JP2018114538A - サイド堰、双ロール式連続鋳造装置、及び、薄肉鋳片の製造方法 - Google Patents
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地金が薄肉鋳片とともに一対の冷却ロール間に引き込まれると、薄肉鋳片とともに地金が冷却ロール間で圧着されるため、局所的に厚みが大きくなる。また、地金が一対の冷却ロールに噛み込まれる際には、一時的に一対の冷却ロール間の距離が大きくなり、薄肉鋳片の幅全体で厚くなる現象(地金のない部分では、凝固が遅れ高温となる、いわゆるホットバンド)の発生や、それにともなう薄肉鋳片の板厚変動、表面疵等の品質欠陥や板破断、湯漏れ等の操業上のトラブルの原因となる。
そこで、たとえば特許文献1−4には、サイド堰表面における地金の発生を抑制する技術が提案されている。
特許文献2には、サイド堰を導電性耐火物で構成し、サイド堰近傍の溶融金属を通電加熱する方法が提案されている。
特許文献3には、サイド堰に近接配置された電磁誘導コイルにより、サイド堰と溶融金属とを軟接触状態とするとともに、サイド堰近傍の溶融金属を誘導加熱する方法が提案されている。
特許文献4には、導電性耐火物で構成されたフィンを浸漬させ、溶融金属の流動方向を変化させるとともに、このフィンを用いて通電加熱する方法が提案されている。
また、特許文献2及び特許文献3に記載された方法では、鋳造中にサイド堰を加熱するための加熱装置を配置する必要があり、設備コストが高くなるといった問題があった。
さらに、特許文献4に記載された方法では、フィンによって溶融金属の流れを変えているが、サイド堰近傍において湯面での溶融金属の停滞を十分に抑制することができなかった。
以上のように、従来の方法では、サイド堰表面における地金の生成及び成長を十分に抑制することはできなかった。
特に、サイド堰の温度が低く地金が生成しやすい鋳造初期においても、断熱性に優れた多孔質層により、サイド堰側への放熱が抑制され、地金の生成及び成長を抑制することが可能となる。
また、サイド堰表面に形成した多孔質層が保温効果を有するため、発熱体等によってサイド堰近傍を加熱した際にも、サイド堰近傍の溶融金属の温度を高く維持することが可能となる。よって、鋳造を安定して実施することができる。
さらに、この多孔質層は、サイド堰のうち前記溶融金属プール部内の溶融金属と接する面に形成されており、冷却ロールとは接していないことから、冷却ロールとの摺接によって多孔質層が損耗することを抑制できる。
この場合、従来のサイド堰の表面にセラミックスファイバーからなる多孔質シートを配設することで多孔質層を形成することができ、構造が非常に簡単となる。また、鋳造条件に応じて、熱伝導性、耐熱性等を考慮してセラミックスファイバーからなる多孔質シートを選択することで、的確にサイド堰表面における地金の生成及び成長を抑制することが可能となる。
アルミナ及びジルコニアは、溶融金属との濡れ性が悪いことから、溶融金属と接した際に多孔質層の気孔部に溶融金属が入り込むことが抑制され、断熱性が維持されることになる。
この場合、多孔質層の気孔率が50%以上とされているので、気孔部が十分に確保されており、断熱性に優れている。一方、多孔質層の気孔率が98%以下とされているので、多孔質層の強度が確保される。
また、多孔質層の厚さが0.5mm以上とされているので、強度及び断熱性を確保することができる。さらに、多孔質層の厚さが10mm以下とされているので、この多孔質層自体の破損やサイド堰からの脱落を抑制することができる。
本実施形態では、溶融金属として溶鋼を用いており、鋼材からなる薄肉鋳片1を製造するものとされている。なお、鋼種としては、例えば0.001〜0.01%C極低炭鋼、0.02〜0.05%C低炭鋼、0.06〜0.4%C中炭鋼、0.5〜1.2%C高炭鋼、SUS304鋼に代表されるオーステナイト系ステンレス鋼、SUS430鋼に代表されるフェライト系ステンレス鋼、3.0〜3.5%Si方向性電磁鋼、0.1〜6.5%Si無方向性電磁鋼等(なお、%は、質量%)が挙げられる。
また、本実施形態では、製造される薄肉鋳片1の幅が200mm以上1800mm以下の範囲内、厚さが0.8mm以上5mm以下の範囲内とされている。
図1に示す双ロール式連続鋳造装置10は、一対の冷却ロール11、11と、薄肉鋳片1を支持するピンチロール12、12、および、13、13と、一対の冷却ロール11、11の幅方向端部に配設されたサイド堰20と、これら一対の冷却ロール11、11とサイド堰20とによって画成された溶鋼プール部16に供給される溶鋼3を保持するタンディッシュ18と、このタンディッシュ18から溶鋼プール部16へと溶鋼3を供給する浸漬ノズル19と、を備えている。
なお、溶鋼プール部16の湯面は、一対の冷却ロール11,11の周面と一対のサイド堰20,20によって四方を囲まれた矩形状をなしており、この矩形状をなす湯面の中央部に浸漬ノズル19が配設されている。
また、図3に示すように、溶鋼プール部16におけるサイド堰20の溶鋼3との接触部は、略逆三角形状をなしている。サイド堰20の温度が低下した場合には、この接触部において地金が発生することになる。
ここで、サイド堰20を構成する材料としては、例えば、黒鉛、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化珪素、アルミナ等又はこれらの材料の二種以上を用いた複合材料が用いられる。
ここで、本実施形態においては、多孔質層21は、セラミックスファイバーからなる多孔質シートがサイド堰20の表面に貼り付けられることで構成されている。なお、多孔質シートを貼り付ける際には、骨材としてアルミナ又はジルコニアを含有し、無機バインダーとしてリン酸塩、ホウ酸塩やケイ酸塩等を含有する耐熱性接着剤を用いることが好ましい。
ここで、多孔質層21(多孔質シート)を構成する繊維の外径は、例えば1μm以上20μm以下の範囲内とされている。
また、多孔質層21(多孔質シート)の密度は、0.08g/cm3以上3.0g/cm3以下の範囲内とされている。
ここで、上述の気孔率P(%)は、多孔質層21(多孔質シート)の見掛け密度をM1、多孔質層21(多孔質シート)と同組成物質の密度M0とした際に、以下の式で算出される。
P=100×(1−M1/M0)
なお、上述のアルミナ又はジルコニアの繊維の集合体からなる多孔質層21(多孔質シート)においては、1/3程度の厚さまで圧縮しても元の厚さに復元するため、見掛け密度は圧縮する前の状態で測定したものを用いた。
このため、本実施形態では、多孔質層21(多孔質シート)の気孔率Pを50%以上98%以下の範囲内に設定している。
なお、断熱効果を確実に奏功せしめるためには、多孔質層21(多孔質シート)の気孔率Pの下限を80%以上とすることが好ましく、88%以上とすることがさらに好ましい。また、多孔質層21(多孔質シート)の強度を十分に確保するためには、多孔質層21(多孔質シート)の気孔率Pの上限を97%以下とすることが好ましく、96%以下とすることがさらに好ましい。
厚さtが0.5mm未満では、十分な断熱効果を得ることができず、かつ、強度が不足するおそれがある。一方、厚さtが10mmを超えると、断熱効果が飽和するとともに、多孔質層21(多孔質シート)自体が破損したり、サイド堰20からの脱落してしまうおそれがある。
このため、本実施形態では、多孔質層21(多孔質シート)の厚さtを0.5mm以上10mm以下の範囲内に設定している。
なお、強度を確保するとともに断熱効果を確実に奏功せしめるためには、多孔質層21(多孔質シート)の厚さtの下限を1.0mm以上とすることが好ましく、2.0mm以上とすることがさらに好ましい。また、多孔質層21(多孔質シート)自体の破損やサイド堰20からの脱落を的確に抑制するためには、多孔質層21(多孔質シート)の厚さtの上限を8mm以下とすることが好ましく、6mm以下とすることがさらに好ましい。
このため、本実施形態では、冷却ロール11の周面から多孔質層21(多孔質シート)の外縁までの距離Lを0.5mm以上10mm以下の範囲内に設定している。
なお、冷却ロール11または冷却ロール面に形成された凝固シェル5と多孔質層21(多孔質シート)との摺接を的確に抑制するためには、冷却ロール11の周面から多孔質層21(多孔質シート)の外縁までの距離Lの下限を1mm以上とすることが好ましい。また、地金の生成を十分に抑制するためには、冷却ロール11の周面から多孔質層21(多孔質シート)の外縁までの距離Lの上限を3mm以下とすることが好ましい。
このため、本実施形態では、ロールキス点Kから多孔質層21(多孔質シート)の外縁最下点までの距離Hを30mm以上100mm以下の範囲内に設定している。
なお、冷却ロール11周面に形成された凝固シェル5と多孔質層21(多孔質シート)との摺接を的確に抑制するためには、ロールキス点Kから多孔質層21(多孔質シート)の外縁最下点までの距離Hの下限を50mm以上とすることが好ましい。また、地金の生成を十分に抑制するためには、ロールキス点Kから多孔質層21(多孔質シート)の外縁最下点までの距離Hの上限を80mm以下とすることが好ましい。
さらに、サイド堰20の表面に形成した多孔質層21が保温効果を有するため、発熱体等によってサイド堰20の近傍を加熱した際に、サイド堰20近傍の溶鋼3の温度を高く維持することが可能となる。これにより、鋳造中においても、サイド堰20の表面における地金の生成及び成長を抑制することができる。
例えば、本実施形態では、図1に示すように、ピンチロールを配設した双ロール式連続鋳造装置を例に挙げて説明したが、これらのロール等の配置に限定はなく、適宜設計変更してもよい。
窒化ホウ素からなるサイド堰の表面に、ジルコニア製のファイバーからなる多孔質シートをジルコニア系接着剤によって貼り付けることにより、多孔質層を形成した。
ここで、多孔質層(多孔質シート)の気孔率Pを96%、厚さtを2.5mmとした。また、冷却ロールの周面から多孔質層の外縁までの距離Lを2mmとした。さらに、ロールキス点Kから多孔質層の外縁最下点までの距離Hを45mmとした。
このサイド堰を、予熱温度1250℃、鋳造中の押付力を3kNとし冷却ロールの端面に押し付け、薄肉鋳片の鋳造を実施した。
酸化アルミニウムと炭素の複合材料からなるサイド堰のうち、冷却ロールとの摺接部を窒化ホウ素と窒化珪素と酸化アルミニウムの複合材料で構成するとともに、溶鋼と接する面に、アルミナ製のファイバーからなる多孔質シートをアルミナ系接着剤によって貼り付けることにより、多孔質層を形成した。
ここで、多孔質層(多孔質シート)の気孔率Pを88%、厚さtを3mmとした。また、冷却ロールの周面から多孔質層の外縁までの距離Lを3mmとした。さらに、ロールキス点Kから多孔質層の外縁最下点までの距離Hを80mmとした。
このサイド堰を、予熱温度1250℃、鋳造中の押付力を3kNとし冷却ロールの端面に押し付け、薄肉鋳片の鋳造を実施した。
酸化アルミニウムと炭素の複合材料からなるサイド堰のうち、冷却ロールとの摺接部を窒化ホウ素と窒化珪素と酸化アルミニウムの複合材料で構成し、多孔質層を形成しなかった。
このサイド堰を、予熱温度1250℃、鋳造中の押付力を3kNとし冷却ロールの端面に押し付け、薄肉鋳片の鋳造を実施した。
他方、従来例においては、鋳造開始直後の8秒後に地金の噛み込みが発生し、薄肉鋳片にも地金の巻き込みが確認された。また、鋳造開始6min経過後において、地金の噛み込みが発生した。このとき、通常2mmの鋳片厚さは局所的に増大し、最大3.6mmに達し、均一形状を損ねた。地金はサイド堰表面に形成した凝固層が薄肉鋳片とともに冷却ロール間で圧下され生じたものと推定された。
3 溶鋼
5 凝固シェル
11 冷却ロール
16 溶鋼プール部(溶融金属プール部)
20 サイド堰
21 多孔質層
Claims (6)
- 回転する一対の冷却ロール間に溶融金属を連続的に供給し、前記冷却ロールの周面に凝固シェルを形成・成長させて、薄肉鋳片を製造する双ロール式連続鋳造装置において、前記一対の冷却ロールの両端面に配設され、前記一対の冷却ロールとともに溶融金属プール部を形成するサイド堰であって、
前記溶融金属プール部内の溶融金属と接する面に、多孔質層が形成されていることを特徴とするサイド堰。 - 前記多孔質層は、セラミックスファイバーからなる多孔質シートで構成されていることを特徴とする請求項1に記載のサイド堰。
- 前記多孔質層は、アルミナ又はジルコニアで構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のサイド堰。
- 前記多孔質層は、気孔率が50%以上98%以下の範囲内、厚さが0.5mm以上10mm以下の範囲内とされていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のサイド堰。
- 回転する一対の冷却ロール間に溶融金属を連続的に供給し、前記冷却ロールの周面に凝固シェルを形成・成長させて、薄肉鋳片を製造する双ロール式連続鋳造装置であって、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のサイド堰が、前記一対の冷却ロールの両端面に配設され、前記一対の冷却ロールとともに溶融金属プール部を形成することを特徴とする双ロール式連続鋳造装置。 - 回転する一対の冷却ロール間に溶融金属を連続的に供給し、前記冷却ロールの周面に凝固シェルを形成・成長させて薄肉鋳片を製造する薄肉鋳片の製造方法であって、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のサイド堰を用いて、前記一対の冷却ロールとともに溶融金属プール部を形成することを特徴とする薄肉鋳片の製造方法。
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CN112839753A (zh) * | 2018-10-16 | 2021-05-25 | 日本制铁株式会社 | 浮渣吸附构件、双辊式连续铸造装置及铸坯的制造方法 |
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