JP2021177019A - 不織布およびその製造方法 - Google Patents

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保紀 中村
Yasunori Nakamura
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Abstract

【課題】より柔軟で、より良好な触感を有し、かつ加熱時の寸法安定性に優れる不織布を提供する。【解決手段】立体捲縮を有する捲縮性複合繊維であって、第1成分と、前記第1成分の融点Tf1よりも高い融点Tf2を有する第2成分とを含む捲縮性複合繊維と、温度120℃、時間15分間、初荷重0.018mN/dtexの条件で測定した乾熱収縮率が20%以下である非熱収縮性繊維とを含み、前記捲縮性複合繊維と前記非熱収縮性繊維の質量を合わせて100質量%としたときに、前記捲縮性複合繊維の割合が15質量%以上45質量%以下であり、構成繊維同士が交絡しており、(Tf1−8)℃での縦方向の寸法変化率および横方向の寸法変化率の平均値が、8%未満であり、前記構成繊維同士が熱接着している場合、接着部を構成する捲縮性複合繊維を、不織布から単独で取り出したときに、該捲縮性複合繊維の表面に前記接着部に由来する凹部を有する、不織布。【選択図】図1

Description

本発明は不織布およびその製造方法に関する。
熱処理に付されると立体捲縮を発現する潜在捲縮性複合繊維を使用した不織布は、これまでに種々提案され、実用に供されている。例えば、特許文献1は、特定の潜在捲縮性複合繊維を使用した不織布を、その伸縮性を活かして、包帯、サポーター、およびマスクなどの衛生材に用いることを提案している。また、特許文献2は、潜在捲縮性複合繊維を熱接着性繊維として使用することにより、優れた柔軟性および触感を示す不織布が得られることを報告している。特許文献3は、低温度での捲縮発現性が良好であって、かつ熱接着性繊維としても使用可能である、特定の直鎖状低密度ポリエチレンを熱収縮性成分として含む潜在捲縮性複合繊維を提案している。特許文献4は、捲縮性複合繊維と、非熱収縮性繊維とを含み、構成繊維同士が交絡しており、特定の温度での縦方向の寸法変化率および横方向の寸法変化率の平均値が8%以上25%以下であり、より柔軟で、より良好な触感の不織布を提案している。
特開2012−12758号公報 特許3276578号公報 特許3995697号公報 特開2019−135345号公報
本発明は、潜在捲縮性複合繊維を使用して、より柔軟で、より良好な触感を有し、かつ加熱時の寸法安定性に優れる不織布を提供することを目的としてなされたものである。
本発明は、一つの要旨において、
立体捲縮を有する捲縮性複合繊維であって、第1成分と、前記第1成分の融点Tfよりも高い融点Tfを有する第2成分とを含む捲縮性複合繊維と、
温度120℃、時間15分間、初荷重0.018mN/dtexの条件で測定した乾熱収縮率が20%以下である非熱収縮性繊維とを含み、
前記捲縮性複合繊維と前記非熱収縮性繊維の質量を合わせて100質量%としたときに、前記捲縮性複合繊維の割合が15質量%以上45質量%以下であり、
構成繊維同士が交絡しており、
(Tf−8)℃での縦方向の寸法変化率および横方向の寸法変化率の平均値が、8%未満であり、
前記構成繊維同士が熱接着していないか、または熱接着しており、
前記構成繊維同士が熱接着している場合、前記構成繊維同士が熱接着した接着部を構成する捲縮性複合繊維を、不織布から単独で取り出したときに、該捲縮性複合繊維の表面に前記接着部に由来する凹部を有する、不織布を提供する。
本発明は、別の要旨において、
立体捲縮を有する捲縮性複合繊維であって、第1成分と、前記第1成分の融点Tfよりも高い融点Tfを有する第2成分とを含む捲縮性複合繊維と、
温度120℃、時間15分間、初荷重0.018mN/dtexの条件で測定した乾熱収縮率が20%以下である非熱収縮性繊維とを含み、
前記捲縮性複合繊維と前記非熱収縮性繊維の質量を合わせて100質量%としたときに、前記捲縮性複合繊維の割合が15質量%以上45質量%以下であり、
構成繊維同士が交絡しており、
(Tf−8)℃での縦方向の寸法変化率および横方向の寸法変化率の平均値が、8%未満であり、
前記構成繊維同士が熱接着していないか、または熱接着しており、
前記構成繊維同士が熱接着している場合、不織布断面を300〜2000倍の電子顕微鏡で観察したときに、接着点において前記構成繊維のいずれか一方が他方にめりこんで、前記他方の構成繊維にへこみを生じさせている、不織布を提供する。
本発明は、別の要旨において、
立体捲縮を有する捲縮性複合繊維であって、第1成分と、前記第1成分の融点Tfよりも高い融点Tfを有する第2成分とを含む捲縮性複合繊維と、
温度120℃、時間15分間、初荷重0.018mN/dtexの条件で測定した乾熱収縮率が20%以下である非熱収縮性繊維とを含み、
前記捲縮性複合繊維と前記非熱収縮性繊維の質量を合わせて100質量%としたときに、前記捲縮性複合繊維の割合が15質量%以上45質量%以下であり、
構成繊維同士が交絡しており、
(Tf−8)℃での縦方向の寸法変化率および横方向の寸法変化率の平均値が、8%未満であり、
前記構成繊維同士が熱接着していないか、または熱接着しており、
前記構成繊維同士が熱接着している場合、前記構成繊維同士が点状に熱接着した点接着部を有する、不織布を提供する。
本発明は、さらに別の要旨において、
立体捲縮を有する捲縮性複合繊維であって、第1成分と、前記第1成分の融点Tfよりも高い融点Tfを有する第2成分とを含む捲縮性複合繊維と、
温度120℃、時間15分間、初荷重0.018mN/dtexの条件で測定した乾熱収縮率が20%以下である非熱収縮性繊維とを含み、
前記不織布を構成する前記捲縮性複合繊維の本数に対する前記不織布を構成する前記非熱収縮性繊維の本数の割合が、4.0〜12.0であり、
構成繊維同士が交絡しており、
(Tf−8)℃での縦方向の寸法変化率および横方向の寸法変化率の平均値が、8%未満であり、
前記捲縮性複合繊維は、前記立体捲縮内に1本または複数本の前記非熱収縮性繊維を抱き込んでおり、
前記捲縮性複合繊維の断面における短軸の長さに対する長軸の長さの比で表されるアスペクト比が1.0〜2.2である、不織布を提供する。
本発明は、さらに別の要旨において、
立体捲縮を有する捲縮性複合繊維であって、第1成分と、前記第1成分の融点Tfよりも高い融点Tfを有する第2成分とを含む捲縮性複合繊維と、
温度120℃、時間15分間、初荷重0.018mN/dtexの条件で測定した乾熱収縮率が20%以下である非熱収縮性繊維とを含み、
前記不織布を構成する前記捲縮性複合繊維の本数に対する前記不織布を構成する前記非熱収縮性繊維の本数の割合が、4.0〜12.0であり、
構成繊維同士が交絡しており、
(Tf−8)℃での縦方向の寸法変化率および横方向の寸法変化率の平均値が、8%未満であり、
前記不織布の表面に存在する立毛の長さが0.80×10μm〜1.65×10μmである、不織布を提供する。
本発明は、別の要旨において、
第1成分と、前記第1成分の融点Tfよりも高い融点Tfを有する第2成分とを含む熱収縮性複合繊維と、温度120℃、時間15分間、初荷重0.018mN/dtexの条件で測定した乾熱収縮率が20%以下である非熱収縮性繊維とを、前記熱収縮性複合繊維と前記非熱収縮性繊維とを合わせて100質量%としたときに、前記熱収縮性複合繊維の割合が15質量%以上45質量%以下となるように混合して、繊維ウェブを作製すること、
前記繊維ウェブに機械的な交絡処理を施して、前記繊維ウェブを構成する繊維同士を交絡すること、
前記交絡処理後、熱処理を実施すること、
を含み、
前記熱処理を、前記熱処理後に得られる不織布において、(Tf−8)℃での縦方向の寸法変化率および横方向の寸法変化率の平均値が、8%未満となるように実施する、不織布の製造方法を提供する。
本発明の不織布は、立体捲縮の発現度合いの大きい捲縮性複合繊維を含み、加熱によって更に収縮しにくいものの、より柔軟で、かつ良好な触感を与える。
図1A〜図1Cは捲縮性複合繊維の立体捲縮の形態を示す模式図である。 図2は捲縮性複合繊維の立体捲縮の形態を示す模式図である。 図3は機械捲縮の形態を示す模式図である。 図4は、寸法変化率の平均値を求めるに際して、試料への測長区間の印の付け方を模式的に示す平面図である。 図5は、実施例10の不織布の拡大断面図である。 図6は、実施例9の不織布の拡大断面図である。 図7は、実施例3の不織布の拡大表面図である。 図8は、比較例2の不織布の拡大断面図である。 図9は、立毛の長さの測長方法を説明する模式断面図である。
(本発明に至った経緯)
本発明者は、熱収縮性の異なる複数の成分(または相)からなる熱収縮性複合繊維(背景技術の欄でいう「潜在捲縮性複合繊維」に相当)を用いて、不織布の柔軟性および良好な触感をさらに向上させることを検討した。その結果、加熱により熱収縮性複合繊維に立体捲縮を適度に発現させることにより、不織布の柔軟性等を向上させるとの知見を得た。
本発明者は、さらに検討した結果、単に熱収縮性複合繊維に立体捲縮を発現させただけでは、加熱時の寸法安定性(熱に対する寸法安定性)で劣り、柔軟性等と寸法安定性とを良好に兼ね備えることは困難であるとの知見を得た。例えば、熱処理後に「熱収縮しろ」を有しないような条件で熱処理を施すことで、熱に対する寸法安定性を向上させることができる。しかしながら、このような熱処理を施すと、熱収縮性複合繊維の一または複数の成分が溶融して広がり、不織布に膜状の接着部が生じる。その結果、不織布の柔軟性等が低下してしまう。
本発明者は、上記知見に基づいてさらに検討した結果、熱収縮性複合繊維の融着の制御に着目した。そして、「熱収縮しろ」をほとんど有しない程度に熱処理を施した後であっても、構成繊維同士が熱接着しないか、または構成繊維同士が熱接着しているとしても構成繊維同士が点接着するように、熱収縮性複合繊維を設計するとともにその割合を調整し、かつ熱処理を制御することで、より良好な柔軟性等を有する不織布が得られることを見出した。これにより、本発明者は、不織布が「熱収縮しろ」をほとんど有しない程度に熱収縮しているが、熱収縮性複合繊維が膜状に広がって接着する構造を有しないという特徴(後述する第1実施形態)に想到するに至った。
また、本発明者は、上記熱収縮性複合繊維の融着の制御の結果、不織布に比較的弱い力で拘束された非熱収縮性繊維が、不織布の柔軟性を向上させることを見出した。具体的には、特に、不織布表面において、非熱収縮性繊維を比較的弱い力で拘束して立毛させることで、当該繊維のある程度の動きが可能となって、不織布の柔軟性が向上するとともに、非熱収縮性繊維の脱落が熱収縮性繊維に発現する立体捲縮により抑制されることを見出した。この知見に基づいて捲縮性複合繊維の立体捲縮によって非熱収縮性繊維が局所的に拘束される特徴、すなわち捲縮性複合繊維の立体捲縮が非熱収縮性繊維を抱き込むという特徴(後述する第2実施形態)を想到するに至った。さらに、比較的弱い力で拘束される非熱収縮性繊維によって、不織布表面に存在する立毛の長さが0.80×10μm〜1.65×10μmであるとの特徴(後述する第3実施形態)が不織布で見られることを確認するに至った。
以下、本発明の実施形態を説明する。
[第1実施形態]
第1実施形態に係る不織布は、
立体捲縮を有する捲縮性複合繊維であって、第1成分と、第1成分の融点Tfよりも高い融点Tfを有する第2成分とを含む捲縮性複合繊維と、
温度120℃、時間15分間、初荷重0.018mN/dtexの条件で測定した乾熱収縮率が20%以下である非熱収縮性繊維とを含み、
捲縮性複合繊維と非熱収縮性繊維の質量を合わせて100質量%としたときに、捲縮性複合繊維の割合が15質量%以上45質量%以下であり、
構成繊維同士が交絡しており、
(Tf−8)℃での縦方向の寸法変化率および横方向の寸法変化率の平均値が、8%未満であり、
構成繊維同士が熱接着していないか、または熱接着している。
構成繊維同士が熱接着している場合、少なくとも以下の(1)〜(3)のいずれかを満たす。
(1)構成繊維同士が熱接着した接着部を構成する捲縮性複合繊維を、不織布から単独で取り出したときに、該捲縮性複合繊維の表面に前記接着部に由来する凹部を有する。
(2)不織布断面を300〜2000倍の電子顕微鏡で観察したときに、接着点において構成繊維のいずれか一方が他方にめりこんで、他方の構成繊維にへこみを生じさせている。
(3)構成繊維同士が点状に熱接着した点接着部を有する。
本明細書において、点接着とは、1つの点接着する部分を構成する2本の構成繊維において、構成繊維の一方または両方が繊維同士の接触部分において凹部を形成すること以外は、当該2本の構成繊維の形状が実質的に変化していない接着をいう。本実施形態の不織布においては、点接着は、捲縮性複合繊維と非熱収縮性繊維、または捲縮性複合繊維と捲縮性複合繊維との間で生じ得、捲縮性複合繊維は図1〜3に示すような捲縮した形状を示す。点接着部においては、捲縮性複合繊維を構成する一つの成分(特に低融点成分)において凹部が形成される。したがって、本実施形態の不織布において、点接着により繊維同士が接着されている場合、不織布を観察したときに、繊維の一成分が膜状に広がった接着部は殆どないしは全く観察されない。
点接着は、電子顕微鏡を用いて不織布の断面画像を観察することにより確認することができる。断面画像は、不織布の中央点(不織布平面の2つの対角線の交点)を通る切断面を300〜2000倍に拡大したSEM画像である。
また、点接着は、不織布から捲縮性複合繊維を抜き取り、その表面に凹部が形成されているか否かによっても確認され得る。凹部は、そこに別の繊維が交差および接触して、捲縮性複合繊維の低融点成分にめり込んで接着することにより形成される。凹部の面積は、例えば、98〜702μmである。
(熱収縮性複合繊維)
本実施形態の不織布は、立体捲縮を有する捲縮性複合繊維と、非熱収縮性繊維とを所定の割合で含み、かつ所定温度での縦方向の寸法変化率および横方向の寸法変化率の平均値が8%未満である、不織布である。立体捲縮を有する捲縮性複合繊維とは、熱収縮性複合繊維が熱処理に付されて、立体捲縮を発現した状態にある繊維を指す。ここでは、立体捲縮を熱処理により発現させていない状態の捲縮性複合繊維、すなわち熱収縮性複合繊維を説明する。
熱収縮性複合繊維は、第1成分と、前記第1成分の融点Tfよりも高い融点Tfを有する第2成分とを含み、熱処理に付されると立体捲縮を発現するものである。第1成分は、第2成分よりも高い熱収縮性を示すものであり、二つの成分の収縮性の差を利用して、立体捲縮が発現させられる。熱収縮性複合繊維は熱処理に付されることにより立体捲縮を発現した状態で、すなわち、捲縮性複合繊維として、本実施形態の不織布に存在する。この捲縮性複合繊維は後述する波形状捲縮や螺旋状捲縮といった立体捲縮を発現しているため、これを含む本発明の不織布は、丸みを適度に帯びた捲縮が不織布表面に存在することにより、ふんわりとした触感を呈するだけでなく、立体捲縮により、適度な伸縮性を有するものとなる。さらに、本実施形態においては、非熱収縮性繊維を比較的高い割合で含み、これが後述するように不織布表面を立毛したものとするところ、立体捲縮が非熱収縮性繊維を固定する役割をするので、立毛した単繊維の抜けが生じにくくなる。
第1成分の融点Tfおよび第2成分の融点Tfは、DSCにより得た融解熱量曲線から求めることができる。融解熱量曲線においては、1つの成分について二以上のピークが出現することがある。その場合には、最大のピークを示す温度を、融解ピーク温度、即ち融点とする。
第1成分としては、例えば、プロピレン共重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体、およびポリエステル系の共重合体等が挙げられる。これらの共重合体は高い熱収縮性を示すので、これを第1成分とする熱収縮性複合繊維は立体捲縮を発現しやすい。これらの第1成分のうち、プロピレン共重合体が好ましい。プロピレン共重合体は溶融時の流動性が特に低いため、不織布をプロピレン共重合体の融点付近の温度に加熱したとしても、捲縮性複合繊維の接触部の周辺に膜状に広がらない。このため、第1成分としてプロピレン共重合体を含む捲縮性複合繊維では、接着部は膜状に広がらず、点接着する。よって、熱収縮性複合繊維が第1成分としてプロピレン共重合体を含む場合、不織布の柔軟性および触感がさらに向上する。
あるいは、第1成分は、第2成分との間で熱収縮性および融点に差を有し、第2成分とともに、立体捲縮を発現する熱収縮性複合繊維を構成し得る限りにおいて、他の熱可塑性樹脂であってよい。他の熱可塑性樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートおよびその共重合体等のポリエステル系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン(高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等を含む)、ポリブテン−1、エチレン−ビニルアルコール共重合体、およびエチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ならびにナイロン6、ナイロン12およびナイロン66のようなポリアミド系樹脂等である。第1成分は、二以上の熱可塑性樹脂を含んでよい。
第1成分は、特に、プロピレン共重合体を、50質量%以上、好ましくは80質量%以上含むものであってよい。あるいは、第1成分は、他の熱可塑性樹脂を含まず、プロピレン共重合体のみから実質的に成ってよい。これらの共重合体は、比較的低い温度で高い熱収縮性を示すので、これらを用いることにより比較的低い温度で本実施形態の不織布を製造することが可能となる。また、これらの共重合体は良好な熱接着性を示すので、本実施形態の不織布を別の部材(例えば他の不織布またはフィルム)と熱加工(例えばヒートシール加工)によって一体化させるときに、本実施形態の不織布の加工性を良好なものとする。以下、これらの共重合体について説明する。
プロピレン共重合体は、反応物(モノマー)としてのプロピレンとプロピレン以外のα−オレフィンとを共重合させることによって得られる共重合体であって、プロピレンを主たるモノマー成分とするものである。反応物におけるプロピレンの含有率は、好ましくは反応物の全質量中50質量%以上である。本実施形態においては、ランダム共重合体、あるいはブロック共重合体のいずれのプロピレン共重合体も用いることができる。熱収縮性を考慮すると、ランダム共重合体が好ましい。
プロピレン共重合体において、プロピレンと共重合するモノマー(上記プロピレン以外のα−オレフィン)は、例えば、エチレン、ブテン−1、ヘキセン−1、およびオクテン−1などの炭素原子数2以上20以下のα−オレフィン(炭素原子数3のプロピレンを除く)から選択される1または複数のモノマーである。プロピレン共重合体は、好ましくは、エチレン−プロピレン共重合体、およびエチレン−ブテン−1−プロピレン三元共重合体から選ばれる少なくとも1種である。エチレン−プロピレン共重合体の場合、好ましい共重合割合は、質量比でエチレン:プロピレン=1:99〜20:80の範囲である。エチレン−ブテン−1−プロピレン三元共重合体の場合、好ましい共重合割合は、質量比でエチレン:ブテン−1:プロピレン=(0.5〜15):(0.5〜15):(70〜99)の範囲である。
プロピレン共重合体の日本工業規格(JIS)−K−7210で規定されるメルトフローレート(MFR;測定温度230℃、荷重21.18N(2.16kgf))は50g/10分以下であることが好ましく、15g/10分以上30g/10分以下の範囲内であることがより好ましい。メルトフローレートがこの範囲内にあると、繊維製造時の紡糸性が良好である。
プロピレン共重合体の融点は、好ましくは145℃以下であり、より好ましくは130℃以上145℃以下である。このような融点を有するプロピレン共重合体は、例えば、エチレン−プロピレンランダム共重合体である。プロピレン共重合体の融点は、融解ピーク温度に相当する。融点が130℃以上であるとポリマーがゴム的弾性を示しにくく、繊維のカード通過性の低下を抑制する。融点が145℃以下であると、熱収縮性の低下を抑制し、立体捲縮の発現が十分となることができる。
第2成分は、第1成分の融点Tfよりも高い融点Tfを有する。TfはTfよりも10℃以上高くてよく、特に15℃以上高くてよい。TfとTfとの差が小さいと、良好な捲縮発現を得られないことがある。
第2成分として使用可能な樹脂として、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、およびその共重合体などのポリエステル樹脂、ナイロン6、ナイロン66、およびその共重合体などのポリアミド樹脂、ならびにポリプロピレンおよびポリメチルペンテンなどのポリオレフィン樹脂などが挙げられる。第2成分は、これらから選択される2以上の樹脂を含んでよい。第2成分は、収縮するとしてもその度合いは、第1成分よりも小さく、熱収縮性複合繊維に剛性を付与し、繊維のカード通過性等を確保する役割をする。
第2成分は、融点が150℃以上のポリプロピレンを50質量%以上、好ましくは80質量%以上含んでよい。あるいは、第2成分は他の熱可塑性樹脂を含まず、ポリプロピレンのみから実質的に成っていてよい。ポリプロピレンは、紡糸性、繊維の捲縮発現性、および樹脂自身が有する収縮性等の点から第2成分として好ましく用いられる。また、ポリプロピレンは、ポリエチレンテレフタレートをはじめとするポリエステル樹脂に比べて柔軟な樹脂であることから、後述する、第2成分にポリエチレンテレフタレートを含む熱収縮性複合繊維に比べて、より柔軟な熱収縮性複合繊維を与えると考えられる。
あるいは、第2成分はポリエチレンテレフタレートを50質量%以上、好ましくは80質量%以上含んでよい。また、第2成分は他の熱可塑性樹脂を含まず、ポリエチレンテレフタレートのみから実質的に成っていてよい。ポリエチレンテレフタレートは、紡糸性に優れ、また、これを第2成分に含む繊維は、捲縮発現性に優れるものとなる。さらに、ポリエチレンテレフタレートは、前述したポリプロピレン樹脂に比べ、融点が高く、弾性の大きい樹脂であることから、これが第2成分に含まれる繊維を含む不織布は、比較的高い温度で熱処理をしても嵩が減少しにくい。さらにまた、ポリエチレンテレフタートを構成成分とする繊維は、繊維そのものの弾性が大きくなりやすいことから、第2成分にポリエチレンテレフタレートを含む熱収縮性複合繊維は嵩高な不織布が求められる用途に適している。
熱収縮性複合繊維は、第1成分が繊維の周面の長さに対して20%以上の長さで露出している断面構造を有することが好ましい。そのような断面構造として、第1成分が鞘成分、第2成分が芯成分であって、第2成分(芯成分)の重心位置が繊維の重心位置からずれている偏心芯鞘型断面、および第1成分と第2成分とが貼り合わされた並列型断面が挙げられる。そのような断面構造によれば、収縮性に優れ、かつ捲縮発現性に優れた複合繊維を得ることができる。
熱収縮性複合繊維の表面における第1成分の露出割合によって、点接着の度合いを制御することができる。具体的には、熱収縮性複合繊維の断面が偏心芯鞘型断面である場合、溶融時の流動性が低く第2成分に比べ融点が低い第1成分が、鞘成分であり熱収縮性複合繊維の表面に全面的に露出する。このため、偏心芯鞘型断面を有する熱収縮性複合繊維は、後述する不織布の製造方法における熱処理では接着性を示し、構成繊維が点接着する不織布を製造することができる。
一方、熱収縮性複合繊維の断面が並列型断面である場合、第2成分が熱収縮性複合繊維の表面に部分的に露出する。熱収縮性複合繊維および非熱収縮性繊維の面積比は、例えば、3:7〜7:3である。このように、熱収縮性複合繊維の並列型断面は、偏心芯鞘型断面に比べ、露出する第1成分の割合が低い。このため、並列型断面の熱収縮性複合繊維は、偏心芯鞘型断面の熱収縮性複合繊維に比べ、点接着の割合を減少することができる。
また、熱収縮性複合繊維の表面における第1成分の露出割合だけでなく、寸法変化率の平均値が8%未満となる範囲で熱処理条件(加熱温度および加熱時間)により、構成繊維の点接着を制御することができる。
熱収縮性複合繊維が、偏心芯鞘型複合繊維である場合、第2成分の偏心率は、15〜60%の範囲内にあることが好ましく、20〜50%の範囲内にあることがより好ましく、30〜50%の範囲内にあることが特に好ましい。ここでいう偏心率とは、次式で定義される。
Figure 2021177019
第1成分と第2成分の複合比率は、容積比で3:7〜7:3の範囲であってよく、好ましくは4:6〜6:4である。第1成分の割合が小さすぎると、収縮が不十分となる場合があり、第1成分の割合が大きすぎると、不織布を製造する際に高速でカードを通過させることが困難となることがある。
熱収縮性複合繊維の繊度は、特に限定されない。例えば、熱収縮性複合繊維は、1.1dtex〜15dtexの繊度を有してよく、好ましくは1.2dtex〜5dtex、より好ましくは1.5dtex〜3.5dtexの繊度を有してよい。繊度が小さいほど、不織布の触感はより良好なものとなり、また、不織布はより柔軟なものとなる。
熱収縮性複合繊維の繊維長もまた、特に限定されない。不織布を製造するときに、繊維ウェブをカード機を用いて作製する場合、繊維長は1mm〜100mmの範囲内にあってよく、好ましくは28mm〜72mm、より好ましくは32mm〜64mmの範囲内にある。エアレイド機を用いる場合においては、繊維長は3mm〜30mmの範囲内にあってよく、好ましくは5mm〜25mmの範囲内にある。
熱収縮性複合繊維は、熱処理に付されると立体捲縮を発現する。ここで、「立体捲縮」という用語は、図3に示すような捲縮の山(または山頂部)が鋭角である機械捲縮と区別されるために用いられる。また、「立体捲縮が発現している」とは、例えば、図1Aに示すような山部が湾曲した捲縮(波形状捲縮)、図1Bに示すような山部が螺旋状に湾曲した捲縮(螺旋状捲縮)、図1Cに示すような、波形状捲縮と螺旋状捲縮とが混在した捲縮、および図2に示すような、機械捲縮と波形状捲縮および螺旋状捲縮の少なくとも一つとが混在した捲縮が発現していることを指す。
(非熱収縮性繊維)
非熱収縮性繊維は、温度120℃、時間15分間、初荷重0.018mN/dtexの条件で測定した乾熱収縮率が20%以下である繊維であり、この乾熱収縮率を満足する限りにおいて、特に限定されない。非熱収縮性繊維は、本実施形態の不織布の表面に立毛を形成することで、前記不織布に良好な柔軟性および触感を付与する。なお、立毛した単繊維は、熱収縮性複合繊維の立体捲縮および繊維間の交絡により不織布から抜けにくくなっている。また、非熱収縮性繊維は、本実施形態の不織布の嵩を高くし、不織布に適度なコシを持たせる役割をして、不織布が薄く、コシのない状態になることを防止する。不織布が薄く、コシのないものであると、生産時のロールへの巻き取り時に皺や折れが発生しやすいだけでなく、不織布が変形しやすいために、不織布を特定の形状に打ち抜く打ち抜き加工を実施できないことがあり、あるいは打ち抜く形状が崩れやすくなることがある。
例えば、非熱収縮性繊維として、コットン、シルク、ウール、麻、およびパルプなどの天然繊維、レーヨン、キュプラ、および溶剤紡糸セルロース繊維などの再生繊維、およびアクリル系、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、およびポリブチレンサクシネートおよびその共重合体等のポリエステル系、ナイロン6、ナイロン12およびナイロン66等のアミド系、ポリプロピレン、ポリエチレン(高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等を含む)、ポリブテン−1、エチレン−ビニルアルコール共重合体、およびエチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系、ならびにポリウレタン系などの合成繊維が挙げられる。非熱収縮性繊維としての合成繊維は、単一繊維であっても、複合繊維であってもよい。例えば、複合繊維は、芯鞘型複合繊維、または分割型複合繊維であってよい。また、非熱収縮性繊維として、2以上の繊維を組み合わせて使用してよい。
非熱収縮性繊維は、例えば、ポリプロピレンまたはポリエチレンテレフタレートからなる単一繊維であってよい。これらの単一繊維は、入手しやすく、また、比較的小さい繊度のものを入手しやすいことから好ましく用いられる。特に、熱収縮性複合繊維が、第1成分にプロピレン共重合体を含むものである場合、非熱収縮性繊維がポリプロピレンからなる単一繊維(以下、「ポリプロピレン繊維」)であると、ポリプロピレン樹脂そのものがポリエステル樹脂およびポリアミド樹脂等の他の熱可塑性樹脂と比較して柔軟であることから、柔らかく、良好な触感の不織布が得られやすい。加えて、ポリプロピレン樹脂はポリエステル樹脂およびポリアミド樹脂と比較して低融点であることから、ポリプロピレン繊維を用いると、得られる不織布を部分的に熱接着する場合、より低温で熱接着できるだけでなく、熱接着性も良好である。
非熱収縮性繊維の繊度は、特に限定されない。例えば、非熱収縮性繊維が、再生繊維または合成繊維である場合、その繊度は0.3dtex〜15dtexであってよく、好ましくは0.5dtex〜5dtexであり、より好ましくは0.8dtex〜3.5dtexであり、特に好ましくは0.8dtex〜2.0dtexである。繊度が小さいほど、不織布の触感はより良好なものとなり、また、不織布はより柔軟なものとなる。非熱収縮性繊維の繊度は、熱収縮性複合繊維のそれと同じであってよく、異なっていてよく、好ましくは熱収縮性複合繊維の繊度よりも小さい。非熱収縮性繊維の繊度が熱収縮性複合繊維の繊度よりも小さいと、滑らかで柔らかい触感の不織布が得られやすい。
非熱収縮性複合繊維の繊維長もまた、特に限定されない。不織布を製造するときに、繊維ウェブをカード機を用いて作製する場合、繊維長は1mm〜100mmの範囲内にあってよく、好ましくは28mm〜72mm、より好ましくは32mm〜64mmの範囲内にある。エアレイド機を用いる場合においては、繊維長は3mm〜30mmの範囲内にあってよく、好ましくは5mm〜25mmの範囲内にある。
(不織布構成)
続いて、本実施形態の不織布の構成を説明する。本実施形態の不織布は、立体捲縮を有する捲縮性複合繊維と非熱収縮性複合繊維とを含み、捲縮性複合繊維と非熱収縮性繊維の質量を合わせて100質量%としたときに、捲縮性複合繊維の割合が15質量%以上45質量%以下であり、構成繊維同士が交絡している不織布である。さらに、本実施形態の不織布は、(Tf−8)℃(Tfは捲縮性複合繊維の第1成分の融点)での縦方向の寸法変化率および横方向の寸法変化率の平均値が、8%未満であるような熱収縮性を有している。
立体捲縮を有する捲縮性複合繊維は、前記熱収縮性複合繊維が熱処理に付されて立体捲縮が発現したものである。捲縮性複合繊維において、立体捲縮は40個/25mm以上700個/25mm以下、特に50個/25mm以上600個/25mm以下の数で発現していてよい。捲縮性複合繊維において、機械捲縮と、波形状捲縮および/または螺旋状捲縮とが混在して発現している場合には、機械捲縮も上記立体捲縮の数に含める。不織布中に含まれる捲縮性複合繊維における捲縮数は、当該繊維を、立体捲縮が伸びきらないように不織布から抜き取って、JIS L 1015に準じて測定することができる。あるいは、立体捲縮を有する捲縮性複合繊維が他の繊維と強固に交絡し、不織布中から取り出すことが難しい場合、不織布の表面または断面を走査型電子顕微鏡などで拡大したものを撮影し、撮影した写真において観察される範囲で捲縮性複合繊維の捲縮数および長さを計測し、25mmあたりの捲縮数に換算する方法で捲縮数を求めてもよい。
捲縮性複合繊維は、捲縮性複合繊維と非熱収縮性繊維の質量を合わせて100質量%としたときに、15質量%以上45質量%以下の割合で含まれ、好ましくは20質量%以上40質量%以下の割合で含まれ、より好ましくは25質量%以上35質量%以下含まれる。捲縮性複合繊維の割合が小さすぎると(例えば、15質量%未満であると)、立体捲縮の総数が少なくなり、立体捲縮によりもたされる効果、例えば良好な触感を得られないことがある。また、立体捲縮は、例えば、捲縮性複合繊維が非熱収縮性繊維を固定するためのアンカーとして機能するのに寄与するが、立体捲縮の総数が少なくなると、非熱収縮性繊維の固定が不十分となって立毛した単繊維の抜けが生じやすくなる。さらに、非熱収縮性繊維が適度に束縛されないため、繊維ウェブの繋がりが低下し、例えば、不織布の製造時においていわゆる垂れが生じ、繊維ウェブの形態を適切に維持できなくなる等の不具合が生じる。捲縮性複合繊維の割合が大きすぎると(例えば、45質量%より大きいと)、非熱収縮性繊維に対する捲縮性複合繊維の割合が大きくなり、非熱収縮性繊維が捲縮性複合繊維により強く固定されて自由度が低下し、その結果、不織布の嵩が小さくなり、柔軟性および触感が低下することがある。さらに、捲縮性複合繊維の割合が大きすぎると、捲縮性複合繊維同士が互いに絡み合って立体捲縮の干渉(重なり)が生じやすくなり、ひいては捲縮塊を発生しやすくなり、不織布の触感が低下する。
本実施形態の不織布は、捲縮性複合繊維と非熱収縮性繊維の質量を合わせて100質量%としたときに、非熱収縮性繊維が、55質量%以上85質量%以下の割合で含まれ、好ましくは60質量%以上80質量%以下の割合で含まれ、より好ましくは65質量%以上75質量%以下含まれる。非熱収縮性繊維の割合が小さすぎると、不織布の柔軟性や触感が不十分なものとなることがあり、非熱収縮性繊維の割合が大きすぎると、製造時に繊維ウェブの形態が不安定となることがあり、また、立毛した単繊維の抜けが生じやすくなる。
本実施形態の不織布における、捲縮性複合繊維と非熱収縮性繊維の割合はそれぞれの繊維が不織布に含まれる本数の比によって調節することもできる。繊維本数の比によれば、繊維の太さおよび長さも考慮して、二種類の繊維の割合を調節することが可能となる。非熱収縮性繊維の本数の割合(本数比)は、好ましくは熱収縮性複合繊維の本数に対して4.0〜12.0である。より好ましくは熱収縮性複合繊維の本数に対して5.0〜8.0である。本数比が4.0以上であると、2以上の捲縮発現繊維が干渉した立体捲縮構造が形成されにくく、立体捲縮が干渉しているとしても干渉の度合い(干渉している長さ)が小さくなり、あるいは一本の捲縮発現繊維に発現した立体捲縮が他の繊維の立体捲縮で干渉されにくくなる。その結果、捲縮塊が発生しにくくなり、触感の低下が抑制される。また、本数比が12.0以下であると、非熱収縮性繊維が適度に固定されることで、立毛が適度に生じ良好な触感が生じるとともに、立毛した単繊維の抜けが抑制され、繊維ウェブの繋がりの低下を抑制し、繊維ウェブの形態を保持しやすくなる。本数比の算出方法は、実施例にて詳細に説明する。
本実施形態の不織布は、捲縮性複合繊維と非熱収縮性繊維の質量を合わせて100質量%としたときに、捲縮性複合繊維が前記の割合で含まれている限りにおいて、他の繊維を含んでよい。他の繊維は、例えば、立体捲縮を有しておらず、かつ温度120℃、時間15分間、初荷重0.018mN/dtexの条件で測定した乾熱収縮率が20%を超えるような繊維である。他の繊維を含む場合には、その割合は、不織布を構成する繊維全体の25質量%以下とすることが好ましい。他の繊維の割合が大きくなると、捲縮性複合繊維と非熱収縮性繊維が奏する効果(例えば、良好な触感)を十分に得られないことがある。したがって、本実施形態の不織布は、捲縮性複合繊維と非熱収縮性繊維のみで構成されていてよい。
本実施形態の不織布は、構成繊維同士が交絡することにより一体化されている。後述するように、繊維同士は、ニードルパンチ法または流体流(特に水流)交絡処理法により交絡させられてよい。繊維同士の交絡により一体化させた不織布は、より柔軟である。不織布の柔軟性の点から、本実施形態の不織布において、繊維同士は熱接着していないか、または繊維同士が熱接着しているとしても、点接着する。繊維同士が膜状に広がって接着すると、不織布は硬くなる傾向にある。
前記のとおり、本実施形態の不織布は熱収縮性を有しないかまたはほとんど有しないものである。不織布の熱収縮性は、下記の方法に従って測定される、(Tf−8)℃での寸法変化率によって評価される。
(1)不織布から、約100mm×約100mmの試験片を3枚採取する。
(2)この試験片において図4に示すように、縦方向および横方向それぞれ3箇所に約83mmの長さを表す印をつける(以下、測長区間という)。図4においては縦方向の測長区間を太い実線で示している。
(3)各試験片について、縦方向および横方向のそれぞれの3つの測長区間の長さを0.1mmまで測定し、各方向における測長区間の長さの平均値を求め、これを各測長区間の「処理前長さ」(ΔLMD1:縦方向の処理前長さ、ΔLCD1:縦方向の処理前長さ)とする。
(4)(Tf−8)℃に設定した恒温乾燥機を用意し、この恒温乾燥機中に、試験片を縦方向に鉛直になるように隅をつかんでつり下げる。再度設定した温度になった後、3分間、乾燥機内に試料を放置する。3分間経過した後、試験片を取り出して、室温まで冷却する。
(5)冷却した試験片について、縦方向および横方向のそれぞれの3つの測長区間の長さを0.1mmまで測定し、各方向における測長区間の平均値を求め、これを各測長区間の「処理後長さ」(ΔLMD2:縦方向の処理後長さ、ΔLCD2:縦方向の処理後長さ)とする。
(6)(2)で求めた、各試料片における縦方向の3つの測長区間の処理前長さの平均値(ΔLMD1)、(5)で求めた、各試料片における縦方向の3つの測長区間の処理後長さの平均値(ΔLMD2)から、下記の式に従って各試験片の縦方向の寸法変化率(ΔLMD)を算出する。
Figure 2021177019
(7)同様に、(2)で求めた、各試料片における横方向の3つの測長区間の処理前長さの平均値(ΔLCD1)、(5)で求めた、横方向の3つの測長区間の処理後長さの平均値(ΔLCD2)から、下記の式に従って各試験片の横方向の寸法変化率(ΔLCD)を算出する。
Figure 2021177019
(8)(6)および(7)で求めた縦方向の寸法変化率ΔLMDと横方向の寸法変化率ΔLCDの平均値から縦方向の寸法変化率および横方向の寸法変化率の平均値(ΔLave)を下記の式に従って算出する。
Figure 2021177019
(9)3点の試験片についてΔLaveを算出し、これらの値の平均値をその不織布における縦方向の寸法変化率および横方向の寸法変化率の平均値とする。
(Tf−8)℃での縦方向の寸法変化率および横方向の寸法変化率の平均値(以下、単に「寸法変化率の平均値」と呼ぶ)が8%未満であると、立毛した単繊維の抜けが生じにくくなる。
寸法変化率の平均値を前記範囲内とするためには、捲縮性複合繊維の割合、繊維同士の交絡の度合い、および捲縮性複合繊維における立体捲縮の度合い(すなわち、熱収縮性複合繊維の熱処理条件)等から選択される1または複数のパラメータが調整される。寸法変化率の平均値は、例えば、繊維同士の交絡の度合いを大きくすることで、小さくすることができる。また、寸法変化率の平均値は、捲縮性複合繊維における立体捲縮の度合いを大きくすることで、小さくすることができる。立体捲縮の度合いは、例えば、熱処理温度または熱処理時間によって調整できる。これらのパラメータを適宜調整して組み合わせることにより、所定の寸法変化率の平均値が得られる。
不織布の目付は特に限定されず、用途等に応じて適宜選択される。不織布の目付は、例えば、30g/m〜150g/mであってよい。より具体的には、不織布を、フェイスマスクをはじめとする液体(特に化粧料)含浸皮膚被覆シート、使い捨てカイロをはじめとする温熱器具における発熱体の包材、肌当接面の基布、製品の表面材、温湿布および冷湿布をはじめとする各種パップ材の基布、および医療用の各種包帯として用いる場合には、目付は50g/m〜120g/mとしてよく、55g/m〜100g/mとしてもよく、60g/m〜90g/mとしてもよい。
不織布の厚さも特に限定されず、例えば、30g/m〜150g/mの目付を有する不織布の場合、その厚さは0.5mm〜5mmであってもよく、0.6mm〜3.5mmであってもよく、0.6mm〜3.0mmであってもよく、0.7〜2.5mmであってもよい。
本実施形態の不織布は、「熱収縮しろ」を有しないまたはほとんど有しない構成(すなわち、熱に対する寸法安定性に優れる構成)であるにもかかわらず、前記特定の繊維を特定の割合で含むため、嵩高なものとして提供され得る。不織布の嵩高性は比容積で表すことができ、比容積は厚さを目付で除すことにより算出される。但し、比容積は、不織布の保存状態および/または不織布の製造過程によっても変化することに留意されたい。例えば、不織布が芯に巻き取られてロール形態で保存されていると、芯により近い側の不織布の比容積はより小さくなる傾向にある。例えば、本発明の不織布は、製造直後において、好ましくは10cm/g〜40cm/g、より好ましくは15cm/g〜30cm/gの比容積を有する。なお、比容積は、不織布1cm2あたり2.94cNの荷重を加えた状態で測定される厚さと、不織布の目付から算出される。
本実施形態の不織布は、不織布の構成繊維が不織布表面に対して例えば45度以上、好ましくは垂直な方向に立毛しており、良好な立毛性を有する。不織布の立毛の長さは、好ましくは、0.80×10μm〜1.65×10μmである。立毛の長さが0.80×10μm〜1.65×10μmであると、立毛している構成繊維が適度に長いため、不織布表面に肌が触れた場合に肌当たりが良くふわっとした良好な感触を得ることができる。立毛の長さの測定方法は、実施例に詳細に説明する。
不織布の表面に存在する立毛の長さは、本実施形態の不織布において、熱処理を施すことによっても不織布の形状が維持されることにより上記の好適な数値範囲に制御することができる。本実施形態において、捲縮性複合繊維と非熱収縮性繊維の質量を合わせて100質量%としたときに、捲縮性複合繊維の割合が15質量%以上45質量%以下であり、不織布の構成繊維において非熱収縮性繊維の割合は、熱収縮性複合繊維に比べ大きい。このため、本実施形態の不織布は、その表面が非熱収縮性繊維によって不織布表面に立毛を生じさせるが、不織布の形状を維持するために非熱収縮性繊維をある程度固定する必要がある。
不織布の形状を維持する手段として、例えば、後述する機械的な交絡と熱処理との組み合わせが挙げられる。機械的な交絡は、例えば、ニードルや水流の作用で非熱収縮性繊維および熱収縮性複合繊維を絡ませる。つまり、機械的な交絡は、例えば、構成繊維の一部を不織布の内部に食い込ませるようにして絡ませる。これに対して、本実施形態において、熱処理は、熱収縮性複合繊維が熱融着しないようにして又は実質的に熱融着しないようにして熱収縮性複合繊維の立体捲縮を発現させ、後述するように、例えば、らせん状の立体捲縮構造内に非熱収縮性繊維を抱き込む。つまり、熱処理では、1本または複数本の束ねられた非熱収縮性繊維を局所的に拘束する。このように、熱処理は機械的な交絡に比べ、弱い力で非熱収縮性繊維を束縛することで不織布の形状の維持に寄与する。本実施形態では、後述のとおり、機械的な交絡のみで不織布形状を維持せず、熱処理による立体捲縮の発現によっても不織布形状を維持するから、機械的な交絡のみを用いる場合よりも非熱収縮性繊維の自由度を高くできる。その結果、不織布表面で非熱収縮性繊維を立毛させ、また、立毛の長さを上記の好適な数値範囲に制御することができる。
本実施形態の不織布における立体捲縮を有する捲縮性複合繊維の構成、すなわち、熱処理により立体捲縮を発現させた状態の熱収縮性複合繊維の構成を説明する。なお、立体捲縮を発現させていない状態の熱収縮性複合繊維と、立体捲縮を発現させた状態の熱収縮性複合繊維とを区別するために、便宜上、前者を捲縮未発現繊維と称し、後者を捲縮発現繊維とも称する。
捲縮発現繊維は、立体捲縮構造(例えば、らせん状の立体捲縮構造)を有し、その構造内に非熱収縮性繊維を抱き込むことがある。特に本実施形態の不織布においては、非熱収縮性繊維の割合が大きいために、非熱収縮性繊維が立体捲縮構造に抱き込まれやすい。これにより、非熱収縮性繊維が固定され、立毛した単繊維の抜けが抑制される。一例として図7を挙げて、捲縮発現繊維による非熱収縮性繊維の抱き込みを説明する。図7は、後述する実施例3の不織布の拡大表面を示す。図7に示すように、捲縮発現繊維12は、らせん状の立体捲縮構造13内に、1本以上の非熱収縮性繊維20を抱き込んでいる。捲縮発現繊維12は、らせん状の立体捲縮構造13内にその構造のらせん軸に沿って非熱収縮性繊維20の一部を抱き込むことができる。このような抱き込み構造が不織布内で形成されているため、非熱収縮性繊維20は複数の箇所で、一本または複数本が局所的に束ねられて拘束された三次元形状を有する。このため、非熱収縮性繊維は立毛した単繊維の抜けが抑制され、かつ適度に立毛し、良好な触感を生じさせる。
立毛した単繊維の抜けおよび立毛の程度は、例えば、立体捲縮構造13のらせん径およびピッチ長さにより制御することができる。ここで、らせん径とは、らせん軸に垂直な方向かららせんを見た場合のらせんの直径(外径)をいう(例えば、図7に示すR)。らせん径は、例えば、60μm〜120μmである。ピッチ長さとは、らせん軸に平行な方向におけるらせんの任意の第1点から第1点との関係で定まる第2点までの長さをいう(例えば、図7に示すL)。第1点とはらせん上の任意の点であり、第2点とはらせん軸に垂直な方向かららせんを見た場合にらせん上の第1点かららせん上を1周したときに到達するらせん上の点である。らせん径およびピッチ長さは、不織布の電子顕微鏡写真における立体捲縮構造を測長することにより得ることができる。
捲縮発現繊維12は、好ましくは2以上の捲縮発現繊維12が干渉した(例えば、互いに絡み合った)立体捲縮構造13を形成しにくい。ここで、2以上の捲縮発現繊維12が干渉した立体捲縮構造13を形成しにくいとは、例えば、干渉した立体捲縮構造13(より具体的には、2つの捲縮発現繊維12が干渉して主として非熱収縮性繊維20を抱き込まない構造であって、捲縮塊に発展し得る構造)の単位面積あたりの数が、干渉しない立体捲縮構造13の単位面積当たりの数に比べ小さいことをいう。干渉した立体捲縮構造13が形成されにくいと、捲縮塊が発生しにくくなるため、触感の低下が抑制される。干渉した立体捲縮構造13が形成されにくい態様は、例えば、カード機による開繊具合、上述した熱収縮性複合繊維、非熱収縮性繊維の混率(質量比、本数比)、または繊維同士の交絡によって制御することができる。
捲縮発現繊維12は、より好ましくはほぼ単独で立体捲縮構造13を構成し、さらに好ましくは単独で立体捲縮構造13を構成する。ここで、単独で立体捲縮構造を構成するとは、立体捲縮構造13が1本の捲縮発現繊維12によって構成されており、かつ立体捲縮構造13が他の捲縮発現繊維12による立体捲縮構造13により干渉されていないことをいう。ただし、立体捲縮構造13が1本の捲縮発現繊維12で構成されていたとしても、捲縮発現繊維の一部(例えば、一端)と他の一部(例えば、他端)とが互いに絡み合う態様は、捲縮発現繊維12が単独で立体捲縮構造13を構成する態様に含まれない。また、ほぼ単独で立体捲縮構造を構成するとは、立体捲縮構造13がほぼ1本の捲縮発現繊維12によって構成されており、立体捲縮構造13が干渉しているとしても、ごく一部(例えば、らせん一つないし三つ分)に限られている状態をいう。ほぼ単独または単独の捲縮発現繊維12で立体捲縮構造が構成されると、捲縮塊がさらに発生しにくくなるため、触感の低下が抑制される。捲縮発現繊維12が単独で又はほぼ単独で立体捲縮構造を構成するように、上述した熱収縮性複合繊維および非熱収縮性繊維の割合(質量比、本数比)を制御することができる。
(不織布の製造方法)
本実施形態の不織布は、先に説明した熱収縮性複合繊維と、先に説明した非熱収縮性繊維とを、熱収縮性複合繊維と非熱収縮性繊維とを合わせて100質量%としたときに、熱収縮性複合繊維の割合が15質量%以上45質量%以下となるように混合して、繊維ウェブを作製し、この繊維ウェブに機械的な交絡処理を施して、繊維ウェブを構成する繊維同士を交絡し、その後熱処理を実施する方法で製造される。
繊維ウェブは、熱収縮性複合繊維と非熱収縮性繊維以外の他の繊維を含んでよい。他の繊維の例およびその割合は先に不織布に関連して説明したとおりであるから、ここではその説明を省略する。
繊維ウェブの形態は、パラレルウェブ、クロスウェブ、セミランダムウェブおよびランダムウェブ等のカードウェブ、エアレイウェブ、ならびにスパンボンドウェブ等から選択されるいずれであってもよい。本実施形態では、繊維同士の交絡性の点からカードウェブが好ましく用いられる。
繊維同士の機械的な交絡は、例えば、ニードルパンチ処理、または流体流(特に水流)交絡処理により実施してよい。本実施形態では特にニードルパンチ処理が好ましく用いられる。ニードルパンチ処理によれば、繊維同士が過度に交絡されないため、より嵩高で、より柔軟な不織布を得やすい。また、ニードルパンチ処理によれば、繊維同士の交絡の度合いの調整が容易であり、熱接着による寄与が小さい(より具体的には、構成繊維同士が熱接着しないか、または熱接着しているとしても、点接着する)場合であっても、不織布が一体性を有することができる。ニードルパンチ処理は、通常のニードルパンチ機を用いて実施することができる。ニードルパンチ処理は、例えば、バーブの数が3個〜12個である、36番手〜42番手の針を用いて、針深度を3mm〜20mmとし、30本/cm2〜500本/cm2の密度(単位面積当たりの針の打ち込み本数。ペネ数とも称される)で打ち込みをして実施するとよい。
次に、交絡処理後の繊維ウェブを熱処理して、熱収縮性複合繊維において立体捲縮を発現させる。熱処理は、熱処理後に得られる不織布において、(Tf−8)℃での縦方向の寸法変化率および横方向の寸法変化率の平均値が、8%未満となるように実施する。すなわち、熱処理は、熱処理後に得られる不織布が、「熱収縮しろ」を有しないようにまたは実質的に有しないように、熱収縮性複合繊維において立体捲縮を発現させて実施される。また、熱処理は、熱収縮性複合繊維の第1成分が接着性を示す条件で実施してもよい。本実施形態では、捲縮性複合繊維の第1成分としてプロピレン共重合体のような加熱時の流動性が低い樹脂を用いる場合には、第1成分が溶融しても広がりにくく、例えば、繊維同士を点接着させることが容易となる。
熱処理条件(例えば、熱処理温度および熱処理時間)は、熱収縮性複合繊維に立体捲縮を発現させるが、熱収縮性複合繊維の第1成分が接着性を示さないか、示すとしても第1成分が溶融して構成繊維の交点付近のみが接合する程度において、熱収縮性複合繊維を構成する樹脂に応じて選択され、特に、第1成分の融点Tfを考慮して選択される。例えば、熱処理温度は、−30℃≦Tf≦20℃の範囲の温度としてよく、好ましくは−20℃≦Tf≦10℃の範囲の温度としてよい。熱処理時間は0.2秒以上600秒以下としてよく、好ましくは30秒以上400秒以下としてよい。熱処理温度が低すぎると、立体捲縮の発現が不十分となることがあり、また、「熱収縮しろ」が大きくなることがある。熱処理温度が高すぎると、熱収縮性複合繊維の第1成分が溶融して膜状に広がり、得られる不織布の柔軟性や触感が低下することがある。
より具体的には、熱収縮性複合繊維の第1成分がプロピレン共重合体(より具体的には、融点が130℃以上145℃以下であるエチレンが共重合したプロピレン共重合体)を含み、第1成分が繊維の周面の長さに対して20%以上の長さで露出している複合繊維である場合には、熱処理温度は、好ましくは100℃以上150℃未満、より好ましくは110℃以上140℃未満である。また、この温度範囲で熱処理を実施する場合、熱処理時間は好ましくは0.5秒以上180秒以下である。プロピレン共重合体は加熱時の流動性が小さいため、これを第1成分とする熱収縮性複合繊維は、プロピレン共重合体の融点よりもやや高い温度で加熱処理に付しても、熱処理時間等を調整することで、繊維同士が点接着した不織布を与えることができる。
熱処理は、好ましくは熱風を繊維ウェブに当てる熱風加工処理である。熱風加工処理によれば、繊維ウェブの厚さ方向に加わる圧力を小さくでき、立体捲縮がつぶれにくく、嵩高な不織布を得ることができる。熱風加工処理は、例えば、熱風貫通式熱処理機、および熱風吹き付け式熱処理機を用いて実施してよい。あるいは、熱風加工処理に変えて、赤外線を使用した熱処理を実施してよい。赤外線による熱処理もまた、繊維ウェブに圧力が加わりにくいことから好ましく用いられる。あるいはまた、熱処理は、熱ロールを用いる方法によって実施してもよい。
点接着形成を繊維のスケールで説明する。熱処理の前段階の交絡により、構成繊維同士が接触し、交点を形成する。また、熱処理により捲縮性複合繊維が捲縮し、構成繊維同士が接触し、交点を形成する。ここで、捲縮性複合繊維の断面(繊維横断面)においては融点の低い第1成分が繊維表面に露出しているため、第1成分が他の構成繊維(非熱収縮性繊維または他の捲縮性繊維)の表面と接触して交点を形成すると、熱処理により溶融または軟化した第1成分が接着性を示して、他の構成繊維との間で接着部を形成する。このとき、第1成分は溶融時の流動性が低いため、交点において第1成分が露出する側の熱収縮性複合繊維は、凹むようにして(凹部を形成するようにして)他の構成繊維と熱接着する。このようにして点接着が形成される。
本実施形態の不織布は、上述したように作製した繊維ウェブを機械的な交絡と熱処理との組み合わせを施すことで製造される。機械的な交絡および熱処理は、不織布の形状を維持するために施される。
機械的な交絡が例えばニードルパンチ処理である場合には、上述のように複数の針状の治具を繊維ウェブに突き刺すことで、構成繊維(非熱収縮性繊維および熱収縮性複合繊維)を絡ませる。つまり、機械的な交絡は、例えば、複数の針状の治具を繊維ウェブに突き刺しこれを繰り返すことで、構成繊維の一部を不織布の内部に食い込ませるようにして絡ませる。このため、機械的な交絡は、構成繊維を比較的強い力で不織布に固定する。これに対して、熱処理は、熱収縮性複合繊維に立体捲縮を発現させることにより、熱収縮性複合繊維の立体捲縮構造内に非熱収縮性繊維を抱き込むようにして拘束し、非熱収縮性繊維は、その自由度が比較的高い状態で固定される。よって、不織布の形状を維持するための手段として、機械的な交絡および熱処理の組み合わせを採用することで、非熱収縮性繊維は熱収縮性複合繊維で固定されつつも、比較的高い自由度を有し得る。その結果、構成繊維(特に、不織布内において多くの割合を占める非熱収縮性繊維)が立毛しやすくなり、良好な触感(ふわっとした触感)を得ることができ、かつ熱収縮性複合繊維の固定により立毛した単繊維の抜けが抑制される。
[第2実施形態]
第2実施形態は、第1実施形態で説明した不織布構成のうち、捲縮性複合繊維の本数に対する非熱収縮性繊維の本数の割合、および熱処理後の捲縮性繊維と非熱収縮性繊維の状態、ならびに熱処理後の捲縮性複合繊維の断面に着目して特定した不織布である。以下、これらの着目点について主に説明する。
第2実施形態に係る不織布は、
立体捲縮を有する捲縮性複合繊維であって、第1成分と、前記第1成分の融点Tfよりも高い融点Tfを有する第2成分とを含む捲縮性複合繊維と、
温度120℃、時間15分間、初荷重0.018mN/dtexの条件で測定した乾熱収縮率が20%以下である非熱収縮性繊維とを含み、
不織布を構成する捲縮性複合繊維の本数に対する不織布を構成する非熱収縮性繊維の本数の割合が、4.0〜12.0であり、
構成繊維同士が交絡しており、
(Tf−8)℃での縦方向の寸法変化率および横方向の寸法変化率の平均値が、8%未満であり、
捲縮性複合繊維は、立体捲縮内に1本または複数本の非熱収縮性繊維を抱き込んでおり、
捲縮性複合繊維の断面における短軸の長さに対する長軸の長さの比で表されるアスペクト比が1.0〜2.2である、
不織布である。
本実施形態においては、熱処理の度合い、すなわち不織布における繊維間の接着の度合いを示す指標として、捲縮性複合繊維の断面における短軸の長さに対する長軸の長さの比で表されるアスペクト比(長軸短軸比)が用いられる。本実施形態において、同アスペクト比は、1.0〜2.2である。アスペクト比は、1.0〜1.8であってよく、特に1.0〜1.4であってよい。ここで、捲縮性複合繊維のアスペクト比が1.0〜2.2であるとは、複数(少なくとも5本)の捲縮性複合繊維のアスペクト比を測定したときに、それらがいずれもこの範囲内にあることを意味する。
上記アスペクト比は、あるいは複数の捲縮性複合繊維のアスペクト比(測定値)の平均値によっても、記述することができる。このようなアスペクト比(平均値)は、1.0〜1.6であってもよく、好ましくは1.0〜1.4であってもよく、より好ましくは1.0〜1.2であってもよい。
図5に示すように、長軸とは、捲縮性複合繊維10の断面において最も長い軸Amaxをいい、短軸とは、捲縮性複合繊維10の断面において長軸の中点を通る差し渡しのうち最も短い軸Aminをいう。よって、捲縮性複合繊維のアスペクト比が1.0(下限値)であるとは、長軸および短軸が同一の長さを有し、そのようなアスペクト比を有する繊維断面は一般円である。当該アスペクト比が1.0より大きいとは、短軸に対して長軸が長いことを示す。アスペクト比が1.0より大きくなるにつれ、断面形状が円から遠ざかることを示す。アスペクト比が2.2(上限値)を超える捲縮性複合繊維が存在すると(あるいは、複数の捲縮性複合繊維のアスペクト比の平均値が1.6(上限値)を超えると)、捲縮性複合繊維の接着の度合いが大きくなって、例えば構成成分の一部が膜状に広がるようにして熱接着し、不織布全体の柔軟性が低下する。
アスペクト比の算出は、電子顕微鏡を用いて不織布の断面画像において捲縮性複合性繊維の断面の長軸および短軸を測長することによって、算出することができる。断面画像は、不織布の中央点(不織布平面の2つの対角線の交点)を通る切断面を300〜2000倍に拡大したSEM画像であってよい。アスペクト比の算出方法は、実施例にて詳細に説明する。
不織布の柔軟性および触感は、熱処理の程度によって調節することができるが、熱処理の制御因子は、例えば、加熱時間、加熱温度、および繊維ウェブの搬送速度等のように複数存在し、また加熱装置の種類によっても異なる場合がある。本発明者は、より簡便な方法で加熱の程度を判定することに着目し、このような観点から、熱処理の条件が異なる不織布を複数観察し、熱処理の程度と相関のある不織布の特徴の存在を検討した。その結果、熱処理の条件がより強いものとなるほど(例えば、熱処理温度が高くなるほど)、捲縮性複合繊維の形状(より具体的には、断面形状)が変化することを見出した。これは、捲縮性を発現させるため構成される、捲縮性複合繊維内の複数の成分が熱処理によって互いに分離するような挙動を示すからであると考えられる。本発明者はさらに検討し、熱処理の程度の客観的な指標として、捲縮性複合繊維の断面における短軸の長さに対する長軸長さの比で表されるアスペクト比を導入した。アスペクト比が特定の数値範囲を有する場合に、適度な熱処理がなされ、その結果、より柔軟より良好な触感を有する不織布が得られることを見出した。
不織布を構成する捲縮性複合繊維の本数に対する不織布を構成する非熱収縮性繊維の本数の割合は、4.0〜12.0であり、好ましくは熱収縮性複合繊維の本数に対して5.0〜8.0である。本数比が4.0以上であると、2以上の捲縮発現繊維が干渉した立体捲縮構造が形成されにくく、立体捲縮が干渉しているとしても干渉の度合い(干渉している長さ)が小さくなり、あるいは一本の捲縮発現繊維に発現した立体捲縮が他の繊維の立体捲縮で干渉されにくくなる。その結果、捲縮塊が発生しにくくなり、触感の低下が抑制される。また、本数比が12.0以下であると、非熱収縮性繊維が適度に固定されることで、立毛が適度に生じ良好な触感が生じるとともに、立毛した単繊維の抜けが抑制され、繊維ウェブの繋がりの低下を抑制し、繊維ウェブの形態を保持しやすくなる。
捲縮性複合繊維は、立体捲縮内(例えば、らせん状の立体捲縮構造)に1本または複数本の非熱収縮性繊維を抱き込んでいる。特に本実施形態の不織布においては、非熱収縮性繊維の割合が大きいためである。これにより、非熱収縮性繊維が固定され、立毛した単繊維の抜けが抑制される。
第3実施形態は、第1実施形態で説明した不織布構成のうち、捲縮性複合繊維の本数に対する非熱収縮性繊維の本数の割合および不織布表面の立毛の長さに着目して特定した不織布である。以下、これらの着目点について主に説明する。
第3実施形態に係る不織布は、
立体捲縮を有する捲縮性複合繊維であって、第1成分と、第1成分の融点Tfよりも高い融点Tfを有する第2成分とを含む捲縮性複合繊維と、
温度120℃、時間15分間、初荷重0.018mN/dtexの条件で測定した乾熱収縮率が20%以下である非熱収縮性繊維とを含み、
不織布を構成する捲縮性複合繊維の本数に対する不織布を構成する非熱収縮性繊維の本数の割合が、4.0〜12.0であり、
構成繊維同士が交絡しており、
(Tf−8)℃での縦方向の寸法変化率および横方向の寸法変化率の平均値が、8%未満であり、
不織布の表面に存在する立毛の長さが0.80×10μm〜1.65×10μmである、不織布である。
不織布の立毛の長さは、0.80×10μm〜1.65×10μmである。立毛の長さが0.80×10μm〜1.65×10μmであると、立毛している構成繊維が適度に長いため、不織布表面に肌が触れた場合に肌当たりが良くふわっとした良好な感触を得ることができる。立毛の長さの測定方法は、実施例に詳細に説明する。
不織布を構成する捲縮性複合繊維の本数に対する不織布を構成する非熱収縮性繊維の本数の割合は、4.0〜12.0であり、好ましくは熱収縮性複合繊維の本数に対して5.0〜8.0である。本数比がこれらの範囲内にあることにより得られる特性等は先に実施の形態2に関連して説明したとおりである。
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計変更が可能である。また、第1〜第3実施形態の特徴点を様々に組み合わせてもよい。例えば、第1実施形態の不織布に関連して説明した構成(例えば、捲縮性複合繊維、非熱収縮性繊維)は、第2実施形態および第3実施形態において実現されていてよい。また、第2実施形態または第3実施形態で説明した特徴は第1実施形態の不織布に含まれていてよい。
(用途)
第1ないし第3実施形態の不織布は種々の用途に使用でき、柔軟さと良好な触感が求められる用途、例えば、皮膚に直接当てて使用する皮膚接触用製品に好ましく使用され、その場合、本実施形態の不織布は、皮膚に接触する面の少なくとも一部を占める。皮膚接触用製品は、例えば、マスク、サポーターおよび包帯等の衛生物品、紙おむつ、生理用ナプキン、およびおりもの用シート等の吸収性物品、化粧料等の液体を含浸させた液体含浸皮膚被覆シート(例えば、フェイスマスク、角質ケアシート、およびデコルテシート等)、使い捨てカイロをはじめとする温熱器具における発熱体の包材、ならびに温湿布および冷湿布をはじめとする各種パップ材の基布である。
例えば、マスクにおいて、各実施形態の不織布はそれのみでマスク本体を構成してよく、あるいは他の不織布との二層構造として、各実施形態の不織布が顔面と接する側に配置されるようにしてよい。吸収性物品の場合には、各実施形態の不織布を表面シートとしてよい。サポーター、包帯、および液体含浸皮膚被覆シート等においては、各実施形態の不織布はそれのみで製品本体を構成してよく、あるいは他の不織布との二層構造として、各実施形態の不織布が皮膚と接する側に配置されるようにしてよい。
以下の繊維を用意した。
(1)熱収縮性複合繊維1
熱収縮性複合繊維1として、第1成分がエチレンとプロピレンとが共重合しているプロピレン共重合体からなり、第2成分がポリプロピレンからなり、第1成分が繊維の周面の長さに対して20%以上露出しており、第1成分と第2成分とが貼り合わされた並列型断面を有する複合繊維であって、繊度が2.2dtexのものを用意した。第1成分と第2成分の複合比は、50/50(容積比)であった。繊維の長さは51mmであった。
第1成分としてのプロピレン共重合体は、融点が140℃、MFRが30g/10分、エチレンの割合が4.78質量%であった(商品名:Y2045GP、プライムポリマー製)。
第2成分としてのポリプロピレンは、融点が160℃であった(商品名:SA03、日本ポリプロ製)。
[140℃繊維収縮率]
熱応力測定機(カネボウエンジニアリング(株)製)を用いて、測定対象の熱収縮性複合繊維1をトータル繊度110dtexの繊維束とし、繊維束を周長が100mmのリング状として測定器に設置した。室温から開始して1分間に1℃の割合で連続して昇温し、140℃のときの繊維収縮率は13.5%であった。
(1%収縮開始温度)
熱応力測定機(カネボウエンジニアリング(株)製)を用いて、測定対象の繊維をトータル繊度110dtexの繊維束とし、繊維束を周長が20mmのリング状として測定器に設置した。室温から開始して、1分間に1℃の割合で連続して昇温したときに、繊維束が1%収縮する温度を測定した。
(2)熱収縮性複合繊維2
熱収縮性複合繊維2は、熱収縮性複合繊維1に対して繊度が3.3dtexであることのみ異なる。なお、熱収縮性複合繊維2の140℃繊維収縮率は11.3%であった。
(3)非熱収縮性繊維1
非熱収縮性繊維1として、融点が160℃であるポリプロピレンから成る、繊度1.0dtexの単一繊維(繊維の長さ:38mm)を用意した。このポリプロピレン単一繊維の温度120℃、時間15分間、初荷重0.018mN/dtexの条件で測定した乾熱収縮率(120℃乾熱収縮率)は0.5%以下であった。120℃乾熱収縮率の決定方法は以下のとおりである。
[120℃乾熱収縮率]
JIS L1015に準じ、つかみ間隔を100mmとし、処理温度120℃、処理時間15分間、初荷重0.018mN/dtexにおける乾熱収縮率を測定した。120℃乾熱収縮率は、以下の式に従って算出した。
120℃乾熱収縮率(%)=[(乾熱処理前の試料の長さ−乾熱処理後の試料の長さ)/(乾熱処理前の試料の長さ)]×100
(実施例1〜3、比較例1〜4)
表1および表2に示す、熱収縮性複合繊維と非熱収縮性複合繊維とを、表1および表2に示す割合で混合して、パラレルカード機を用いて繊維ウェブを作製した。得られた繊維ウェブをニードルパンチ処理に付し、繊維同士を交絡させた。ニードルパンチ処理は、40番手の針(バーブの数:9個)を用いて、針深度を10mmまたは11mmとし、ペネ数が135本/cmとなる条件でニードルパンチ処理を実施した。続いて、表1および表2に示す温度に設定した熱風貫通式熱処理機にて、20秒間熱処理し、熱収縮性複合繊維において立体捲縮を発現させた。搬送速度は、8.5m/minであった。これにより、不織布を得た。
(実施例4〜11)
繊維ウェブの目付、ニードルパンチ処理条件(より具体的には、針深度)および加熱処理条件(より具体的には、加熱温度)の条件をそれぞれ表1に示すとおりとした以外は、実施例2と同様にして、不織布を作製した。
実施例1〜11、および比較例1〜4で得た不織布の測定結果および評価結果を、表1および表2に示す。なお、各測定および各評価は以下の方法に従って実施した。
[不織布の厚さおよびその変化量]
(0.52gf/cmでの厚み)
レーザー厚み計(商品名 ミドルレンジセンサセット LK−G80A キーエンス社製)を用い、不織布の厚みを測定した。具体的には、治具(商品名 ゲージブロック 1mm(セラミック製) 1.57g/1cm×3cm Mitutoyo社製)を測定台に乗せて、ゼロ点補正をした。次いで、治具と測定台との間に測定サンプル(不織布)を置いた。レーザーを治具の表面に照射し、厚みを測定した(測定数n=3)。得られた厚みを0.52gf/cmでの厚みとした。
(3.0gf/cmでの厚み)
厚み測定機(株式会社大栄科学精器製作所製「THICKNESS GAUGE モデル CR−60A」)を用い、不織布に3.0gf/cmの荷重を加えた状態で測定した。得られた厚みを3.0gf/cmでの厚みとした。
(20gf/cmでの厚み)
不織布に加えた荷重を3.0gf/cmから20gf/cmに変更した以外は、3.0gf/cmの荷重を加えた状態での測定方法と同様にして厚みを測定した。得られた厚みを20gf/cmでの厚みとした。
これらの測定値(厚み)を表1および表2に示す。また、より軽い荷重での厚みからより重い荷重での厚みを減じて厚みの変化量を算出した。厚みの変化量を表3および表4に示す。
[不織布の寸法変化率]
先に、「(不織布の構成)」の欄で説明した方法に従って、縦方向および横方向の寸法変化率、ならびに縦方向の寸法変化率と横方向の寸法変化率の平均値を求めた。寸法変化率の測定温度は、熱収縮性複合繊維1、熱収縮性複合繊維2を含む不織布について、いずれも132℃とした。
[熱接着]
不織布の中心点(不織布平面の2つの対角線の交点)を通るように切断面を形成した。形成した断面についてSEM画像を撮影した。SEM画像を観察し、[1]不織布の構成繊維が熱接着しているか、または[2]熱接着しているとしても点接着しているかもしくは[3]熱接着しており接着部が膜状に広がっているかを確認した。
[熱収縮性繊維1本あたりの非収縮性繊維の本数の割合(本数比)]
実施例2を例に挙げて本数比の算出方法を説明する。不織布の目付(79.8g/m)に構成繊維の混率(30%,70%)を乗じて、各構成繊維のみで不織布(便宜的に「構成不織布」と呼ぶ)が形成されていると仮定したときの構成不織布の目付(24g/m,56g/m)をそれぞれ算出した。得られた各構成不織布の目付および各構成繊維の繊度(2.2dtex,1.0dtex)を用いて、各構成不織布が各構成繊維1本で形成されていると仮定したときの、各構成繊維の全長(1.09×10m,5.60×10m)をそれぞれ算出した。各構成繊維の全長を各構成繊維の長さ(51mm,38mm)で割ることにより、各構成繊維の本数(2.14×10本,1.47×10本)をそれぞれ算出した。得られた本数から熱収縮性繊維1本あたりの非収縮性繊維の本数の割合(本数比)(6.87)を算出した。
[立毛の長さ]
立毛の長さは、不織布の断面を撮像し、得られた画像において不織布の界面を決定し、その界面からの長さを立毛の長さとして決定した。
図9を参照して立毛の長さの測長方法を具体的に説明する。図9は、立毛の長さの測定方法を説明するための不織布の模式断面図である。なお、図9では、説明の便宜上、不織布の表面付近のみの断面を示し、捲縮性複合繊維の記載を省略している。まず、測定試料(不織布)を水平な測定ステージ上に設置した。このように測定試料を設置することで、後に得られる画像の横方向が水平方向に相当し、画像の縦方向が鉛直方向に相当する。次いで、図9に示すように、電子顕微鏡(倍率30倍)を用いて不織布1の断面を撮像した。得られた不織布断面の電子顕微鏡写真において、任意の2つの構成繊維の一部が略水平に向き、互いに平行に位置し、かつそれらの構成繊維間の距離が70μm以下となる1対の構成繊維部22(図9中、破線の円で囲まれた箇所)をマーキングした。不織布1表面付近に存在する複数の対の構成繊維部22についてマーキングした。これら複数の構成繊維の対のうち、対を構成する構成繊維部22がそれぞれ略水平な直線上に並ぶ対の群を選択した。この群を構成する対の構成繊維部22間の距離の平均を算出し、これらの平均が60μm以下となる対を最終的に選択した。最終的に選択した対の数が5以上となるようにした(対の数は、図9中では6個である)。対の群が並ぶ直線において、対が両端に位置し最長となる線分を界面2とした。得られた界面2の垂直方向に存在する立毛21の長さを測長した。立毛21の長さは本数単位で測長し、1本の立毛21のうち最長となる長さを立毛21の長さm1,m2とした。図9に示すように複数の立毛21が存在する場合は、その平均値を立毛21の長さm(=(m1+m2)/2)とした。
[アスペクト比]
不織布の断面を撮像し、画像に現れる捲縮性複合繊維(捲縮の状態から非熱収縮性繊維と区別される)の断面の長軸及び短軸を測定し、複数(5以上)の捲縮性複合繊維について、短軸に対する長軸の比をアスペクト比として算出した。代表例として実施例4および実施例10のアスペクト比を算出した。
図5を参照して、アスペクト比の算出方法を説明する。電子顕微鏡を用いて不織布の断面画像において捲縮性複合性繊維の断面の長軸および短軸を測長し、これらを用いてアスペクト比を算出した。断面画像は、不織布の中央点(不織布平面の2つの対角線の交点)を通る切断面を300〜2000倍に拡大したSEM画像であった。画像に現れる複数の捲縮性複合繊維の断面のうち、画像に対して略平行な断面を複数(5以上)選択し、測定対象の断面とした。一つの画像において測定対象の数が5未満となる場合は、別の画像からも測定対象となる捲縮性複合繊維を選択した。
測定対象の断面において、輪郭の任意の二点を結ぶ線分のうち最も長い線分Amaxを長軸としてその長さを測長した。次いで、輪郭の任意の二点を結ぶ線分であって、長軸の中点を通る線分のうち、最も短い線分Aminを短軸としてその長さを測長した。得られた長軸Amaxおよび短軸Aminから長軸短軸比(Amax/Amin)を算出した。これを複数の断面について行い、複数のアスペクト比を算出し、各不織布における捲縮性複合繊維のアスペクト比の範囲および平均値を求めた。
[不織布の触感評価]
不織布の表面をモニター5名が手で触って、柔軟性、滑らかさおよび不織布表面の立毛を、下記の基準に従って評価し、最も多くのモニターにより得られた評価を、その不織布の評価とした。
[柔軟性]
++:触れたときの触感が特に柔軟で、肌へのなじみ(肌の凹凸への追従性)が特によい。
+:触れたときの触感が柔軟で肌へのなじみがよい。
−:触れたとき触感が硬く、肌の凹凸に追従せず、なじみがよくない。
[触感]
++:表面を撫でた時にザラザラとした刺激を感じない。
+:表面を撫でた時にザラザラとした刺激感が少ない。
−:表面を撫でたときにザラザラとした触感がある。
[表面の立毛(立毛立ち)]
不織布を2つの折り曲げ、折り曲げた部分を不織布の平面の垂直方向から肉眼で観察した。
++:表面に立毛が目立ち、肉眼でも容易に確認できる。
+:表面に立毛が目立ち、肉眼でも確認できる。
−:表面の立毛が目立たず、肉眼で確認できてもわずかである。
Figure 2021177019
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図5および図6を参照して、代表例として実施例10および実施例9の熱接着の態様を示す。図5は、実施例10の不織布の断面拡大図(SEM画像図、倍率2000倍)である。図6は実施例9の不織布の拡大断面図(SEM画像、倍率2000倍)である。詳しくは、図5および図6は、捲縮性複合繊維10と非熱収縮性繊維20との接着部30が観察されるように切断された不織布の断面拡大図である。図5の中央に示すように、2つの円状の断面、つまり捲縮性複合繊維20と非熱収縮性繊維10とが接着部30を介して熱接着しているのがわかる。捲縮性複合繊維10は、非熱収縮性繊維20とは異なり、螺旋状に巻回して立体捲縮を発現している。図5および図6に示すように、接着部30では、非熱収縮性繊維20が捲縮性複合繊維10にめりこんで、凹部11を形成している。
不織布の断面または表面の電子顕微鏡写真を撮像し、立体捲縮構造を観察した。代表例として実施例3および比較例2を挙げ、図7および図8を参照して立体捲縮構造の観察結果を述べる。図7は実施例3の不織布の拡大断面図を示す。図8は比較例2の拡大表面図を示す。
実施例3では、図7に示すように、立体捲縮構造13は、捲縮発現繊維12のいくらかが1本以上の非熱収縮性繊維20を抱き込み、図7の下方部でわずかに捲縮発現繊維12が干渉している構造である。このように、立体捲縮構造13は、1本の捲縮発現繊維12ほぼ単独で構成されていた。
これに対して、比較例2では、図8に示すように、立体捲縮構造13は、捲縮発現繊維12が非熱収縮性繊維20を抱き込まず、2本の捲縮発現繊維12が全体的に互いに干渉した構造を有していた。そのため、比較例2の不織布は触感において実施例よりも劣っていた。
不織布の寸法変化率の平均値は、実施例1〜11ではいずれも8%未満であり、比較例1〜4では8%未満または8%以上であった。代表例として実施例2および比較例4の結果を示す。実施例2では縦方向および横方向の寸法変化率はいずれも1.2%であり、それらの平均値は1.2%であった。比較例4では縦方向および横方向の寸法変化率は、それぞれ28.3%および29.0%であり、それらの平均値は、28.6%であった。
熱接着の評価では、実施例1〜11では[1]および[2]のいずれかであり、比較例1〜4では[1]〜[3]のいずれかであった。
不織布の厚みの変化量(6)について、表3および表4に示すように、実施例1〜11は、比較例1〜4に比べ大きくなった。
表2に示すように、比較例1〜4の不織布は、捲縮性複合繊維1と、非熱収縮性繊維1とを含んでいた。捲縮性複合繊維1と非熱収縮性繊維1の質量を合わせて100質量%としたときに、捲縮性複合繊維1の割合が15質量%未満であるか、または45質量%より大きかった。
表1に示すように、実施例1〜11の不織布は、触感および柔軟性の評価結果がいずれも「+」および「++」のいずれかであった。また、熱に対する寸法安定性の評価結果も優れていた。
表2に示すように、比較例2〜4の不織布は、触感、および柔軟性の評価結果のうち少なくとも1つの「‐」であった。また、比較例2〜4の不織布では、熱に対する寸法安定性の評価結果が実施例1〜11に比べ、劣っていた。なお、比較例1の不織布では、触感、および柔軟性の評価結果がいずれも「+」および「++」のいずれかであったが、比較例1においては、不織布の製造中に繊維ウェブが垂れて、不織布の形状を維持できず、不織布の製造が極めて困難であった。
熱収縮性繊維1本あたりの非収縮性繊維の本数の割合(本数比)は、実施例1〜11では4.4〜11.8であり、比較例2〜4では0〜3であった。つまり、実施例1〜11の不織布では、比較例2〜4の不織布に比べ、非熱収縮性繊維の本数比が大きいため、図7〜8を参照して述べたように、熱収縮性複合繊維同士が干渉しにくくなったものと考えられる。なお、比較例1の不織布には熱収縮性複合繊維が含まれないため、本数比を算出することができなかった。
実施例4のアスペクト比は、1.01〜1.18(測定数n=5,平均値1.10)であった。実施例10のアスペクト比は、1.02〜2.12(測定数n=7,平均値1.46)であった。実施例4および10のアスペクト比は、特定の数値範囲(1.0〜2.2)に包含されるものであり、その平均値も特定の数値範囲(1.0〜1.6)に包含されるものであった。また、実施例2と同様に実施例4および10の不織布を電子顕微鏡で観察したところ、捲縮性複合繊維が1本または複数本の非熱収縮性繊維を抱き込んでいることが確認された。
立毛の長さは、実施例1〜11では、961.9μm〜1554.1μmであり、比較例2〜4では、402.4μm〜761.5μmであった。実施例1〜11の不織布は、比較例2〜4の不織布に比べ、立毛が長かった。なお、比較例1では立毛の長さが1709.5μmであったが、比較例1の不織布には熱収縮性複合繊維が含まれないため、非熱収縮性繊維が束縛されず立毛が長くなったものと考えられる。
以上から、実施例の不織布は、比較例の不織布に比べ、触感、柔軟性および熱に対する寸法安定性が優れ、製造工程性にも優れていることが明らかである。
本発明は以下の態様のものを含む。
(態様1)
立体捲縮を有する捲縮性複合繊維であって、第1成分と、前記第1成分の融点Tfよりも高い融点Tfを有する第2成分とを含む捲縮性複合繊維と、
温度120℃、時間15分間、初荷重0.018mN/dtexの条件で測定した乾熱収縮率が20%以下である非熱収縮性繊維とを含み、
前記捲縮性複合繊維と前記非熱収縮性繊維の質量を合わせて100質量%としたときに、前記捲縮性複合繊維の割合が15質量%以上45質量%以下であり、
構成繊維同士が交絡しており、
(Tf−8)℃での縦方向の寸法変化率および横方向の寸法変化率の平均値が、8%未満であり、
前記構成繊維同士が熱接着していないか、または熱接着しており、
前記構成繊維同士が熱接着している場合、前記構成繊維同士が熱接着した接着部を構成する捲縮性複合繊維を、不織布から単独で取り出したときに、該捲縮性複合繊維の表面に前記接着部に由来する凹部を有する、不織布。
(態様2)
立体捲縮を有する捲縮性複合繊維であって、第1成分と、前記第1成分の融点Tfよりも高い融点Tfを有する第2成分とを含む捲縮性複合繊維と、
温度120℃、時間15分間、初荷重0.018mN/dtexの条件で測定した乾熱収縮率が20%以下である非熱収縮性繊維とを含み、
前記捲縮性複合繊維と前記非熱収縮性繊維の質量を合わせて100質量%としたときに、前記捲縮性複合繊維の割合が15質量%以上45質量%以下であり、
構成繊維同士が交絡しており、
(Tf−8)℃での縦方向の寸法変化率および横方向の寸法変化率の平均値が、8%未満であり、
前記構成繊維同士が熱接着していないか、または熱接着しており、
前記構成繊維同士が熱接着している場合、不織布断面を300〜2000倍の電子顕微鏡で観察したときに、接着点において前記構成繊維のいずれか一方が他方にめりこんで、前記他方の構成繊維にへこみを生じさせている、不織布。
(態様3)
立体捲縮を有する捲縮性複合繊維であって、第1成分と、前記第1成分の融点Tfよりも高い融点Tfを有する第2成分とを含む捲縮性複合繊維と、
温度120℃、時間15分間、初荷重0.018mN/dtexの条件で測定した乾熱収縮率が20%以下である非熱収縮性繊維とを含み、
前記捲縮性複合繊維と前記非熱収縮性繊維の質量を合わせて100質量%としたときに、前記捲縮性複合繊維の割合が15質量%以上45質量%以下であり、
構成繊維同士が交絡しており、
(Tf−8)℃での縦方向の寸法変化率および横方向の寸法変化率の平均値が、8%未満であり、
前記構成繊維同士が熱接着していないか、または熱接着しており、
前記構成繊維同士が熱接着している場合、前記構成繊維同士が点状に熱接着した点接着部を有する、不織布。
(態様4)
立体捲縮を有する捲縮性複合繊維であって、第1成分と、前記第1成分の融点Tfよりも高い融点Tfを有する第2成分とを含む捲縮性複合繊維と、
温度120℃、時間15分間、初荷重0.018mN/dtexの条件で測定した乾熱収縮率が20%以下である非熱収縮性繊維とを含み、
前記不織布を構成する前記捲縮性複合繊維の本数に対する前記不織布を構成する前記非熱収縮性繊維の本数の割合が、4.0〜12.0であり、
(Tf−8)℃での縦方向の寸法変化率および横方向の寸法変化率の平均値が、8%未満であり、
前記捲縮性複合繊維は、前記立体捲縮内に1本または複数本の前記非熱収縮性繊維を抱き込んでおり、
前記捲縮性複合繊維の断面における短軸の長さに対する長軸の長さの比で表されるアスペクト比が1.0〜2.2である、不織布。
(態様5)
立体捲縮を有する捲縮性複合繊維であって、第1成分と、前記第1成分の融点Tfよりも高い融点Tfを有する第2成分とを含む捲縮性複合繊維と、
温度120℃、時間15分間、初荷重0.018mN/dtexの条件で測定した乾熱収縮率が20%以下である非熱収縮性繊維とを含み、
前記不織布を構成する前記捲縮性複合繊維の本数に対する前記不織布を構成する前記非熱収縮性繊維の本数の割合が、4.0〜12.0であり、
構成繊維同士が交絡しており、
(Tf−8)℃での縦方向の寸法変化率および横方向の寸法変化率の平均値が、8%未満であり、
前記不織布の表面に存在する立毛の長さが0.80×10μm〜1.65×10μmである、不織布。
(態様6)
前記不織布を構成する前記捲縮性複合繊維の本数に対する前記不織布を構成する前記非熱収縮性繊維の本数の割合が、4.0〜12.0である、態様1ないし3のいずれかに記載の不織布。
(態様7)
前記捲縮性複合繊維は、前記立体捲縮内に1本または複数本の前記非熱収縮性繊維を抱き込んでいる、態様1ないし3および5ないし6のいずれかに記載の不織布。
(態様8)
前記捲縮性複合繊維の断面における短軸の長さに対する長軸の長さの比で表されるアスペクト比が1.0〜2.2である、態様1ないし3および5ないし7のいずれかに記載の不織布。
(態様9)
前記不織布の表面に存在する立毛の長さが0.80×10μm〜1.65×10μmである、態様1ないし4および6ないし8のいずれかに記載の不織布。
(態様10)
前記捲縮性複合繊維と前記非熱収縮性繊維の質量を合わせて100質量%としたときに、前記非熱収縮性繊維の割合が55質量%以上85質量%以下である、態様1ないし9のいずれかに記載の不織布。
(態様11)
前記捲縮性複合繊維は、前記第1成分が、融点が145℃以下である、プロピレン共重合体を50質量%以上含み、前記第1成分が繊維の周面の長さに対して20%以上の長さで露出している複合繊維である、態様1ないし10のいずれかに記載の不織布。
(態様12)
前記捲縮性複合繊維の第2成分が、融点が150℃以上のポリプロピレンを50質量%以上含む、態様11に記載の不織布。
(態様13)
前記捲縮性複合繊維の繊維断面は、第1成分が鞘成分であり、第2成分が芯成分であって、第2成分の重心位置が繊維の重心位置からずれている偏心芯鞘型断面、または第1成分と第2成分が貼り合わされた並列型断面である、態様1ないし12のいずれかに記載の不織布。
(態様14)
前記非熱収縮性繊維がポリプロピレンまたはポリエチレンテレフタレートからなる単一繊維である、態様1ないし13のいずれかに記載の不織布。
(態様15)
第1成分と、前記第1成分の融点Tfよりも高い融点Tfを有する第2成分とを含む熱収縮性複合繊維と、温度120℃、時間15分間、初荷重0.018mN/dtexの条件で測定した乾熱収縮率が20%以下である非熱収縮性繊維とを、前記熱収縮性複合繊維と前記非熱収縮性繊維とを合わせて100質量%としたときに、前記熱収縮性複合繊維の割合が15質量%以上45質量%以下となるように混合して、繊維ウェブを作製すること、
前記繊維ウェブに機械的な交絡処理を施して、前記繊維ウェブを構成する繊維同士を交絡すること、
前記交絡処理後、熱処理を実施すること、
を含み、
前記熱処理を、前記熱処理後に得られる不織布において、(Tf−8)℃での縦方向の寸法変化率および横方向の寸法変化率の平均値が、8%未満となるように実施する、
不織布の製造方法。
(態様16)
前記熱収縮性複合繊維において、前記第1成分が、融点が130℃以上145℃以下である、エチレンが共重合したプロピレン共重合体を含み、前記第1成分が繊維の周面の長さに対して20%以上の長さで露出している複合繊維であり、
前記熱処理を、100℃以上150℃未満で実施する、
態様15に記載の不織布の製造方法。
(態様17)
態様1ないし14のいずれかに記載の不織布が、皮膚に接触する面の少なくとも一部を占める、皮膚接触用製品。
本発明の不織布は、柔軟で、良好な触感を示し、かつ嵩高であるから、マスク等の衛生物品、および紙おむつ等の吸収性物品等の皮膚接触用製品において、皮膚に接触する面の少なくとも一部を構成する部材に適している。
1 不織布
10 捲縮性複合繊維
11 凹部
12 捲縮発現繊維
13 立体捲縮構造
20 非熱収縮性繊維
21 立毛
30 接着部(点接着部)

Claims (17)

  1. 立体捲縮を有する捲縮性複合繊維であって、第1成分と、前記第1成分の融点Tfよりも高い融点Tfを有する第2成分とを含む捲縮性複合繊維と、
    温度120℃、時間15分間、初荷重0.018mN/dtexの条件で測定した乾熱収縮率が20%以下である非熱収縮性繊維とを含み、
    前記捲縮性複合繊維と前記非熱収縮性繊維の質量を合わせて100質量%としたときに、前記捲縮性複合繊維の割合が15質量%以上45質量%以下であり、
    構成繊維同士が交絡しており、
    (Tf−8)℃での縦方向の寸法変化率および横方向の寸法変化率の平均値が、8%未満であり、
    前記構成繊維同士が熱接着していないか、または熱接着しており、
    前記構成繊維同士が熱接着している場合、前記構成繊維同士が熱接着した接着部を構成する捲縮性複合繊維を、不織布から単独で取り出したときに、該捲縮性複合繊維の表面に前記接着部に由来する凹部を有する、不織布。
  2. 立体捲縮を有する捲縮性複合繊維であって、第1成分と、前記第1成分の融点Tfよりも高い融点Tfを有する第2成分とを含む捲縮性複合繊維と、
    温度120℃、時間15分間、初荷重0.018mN/dtexの条件で測定した乾熱収縮率が20%以下である非熱収縮性繊維とを含み、
    前記捲縮性複合繊維と前記非熱収縮性繊維の質量を合わせて100質量%としたときに、前記捲縮性複合繊維の割合が15質量%以上45質量%以下であり、
    構成繊維同士が交絡しており、
    (Tf−8)℃での縦方向の寸法変化率および横方向の寸法変化率の平均値が、8%未満であり、
    前記構成繊維同士が熱接着していないか、または熱接着しており、
    前記構成繊維同士が熱接着している場合、不織布断面を300〜2000倍の電子顕微鏡で観察したときに、接着点において前記構成繊維のいずれか一方が他方にめりこんで、前記他方の構成繊維にへこみを生じさせている、不織布。
  3. 立体捲縮を有する捲縮性複合繊維であって、第1成分と、前記第1成分の融点Tfよりも高い融点Tfを有する第2成分とを含む捲縮性複合繊維と、
    温度120℃、時間15分間、初荷重0.018mN/dtexの条件で測定した乾熱収縮率が20%以下である非熱収縮性繊維とを含み、
    前記捲縮性複合繊維と前記非熱収縮性繊維の質量を合わせて100質量%としたときに、前記捲縮性複合繊維の割合が15質量%以上45質量%以下であり、
    構成繊維同士が交絡しており、
    (Tf−8)℃での縦方向の寸法変化率および横方向の寸法変化率の平均値が、8%未満であり、
    前記構成繊維同士が熱接着していないか、または熱接着しており、
    前記構成繊維同士が熱接着している場合、前記構成繊維同士が点状に熱接着した点接着部を有する、不織布。
  4. 立体捲縮を有する捲縮性複合繊維であって、第1成分と、前記第1成分の融点Tfよりも高い融点Tfを有する第2成分とを含む捲縮性複合繊維と、
    温度120℃、時間15分間、初荷重0.018mN/dtexの条件で測定した乾熱収縮率が20%以下である非熱収縮性繊維とを含み、
    前記不織布を構成する前記捲縮性複合繊維の本数に対する前記不織布を構成する前記非熱収縮性繊維の本数の割合が、4.0〜12.0であり、
    構成繊維同士が交絡しており、
    (Tf−8)℃での縦方向の寸法変化率および横方向の寸法変化率の平均値が、8%未満であり、
    前記捲縮性複合繊維は、前記立体捲縮内に1本または複数本の前記非熱収縮性繊維を抱き込んでおり、
    前記捲縮性複合繊維の断面における短軸の長さに対する長軸の長さの比で表されるアスペクト比が1.0〜2.2である、不織布。
  5. 立体捲縮を有する捲縮性複合繊維であって、第1成分と、前記第1成分の融点Tfよりも高い融点Tfを有する第2成分とを含む捲縮性複合繊維と、
    温度120℃、時間15分間、初荷重0.018mN/dtexの条件で測定した乾熱収縮率が20%以下である非熱収縮性繊維とを含み、
    前記不織布を構成する前記捲縮性複合繊維の本数に対する前記不織布を構成する前記非熱収縮性繊維の本数の割合が、4.0〜12.0であり、
    構成繊維同士が交絡しており、
    (Tf−8)℃での縦方向の寸法変化率および横方向の寸法変化率の平均値が、8%未満であり、
    前記不織布の表面に存在する立毛の長さが0.80×10μm〜1.65×10μmである、不織布。
  6. 前記不織布を構成する前記捲縮性複合繊維の本数に対する前記不織布を構成する前記非熱収縮性繊維の本数の割合が、4.0〜12.0である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の不織布。
  7. 前記捲縮性複合繊維は、前記立体捲縮内に1本または複数本の前記非熱収縮性繊維を抱き込んでいる、請求項1ないし3および5ないし6のいずれか1項に記載の不織布。
  8. 前記捲縮性複合繊維の断面における短軸の長さに対する長軸の長さの比で表されるアスペクト比が1.0〜2.2である、請求項1ないし3および5ないし7のいずれか1項に記載の不織布。
  9. 前記不織布の表面に存在する立毛の長さが0.80×10μm〜1.65×10μmである、請求項1ないし4および6ないし8のいずれか1項に記載の不織布。
  10. 前記捲縮性複合繊維と前記非熱収縮性繊維の質量を合わせて100質量%としたときに、前記非熱収縮性繊維の割合が55質量%以上85質量%以下である、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の不織布。
  11. 前記捲縮性複合繊維は、前記第1成分が、融点が145℃以下である、プロピレン共重合体を50質量%以上含み、前記第1成分が繊維の周面の長さに対して20%以上の長さで露出している複合繊維である、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の不織布。
  12. 前記捲縮性複合繊維の第2成分が、融点が150℃以上のポリプロピレンを50質量%以上含む、請求項11に記載の不織布。
  13. 前記捲縮性複合繊維の繊維断面は、第1成分が鞘成分であり、第2成分が芯成分であって、第2成分の重心位置が繊維の重心位置からずれている偏心芯鞘型断面、または第1成分と第2成分が貼り合わされた並列型断面である、請求項1ないし12のいずれか1項に記載の不織布。
  14. 前記非熱収縮性繊維がポリプロピレンまたはポリエチレンテレフタレートからなる単一繊維である、請求項1ないし13のいずれか1項に記載の不織布。
  15. 第1成分と、前記第1成分の融点Tfよりも高い融点Tfを有する第2成分とを含む熱収縮性複合繊維と、温度120℃、時間15分間、初荷重0.018mN/dtexの条件で測定した乾熱収縮率が20%以下である非熱収縮性繊維とを、前記熱収縮性複合繊維と前記非熱収縮性繊維とを合わせて100質量%としたときに、前記熱収縮性複合繊維の割合が15質量%以上45質量%以下となるように混合して、繊維ウェブを作製すること、
    前記繊維ウェブに機械的な交絡処理を施して、前記繊維ウェブを構成する繊維同士を交絡すること、
    前記交絡処理後、熱処理を実施すること、
    を含み、
    前記熱処理を、前記熱処理後に得られる不織布において、(Tf−8)℃での縦方向の寸法変化率および横方向の寸法変化率の平均値が、8%未満となるように実施する、
    不織布の製造方法。
  16. 前記熱収縮性複合繊維において、前記第1成分が、融点が130℃以上145℃以下である、エチレンが共重合したプロピレン共重合体を含み、前記第1成分が繊維の周面の長さに対して20%以上の長さで露出している複合繊維であり、
    前記熱処理を、100℃以上150℃未満で実施する、
    請求項15に記載の不織布の製造方法。
  17. 請求項1ないし14のいずれか1項に記載の不織布が、皮膚に接触する面の少なくとも一部を占める、皮膚接触用製品。
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