サンプルを処理するのに要する手作業を最小化する、基板上に戴置された生体サンプルを処理するための装置を提供することが望まれている。さらに、簡単かつ時間効率の良い手法で生体サンプルを処理するこうした装置を提供するニーズが存在する。また、既知の自動サンプル処理装置の不具合または不便を改善及び/又は克服する、基板上に戴置された生体サンプルを処理するための装置を提供するニーズが存在する。
文書、活動、材料、デバイス、記事などの議論は、本発明の内容を提供することを目的としてのみ本明細書に含まれる。これらの事項の何れかまたは全てが、本願の各請求項の優先日の前に存在したものとして、先行技術の基礎の一部を形成し、あるいは本発明に関連した分野で共通の一般的知識であったことは、示唆も表現もしていない。
本発明の一態様は、基板上に戴置された生体サンプルを処理するための装置を提供する。該装置は、複数の基板を支持するようにそれぞれ構成された1つ以上の基板ホルダを受け入れるための入力バッファと、基板のうちの1つを受け入れるようにそれぞれ構成された複数の処理ステーションを含む処理ゾーンと、処理ステーションにおいて、コントローラにより試薬を基板に注入するように構成された試薬ディスペンサと、コントローラにより個々の基板を入力バッファでの基板ホルダと処理ステーションとの間で搬送するように構成された基板搬送装置と、を含む。
1つ以上の実施形態において、装置は、基板が入力バッファにある場合、各基板に付与された基板識別子を読み取るための基板識別読取機と、複数の手順を保存するためのデータベースとをさらに含み、各手順は、1つ以上の基板に適用される処理操作の順番を定義している。この場合、基板上に戴置された生体サンプルを効率的に処理するために、コントローラはさらに、基板搬送装置が処理ゾーン内での個別の基板をグループ化するように構成される。
コントローラは、基板搬送装置が、共通の手順が適用される個別の基板をグループ化するように構成してもよい。
コントローラは、基板搬送装置が、共通の試薬、例えば、抗体が付与される個別の基板をグループ化させるように構成してもよい。
コントローラは、基板搬送装置が、共通の処理時間、例えば、エピトープ賦活化(epitope retrieval)時間を共有する個別の基板をグループ化するように構成してもよい。
コントローラは、基板搬送装置が、装置内の手順及び/又は処理操作の際、基板のスループットを最適化するように個別の基板を搬送するように構成してもよい。
コントローラは、1つ以上の基板上で連続的に実施できる手順及び/又は処理操作の数を最大化することによって、スループットを最適化するように構成してもよい。
代替または追加として、コントローラは、試薬を変えることなく、異なる基板に対して試薬ディスペンサによって実施される試薬注入操作の数を最大化することによって、スループットを最適化するように構成してもよい。
1つ以上の実施形態において、基板識別読取機は、基板搬送装置によって支持される。
1つ以上の実施形態において、試薬ディスペンサは、基板搬送装置によって支持される。
1つ以上の実施形態において、装置は、カバーを基板上の生体サンプルに付与するための基板被覆ユニットをさらに含む。この場合、基板搬送装置はさらに、個別のスライドを基板被覆ユニットの中にまたはそこから搬送するように構成される。
1つ以上の実施形態において、処理ステーションは作業面に設けられ、装置は、作業面の下方に収納された複数の試薬容器と、試薬容器から試薬ディスペンサへ試薬を移送するための試薬移送システムとをさらに含む。
1つ以上の実施形態において、試薬移送システムは、作業面を通過する試薬移送ポートと、試薬移送ポートを経由して試薬を試薬容器から吸引するための吸引プローブとを含む。
1つ以上の実施形態において、試薬移送システムは、試薬容器を支持する回転式コンベヤ(carousel)をさらに含み、回転式コンベヤは、各試薬容器を選択的に試薬移送ポートと流体連通させるように構成される。
1つ以上の実施形態において、装置は、試薬容器を回転式コンベヤに投入し、そこから取り出すための試薬容器アクセスポートをさらに含む。
1つ以上の実施形態において、入力バッファは、基板ホルダのうち1つ以上を整列して受け入れるようにそれぞれ構成された複数の入力区画(compartment)を含み、基板ホルダ内の基板が、基板搬送装置にとってアクセス可能である。
入力区画の1つ以上が、基板ホルダ内の基板をベーキング(焼成)するための1つ以上のベーキングステーションを含んでもよい。
1つ以上の実施形態において、装置は、基板ホルダの1つ以上を受け入れるための出力バッファをさらに含み、基板搬送装置はさらに、コントローラにより個別の基板を、処理ステーションと出力バッファ内の基板ホルダとの間で搬送するように構成される。
1つ以上の実施形態において、出力バッファは、基板ホルダのうち1つ以上を整列して受け入れるようにそれぞれ構成された複数の出力区画を含み、基板ホルダ内の基板が、基板搬送装置にとってアクセス可能である。
出力区画の1つ以上が、基板ホルダ内の基板をキュアリング(養生)するための1つ以上のキュアリングステーションを含んでもよい。
1つ以上の実施形態において、入力及び/又は出力バッファは、複数の区画を含み、これらの区画は、基板ホルダを実質的に水平配向に支持するように構成される。
入力バッファに受け入れられた基板ホルダの少なくとも1つは、共通の患者症例(case)からの基板を支持してもよく、コントローラはさらに、その共通の患者症例に従って、基板を、出力バッファに受け入れられた基板ホルダの少なくとも1つにグループ化するように構成してもよい。基板のグループ化は、任意の所望の構成に従ってもよく、これに限定されないが、共通の患者症例、マーカーバッチ、染色バッチ、特殊化した手順、医師照会、病理学者行き、または他の好ましい管理構成を含む。1つ以上の実施形態において、基板のグループ化は、所望のグループ化及び/又は好みに従ってユーザによって構成可能であってもよい。
本発明の他の態様が、基板上に戴置された生体サンプルを処理するための自動化した方法を提供しており、基板が、処理ゾーンにおける処理ステーションで処理される。該方法は、複数の基板を支持するようにそれぞれ構成された1つ以上の基板ホルダを入力バッファに受け入れるステップと、コントローラによって設定され、基板搬送装置を用いて、個々の基板を、入力バッファでの基板ホルダと処理ステーションとの間で搬送するステップと、コントローラによって設定され、1つ以上の試薬ディスペンサを用いて、処理ステーションにおいて、試薬を基板に注入するステップと、を含む。
該方法は、コントローラによって設定され、基板搬送装置を用いて、基板ホルダのうち1つ以上を受け入れるために、個々の基板を処理ステーションと出力バッファでの基板ホルダとの間で搬送するステップをさらに含む。
該方法は、コントローラによって設定され、基板搬送装置を用いて、カバー部材を基板上の生体サンプルに付与するために、個々の基板を基板被覆ユニットに搬入および搬出するステップをさらに含む。
本発明のさらに他の態様が、実行時に、上述した方法を実施するコンピュータプログラムコードを提供する。
本発明のさらに他の態様が、上述したプログラムコードを含む、有形のコンピュータ読み取り可能な媒体を提供する。
本発明のさらに他の態様が、上述したプログラムコードを含むデータファイルを提供する。
図1〜図3を参照して、基板、例えば、スライドの上に戴置された生体サンプルを処理するための装置10の例示の実施形態を全体的に示している。装置10は、基板のうちの1つを受け入れるようにそれぞれ構成された複数の処理ステーション、例えば、処理ステーション(符号12)、を含む処理ゾーン11を含む。
装置10はまた、コントローラ60(図6参照)によって構成され、装置10の内部に配置されたBFR(Bulk Fluid Robot: バルク流体ロボット)14を含み、試薬容器(符号16,18)に保管された複数の試薬を処理ステーション12において基板に注入する。試薬は、BFR14から出力ノズル20を介して注入され、基板上の生体サンプルを処理する。例えば、BFR14は、コントローラ60によって設定され、試薬、例えば、シュウ酸、硫酸、過マンガン酸カリウム、アルコール、脱ろう剤、ヘマトキシリン、過酸化物、EDTA、クエン酸、DI水、ボンドウォッシュ(Bond wash)などを基板に注入し、基板上に戴置された生体サンプルを処理する。試薬容器16,18に保管された試薬(例えば、バルク流体試薬)は、装置10の前方にあるパネル22を経由してアクセス可能である。
装置10はまた、試薬を試薬容器16,18からBFR14の出力ノズル20へ運ぶための1つ以上のポンプ(不図示)と、チューブ(符号24,26)とを含む。
装置10はさらに、コントローラ60によって設定されたFTP(Fluid Transfer Probe: 流体移送プローブ)ロボット28を含み、高価値(high value)試薬容器、例えば、容器(符号27)に保管された複数の高価値試薬を、FTPロボット28に搭載されたFTP出力ノズル30を経由して、処理ステーション12で受け入れられた基板に注入する。使用時、BFR14およびFTPロボット28は、バルク流体試薬および高価値試薬を予め定めた順番で注入して、生体サンプルを処理するように、コントローラ60によって設定される。一例として、バルク流体試薬および高価値試薬は、インシチュ・ハイブリダイゼーション(ISH)および免疫組織化学的(IHC)応用のために、予め定めた染色手順に従って生体サンプルを染色するように注入される。
1つ以上の実施形態において、FTPロボットによって注入される試薬について液体レベル検知が望ましいであろう。液体レベル検知は、プローブ接触技術を用いて、及び/又は、注入する出力ノズルでの静電容量または圧力の変化を監視することによって実施してもよい。代替として、光学液体レベル検知システム及び/又は超音波システムを採用してもよい。入口で、チャンバ内、及び/又は出口を通じて取られた試薬体積の測定値が、コントローラ60によって比較でき、実施した手順の数に従って計算される全体注入量を照合する。この照合は、装置10に搭載され保管された試薬の在庫管理のために使用できる。
適切な液体レベル検知装置およびコンポーネントは、装置10内に組み込んでもよく、試薬容器およびコントローラ60と通信して、充分なレベルの試薬の設置により、連続した動作を確保する。コントローラ60は、切迫した試薬変更をユーザに通知したり、または、試薬の使用および寿命の管理を容易にするように構成してもよい。
さらに、試薬容器は、容器交換を必要とせずに、単一反応または多重反応のための充分な試薬供給を促進するのに必要な種々のサイズ、形状及び/又は構成を備えてもよく、装置10の構造内に適切に存在してもよい。
1つ以上の実施形態において、複数の試薬容器および、これら試薬容器のための支持部材、例えば、回転式コンベヤ(carousel)またはトレイなどを含む事前投入試薬システムを装置10に搭載してもよい。
装置10はさらに、処理ステーション12において基板上の生体サンプルの処理前に、複数の基板を支持するようにそれぞれ構成された1つ以上の基板ホルダを受け入れるための入力バッファ32を含む。さらに、装置10は、処理ステーション12での処理後に、基板が戴置されている1つ以上の基板ホルダを受け入れるための出力バッファ34を含む。明確化のために、幾つかの実施形態において、入力バッファは、出力バッファとしても機能し得る。例えば、処理のために入力バッファから除去された基板が、処理後に、同じ場所、よって同じバッファに戻ってもよい。
図4と図5は、複数の基板を支持するように構成された基板ホルダ36の例示の実施形態を示す。本例では、基板ホルダ36は、最大5個の基板を支持するように構成されているが、3つのスライド38,40,42だけを図4に示している。1つ以上の実施形態において、基板ホルダは、1個から5個の基板を支持するように構成してもよい。他の実施形態において、基板ホルダは、5個から20個の基板を支持するように構成してもよい。さらに他の実施形態において、基板ホルダは、20個から50個の基板を支持するように構成してもよい。基板ホルダ36内の各基板が、基板の外縁の少なくとも一部を支持する突起(ledge)および肩部、例えば、肩部(符号48,50)によって、開口部、例えば、開口部(符号44)の上方に適切な位置に維持される。
基板38〜42の各々が、機械読み取り可能な基板識別子、例えば、バーコード52〜56を運んでおり、基板識別子の自動検出、および基板ホルダ36内の個々の基板の識別可能にする。本発明のこの例示の実施形態ではバーコードを使用したが、代替の実施形態では、RFIDタグまたは任意の他の機械読み取り可能なデバイスを使用してもよい。機械読み取り可能な基板識別子は、任意の場所、例えば、試薬容器、基板、スライドマウント、カバースリップ・マガジン、カバー部材、または任意の他の場所に設置してもよく、識別、在庫管理を容易にし、または、装置のコンポーネントまたはプロセスを管理または制御する。
図6で最も判るように、入力バッファ32および出力バッファ34は、基板ホルダのうち1つ以上を整列して受け入れるようにそれぞれ構成された複数の入力区画を含み、基板ホルダ内の基板が、コントローラ60によって設定された基板搬送装置58にとってアクセス可能であり、個々の基板を、入力バッファ、処理ステーションおよび出力バッファでの基板ホルダ間で搬送する。明確化のため、区画のうち2つだけ、即ち、入力区画62および出力区画64を図6において参照している。入力バッファおよび出力バッファでの区画は、基板ホルダ36を実質的に水平配向に受け入れるように構成される。
装置10において、ベーキング(基板処理の開始)および覆われた基板のキュアリング(curing)(基板処理の終わり)が、それぞれ入力および出力バッファにおいて、または断続的なステーションで、あるいは専用ゾーンにおいて完了できる。これに関して、入力バッファ32の入力区画の1つ以上が、基板ホルダ内の基板をベーキングするために、1つ以上のベーキングステーション(不図示)を含んでもよい。同様に、出力バッファ34の出力区画の1つ以上が、基板ホルダ内の基板をキュアリングするために、1つ以上のキュアリングステーションを含んでもよい。ベーキング/キュアリングステーションの動作は、コントローラ60によって制御される。
本実施形態において、基板搬送装置58は、FTPロボット28の一部を形成する。FTPロボット28は、コントローラ60によって設定され、基板上に戴置された生体サンプルの処理のために、装置10内の個々の基板を種々の処理ステーション12へ移動させる。従って、図7においてより詳細に判るように、基板搬送装置58は、把持部(gripper)66と、ロボットアーム68と、把持部およびロボットアームを動作可能に相互連結する旋回機構70とを含む。
FTPロボット28は、コントローラ60によって設定され、把持部66をX,Y,Z軸に沿って変位させ、各基板が個別に把持されて、基板トレイ36(入力バッファ32の入力区画内)から第1処理ステーションへ移動し、そして、第1処理ステーションから第2処理ステーションへ移動し、生体サンプルが特定の手順に従って処理できるように構成される。そして、FTPロボット28は、各基板を、取り外し可能に保持して、出力バッファ34の区画内の選択された基板トレイへ移動させるように構成され、その結果、オペレータは、基板トレイを装置10から除去できる。
BFR14は、コントローラ60によって設定され、FTPロボット28による基板の移動との干渉を回避するように、X,Y,Z軸に沿って移動する。
装置10内に含まれる処理ステーション12の各々が、処理動作の際、基板搬送装置58が個々の基板を戴置する基板支持面72を含む。基板支持面72の下方には、コントローラ60によって動作する熱交換器(加熱パッド)74が設置され、ベーキング、脱ろうまたはキュアリング動作が、各基板処理ステーション12において実施できる。さらに、カバー部材戴置装置76が設けられ、基板に戴置された生体サンプルへの試薬の投入前に、カバー部材を基板の上に付与する。
好ましい実施形態において、カバー部材(不図示)は、自動サンプル処理機器での使用のために構成される。米国仮特許出願第61/560543号(名称 "Cover Member, Method and Treatment Module for treating a Biological Sample on a Substrate")および第61/560599号(名称 "An Automated System and Method of Treating Tissue Samples on Slides")は、共に同じ出願人によって出願され、こうした機器について説明しており、これらの出願の内容は参照によりここに組み込まれる。
図8に示すように、基板識別読取機68が基板搬送装置58によって支持され、一緒に変位する。本実施形態において、基板搬送装置58は、負圧を特定の基板に印加するための吸引装置77を備える。基板識別読取機68は、吸引装置77が当該基板を取り外し可能に保持した場合、各基板に付与されたバーコードまたは他の基板識別子を読み取るように配置される。基板を装置10内で取り外し可能に保持したり変位させるために種々の他の装置が想定できることは、理解されるであろう。
種々の実施形態において、装置10はさらに、カバーを基板上の生体サンプルに付与するために、基板被覆ユニット78、例えば、カバースリッパなどを含む。基板被覆ユニット78の選択した要素を図9に示しており、より詳細は、米国特許第6796353号(Leica Mikrosysteme GmbH)に記載されており、その全体内容は参照によりここに組み込まれる。
基板搬送装置58はさらに、コントローラ60によって設定され、個々の基板を基板被覆ユニット78の中にまたはそこから搬送する。図9において判るように、FTPロボット28および基板搬送装置58は、各基板80を、基板被覆ユニット78での水平面82に移動し、その上の予め定めた位置に基板80を維持するように構成される。2つの吸引ピックアップ装置86,88を含むベースブロック84が、搬送アーム90、直線移動可能角度付アーム92およびリフトエレメント94によってマガジン96の中に変位し、吸引ピックアップ装置86,88からの負圧を基板カバー98に印加することによって、基板カバー(カバースリッパ)98を取り出す。リフトエレメント94がマガジン96から上昇した後、それは角度付アーム92とともに変位し、ベースブロック84が基板82の情報の位置まで移動する。このとき接着剤100が基板82の上に既に塗布されている。ベースブロック84は、基板82の上に降下する。基板カバー98の第1端部102が、最初に基板82と接触する。
ベースブロック84のロール運動が、基板82上への基板カバー98の完全な設置を生じさせる。ベースブロック84は、関節継手104を介してリフトエレメント94に連結されている。ベースブロック84は、関節継手104の周りに旋回して、その過程において基板32の表面に沿って転がる。ロール運動の際、2つの吸引装置86,88での負圧はオフに切り替わる。そして、ベースブロック84は上昇し、マガジン96から追加の基板カバーを取り出す準備をする。
図2において最も判るように、処理ステーション12は、装置10内において共通の作業面80の上に戴置される。装置10内の作業面エリアを最適化するために、試薬容器26は、作業面80の下方に収納され、試薬容器26から、FTPロボット28の一部を形成する試薬ディスペンサへ試薬を移送するための試薬移送システム82が設けられる。このため試薬移送システム82は、作業面80を通過する試薬移送ポート84を含む。FTPロボット28は、試薬容器26から試薬移送ポート84を経由して試薬を吸引するためのピペットまたは他の吸引プローブを含む。
回転式コンベヤ86が、試薬容器を支持し、各試薬容器26を試薬移送ポート84と選択的に流体連通させるように設けられる。装置10は、試薬容器を回転式コンベヤ86に投入し、そこから取り出すための試薬容器アクセスポート88(図1)を含んでもよい。試薬容器内の試薬は、容器フリップ蓋、穿孔チップなどの配置によりアクセスポート88においてアクセスしてもよい。
装置10は、試薬容器26を冷却するための熱交換器(不図示)を含んでもよい。好都合には、熱交換器で発生した熱が再循環可能であり、装置10内で実行される加熱工程、例えば、ベーキング、キュアリングを支援する。
コントローラ60は、装置10から離れたコンピュータによって実装可能であり、通信ネットワーク、例えば、ローカルエリアネットワーク(LAN)または無線ネットワークを経由して接続できることは、当業者に理解されるであろう。何れの場合も、コントローラは、BFR14およびFTPロボット28に命令を出す多数のモジュールを備え、その動きおよび試薬の注入を制御し、そして、装置10の一部を形成する種々の他の装置の動作を制御する。
コントローラ60は、図10に概略的に示しており、特にプロセッサ190を含み、これは、通信基盤196を経由して、コンピュータプログラムコードを保存するための第1メモリ素子192と、コンピュータプログラムコードを実行した場合、プロセッサ190によって発生したデータを保存するための第2メモリ素子194と通信する。さらに、コントローラ60は、ディスプレイ・インタフェース198および対応するディスプレイ200を含み、コントローラ60とのユーザ相互作用を可能にする。
コントローラ60はまた、モータ、ポンプ、スキャナ、ヒーターおよび、装置10の動作に必要な他のデバイス214〜224を制御するためのドライバモジュール202〜212を含む。図10においてドライバモジュールおよびデバイスの例だけを図示しているが、当業者が、ここで説明した機能性を提供するために装置10を実装するのに必要なドライバモジュールおよびデバイスを容易に決定できることは理解されるであろう。
メモリ素子192,194は、装置10内に存在してもよく、あるいは、プロセッサ190とのデータ通信により装置10から離れて設置してもよいことは、当業者に理解されるであろう。とにかくプロセッサ190は、メモリ素子192からの命令を読み出して、基板上の生体サンプルを加熱するように装置10を動作させるように構成される。メモリ素子192はまた、入力バッファ32から処理ステーション12および基板被覆ユニット78そして出力バッファ34へ移動する基板を、識別、戴置、処理する命令を含み、装置10での手順及び/又は処理動作の際、染色および基板のスループットを繰り返し最適化するような決定論的な方法で行う。染色手順(例えば、BFR14およびFTPロボット28によって基板に注入される試薬の順番)を含む処理手順は、通信基盤196を経由してプロセッサ190によってアクセス可能な手順データベース226に保存され、そのため、プロセッサ190は、スライド処理ステーションにおいて、必要な順番および適切な周期で試薬を基板に注入するようにBFR14およびFTPロボット28を設定できる。
コントローラ60は、サンプルトラッキングシステム(例えば、Leica Cerebro platform)と動作可能に接続してもよく、スケジューリング、手順シーケンス、試薬要件、LISおよび他の接続性の計画立案を可能にする。
説明したように、コントローラ60は、メモリ193から命令を読み出して、手順データベース226に定義された手順および処理動作に従って、装置10内で基板を処理するように構成される。例えば、図11に示したフローチャートを参照して、ステップ228においてミクロトームを用いてサンプル組織を薄片化することによって、組織サンプルが得られる。組織サンプルは、オペレータによってスライドまたは他の基板の上に戴置してもよい。
そして、ステップ230において、これらの基板は、基板トレイ、例えば、図4と図5に示したトレイ36などに投入され、装置10の入力バッファ32の区画に配置される。コントローラ60は、FTPロボット28に命令を与えて、基板識別読取機68を、基板の各々に付与された基板識別子に接近するように位置決めする。いったん基板識別読取機が各基板識別子を読み取ると、プロセッサ190は、各基板に適用される手順を決定し、その結果、個々の基板が装置10内の処理ステーション12に移動可能になり、装置内の手順及び/又は処理動作の際、基板のスループットを最適化する。
好ましくは、プロセッサ190は、個々のスライドを選択し、これらのスライドを処理ステーションに配置し、個々の基板をグループ化して、基板上に戴置された生体サンプルの効率的な処理を可能にする。(表1)は、8個の基板トレイの例示のリストである。各トレイは最大で5つの基板を搭載し、これらは装置10内で処理される。8個の基板トレイは、トレイNo.1〜8とラベル付与している。
トレイNo.1〜7の各々が、単一症例(患者)からの基板を支持する。トレイNo.1,2,3が、異なる症例からの基板をそれぞれ支持する。トレイNo.4,5が、同じ症例(症例No.4)からの基板を支持し、トレイNo.6,7もそうである(症例No.5からの基板を支持する)。トレイNo.8は、複数の症例(症例No.6〜10)からの基板を支持する。
(表1)に列挙した一次抗体を含む一連の試薬が、各トレイによって支持された基板に付与される。トレイNo.1〜8に戴置された生体サンプルを効率的に処理するために、コントローラ60は、基板搬送装置58が個々の基板をトレイから処理ステーション連続的に投入して、共通の手順または共通の試薬が適用される個々の基板をグループ化するように設定できる。例えば、トレイNo.1,2両方からの個々の基板が、一次抗体p63の付与を必要とする。これらの基板を処理ステーションでグループ化することは、FTPロボット28が行うのに必要に洗浄工程を削減し、共通の処理動作が適用される基板の数を最大化し、これによりトレイNo.1〜8にある全ての基板を処理するのに必要な試薬の変更回数を最小化できる。
トレイNo.1〜8に戴置された生体サンプルを効率的に処理するために、基板の他のグループ化を作成してもよい。例えば、異なる処理動作が、試薬の付与、キュアリング、ベーキング、または異なる時間の長さで実行される他の処理工程を必要とする。FISH抗体が付与されるトレイNo.8の基板は、長い培養時間を必要とするため、他の全ての基板を処理した後、処理のために一緒にグループ化してもよい。
他の基板が、ピトープ賦活化時間に従ってグループ化してもよく、これにより同じ手順が異なる抗体を用いて適用される。
装置10内で実施される処理は、染色前に組織サンプルを乾燥させるベーキング処理232(特定の処理ステーションにおける加熱素子74の動作による)、IHC/ISH操作234、アルコールが生体サンプルに付与される脱水操作236、基板被覆ユニット78で行われるカバースリッパ操作238を含む。いったんこれらの種々の操作が実施されると、個々の基板は、出力バッファ34内の区画の1つにある基板トレイ内の空スロットに戻される。
ここから、基板トレイがステップ240において取り出され、続いて、ステップ242において基板の撮像、ステップ244において病理学者による染色組織サンプルの診断が行われる。
上述したように、多数の異なるプロセス操作が、装置10によって、特に、処理ゾーン11での処理ステーション、入力バッファ32、出力バッファ34および基板被覆ユニット78において実施可能である。これらのプロセス操作は、ベーキング、染色、カバースリッパ操作、分子検査(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応)、走査、及び/又はカバースリッパ接着剤のキュアリングを含む。装置10は、こうしたプロセス操作のうちの1つまたは限られた数だけを実施するように、使用または設定してもよいことは理解されよう。
複数の基板を収容した基板トレイではなく、装置10内の個々の基板の動きは、同じ手順または処理操作を有するスライドのグループ化を可能にすることは、前述から理解されるであろう。従って、装置10は、基板に戴置された生体サンプルを効率的に処理するために、処理ゾーン内で個々の基板をグループ化できる。結果として、時間の節約およびプローブ洗浄工程の回数の削減が達成される。装置10によって消費される洗浄液の量が最小化され、装置10によって達成されるスループットのより多くの増加が達成される。
種々の他の利点が、装置10によって達成される。例えば、装置10のより小さな専有面積が、処理ステーションにとって利用可能な作業スペースを最大化するように、試薬の場所選定によって達成される。
基板ホルダを受け入れるための入力バッファおよび出力バッファの設置、およびこれらのホルダに対する個々の基板の動きおよび処理により、基板は、患者症例によって基板ホルダに装置10に投入でき、装置10内の効率的な処理のためのグループ化し、そして、患者症例によって再び基板ホルダにいったん戻されることが理解されよう。こうした構成は、既知の生体サンプル処理装置によって現在要求されている、処理操作の前後における基板の選別および照合を最小化または排除する。
さらに、こうした構成は、研究所のワークフローを大幅に改善し、既知の生体サンプル処理装置の使用から由来するハンドリングエラーを削減する。
該方法の更なる態様が、装置10の上記説明から明らかになるであろう。当業者は、該方法がプログラムコード内に埋め込み可能であることは理解するであろう。プログラムコードは、多数の方法、例えば、有形コンピュータ読み取り可能な媒体、例えば、ディスクまたはメモリで、あるいは、データ信号またはデータファイルとして(例えば、サーバーから送信することによって)供給可能である。
本発明の範囲から逸脱することなく、上述した部分に対して種々の変形、追加及び/又は変更が可能であり、そして、上記の教示の観点から、本発明は、当業者によって理解されるように、種々の方法でソフトウエア、ファームウェア及び/又はハードウエアで実装できることは、理解すべきである。