本発明の製造方法では、共重合時の単量体、とりわけ単量体(a)に比して重合率が大きく低下する傾向にある単量体(b)、の重合率の向上によって、例えば、重合の仕込み組成(重合体の設計組成)と実際に製造された共重合体の組成との間の乖離を小さくできる。これにより、当該重合体、およびVIIに限らずこれを含有する製品の特性低下の抑制、ならびに当該重合体をさらに加工、処理する際の悪影響の抑制が期待される。より具体的な例として、設計組成と実際に製造された重合体の組成との間の乖離は、設計時の重合体のTgと製造された重合体が実際に示すTgとの間の相違を招くが、当該Tgの相違が抑制されることにより、設計時に想定した十分な耐熱性等の熱的特性を有する重合体およびこれを含有する製品の達成、ならびに延伸等の加工を実施する際にも設計時に想定した十分な延伸が実現する重合体の達成が期待される。
また、本発明の製造方法では、製造した重合体における未反応の単量体、とりわけ共重合時に単量体(a)に比して重合率が大きく低下する傾向にある単量体(b)、の残留量を抑制できる。これにより、例えば、重合体の組成に関する上記乖離の抑制に基づく上述した効果と同様の効果が期待される。
ここで注目すべきは、上記(メタ)アクリレート共重合体(単量体(a)に由来する単位と単量体(b)に由来する単位とを構成単位として有する(メタ)アクリレート共重合体)を使用しうる製品のうち、VIIについて、当該重合体の組成の設計にはとりわけ非常な精密さが要求される点である。これは、VIIがその機能を発揮するメカニズムに基づく。より具体的に、VIIに含まれる重合体の潤滑油基油に対する溶解性について、VIIを添加する潤滑油組成物の使用温度範囲において当該重合体の分子鎖が温度変化に応じて速やかかつ十分に膨潤/収縮するために、高くも低くもない適切な溶解性が求められることに基づく。そして、(メタ)アクリレート重合体の潤滑油基油に対する溶解性は、極性基であるカルボキシルエステル基と非極性基である脂肪族炭化水素基とのバランスに大きく影響され、所定数以上の脂肪族炭化水素基を有する単量体(b)の重合率の低下は、単量体(a)に比べて特に当該バランスに影響を与えやすい。
仮に、重合体の製造時に生じた上記乖離によって設計組成よりも潤滑油基油に対する溶解性が低下した場合、使用温度範囲において変化する温度に依ることなく常に重合体の分子鎖が収縮した状態となってVIIとしての機能が低下、または失われたり、潤滑油基油に対する溶解性自体が失われることがある。逆に、重合体の製造時に生じた上記乖離によって設計組成よりも潤滑油基油に対する溶解性が向上した場合、使用温度範囲において変化する温度に依ることなく常に重合体の分子鎖が膨潤した状態となってVIIとしての機能が低下、または失われることがある。この観点から、本発明の製造方法は、特に上記(メタ)アクリレート共重合体を含むVIIの製造方法として顕著かつ有利な効果を示す。
また、VIIの工業的な大量生産において、重合体を重合した後にその重合系に基油(VIIとしての基油。この基油は、当該VIIが使用される潤滑油組成物の潤滑油基油と同じでありうる。以下、両者をまとめて単に「基油」という)をそのまま添加する方法、より具体的な例として、重合体を溶液重合した後に当該重合系の重合溶媒をそのまま基油と置換する方法が一般的である。基油との置換時に分子量が小さい未反応の単量体(a)は比較的容易に除去されるが、分子量が大きい未反応の単量体(b)は容易に除去されず、VII中にその多くが残留して、VIIおよび当該VIIを含む潤滑油組成物の特性、例えば熱安定性、長期保存性等、を低下させることがある。この観点からも、本発明の製造方法は、特に上記(メタ)アクリレート共重合体を含むVIIの製造方法および潤滑油組成物の製造方法として顕著かつ有利な効果を示す。
[(メタ)アクリレート共重合体の製造方法]
本発明の(メタ)アクリレート共重合体の製造方法(以下、第1の製造方法)では、酸性物質を含有する重合系において、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体(a)と、炭素数6〜40の脂肪族炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体(b)とを含有する単量体群の共重合を進行させる。これにより、単量体(a)に由来する単位と単量体(b)に由来する単位とを構成単位として有する(メタ)アクリレート共重合体(A)を得る。
第1の製造方法では、(メタ)アクリレート単量体、特に単量体(b)、の重合率を向上できる。
単量体(a)は、好ましくは、以下の式(1)に示される(メタ)アクリレート単量体である。式(1)のR1は水素原子またはメチル基であり、R2は炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基(好ましくは炭素数1〜5のアルキル基)である。R2の炭化水素基は、直鎖状、環状、分岐状のいずれであってもよく、置換基を有していてもよい。置換基は、例えば、ヒドロキシル基、アルコキシル基、ニトロ基、ニトリル基、スルホン基である。R2の炭化水素基が直鎖状または分岐状である場合、(メタ)アクリレート重合体(A)を含むVIIを含む潤滑油組成物(「(メタ)アクリレート重合体(A)を含む潤滑油組成物」ともいえる。以下、同じ)の粘度指数が向上する。
共重合を進行させる単量体群(以下、単に「単量体群」)は、R1および/またはR2が互いに異なる2種以上の単量体(a)を含有してもよい。
単量体(a)は、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、i−アミル(メタ)アクリレート、t−アミル(メタ)アクリレート、およびネオペンチル(メタ)アクリレートである。単量体群は、単量体(a)としてメチル(メタ)アクリレートを含有することが好ましく、メチルメタクリレート(MMA)を含有することがより好ましい。単量体(a)であるメチル(メタ)アクリレート、特にMMA、の共重合により、(メタ)アクリレート重合体(A)を含むVIIを含む潤滑油組成物の粘度指数とせん断安定性とを両立しながら向上できる。
(メタ)アクリレート重合体(A)が構成単位として有する、単量体(a)に由来する単位は、例えば、以下の式(2)に示される単位である。
式(2)のR1およびR2は、式(1)のR1およびR2と同じである。
単量体(b)は、好ましくは、以下の式(3)に示される(メタ)アクリレート単量体である。式(3)のR3は水素原子またはメチル基であり、R4は炭素数6〜40の脂肪族炭化水素基(好ましくは炭素数6〜24の脂肪族炭化水素基であり、より好ましくは炭素数12〜24の脂肪族炭化水素基である。脂肪族炭化水素基はアルキル基でありうる)である。R4の炭化水素基は、直鎖状、環状、分岐状のいずれであってもよく、置換基を有していてもよい。置換基は、例えば、ヒドロキシル基、アルコキシル基、ニトロ基、ニトリル基、スルホン基である。R4の炭化水素基が分岐状である場合、(メタ)アクリレート重合体(A)を含むVIIを含む潤滑油組成物のせん断安定性が向上する。
単量体(b)は、例えば、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、テトラコシル(メタ)アクリレート、2−デシルテトラデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メンチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、およびベンジル(メタ)アクリレートである。単量体群は、単量体(b)として2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、テトラコシル(メタ)アクリレート、2−デシルテトラデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートを含有することが好ましく、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートを含有することがより好ましい。これら好ましい単量体(b)は入手性および経済性に優れるとともに、当該単量体(b)の共重合により、(メタ)アクリレート重合体(A)の基油溶解性の制御の自由度が向上する。
(メタ)アクリレート重合体(A)が構成単位として有する、単量体(b)に由来する単位は、例えば、以下の式(4)に示される単位である。
式(4)のR3およびR4は、式(3)のR3およびR4と同じである。
単量体群は、R3および/またはR4が互いに異なる2種以上の単量体(b)を含有してもよい。
単量体群が単量体(b)を2種以上含有する場合、とりわけ、単量体(b)を3種以上含有するか、または脂肪族炭化水素基の炭素数が13以上である単量体(b)を2種以上含有する場合、(メタ)アクリレート重合体(A)を重合する際の単量体(b)の重合率が特に低下する傾向が見られる。第1の製造方法では、このような場合、特に、単量体群が単量体(b)を3種以上含有するか、または脂肪族炭化水素基の炭素数が13以上である単量体(b)を2種以上含有する場合においても、単量体(b)の重合率を向上できる。
第1の製造方法では、単量体群の共重合における単量体(b)の重合率(複数の単量体(b)を単量体群が含有するときには、その複数の単量体(b)間の最も小さい値。以下、同じ)は、例えば89質量%以上である。また、第1の製造方法では、単量体(b)を3種以上含有するか、または脂肪族炭化水素基の炭素数が13以上である単量体(b)を2種以上含有する単量体群の共重合における単量体(b)の重合率は、例えば89質量%以上である。
単量体群が単量体(b)を2種以上含有する場合、単量体(b)間で重合率の差が生じやすく、とりわけ、単量体群が単量体(b)を3種以上含有するか、または脂肪族炭化水素基の炭素数が13以上である単量体(b)を2種以上含有する場合に、単量体(b)間の重合率の差が拡大する傾向が見られる。また、単量体(b)の重合率が高くなるほど、この差は拡大しやすい。2種以上、または3種以上の単量体(b)間の重合率の差は、上述した単量体(b)の重合率低下により引き起こされる問題と同様の問題の原因となるため、できるだけ小さいことが望まれる。第1の製造方法では、これらの場合、特に、単量体群が単量体(b)を3種以上含有するか、または脂肪族炭化水素基の炭素数が13以上である単量体(b)を2種以上含有する場合においても、単量体(b)間の重合率の差を低減できる。また、単量体(b)の重合率が向上しても、この効果が得られる。
第1の製造方法では、単量体群が2種以上の単量体(b)を含有する場合における単量体(b)間の重合率の差(複数の単量体(b)間の最も大きい値と小さい値との差。以下、同じ)は、例えば、3.0質量%以下である。また、第1の製造方法では、単量体(b)を3種以上含有するか、または脂肪族炭化水素基の炭素数が13以上である単量体(b)を2種以上含有する単量体群の共重合における単量体(b)間の重合率の差は、例えば、3.0質量%以下であり、さらには1.8質量%以下でありうる。また、このときの単量体(b)の重合率は、例えば89質量%以上でありうる。
すなわち、第1の製造方法では、2種以上の単量体(b)を含有する単量体群の共重合における単量体(b)の重合率が89質量%以上であり、当該複数の単量体(b)間の重合率の差が3.0質量%以下、さらには1.8質量%以下でありうる。
3種以上の単量体(b)に由来する単位を構成単位として有する(メタ)アクリレート重合体(A)、または脂肪族炭化水素基の炭素数が13以上である2種以上の単量体(b)に由来する単位を構成単位として有する(メタ)アクリレート重合体(A)は、とりわけ、その結晶性が低い。これにより、当該重合体(A)のVIIへの使用により、例えば、当該VIIを含む潤滑油組成物の低温流動性を向上できる。この観点からも、本発明の製造方法は、特に(メタ)アクリレート重合体(A)を含むVIIの製造方法および潤滑油組成物の製造方法として顕著かつ有利な効果を示す。
単量体群の共重合における単量体(a)の重合率は、例えば、89質量%以上であり、90質量%以上でありうる。なお、単量体群が2種以上の単量体(a)を含有する場合においても単量体(a)の重合率は、単量体群が2種以上の単量体(b)を含有する場合の単量体(b)の重合率に比べて低下しない。これには、単量体(a)と単量体(b)との重合反応性の相違が現れていると考えられる。
単量体群における単量体(b)の含有率は、例えば40質量%以上であり、50質量%以上、さらには60質量%以上でありうる。単量体群における単量体(b)の含有率の上限は、例えば80質量%以下である。第1の製造方法では、単量体群における単量体(b)の含有率がこのように大きい値である場合にも、上述した効果を得ることができる。なお、このように単量体(b)の含有率が大きい単量体群の共重合により得られた(メタ)アクリレート重合体(A)は、VIIに好適に使用できる。この観点からも、本発明の製造方法は、特に(メタ)アクリレート重合体(A)を含むVIIの製造方法として顕著かつ有利な効果を示す。
単量体群における単量体(a)の含有率は、例えば60質量以下であり、50質量%以下、40質量%以下でありうる。単量体群における単量体(a)の含有率の下限は、例えば2質量%以上である。
単量体群は、極性基を有する環構造を分子構造に持つ、単量体(a)および単量体(b)と共重合可能な単量体(c)をさらに含有することができる。この場合、単量体(c)に由来する単位を構成単位としてさらに有する(メタ)アクリレート共重合体(A)が得られ、当該単位に基づく重合体(A)、重合体(A)を含むVII、および当該VIIを含む潤滑油組成物へのさらなる特性の付与、あるいは重合体(A)、重合体(A)を含むVII、および当該VIIを含む潤滑油組成物のさらなるせん断安定性及び耐熱性の向上が期待される。
環構造の極性基は、例えば、カルボキシルエステル基、アミド基、カルボニル基、ヒドロキシル基である。環構造を構成する(環構造に組み込まれた)極性基であってもよく、この場合、環構造は、例えば、カルボキシルエステル構造、アミド構造、ケトン構造、無水酸構造等を当該環構造の一部として有する。
単量体(c)は、例えば、マレイミド単量体である。
マレイミド単量体の共重合((メタ)アクリレート重合体(A)の主鎖骨格へのマレイミド単位の導入)により、例えば、重合体(A)を含むVIIを含む潤滑油組成物のせん断安定性と粘度指数とを両立しながら向上できるとともに、熱安定性を向上できる。
具体的なマレイミド単量体は、例えば、以下の式(5)に示される単量体である。
式(5)のR5およびR6は、互いに独立して水素原子またはアルキル基である。R5およびR6のアルキル基は、直鎖状であっても分岐を有していても環状であってもよく、その炭素数は好ましくは1〜6である。R5およびR6のアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基である。
式(5)のXは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シアノ基、またはヒドロキシル基である。Xのアルキル基は、直鎖状であっても分岐を有していても環状であってもよく、その炭素数は好ましくは1〜20である。Xのアルキル基は、置換基を有していてもよい。Xのアルケニル基およびアリール基の炭素数は、好ましくは6〜12である。Xのアリール基は置換基を有していてもよい。Xのアルキル基が有しうる置換基は、例えば、フェニル基、ベンジル基である。Xのアリール基が有しうる置換基は、例えば、クロロ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、アルコキシル基である。
Xのアルキル基は、例えば、イソプロピル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロヘキシル基である。
Xのアリール基は、例えば、フェニル基、ナフチル基、芳香環に結合した水素原子が上述した置換基により置換されたアリール基である。
Xは環状の分子構造を有することが好ましい。このようなXは、例えば、ベンジル基等の芳香環を有する置換アルキル基(すなわちアラルキル基)、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基である。
より具体的なマレイミド単量体は、例えば、マレイミド;N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−i−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−i−ブチルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ステアリルマレイミド等、Xが炭素数1〜20の直鎖状または分岐を有する(分岐鎖状の)アルキル基であるマレイミド;N−シクロヘキシルマレイミド等、Xが炭素数5〜10の環状アルキル基であるマレイミド;N−フェニルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−クロロフェニルマレイミド、N−メチルフェニルマレイミド、N−ナフチルマレイミド、N−ヒドロキシルフェニルマレイミド、N−メトキシフェニルマレイミド、N−カルボキシフェニルマレイミド、N−ニトロフェニルマレイミド、N−トリブロモフェニルマレイミド等、Xが炭素数6〜12のアリール基またはアラルキル基であるマレイミド:N−ヒドロキシルエチルマレイミド等、Xがヒドロキシルアルキル基であるマレイミド;である。マレイミド単量体は、好ましくは、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ステアリルマレイミドである。これら好ましいマレイミド単量体は入手性および経済性に優れるとともに、当該単量体の共重合により、(メタ)アクリレート重合体(A)の基油溶解性の制御の自由度が向上する。
単量体群が式(5)に示される単量体をさらに含有する場合、得られた(メタ)アクリレート重合体(A)は、以下の式(6)に示される単位を構成単位として有する。
式(6)のR5およびR6は、式(5)のR5およびR6と同じである。
単量体群は、2種以上の単量体(c)を含有してもよい。
単量体群が単量体(c)を含有する場合、とりわけ、単量体(c)がマレイミド単量体である場合、(メタ)アクリレート重合体(A)を重合する際の単量体(b)の重合率が特に大きく低下する傾向が見られる。この傾向は、上述した、単量体群が単量体(b)を2種以上含有する場合、とりわけ、単量体(b)を3種以上含有するか、または脂肪族炭化水素基の炭素数が13以上である単量体(b)を2種以上含有する場合に強くなる。第1の製造方法では、これらの場合、特に、単量体(c)がマレイミド単量体であって、単量体群が単量体(b)を3種以上含有するか、または脂肪族炭化水素基の炭素数が13以上である単量体(b)を2種以上含有する場合においても、単量体(b)の重合率を特に大きく向上できる。このとき、単量体(c)の重合率も併せて向上でき、例えば単量体(c)がマレイミド単量体である場合には、VIIおよび潤滑油組成物へのマレイミド単量体の残留量を低減でき、人体や環境に対するこれらの負荷を低減できる。
第1の製造方法では、単量体(b)を2種以上含有し、さらに単量体(c)を含有する単量体群、とりわけ、単量体(b)を3種以上含有するか、または脂肪族炭化水素基の炭素数が13以上である単量体(b)を2種以上含有し、さらに単量体(c)を含有する単量体群の共重合における単量体(b)の重合率を、例えば90質量%以上とすることができ、93質量%以上、さらには95質量%以上とすることもできる。この共重合における単量体(c)の重合率は、例えば、90質量%以上であり、95質量%以上、さらには98質量%以上となりうる。
単量体群が単量体(b)を2種以上含有し、さらに単量体(c)を含有する場合、とりわけ単量体(c)がマレイミド単量体である場合、単量体(b)間で重合率の差が特に大きくなる傾向が見られる。この傾向は、上述した、単量体群が単量体(b)を3種以上含有するか、または脂肪族炭化水素基の炭素数が13以上である単量体(b)を2種以上含有する場合に強くなる。第1の製造方法では、これらの場合、特に、単量体(c)がマレイミド単量体であって、単量体群が単量体(b)を3種以上含有するか、または脂肪族炭化水素基の炭素数が13以上である単量体(b)を2種以上含有する場合においても、単量体(b)間の重合率の差を低減できる。また、単量体(b)の重合率が向上しても、この効果が得られる。
第1の製造方法では、単量体(b)を2種以上含有し、さらに単量体(c)を含有する単量体群、とりわけ、単量体(b)を3種以上含有するか、または脂肪族炭化水素基の炭素数が13以上である単量体(b)を2種以上含有し、さらに単量体(c)を含有する単量体群の共重合における単量体(b)間の重合率の差を、例えば、3.0質量%以下とすることができ、1.8質量%以下、1.0質量%以下、さらには0.5質量%以下とすることもできる。また、このときの単量体(b)の重合率は、例えば90質量%以上であり、93質量%以上、さらには95質量%以上でありうる。また、このときの単量体(c)はマレイミド単量体でありうる。
すなわち、第1の製造方法では、2種以上の単量体(b)を含有し、さらに単量体(c)を含有する単量体群の共重合における単量体(b)の重合率が90質量%以上であり、当該複数の単量体(b)間の重合率の差が3.0質量%以下、1.8質量%以下、1.0質量%以下、さらには0.5質量%以下でありうる。このときの単量体(c)はマレイミド単量体でありうる。
第1の製造方法では、単量体群が単量体(c)をさらに含有する場合に、上述した単量体(b)の重合率を向上させる効果および複数の単量体(b)間の重合率の差を低減できる効果がより顕著となる。
単量体(c)を含有する単量体群における単量体(a),(b)および(c)の含有率は、例えば、それぞれ、2〜40質量%、40〜80質量%および0.5〜35質量%である。単量体群における単量体(a)の含有率は、5〜35質量%、10〜30質量%でありうる。単量体群における単量体(b)の含有率は、50〜75質量%、60〜70質量%でありうる。単量体群における単量体(c)の含有率は、2〜25質量%、5〜15質量%でありうる。
単量体群の重合方法は限定されず、例えば、バルク重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合である。必要に応じて、分散媒、乳化剤、分散剤等を重合に使用することができる。
重合に使用する溶媒は、重合機構、重合する単量体の種類および量、ならびに重合開始剤および重合触媒の種類および量といった重合条件に応じて選択できる。溶液重合により単量体群を重合する場合、得られた(メタ)アクリレート重合体(A)の溶解性を確保できるとともに、重合体(A)をVIIに使用する場合に重合後の基油への溶媒置換が容易となることから、重合溶媒は、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランが好ましい。可能であれば基油を重合溶媒に用いてもよく、この場合、重合体(A)をVIIに使用する場合に重合後の基油への溶媒置換が不要となる。重合には、1種または2種以上の重合溶媒を使用しうる。単量体群の溶液重合における溶媒の使用量は限定されないが、例えば重量平均分子量Mwが10万以上の重合体(A)を得るためには、単量体および重合開始剤等のその他の成分の合計量の濃度が、重合系全体の40質量%以上100質量%以下となるような使用量が好ましい。
第1の製造方法における単量体群の重合系は、酸性物質を含有する。重合系が酸性物質を含有することにより、上述した効果が得られる。
本明細書における酸性物質は、重合系が含む単量体および溶媒等、当該酸性物質以外の全成分の質量と同じ質量の水に添加したときに、当該水のpHを2.0〜6.5の範囲、好ましくは3.0〜5.5の範囲とすることができる物質であり、かつ、分子内にチオール基を有さない物質である。分子内にチオール基を有する物質は本発明の重合系では連鎖移動剤として作用するため、酸性物質から除く。また、分子内に重合性不飽和結合を含有する物質は酸性物質から除かれる。当該物質は、共重合によって(メタ)アクリレート重合体(A)中に含有されることになり、含有により重合体の酸価が上昇してVIIへの使用に好ましくなくなるためである。
酸性物質は、例えば、有機リン系化合物および有機酸である。有機リン系化合物は、例えば、アルキル(アリール)亜ホスホン酸およびそのモノエステル、ジアルキル(アリール)ホスフィン酸、アルキル(アリール)ホスホン酸およびそのモノエステル、アルキル亜ホスフィン酸、亜リン酸ジまたはモノエステル、リン酸ジまたはモノエステルである。有機酸は、例えば、無水酢酸、酢酸、無水プロピオン酸、無水フタル酸である。酸性物質は、好ましくは、無水酢酸、酢酸、亜リン酸ジメチル、リン酸ジエチルヘキシル、およびフェニル亜ホスフィン酸から選ばれる少なくとも1種である。
1種または2種以上の酸性物質を単量体群の重合に使用できる。
重合系における酸性物質の含有率(使用量)は、例えば0.001〜5質量%であり、0.2〜3質量%でありうる。
重合系は、必要に応じて、単量体群および溶媒以外の物質を含むことができる。当該物質は、重合開始剤、連鎖移動剤、重合触媒等である。
重合開始剤は、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセテートパーオキサイド、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、イソブチリルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシン酸パーオキサイド、m−トルオイルベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ−s−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、α,α’−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3,−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシマレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシ−m−トルイルベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、t−アミルパーオキシイソナノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等の過酸化物系開始剤;2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−フェニルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[N−(4−クロロフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[N−(4−ヒドロフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(フェニルメチル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−プロペニル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−1,3−ジアゼピン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(5−ヒドロキシ−3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、ジメチル−2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2’−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等のアゾ系開始剤;2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンである。
連鎖移動剤は、例えば、メルカプト酢酸メチル、3−メルカプトプロピオン酸メチル、3−メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシル、3−メルカプトプロピオン酸n−オクチル、3−メルカプトプロピオン酸メトキシブチル、3−メルカプトプロピオン酸ステアリル、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)等のメルカプトカルボン酸エステル類;エチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、1,2−ジメルカプトエタン等のアルキルメルカプタン類;2−メルカプトエタノール、4−メルカプト−1−ブタノール等のメルカプトアルコール類;ベンゼンチオール、m−トルエンチオール、p−トルエンチオール、2−ナフタレンチオール等の芳香族メルカプタン類;トリス〔(3−メルカプトプロピオニロキシ)−エチル〕イソシアヌレート等のメルカプトイソシアヌレート類;2−ヒドロキシエチルジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド等のジスルフィド類;ベンジルジエチルジチオカルバメート等のジチオカルバメート類;α−メチルスチレンダイマー等の単量体ダイマー類;四臭化炭素等のハロゲン化アルキル類である。これらの中では、入手性に優れ、架橋防止能が高く、重合速度低下の度合いが小さい等の点から、メルカプトカルボン酸エステル類、アルキルメルカプタン類、メルカプトアルコール類、芳香族メルカプタン類及びメルカプトイソシアヌレート類等のメルカプト基を有する化合物が好ましい。1種または2種以上の連鎖移動剤を用いることができる。ただし、第1の製造方法における単量体群の重合に連鎖移動剤は必須ではない。第1の製造方法では、連鎖移動剤を含まない重合系において単量体群の重合を進行させて(メタ)アクリレート重合体(A)を製造しうる。
重合温度は、重合機構、使用する単量体の種類および量、ならびに重合開始剤および重合触媒の種類および量といった重合条件に応じて設定できる。重合温度は、例えば0℃以上であり、好ましくは25℃以上である。重合温度は、例えば200℃以下であり、好ましくは150℃以下である。重合温度が0℃未満になると、重合反応の進行が過度に遅くなることがある。重合温度が200℃を超えると、過度に激しく重合反応が進行し、その制御が困難になることがある。
(メタ)アクリレート重合体(A)の用途によっては、例えば重合体(A)をVIIに使用する場合には、重合体(A)の分子量および/または分子量分布の制御が望まれることがある。重合体(A)の分子量は、例えば、重合開始剤・重合触媒の種類および使用量、重合温度、連鎖移動剤の種類および使用量により制御できる。重合体(A)の分子量分布は、例えば、リビングラジカル重合の実施により制御できる。具体的なリビングラジカル重合として、可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)法、ニトロキシドによるラジカル重合を実施するNMP法、原子移動ラジカル(ATRP)法が知られている。これらの重合法の詳細について、Aldrich Material Matters, Vol.5, No.1, 2010に概説がある。
単量体群の重合を実施するための上記説明した以外の具体的な手法は、公知の手法に従うことができる。
単量体群は、上述した単量体(a),(b)および(c)以外に、これら単量体と共重合可能な他の単量体(d)を1種または2種以上含有することができる。単量体(d)は、例えば、重合性基を同一分子内に1つ有する単官能単量体、および重合性基を同一分子内に2以上有する多官能単量体である。重合性基は、例えばラジカル重合性基である。
単官能単量体は、例えば、単量体(a)および(b)以外の(メタ)アクリレート単量体、不飽和モノまたはジカルボン酸エステル単量体、ビニル芳香族単量体、ビニルエステル単量体、ビニルエーテル単量体、オレフィン類、シアン化ビニル単量体、N−ビニル化合物、(メタ)アクリルアミド単量体である。
単量体(a)および(b)以外の(メタ)アクリレート単量体は、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレートである。
不飽和モノまたはジカルボン酸エステル単量体は、例えば、ブチルクロトネート、オクチルクロトネート、ジブチルマレエート、ジラウリルマレエート、ジオクチルフマレート、ジステアリルフマレートである。
ビニル芳香族単量体は、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、メトキシスチレン等のスチレン系単量体、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジンである。
ビニルエステル単量体は、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、オクチル酸ビニルである。
ビニルエーテル単量体は、例えば、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテルである。
オレフィン類は、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−テトラデセン、1−オクタデセン、ジイソブテンである。
シアン化ビニル単量体は、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルである。
N−ビニル化合物は、例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルモルフォリン、N−ビニルアセトアミドである。
(メタ)アクリルアミド単量体は、例えば、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルフォリンである。
単量体群が単量体(d)である単官能単量体をさらに含有する場合、単量体群における当該単官能単量体の含有率は、30質量%以下が好ましく、25質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。ただし、単量体群におけるスチレン系単量体の含有率は、好ましくは2質量%以下である。重合体(A)をVIIに使用する場合、当該重合体(A)におけるスチレン系単量体に由来する単位の含有率が2質量%を超えると、基油への溶解度および当該VIIを含む潤滑油組成物の粘度指数が低下する傾向がある。
また、単量体群におけるオレフィン類の含有率は5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましい。重合体(A)をVIIに使用する場合、当該重合体(A)におけるオレフィン類に由来する単位の含有率が5質量%を超えると、当該VIIを含む潤滑油組成物の粘度指数が低下する傾向がある。
多官能単量体は、例えば、多官能(メタ)アクリレート単量体、ビニルエーテル基含有多官能(メタ)アクリレート単量体、アリル基含有多官能(メタ)アクリレート単量体、多官能(メタ)アクリロイル基含有イソシアヌレート単量体、多官能ウレタン(メタ)アクリレート単量体等の多官能(メタ)アクリル系化合物、多官能マレイミド系化合物、多官能ビニルエーテル単量体、多官能アリル系化合物、多官能芳香族ビニル単量体である。
多官能(メタ)アクリレート(多官能(メタ)アクリル酸エステル)単量体は、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAアルキレンオキシドジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、2,2’−〔オキシビス(メチレン)〕ビスアクリレート、ジアルキル−2,2’−〔オキシビス(メチレン)〕ビス−2−プロペノエートである。
ビニルエーテル基含有多官能(メタ)アクリレート(ビニルエーテル基含有多官能(メタ)アクリル酸エステル)単量体は、例えば、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルである。
アリル基含有多官能(メタ)アクリレート(アリル基含有多官能(メタ)アクリル酸エステル)単量体は、例えば、(メタ)アクリル酸アリル、α―アリルオキシメチルアクリル酸メチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ステアリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸2−デシルテトラデシルである。
多官能(メタ)アクリロイル基含有イソシアヌレート単量体は、例えば、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(メタクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートである。
多官能ウレタン(メタ)アクリレート(多官能ウレタン(メタ)アクリル酸エステル)単量体は、例えば、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の多官能イソシアネートと、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとの反応で得た多官能ウレタン(メタ)アクリレートである。
多官能マレイミド系化合物は、例えば、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド、1,6−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサンである。
多官能ビニルエーテル単量体は、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテルである。
多官能アリル系化合物は、例えば、エチレングリコールジアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル、ヘキサンジオールジアリルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラアリルエーテル等の多官能アリルエーテル単量体;トリアリルイソシアヌレート等の多官能アリル基含有イソシアヌレート単量体;フタル酸ジアリル、ジフェン酸ジアリル等の多官能アリルエステル単量体;ビスアリルナジイミド化合物;ビスアリルナジイミド化合物である。
多官能芳香族ビニル単量体は、例えば、ジビニルベンゼンである。
単量体群が単量体(d)である多官能単量体をさらに含有する場合、単量体群における多官能単量体の含有率は5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、2質量%以下がさらに好ましい。単量体群が単量体(d)である多官能単量体をさらに含有する場合、得られた重合体(A)は分岐を有する分子構造をとりうる。このような分子構造は、例えば、重合体(A)をVIIに使用した際に、当該VIIを含む潤滑油組成物のせん断安定性を向上させうる。
第1の製造方法により得た(メタ)アクリレート重合体(A)は、例えば、以下の特徴を有する。
重合体(A)の熱分解開始温度Tdは、例えば270℃以上であり、280℃以上、290℃以上、さらには300℃以上の値をとりうる。このような高いTdを有する重合体(A)のVIIへの使用により、当該VIIを含む潤滑油組成物の熱安定性およびせん断安定性が向上する。
重合体(A)の重量平均分子量Mwは、例えば10万以上であり、20万以上、30万以上、35万以上、さらには40万以上の値をとりうる。このようなMwを有する重合体(A)のVIIへの使用により、VIIの粘度指数向上効果が強くなる。上記範囲よりもMwが小さい重合体(A)をVIIに使用した場合、十分な粘度指数向上効果を得るために潤滑油組成物に対するVIIの使用量を増大させなければならないことがある。VIIの使用量の増大は、潤滑油組成物の製造コスト面で不利となる。重合体(A)のMwが過度に大きくなると、基油に対する溶解性が低下したり、当該重合体(A)を含む潤滑油組成物のせん断安定性が低下したりして、VIIへの使用に適さなくことがある。VIIへ使用する際の重合体(A)のMwの上限は、例えば、60万である。
重合体(A)をVIIに使用する場合、重合体(A)の数平均分子量Mnは、例えば9万以上であり、好ましくは9万〜30万、より好ましくは9万〜20万である。
重合体(A)をVIIに使用する場合、重合体(A)の分子量分布Mw/Mnは、例えば5.0以下であり、好ましくは4.0以下である。重合体(A)の分子量分布が過度に大きくなると、重合体(A)の基油に対する溶解性が低下したり、当該重合体(A)を含む潤滑油組成物のせん断安定性が低下したりして、VIIへの使用に適さなくなることがある。分子量分布の下限は1.0でありうるが、工業的な重合体(A)の製造を考慮すると、その下限は、例えば1.5以上であり、2.0以上、2.3以上であってもよい。なお、本明細書における重合体(A)のMwおよびMnは、後述の実施例に記載の方法によって測定した値とする。
[粘度指数向上剤(VII)の製造方法]
本発明のVIIの製造方法(第2の製造方法)は、(メタ)アクリレート重合体を含む粘度指数向上剤の製造方法であって、(メタ)アクリレート重合体が上記説明した(メタ)アクリレート共重合体(A)であり、この(メタ)アクリレート共重合体(A)を第1の製造方法によって得る方法である。
(メタ)アクリレート重合体(A)は、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体(a)に由来する単位と、炭素数6〜40の脂肪族炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体(b)に由来する単位とを構成単位として有する重合体である。上記説明したように、第1の製造方法では、(メタ)アクリレート単量体、特に単量体(b)、の重合率を向上できる。
また、第1の製造方法では、例えば、重合により重合体(A)を得る単量体群が単量体(b)を2種以上含有する場合、とりわけ、単量体(b)を3種以上含有するか、または脂肪族炭化水素基の炭素数が13以上である単量体(b)を2種以上含有する場合にも、単量体(b)の重合率を向上できるとともに複数の単量体(b)間の重合率の差を低減できる;および、単量体(b)の重合率が特に大きく低下する傾向にある、単量体群が単量体(c)をさらに含有する場合にも、単量体(b)の重合率を向上できるとともに複数の単量体(b)間の重合率の差を低減できる;といった効果が得られる。
このため、第2の製造方法では、とりわけ重合率が低下しやすく、単量体(c)を共重合したときにはさらに重合率が低下する傾向にある単量体(b)に由来する単位を構成単位として有しながらも、VII用の設計組成との組成の乖離が小さい(メタ)アクリレート重合体(A)を含むVII、および単量体(b)の残留量が少ないVIIが得られる。このようなVIIは、VIIとしての良好な特性、例えば、当該VIIを含む潤滑油組成物の粘度指数、せん断安定性、熱安定性、長期保存性等を向上させる良好な特性、を示すことが期待される。
第2の製造方法におけるVIIの具体的な製造は、(メタ)アクリレート重合体(A)の形成を第1の製造方法に従って行う以外は、公知の手法に基づいて行うことができる。例えば、第1の製造方法により得た(メタ)アクリレート重合体(A)の重合溶液を基油に溶媒置換してVIIを得ることができる。重合溶液の基油への置換には、公知の置換工程を利用できる。基油には、公知の基油を使用できる。
[粘度指数向上剤(VII)]
本発明のVIIは、(メタ)アクリレート重合体(A)を含み、VIIにおける単量体(b)の含有量(残留量)が、当該重合体(A)100質量部に対して、単量体群における単量体(b)の含有率をZ質量部としたときに0.11×Z質量部以下である。これは、例えば、VIIにおける(メタ)アクリレート重合体(A)の含有率が20質量%のときに、当該VIIに含まれる単量体(b)の含有率(残留率)が0.022×Z質量%以下であることを意味する。
本発明のVIIにおける単量体(b)の含有量は、(メタ)アクリレート重合体(A)100質量部に対して7.2質量部以下、5.8質量部以下、さらには4.4質量部以下でありうる。単量体(b)の含有量(残留量)がこれらの範囲にある場合、VIIとしてのより良好な特性、例えば、当該VIIを含む潤滑油組成物の粘度指数、せん断安定性、熱安定性、長期保存性等をより向上させる良好な特性、を示すことが期待される。
本発明のVIIが含みうる(メタ)アクリレート重合体(A)は、第1の製造方法の説明において上述したとおりである。
より具体的に(メタ)アクリレート重合体(A)は、3種以上の単量体(b)に由来する単位を構成単位として有するか、または脂肪族炭化水素基の炭素数が13以上である2種以上の単量体(b)に由来する単位を構成単位として有しうる。
(メタ)アクリレート重合体(A)における単量体(b)に由来する単位の含有率は、例えば40質量%以上であり、50質量%以上、さらには60質量%以上でありうる。重合体(A)における単量体(b)の含有率の上限は、例えば80質量%以下である。
(メタ)アクリレート重合体(A)における単量体(a)に由来する単位の含有率は、例えば60質量%以下であり、50質量%以下、さらには40質量%以下でありうる。重合体(A)における単量体(a)の含有率の下限は、例えば2質量%以上である。
(メタ)アクリレート重合体(A)は、極性基を有する環構造を分子構造に持つ単量体(c)に由来する単位を構成単位としてさらに有しうる。単量体(c)は、第1の製造方法の説明において上述したとおりである。単量体(c)は、例えばマレイミド単量体である。
(メタ)アクリレート重合体(A)が単量体(c)に由来する単位を構成単位として有する場合、重合体(A)における単量体(a)に由来する単位の含有率は、例えば2〜40質量%であり、単量体(b)に由来する単位の含有率は、例えば40〜80質量%であり、単量体(c)に由来する単位の含有率は、例えば0.5〜35質量%である。重合体(A)における単量体(a)に由来する単位の含有率は、5〜35質量%、10〜30質量%でありうる。重合体(A)における単量体(b)に由来する単位の含有率は、50〜75質量%、60〜70質量%でありうる。重合体(A)における単量体(c)に由来する単位の含有率は、2〜25質量%、5〜15質量%でありうる。
(メタ)アクリレート重合体(A)が単量体(c)に由来する単位を構成単位として有する場合、本発明のVIIでは、VIIにおける単量体(c)の含有量(残留量)が、当該重合体(A)100質量部に対して3.0質量部以下でありうるし、1.0質量部以下、さらには0.5質量部以下でありうる。
本発明のVIIにおける(メタ)アクリレート重合体(A)の含有率は特に限定されず、例えば50質量%以上であり、80質量%以上、さらには90質量%以上でありうる。また、本発明のVIIは、重合体として(メタ)アクリレート重合体(A)のみを含みうる。
本発明のVIIは、例えば、以下の各特徴を有しうる。
・例えば40以下、VIIの構成によっては35以下、30以下、さらには25以下のPSSI(Permanent Shear Stability Index)。本明細書のPSSIは、ASTM D6022の規定に準拠して測定した値である。なお、PSSIの下限は、例えば0.1以上であり、0.5以上、2以上、さらには5以上でありうる。このようなPSSIを有するVIIによれば、当該VIIを含む潤滑油組成物の粘度指数を良好に保持したまま、そのせん断安定性および貯蔵安定性を向上できる。
・例えば270℃以上、VIIの構成によっては280℃以上、290℃以上、さらには300℃以上の熱分解開始温度Td。Tdの上限は、例えば500℃以下であり、450℃以下、400℃以下でありうる。このようなTdを有するVIIによれば、当該VIIを含む潤滑油組成物の粘度指数を良好に保持したまま、その熱安定性およびせん断安定性を向上できる。
[潤滑油組成物の製造方法および潤滑油組成物]
本発明の潤滑油組成物の製造方法(第3の製造方法)は、(メタ)アクリレート重合体を含む粘度指数向上剤を含む潤滑油組成物の製造方法であって、(メタ)アクリレート重合体が上記説明した(メタ)アクリレート共重合体(A)であり、この(メタ)アクリレート共重合体(A)を第1の製造方法によって得る方法である。第3の製造方法は、(メタ)アクリレート重合体(A)を含む潤滑油組成物の製造方法であるともいえる。
(メタ)アクリレート重合体(A)は、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体(a)に由来する単位と、炭素数6〜40の脂肪族炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体(b)に由来する単位とを構成単位として有する重合体である。上記説明したように、第1の製造方法では、(メタ)アクリレート単量体、特に単量体(b)、の重合率を向上できる。
また、第1の製造方法では、例えば、重合により重合体(A)を得る単量体群が単量体(b)を2種以上含有する場合、とりわけ、単量体(b)を3種以上含有するか、または脂肪族炭化水素基の炭素数が13以上である単量体(b)を2種以上含有する場合にも、単量体(b)の重合率を向上できるとともに複数の単量体(b)間の重合率の差を低減できる;および、単量体(b)の重合率が特に大きく低下する傾向にある、単量体群が単量体(c)をさらに含有する場合にも、単量体(b)の重合率を向上できるとともに複数の単量体(b)間の重合率の差を低減できる;といった効果が得られる。
このため、第3の製造方法では、単量体(c)を共重合したときにはさらに重合率が低下する傾向にある単量体(b)に由来する単位を構成単位として有しながらも、VII用の設計組成との組成の乖離が小さい(メタ)アクリレート重合体(A)を含むVIIを含む潤滑油組成物、および、単量体(b)の残留量が少ない潤滑油組成物が得られる。このような潤滑油組成物は、例えば、粘度指数、せん断安定性、熱安定性、長期保存性等に関する良好な特性を示すことが期待される。
第3の製造方法における潤滑油組成物の具体的な製造は、(メタ)アクリレート重合体(A)の形成を第1の製造方法に従って行う以外は、公知の手法に基づいて行うことができる。例えば、第1の製造方法により得た(メタ)アクリレート重合体(A)の重合溶液を基油に溶媒置換してVIIを形成し、形成したVIIを基油(潤滑油基油)に配合して潤滑油組成物を得ることができる。重合溶液を潤滑油基油に溶媒置換して潤滑油組成物とすることも可能である。VIIの基油および潤滑油基油には、公知の基油を使用できる。
基油は、例えば、鉱物系基油、合成系基油である。鉱物系基油は、例えば、パラフィン系基油、ナフテン系基油である。鉱物系基油には、原料基油を溶剤精製したもの、水素化分解したもの、および水素化異性化処理したものが含まれる。合成系基油は、例えば、炭化水素系、エステル系、エーテル系、シリコーン系、フッ素系等の各系統の基油である。これら基油は、VIIおよび潤滑油組成物の基油として、あるいは条件が満たされれば(メタ)アクリレート重合体(A)の重合溶媒として、用いることができる。
鉱物系基油の具体例は、以下に示す基油(1)〜(7)、ならびに基油(1)〜(7)を原料とし、当該原料油および/または当該原料油から回収された潤滑油留分を精製して得た基油である。鉱物系基油は、好ましくは、以下に示す基油(1)〜(7)、および当該基油を原料油として回収された潤滑油留分を精製して得られる基油(8),(9)である。
(1)パラフィン系原油および/または混合基系原油を常圧蒸留して得た残渣油をさらに減圧蒸留して得た留出油(WVGO)
(2)潤滑油脱ろう工程により得たワックス(スラックワックス等)および/またはガストゥリキッド(GTL)プロセス等により得た合成ワックス(フィッシャー・トロプシュワックス、GTLワックス等)
(3)基油(1),(2)から選ばれる2種以上の基油の混合油および/または当該混合油のマイルドハイドロクラッキング処理油
(4)基油(1)〜(3)から選ばれる2種以上の基油の混合油
(5)基油(1)〜(4)の脱れき油(DAO)
(6)基油(5)のマイルドハイドロクラッキング処理油(MHC)
(7)基油(1)〜(6)から選ばれる2種以上の基油の混合油
(8)基油(1)〜(7)から選ばれる1種以上の基油、当該基油から回収された潤滑油留分を水素化分解して得た生成物もしくは当該生成物から蒸留等により回収された潤滑油留分に対して、溶剤脱ろうおよび接触脱ろう等の脱ろう処理を行って得た水素化分解鉱油、または当該脱ろう処理後にさらに蒸留して得た水素化分解鉱油
(9)基油(1)〜(7)から選ばれる1種以上の基油、当該基油から回収された潤滑油留分を水素化異性化して得た生成物もしくは当該生成物から蒸留等により回収された潤滑油留分に対して、溶剤脱ろうおよび接触脱ろう等の脱ろう処理を行って得た水素化異性化鉱油、または当該脱ろう処理後にさらに蒸留して得た水素化異性化鉱油。
合成系基油の具体例は、ポリα−オレフィンおよびその水素化物、イソブテンオリゴマーおよびその水素化物、イソパラフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ジエステル(ジトリデシルグルタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等)、ポリオールエステル(トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール−2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等)、ポリオキシアルキレングリコール、ジアルキルジフェニルエーテル、ポリフェニルエーテルであり、なかでもポリα−オレフィンが好ましい。典型的なポリα−オレフィンは、炭素数2〜32、好ましくは6〜16、のα−オレフィンのオリゴマーおよびコオリゴマー(1−オクテンオリゴマー、デセンオリゴマー、エチレン−プロピレンコオリゴマー等)、ならびにこれらの水素化物である。合成系基油は、好ましくは、1〜20mm2/秒の動粘度(100℃における動粘度)を有する。
基油は、米国石油協会(API)による分類に基づくグループIIIに属する基油でありうる。
基油は、上述した各基油を2種以上含んでいてもよい。この場合、基油(8)および/または基油(9)を含むことが好ましい。基油(8)および/または基油(9)を含む基油における当該基油(8)および基油(9)の含有率は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。
基油の粘度指数は、好ましくは100以上であり、より好ましくは120以上である。基油の粘度指数の上限は、例えば160以下である。基油の粘度指数がこれらの範囲にある場合、潤滑油組成物の粘度−温度特性、熱安定性、酸化安定性、揮発防止性、摩擦係数、摩耗防止性、低温粘度特性(低温流動性)を潤滑油組成物として適した範囲に保つことがより容易となる。
本明細書における粘度指数は、JIS K2283の規定に準拠して測定される値である。
本発明の潤滑油組成物における本発明のVIIの含有率は、例えば0.01質量%以上であり、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上である。また、当該含有率の上限は、例えば70質量%以下であり、60質量%以下、50質量%以下、さらには50質量%未満でありうる。このような潤滑油組成物は、例えば、当該組成物を原液として、さらなる基油および/または他の潤滑油組成物と混合して使用されうる。
本発明の潤滑油組成物を単独で潤滑油として使用する場合、当該組成物における本発明のVIIの含有率は、例えば0.01質量%以上であり、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上である。また、当該含有率の上限は、例えば20質量%以下であり、15質量%以下、さらには10質量%以下でありうる。
本発明の潤滑油組成物を基油として用いることもでき、この場合、当該組成物における本発明のVIIの含有率は、例えば5質量%以上であり、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。また、当該含有率の上限は、例えば70質量%以下であり、60質量%以下、50質量%以下、さらには50質量%未満でありうる。
本発明の潤滑油組成物の粘度指数は、例えば200以上であり、その構成によっては230以上となりうる。当該粘度指数の上限は、例えば400以下であり、300以下でありうる。
本発明の潤滑油組成物は、本発明のVIIおよび基油を含む。本発明の潤滑油組成物は、必要に応じて添加剤をさらに含んでいてもよい。添加剤は、例えば、流動点降下剤、摩耗防止剤、金属系清浄分散剤、無灰清浄分散剤、酸化防止剤、腐食防止剤、泡消剤、摩擦調整剤である。添加剤には、潤滑油組成物に対して各種添加剤として使用される公知の物質を使用できる。
流動点降下剤は、例えば、ポリメタクリレート類、ナフタレン−塩素化パラフィン縮合生成物、フェノール−塩素化パラフィン縮合生成物である。これらの中では、ポリメタクリレート類が好ましい。
摩耗防止剤(極圧剤)は、例えば、硫黄系、リン系、硫黄−リン系の極圧剤である。具体例は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)、亜リン酸エステル類、チオ亜リン酸エステル類、ジチオ亜リン酸エステル類、トリチオ亜リン酸エステル類、リン酸エステル類、チオリン酸エステル類、ジチオリン酸エステル類、トリチオリン酸エステル類、およびこれらのアミン塩、これらの金属塩、これらの誘導体、ならびにジチオカーバメート、亜鉛ジチオカーバメート、モリブデンジチオカーバメート(MoDTC)、ジサルファイド類、ポリサルファイド類、硫化オレフィン類、硫化油脂類である。これらの中では、硫黄系極圧剤が好ましく、特に硫化油脂が好ましい。
金属系清浄分散剤は、例えば、アルカリ金属/アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ金属/アルカリ土類金属フェネート、アルカリ金属/アルカリ土類金属サリシレート等の正塩または塩基性塩である。アルカリ金属は、例えばナトリウム、カリウムである。アルカリ土類金属は、例えばマグネシウム、カルシウム、バリウムであり、好ましくはマグネシウム、カルシウムであり、特に好ましくはカルシウムである。
無灰清浄分散剤は、例えば、炭素数40〜400の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基またはアルケニル基を分子中に少なくとも1つ有するモノまたはビスコハク酸イミド、炭素数40〜400のアルキル基またはアルケニル基を分子中に少なくとも1つ有するベンジルアミン、炭素数40〜400のアルキル基またはアルケニル基を分子中に少なくとも1つ有するポリアミン、ならびにこれらのホウ素化合物およびカルボン酸、リン酸等による変成品である。
酸化防止剤は、例えば、フェノール系、アミン系等の無灰酸化防止剤、銅系、モリブデン系等の金属系酸化防止剤である。フェノール系無灰酸化防止剤の具体例は、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)である。アミン系無灰酸化防止剤の具体例は、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキルフェニル−α−ナフチルアミン、ジアルキルジフェニルアミンである。
腐食防止剤は、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、チアジアゾール系、イミダゾール系の各化合物である。
泡消剤は、例えば、25℃における動粘度が1000〜10万mm2/秒であるシリコーンオイル、フルオロシリコーンオイル、アルケニルコハク酸誘導体、ポリヒドロキシ脂肪族アルコールと長鎖脂肪酸とのエステル、メチルサリチレート、o−ヒドロキシベンジルアルコール等である。
摩擦調整剤は、例えば、モリブデンジチオカーバメート、モリブデンジチオフォスフェート等のコハク酸イミドモリブデン錯体、有機モリブデン酸のアミン塩といった有機モリブデン化合物、および基本構造として炭素数8〜30の直鎖アルキルと金属に吸着できる極性基とを同じ分子内に有する化合物である。
本発明の潤滑油組成物が添加剤をさらに含む場合、潤滑油組成物におけるそれぞれの添加剤の含有率は、例えば、0.01質量%以上10質量%以下である。本発明の潤滑油組成物は、基油と本発明のVIIとからなる組成物であってもよい。
本発明の潤滑油組成物は、本発明のVII以外の粘度指数向上剤をさらに含んでいてもよく、さび止め剤、抗乳化剤、金属不活性化剤等をさらに含んでいてもよい。
実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、以下に示す実施例に限定されない。
最初に、本実施例における各評価項目の評価方法を示す。
[単量体の重合率および単量体(b)の残留率]
実施例および比較例で実施した重合反応における各単量体の重合率および単量体(b)の残留率(重合系に仕込んだ全単量体量に対する残留率)は、反応後に重合系に残留した未反応の当該単量体の量をガスクロマトグラフィー(島津製作所製、GC−2010plus)を用いて測定し、重合系への当該単量体の仕込み量と、測定した当該単量体の残留量とから計算して求めた。具体的には、以下のとおりである。
まず、評価対象である単量体と内部標準物質であるトリデカンとを酢酸エチルに溶解させて検量線溶液を作製し、これをガスクロマトグラフィーにより測定して得たピーク面積から各単量体ごとに検量線を作成した。次に、重合反応後の重合溶液の一部を抜き取り、抜き取った溶液と上記トリデカンとをメチルイソブチルケトンに溶解させたサンプル溶液を作製し、このサンプル溶液に含まれる各単量体の量をガスクロマトグラフィー(内部標準法)を用いて定量した。次に、抜き取った分を含め、基油溶液の全体に残留する各単量体の合計量を定量した値から換算して求め、これを各単量体についての全残存単量体量とした。次に、以下の式を用いて、各単量体の重合率および単量体(b)の残留率を求めた。
重合率(質量%)=(重合系に加えた単量体量−全残存単量体量)/(重合系に加えた単量体量)
残留率(質量%)=各単量体(b)の残留率(質量%)の合計;ここで、各単量体(b)の残留率=(1−各単量体(b)の重合率)×単量体群における当該各単量体(b)の含有率、である。
ガスクロマトグラフィーの測定装置および測定条件は、以下のとおりである。
システム:島津製作所製、ガスクロマトグラフィー GC−2010plus
カラム:GLサイエンス製、InertCap1(液相の膜厚:0.25μm、長さ:30m、内径:0.25mm)
カラム昇温条件:40℃で5分保持した後、昇温速度10℃/分で170℃まで、次いで昇温速度5℃/分で210℃まで、さらに昇温速度15℃/分で330℃まで昇温し、330℃で20分間保持した。
気化室温度:200℃
検出器(FID)温度:350℃
キャリアーガス:ヘリウム(カラム流量:1.33mL/分)
注入量:0.5μL(スプリット法、スプリット比:30.0)
内部標準物質:トリデカン
希釈溶剤:メチルイソブチルケトン
[重量平均分子量Mwおよび数平均分子量Mn]
実施例および比較例で作製した(メタ)アクリレート重合体(A)のMwおよびMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、標準ポリスチレン換算にて、以下の測定条件により求めた。
測定システム:東ソー製、GPCシステムHLC−8320 ECOSEC
展開溶媒:テトラヒドロフラン
溶媒流量:1.0mL/分
標準試料:TSK標準ポリスチレン(東ソー製「PS−オリゴマーキット」)
カラム:東ソー製、TSKgel GMHXL 2本
カラム温度:40℃
サンプル濃度:0.5質量%
注入量:200μL
[ガラス転移温度Tg]
実施例および比較例で作製した(メタ)アクリレート重合体(A)のTgは、JIS K7121の規定に準拠して求めた。具体的には、示差走査熱量計(リガク製、Thermo plus EVO DSC−8230)を用い、窒素ガス雰囲気下、約10mgのサンプルを常温から300℃まで昇温(昇温速度20℃/分)して得られたDSC曲線から、始点法により評価した。リファレンスにはα−アルミナを用いた。なお、Tgの評価に用いた重合体(A)のサンプルは、実施例および比較例で作製した重合体(A)の基油溶液をテトラヒドロフランで希釈し、これをメタノールに滴下して重合体(A)を沈殿させた後、沈殿物を真空下100℃で1時間乾燥させて得た。熱分解温度Tdの評価に用いた重合体(A)のサンプルも同様に得た。
これとは別に、実施例および比較例において重合系に仕込んだ全ての単量体が重合率100質量%で反応したと仮定したときの仮想の(メタ)アクリレート重合体(A)のTg(仕込み予想Tg)を、各単量体のホモポリマーのTgをP(絶対温度)とし、重合系における各単量体の含有率をQ(質量%)として値Q/Pを全単量体に対して求め、全単量体の値Q/Pの総和の逆数に100を乗じて求めた。
[熱分解温度Td]
実施例および比較例で作製した(メタ)アクリレート重合体(A)のTdは、差動型示差熱天秤装置(リガク製、ThermoPlus2 TG−8120)を用いて、窒素ガス雰囲気下、約10mgのサンプルを常温から500℃まで昇温速度10℃/分で昇温して求めた。このとき、500℃までの間で、サンプルの質量減少速度が0.005質量%/秒以下を保つように階段状等温制御を実施し、上記質量減少速度を保つために最初に階段状等温制御を実施した温度(階段状等温制御を実施した最も低い温度)をTdとした。
[粘度指数]
実施例および比較例で作製した基油溶液を含む潤滑油組成物の粘度指数は、当該基油溶液を、100℃における動粘度が7.0mm2/秒となるように基油(SK製、YUBASE4)で希釈して得た潤滑油組成物に対して、JIS K2283の規定に準拠して求めた。
[加熱試験における動粘度変化率]
実施例および比較例で作製した基油溶液を含む潤滑油組成物の加熱試験における動粘度変化率は、以下のように評価した。最初に当該基油溶液を、100℃における動粘度が約7.0mm2/秒となるように基油(SK製、YUBASE4)で希釈して潤滑油組成物を調製し、当該組成物の100℃における動粘度(加熱前の動粘度)を測定した。次に、調製した潤滑油組成物を大気雰囲気下150℃で16時間加熱撹拌した後、再度、100℃における動粘度(加熱後の動粘度)を測定した。測定した加熱前後の動粘度の値から、以下の式により、潤滑油組成物の加熱試験における動粘度変化率を求めた。
動粘度変化率(%)=(1−加熱後の動粘度/加熱前の動粘度)×100
(実施例1)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管、および滴下ロートを備えた反応容器に、単量体(a)としてメチルメタクリレート(MMA)25質量部、単量体(b)としてステアリルメタクリレート(SMA)40質量部およびラウリルメタクリレート/トリデシルメタクリレート混合物(質量比=54/46)(SLMA)25質量部、単量体(c)としてN−フェニルマレイミド(PMI)10質量部、酸化防止剤(ADEKA製、アデカスタブ(登録商標)2112)0.05質量部、酸性物質として無水酢酸0.40質量部、n−ドデシルメルカプタン(DM)0.05質量部、ならびにトルエン27.4質量部を仕込み、これに窒素ガスを導入しつつ、内容物を105℃まで昇温させた。次に、重合開始剤であるt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富製、ルペロックス(登録商標)570)0.0258質量部をトルエン0.46質量部に溶解させた溶液を反応容器に添加するとともに、上記重合開始剤0.103質量部をトルエン10.3質量部に溶解させた溶液を4時間かけて反応容器内に滴下しながら溶液重合を進行させ、その後、さらに4時間の熟成を行った。
次に、反応容器が備える上記冷却管を、冷却管および溜出液受器に接続したト字管に付け替えた後、基油(SK製、YUBASE4)233質量部を反応容器に投入した。次に、反応容器内を150℃まで昇温した後、真空ポンプを用いて徐々に減圧し、トルエンを除去した。反応容器内の温度が142℃に到達してから30分後に解圧・冷却し、重合体(A)の基油溶液(重合体濃度30質量%)を得た。評価結果等を、以下の表1に示す。
(実施例2)
反応容器に仕込んだMMAの量を25質量部から20質量部に、SMAの量を40質量部から30質量部に、SLMAを25質量部から40質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、重合体(A)の基油溶液(重合体濃度30質量%)を得た。評価結果等を、以下の表1に示す。
(実施例3)
反応容器に仕込んだトルエンの量を27.4質量部から60.8質量部に変更するとともに、DM0.05質量部をペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトアセテート);(PEMAc)0.05質量部に変更した以外は実施例2と同様にして、重合体(A)の基油溶液(重合体濃度30質量%)を得た。評価結果等を、以下の表1に示す。
(実施例4)
DM0.05質量部を反応容器に仕込まなかった以外は実施例1と同様にして、重合体(A)の基油溶液(重合体濃度30質量%)を得た。評価結果等を、以下の表1に示す。
(実施例5)
反応容器に仕込んだMMAの量を25質量部から35質量部に変更し、単量体(c)であるPMI10質量部を仕込まなかったとともに、DM0.05質量部をPEMAc0.05質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、重合体(A)の基油溶液(重合体濃度30質量%)を得た。評価結果等を、以下の表1に示す。
(比較例1)
酸性物質である無水酢酸0.40質量部を反応容器に仕込まなかった以外は実施例1と同様にして、重合体(A)の基油溶液(重合体濃度30質量%)を得た。評価結果等を、以下の表1に示す。
(比較例2)
反応容器に仕込んだMMAの量を25質量部から35質量部に変更し、単量体(c)であるPMI10質量部を仕込まず、DM0.05質量部をPEMAc0.05質量部に変更し、トルエン27.4質量部を47.9質量部に変更し、重合開始剤0.103質量部をトルエン10.3質量部に溶解させた溶液を、重合開始剤0.205質量部をトルエン20.5質量部に溶解させた溶液に変更した以外は比較例1と同様にして、重合体(A)の基油溶液(重合体濃度30質量%)を得た。評価結果等を、以下の表1に示す。
表1に示すように、比較例に比べて実施例では、単量体(b)であるSMAおよびSLMAの重合率が向上した。また、酸性物質である無水酢酸を重合系が含まない比較例1,2では、単量体(c)であるPMIの共重合によって単量体(b)の重合率が大きく低下したが、重合系が酸性物質である無水酢酸を含む実施例1〜4では、比較例1と同様に単量体(c)であるPMIを共重合しているにもかかわらず、単量体(b)の重合率が特に大きく向上した。また、実施例1〜4では、単量体(b)間の重合率の差が比較例1に比べて縮小して1.0質量%以下となる、および単量体(c)の重合率も大きく向上する等の効果が確認された。
また、比較例1で作製した重合体(A)では、仕込み予想Tgと実測Tgとの間に差が見られたが、実施例1,4で作製した重合体(A)では両Tgは一致していた。
さらに、潤滑油組成物としたときの100℃動粘度について、比較例1では加熱試験により低下する傾向が確認されたが、実施例1では加熱試験の前後においてそれほど変化が見られなかった。これは、実施例1の潤滑油組成物における単量体(b)の残留量が比較例1の潤滑油組成物における当該残留量よりも低減されたことに基づくと考えられる。