JP2018112359A - 磁気熱量効果型ヒートポンプシステム - Google Patents

磁気熱量効果型ヒートポンプシステム Download PDF

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Abstract

【課題】磁気熱効果材料のカスケード接続による温度差維持を可能とする制御を用いた磁気熱量効果型ヒートポンプシステムを提供する。【解決手段】温度調節システム1は、熱的な負荷としての室内熱交換器31を備える。温度調節システム1は、ヒートポンプとして機能する磁気熱量効果型ヒートポンプ装置(MHP装置)4を有する。制御装置41は、MHP装置4の端部における入口媒体温度および出口媒体温度を監視する。制御装置41は、MHP装置4の端部における入口媒体温度および出口媒体温度が、所定の温度差の範囲内となるように、MHP装置4の運転状態、および/または、室内熱交換器31における動作条件を制御する。【選択図】図1

Description

この明細書における開示は、磁気熱量効果型ヒートポンプシステムに関する。
特許文献1は、磁気熱量効果型ヒートポンプシステムを開示する。特許文献1は、磁気熱量効果型ヒートポンプシステムの空調装置への利用を提案している。特許文献2および特許文献3は、AMRサイクルの一例を開示する。特許文献2および特許文献3は、磁気熱量効果素子におけるカスケード接続またはカスケード配置を提案する。カスケード配置は、磁気熱量効果を発揮する温度帯が異なる複数の部分素子を直列に配置している。カスケード配置は、大きい温度差におけるヒートポンプ機能の発揮を可能とする。従来技術として列挙された先行技術文献の記載内容は、この明細書における技術的要素の説明として、参照により援用される。
特開2012−237496号公報 特開2016−80206号公報 特開2016−109412号公報
従来技術では、磁気熱量効果型ヒートポンプシステムの高温端および/または低温端において、素子の温度維持に関して、考慮が不足している。このため、外部の熱的な負荷の変動、すなわち温度の変動に対して、磁気熱量効果型ヒートポンプシステムの高温端および/または低温端の機能を適切に維持できない場合がある。上述の観点において、または言及されていない他の観点において、磁気熱量効果型ヒートポンプシステムにはさらなる改良が求められている。
開示されるひとつの目的は、高温端および/または低温端における温度を適切に制御する磁気熱量効果型ヒートポンプシステムを提供することである。
開示される他のひとつの目的は、外部の負荷の変動があっても、高温端および/または低温端の温度が適切に維持される磁気熱量効果型ヒートポンプシステムを提供することである。
この明細書の開示により、磁気熱量効果型ヒートポンプシステムが提供される。磁気熱量効果型ヒートポンプシステムは、複数の部分素子(12a)をカスケード配置した磁気熱量効果素子(12)と、磁気熱量効果素子に磁場の変化を与える磁場変調装置(13)と、磁気熱量効果素子と熱交換する熱輸送媒体の往復流を生成する熱輸送装置(14)とを備える磁気熱量効果型ヒートポンプ装置(4)、磁気熱量効果型ヒートポンプ装置の少なくとも一方の端部に入る、または端部から出る熱輸送媒体の温度を変化させる熱的な負荷としての熱交換器(31)を有する高温系統(5)または低温系統(6)、および、端部に供給される熱輸送媒体の入口媒体温度と、端部から出る熱輸送媒体の出口媒体温度との間の実温度差が、所定の目標温度差に接近するように、磁気熱量効果型ヒートポンプ装置の運転状態、および/または熱交換器の運転状態を制御する制御装置(41)を備える。
開示される磁気熱量効果型ヒートポンプシステムによると、磁気熱量効果素子の端部における入口媒体温度と出口媒体温度との実温度差が、所定の目標温度差に維持される。このため、磁気熱量効果素子がカスケード配置されていても、端部の部分素子が、期待される磁気熱量効果を発揮することができる。このため、磁気熱量効果素子の全体としても、期待される能力を発揮することができる。
この明細書における開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を例示的に示すものであって、技術的範囲を限定することを意図するものではない。この明細書に開示される目的、特徴、および効果は、後続の詳細な説明、および添付の図面を参照することによってより明確になる。
第1実施形態に係る温度調節システムのブロック図である。 第1実施形態の制御システムを示すブロック図である。 第1実施形態の制御処理を示すフローチャートである。 第2実施形態の熱交換器を示す断面図である。 第3実施形態の熱交換器を示す断面図である。
図面を参照しながら、複数の実施形態を説明する。複数の実施形態において、機能的におよび/または構造的に対応する部分および/または関連付けられる部分には同一の参照符号、または百以上の位が異なる参照符号が付される場合がある。対応する部分および/または関連付けられる部分については、他の実施形態の説明を参照することができる。
第1実施形態
図1において、温度調節システム1は、室2の空気を調節対象としている。よって、温度調節システム1は、室2の空気温度を調節する。調節対象は、水、固体物などでもよい。室2は、例えば、車両の乗員室である。乗員室は、車両が室外に置かれるため、また、車両が移動するため、熱負荷の変動が激しい。例えば、室2に導入される空気の温度が大きく変動する。
温度調節システム1は、磁気熱量効果型ヒートポンプシステムを提供する。温度調節システム1は、室2の温度を制御するための空調装置3を有する。空調装置3は、いわゆるHVAC装置(Heating、 Ventilation and Air conditioning unit)である。空調装置3は、車両に搭載され、車両の乗員室の温度を調節する。
温度調節システム1は、磁気熱量効果型ヒートポンプ装置(MHP装置)4を備える。MHP装置4は、Magneto−caloric effect Heat Pump装置の略称である。MHP装置4は、熱磁気サイクル装置を提供する。
MHP装置4は、ヒートポンプ装置として機能する。MHP装置4は、高温端と低温端とを生成する。高温端は、高温系統5に熱的に接続されている。低温端は、低温系統6に熱的に接続されている。MHP装置4が冷却装置または冷房装置として利用される場合、低温系統6から得られる熱エネルギを、高温系統5へ放出する。高温端と低温端とは、逆に配置されてもよい。MHP装置4は、加熱装置または暖房装置として利用されてもよい。高温系統5と低温系統6とは、熱輸送媒体を熱媒体として利用しており、空気との熱交換を提供する。高温系統5および/または低温系統6は、熱輸送媒体を一次媒体として利用し、一次媒体と熱交換する二次媒体を利用してもよい。この場合、二次媒体が熱媒体とされ、空気と熱交換する。
この明細書においてヒートポンプ装置の語は広義の意味で使用される。すなわち、ヒートポンプ装置の語には、ヒートポンプ装置によって得られる冷熱を利用する装置と、ヒートポンプ装置によって得られる温熱を利用する装置との両方が含まれる。冷熱を利用する装置は、冷凍サイクル装置とも呼ばれることがある。よって、この明細書においてヒートポンプ装置の語は冷凍サイクル装置を包含する概念として使用される。
MHP装置4は、素子ベッド11を有する。素子ベッド11は、作業流体、すなわち熱輸送媒体のための作業室11aを形成する。熱輸送媒体は、作業室11aの中を流れる。熱輸送媒体は、MCE素子12が放熱または吸熱する熱を輸送する。熱輸送媒体は、不凍液、水、油などの流体によって提供することができる。
MHP装置4は、磁気熱量効果素子(MCE素子)12を備える。MCE素子12は、Magneto−Caloric Effect素子の略称である。MCE素子12は、作業室11aの中に収容されている。MCE素子12は、熱輸送媒体と熱交換する。MCE素子12は、外部磁場の強弱により発熱と吸熱とを生じる。MCE素子12は、外部磁場の印加により発熱し、外部磁場の除去により吸熱する。MCE素子12は、外部磁場が印加されることによって電子スピンが磁場方向に揃うと、磁気エントロピーが減少し、熱を放出することによって温度が上昇する。また、MCE素子12は、外部磁場が除去されることによって電子スピンが乱雑になると、磁気エントロピーが増加し、熱を吸収することによって温度が低下する。
MCE素子12は、常温域において高い磁気熱量効果を発揮する磁性体によって作られている。例えば、ガドリニウム系材料、またはランタン−鉄−シリコン化合物を用いることができる。また、マンガン、鉄、リンおよびゲルマニウムの混合物を用いることができる。
MCE素子12は、複数の部分素子12aを有する。複数の部分素子12aは、MCE素子12の長手方向、すなわち熱輸送媒体の流れ方向に沿って配置されている。複数の部分素子12aは、高い磁気熱量効果を発揮する温度帯が、それぞれ異なる。複数の部分素子12aは、カスケード接続、またはカスケード配置と呼ばれる直列的な配置である。複数の温度帯は、高温端の温度から低温端の温度にわたって直列的に分布している。複数の部分素子12aは、高温端と低温端との間において高効率温度帯が並ぶように直列に配列されている。
ひとつのMCE素子12とそれに関連する要素は、磁気熱量素子ユニットを構成する。磁気熱量素子ユニットは、MCDユニット(Magneto−Caloric effect Device)と呼ばれる。MHP装置4は、MCE素子12の磁気熱量効果を利用する。MHP装置4は、MCE素子12をAMR(ActiveMagnetic Refrigeration)サイクルとして機能させるための磁場変調装置13と熱輸送装置14とを備える。
磁場変調装置13は、MCE素子12に外部磁場を与えるとともに、その外部磁場の強さを増減させる。磁場変調装置13は、MCE素子12を強い磁界内に置く励磁状態と、MCE素子12を弱い磁界内またはゼロ磁界内に置く消磁状態とを周期的に切換える。磁場変調装置13は、MCE素子12が強い外部磁場の中に置かれる励磁期間、およびMCE素子12が励磁期間より弱い外部磁場の中に置かれる消磁期間を周期的に繰り返すように外部磁場を変調する。磁場変調装置13は、外部磁場を生成するための永久磁石15を備える。永久磁石15に代えて、他の磁力源、例えば、電磁石を用いることができる。
熱輸送装置14は、熱輸送媒体を流すための流体機器を備える。熱輸送装置14は、MCE素子12と熱交換する熱輸送媒体をMCE素子12に沿って流す装置である。熱輸送装置14は、往復流を生成する。熱輸送装置14は、ポンプ16と、バルブ17とによって提供することができる。熱輸送装置14は、多様な構成によって提供することができる。熱輸送装置14は、MCE素子12に高温端と低温端とを生成するように、熱輸送媒体を流す。
MHP装置4は、動力源としてのモータ18を備える。モータ18は、磁場変調装置13の動力源である。モータ18は、熱輸送装置14の動力源である。MHP装置4の動力源として設けられたモータ18は、車載の電池によって駆動される。磁場変調装置13と熱輸送装置14とは、互いに同期した磁場変化と、往復流とを提供する。これにより、MHP装置4は、AMRサイクルとして機能する。図示される例では、MHP装置4は、右側を高温端とし、左側を低温端としている。MHP装置4は、低温系統6から得た熱エネルギを、高温系統5へ放出する。
高温系統5は、室外熱交換器21と、ファン22とを備える。高温系統5は、外気へ放熱する放熱系統でもある。室外熱交換器21は、外気と熱交換する。室外熱交換器21は、加熱熱交換器、または非利用側熱交換器とも呼ばれる。ファン22は、電動機によって駆動される。ファン22は、室外熱交換器21を通過する外気の流れを生成する。この例では、室外熱交換器21は、放熱熱交換器である。
低温系統6は、室内熱交換器31と、ファン32とを備える。低温系統6は、空調装置3において利用される利用系統でもある。室内熱交換器31は、室2に供給される空気と熱交換する。室内熱交換器31は、吸熱熱交換器、または利用側熱交換器とも呼ばれる。室内熱交換器31は、室2の温度を調節する空調装置3に設けられた熱交換器である。ファン32は、電動機によって駆動される。ファン32は、空調装置3の中を室2に向けて流れる空気の流れを生成する。この例では、室内熱交換器31は、冷房熱交換器である。
温度調節システム1は、制御装置(CNTR)41を備える。制御装置41は、MHP装置4のための制御装置でもある。制御装置は、MHP装置4をAMRサイクルとして機能させる。制御装置41は、電子制御装置(Electronic Control Unit)である。
制御装置41は、処理装置(CPU)と、プログラムを記憶する記憶媒体としてのメモリとを有する。制御装置41は、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を備えるマイクロコンピュータによって提供される。記憶媒体は、コンピュータによって読み取り可能なプログラムを非一時的に格納している。記憶媒体は、半導体メモリまたは磁気ディスクによって提供されうる。プログラムは、制御装置41によって実行されることによって、制御装置41をこの明細書に記載される装置として機能させ、この明細書に記載される制御方法を実行するように制御装置41を機能させる。制御装置41が提供する手段は、所定の機能を達成する機能的ブロック、またはモジュールとも呼ぶことができる。制御装置41は、磁場変調装置13、熱輸送装置14、ポンプ16、バルブ17、モータ18、ファン22、およびファン32を制御可能である。
温度調節システム1は、複数のセンサを備える。センサは、検出対象として意図された物理量を検出し、検出された物理量を示す電気信号を出力する。物理量は、温度、圧力、回転数、回転位置、位相などである。センサは、制御装置41と電気的に接続されており、出力信号は、制御装置41に入力される。室内温度センサ42は、室2内の空気の温度を、室内温度Trとして検出する。吹出温度センサ43は、空調装置3から室2への吹出空気の温度を吹出空気温度Toutとして検出する。外気温度センサ44は、室外熱交換器21と熱交換する外気の温度を外気温度Tamとして検出する。吸込温度センサ45は、室内熱交換器31と熱交換する空気の温度を吸込空気温度Tinとして検出する。
MHP入口温度センサ46は、素子ベッド11の高温端へ入る熱輸送媒体の温度を高温端の入口媒体温度THinとして検出する。入口媒体温度THinは、室外熱交換器21の出口における媒体温度でもある。MHP出口温度センサ47は、素子ベッド11の高温端から出た熱輸送媒体の温度を高温端の出口媒体温度THoutとして検出する。出口媒体温度THoutは、室外熱交換器21の入口における媒体温度でもある。
MHP入口温度センサ48は、素子ベッド11の低温端へ入る熱輸送媒体の温度を低温端の入口媒体温度THinとして検出する。入口媒体温度THinは、室内熱交換器31の出口における媒体温度でもある。MHP出口温度センサ49は、素子ベッド11の低温端から出た熱輸送媒体の温度を低温端の出口媒体温度THoutとして検出する。出口媒体温度THoutは、室内熱交換器31の入口における媒体温度でもある。
カスケード配置されたMCE素子12が適正に機能するためには、少なくとも一方の端部における熱輸送媒体の実温度差が所定の目標範囲内に維持されることが望ましい。すなわち、高温端および/または低温端における熱輸送媒体の実温度差が所定の目標範囲内に維持されることが望ましい。例えば、高温端に戻る熱輸送媒体の温度と、高温端から出る熱輸送媒体の温度との絶対値および実温度差が、所定の目標温度差から許容範囲外になると、高温端に近い部分素子12aが磁気熱量効果を発揮できない。同様に、低温端に戻る熱輸送媒体の温度と、低温端から出る熱輸送媒体の温度との絶対値および実温度差が、所定の目標温度差から許容範囲外になると、低温端に近い部分素子12aが磁気熱量効果を発揮できない。そこで、制御装置41は、高温端および/または低温端における、入口媒体温度と出口媒体温度との絶対値および実温度差が、所定の目標温度差に接近するように、MHP装置4の運転状態を制御する。代替的に、もしくは追加的に、制御装置41は、高温系統5または低温系統6における熱交換性能を制御する。
図2は、温度調節システム1における制御システムを示す。図示されるように、MHP装置4は、位相調節機19を備えることができる。位相調節機19は、磁場変調装置13が提供する磁場変化の位相と、熱輸送装置14が提供する往復流の位相との位相差を調節する。位相調節機19は、磁場変調装置13と熱輸送装置14との回転位相差を調節する装置によって提供できる。代替的に、位相調節機19は、素子ベッド11と磁場変調装置13との相対的な位置関係をずらす装置によって提供できる。位相調節機19は、制御装置41によって制御される。
制御装置41は、MHP装置4の高温端および/または低温端における熱輸送媒体の実温度差を所定の目標温度差の許容範囲内とするように、熱負荷となる高温系統5および/または低温系統6の運転状態を制御することができる。制御装置41は、MHP装置4の高温端および/または低温端における熱輸送媒体の実温度差を所定の目標温度差の許容範囲内とするように、MHP装置4の運転状態を制御することができる。
制御装置41が提供する制御方法は、MHP装置4の高温端および/または低温端における熱輸送媒体の実温度差を所定の目標温度差の許容範囲内とするように、高温系統5および/または低温系統6の運転状態および/またはMHP装置4の運転状態を制御することができる。ここでは、MHP装置4の高温端および/または低温端における熱輸送媒体の実温度差を所定の目標温度差の許容範囲内とするように、MHP装置4の運転状態が制御される。
制御装置41は、高温端および低温端における入口媒体温度および出口媒体温度の目標値を有している。入口媒体温度および出口媒体温度は、それらの絶対値の範囲、およびそれらの温度差として設定されている。具体的には、制御装置41は、温度差記憶部41aを有する。温度差記憶部41aは、高温端に関して、入口媒体温度の目標値と、出口媒体温度の目標値と、入口媒体温度と出口媒体温度との目標温度差とを記憶している。温度差記憶部41aは、低温端に関して、入口媒体温度の目標値と、出口媒体温度の目標値と、入口媒体温度と出口媒体温度との目標温度差とを記憶している。目標値に対する実値の許容範囲は、任意に設定することができる。以下の説明において、目標温度差の語は、許容範囲を含むものである。
さらに、制御装置41は、高温端および/または低温端における熱輸送媒体の温度の絶対値、および実温度差を所定の目標温度差に維持するための制御部41bを有する。制御部41bは、熱負荷となる高温系統5および/または低温系統6の運転状態を制御することができる。制御部41bは、MHP装置4の運転状態を制御することができる。制御部41bは、熱負荷となる高温系統5および/または低温系統6の運転状態、およびMHP装置4の運転状態の両方を制御してもよい。
MHP装置4の制御方法は、MHP装置4が起動した後の定常運転状態において実行される。この実施形態は、低温端に熱的な冷房負荷としての室内熱交換器31が接続されているので、低温端について説明する。高温端でも、入口媒体温度と出口媒体温度との温度差を所定の範囲内に維持するための制御が実行される。なお、高温端に熱的な暖房負荷としての室内熱交換器31が接続される場合には、高温端について以下の説明が適用される。以下の説明では、高温端または低温端が端部と呼ばれる。
まず、外気温度、設定温度、室内温度など環境条件から、空調装置3の目標吹出温度を決める。目標吹出温度は、熱負荷に対抗して、室2内の温度を設定温度に維持するために必要な空調装置3の吹出温度である。同様に、目標吹出風量が決定される。
目標吹出温度から、端部の出口媒体温度を決める。この実施形態では、低温端に熱的な負荷である室内熱交換器31が熱的に結合されている。よって、例えば、低温端の出口媒体温度が決められる。出口媒体温度は、室内熱交換器31の温度効率を含む、外気温度と目標吹出温度との関数によって求めることができる。MHP装置4が暖房に利用される場合には、高温端における出口媒体温度が決められる。
出口温度媒体と、所定の目標温度差とから、入口媒体温度が決められる。所定の目標温度差は、予め決められ、制御装置の温度差記憶部41aに記憶されている。
出口媒体温度と入口媒体温度との実温度差が所定の目標温度差になるように、熱輸送媒体の媒体流量の範囲が決められる。
媒体流量の範囲から、周波数と、振幅とを決める。周波数は、磁場の変化、および往復流の周波数である。振幅は、往復流の振幅である。よって、制御装置41は、MHP装置4における熱輸送媒体の流量と、磁場の変化および往復流の周波数、ならびに往復流の振幅との関係を利用する。制御装置41は、実温度差が目標温度差に接近するように、磁場の変化および往復流の周波数と、往復流の振幅とを制御する。この結果、制御装置41は、MHP装置4の能力と、熱輸送媒体の媒体流量とを制御する。大きい流量を実現するには、高い周波数、または大きい振幅が必要である。ここでは、冷凍能力から、周波数と振幅とを決める。ここでは、定常運転時の冷凍能力を実現するように、周波数と振幅とが決められる。
こうして決定された周波数を実現するように、制御装置41は、磁場変調装置13を制御する。こうして決定された周波数と振幅との両方を実現するように、制御装置41は、熱輸送装置14を制御する。制御装置41は、位相調節機19を制御してもよい。この結果、MHP装置4の低温端における入口媒体温度と出口媒体温度との実温度差が、所定の目標温度差に維持されるように、MHP装置4の運転状態が制御される。
図3は、制御装置41の制御処理170を示す。まず、制御装置41は、ステップ171では、空調装置3に設けられた温度設定器から設定温度Tsetを入力する。制御装置41は、ステップ172では、環境条件を測定する。ここでは、複数のセンサから、外気温度Tam、吸込空気温度Tin、室内温度Tr、吹出空気温度Toutなどが入力される。制御装置41は、ステップ173では、目標を算出する。ここでは、目標吹出温度Tao、および目標風量が算出される。制御装置41は、ステップ174では、ファン32の風量レベルであるブロワレベルを算出する。これらの処理は、必要な冷凍能力を算出する処理である。言い換えると、室2の空調のためにMHP装置4が発揮するべき能力を算出する処理である。
制御装置41は、ステップ175では、目標媒体温度を算出する。必要に応じて、高温端および/または低温端における熱輸送媒体の入口媒体温度および/または出口媒体温度が算出される。この実施形態では、少なくとも低温端における入口媒体温度および出口媒体温度が算出される。高温端における入口媒体温度および出口媒体温度が算出されてもよい。制御装置41は、ステップ176では、媒体流量を算出する。制御装置41は、ステップ177では、MHP装置4の動力源であるモータ18の回転数を算出する。これにより、MHP装置4の磁場変化および往復流の周波数が調節される。制御装置41は、ステップ178では、往復流の振幅を算出する。制御装置41は、熱輸送装置14を制御することにより、往復流の振幅を、算出された値に制御する。
ステップ175−178の処理は、カスケード接続による高効率の運転を維持するための端部における熱輸送媒体の許容可能な温度差を可能とするMHP装置4の運転状態を算出し、MHP装置4の運転状態を調節する処理である。
制御装置41は、ステップ179では、目標吹出温度Tao=吹出温度Toutであるか否かを判定する。処理は、目標吹出温度Tao=吹出温度Toutである場合に、ステップ180へ進む。処理は、目標吹出温度Tao≠吹出温度Toutである場合に、ステップ181へ進む。
制御装置41は、ステップ180では、入口媒体温度TCinと出口媒体温度TCoutとの実温度差が、所定の温度差範囲の中にあるか否かを判定する。所定の温度差範囲は、閾値Th1、Th2と表記される。この処理では、|高温端の入口媒体温度THin−高温端の出口媒体温度THout|<Th1、|低温端の入口媒体温度TCin−低温端の出口媒体温度TCout|<Th2の式が利用される。ステップ180における判定が肯定的である場合、ステップ172へ戻る。これにより、環境条件の変化に追従して制御が継続される。ステップ180における判定が否定的である場合、ステップ176へ戻る。すなわち、再びMHP装置4の運転状態を算出し、MHP装置4を制御する。
制御装置41は、ステップ181では、目標吹出温度Taoと、実際の吹出温度Toutとに基づいて、モータ18の回転数を調節する。ステップ181では、目標吹出温度Tao>実際の吹出温度Toutである場合に、回転数を上げる(UP)指令が設定される。ステップ181では、目標吹出温度Tao<実際の吹出温度Toutである場合に、回転数を下げる(DOWN)指令が設定される。処理は、ステップ181の後に、ステップ177へ戻る。これにより、目標吹出温度Taoを実現するように、モータ18の回転数がフィードバック制御される。
以上に述べた実施形態によると、MHP装置4の低温端における入口媒体温度と出口媒体温度との実温度差が、所定の目標温度差に維持されるように、MHP装置4の運転状態が制御される。このため、熱負荷の変動、すなわち室内熱交換器31での熱的な負荷の変動があっても、入口媒体温度と出口媒体温度との温度差が適正に維持される。
第2実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、MHP装置4の運転状態が制御される。これに代えて、この実施形態では、熱負荷となる高温系統5および/または低温系統6の運転状態すなわち動作条件が制御される。この実施形態では、室内熱交換器31の温度効率が調節される。
この実施形態の制御方法では、室内熱交換器31における温度効率を仮定する。ここでは、室2の温度制御をするために必要な温度効率を仮定する。目標吹出温度から、MHP装置4の高温端における出口媒体温度を決める。
必要な冷凍能力をMHP装置4が発揮できる周波数と振幅とを決める。これらに応じて媒体流量が決定される。制御装置41は、MHP装置4における熱輸送媒体の流量と、磁場の変化および往復流の周波数、ならびに往復流の振幅との関係を利用する。制御装置41は、実温度差が目標温度差に接近するように、磁場の変化および往復流の周波数と、往復流の振幅とを制御する。この結果、制御装置41は、MHP装置4の能力と、熱輸送媒体の媒体流量とを制御する。
必要な冷凍能力と媒体流量とから、MHP装置4の低温端における入口媒体温度と出口媒体温度との温度差を決定する。MHP装置4の高温端における入口媒体温度と出口媒体温度との実温度差が、所定の目標温度差の範囲か否かを評価する。
仮定した温度効率となるように室内熱交換器31を制御する。ここでは、室内熱交換器31における熱輸送媒体と空気との熱交換量が調節される。この処置は、室内熱交換器31における伝熱面積を変化させる処理とも呼ばれる。この処理は、室内熱交換器31における熱輸送媒体の流通面積を変化させる処理によって実現可能である。代替的に、この処理は、室内熱交換器31における空気の通風面積を変化させる処理によって実現可能である。この実施形態では、前者が利用される。
図4は、熱輸送媒体の流通面積を変化させる室内熱交換器31の一例を示す。室内熱交換器31は、ヘッダタンク51、52を有する。これら2つのヘッダタンク51、52の間を連通するように、複数のチューブ53が配置されている。複数のチューブ53は、それらの間に空気の通路を形成するように、所定間隔で積層されている。複数のチューブ53の間における空気通路には、複数のフィン54が配置されている。室内熱交換器31は、空気と熱交換する媒体を通すための複数のチューブ53を備える。
室内熱交換器31は、チューブ53を開閉する媒体弁機構255を備える。媒体弁機構255は、複数のチューブ53への熱輸送媒体の流入口を開閉する。媒体弁機構255は、熱輸送媒体が流入するチューブ53の数を調節可能である。室内熱交換器31は、媒体弁機構255を駆動するためのアクチュエータ256を備える。
制御装置41は、実温度差が目標温度差に接近するように、アクチュエータ256を制御する。制御装置41は、複数のチューブ53のうち、熱輸送媒体が流れる数を変化させる。これにより、制御装置41は、低温系統6における、熱交換のために有効な伝熱面積を変化させる。言い換えると、制御装置41は、低温系統6の熱交換性能を制御する。
このように、熱交換のために有効なチューブ53の数を制御することで、室内熱交換器31における温度効率を調節することができる。有効なチューブ53の数が多い場合、高い温度効率が提供される。有効なチューブ53の数が少ない場合、低い温度効率が提供される。
以上に述べた実施形態によると、MHP装置4の低温端における入口媒体温度と出口媒体温度との実温度差が、所定の目標温度差に維持されるように、熱的な負荷となる室内熱交換器31の運転状態が制御される。このため、熱負荷の変動、すなわち室内熱交換器31での熱的な負荷の変動があっても、入口媒体温度と出口媒体温度との温度差が適正に維持される。
第3実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、有効なチューブ53の数が調節される。これに代えて、この実施形態では、空気の通風面積が調節される。
図5は、空気の通風面積を変化させる室内熱交換器31の一例を示す。室内熱交換器31は、複数のチューブ53の間の空気通路を開閉する空気弁機構355を備える。空気弁機構355は、複数の空気通路への空気の流入口を開閉する。空気弁機構355は、通風面積を調節可能である。室内熱交換器31は、空気弁機構355を駆動するためのアクチュエータ356を備える。なお、空気弁機構355は、チューブ53の長手方向に沿って移動してもよい。この場合、通風面積が連続的に変化する。
制御装置41は、実温度差が目標温度差に接近するように、アクチュエータ356を制御する。これにより、制御装置41は、低温系統6における空気の通風面積を変化させる。言い換えると、制御装置41は、低温系統6の熱交換性能を制御する。
このように、通風面積を制御することで、室内熱交換器31における温度効率を調節することができる。通風面積が広い場合、高い温度効率が提供される。通風面積が小さい場合、低い温度効率が提供される。以上に述べた実施形態でも、先行する実施形態と同様の作用効果が得られる。
他の実施形態
この明細書における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
上記実施形態では、MHP装置4の周波数および振幅の制御、または熱交換器における温度効率の制御が実行される。なお、熱交換器における温度効率は、熱交換器における熱交換量とも呼ばれる。これに代えて、周波数および振幅の制御、および熱交換器における温度効率の制御の両方が実行されてもよい。これにより、高温端と低温端との両方において、入口媒体温度と出口媒体温度との温度差を所定温度範囲内に維持しやすい。例えば、MHP装置4に対して過剰な熱負荷を与える熱交換器の温度効率が、熱負荷を抑制するように制御される。同時に、高温端と低温端との両方において入口媒体温度と出口媒体温度との温度差を所定温度範囲内とするように、MHP装置4の周波数と振幅とを制御することができる。
上記実施形態では、車両のための空調装置3が提供される。これに代えて、住宅用の空調装置を提供してもよい。また、水を加熱または冷却する装置、例えば給湯装置または冷水機を提供してもよい。また、上記実施形態では、室外の空気を主要な熱源とするMHP装置4を説明した。これに代えて、水、土などの他の熱源を主要熱源として利用してもよい。上記実施形態のポンプ16は、斜板式ポンプ、多気筒ポンプなどの容積型ポンプ、または非容積型ポンプによって提供されてもよい。上記実施形態では、単一のモータ18が利用されている。これに代えて、磁場変調装置13のためのモータと、熱輸送装置14のためのモータとを採用してもよい。この場合、2つのモータの回転位相を調節することによって、磁場変化の位相と、往復流の位相との位相差を調節することができる。
上記実施形態では、高温系統5または低温系統6の室外熱交換器21または室内熱交換器31の熱交換性能を変化させている。これに代えて、高温系統5または低温系統6の循環流量を制御して熱交換性能を制御してもよい。例えば、高温系統5または低温系統6に二次媒体が用いられる場合、二次媒体を循環させるためのポンプを制御することができる。
1 温度調節システム、 2 室、 3 空調装置、
4 磁気熱量効果型ヒートポンプ装置(MHP装置)、
5 高温系統、 6 低温系統、
11 素子ベッド、 12 MCE素子、 12a 部分素子、
13 磁場変調装置、 14 熱輸送装置、 15 永久磁石、
16 ポンプ、 17 バルブ、 18 モータ、 19 位相調節機、
21 室外熱交換器、 22 ファン、
31 室内熱交換器、 32 ファン、
41 制御装置、42−49 温度センサ。

Claims (10)

  1. 複数の部分素子(12a)をカスケード配置した磁気熱量効果素子(12)と、前記磁気熱量効果素子に磁場の変化を与える磁場変調装置(13)と、前記磁気熱量効果素子と熱交換する熱輸送媒体の往復流を生成する熱輸送装置(14)とを備える磁気熱量効果型ヒートポンプ装置(4)、
    前記磁気熱量効果型ヒートポンプ装置の少なくとも一方の端部に入る、または前記端部から出る前記熱輸送媒体の温度を変化させる熱的な負荷としての熱交換器(31)を有する高温系統(5)または低温系統(6)、および、
    前記端部に入る前記熱輸送媒体の入口媒体温度と、前記端部から出る前記熱輸送媒体の出口媒体温度との間の実温度差が、所定の目標温度差に接近するように、前記磁気熱量効果型ヒートポンプ装置の運転状態、および/または前記低温系統または前記高温系統における熱交換性能を制御する制御装置(41)を備える磁気熱量効果型ヒートポンプシステム。
  2. 前記制御装置は、前記実温度差が前記目標温度差に接近するように、前記磁気熱量効果型ヒートポンプ装置の能力と、前記熱輸送媒体の媒体流量とを制御する請求項1に記載の磁気熱量効果型ヒートポンプシステム。
  3. 前記制御装置は、前記実温度差が前記目標温度差に接近するように、前記磁場の変化および前記往復流の周波数と、前記往復流の振幅とを制御する請求項2に記載の磁気熱量効果型ヒートポンプシステム。
  4. 前記制御装置は、前記実温度差が前記目標温度差に接近するように、前記熱交換器の運転状態を制御する請求項1に記載の磁気熱量効果型ヒートポンプシステム。
  5. 前記制御装置は、前記実温度差が前記目標温度差に接近するように、前記熱交換器における熱交換のために有効な伝熱面積を変化させる請求項4に記載の磁気熱量効果型ヒートポンプシステム。
  6. 前記熱交換器は、空気と熱交換する媒体を通すための複数のチューブを備え、
    前記制御装置は、前記実温度差が前記目標温度差に接近するように、複数の前記チューブのうち、前記媒体が流れる数を変化させる請求項4に記載の磁気熱量効果型ヒートポンプシステム。
  7. 前記熱交換器は、空気と熱交換する媒体を通すための複数のチューブを備え、
    前記制御装置は、前記実温度差が前記目標温度差に接近するように、前記空気の通風面積を変化させる請求項4に記載の磁気熱量効果型ヒートポンプシステム。
  8. 前記制御装置は、前記磁気熱量効果型ヒートポンプ装置をAMRサイクルとして機能させる請求項1から請求項7のいずれかに記載の磁気熱量効果型ヒートポンプシステム。
  9. 前記熱交換器は、室(2)の温度を調節する空調装置(3)に設けられた室内熱交換器である請求項1から請求項8のいずれかに記載の磁気熱量効果型ヒートポンプシステム。
  10. 前記制御装置は、前記磁気熱量効果型ヒートポンプ装置における前記熱輸送媒体の流量と、前記磁場の変化および前記往復流の周波数、ならびに前記往復流の振幅との関係を利用する請求項1から請求項9のいずれかに記載の磁気熱量効果型ヒートポンプシステム。
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