JP2018115378A - W−Cr基合金またはそれにより作製された金型、電極または押出ダイス - Google Patents

W−Cr基合金またはそれにより作製された金型、電極または押出ダイス Download PDF

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Abstract

【課題】従来の焼結W基合金製の、アルミニウム合金用ダイキャスト金型およびガラスレンズ成形用金型の周辺部材は、真空焼結のためコストがかかり、また、黄銅の棒材成形用熱間押出しダイスは割れやすかった。
【解決手段】W−Ni−Fe系合金にCrおよび必要によりNb、Ta、Tiの3種のうち1種以上を適当量添加し、Arの焼結雰囲気中における微量のO量を調節することで、金属間化合物または酸化物による分散強化、および酸素による固溶強化により、強度を向上させたW−Cr基合金とする。
【選択図】図2

Description

本発明は、W−Cr基合金、またはそれを用いたアルミニウム合金製の各種部品の製造に用いられるダイキャスト金型、および黄銅などの熱間押出しダイス、レンズ金型の周辺部材、S45Cやステンレス等の電気加熱鍛造で用いる台電極などの工具に関する。
アルミニウム合金製の各種部品の製造に用いられるダイキャスト金型、黄銅などの棒材の熱間押出しダイス、ガラスレンズ成形用の金型の周辺部材、S45Cおよびステンレス等用の電気加熱鍛造で用いる台電極などに使用される素材には、高温での機械的性質と耐酸化性に優れることなどが要求され、本発明者らが発明した新しいW基合金が用いられている(特許文献1〜3)。
特開2002−275570号公報 特開2007−270339号公報 特開2011−246797号公報
Max Hansen,Kurt Anderko:Constitution of Binary Alloys,Second Edition,McGraw−Hill Book Company,Inc.,1958,p.570〜571 American Ceramic Society:Phase Equilibria Diagrams Database,Version 4.0,2014,6462−A−EC−162−A American Ceramic Society:Phase Equilibria Diagrams Database,Version 4.0,2014,4229−A American Ceramic Society:Phase Equilibria Diagrams Database,Version 4.0,2014,10921−B American Ceramic Society:Phase Equilibria Diagrams Database,Version 4.0,2014,5067−A,11671−A Max Hansen,Kurt Anderko:Constitution of Binary Alloys,Second Edition,McGraw−Hill Book Company,Inc.,1958,p.684〜691 Max Hansen,Kurt Anderko:Constitution of Binary Alloys,Second Edition,McGraw−Hill Book Company,Inc.,1958,p.1024〜1026 社団法人日本鉄鋼協会編:第3版 鉄鋼便覧 第I巻 基礎、丸善株式会社、1981年、p.6〜7
特許文献1、2にある、アルミニウム合金の各種部品の製造に用いられる本発明者ら発明のW基合金製のダイキャスト金型、およびガラスレンズ成形用金型の周辺部材は、熱膨張係数が小さいことに加えて耐酸化性に優れることから熱亀裂の発生が少なく、長寿命となり好評である。しかし、特許文献1、2のW基合金は、真空焼結により作製されるが、これは拡散ポンプやメタルヒーターが必要になるためコストが高くなる欠点がある。
特許文献3にある、S45Cやステンレス等の各種鋼材部品の製造に用いられる、本発明者ら発明の新しいW基合金製の電気加熱鍛造用の台電極は、優れた耐酸化性に加えて900℃以上での高温硬さが熱間ダイス鋼のSKD61はもちろん、熱間でよく用いられるWC−Cr−Co−Ni系超硬合金と比べても高いことから、長寿命となり好評である。
そこで、これを黄銅等の棒材成形用の熱間押出しダイスに用いると、高温で変形し難いため、精度の高い押出しができて好評である。しかし、この場合は、寿命形態が割れであるので、より割れ難い、高硬度で高強度の素材があると、より長寿命化できるので、そのような素材が求められている。
本発明は、段落0005および段落0007に記述したような諸問題を解決するためになされたもので、上記のW基合金よりも、低コストで作製でき、かつ、破壊しにくい新素材を提供しようとするものである。
本発明者らによる特許文献1〜3のW基合金はW以外にNi、Fe、CoおよびCrからなる。主成分のWが75〜98mass%、Ni、Feおよび/またはCoの3種のFe族合計量が1〜15mass%で、Cr量が1〜20mass%、および不可避不純物からなる組成である。
ここでFeとCoの合計量はNi、FeおよびCoの3種の合計量の0〜30mass%である。また、Wの10mass%以下が、Ta、Ti、および/またはMoで置換されたものも含まれている。これらは真空焼結で作製される。
まず、特許文献1〜3のW基合金との比較として、合金組織に及ぼす諸元素添加の影響を調べることとした。表1は、Ni、Fe、Cr合計量を特許文献1〜3のW基合金におけるもの(1〜15mass%)より多くし(16.2〜17.5mass%)、後掲の段落0014に記載する理由によりTaの代わりに新たにNbを添加し、添加量を変化させたモデル試料の配合組成を示す。
各原料粉末を表1の組成に配合し、混合粉砕、冷間成形後、特許文献1〜3とは異なり低コストとなる、普通の真空ポンプとカーボンヒーターの炉を用いて、80kPaAr雰囲気焼結を1490℃−2h行い、4×8×25mmの試験片を作製した。作製した4種のモデル合金は試料M1〜M4と以下記す。焼結温度と時間を1490℃−2hとしたのは、厚肉製品にも対応できる条件を選択したものである。
ここで、Taの代わりにNbを選択したのは、特許文献1〜3に示されるTaは走査型電子顕微鏡付属のエネルギー分散型X線分析において、TaのLαピークとWのLαピークとがほぼ重なることから、試料組成の試料表面からの距離依存性および各構成相の組成分析が困難なことに対し、Nbは重ならないため、それらの組成分析が容易であることによる。
さらに、NbとTaは周期表でいずれも5族に属することに起因して化学特性が非常に近いこと、またNb粉末はTa粉末に比べて価格が約1/2と低くかつ地殻内存在量は原子数で約20倍と大きいことから資源的問題が小さいことなども考慮した。
なお、表1はmass%であるが、体積率および原子率で比較する場合もあるので、vol%表示とした場合およびat.%表示とした場合をそれぞれ表2および表3に示した。なお、at.%はmol%と表示する場合が多いが、状態図との比較を容易にする目的でat.%と記した。
4種のモデル試料についてSEMによる観察を行い、図1を得た。図1の下段のより拡大したSEM組織から明らかなように、本試料には、白灰色球状粒子相(以下a相と記す)、灰色結合相(以下b相と記す)、灰黒色結合相(以下c相と記す)、および黒色粒子相(以下d相と記す)が認められる。モデル試料において、a相の次にb相が多く認められ、c相は3.9vol%Nb添加で増加したが、その後減少した。d相は全てにおいて僅かであった。
なお、図1では各文字a、b、c、dに下付き文字pを付加しているが、これは各相のEDX分析点を表す。この4種のモデル試料のa〜d相についてEDXで定量分析し、その結果を図2に示した。
図2のa相の分析結果より、a相はWにCrが15at.%程度固溶したW−Cr相であることが分った。なお、後述の図3に示すように、X線回折では、W−Cr固溶体は、Wが主成分であるのでWの位置にピークがあり、a相がW−Cr固溶体であることは、EDXで分析して初めてわかる。
W粉末とCr粉末を混合して焼結しW−Cr固溶体相を生じることは、非特許文献1のW−Crの二元系状態図の示すことと一致する。これより本願における焼結合金はW−Cr基の合金であることがわかった。W相がW−Cr固溶体相となったことが、本系合金の耐酸化性が優れる原因の一つと考えられる(耐酸化性については後述の表8の酸化増量に示す)。これらは第1の知見である。
図2のb相の分析結果より、b相はM1試料ではWおよびCrを主成分とし、Ni、O、Feを含むことが分る。M2〜M4試料すなわち、Nbを添加した試料により、a相にはNbが認められないが、b相にはNbが認められるようになり、添加量が多くなるに従ってb相中のNb量が増加している。
b相中のCr固溶量はNb添加により減少するが、添加量が多くなっても殆ど変化しない。b相中のW固溶量は、Nbを3mass%添加すると増加するが、その後添加量が多くなるほど減少している。これらに比べてNi、FeおよびOの量は変化が少ない。ここでb相にOがあることは注目に値する。
図2のc相の分析結果より、c相はM1試料では、NiおよびCrを主成分とし、O、W、Feを含むことがわかった。この結合相もNb添加によりCrは減少するが、添加量が多くなっても殆ど変化しない。W量は、Nbを6mass%添加まで僅かに増加するが、その後僅かに低下した。これらに比べてNi、FeおよびOの量は変化が少ない。このc相にもOがあることは注目に値する。
図2のd相の分析結果より、d相は多くのOを含み、主としてCrないし、CrおよびNbの酸化物であることがわかった。これは、非特許文献2のNb−Crの擬二元系状態図を調べた結果、Nbと類似構造の(Nb,Cr)5−Xになっていると思われた。
前述のb、c相のOおよびd相すなわちCr、Nbの酸化物のOは、用いた原料に含まれるOおよび焼結雰囲気のArガス(純度99.99%以上)に含まれる不純物としてのOが供給源と思われる。
b、cおよびd相にOが存在し、a相にOが認められないのは、a相は焼結時に終始固相であり、他の三相はそうでないことに起因することが、それらの形態から示唆される。すなわち、b、c相はそれらの形態から焼結温度では液相であり、冷却時に固相となり、d相は液相成分のCrとNbが酸素と反応して固相粒子として析出・成長したことを示唆する。
次に、図2のb相およびc相のOが、結合相に固溶しているのか、金属間化合物ないし酸化物として存在するのか確かめるため、X線回折を行い、その結果を図3に示す。図3より、W(○のピーク)、Ni(◇のピーク)、六方晶または立方晶NbCr(●のピーク)の位置にピークが認められた。
ここで、図2の組織から、W位置のピークはW−Cr固溶体(○)、Ni位置のピークはNi−Fe基固溶体(◇)と判断されるので、図3にはそのように記載した。なお、一部の低いピークは同定できなかったことからX相で表した。X相は量が少なく、特性などには影響しないと思われる。
W−Cr固溶体(○)のX線回折強度は、M1からM4となる(Nb添加量が増加する)に従って減少するが、これは、配合組成でWをNbで置換して添加していることの他、Nb添加により灰色結合相中へのW固溶量も増加していることにも因ると考えられる。
六方晶また立方晶NbCr(●)は、Nb添加すなわちM2で現れ、M3からM4にかけてはピーク位置による変動が見られ、必ずしも増加していない。NbCrは、結合相のbないしc相中に含まれると考えられる。
Ni−Fe基固溶体(◇)はNb添加により変化しないが、これは、ピーク高さは配合組成にも依存することに因ると考えられる。
以上の相のうち、SEMで観察できなかったのはNbCr相である。そこで、図1より拡大観察することとし、10万倍まで拡大して図4を得た。図4は、無食刻では組織が見られなかったので、80kPaAr雰囲気焼結した場合の試験片について、6Paの減圧雰囲気中で600℃−5minの熱食刻を行ったM3組成の試料について、b相およびc相を、SEMで拡大観察した結果である。
これより、b相およびc相に、寸法が約200nmの小さい針状の白色の分散相が認められた。図4における、熱食刻で多数現れた分散相粒子は、X線回折で認められたNbCr相と判断された。これらは第2の知見である。この分散相を取囲む母相は、EDXにより、Ni―Fe基固溶体相にW、Cr、Nbが固溶した相と思われた。
以上より、X線回折では酸化物を検出できなかったが、Oが結合相に固溶しているか否かも判断できなかった。これは、X線回折では微量の結晶相は検出が困難であること、および固溶元素は直接検出できないことによると思われた。そこで、次に、Oが結合相に固溶できるか、関連する状態図を調べた。
図5は非特許文献3によるNb−O−Wの三元系状態図である。この三元系ではNb−O二元系と同様にNb−W固溶体中にOが固溶することが示されている。しかし、Ni−O−W(非特許文献4)、Fe−O−W(非特許文献5)の三元系状態図ではOの固溶は示されていない。
他方、Fe−O(非特許文献6)およびNi−O(非特許文献7)の二元系状態図によると、FeとNiいずれに対してもOは、液相中へはそれぞれ0.22mass%と0.4mass%、固相中へはいずれも0.1mass%以下ではあるが微量溶解または固溶をすることが示されている。
ここで、非特許文献8のエリンガム図によると、1490℃ではNbとCrは、仮に存在するとしても、Hにより還元されないが、1490℃で再焼結して酸素量が減少すれば、そのOは、結合相に固溶しているOと判断できることに気がついた。
そこで、80kPaAr雰囲気焼結をしたM3組成の試料を100kPaH雰囲気で1490℃−1hの加熱処理を行い、その加熱処理前後について、合金酸素量をLECO社製酸素窒素同時分析装置TC−500(以下酸素窒素分析装置と記載)で分析した。
その結果、Oは、加熱処理前は0.30mass%であったものが、加熱処理後は0.060mass%に減少した。上記のようにNbとCrはHにより還元されないので、この減少したOは、結合相中に固溶しているOであると判断された。
以上より、b相で認められるOは、M1組成ではFe、Ni、W、Crで構成された結合相に固溶したO、M2〜M4組成ではFe、Ni、W、Cr、Nbで構成された結合相に固溶したOであると判断された。c相で認められるOも結合相に固溶したOと考えられる。これらは第3の知見である。
以上をまとめると、モデル合金に認められるa相はW−Cr固溶体粒子、b相はNb無添加ではOが固溶したFe−Ni−W−Cr固溶体結合相、Nb添加ではOが固溶しNbCrが分散したFe−Ni−W−Cr−Nb固溶体結合相、c相はNb無添加ではOが固溶したFe−Ni−W−Cr固溶体結合相、Nb添加ではOが固溶しNbCrが分散したFe−Ni−W−Cr−Nb固溶体結合相、d相はNb無添加ではCr、Nb添加では(Nb,Cr)5−Xと見なせた。
なお、b相とc相の成分の種類は同じであるが、量は異なり、b相はCr、W、Niがリッチで、c相はCr、Niリッチという違いがある。
以上の組成のうち、Oについてはその効果がよく分らなかった。さらに、80kPaとしたAr雰囲気焼結は、d相すなわちCrないしCr、Nbの酸化物を生じていることから、本系合金の焼結方法としては適さない可能性が考えられた。
これらのことを確かめるため、焼結雰囲気を大気圧下で水素気流中で加熱・還元する水素雰囲気焼結(以下100kPaH雰囲気焼結と記す)として、その他は同様とした試料を作製した。作製した試料についてSEM観察を行い、図6を得た。配合組成は表1の試料M1〜M4とそれぞれ同じであるが、焼結方法が異なるので試料記号はM1’〜M4’として示す。
100kPaH雰囲気焼結した試料では、図1のa相およびb相に相当する相は、全ての試料に認められ、それぞれa’相およびb’相として図6に示した。また、図1のc相に相当する相は、c’相として図6に示した。なお、c’相は0〜7.9vol%Nb添加試料に認められたが、11.9vol%Nb添加試料には認められなかった。
図1のd相に相当する相は、いずれの試料にもほとんど認められなかった。これは、Oを不純物して含むArを用いなかったこと、及び100kPaH雰囲気焼結により原料に含まれる酸化物が焼結途中で還元除去され、結果として焼結試料ではほとんど酸化物を生じなかったことを示す。
図7は、図6のa’相、b’相およびc’相について、SEM付属のEDXで分析した結果である。a’相はa相とほぼ同じW、Cr量であった。b’相はb相と比較してO量が減少し、僅かとなった。それに因ってかCrおよびNiの量がb相より僅かに大となった。c’相にはOが認められず、それに因ってNiがc相より多くなったと思われる。
図1の試料M1〜M4と比較すると、試料M1’〜M4’は微粒化している。当初は、結合相へのW固溶量が増加したためと推定したが、画像解析でW−Cr相以外の相(others)の面積率を調べた結果を表4に示すように、試料M3〜M4と試料M3’〜M4’における面積率の値は対応試料においてそれぞれほぼ同じであることが分った。
したがって、「結合相中へのW固溶量が増加したことに因る」という予想は完全に否定された。このことから、試料M1’〜M4’が微粒化した原因は、結合相中へのOの固溶量が減少し、その分、Crの固溶量が増加したことにより、a’相すなわちW−Cr相(粒子)の粒成長が抑制されたためと考えられた。
M4とM4’の合金酸素量を酸素窒素分析装置で分析した結果、前者は0.26mass%であったのに対し、後者は0.026mass%と明らかに少ないことを確認した。なお、M4のb相のEDXによるO量は約3at.%で、これは0.6mass%に相当し、結合相量は約50vol%であることおよびEDXの精度を合わせ考慮すると、酸素窒素分析装置による結果とほぼ一致すると言える。
さらに、M4のb相とM4’のb’相について、結合相の硬さをマイクロビッカースで測定し比較した。これは、合金全体の硬さ測定では、a相およびa’相すなわちW−Cr相粒子の寸法が硬さに影響するので、結合相のOによる固溶硬化量が分からなかったためである。
結果として、b相は1680HV(0.098N)を示し、b’相は1310HV(0.098N)と、Oによる固溶硬化(酸素固溶強化)されていることが確認された。これは、第4の知見である。なお、Nb添加の場合はNbCrによる分散硬化がある。
図8にX線回折による、M3’の測定結果を上記のM3の結果と共に示すが、NbCrの量は、M3’とM3で大差なかった。(Nb,Cr)5−XはM3’でも認められないのは、段落0036で述べた通り、量が少ないためと思われる。なお、ピークがないこと、および段落0053の酸素分析結果と合わせ考えると(Nb,Cr)5−Xは量が少ないことがわかる。
なお、試料M4’は、研削加工中に細かく砕けてしまったことにより、Oの固溶量が少ない場合、本系合金は脆いことが分かった。ここで、脆化の原因について考える。まず、Oが結合相に固溶しなくなった代わりにCrの固溶量が増加することによる脆化が考えられる。
しかし、この場合、Crの固溶量はNb無添加の場合より少ないので、Cr固溶量増加に伴う脆化は少ないと思われる。従って、段落0055で明らかとした酸素固溶強化がなくなった分、脆化すると考えられた。実用強度を得るためにはOが結合相に固溶する必要があることになる。
脆化すなわち強度の目安としてしばしば用いられる抗折力は、W−Cr相の寸法や分布の影響もあるのでO量だけでは律せられないが、有用な抗折力を有する発明合金のO量は、0.051mass%以上、0.085mass%以下である(後述する表8に抗折力を示し、表7に合金中O量を示す)ことからこの範囲のO量が必要と見なせた。
このOの固溶量は、結合相量と焼結時の雰囲気で決まるが、80kPaのAr雰囲気では、Oが400ppm未満では、固溶量が不足する。Oが600ppmより多いと焼結性が低下して緻密化しなくなる。
なお、遷移金属として、Nbの他にはTa、Tiが考えられる。NbをTaおよび/またはTiとしても同様の特性を得た。以上より、Cr添加量、Nb添加量を規定することで、適切な酸素固溶強化を行うことで、破壊しにくい合金を得ることができることが分った。これは、第5の知見である。
TaについてはNbとほぼ同様に、酸素固溶強化が見られると共に、金属間化合物としてTaCrを形成することによる分散強化が見られた。Tiについては、酸素固溶強化は見られたが、金属間化合物は形成せず、金属間化合物による分散強化は見られなかった。
そのかわりにTiの酸化物が微細分散しそれによる分散強化が見られた。Tiの酸化物が微細分散した原因は、原料粉末として用いたTiHが、Ta、Nbより粉砕されやすいためである。使用する原料粉末のW、Cr、Nb、Ta、TiHの粒度は、所定の硬さ及び抗折力を得られるものならばよい。これは、第6の知見である。
なお、80kPaAr雰囲気焼結を60あるいは100kPaAr雰囲気焼結としても上記の結果は同じであった。ここで、60kPaより圧力を低くすると、Ni、Feの揮散による炉の経時劣化を生じてメンテナンス費用が多くかかり高コストとなる。また、100kPaより圧力を高くすると加熱時の対流熱損失が大となって電力をより多く使用し高コストとなる。
WをW−Crとし、さらに結合相中にCrを固溶する本発明合金の耐酸化性が優れる事は後述する表8の発明合金および参考合金の酸化増量が既存合金より少ないことから明瞭である。このようにして、本発明は完成した。
組成についてまとめると次の様になる。本W−Cr基合金は、NiおよびFeの合計量は合金全体の1.5mass%以上3.1mass%以下がよい、1.5mass%より少なくなると焼結性が低下して緻密な合金を得にくくなる。3.1mass%より多くなると高温硬さが低下する。
合金中の酸素量は0.051mass%以上0.085mass%以下がよい。0.051mass%より少ないと酸素固溶強化が得にくくなる。0.085mass%より多いと焼結しにくくなって抗折力が低くなって必要な強度が得られなくなる。
アルミニウム合金用ダイキャスト金型およびガラスレンズ成形用金型の周辺部材の場合、本W−Cr基合金は、Cr、Nb、Ta、Tiの合計量が合金全体の2.0mass%以上7.6mass%以下でこのうちCrは2.0mass%以上5.0mass%以下がよい。
Cr、Nb、Ta、Tiの合計量が合金全体の2.0mass%より少ないと硬さが33.8HRCより低くなり実用硬さが不足する。7.6mass%より多いと難焼結性となって抗折力が830MPaより低くなって実用強度が得られなくなる。Crは2.0mass%より少ないと、耐酸化性が不足するとともに、Crによる固溶強化が不足する。5.0mass%より多いと難焼結性となって抗折力が830MPaより低くなって実用強度が得られなくなる。
S45Cやステンレス等の鋼材の電気加熱鍛造の台電極の場合、本W−Cr基合金は、Cr、Nb、Ta、Tiの合計量が、合金全体の3.6mass%以上7.6mass%以下でこのうちCrは2.3mass%以上5.0mass%以下がよい。
Cr、Nb、Ta、Tiの合計量が合金全体の3.6mass%より少ないと硬さが41.8HRCより低くなり実用硬さが不足する。7.6mass%より多いと難焼結性となって抗折力が830MPaより低くなって実用強度が得られなくなる。Crは使用温度が比較的高いので2.3mass%より少ないと、耐酸化性が不足するとともに、Crによる固溶強化が不足する。5.0mass%より多いと難焼結性となって抗折力が830MPaより低くなって実用強度が得られなくなる。
黄銅等の棒材成形用の熱間押出しダイスの場合、本W−Cr基合金は、Cr、Nb、Ta、Tiの合計量が、合金全体の4.0mass%以上7.6mass%以下でこのうちCrは2.3mass%以上5.0mass%以下がよい。
Cr、Nb、Ta、Tiの合計量が合金全体の4.0mass%より少ないと金属間化合物および/またはTiを含む酸化物の分散強化が不足し、抗折力が1050MPaより低くなって実用強度が得られなくなる。7.6mass%より多いと難焼結性となって抗折力が1050MPaより低くなって実用強度が得られなくなる。Crは2.3mass%より少ないと、Crによる固溶強化が不足し抗折力が1050MPaより低くなって実用強度が得られなくなる。5.0mass%より多いと難焼結性となって抗折力が1050MPaより低くなって実用強度が得られなくなる。
本願による発明合金は、既存合金のW基合金と異なり、W−Cr基合金であり、その結合相は、Cr単独または、Nb、Ta、Tiの3種のうちの1種以上との複合で適切な量添加することにより、Crの固溶強化、Oによる固溶硬化(強化)および/または、NbCr、TaCr、Tiの酸化物の3種のうちの1種以上で分散硬化しているので、従来のW基合金よりも硬くて強い。以上から、発明合金の産業上の利用価値は高い。
M1〜M4組成の試料を80kPaAr雰囲気焼結したモデル試料について、SEM観察した結果である。a、b、c,dは、それぞれの相すなわちa、b、c、d相をEDXでスポット分析した位置である。 図1に示したa〜d相についてSEM付属のEDXで構成元素を定量分析した結果である。○はW、◇はNi、◆はFe、□はCr、●はNb、△はOである。 M1〜M4組成の試料について、80kPaAr雰囲気焼結した場合の試験片についてX線回折した結果である。各ピークをICDDデータで同定した結果を図の上に記した。X線種はCuKαである。 無食刻では組織が見られなかったので、80kPaAr雰囲気焼結した場合の試験片について、6Paの減圧雰囲気中で600℃−5minの熱食刻を行ったM3組成の試料について、b相およびc相をSEMで拡大観察した結果である。 非特許文献3による、Nb−O−Wの三元系状態図である。文字の寸法を一部大きくして読みやすく改変している。 M1〜M4組成の試料を図1の80kPaAr雰囲気ではなく、大気圧下で水素気流中で加熱・還元する水素雰囲気焼結(100kPaH雰囲気焼結)した試験片について、モデル試料についてSEMによる観察をした結果である。a’〜c’は、それぞれの相をEDXでスポット分析した位置を示す。記号は図1の同名に相当するものであるが、焼結雰囲気が異なることを示すため、プライム(’)を付けた。 図6に示したa’〜c’相についてSEM付属のEDXで定量分析した結果である。○はW、◇はNi、◆はFe、□はCr、●はNb、△はOである。 図3の80kPaAr雰囲気焼結したM3と、100kPaH雰囲気焼結したM3’の両試験片について、X線回折した結果である。各ピークをICDDデータで同定した結果を図の上に記した。X線種はCuKαである。 抗折力に及ぼすBMに対するAMの比率の影響を示す図である。BMに対するAMの比率は、AM÷BM×100として求めた。 硬さに及ぼすBMに対するAMの比率の影響を示す図である。
本発明の素材は通常の粉末冶金法によって製造できる。すなわち、W、Ni、Fe、Crと、必要によりNb、Ta、Tiの3種のうち1種以上を所定の組成に配合し、ボールミルあるいはアトライターによる湿式混合を経て乾燥後、所望の形状にプレス圧100〜500MPaで圧縮成形する。
次に、成形体を1350〜1500℃で30〜120min真空焼結する。ここで、純度99.9%のArガスを1350〜1500℃で60kPa以上100kPa以下導入し、Arガスに含まれる形で、酸素を400ppm以上600ppm以下導入する。焼結後、最終的な形状に切削加工、研削加工および/または放電加工して成形し仕上げて、製品化する。
試料を表5の配合組成で作製し、各特性を測定した。原料粉末は、平均粒度約6μmのW粉末(酸素量0.027mass%)、平均粒度約2.5μmのNi粉末(酸素量0.15mass%)、平均粒度約5μmのFe粉末(酸素量0.63mass%)、平均粒度約40μmのCr粉末(酸素量0.64mass%)、平均粒度約6.9μmのTa粉末(酸素量0.13mass%)、平均粒度約6.9μmのTiH粉末(酸素量0.17mass%)、平均粒度約8.25μmのNb粉末(酸素量0.23mass%)を用いた。
TiのみTi粉末でなくTiH粉末を用いた理由は、Ti粉末は酸素と反応し易く、低酸素の粉末を安価に得られないためであり、TiH粉末は比較的安価で、純度が高く、かつ焼結途中でHが解離してTiになるためである。
配合した粉末は、湿式ボールミルで24h混合し、プレス圧を100MPa以上500MPa以下とした冷間成形を行い、真空(0.8Pa、試料記号T1、以下T1と記す)焼結、または、純度99.9%のO量400ppm以上600ppm以下のArガスを60kPa以上100kPa以下の圧力で導入して、1490℃−2hで焼結して(T1以外の試料)4×8×25mmの試験片を得た。
表6は、種々の添加物の効果を正確に把握するため、組成をvol%で表示し、AMをBMで割って100倍した値を示した(以下BMに対するAMの比率と記す)。ここで、BMとはbinder metalを示し、具体的にはNi、Feの合計量(vol%)である。AMとはadditional metalを示し、具体的にはCr、Ta、TiおよびNbの合計量(vol%)である。
表7は、表6の組成の試料について、実用の製品の大きさに対応した、1490℃−2hの焼結をした後の、主相の種類と主相と結合相および酸化物相をSEM画像からピクセル数で定量し、vol%で示した。また、合金中のO量を測定した結果を併示した。なお既述したように、試料記号T1のみ従来の真空焼結の材料である。その他は、Arガスを60kPa以上100kPa以下の圧力で焼結した合金である。発明合金のABの表記については段落0088で説明する。
表8は、表7の合金について、比重、抗折力、硬さ、伸び、および酸化増量(大気中800℃−30min保持前後の重量差)を、アルミニウム合金のダイキャスト金型および黄銅等の熱間押出しダイスでの実用試験結果と共に示した。また、表7に示したBMに対するAMの比率も分りやすくする目的で再度示した。
ここで、アルミニウム合金用ダイキャスト金型に用いることができる発明合金をA発明合金とし、ダイキャスト金型、S45Cやステンレス等の各種鋼材部品の電気加熱鍛造で用いる台電極、または黄銅等の棒材成形に用いる熱間押出しダイスの、いずれか全てにも用いることができる発明合金をAB発明合金とした。
比重は、組成により決まった。表8に示した抗折力とBMに対するAMの比率を、抗折力に及ぼすBMに対するAMの比率の影響として図9に示すが、抗折力はBMに対するAMの比率との強い相関は見られなかった。破壊の起源も破面が平坦で明瞭にできなかった。
表8に示した硬さとBMに対するAMの比率を、硬さに及ぼすBMに対するAMの比率の影響として図10に示すが、BMに対するAMの比率と、W−Cr相の粒度との関係もあり、弱い正の相関にとどまった。
表8に示した一般のW基合金の伸びが6%であるのに対し、試料の伸びは0.4%と小さいが、これはO、Crなどによる固溶硬化による。なお、伸びは室温の引張り試験で求めた。
AM添加試料は800℃−30minの酸化増量が22g/m以下と優れる。よって、実用の際に工具表面に酸化層を生じても、容易には深くならないことが分かる。費用対効果を考えると酸化増量が22g/m以下である必要があった。
なお、図9と図10にM1〜M4の結果がないのは、試験片の内部が緻密化不十分であったため正確な値が得られなかったため略したものである。
特許文献1〜3の近い組成の試料と機械的性質が必ずしも一致しないが、これは焼結温度および時間、用いた原料のW粒度などが異なることによる。よって、厳密な比較はできなかった。但し、本発明合金は段落0005および0013に記載したように、より低コストとなる焼結をしているメリットがある。
なお、表8には示さなかった高温硬さの傾向は次の通りであった。A発明合金S1は室温の硬さが390HV(9.8N)で、900℃の高温では、180HV(9.8N)、AB発明合金S2は、室温の硬さが590HV(9.8N)で、900℃の高温では、300HV(9.8N)の硬さを示し、優れていた。既存合金T2は、室温の硬さが320HV(9.8N)で、900℃の高温では、140HV(9.8N)となり、室温硬さが低い分、高温硬さも低くなった。
既存合金T1は、硬さ、抗折力から一見、実用レベルにあるように見えるが、結合相が金属間化合物による分散硬化(強化)や酸素固溶強化されていないため軟質で伸びが6.0%あり、アルミニウム合金用ダイキャスト金型、S45Cやステンレス等の各種鋼材部品の電気加熱鍛造で用いる台電極、または黄銅等の棒材成形に用いる熱間押出しダイスに用いると少しの応力で変形するのでまったく実用できなかった。
T1以外の試料をアルミニウム合金のダイキャスト金型に使用した場合の性能は次のようであった。T2は肌荒れが大きく不評であった。B5およびC5は強度不足で割れてしまった。他の表8に示しダイキャスト金型の列の△はT2より肌荒れが小となり、○はT2より肌荒れが小となった上に、寿命が2倍以上となり、◎はT2より肌荒れが小となった上に、寿命が4倍以上となった。
T1以外の試料を黄銅等の棒材成形に用いる熱間押出しダイスに適用した結果、熱間押出しダイスの列の×は強度および硬さが不足し費用対効果が得られず実用できなかった。○はT2より割れるまでの寿命が3倍以上となり、◎は割れるまでの寿命が6倍以上となった。
表8のダイキャスト金型の列で△○◎の試料は、ガラスレンズ成形用の金型の周辺部材に用いても、T2と比べて、それぞれ12倍、24倍、36倍以上優れた長寿命を示した。
S45Cやステンレス等の各種鋼材部品の電気加熱鍛造で用いる台電極に用いた場合、ダイキャスト金型の列の○◎は用いることができた。T2と比べて、○は10倍以上、◎は20倍以上の優れた長寿命を示した。
本発明のW−Cr基合金は、耐酸化性、高温硬さが優れるため、ダイキャスト金型、熱間押出しダイス、レンズ金型の周辺部材、電気加熱鍛造用電極に用いることで、それらの寿命を著しく長くするため、産業界への貢献が大きく、年間1億円以上の販売が見込まれる。
図2のb相の分析結果より、b相はM1試料ではWおよびCrを主成分とし、Ni、O、Feを含むことが分る。M2〜M4試料すなわち、Nbを添加した試料では、a相にはNbが認められないが、b相にはNbが認められるようになり、添加量が多くなるに従ってb相中のNb量が増加している。
b相中のCr固溶量はNb添加により減少するが、添加量が多くなっても殆ど変化しない。b相中のW固溶量は、Nbを3.1at.%添加すると増加するが、その後添加量が多くなるほど減少している。これらに比べてNi、FeおよびOの量は変化が少ない。ここでb相にOがあることは注目に値する。
図2のc相の分析結果より、c相はM1試料では、NiおよびCrを主成分とし、O、W、Feを含むことがわかった。この結合相もNb添加によりCrは減少するが、添加量が多くなっても殆ど変化しない。Ni量は、Nbを6.3at.%添加まで僅かに増加するが、その後僅かに低下した。これらに比べて、FeおよびOの量は変化が少ない。このc相にもOがあることは注目に値する。
これより、b相およびc相に、寸法が約200nmの小さい針状の白色の分散相が認められた。図4における、熱食刻で多数現れた分散相粒子は、X線回折で認められたNbCr相と判断された。これらは第2の知見である。この分散相を取囲む母相は、EDXにより、NiFe基固溶体相にW、Cr、Nb、Oが固溶した相と思われた。
結果として、b相は1680HV(0.098N)を示し、b’相は1310HV(0.098N)であり、前者はOによる固溶硬化(酸素固溶強化)されていることが確認された。これは、第4の知見である。なお、Nb添加の場合はNbCrによる分散硬化がある。
なお、添加する遷移金属として、Nbの他にはTa、Tiが考えられる。NbをTaおよび/またはTiとしても同様の特性を得た。以上より、Cr添加量、Nb添加量を規定、適切な酸素固溶強化を行うことで、破壊しにくい合金を得ることができることが分った。これは、第5の知見である。
S45Cやステンレス等の鋼材の電気加熱鍛造の台電極の場合、本W−Cr基合金は、Cr、Nb、Ta、Tiの合計量が、合金全体の3.0mass%以上7.6mass%以下でこのうちCrは2.3mass%以上5.0mass%以下がよい。
Cr、Nb、Ta、Tiの合計量が合金全体の3.0mass%より少ないと硬さが41.8HRCより低くなり実用硬さが不足する。7.6mass%より多いと難焼結性となって抗折力が830MPaより低くなって実用強度が得られなくなる。Crは使用温度が比較的高いので2.3mass%より少ないと、耐酸化性が不足するとともに、Crによる固溶強化が不足して硬さが41.8HRCより低くなって実用強度が得られなくなる。5.0mass%より多いと難焼結性となって抗折力が830MPaより低くなって実用強度が得られなくなる。
Cr、Nb、Ta、Tiの合計量が合金全体の4.0mass%より少ないと金属間化合物および/またはTiを含む酸化物の分散強化が不足し抗折力が900MPaより低くなるか硬さが41.8HRCより低くなって実用強度が得られなくなる。7.6mass%より多いと難焼結性となって抗折力が830MPaより低くなって実用強度が得られなくなる。Crは2.3mass%より少ないと、Crによる固溶強化が不足して硬さが41.8HRCより低くなって実用強度が得られなくなる。5.0mass%より多いと難焼結性となって抗折力が830MPaより低くなって実用強度が得られなくなる。
次に、成形体を1350〜1500℃で30〜120minのAr雰囲気焼結をする。ここで、純度99.9%のArガスを1350〜1500℃で60kPa以上100kPa以下の圧力で導入し、Arガスに含まれる形で、 をAr中に400ppm以上600ppm以下として導入する。焼結後、最終的な形状に切削加工、研削加工および/または放電加工して成形し仕上げて、製品化する。
表7は、表6の組成の試料について、実用の製品の大きさに対応した、1490℃−2hの焼結をした後の、主相の種類と主相と結合相および酸化物相をSEM画像からピクセル数で定量し、vol%で示した。また、合金中のO量を測定した結果を併示した。なお既述したように、試料記号T1のみ従来の真空焼結の材料である。その他は、Arガスを60kPa以上100kPa以下の圧力で焼結した合金である。発明合金のA、ABの表記については段落0088で説明する。
表8は、表7の合金について、比重、抗折力、硬さ、伸び、および酸化増量(大気中800℃−30min保持前後の重量差)を、アルミニウム合金のダイキャスト金型および黄銅等の熱間押出しダイスでの実用試験結果と共に示した。また、表に示したBMに対するAMの比率も分りやすくする目的で再度示した。
ここで、段落0096〜0100に示す通り、アルミニウム合金用ダイキャスト金型に用いることができる発明合金をA発明合金とし、ダイキャスト金型、S45Cやステンレス等の各種鋼材部品の電気加熱鍛造で用いる台電極、および黄銅等の棒材成形に用いる熱間押出しダイスの、全てに用いることができる発明合金をAB発明合金とした。
T1以外の試料をアルミニウム合金のダイキャスト金型に使用した場合の性能は、表8に示すが次のようであった。T2は肌荒れが大きく不評であった。B5およびC5は強度不足で割れてしまった。他の表8に示しダイキャスト金型の列の△はT2より肌荒れが小となり、○はT2より肌荒れが小となった上に、寿命が2倍以上となり、◎はT2より肌荒れが小となった上に、寿命が4倍以上となった。
T1以外の試料を黄銅等の棒材成形に用いる熱間押出しダイスに適用した結果は、表8に示すが、熱間押出しダイスの列の×は強度および硬さが不足し費用対効果が得られず実用できなかった。○はT2より割れるまでの寿命が3倍以上となり、◎は割れるまでの寿命が6倍以上となった。
Cr、Nb、Ta、Tiの合計量が合金全体の3.0mass%より少ないと硬さが41.8HRCより低くなり実用硬さが不足する。7.6mass%より多いと難焼結性となって抗折力が830MPaより低くなって実用強度が得られなくなる。Crは使用温度が比較的高いので2.3mass%より少ないと、耐酸化性が不足するとともに、Crによる固溶強化が不足する。5.0mass%より多いと難焼結性となって抗折力が830MPaより低くなって実用強度が得られなくなる。
Cr、Nb、Ta、Tiの合計量が合金全体の4.0mass%より少ないと金属間化合物および/またはTiを含む酸化物の分散強化が不足し、実用強度が得られなくなる。7.6mass%より多いと難焼結性となって抗折力が1572MPaより低くなって実用強度が得られなくなる。Crは2.3mass%より少ないと、Crによる固溶強化が不足し、実用強度が得られなくなる。5.0mass%より多いと難焼結性となって抗折力が1572MPaより低くなって実用強度が得られなくなる。

Claims (8)

  1. 粉末冶金法で作製する合金において、配合組成でNiおよびFeの合計量が合金全体の1.5mass%以上3.1mass%以下、かつ配合組成でCr、Nb、Ta、Tiの合計量が合金全体の2.0mass%以上7.6mass%以下、残部がWで、これに不可避不純物が加わった組成であり、焼結後の合金中の酸素量が0.051mass%以上0.085mass%以下であり、配合したWとCrの一部が、分散相としてW−Cr固溶体となっており、硬さが33.8HRC以上で、抗折力が830MPa以上の、W−Cr基合金。
  2. 粉末冶金法で作製する合金において、配合組成でNiおよびFeの合計量が合金全体の1.5mass%以上3.1mass%以下、かつ配合組成でCr、Nb、Ta、Tiの合計量が合金全体の3.6mass%以上7.6mass%以下、残部がWで、これに不可避不純物が加わった組成であり、焼結後の合金中の酸素量が0.051mass%以上0.085mass%以下であり、配合したWとCrの一部が、分散相としてW−Cr固溶体となっており、硬さが41.8HRC以上で、抗折力が830MPa以上の、W−Cr基合金。
  3. 粉末冶金法で作製する合金において、配合組成でNiおよびFeの合計量が合金全体の1.5mass%以上3.1mass%以下、かつ配合組成でCr、Nb、Ta、Tiの合計量が合金全体の4.0mass%以上7.6mass%以下、残部がWで、これに不可避不純物が加わった組成であり、焼結後の合金中の酸素量が0.051mass%以上0.085mass%以下であり、配合したWとCrの一部が、分散相としてW−Cr固溶体となっており、硬さが41.8HRC以上で、抗折力が1050MPa以上の、W−Cr基合金。
  4. 請求項1から請求項3のいずれかのW−Cr基合金を用いて作製された、アルミニウム合金用ダイキャスト金型。
  5. 請求項1から請求項3のいずれかのW−Cr基合金を用いて作製された、ガラスレンズ成形用金型の周辺部材。
  6. 請求項2または請求項3のいずれかのW−Cr基合金を用いて作製された、鋼材部品の電気加熱鍛造用の台電極。
  7. 請求項3のW−Cr基合金を用いて作製された、黄銅の棒材成形用熱間押出しダイス。
  8. 請求項1から請求項3のいずれかの配合組成のW−Cr基合金について、焼結時の雰囲気を400ppm以上600ppm以下のOを含み60kPa以上100kPa以下の圧力のAr雰囲気とすることにより、焼結後の合金中の酸素量を0.051mass%以上0.085mass%以下含ませる、請求項1から請求項3のいずれかのWC−Cr基合金の製造方法。
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