Tween 20、PBS(−))で3回洗浄した。1×1次抗体(ウサギ抗ニワトリポリクローナル抗体、バイオ・ラッド ラボラトリーズ株式会社、1 μg/mL)を50μL/ウェルで添加し、5分間静置した後、各ウェルを洗浄液で3回洗浄した。続いて1×2次抗体(ヤギ抗ウサギ抗体西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合体、バイオ・ラッド ラボラトリーズ株式会社、#166-2400JEDU(ELISA イムノ Explorer キット)附属品)を50μL/ウェルで添加し、5分静置した後、各ウェルを洗浄液で3回洗浄した。HRP酵素基質であるTMB(バイオ・ラッド ラボラトリーズ株式会社、#1662402)50μL/ウェルずつ添加し、20分間または30分間静置した。2M硫酸を50μL/ウェルずつ加えて反応を止めた。450nmの吸光度を測定した。
結果を図3に示す。Chol−PEGを添加したウェルが最も吸光度が低く、ネガティブコントロールと同等の吸光度を示した。このことは、ウェルにChol−PEGがコーティングされたことで、抗原の吸着を抑制したことが示している。
ポリプロピレンに対するChol−PEGの結合性を、水晶振動子(QCM:Quartz Crystal Microbalance)ベースの分子間相互作用解析装置であるAffinix(登録商標)QN Pro(ULVAC)により評価した。
F2=−質量+粘弾性G’+G”
Fw=−粘性−粘弾性G’
QCMは、質量、粘性、粘弾性の影響を受けるが、各々の周波数はその寄与が異なっている。Fwは損失分を表し、溶液の粘性が上がったとき、あるいは、吸着物が柔らかく変化したときに減少する。本実施例においては、吸着したものが硬ければFwは変化せず、柔らかければ吸着量に合わせてマイナスに変化する。
高濃度の添加実験として、Chol−PEGを含む試料を終濃度が0.4mg/mLとなるようにPPセンサー上に添加した。その後、蒸留水500μlに置換した。結果を図5に示す。
に当てはめ、PPセンサー1cm2あたりに吸着したChol−PEGの量を計算した。その結果、0.23273μg/cm2のChol−PEGが吸着したことが明らかとなった。また、この値を、PPセンサー1nm2あたりに吸着したChol−PEGの分子数に換算したところ、0.5806分子/nm2であった。
低濃度からの添加実験として、希薄濃度のChol−PEGを含む試料を、段階的に濃度を向上させてPPセンサー上に添加した。
また、上記1回目の実験結果について、(4−1)の手法と同様にしてPPセンサー1cm2あたりに吸着したChol−PEGの量を計算したところ、0.5μg/cm2のChol−PEGが吸着したことが明らかとなった。また、この値を、PPセンサー1nm2あたりに吸着したChol−PEGの分子数に換算したところ、1.25分子/nm2であった。この結果は、低濃度からの段階的添加により、樹脂材料1nm2ああたり1本程度のChol−PEGが吸着したことを意味する。
Claims (7)
- 有機系の樹脂材料に対する表面処理剤であって、下記式(1):
R1−(CH2CH2O)n−R2−A (1)
[式中、
R1は、−OCH3、−COOH、−ORA、−SRA、−RAであり、ここでRAは炭素数1〜18の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基である;
R2は、−RB−NHCO−、−CONH−RB−、−NHCO−または−CONH−であり、ここでRBは炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖のアルキレン、アルケニレン、アルキニレンである;
Aは、以下の式:
RC、RD、およびREは、それぞれ独立して水素または−OHであり、
RFは−CH2−CH(CH3)2または−COOHであり;および
nは、11〜2300の整数を表す]
で表される構造を有する化合物を含む、前記表面処理剤。 - 有機系の樹脂材料が、ビニル系のポリマー、ポリイミド系のポリマー、ポリスチレン、またはセルロース、である、請求項1に記載の表面処理剤。
- 有機系の樹脂材料が、ポリプロピレンまたはポリスチレンである、請求項1に記載の表面処理剤。
- 化合物が、下記式(2’)
で表される構造を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の表面処理剤。 - 化合物が、下記式(2)
で表される構造を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の表面処理剤。 - 請求項1〜5のいずれか1項に記載の表面処理剤を用いた樹脂材料の表面処理方法であって、上記樹脂材料の表面に、上記表面処理剤を溶剤に溶解してなる処理剤溶液を作用させて、上記表面処理剤を該表面に吸着させることを特徴とする表面処理方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の表面処理剤を、樹脂材料の表面に吸着させることで、樹脂表面へのタンパク質の吸着を抑制する、タンパク質吸着抑制剤。
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