JP2018118548A - 乗物用シート - Google Patents
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Description
シートクッション4は、図2を参照して、上述の基本構成4F,4P,4Sと、複数の保持体11〜14と、面状体20を備えている(各部材の詳細は後述)。そしてシートクッション4においては、シートパッド4Pを、後述するように枠状のシートフレーム4F上に配設してシートカバー4Sで被覆する。このときシートフレーム4Fの枠内には、各保持体11〜14が取付けられており、これら各保持体11〜14に保持されている面状体20によって、シートパッド4Pが裏側から支持されている。本実施例では、後述する織物製の面状体20を用いることにより、乗員着座時などにおいてシートパッド4Pを面状体20が適度に伸縮しながら支持することができる。さらに面状体20には、後述する袋織組織の各挿通部21,22が設けられている。そして各挿通部21(22)に枠状体の一部11、12(13,14)が取付けられるのであるが、この種の構成においては、袋織組織の各挿通部21,22に、後述する図3の第一構成糸31の減数に伴う過度の目開き(第一構成糸同士の離間)が生ずることが懸念される。そこで本実施例では、後述の構成にて、織物製の面状体20において、袋織組織で構成された各挿通部21,22における過度の目開きを極力阻止することとした。以下、各構成について詳述する。
シートカバー4Sは、図2を参照して、シートパッド4Pを被覆可能な袋状の部材であり、例えば布帛(織物,編物,不織布)や皮革(天然皮革,合成皮革)で構成できる。またシートパッド4Pは、シート外形をなす部材であり、例えばポリウレタンフォーム(密度:10kg/m3〜60kg/m3)などの発泡樹脂で構成できる。そしてシートフレーム4Fは、上方視で略矩形の金属枠体であり、フロントフレーム4aと、一対のサイドフレーム4bと、補強フレーム4cと、リアフレーム4dを有する。フロントフレーム4aは、シートフレーム前部を構成する平板状の部材である。また一対のサイドフレーム4bは、それぞれシートフレーム側部を構成する平板状の部材であり、シート左右で互いに対面状に配置する。また補強フレーム4cは、シート幅方向に長尺なパイプ状の部材であり、一対のサイドフレーム4bの前部側に橋渡し状に設けられている。この補強フレーム4cは、本発明におけるシートフレームの枠内の一辺を構成している。またリアフレーム4dは、シート幅方向に長尺なパイプ状の部材であり、一対のサイドフレーム4bの後部でこれらの間に橋渡し状に設けられている。そして補強フレーム4cは、フロントフレーム4aの近傍に配置されて、リアフレーム4dから前後方向に適宜の間隔で離間しており、これら両フレーム4c,4dの間に後述する面状体20が配設されることとなる。
複数の保持体(第一保持体11〜第四保持体14)は、図2及び図3を参照して、それぞれ後述の面状体20を保持しつつシートフレーム4Fの補強フレーム4cとリアフレーム4dに取付けられる部材である。第一保持体11と第二保持体12は、本発明の保持体に相当する部材であり、略同一の基本構成を有して、面状体20の前端部に左右対称となるように配置される。例えば右側に配置される第一保持体11は、シート幅方向に延長している棒状の部材であり、左右一対の掛止部11a,11bを有している。右側の掛止部11aは、略逆U字状をなすように上方に湾曲している部位であり、第一保持体11の右端から前方に向けて突出している。また左側の掛止部11bは、略逆U字状をなすように上方に湾曲している部位であり、第一保持体11の左端から前方に向けて突出している。そして各掛止部11a,11bは、第一保持体11を後述の面状体20に取付けた状態において、それぞれ前側に向けて突出して補強フレーム4cに上方から掛止可能な位置に配置される。また左側に配置される第二保持体12も、シート幅方向に延長している棒状の部材であり、左右一対の掛止部12a,12bを有している。
面状体20は、図2及び図3を参照して、シートフレーム4Fの枠内に配置するシートパッド4Pを裏側から支持する面材であり、一対の挿通部21,22と、本体部24と、一対の末端部26,28と、融着部40を有している。この面状体20は、無縫製の織物(詳細後述)で構成された上面視で略矩形の面材であり、図3を参照して、前縁20aと後縁20bと右縁20cと左縁20dを有している。ここで前縁20aは、シートフレーム4Fの枠内に面状体20が取付けられている状態を基準として、面状体20の前端をなして左右に延長している縁である。また同状態を基準として、後縁20bは、面状体20の後端をなして左右に延長している縁であり、右縁20cは、面状体20の右端をなして前後に延長している縁であり、左縁20dは、面状体20の左端をなして前後に延長している縁である。
一対の挿通部(第一挿通部21,第二挿通部22)は、図3を参照して、それぞれ対応する保持体11〜14を挿通可能な筒状の部位である。これら各挿通部21,22は、二重織組織の一種である袋織組織で形成されており、図4に示すように後述する一対の一重組織51,52で構成されている。そして第一挿通部21は、第一保持体11と第二保持体12を挿通可能な部位であり、面状体20の前縁20a付近に設けられて左右方向に延長している。この第一挿通部21のシート幅方向における略中央には、前側に開口している第一開口部21aが設けられており、この第一開口部21aからは、対応する保持体11,12の一部(掛止部11b,12a)を露出させておくことができる。また第二挿通部22は、第三保持体13と第四保持体14を挿通可能な部位であり、面状体20の後縁20b付近に設けられて左右方向に延長している。この第二挿通部22のシート幅方向における略中央には、後側に開口している第二開口部22aが設けられており、この第二開口部22aからは、対応する保持体13,14の一部(側枠部13d,14c)を露出させておくことができる。
本体部24は、図3を参照して、一対の挿通部21,22の間に配置されている一重組織部分であり、実質的にシートパッド4Pを下支えすることができる。この本体部24は、着座側から押圧されたシートパッド4Pを適度に撓みながら受け止める必要上、適度な伸縮性を有していることが望ましい。また一対の末端部(前側末端部26,後側末端部28)は、それぞれ対応する挿通部21,22よりもシートフレーム4F側に配置されている一重組織部分である。すなわち前側末端部26は、第一挿通部21から前方に延長している一重組織部分であり、面状体20の前縁20aをなして第一挿通部21よりも補強フレーム4c側に配置されている。また後側末端部28は、第二挿通部22から後方に延長している一重組織部分であり、面状体20の後縁20bをなして第二挿通部22よりもリアフレーム4d側に配置されている。
面状体20の製織に際しては、図3及び図4を参照して、後述する複数の第一構成糸31と複数の第二構成糸32を交差状に適宜交絡させて織地を形成する(図3では、便宜上、各構成糸自体ではなく、各構成糸の向きを示す矢線を図示する)。この面状体20の製織では、経糸としての第一構成糸31を整経したのち、緯糸としての第二構成糸32を打ち込むことで、一重組織の本体部24及び各末端部26,28と、袋織組織の各挿通部21,22を順次形成していく。この面状体20の織組織として、基本組織(平織,斜文織,朱子織)やその変化組織を例示できる。本実施例では、シートフレーム4Fの枠内に面状体20が配置されている状態を基準として、各第一構成糸31が、左右方向を向いて補強フレーム4cに沿って配置される。また各第二構成糸32が、前後方向を向いて各第一構成糸31に対して交差状(本実施例では略直交方向)に配置される。
ここで各構成糸31,32として、動物系又は植物系の天然繊維、合成繊維又はこれらの混紡繊維の糸(通常糸Y1)を適宜用いることができる。合成繊維として、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、セルロース系繊維又はこれらの混紡繊維のフィラメントを例示できる。なかでもポリエステル系繊維(ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリトリメチレンテレフタレート(PTT),ポリブチレンテレフタレート(PBT),ポリ乳酸など)のフィラメントや、ポリアミド系繊維(ナイロン6,ナイロン66など)のフィラメントは、使用時の耐久性に優れるため通常糸Y1として好適に使用できる。そして通常糸Y1の繊度(太さ)は特に限定しないが、例えば30dtex〜3000dtex程度に設定できる。
本体部24の製織に際しては、各構成糸31,32を通常糸Y1としてもよいが、本体部24に好適な伸縮性を持たせるべく、図4に示すように第二構成糸32を高伸縮糸Y2とすることが望ましい。こうすることで乗員着座時のシートパッド4Pの荷重によって、第二構成糸32としての高伸縮糸Y2が前後方向に適度に伸長することにより、本体部24がスムーズに下方に撓み変形することとなる。そして面状体20においては、全ての第二構成糸32を高伸縮糸Y2としてもよく、一部の第二構成糸32だけを高伸縮糸Y2とすることもできる。例えば本体部24の右縁20cと左縁20d付近は、シート幅方向における本体部24の中央部分に比してあまり撓み変形させる必要がない。このため面状体20の中央部分の第二構成糸32を高伸縮糸Y2で構成し、面状体20の右縁20cと左縁20d付近の第二構成糸32を通常糸Y1で構成することもできる。
図3に示す各挿通部21,22の製織に際しては、各挿通部21,22をなしている部分を、図4に示すように袋織組織で形成する。ここで各挿通部21,22の基本構成は略同一であることから、専ら第一挿通部21を一例に詳細を説明する。この袋織組織からなる第一挿通部21では、図4を参照して、一対の一重組織(表側一重組織51,裏側一重組織52)が重なるように配置されている。そして表側一重組織51と裏側一重組織52では、本体部24に比して第一構成糸31(経糸)の本数が半減することを考慮して、第一挿通部21の全ての第一構成糸31を、本体部24の第一構成糸31よりも太くしている。すなわち本実施例では、本体部24の全ての第一構成糸31を通常糸Y1とし、第一挿通部21の全ての第一構成糸31を相対的に太い高繊度の他の通常糸YTとしている。そして他の通常糸YTと通常糸Y1は同材質であるとともに、他の通常糸YTの繊度は、通常糸Y1の繊度の概ね2倍に設定されている(図4では、便宜上、他の通常糸の太さを誇張して図示している)。
ここで面状体20の単位面積当たりの重量で示される目付量(mg/cm2)は、面状体20に求められる性能(強度性、耐久性、意匠性など)に応じて適宜設定される。そして各挿通部21,22の目付量は、本体部24の目付量に対して極端に減少しないように設定することが好ましい。例えば本体部24の目付量を1とした場合に、各挿通部21,22の第一構成糸31を本体部24の第一構成糸31よりも太くして、第一挿通部21と第二挿通部22の目付量をそれぞれ2/3以上に設定することが好ましい。このように各挿通部21,22の目付量を調整して本体部24に比して第一構成糸量が極端に減少しないように調整することで、各挿通部21,22における過度の目開きをより確実に阻止できる。なお各挿通部21,22と本体部24の目付量は、これら各部の平均目付量で規定することができる。例えば本体部24の任意の位置から複数(好ましくは3以上)の試験サンプルを得る。そして試験サンプルごとに目付量を算出し、これら目付量の平均値を本体部24の目付量とすることができる。
図3に示す各末端部26,28の製織に際しては、第一構成糸31を通常糸Y1としてもよいが、図4に示すように第一構成糸31の少なくとも一部を融着糸Y3とすることが望ましい。そして面状体20の仕上げ工程時の加熱によって融着糸Y3を溶融固化させて融着部40を形成し、この融着部40によって、各末端部26,28の構成糸同士を融着しておく。そして各末端部26,28の融着部40にて、各構成糸31,32の目開きや第一構成糸31の滑落を防止又は低減することにより、各挿通部21,22のシートフレーム側の端部がしっかりと閉じられた状態とされる。こうすることで各挿通部21,22における各保持体11〜14の取付け安定性をより向上させることができる。ここで各末端部26,28における融着糸Y3の配置位置や配置本数は特に限定しないが、融着糸Y3を、図4に示すように表側一重組織51と裏側一重組織52を連結している末端部部分(JP)に配置することが特に好ましい。このように融着糸Y3を、各挿通部21,22の閉じ目となる箇所に配置しておくことにより、各挿通部21,22をより確実にしっかりと閉じておくことができる。なお熱処理にて、融着糸Y3を全て溶融させて不定形状とすることもできるが、融着糸Y3を部分的に溶融させるなどして糸としての形状を適度に維持しておくこともできる。なお各末端部26,28の目付量は特に限定しないが、典型的には本体部24と概ね同一に設定することができ、また各挿通部21,22と概ね同一に設定することもできる。
図2及び図3を参照して、各保持体11〜14に面状体20を取付けたのち、この保持体11〜14を、後述するようにシートフレーム4Fの適宜の位置に取付ける。この種のシート構成では、伸縮性に優れる面状体20を各保持体11〜14に簡便に取付けておくことが望まれる。そこで本実施例では、面状体20が、上述の通り無縫製の織物であるとともに、筒状の第一挿通部21と第二挿通部22を有している。そこで図3を参照して、第一保持体11と第二保持体12を、それぞれ面状体20の第一挿通部21に挿通しつつ左右対称となるように配置する。こうすることで各保持体11,12に面状体20の前側を、縫製作業を要することなく取付けることができる。そして右側の第一保持体11は、第一挿通部21右側に挿通された状態となり、さらに右端の掛止部11aが第一挿通部21の右端から露出するとともに、左側の掛止部11bが第一開口部21aから露出する。また左側の第二保持体12は、第一挿通部21左側に挿通された状態となり、さらに右端の掛止部12aが第一開口部21aから露出するとともに、左側の掛止部12bが第一挿通部21の左端から露出する。
図2を参照して、乗員着座時においては、シートパッド4Pにて乗員を弾性的に支持するとともに、このシートパッド4Pの荷重を、織物製の面状体20が適度に撓みながら受け止める。このとき図4を参照して、乗員着座時のシートパッド4Pの荷重によって、前後方向に延長する第二構成糸32としての高伸縮糸Y2が適度に伸長することにより、本体部24がスムーズに下方に撓み変形することとなる。このため本実施例では、織物製の面状体20によって、シートパッド4Pが乗員臀部とともに過度に沈み込むことが好適に阻止され、尻下がり量を想定内に収めることが可能となる。
ここで挿通部の構成は、上述の構成のほか、各種の構成を取り得る。例えば本変形例の第一挿通部21においても、図5に示す表側一重組織51と、裏側一重組織(図示省略)が重なるように配置されている。そして表側一重組織51と裏側一重組織では、本体部に比して第一構成糸31の本数が少なくなることを考慮して、第一挿通部21の第一構成糸31を、本体部の第一構成糸よりも太くする。このとき本変形例では、第一挿通部21の第一構成糸31に、二本の通常糸Y1a,Y1bを撚り合わせた撚糸を用いて相対的に太くしておく。これら二本の通常糸Y1a,Y1bは、それぞれ実施例1の図4に示す通常糸Y1と同一繊度の糸である。そして第一挿通部21の織製に際しては、第一構成糸31をなしている二本の通常糸Y1a,Y1bが第二構成糸32に適宜交絡した絡み組織を形成する。このように第一挿通部21の第一構成糸31を、相対的に太い二本の通常糸Y1a,Y1bの撚糸とし、さらに第一挿通部21を絡み組織で構成することにより、各挿通部21,22における過度の目開きを好適に阻止することができる。
4 シートクッション
6 シートバック
8 ヘッドレスト
9a アッパレール
9b ロアレール
4S シートカバー
4P シートパッド
4F シートフレーム
4a フロントフレーム
4b サイドフレーム
4c 補強フレーム(本発明のシートフレームの枠内の一辺)
4d リアフレーム
11 第一保持体
12 第二保持体
13 第三保持体
14 第四保持体
20 面状体
20a 前縁
20c 右縁
20d 左縁
20b 後縁
21 第一挿通部
21a 第一開口部
22 第二挿通部
22a 第二開口部
24 本体部
26 前側末端部
28 後側末端部
31 第一構成糸
32 第二構成糸
40 融着部
51 表側一重組織
52 裏側一重組織
Y1 通常糸
Y2 高伸縮糸
Y3 融着糸
YT 他の通常糸
Claims (3)
- シート骨格をなす枠状のシートフレームと、乗員を弾性的に支持可能なシートパッドと、前記シートフレームの枠内に配置する前記シートパッドを裏側から支持している面状体と、前記面状体を保持した状態で前記シートフレームに取付けられている保持体とを備えた乗物用シートにおいて、
前記面状体が、前記シートフレームの枠内の一辺に沿って配置されている第一構成糸と、前記第一構成糸に交差状に配置されている第二構成糸とが交絡状態とされて構成された織物であるとともに、前記シートパッドを支持可能な一重組織の本体部と、前記保持体の少なくとも一部が挿通されている袋織組織の挿通部とを有し、
前記挿通部に配置された第一構成糸が、前記本体部に配置された第一構成糸よりも太くされている乗物用シート。 - 前記本体部の目付量を1とした場合において、前記挿通部に配置されている第一構成糸を、前記本体部に配置されている第一構成糸よりも太くすることにより、前記挿通部の目付量を2/3以上とした請求項1に記載の乗物用シート。
- 前記挿通部に配置されている全ての第一構成糸が、前記本体部に配置されている第一構成糸よりも高繊度である請求項1又は2に記載の乗物用シート。
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