JP2018110561A - タコ用産卵床、タコ用魚礁、タコ用産卵水槽システム、タコ用孵化水槽システムおよびタコの産卵孵化方法 - Google Patents

タコ用産卵床、タコ用魚礁、タコ用産卵水槽システム、タコ用孵化水槽システムおよびタコの産卵孵化方法 Download PDF

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Abstract

【課題】タコの安定的で効率的な増殖を行うことができるタコ用産卵床、タコ用魚礁、タコ用産卵水槽システム、タコ用孵化水槽システムおよびタコの産卵孵化方法を提供する。
【解決手段】タコ用産卵床100は、産卵床形成体101を備えている。産卵床形成体101は、可撓性を有する樹脂材を平面視で方形板状に形成して構成されている。この場合、産卵床形成体101は、巣穴部92の内径の円周の長さ以上の長さに形成されている。産卵床形成体101は、一方の面に産卵部102が形成されるとともに他方の面に巣穴対向部103が形成されている。産卵部102は、巣穴部92内においてタコOが卵Eを産み付ける部分であり、平滑な面で構成されている。巣穴対向部103は、巣穴部92を構成する内周面に密着する部分であり、産卵部102と同様な平滑な面で構成されている。
【選択図】 図9

Description

本発明は、タコの産卵および孵化に用いるタコ用産卵床、タコ用魚礁、タコ用産卵水槽システム、タコ用孵化水槽システムおよびタコの産卵孵化方法に関する。
従来から、タコの安定的で効率的な増殖を目的としてタコの産卵用魚礁が提案されている。例えば、下記特許文献1には、自然石にタコが入り込んで産卵を行う横孔を形成した産卵用魚礁が開示されている。
特開2006−288381号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載されたタコの産卵用魚礁においては、親ダコは横孔内の内周面の最奥部に卵を産み付けるため、人が卵の成育状況を確認したり人工孵化のために卵を採取したりする作業が極めて困難でタコの安定的で効率的な増殖が困難であるという問題がある。特に、日本の東北地方以東の沿岸に生息するヤナギダコは、産卵から孵化まで1年の時間を要するため安定的で効率的な増殖が極めて困難であるという問題があった。
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、タコの安定的で効率的な増殖を行うことができるタコ用産卵床、タコ用魚礁、タコ用産卵水槽システム、タコ用孵化水槽システムおよびタコの産卵孵化方法を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、タコが卵を産み付けるためのタコ用産卵床であって、タコが入り込むことができる狭小空間からなる巣穴部を有したタコ用魚礁における巣穴部の内周面に対して着脱自在な状態で取り付けられて内周面の少なくとも一部を覆ってタコが卵を産み付ける産卵部を形成する産卵床形成体を備えることにある。この場合、産卵床形成体は、巣穴部の内周面における上面および側面のうちの少なくとも一方を覆うように形成されるとよい。
このように構成した本発明の特徴によれば、タコ用産卵床は、タコが卵を産み付ける産卵部を形成する産卵床形成体がタコ用魚礁における巣穴部の内周面に着脱自在な状態で設けられているため、この産卵床形成体を巣穴部内から取り出すことにより容易に卵の状態を確認または卵を採取することができタコの安定的で効率的な増殖を行うことができる。
また、本発明の他の特徴は、前記タコ用産卵床において、巣穴部は、筒状に形成されており、産卵床形成体は、可撓性を有する板状に形成されていることにある。
このように構成した本発明の特徴によれば、タコ用産卵床は、産卵床形成体が可撓性を有する板状に形成されているため、巣穴部内の形状に応じて曲げた状態で配置することができ、産卵床形成体を巣穴部内の形状に応じて変形させて配置できるとともに産卵床形成体の弾性によって産卵床形成体を巣穴部内で位置ずれを生じさせることなく安定的に配置することができる。
また、本発明の他の特徴は、前記タコ用産卵床において、産卵床形成体は、平面視で方形に形成されていることにある。
このように構成した本発明の特徴によれば、タコ用産卵床は、産卵床形成体が平面視で長方形または正方形の方形に形成されているため、産卵床形成体を製作が容易かつ材料の歩留まりが良好になるとともに巣穴内から取り出して人工管理する際に取扱いが容易となる。
また、本発明の他の特徴は、前記タコ用産卵床において、産卵床形成体は、巣穴部の内周面の周長以上の長さに形成されていることにある。
このように構成した本発明の特徴によれば、タコ用産卵床は、産卵床形成体が巣穴部の内周面の周長以上の長さに形成されているため、産卵床形成体を丸めた状態で巣穴部内に配置した際に巣穴部の内周面を周方向に沿って全面を覆って産卵部を形成することができタコが内周面のどの位置に産卵を行っても卵を採取することができる。
また、本発明の他の特徴は、前記タコ用産卵床において、産卵床形成体は、産卵部を形成する面および同産卵部とは反対側で巣穴部の内周面に面する面が平滑に形成されていることにある。
このように構成した本発明の特徴によれば、タコ用産卵床は、卵床形成体における産卵部を形成する面および同産卵部とは反対側で巣穴部の内周面に面する面がそれぞれ平滑に形成されているため、産卵床形成体の巣穴部内への出し入れが行ない易くなるとともに産卵部に産み付けられた卵または孵化後の卵を取り易くすることができる。
また、本発明は、タコ用産卵床の発明として実施できるばかりではなく、タコ用魚礁、タコ用産卵水槽システム、タコ用孵化水槽システムおよびタコの産卵孵化方法の発明としても実施できるものである。
具体的には、タコ用魚礁は、産卵期を迎えたタコが入り込むことができる狭小空間からなる巣穴部を有したタコ用魚礁であって、巣穴部内に、請求項1ないし請求項5のうちのいずれか1つに記載のタコ用産卵床を備えるとよい。これによっても上記発明と同様の作用効果を期待することができる。
また、タコ用産卵水槽システムは、産卵期を迎えたタコを飼育するための産卵用水槽と、産卵用水槽内に配置されてタコが入り込むことができる狭小空間からなる巣穴部を有したタコ用魚礁と、請求項1ないし請求項5のうちのいずれか1つに記載のタコ用産卵床とを備えるとよい。これによっても上記発明と同様の作用効果を期待することができる。
また、タコ用孵化水槽システムは、請求項1ないし請求項5のうちのいずれか1つに記載のタコ用産卵床と、タコ用産卵床を水没させた状態で収容する孵化用水槽と、タコの卵が産み付けられたタコ用産卵床を孵化用水槽内で保持する産卵床ホルダとを備えるとよい。これによっても上記発明と同様の作用効果を期待することができる。
また、タコの産卵孵化方法は、産卵期を迎えたタコを飼育するための産卵用水槽と、産卵用水槽内に配置されてタコが入り込むことができる狭小空間からなる巣穴部を有したタコ用魚礁と、請求項1ないし請求項5のうちのいずれか1つに記載のタコ用産卵床と、タコ用産卵床を水没させた状態で収容する孵化用水槽と、タコの卵が産み付けられたタコ用産卵床を孵化用水槽内で保持する産卵床ホルダとをそれぞれ用意しておき、タコ用産卵床体をタコ用魚礁における巣穴部内に設置する産卵床設置工程と、タコ用産卵床体が設置されたタコ用魚礁を産卵用水槽内に配置してタコを飼育する産卵タコ飼育工程と、タコの卵が産み付けられたタコ用産卵床をタコ用魚礁から取り外す産卵床回収工程と、タコの卵が産み付けられたタコ用産卵床を産卵床ホルダを介して孵化用水槽内に配置して孵化させる孵化工程とを含むようにするとよい。これによっても上記発明と同様の作用効果を期待することができる。
本発明の一実施形態に係るタコ用産卵床の外観構成を示す斜視図である。 図1に示すタコ用産卵床を丸めた状態を示す斜視図である。 図1に示すタコ用産卵床が装着されるタコ用魚礁の外観構成を示す斜視図である。 図3に示すタコ用魚礁の外観構成を示す正面図である。 図3に示すタコ用魚礁が配置されるタコ用産卵水槽システムの構成の概略を模式的に示す断面図である。 図1に示すタコ用産卵床が配置されるタコ用孵化水槽システムの構成の概略を模式的に示す断面図である。 図6に示すタコ用孵化水槽システムを構成する産卵床ホルダの外観構成を示す斜視図である。 図7に示す産卵床ホルダにタコ用産卵床を保持させた状態を示す斜視図である。 図4に示すタコ用魚礁の巣穴部内に卵が産み付けられた状態を示す正面図である。 本発明の他の実施形態に係るタコ用産卵床を湾曲させた状態を示す斜視図である。 本発明の変形例に係るタコ用産卵床およびタコ用魚礁の外観構成を示す正面図である。
以下、本発明に係るタコ用産卵床、タコ用産卵水槽システム、タコ用孵化水槽システムおよびタコの産卵孵化方法の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係るタコ用産卵床100の外観構成を示す斜視図である。また、図2は、図1に示すタコ用産卵床100を丸めた状態を示す斜視図である。なお、本明細書において参照する図は、本発明の理解を容易にするために一部の構成要素を誇張して表わすなど模式的に表している。このため、各構成要素間の寸法や比率などは異なっていることがある。このタコ用産卵床100は、タコ用魚礁90内に設置されてタコO(主として、ヤナギダコ、マダコまたはミズダコ)が卵Eを産み付ける部分となる器具である。
まず、タコ用産卵床100を説明する前に、このタコ用産卵床100が設置されるタコ用魚礁90について説明しておく。タコ用魚礁90は、図3および図4にそれぞれ示すように、タコOが入り込んで産卵を行う狭小空間を提供するための器具であり、魚礁本体91を備えて構成されている。魚礁本体91は、巣穴部92を形成する部品であり、一方が開口するとともに他方が奥壁93によって閉塞したセラミック製の有底円筒体で構成されている。
巣穴部92は、タコOが入り込んで産卵を行う部分であり、円筒面で構成されている。奥壁93は、巣穴部92の最奥部を閉塞する部品であり、円板状に形成されている。この奥壁93には、巣穴部92内の通水性を確保するための通水孔93aが形成されている。
この魚礁本体91は、生殖能力を備えたタコOが外敵から自身および卵Eを守るために好んで入り込む大きさに形成されている。本実施形態においては、魚礁本体91は、軸方向の長さが約600mmの長さに形成されるとともに、巣穴部92の内径が約180mmに形成されている。また、本実施形態においては、タコ用魚礁90は、3つの魚礁本体91を互いに径方向に密着した状態で並べて配置されてこれら3つの魚礁本体91が一体的に繋がって形成されている。すなわち、タコ用魚礁90は、本実施形態においては、3つの巣穴部92を有して構成されている。
なお、タコ用魚礁90は、少なくとも1つの巣穴部92を有して構成されていればよく、必ずしも上記実施形態に限定されるものではない。したがって、タコ用魚礁90は、2つ以下または4つ以上の巣穴部92を有していてもよい。また、タコ用魚礁90は、巣穴部92の断面形状が円形以外の形状(例えば、方形形状)に形成されていてもよいし、奥壁93を有しない貫通孔状に形成されていてもよい。また、タコ用魚礁90は、セラミック材以外の材料(例えば、樹脂材や金属材料)で構成されていてもよい。
(タコ用産卵床100の構成)
タコ用産卵床100は、産卵床形成体101を備えている。産卵床形成体101は、産卵部102を形成するとともにタコ用産卵床100を巣穴部92内に固定する部分であり、可撓性を有する樹脂材を平面視で方形板状に形成して構成されている。この場合、産卵床形成体101は、巣穴部92の内径の円周の長さ以上の長さに形成されている。本実施形態においては、産卵床形成体101は、透明なアクリル樹脂材を縦横が600mm×450mm、厚さが0.5mmの大きさに形成されている。
この産卵床形成体101は、一方の面に産卵部102が形成されるとともに他方の面に巣穴対向部103が形成されている。産卵部102は、巣穴部92内においてタコOが卵Eを産み付ける部分であり、平滑な面で構成されている。この場合、平滑な面とは、人が手で触った際にザラザラ感を感じる梨地またはそれ以下の滑らかな感触が得られる程度の表面粗さの状態をいう。巣穴対向部103は、巣穴部92を構成する内周面に密着する部分であり、産卵部102と同様な平滑な面で構成されている。
(タコ用産卵水槽システム200およびタコ用孵化水槽システム300の構成)
このように構成されたタコ用産卵床100は、タコ用産卵水槽システム200およびタコ用孵化水槽システム300の各一部を構成する。タコ用産卵水槽システム200は、図5に示すように、タコ用産卵床100に対してタコOに産卵をさせるための飼育設備であり、主として、産卵用水槽201を備えている。
産卵用水槽201は、産卵期を迎えたタコOを飼育するための容器であり、FRP(繊維強化樹脂)材を上方が開口するとともに所定の深さを有した平面視で長方形状の箱状に形成されている。この産卵用水槽201の平面的な大きさや深さは特に限定されないが、本実施形態においては、縦が1m、横が2m、高さが1mに形成されており、産卵用水槽201内に約0.8mの深さで飼育水Wが満たされている。また、産卵用水槽201は、本実施形態においては、陸上の建屋の中に設置されている。
この産卵用水槽201には、長手方向の一方(図示右側)の端部側には、取水管202が設けられているとともに、他方(図示左側)の端部には給水管205が設けられている。取水管202は、産卵用水槽201内の飼育水Wの一部を吸引して浄化槽203に導くための配管である。浄化槽203は、取水管202によって取り込まれた飼育水Wをろ過および殺菌して浄化する機械装置である。この浄化槽203によって浄化された飼育水Wは、送水ポンプ204によって給水管205を介して産卵用水槽201に戻される。
また、このタコ用産卵水槽システム200には、産卵用水槽201内の飼育水Wの水位を一定に保つ排水管、産卵用水槽201や浄化槽203に酸素を供給するエアレーション設備、飼育水Wの塩分、pH(ペーハ)、温度およびアンモニア濃度を検出する機器などタコOを飼育するために一般的に必要な他の設備を備えている。しかし、これらの各設備については、本発明に直接関わらないため、その説明は省略する。
タコ用孵化水槽システム300は、図6に示すように、タコ用産卵床100に産み付けられたタコOの卵Eが孵化するまでの間卵Eを成長させるための孵卵設備であり、主として、孵化用水槽301を備えている。孵化用水槽301は、タコ用産卵床100に産み付けられたタコOの卵Eを孵化まで成長させるとともに孵化した稚ダコ(図示せず)を保護するための容器であり、産卵用水槽201と同様に、FRP(繊維強化樹脂)材を上方が開口するとともに所定の深さを有した平面視で長方形状の箱状に形成されている。この孵化用水槽301の平面的な大きさや深さは特に限定されないが、本実施形態においては、縦が1m、横が2m、高さが1mに形成されており、孵化用水槽301内に約0.8mの深さで飼育水Wが満たされている。また、孵化用水槽301は、本実施形態においては、陸上の建屋の中に設置されている。
この孵化用水槽301には、長手方向の一方(図示右側)の端部側には、取水管302が設けられているとともに、他方(図示左側)の端部には給水管305が設けられている。取水管302は、孵化用水槽301内の飼育水Wの一部を吸引して浄化槽303に導くための配管である。浄化槽303は、取水管302によって取り込まれた飼育水Wをろ過および殺菌して浄化する機械装置である。この浄化槽303によって浄化された飼育水Wは、送水ポンプ304によって給水管205を介して孵化用水槽301に戻される。
また、このタコ用孵化水槽システム300には、孵化用水槽301内の飼育水Wの水位を一定に保つ排水管、孵化用水槽301や浄化槽303に酸素を供給するエアレーション設備、飼育水Wの塩分、pH(ペーハ)、温度およびアンモニア濃度を検出する機器などタコOの卵Eの成育および稚ダコを飼育するために一般的に必要な他の設備を備えている。しかし、これらの各設備については、本発明に直接関わらないため、その説明は省略する。
一方、孵化用水槽301内には、産卵床ホルダ310が設けられている。産卵床ホルダ310は、図7および図8にそれぞれ示すように、タコOの卵Eが産み付けられたタコ用産卵床100を孵化用水槽301内で水没した状態で保持する器具である。具体的には、産卵床ホルダ310は、主として、ベース311、起立棒312および支持フレーム313をそれぞれ備えて構成されている。
ベース311は、起立棒312および支持フレーム313をそれぞれ支持するため部品であり、金属製の棒体を平面視で方形の枠状に形成して構成されている。起立棒312は、平板状のタコ用産卵床100を起立させた状態で保持するための部品であり、金属製の棒体で構成されている。この起立棒312は、ベース311における互いに対向する各辺上にそれぞれ対向した位置に起立した姿勢で各辺の長手方向に沿って複数並んで設けられている。
これにより、起立棒312は、互いに隣接し合う起立棒312間に挿し入れられたタコ用産卵床100を起立させた状態で保持することができる。本実施形態においては、起立棒312は、互いに対向し合う各辺上にそれぞれ8つずつの起立棒312が設けられることにより互いに最大で7つのタコ用産卵床100を保持することができる。
支持フレーム313は、ベース311上で起立する各起立棒312を安定的に支持するための部品であり、金属製の棒体で構成されている。この支持フレーム313は、ベース311上で起立するすべての起立棒312とベース311とを一体的に連結するように屈曲して構成されている。なお、この産卵床ホルダ310は、少なくとも一つのタコ用産卵床100を孵化用水槽301内で水没した状態で保持することができればよく、本実施形態に限定されるものではない。
(タコ用産卵床100、タコ用産卵水槽システム200およびタコ用孵化水槽システム300の作動)
次に、このように構成されたタコ用産卵床100、タコ用産卵水槽システム200およびタコ用孵化水槽システム300を用いたタコOの卵Eの採卵および孵化の各作業過程について説明する。
まず、作業者は、タコ用産卵水槽システム200をセッティングする。具体的には、作業者は、産卵用水槽201内を飼育水W(海水または人工海水)で満たして浄化槽203および送水ポンプ204をそれぞれ作動させて産卵用水槽201内における飼育環境(水質、水温および塩分など)をタコOを飼育可能な環境に整える(図5参照)。
次に、作業者は、タコ用産卵床100をタコ用魚礁90に設置する。具体的には、作業者は、タコ用魚礁90およびタコ用産卵床100をそれぞれ用意する。この場合、作業者は、1つのタコ用魚礁90に対して3つのタコ用産卵床100を用意する。次いで、作業者は、作業者は、図9に示すように、1つのタコ用産卵床100を筒状に丸めて1つのタコ用魚礁90の巣穴部92内に挿入する(図3参照)。この場合、作業者は、板状のタコ用産卵床100を筒状に丸めた重ね合わせ部分を巣穴部92内の底部に配置して板状のタコ用産卵床100の中央部分が巣穴部92内の天井部分に位置するようにタコ用産卵床100を巣穴部92内に挿入するとよい。なお、図3においては、タコ用産卵床100および出し入れ方向をそれぞれ二点鎖線で示している。
これにより、巣穴部92は、周方向の全面が筒状に変形したタコ用産卵床100によって覆われる。この場合、タコ用産卵床100筒状に弾性変形しているため、巣穴部92内で広がろうとする復元力によって巣穴対向部103が巣穴部92の内周面を押圧して巣穴部92内で位置が前記復元力に応じた力で固定される。このタコ用産卵床100の各巣穴部92内への配置作業が、本発明に係る産卵床設置工程に相当する。
次に、作業者は、タコ用産卵床100が取り付けられたタコ用魚礁90を産卵用水槽201内に設置する。具体的には、作業者は、3つの各巣穴部92内にタコ用産卵床100を取り付けたタコ用魚礁90を飼育水W中に沈める(図5参照)。この場合、作業者は、3つの各巣穴部92がそれぞれ水平方向に開口する姿勢でタコ用魚礁90を産卵用水槽201の底部に配置する。次いで、作業者は、タコ用魚礁90を配置した産卵用水槽201内に産卵期を迎えたタコOを放す。この場合、作業者は、巣穴部92の総数以下のタコOを産卵用水槽201内に放す。これにより、産卵用水槽201内に放されたタコOは好みの巣穴部92内に進入する。このタコ用魚礁90を産卵用水槽201内に設置してタコOを飼育する作業が、本発明に係る産卵タコ飼育工程に相当する。
次に、作業者は、タコOの産卵を監視する。具体的には、作業者は、定期的にタコ用魚礁90の巣穴部92内を確認してタコOが産卵したか否かを監視する。この場合、作業者は、巣穴部92内からタコ用産卵床100の一部または全部を抜き出して産卵の状態を確認することができる。
一方、巣穴部92内のタコOは、タコO自身が決めたタイミングで産卵を行う。この場合、タコOの卵Eは、巣穴部92の周方向の内周面がタコ用産卵床100によって覆われているため、産卵部102の表面に産み付けられる(図9参照)。なお、この場合、タコOがヤナギダコの場合、巣穴部92内における天井部分から左右の側壁部分に掛けての範囲に卵Eが吊り下がった状態で産み付けることが多い。
次に、作業者は、タコOの産卵を確認した場合には、タコ用孵化水槽システム300をセッティングする。具体的には、作業者は、孵化用水槽301内を飼育水W(海水または人工海水)で満たして浄化槽303および送水ポンプ304をそれぞれ作動させて孵化用水槽301内における飼育環境(水質、水温および塩分など)を卵Eの孵化までの成長に必要な環境に整える(図6参照)。また、作業者は、産卵床ホルダ310を用意する。
次に、作業者は、タコ用産卵床100をタコ用魚礁90から取り外す。具体的には、作業者は、タコ用魚礁90の巣穴部92内からタコ用産卵床100を抜き取る(図3参照)。この場合、作業者は、タコ用産卵床100の抜き取り作業を産卵用水槽201内でまたは産卵用水槽201内から取り出したタコ用魚礁90に対して行うことができる。これにより、タコ用産卵床100は、筒状から広がって板状に形状が復元される(図8参照)。この場合、作業者は、タコ用産卵床100が板状に広がるため、タコ用産卵床100に吸着したタコOを容易に引き剥がすことができる。このタコ用魚礁90からタコ用産卵床100を取り外す作業が、本発明に係る産卵床回収工程に相当する。
次に、作業者は、卵Eを孵化させる。具体的には、作業者は、卵Eが産み付けられたタコ用産卵床100を産卵床ホルダ310に保持させた状態で孵化用水槽301内に沈める(図6および図8参照)。この場合、作業者は、卵Eがタコ用産卵床100の産卵部102から吊り下がった状態となるようにタコ用産卵床100および産卵床ホルダ310を孵化用水槽301内に設置するとよい。
次いで、作業者は、卵Eが孵化するまでの間、孵化用水槽301内の環境および卵Eの状態を監視する。この場合、作業者は、本実施形態においては、タコ用産卵床100が起立した状態で産卵床ホルダ310によって支持されているため、卵Eの状態を確認し易い。そして、卵Eが孵化した場合には、作業者は孵化用水槽301内を浮遊する稚ダコ(図示せず)を網など用いて捕獲した後、稚ダコを飼育するための飼育槽に移す。また、作業者は、タコ用産卵床100に産み付けられた卵Eの孵化が終了した場合には、タコ用産卵床100を清掃することにより再度タコ用産卵床100として使用することができる。この卵Eを孵化させる作業が、本発明に係る孵化工程に相当する。
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、タコOが卵Eを産み付ける産卵部102を形成する産卵床形成体101がタコ用魚礁90における巣穴部92の内周面に着脱自在な状態で設けられているため、この産卵床形成体101を巣穴部92内から取り出すことにより容易に卵Eの状態を確認または卵Eを採取することができタコOの安定的で効率的な増殖を行うことができる。
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、下記各変形例において、上記実施形態と同様の構成部分については同じ符号を付して、その説明を省略する。
例えば、上記実施形態においては、タコ用産卵床100は、可撓性を有する板状に形成した。しかし、タコ用産卵床100は、巣穴部92を構成する魚礁本体91の内周面に対して着脱自在な状態で取り付けられて内周面の少なくとも一部を覆ってタコOが卵を産み付ける産卵部102を有していれば、必ずしも上記実施形態に限定されるものではない。
したがって、タコ用産卵床100は、例えば、可撓性を有するまたは可撓性を有しない各剛体からなる平面視で方形以外の平板状、例えば、円状、楕円状または多角形状のほか、曲面状に形成することもできる。また、タコ用産卵床100は、例えば、可撓性を有するまたは可撓性を有しない各剛体からなる断面形状が円形、方形または多角形状の筒体で構成することもできる。
また、上記実施形態においては、タコ用産卵床100は、巣穴部92の内径の円周の長さ以上の長さに形成されて巣穴部92内に円筒状に丸めて挿入した。しかし、タコ用産卵床100は、図10に示すように、巣穴部92の内径の円周の長さ未満の長さに形成されて巣穴部92内に湾曲した状態で挿入するようにしてもよい。これによれば、タコ用産卵床100は、筒状に変形される上記実施形態に係るタコ用産卵床100よりも容易に巣穴部92に脱着することができる。なお、タコ用産卵床100を巣穴部92内に設置する際の変形には、弾性変形のみではなく塑性変形も含まれるものである。
また、タコ用産卵床100は、図11に示すように、平面視で方形の板状に形成することができる。この場合、タコ用魚礁90は、正面視で方形状の有底筒状に形成するとともに、巣穴部92における天井部の両端部にタコ用産卵床100を挿し込み可能な溝状の保持部94を設けておく。そして、作業者は、板状のタコ用産卵床100を変形させることなく保持部94内に挿し込むことで巣穴部92内に着脱自在に取り付けることもできる。これによれば、タコ用産卵床100は、筒状や曲面状に変形されるタコ用産卵床100に比べてより容易に巣穴部92に脱着することができる。
また、上記実施形態においては、タコ用産卵床100は、透明なアクリル樹脂材で構成した。しかし、タコ用産卵床100は、アクリル樹脂以外の樹脂材、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリイミド樹脂(PI)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリウレタン樹脂(PUR)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリスチレン樹脂(PS)、ナイロン樹脂(PA−6T,9T)またはポリプロピレン(PP)などで構成してもよいし、樹脂材以外の材料(例えば、金属材料(鉄、非鉄、軽金属)、木材、ガラス材、ゴム材または紙材)で構成することができる。また、タコ用産卵床100は、透明以外の材料、例えば、半透明または不透明な材料で構成することもできる。
また、上記実施形態においては、タコOの卵Eが産み付けられたタコ用産卵床100をそのまま産卵床ホルダ310で保持するように構成した。しかし、タコ用産卵床100は、ハサミおよびカッターなどの切断道具を用いて人手によって切断可能な材料で構成することができる。これによれば、タコ用産卵床100は、タコ用魚礁90から取り出した後、卵Eが産み付けられた部分のみを切り取って産卵床ホルダ310に保持させることもできる。これによれば、タコ用産卵床100は、孵化用水槽301および産卵床ホルダ310の構成を小型化することができる。
また、上記実施形態においては、産卵用水槽201と孵化用水槽301とを別体で構成した。しかし、産卵用水槽201と孵化用水槽301とを1つの水槽で共用することもできる。
O…タコ、E…卵、W…飼育水、
90…タコ用魚礁、91…魚礁本体、92…巣穴部、93…奥壁、93a…通水孔、94…保持部、
100…タコ用産卵床、101…産卵床形成体、102…産卵部、103…巣穴対向部、
200…タコ用産卵水槽システム、201…産卵用水槽、202…取水管、203…浄化槽、204…送水ポンプ、205…給水管、
300…タコ用孵化水槽システム、301…孵化用水槽、302…取水管、303…浄化槽、304…送水ポンプ、305…給水管、
310…産卵床ホルダ、311…ベース、312…起立棒、313…支持フレーム。

Claims (9)

  1. タコが卵を産み付けるためのタコ用産卵床であって、
    前記タコが入り込むことができる狭小空間からなる巣穴部を有したタコ用魚礁における前記巣穴部の内周面に対して着脱自在な状態で取り付けられて前記内周面の少なくとも一部を覆って前記タコが卵を産み付ける産卵部を形成する産卵床形成体を備えることを特徴とするタコ用産卵床。
  2. 請求項1に記載したタコ用産卵床において、
    前記巣穴部は、筒状に形成されており、
    前記産卵床形成体は、可撓性を有する板状に形成されていることを特徴とするタコ用産卵床。
  3. 請求項2に記載したタコ用産卵床において、
    前記産卵床形成体は、
    平面視で方形に形成されていることを特徴とするタコ用産卵床。
  4. 請求項2または請求項3に記載したタコ用産卵床において、
    前記産卵床形成体は、
    前記巣穴部の前記内周面の周長以上の長さに形成されていることを特徴とするタコ用産卵床。
  5. 請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1つに記載したタコ用産卵床において、
    前記産卵床形成体は、
    前記産卵部を形成する面および同産卵部とは反対側で前記巣穴部の前記内周面に面する面が平滑に形成されていることを特徴とするタコ用産卵床。
  6. 産卵期を迎えたタコが入り込むことができる狭小空間からなる巣穴部を有したタコ用魚礁であって、
    前記巣穴部内に、
    請求項1ないし請求項5のうちのいずれか1つに記載のタコ用産卵床を備えることを特徴とするタコ用魚礁。
  7. 産卵期を迎えたタコを飼育するための産卵用水槽と、
    前記産卵用水槽内に配置されて前記タコが入り込むことができる狭小空間からなる巣穴部を有したタコ用魚礁と、
    請求項1ないし請求項5のうちのいずれか1つに記載のタコ用産卵床とを備えることを特徴とするタコ用産卵水槽システム。
  8. 請求項1ないし請求項5のうちのいずれか1つに記載のタコ用産卵床と、
    前記タコ用産卵床を水没させた状態で収容する孵化用水槽と、
    前記タコの卵が産み付けられた前記タコ用産卵床を前記孵化用水槽内で保持する産卵床ホルダとを備えることを特徴とするタコ用孵化水槽システム。
  9. 産卵期を迎えたタコを飼育するための産卵用水槽と、
    前記産卵用水槽内に配置されて前記タコが入り込むことができる狭小空間からなる巣穴部を有したタコ用魚礁と、
    前記請求項1ないし請求項5のうちのいずれか1つに記載のタコ用産卵床と、
    前記タコ用産卵床を水没させた状態で収容する孵化用水槽と、
    前記タコの卵が産み付けられた前記タコ用産卵床を前記孵化用水槽内で保持する産卵床ホルダとをそれぞれ用意しておき、
    前記タコ用産卵床体を前記タコ用魚礁における前記巣穴部内に設置する産卵床設置工程と、
    前記タコ用産卵床体が設置された前記タコ用魚礁を前記産卵用水槽内に配置して前記タコを飼育する産卵タコ飼育工程と、
    前記タコの卵が産み付けられた前記タコ用産卵床を前記タコ用魚礁から取り外す産卵床回収工程と、
    前記タコの卵が産み付けられた前記タコ用産卵床を前記産卵床ホルダを介して前記孵化用水槽内に配置して孵化させる孵化工程とを含むことを特徴とするタコの産卵孵化方法。
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