JP2018118916A - 支持体及び支持体を用いた皮膚貼付剤 - Google Patents

支持体及び支持体を用いた皮膚貼付剤 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、支持体に剥離シートなどを形成せずに、体に貼りやすい皮膚貼付剤用支持体を提供する。【解決手段】本発明に係る支持体は、厚さが0.5mm以上2.0mm以下の不織布製支持体であって、少なくとも一方面に、太さが1mm以上5mm以下、高さが0.3mm以上1.5mm以下の凸状皺を有することを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、皮膚に貼付して使用する皮膚貼付剤用の支持体及び前記支持体を用いた皮膚貼付剤に関するものである。
近年、皮膚貼付剤としては、使用時のムレを防止し、使用感をなくすため、薄地のものが提供されている。皮膚貼付剤を薄く仕上げるには、支持体を薄くする必要があるが、支持体を薄くすると、皮膚貼付剤から薬剤保護層を剥がして使用する際に、皮膚貼付剤の剛性を十分に維持できないため、身体に貼付する際に皮膚貼付剤がよれて皺が生じたり、薬剤塗膏面同士が合着してしまうという問題がある。このような問題に対処した例として、特許文献1には、少なくとも1方向に伸縮性を有する伸縮性布帛の片面に、剥離性粘着層を有する剥離シート材が積層されていることを特徴とする貼付剤用支持体が開示されている。
特開2005−119972号公報
しかし特許文献1に記載の貼付剤用支持体には、剥離性粘着層を有する剥離シート材が積層されているため、剥離シート材を備えることにより、製造工程の増加やコストアップに繋がり、また剥離シート材を剥がし忘れるといったトラブルを招く虞があるため、更なる改善が必要である。
このような状況下、本発明は、支持体に剥離シートなどを形成せずに、体に貼りやすい皮膚貼付剤用支持体を提供することを課題として掲げた。
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、支持体の少なくとも一方面に、太さが1mm以上5mm以下、高さが0.3mm以上1.5mm以下の凸状皺を形成することにより、体に貼りやすい皮膚貼付剤用支持体が提供されることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明に係る支持体は、以下の点に要旨を有する。
[1] 厚さが0.5mm以上2.0mm以下の不織布製支持体であって、少なくとも一方面に、太さが1mm以上5mm以下、高さが0.3mm以上1.5mm以下の凸状皺を有することを特徴とする支持体。
[2] 捲縮発現後の潜在捲縮繊維を含む伸縮層と、前記凸状皺を表面に有する抗変形層とが、前記伸縮層と前記抗変形層の層間に存在する繊維同士の絡合により一体化されている[1]に記載の支持体。
[3] 伸縮層と抗変形層の目付比が80:20〜20:80である[2]に記載の支持体。
[4] 抗変形層が、伸縮層中の潜在捲縮繊維の質量に対して、0倍以上0.8倍以下の潜在捲縮繊維を含有する[2]又は[3]に記載の支持体。
[5] 潜在捲縮繊維の含有率が、支持体100質量%中、20質量%以上90質量%以下である[2]〜[4]のいずれかに記載の支持体。
[6] 凸状皺が一方向に配向している[1]〜[5]のいずれかに記載の支持体。
[7] 50%伸長時応力が、横(CD)方向において2.0N/50mm以上9.0N/50mm以下、縦(MD)方向において5.0N/50mm以上35N/50mm以下であり、50%伸長時回復率が、横(CD)方向において35%以上70%以下、縦(MD)方向において15%以上40%以下である[1]〜[6]のいずれかに記載の支持体。
[8] [1]〜[7]のいずれかに記載の支持体に薬剤が塗膏されていることを特徴とする皮膚貼付剤。
[9] 長辺と短辺を有する長方形の形状を有し、前記凸状皺が短手方向に配向されている[8]に記載の皮膚貼付剤。
[10] 凸状皺を有する面に薬剤が塗膏されている[8]又は[9]に記載の皮膚貼付剤。
本発明によれば、使用時に皮膚貼付剤が折れ曲がるのを防ぎ、薬剤面での合着を抑制することが可能な支持体が提供される。
図1は、凸状皺を有する支持体表面の概略図である。
<凸状皺>
本発明に係る支持体は、不織布製の支持体であって、少なくとも一方面に、太さが1mm以上5mm以下(より好ましくは1.5mm以上4mm以下)、高さが0.3mm以上1.5mm以下(より好ましくは0.5mm以上1.2mm以下)の凸状皺を有する点に特徴を有する。本発明において凸状皺とは、支持体表面から突出した立体的な細い筋を意味する。凸状皺には繊維が凝集しているため、凸状皺が柱の役割を果たす。これにより、使用時に皮膚貼付剤が折れ曲がるのを防ぎ、薬剤面での合着を抑制することが可能となる。
また本発明者が検討したところ、凸状皺の太さ及び高さは、皮膚貼付剤の剛性に影響することが分かった。凸状皺の太さが1mm未満或いは凸状皺の高さが0.3mm未満では、貼付に必要な剛性が得られず、使用時に皮膚貼付剤が折れ曲がり、薬剤面が合着するおそれがあるため好ましくない。一方、凸状皺の太さが5mm超或いは凸状皺の高さが1.5mm超では、支持体が厚くなり、パッケージに収容可能な皮膚貼付剤の枚数が少なくなったり、身体に貼付後、皮膚貼付剤が衣服と擦れて剥がれ易くなるため好ましくない。
凸状皺の一本あたりの長さは、好ましくは5mm以上80mm以下(より好ましくは7mm以上70mm以下)である。後述するように、支持体の製造条件によって、凸状皺の太さ、高さ及び長さをコントロールできるが、凸状皺が短すぎると支持体に十分な強度を付与できず、一方、長過ぎると使用者がゴワツキを感じ易くなるため好ましくない。
図1には、凸状皺を有する支持体表面の概略図を示す。太線は、所定の太さ及び高さを有する凸状皺1の尾根をトレースした線(稜線)に相当する。図1に示すように、凸状皺1は、一方向に配向していることが好ましい。凸状皺1が一方向に配向していれば、凸状皺1の配向方向に対して強度を付与しやすくなる。特に、凸状皺1は縦(MD)方向に配向していることが望ましい。なお本発明において配向とは、1本の凸状皺の両末端を結ぶ直線の向きが複数の凸状皺で揃っていることをいう。
凸状皺は、支持体の5cm四方において、好ましくは5本以上、より好ましくは10本以上、更に好ましくは20本以上であり、好ましくは60本以下、より好ましくは50本以下、更に好ましくは45本以下である。凸状皺の本数が前記範囲内であれば、適度な剛性を有しながら、ゴワツキ感の少ない皮膚貼付剤用支持体が得られる。
また支持体の5cm四方において目視される凸状皺の総長さは、好ましくは25cm以上、より好ましくは35cm以上、更に好ましくは45cm以上であり、より更に好ましくは50cm以上であり、好ましくは200cm以下、より好ましくは150cm以下、更に好ましくは100cm以下である。凸状皺の総長さが前記範囲内であれば、適度な剛性を有しながら、ゴワツキ感の少ない皮膚貼付剤用支持体が得られる。また、皮膚貼付剤の貼り易さが向上するため、凸状皺の総長さは長いほど好ましい。
支持体は、その片面あるいは両面に凸状皺を有していてもよいが、凸状皺が支持体の両面に存在すると使用者がゴワツキを感じる虞があるため、片面のみに凸状皺を有することが好ましい。ただし支持体が片面のみに凸状皺を有する場合であっても、凸状皺を有する面とは反対側の面が、太さが1mm未満或いは高さが0.3mm未満の若干の皺を有することは排除されない。
凸状皺は、例えば、潜在捲縮繊維を含む伸縮層用ウェブと、前記伸縮層よりも熱収縮率が低い抗変形層用ウェブとを重ねた後、ニードルパンチ法によりこれらを一体化した後、熱処理を行うことにより、抗変形層表面に形成できる。熱処理により潜在捲縮繊維の立体捲縮が発現し、伸縮層が一旦収縮する。この伸縮層の収縮に追従して抗変形層も収縮する際に、熱収縮率の違いから、抗変形層に含まれる繊維が一部凝集し、これにより抗変形層表面に凸状皺が形成されるためである。
<伸縮層>
1.捲縮繊維
伸縮層は、潜在捲縮繊維(熱処理後においては、捲縮発現後の潜在捲縮繊維)を含む。潜在捲縮繊維は、(1)熱処理により捲縮を発現する際に、抗変形層を引っ張って抗変形層表面に凸状皺を形成すること、(2)及び、捲縮発現後においては、支持体に、皮膚貼付剤に要求される伸縮性を付与すること、に寄与する。
潜在捲縮繊維は、熱処理により立体捲縮(例えば、コイル状)を発現する繊維をいう。立体捲縮のバネ効果により、支持体が伸縮性を有するものとなり、皮膚貼付剤に要求される身体への追従性を付与することができる。
潜在捲縮繊維としては、ポリエチレン−ポリプロピレン、ポリエチレン−ポリエステル、ポリエステル−変性ポリエステル等の組み合わせに例示されるような熱収縮率の異なる樹脂からなる偏心構造を有する芯鞘繊維やサイドバイサイド構造を有する複合繊維等が例示される。
潜在捲縮繊維の捲縮発現後の捲縮数は、好ましくは40個/25mm以上、より好ましくは50個/25mm以上、更に好ましくは60個/25mm以上であり、好ましくは120個/25mm以下、より好ましくは110個/25mm以下、更に好ましくは100個/25mm以下である。捲縮数を前記範囲内に調整することにより、支持体に要求される伸縮性を付与することができる。
潜在捲縮繊維の断面形状は特に限定されるものではなく、丸断面;三角形、星形、五角形等の異型断面;のいずれも使用することができる。また潜在捲縮繊維は、中実繊維、中空繊維のいずれの繊維も用いることができる。
潜在捲縮繊維としては短繊維が好ましく、その繊維長は、好ましくは10mm以上、より好ましくは20mm以上、更に好ましくは30mm以上であり、好ましくは300mm以下、より好ましくは100mm以下、更に好ましくは80mm以下である。潜在捲縮繊維の繊維長を前記範囲内に調整することにより繊維を交絡させやすくなる。
潜在捲縮繊維の繊度は、好ましくは1.0dtex以上、より好ましくは1.5dtex以上、更に好ましくは2.0dtex以上であり、好ましくは8.0dtex以下、より好ましくは6.6dtex以下、更に好ましくは4.4dtex以下である。潜在捲縮繊維の繊度を前記範囲内に調整することにより、剛性と伸縮性のバランスに優れた支持体を得ることが可能となる。
潜在捲縮繊維の融点は特に限定されないが、好ましくは140℃以上、より好ましくは220℃以上、更に好ましくは240℃以上、より更に好ましくは250℃以上であり、好ましくは400℃以下、より好ましくは350℃以下、更に好ましくは330℃以下である。潜在捲縮繊維の融点を前記範囲内に調整することにより、熱処理の際に潜在捲縮繊維の溶融を抑制し、適度な捲縮数の達成とそれによる伸縮性の発現が可能となる。
伸縮層は、同一種の潜在捲縮繊維を含んでいてもよく、異種の潜在捲縮繊維を2種以上含んでいてもよい。
伸縮層は、繊維の表側と裏側とで熱処理の程度を異ならせて立体捲縮を発現させた捲縮繊維;外力により繊維に捲縮を付与した繊維;等の顕在捲縮繊維を含んでいてもよい。顕在捲縮繊維により、支持体に適度な伸縮性を付与することが可能となる。顕在捲縮繊維の具体的な特性は、潜在捲縮繊維と同様である。
2.非捲縮繊維
また伸縮層は、前述した潜在捲縮繊維及び顕在捲縮繊維等の捲縮繊維を除く非捲縮繊維を含んでいてもよい。なお鋸歯の様な連続する細かな山形状が機械的に形成された繊維は、他の技術分野では機械捲縮繊維として捲縮繊維に分類されることもあるが、皮膚貼付剤用途では必要な捲縮性を示さないことから、本明細書では捲縮繊維には分類せず、非捲縮繊維に分類することとする。
非捲縮繊維として好ましくは、融点が80℃以上200℃以下の低融点繊維及び繊維の交点を熱融着しない非接着性繊維が挙げられる。
2−1.低融点繊維
低融点繊維としては、融点が80℃以上、より好ましくは95℃以上、更に好ましくは110℃以上、より更に好ましくは120℃以上であり、200℃以下、より好ましくは190℃以下、更に好ましくは180℃以下の繊維をいう。低融点繊維の融点は使用環境に合わせて適宜選択できる。また支持体に薬剤を塗膏する際に60〜100℃程度に加熱する場合があるため、低融点繊維の融点は高い程好ましい。
低融点繊維としては、不織布の製造に通常使用されるものであればよく、融点の異なる複数の樹脂を組み合わせた芯鞘構造、偏心構造、あるいはサイドバイサイド構造を有する複合繊維;変性ポリエステル繊維;変性ポリアミド繊維;変性ポリプロピレン繊維等の変性ポリオレフィン繊維等が使用できる。前記複合繊維に使用される樹脂の組み合わせには、ポリエチレン−ポリプロピレン、ポリプロピレン−変性ポリプロピレン等のポリオレフィン系の組み合わせ、ポリエチレン−ポリエステル、ポリエステル−変性ポリエステル、ナイロン−変性ナイロン等が挙げられる。また融点によっては、単一の樹脂からなる低融点繊維も使用できる。低融点繊維としては、不織布加工温度等を考慮して、最適な融点のものを用いるとよい。
中でも、低融点繊維は芯鞘構造を有する複合繊維が好ましい。芯鞘構造を有する複合繊維は、芯成分に比べて鞘成分の方が溶融しやすい。そのため、低融点繊維が熱溶融した後、低融点繊維の鞘成分で伸縮層中の繊維間が接着固化され、芯成分を繊維の形態で残すことにより、芯成分が伸縮層の骨格として機能して、支持体に剛性を付与することが可能となる。
芯成分は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂;等が挙げられるが、中でもポリエステル系樹脂が好ましく、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。
鞘成分は、低融点成分としては、変性ポリエステルまたは共重合ポリエステルが好ましい。前記ポリエチレンテレフタレートの共重合成分としては、例えば、イソフタル酸、アジピン酸、ジエチレングリコール、ヘキサンジオール等が例示できる。鞘成分の融点は、好ましくは80℃以上、より好ましくは85℃以上、更に好ましくは90℃以上であり、好ましくは170℃以下、より好ましくは160℃以下、更に好ましくは150℃以下である。
通常、芯と鞘の重量比は30:70〜70:30であり、より好ましくは40:60〜60:40、更に好ましくは45:55〜55:45である。
特にポリエステル系樹脂/変性ポリエステルの芯鞘構造を有する複合繊維は、繊度や融点の種類が多く、不織布製造時やプレス加工時に取り扱いやすいため好適である。
低融点繊維として硬質繊維を用いると、支持体の剛性を確保できることから、低融点繊維における低融点部分のガラス転移温度は、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上、更に好ましくは30℃以上であり、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは70℃以下である。低融点繊維のガラス転移温度を前記範囲内に調整することにより、支持体に適度な硬さと強度を付与することが可能となる。
低融点繊維の繊維長は、好ましくは100mm以下、より好ましくは80mm以下、更に好ましくは70mm以下であり、好ましくは30mm以上、より好ましくは40mm以上、更に好ましくは45mm以上である。低融点繊維の繊維長を前記範囲内に調整することにより、繊維を交絡させやすくなり、伸縮層中の繊維との交点が増えるため接着点が増大し、支持体に剛性を付与することが可能となる。
低融点繊維の繊度は、好ましくは2.2dtex以上、より好ましくは2.5dtex以上、更に好ましくは3.0dtex以上であり、好ましくは6.6dtex以下、より好ましくは6.0dtex以下、更に好ましくは5.5dtex以下である。低融点繊維の繊度を2.2dtex以上にすることにより、接着交点が増えすぎず、支持体の伸縮性を維持することができるため好ましい。また繊度を6.6dtex以下にすることにより、支持体の柔らかな風合いを維持し、ゴワつき感を低減できるため好ましい。
これら低融点繊維の繊度は、熱処理前の繊度を指す。例えば、熱処理後の低融点繊維の繊度は熱処理前の繊度に対して、通常0.3〜1倍である。熱処理後の低融点繊維の繊度は、例えば、0.4dtex以上が好ましく、より好ましくは0.6dtex以上であり、更に好ましくは0.8dtex以上であり、6.6dtex以下が好ましく、より好ましくは6.0dtex以下であり、更に好ましくは5.5dtex以下である。
伸縮層は、同一種の低融点繊維を含んでいてもよく、異種の低融点繊維を2種以上含んでいてもよい。
なお後述するように、本発明では熱処理を行い、潜在捲縮繊維の立体捲縮を発現させる。この熱処理により、低融点繊維も同時に熱溶融させるため、低融点繊維を用いる場合には、支持体(例えば、伸縮層や抗変形層)中には、低融点繊維の一部又は全部が溶融固化した状態で存在することとなる。熱溶融後の低融点繊維は、例えば、支持体中の繊維の交絡点を固定した状態で固化していることもある。また低融点繊維は、低融点繊維全体が溶融固化した状態で存在していてもよいし、芯鞘の低融点繊維を用いる場合には、芯成分が繊維の形態を留め、鞘成分で支持体中の繊維が交絡点で接着された状態で存在していてもよい。
2−2.非接着繊維
非接着繊維としては、例えば、綿、麻、毛、絹等の天然繊維;レーヨン、ポリノジック、キュプラ、レヨセル等の再生繊維;アセテート繊維、トリアセテート繊維等の半合成繊維;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド繊維;ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリ乳酸繊維、ポリアリレート繊維等のポリエステル繊維;ポリアクリロニトリル繊維、ポリアクリロニトリル−塩化ビニル共重合体繊維等のアクリル繊維;ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等のポリオレフィン繊維;ビニロン繊維、ポリビニルアルコール繊維等のポリビニルアルコール系繊維;ポリ塩化ビニル繊維、ビニリデン繊維、ポリクラール繊維等のポリ塩化ビニル系繊維;ポリウレタン繊維等の合成繊維;ポリエチレンオキサイド繊維、ポリプロピレンオキサイド繊維等のポリエーテル系繊維等が例示できる。
非接着繊維の断面形状は特に限定されるものではなく、丸断面;三角形、星形、五角形等の異型断面;のいずれも使用することができる。また非接着繊維は、中実繊維、中空繊維のいずれの繊維も用いることができる。
非接着繊維としては短繊維が好ましく、その繊維長は、好ましくは10mm以上、より好ましくは20mm以上、更に好ましくは30mm以上であり、好ましくは300mm以下、より好ましくは100mm以下、更に好ましくは80mm以下である。非接着繊維の繊維長を前記範囲内に調整することにより繊維を交絡させやすくなる。
非接着繊維の繊度は、好ましくは1.0dtex以上、より好ましくは1.5dtex以上、更に好ましくは2.0dtex以上であり、好ましくは8dtex以下、より好ましくは6.6dtex以下、更に好ましくは4.4dtex以下である。非接着繊維の繊度を前記範囲内に調整することにより、剛性と伸縮性のバランスに優れた支持体を得ることが可能となる。
非接着繊維の融点は特に限定されないが、好ましくは140℃以上、より好ましくは220℃以上、更に好ましくは240℃以上、より更に好ましくは250℃以上であり、好ましくは400℃以下、より好ましくは350℃以下、更に好ましくは330℃以下である。非接着繊維の融点を前記範囲内に調整することにより、熱処理の際に非接着繊維の溶融を抑制することが可能となる。
伸縮層は、同一種の非接着繊維を含んでいてもよく、異種の非接着繊維を2種以上含んでいてもよい。
3.伸縮層の構成
伸縮層は、主として潜在捲縮繊維から構成されることが好ましく、伸縮層100質量%中、潜在捲縮繊維の含有率は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、特に好ましくは100質量%である。伸縮層を主として潜在捲縮繊維から構成することで、熱処理による伸縮層の収縮力が強まり、抗変形層表面により明瞭な凸状皺を形成することが可能となる。また熱処理後も、伸縮層中の捲縮発現後の潜在捲縮繊維の比率が高まることで、支持体に適度な伸縮性を付与することも可能となる。
上記の理由から、伸縮層における非捲縮繊維の含有率は低い程好ましく、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0質量%である。
伸縮層は低融点繊維を含んでいてもよく、伸縮層に低融点繊維が含まれる場合、潜在捲縮繊維と低融点繊維の質量比(潜在捲縮繊維:低融点繊維)は、好ましくは99:1〜90:10、より好ましくは98:2〜95:5である。伸縮層に低融点繊維が含まれていれば、熱処理により低融点繊維の一部または全部が溶融することにより、伸縮層の形状が固定されやすく、抗変形層における凸状皺の形態がより安定的なものとなるため好ましい。
伸縮層に含まれる繊維の平均繊度は、好ましくは1.0dtex以上、より好ましくは1.2dtex以上、更に好ましくは1.5dtex以上であり、好ましくは5.0dtex以下、より好ましくは4.0dtex以下、更に好ましくは3.5dtex以下である。平均繊度を前記範囲内に調整することにより、肌触りがよく薬剤の染み出しのない支持体が得られる。
伸縮層の目付は、好ましくは20g/m2以上、より好ましくは40g/m2以上、更に好ましくは50g/m2以上であり、好ましくは100g/m2以下、より好ましくは80g/m2以下、更に好ましくは70g/m2以下である。目付を前記範囲内に調整することにより、支持体に適度な剛性を付与することが可能となる。
伸縮層の熱収縮率は、好ましくは5%以上、より好ましくは7%以上、更に好ましくは10%以上であり、好ましくは50%以下、より好ましくは45%以下、更に好ましくは40%以下である。伸縮層の熱収縮率を前記範囲内に調整することにより、凸状皺がより明確となり、薬剤面での合着をより抑制できるようになる。なお伸縮層の熱収縮率は、実施例に記載の方法により測定される。
<抗変形層>
抗変形層は、伸縮層に比べて熱収縮率が低い層をいう。抗変形層の熱収縮率は、好ましくは10%以下、より好ましくは7%以下、更に好ましくは4%以下であり、好ましくは0%以上、より好ましくは0.1%以上、更に好ましくは0.5%以上である。抗変形層の熱収縮率が前記範囲内であれば、伸縮層との熱収縮率の違いが大きくなるため、凸状皺が形成されやすくなり、凸状皺の総長さも長くなる傾向にある。これにより、皮膚貼付剤を貼りやすくなるため好ましい。
この観点から、抗変形層の熱収縮率は、伸縮層の熱収縮率に対し、好ましくは0.90倍以下、より好ましくは0.70倍以下、更に好ましくは0.50倍以下であり、下限は特に限定されないが、好ましくは0.01倍以上である。伸縮層の熱収縮率に対する抗変形層の熱収縮率が小さくなるほど、凸状皺の状態が良くなり、凸状皺の総長さも長くなることから、皮膚貼付剤をより貼りやすくなる。なお抗変形層の熱収縮率は、実施例に記載の方法により測定される。
抗変形層を構成する繊維は特に限定されず、前記繊維としては、伸縮層の欄で詳述した各種捲縮繊維及び非捲縮繊維が挙げられる。
抗変形層は、主として非捲縮繊維から構成されることが好ましく、前記非捲縮繊維としてより好ましくは、レーヨン及び非捲縮性ポリエステル繊維である。抗変形層が主として非捲縮繊維から構成されることにより、伸縮層が熱により収縮した際に、明瞭な凸状皺が形成されやすくなるため好ましい。非捲縮繊維の含有率は、抗変形層100質量%中、好ましくは20質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、特に好ましくは100質量%である。
支持体に適度な伸縮性を付与するために、抗変形層は捲縮繊維を含んでいてもよい。抗変形層に捲縮繊維が含まれる場合、非捲縮繊維と捲縮繊維の質量比(非捲縮繊維:捲縮繊維)は、好ましくは90:10〜10:90、より好ましくは80:20〜20:80である。
一方、凸状皺をより明瞭にするためには、熱処理時に抗変形層自体が大きく収縮してしまわないよう、抗変形層中の潜在捲縮繊維の質量は、伸縮層中の潜在捲縮繊維の質量よりも少ないことが好ましい。抗変形層は、伸縮層中の潜在捲縮繊維の質量に対して、好ましくは0.8倍以下、より好ましくは0.5倍以下、更に好ましくは0.2倍以下、好ましくは0倍以上の潜在捲縮繊維を含有するが、最も望ましくは0倍である。
抗変形層は低融点繊維を含んでいてもよいが、抗変形層が低融点繊維を含むと、熱により伸縮層が収縮する際に、抗変形層に含まれる低融点繊維が溶融することになり、凸状皺の形状がはっきりとしない場合がある。そのため、抗変形層中の低融点繊維の含有率は低いほど好ましく、低融点繊維は、抗変形層100質量%中、好ましくは10質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは0質量%である。
抗変形層に含まれる繊維の平均繊度は、好ましくは1.0dtex以上、より好ましくは1.2dtex以上、更に好ましくは1.5dtex以上であり、好ましくは5.0dtex以下、より好ましくは4.0dtex以下、更に好ましくは3.5dtex以下である。平均繊度を前記範囲内に調整することにより、肌触りがよく薬剤の染み出しのない支持体が得られる。
特に、抗変形層100質量%中、1.5dtex以下の細繊度の繊維を好ましくは10〜50質量%(より好ましくは20〜40質量%)混綿すると、抗変形層中の空隙が小さくなるため、凸状皺の形状をより明確にできるため好ましい。
抗変形層の目付は、好ましくは20g/m2以上、より好ましくは40g/m2以上、更に好ましくは50g/m2以上であり、好ましくは100g/m2以下、より好ましくは80g/m2以下、更に好ましくは70g/m2以下である。目付を前記範囲内に調整することにより、支持体に適度な剛性を付与することが可能となる。
<支持体>
支持体は、好ましくは皮膚貼付剤用に用いられることから、支持体の厚さは、一般的な支持体同様に、0.5mm以上、より好ましくは0.6mm以上、更に好ましくは0.7mm以上であり、2.0mm以下、より好ましくは1.8mm以下、更に好ましくは1.6mm以下である。なお支持体の厚さは、凸状皺が存在する位置では、支持体の平滑部分と凸状皺の合計をいう。
また支持体の密度は、好ましくは0.070g/cm3以上、より好ましくは0.080g/cm3以上、更に好ましくは0.090g/cm3以上であり、好ましくは0.180g/cm3以下、より好ましくは0.160g/cm3以下、更に好ましくは0.140g/cm3以下である。密度を前記範囲内に調整することにより、薬剤の染みだしを防止しながら、支持体の通気度を高いまま維持できるため、皮膚貼付剤としての機能を阻害することがない。
さらに支持体の目付は、好ましくは60g/m2以上、より好ましくは85g/m2以上、更に好ましくは100g/m2以上であり、好ましくは250g/m2以下、より好ましくは200g/m2以下、更に好ましくは150g/m2以下である。支持体の目付を前記範囲内に調整することにより、支持体に適度な剛性を付与することが可能となる。
伸縮層と抗変形層の目付比(伸縮層:抗変形層)は、好ましくは80:20〜20:80、より好ましくは70:30〜30:70、更に好ましくは60:40〜40:60である。伸縮層の目付比が高過ぎると、抗変形層を構成する繊維量が十分なものとならず、明瞭な凸状皺を形成できない虞があるため好ましくない。一方、抗変形層の目付比が高過ぎると、伸縮層を構成する繊維量が十分なものとならず、十分な収縮力が発現されないことにより、凸状皺を形成できない虞があるため好ましくなく、また支持体が伸縮性を発現しがたくなることから、使用者がゴワツキを感じる場合もある。
捲縮繊維(より好ましくは、潜在捲縮繊維)の含有率は、支持体100質量%中、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは65質量%以下である。捲縮繊維の質量を前記範囲内に調整することにより、支持体に、皮膚貼付剤に要求される伸縮性を付与することが可能となる。
皮膚貼付剤の伸縮性や柔らかな風合いを損なわないように、低融点繊維の含有率は、支持体100質量%中、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下であり、下限は特に限定されないが0質量%であり、0.1質量%以上であってもよい。
支持体の50%伸張時応力は、横(CD)方向において、好ましくは2.0N/50mm以上、より好ましくは2.5N/50mm以上、更に好ましくは3.0N/50mm以上であり、好ましくは9.0N/50mm以下、より好ましくは8.0N/50mm以下、更に好ましくは7.0N/50mm以下である。
また支持体の50%伸張時応力は、縦(MD)方向において、好ましくは5.0N/50mm以上、より好ましくは6.0N/50mm以上、更に好ましくは7.0N/50mm以上であり、好ましくは35N/50mm以下、より好ましくは20N/50mm以下、更に好ましくは15N/50mm以下である。
50%伸長時応力を前記範囲内に調整することにより、皮膚貼付剤として必要な伸縮性が発揮される。
更に、支持体の50%伸長時回復率は、横(CD)方向において、好ましくは35%以上、より好ましくは40%以上、更に好ましくは45%以上であり、好ましくは70%以下、より好ましくは65%以下、更に好ましくは60%以下である。
また支持体の50%伸長時回復率は、縦(MD)方向において、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上、更に好ましくは30%以上であり、好ましくは40%以下、より好ましくは38%以下、更に好ましくは35%以下である。
支持体の50%伸長時回復率を前記範囲内に調整することにより、皮膚貼付剤として必要な伸縮性が発揮される。
<支持体の製造方法>
本発明に係る支持体は、支持体の少なくとも一方面に凸状皺が形成されれば、その製造方法は特に限定されない。しかしながら、凸状皺の形成が容易であることから、支持体の製造方法は、
潜在捲縮繊維を含む伸縮層用ウェブを製造する工程、
伸縮層よりも熱収縮率が低い抗変形層用ウェブを製造する工程、
前記伸縮層用ウェブと前記抗変形層用ウェブを重ね、ニードルパンチ法によりこれらを一体化して積層構造体を製造する工程、及び
前記積層構造体に熱処理を施す工程、
を有することが好ましい。熱処理により潜在捲縮繊維の立体捲縮を発現させることにより、伸縮層が一旦収縮する。このときの収縮力により抗変形層も収縮し、抗変形層に含まれる繊維が凝集して抗変形層表面に凸状皺が形成される。本方法であれば、立体捲縮と凸状皺を一度の熱処理で形成できるため、簡便である。
伸縮層用ウェブは、好ましくは原料繊維をカード機に供給して、ウェブをクロス積層するクロスウェブ法により製造されることが好ましい。クロスウェブ法によりウェブを形成すると、CD方向に多くの原料繊維を配向させることができる。そうすると、熱処理を施した際に、伸縮層がCD方向により収縮しやすくなるため、CD方向に直交するMD方向に平行して凸状皺が多く発生するようになる。例えば、CD方向の熱収縮率を、MD方向の熱収縮率よりも約25〜50%高くしておくことで、所定の太さ及び高さを有する凸状皺が形成されやすくなる。
抗変形層用ウェブの製造方法は特に限定されないが、CD方向に多くの原料繊維を配向できることから、好ましくはクロスウェブ法である。
伸縮層用ウェブと抗変形層用ウェブを重ねる際には、収縮方向が揃うよう、伸縮層用ウェブを構成する繊維の配向方向と、抗変形層用ウェブを構成する繊維の配向方向が同じ方向となるようにして、これらを重ねることが好ましい。
伸縮層用ウェブと抗変形層用ウェブを重ねた後、ニードルパンチ法によりこれらを一体化して積層構造体を製造する。ニードルパンチ法によれば、針を貫通させることにより伸縮層と抗変形層の層間に存在する繊維同士を絡合させることによりこれらを一体化できるため、伸縮層が収縮するときに抗変形層が追従しやすくなり、結果として凸状皺を明確に形成できるようになる。またニードルパンチ法は、層間剥離防止、支持体表面の毛羽立ち防止、並びに支持体の強度向上にも適する。本発明では、クロスウェブ法により形成された繊維配向をできるだけ崩さないようにするため、弱くニードルパンチ加工を行うことが望ましい。
ニードルパンチ加工における針深さは、5mm以上、より好ましくは7mm以上、更に好ましくは8mm以上であり、15mm以下、より好ましくは14mm以下、更に好ましくは13mm以下である。針深さを前記範囲内に調整することにより、繊維配向を崩さずに、繊維を適度に交絡させて支持体の強度を高めることができる。
ニードルパンチ加工における打ち込み本数は、50本/cm2以上、より好ましくは70本/cm2以上、更に好ましくは90本/cm2以上であり、200本/cm2以下、より好ましくは180本/cm2以下、更に好ましくは150本/cm2以下である。打ち込み本数を前記範囲内に調整することにより、繊維配向を崩さずに、繊維を適度に絡合させることが可能となる。またニードルパンチ法による打ち込み本数を増大させると、繊維の交絡が進み、凸状皺が発生しやすくなる。
ニードルパンチ法では、例えば、ニードルパンチ針番手36〜42番を用いるとよい。
ニードルパンチは、伸縮層用ウェブ側または抗変形層用ウェブ側のいずれか一方から、もしくはこれらの両面からも行うことができる。特に、抗変形層用ウェブ側から行うと、抗変形層自体が高密度になるため、凸状皺の硬さが増して支持体の剛性が向上する。また抗変形層用ウェブ側から行うと、抗変形層に含まれる繊維が、部分的に伸縮層内部に厚さ方向から入り込むようにして絡合されるため、伸縮層が熱収縮する際に、伸縮層の動きに抗変形層が追従しやすくなり、凸状皺が安定して形成されるようになり、結果として、支持体の剛性が向上するため好ましい。一方、伸縮層用ウェブ側からニードルパンチを行うと、伸縮層に含まれる潜在捲縮繊維が、部分的に抗変形層内部に入り込むようにして絡合されるため、熱処理を施した際に、潜在捲縮繊維の立体捲縮の発現に伴って抗変形層が大きく収縮でき、凸状皺を形成しやすくなる、という利点がある。
次いで、一体化された積層構造体に熱処理を施し、潜在捲縮繊維の立体捲縮を発現させ、且つ、抗変形層表面に凸状皺を形成する。熱処理温度は、150〜225℃が好ましく、より好ましくは160〜220℃である。また支持体が低融点繊維を含む場合には、熱処理温度は、混綿している低融点繊維の融点TLに対し、TL+10(℃)〜TL+110(℃)が好ましく、より好ましくはTL+30(℃)〜TL+90(℃)である。熱処理温度が前記範囲内であれば、潜在捲縮繊維の立体捲縮が明瞭なものとなり、伸縮層がしっかりと収縮するため、明確な凸状皺が形成される。加熱時間は、混綿する潜在捲縮繊維の含有量や積層構造体の厚さを考慮して適宜設定するとよいが、15〜180秒が好ましく、より好ましくは20〜90秒である。熱処理は、例えば、所望の温度に調整した熱処理機(例えば、循環式熱風乾燥機)を用いて行うことができる。
その後、支持体の厚さを調整と支持体表面の毛羽立ちを抑制するために、製造された支持体に熱圧縮処理を施してもよい。熱圧縮処理は、例えば、得られた支持体を加熱ロールや加熱板間に通すことで実施できる。熱圧縮処理における加熱ロールや金属板の温度は、例えば、50〜200℃が好ましく、より好ましくは60〜190℃である。
<皮膚貼付剤>
本発明に係る支持体は、皮膚貼付剤用の支持体として好ましく使用される。すなわち本発明は、前記支持体に薬剤が塗膏されていることを特徴とする皮膚貼付剤も包含する。
皮膚貼付剤は、通常、長辺と短辺を有する長方形の形状を有しているが、特に短手方向をMD方向にし、凸状皺を皮膚貼付剤の短手方向に配向させておけば、皮膚貼付剤が折れ曲がりやすい方向に対する剛性が高まるため、使用時の薬剤面での合着を抑制できるようになる。また凸状皺を短手方向に配向させておけば、使用時にゴワツキ感の少ない皮膚貼付剤となる。
皮膚貼付剤としては、例えば、外用消炎鎮痛剤、熱冷却剤、脚部・踵用貼付剤、美容用含水ゲルシート等が例示される。また、本発明に係る支持体は、凸状皺を有さない従来の支持体と比較すると伸縮性の点では劣るものの、肩、腰、肘、ふくらはぎ等の動きが少ない部位においては、従来の皮膚貼付剤と同様に十分に使用可能である。
薬剤は、支持体のいずれの面に塗膏されていてもよい。凸状皺を有する面に薬剤を塗膏する場合、薬剤が塗膏されていない方の表面は通常平滑であるから、皮膚貼付剤の外観が良くなると共に、皮膚貼付剤が衣服と擦れて剥がれることを防止できる。またこの場合、薬剤が、支持体の表面だけでなく隣接する凸状皺間に入り込むことで、繊維が凝集した凸状皺と、凸状皺間に固定された薬剤とが柱の役割を果たし、使用時に皮膚貼付剤が折れ曲がるのを抑制できる。一方、凸状皺を有さない面に薬剤を塗膏する場合、平滑な面に薬剤を塗膏できるため、薬剤が均一に塗膏され、皮膚貼付剤が体の動きに追従しやすくなるため、使用感に優れる。薬剤面での合着を抑制する観点からは、凸状皺を有する面に薬剤が塗膏されていることが望ましい。
薬剤には、常温下で薬物を皮膚表面に長時間固定し得るものを採用することが好ましく、薬剤を構成する成分としては、汎用の薬剤が選択できる。
薬剤には、通常、増粘剤、湿潤剤、水、充填剤、その他必要に応じて、溶解補助剤、吸収促進剤、薬効補助剤、化粧料、安定化剤、乳化剤等が適宜含有される。
増粘剤としては、例えば、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、寒天、アラビアガム、トラガカントガム、カラヤガム、ペクチン、デンプン等の植物系、ザンサンガム、アカシアガム等の微生物系、ゼラチン、コラーゲン等の動物系等の天然高分子;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のセルロース系、可溶性デンプン、カルボキシメチルデンプン、ジアルデヒドデンプン等のデンプン系等の半合成高分子;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメタクリレート等のビニル系、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム等のアクリル系、その他ポリエチレンオキサイド、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体等の合成高分子等の水溶性高分子;が好適に用いられる。
また湿潤剤としては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビタール等の多価アルコール等が挙げられ、充填剤としては、例えば、カオリン、酸化亜鉛、タルク、ベントナイト、珪酸アルミニウム、酸化チタン、メタ珪酸アルミニウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム等が挙げられる。
薬効補助剤としては、例えば、サリチル酸グリコール、サリチル酸メチル、L−メントール、チモール、ハッカ油、リモネン、ノニル酸ワニリルアミド、トウガラシエキス等が挙げられる。溶解補助剤または吸収促進剤としては、例えば、炭酸プロピレン、クロタミトン、ジイソプロピルアジペート等が挙げられる。
上記に加え薬剤には、用途に応じて、例えば、パラベン等の保存剤;アニオン性、カチオン性及びノニオン性界面活性剤;塩化アルミニウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、ジヒドロキシアルミニウムアミノ酢酸塩等の金属アルミニウム架橋剤;ジャコバ油、ヒマシ油等の油;EDTA等のキレート剤;リンゴ酸、酒石酸、ジイソプロピルアミン等のpH調節剤;エタノール等のアルコール;ヒアルロン酸、アロエエキス、ローヤルゼリーエキス、尿素等の保湿剤;その他、香料や色素が添加されていてもよい。
皮膚貼付剤では、薬剤が熱可塑性樹脂からなるフィルムで保護されていることが望ましい。前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、塩化ビニル等が挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
実施例及び比較例で製造された支持体及び皮膚貼付剤の評価は、下記に基づき行った。なお以下の評価1〜8は外用消炎鎮痛剤の塗膏前の支持体に対して実施し、評価9〜10は外用消炎鎮痛剤の塗膏後の皮膚貼付剤に対して実施した。
1.支持体の目付;JIS L1913の6.2法に準ず。
2.支持体の厚さ;JIS L1913の6.1B法に準ず。
3.支持体の密度;目付を厚さで除し、単位を換算した。
4.抗変形層・伸縮層の熱収縮率;表1に記載されている各層の繊維構成・目付のニードルパンチ不織布を作製し、幅(CD方向)300mm×長さ(MD方向)300mmの試料片を採取する。150℃の恒温槽中に、長さ(MD方向)方向が垂直となるように吊り下げ、40秒間熱処理した後の長さ(MD方向)方向の寸法L1(mm)を計測する。
熱収縮率(%)=(300−L1)/300×100
5.支持体の50%伸張時応力;支持体から幅50mm×長さ300mmの試験片を採取する。試験片を引張試験機につかみ間隔を200mmで取り付ける。200mm/minの引張速度で100mm引っ張った時点での応力を計測する。
6.支持体の50%伸張時回復率;支持体から幅50mm×長さ300mmの試験片を採取する。試験片を引張試験機につかみ間隔を200mmで取り付ける。200mm/minの引張速度で100mm引っ張り、同速で原点まで戻す。このとき試験片の引張応力が0になる原点からの距離をL0として下記式により50%伸張時回復率を算出する。
50%伸張時回復率(%)=100−L0
7.凸状皺の状態;凸状皺を有する面の表面状態を目視観察する。なお目視観察では、(i)太さが1mm以上5mm以下、(ii)高さが0.3mm以上1.5mm以下の、支持体表面から突出した立体的な細い筋を凸状皺として認定した。
◎:より明確な凸状皺がある
○:凸状皺がある
×:凸状皺がない
8.凸状皺の総長さ;凸状皺のある面上に透明フィルムを積層し、支持体の任意の5cm四方において目視により認定できる凸状皺の尾根(稜線)を図1のようにトレースして総長さを計測する。
9.皮膚貼付剤の貼り易さ;皮膚貼付剤の貼りやすさの官能試験を行う。被験者が皮膚貼付剤をひじ・ひざに貼り付けたときに、綺麗に貼り付けられるか、皮膚貼付剤が皺や合着を生じるかを目視観察する。
◎:綺麗に貼れる。
○:皺や合着がやや発生するが、問題なく使用できる。
×:皺や合着が発生し綺麗に貼ることはできない。
10.皮膚貼付剤のゴワツキ感;腰に皮膚貼付剤を貼付した後の、ゴワツキ感を官能評価する。
◎:ゴワツキ感を全く感じない。
○:ゴワツキ感を感じない。
×:ゴワツキ感があり不快である。
実施例1〜7
実施例1では、クロスウェブ法により、繊度2.2dtex、繊維長51mm、熱処理後の捲縮数70個/25mmの潜在捲縮ポリエステル繊維100質量%からなる伸縮層用ウェブを製造し、その上に、クロスウェブ法により製造した、繊度2.2dtex、繊維長51mmのレーヨン繊維50質量%、及び繊度2.2dtex、繊維長51mmのレギュラーポリエステル繊維50質量%からなる抗変形層用ウェブを積層した。
形成された積層ウェブの抗変形層用ウェブ側から、針番手40番、打ち込み本数120本/cm2、針深さ12mmにてニードルパンチ加工を施し、170℃に保った熱風循環式乾燥機に30秒間通して熱処理を行った。その後、得られた不織布を、70℃に加熱したステンレスロール間に通し、抗変形層側表面に凸状皺が形成された、目付120g/m2、厚さ1.1mmの支持体を得た。
続いて、抗変形層側表面に、汎用の外用消炎鎮痛剤を塗膏して皮膚貼付剤を得た。外用消炎鎮痛剤を塗膏する際には、長手方向を横(CD)方向とし、短手方向(すなわち縦(MD)方向)に凸状皺が配向するようにした。
実施例2〜7及び比較例1では、製造条件を表に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして支持体を得た。
なお表中、低融点繊維は、繊度4.4dtex、繊維長51mmの低融点ポリエステル繊維(芯鞘構造、鞘部の融点130℃、芯:鞘(質量比)=50:50)である。
また打ち込み方向「抗」は形成された積層ウェブの抗変形層用ウェブ側からニードルパンチ加工を施したことを意味し、「伸」は形成された積層ウェブの伸縮層用ウェブ側からニードルパンチ加工を施したことを意味する。
さらに凸状皺の配向方向「短手」は、外用消炎鎮痛剤を塗膏する際に、長手方向を横(CD)方向とし、短手方向に凸状皺が配向するようにしたことを意味し、「長手」は、長手方向を縦(MD)方向とし、長手方向に凸状皺が配向するようにしたことを意味する。
比較例1
抗変形層を積層しなかったこと以外は実施例1と同様にして支持体を得た。
Figure 2018118916
実施例1が示すように、太さが1mm以上5mm以下、高さが0.3mm以上1.5mm以下の凸状皺を有する支持体によれば、使用時に皮膚貼付剤が折れ曲がらず、体に貼りやすい皮膚貼付剤が得られた。またこの皮膚貼付剤は、ゴワツキ感もなく、皮膚貼付剤として必要な伸縮性も備えていた。
実施例2では、抗変形層に細繊度の非捲縮ポリエステル繊維を混綿しているため、抗変形層中の空隙が小さくなり、凸状皺の形状は明瞭なものとなった。またニードルパンチ法による打ち込み本数を増大させたため、凸状皺は発現しやすくなった上、凸状皺が若干細かくなった。さらに伸縮層に低融点繊維を混綿しているため、伸縮層の形状が実施例1と比べると若干硬くなっており、抗変形層における凸状皺の形態は崩れにくかった。
実施例3では、抗変形層に潜在捲縮繊維を30質量%混綿しているため、支持体の伸縮性は向上した。また、ニードルパンチを伸縮層用ウェブ側から実施したため、伸縮層に含まれる潜在捲縮繊維の一部が抗変形層内部に侵入し、伸縮層の収縮の動きに伴って抗変形層が大きく収縮し、明瞭な凸状皺が形成された。
実施例4では、抗変形層に潜在捲縮繊維を70質量%混綿したため、支持体の伸縮性は向上したが、潜在捲縮繊維の量が多すぎたため、実施例1と比べると、凸状皺の状態及び貼りやすさの評価は「○」に留まった。
実施例5では、伸縮層の目付比を大きくしたため、支持体の伸縮性は向上したが、抗変形層に含まれる繊維量が伸縮層に比して少ないため、実施例1と比べると、凸状皺の状態及び貼りやすさの評価は「○」に留まった。
実施例6では、抗変形層の目付比を大きくしたため、支持体の剛性は向上したが、伸縮層に含まれる繊維量が抗変形層に比して少ないため、十分な収縮力が発現されないことにより、実施例1と比べると、凸状皺の状態及び貼りやすさの評価は「○」に留まった。
実施例7では、長手方向に凸状皺が配向するようにして皮膚貼付剤を製造したが、実施例1と比べると、貼りやすさの評価は「○」に留まった。
比較例1では、伸縮層のみで支持体を製造したため、支持体表面に凸状皺が形成されなかった。そのため、貼りやすさの評価は「×」であった。
1:凸状皺の尾根

Claims (10)

  1. 厚さが0.5mm以上2.0mm以下の不織布製支持体であって、
    少なくとも一方面に、太さが1mm以上5mm以下、高さが0.3mm以上1.5mm以下の凸状皺を有することを特徴とする支持体。
  2. 捲縮発現後の潜在捲縮繊維を含む伸縮層と、前記凸状皺を表面に有する抗変形層とが、前記伸縮層と前記抗変形層の層間に存在する繊維同士の絡合により一体化されている請求項1に記載の支持体。
  3. 伸縮層と抗変形層の目付比が80:20〜20:80である請求項2に記載の支持体。
  4. 抗変形層が、伸縮層中の潜在捲縮繊維の質量に対して、0倍以上0.8倍以下の潜在捲縮繊維を含有する請求項2又は3に記載の支持体。
  5. 潜在捲縮繊維の含有率が、支持体100質量%中、20質量%以上90質量%以下である請求項2〜4のいずれか1項に記載の支持体。
  6. 凸状皺が一方向に配向している請求項1〜5のいずれか1項に記載の支持体。
  7. 50%伸長時応力が、横(CD)方向において2.0N/50mm以上9.0N/50mm以下、縦(MD)方向において5.0N/50mm以上35N/50mm以下であり、
    50%伸長時回復率が、横(CD)方向において35%以上70%以下、縦(MD)方向において15%以上40%以下である請求項1〜6のいずれか1項に記載の支持体。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の支持体に薬剤が塗膏されていることを特徴とする皮膚貼付剤。
  9. 長辺と短辺を有する長方形の形状を有し、前記凸状皺が短手方向に配向されている請求項8に記載の皮膚貼付剤。
  10. 凸状皺を有する面に薬剤が塗膏されている請求項8又は9に記載の皮膚貼付剤。
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