<電力変換システム1の概要>
図1に示すように、本実施形態の電力変換システム1は、電動機制御装置10と、直流電源20と、平滑コンデンサ30とを備える。また、電動機制御装置10は、電力変換器40と、制御装置60と、直流電力供給部70とを備える。なお、電力変換器40には、電動機50が電気的に接続されている。
(直流電源20)
直流電源20は、直流電力を出力する。直流電源20は、直流電力を出力することができれば良く、限定されない。直流電源20は、例えば、鉛蓄電池(バッテリ)、リチウムイオン電池、発電装置(例えば、燃料電池)などを用いることができる。また、直流電源20は、公知の交流発電機などを用いて、直流電力を生成することもできる。この場合、直流電源20は、公知の整流回路および平滑回路などを用いて、交流発電機が出力する交流電力を整流し平滑して、直流電力を生成することができる。
また、直流電源20は、例えば、公知の昇圧コンバータなどを用いて、低電圧の直流電力を昇圧することもできる。この場合、直流電源20は、例えば、公知の昇圧型チョッパコンバータなどの非絶縁型の昇圧コンバータを用いることができる。また、直流電源20は、例えば、公知のフライバック型コンバータ、フォワード型コンバータなどの絶縁型の昇圧コンバータを用いることもできる。
(平滑コンデンサ30)
平滑コンデンサ30は、直流電源20から出力された直流電力を平滑する。直流電源20の正極側20pは、平滑コンデンサ30の正極側30pと接続されている。直流電源20の負極側20nは、平滑コンデンサ30の負極側30nと接続されており、パワーグランド(直流電源20を含む高電圧側の回路の基準電位)と接続されている。平滑コンデンサ30は、例えば、電解コンデンサを用いることができる。直流電源20から供給された直流電力は、平滑コンデンサ30によって平滑されてリップルが低減される。
(電力変換器40)
電力変換器40は、複数(本実施形態では、六つ)のスイッチング素子が開閉制御されることにより直流電力を交流電力に変換して、固定子51と可動子52とを備える電動機50に対して変換された交流電力を出力する。本実施形態では、直流電力は、直流電源20から出力され、平滑コンデンサ30によって平滑された直流電力である。図1に示すように、複数(六つ)のスイッチング素子は、複数(三つ)の一対のスイッチング素子41がフルブリッジ接続されて構成されている。複数(三つ)の一対のスイッチング素子41の各々は、直流電源20の正極側20pに接続される正極側スイッチング素子4xpと、直流電源20の負極側20nに接続される負極側スイッチング素子4xnとが接続部42xを介して電気的に直列接続されている。なお、本実施形態の電力変換器40は、三相の電力変換器であり、xは、u、v、wのうちのいずれかである。例えば、正極側スイッチング素子4upは、U相の正極側スイッチング素子を示しており、負極側スイッチング素子4unは、U相の負極側スイッチング素子を示している。また、接続部42uは、U相の接続部を示している。
正極側スイッチング素子4xpおよび負極側スイッチング素子4xnは、公知の電力用スイッチング素子を用いることができる。正極側スイッチング素子4xpおよび負極側スイッチング素子4xnは、例えば、公知の絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)、電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)などを用いることができる。
図1に示すように、複数(三つ)の正極側スイッチング素子4xpの各々は、制御端子4gと、入力端子4cと、出力端子4eと、還流ダイオード4dとを備えている。例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)では、制御端子4gは、ゲート端子に相当し、入力端子4cは、コレクタ端子に相当し、出力端子4eは、エミッタ端子に相当する。制御端子4gは、駆動回路62を介して、制御装置60と接続されている。複数(三つ)の正極側スイッチング素子4xpの各々は、制御装置60から出力される駆動信号に基づいて開閉制御される。
制御端子4gと出力端子4eとの間の電圧を制御電圧とする。例えば、制御電圧がローレベル(所定電圧値以下の状態)のときには、入力端子4cと出力端子4eとの間が電気的に遮断された開状態に制御される。一方、制御電圧がハイレベル(所定電圧値を超えている状態)のときには、入力端子4cと出力端子4eとの間が電気的に導通された閉状態に制御される。
還流ダイオード4dは、例えば、スイッチング素子のボディダイオード(寄生ダイオード)を用いることができる。また、ボディダイオードの代わりに、還流ダイオードを別途設けて、入力端子4cと出力端子4eとの間に並列接続することもできる。還流ダイオード4dは、スイッチング素子が開状態のときに、出力端子4e側から入力端子4c側に向かう電流経路を形成する。これにより、スイッチング素子の開閉に伴って生じる逆電流から当該スイッチング素子を保護することができる。
複数(三つ)の正極側スイッチング素子4xpについて上述したことは、複数(三つ)の負極側スイッチング素子4xnについても同様に言える。制御装置60は、電力変換器40の複数(六つ)のスイッチング素子(複数(三つ)の正極側スイッチング素子4xpおよび複数(三つ)の負極側スイッチング素子4xn)の各々を開閉制御する。
例えば、電力変換器40は、制御装置60の指令に基づいて、複数(三つ)の正極側スイッチング素子4xpのうちの一の正極側スイッチング素子4xpと、複数(三つ)の負極側スイッチング素子4xnのうちの一の負極側スイッチング素子4xnとが閉状態に制御され、他のスイッチング素子が開状態に制御される。閉状態に制御される一の正極側スイッチング素子4xpおよび一の負極側スイッチング素子4xnの相(U相、V相、W相)は、異なる。制御装置60が閉状態に制御するスイッチング素子の組み合わせを順に変更することにより、電力変換器40は、直流電源20から出力された直流電力を交流電力に変換することができる。
図1に示すように、X相の一対のスイッチング素子41の接続部42xと、X相の固定子巻線51c(X相コイル51x)との間は、X相電力ライン44xによって電気的に接続されている。なお、xは、u、v、wのうちのいずれかであり、Xは、U、V、Wのうちのいずれかである。例えば、U相電力ライン44uは、U相の一対のスイッチング素子41の接続部42uと、U相の固定子巻線51c(U相コイル51u)との間を電気的に接続している。X相電力ライン44xは、公知の電力線を用いることができる。電力変換器40は、接続部42xおよびX相電力ライン44xを介して、電動機50に対して、変換された交流電力を出力する。
(電動機50)
電動機50は、固定子51と可動子52とを備えている。本実施形態の電動機50は、固定子51および可動子52が同軸に配設されるラジアル空隙型の円筒状電動機である。なお、電動機50は、アキシャル空隙型の円筒状電動機であっても良い。また、電動機50は、固定子51および可動子52が直線上に配設され、可動子52が固定子51に対して直線上に移動するリニア型電動機であっても良い。さらに、電動機50は、可動子52が、固定子51の内方に設けられるインナー型の電動機であっても良く、可動子52が、固定子51の外方に設けられるアウター型の電動機であっても良い。
固定子51は、複数のスロットが形成されている固定子鉄心(図示略)と、固定子巻線51c(U相コイル51u、V相コイル51vおよびW相コイル51w)とを備えている。固定子鉄心は、薄板状の電磁鋼板(例えば、ケイ素鋼板)が軸線方向に複数積層されて形成されている。複数のスロットには、固定子巻線51cが巻装される。固定子巻線51cは、銅などの導体(コイル)が巻き回されて形成されており、導体表面がエナメルなどの絶縁層で被覆されている。固定子巻線51cの断面形状は、限定されるものではなく、任意の断面形状とすることができる。例えば、固定子巻線51cは、断面円形状の丸線、断面多角形状の角線などの種々の断面形状の導体(コイル)を用いることができる。また、固定子巻線51cは、複数のより細いコイル素線を組み合わせた並列細線を用いることもできる。並列細線を用いる場合、単線の場合と比べて固定子巻線51cに発生する渦電流損が低減され、電動機50の効率が向上する。また、コイル成形に要する力を低減することができるので、コイルの成形性が向上してコイル製作が容易になる。
固定子巻線51cは、分布巻(例えば、同心巻、波巻、重ね巻など)または集中巻などの公知の方法で巻装することができる。また、図1に示すように、固定子巻線51c(U相コイル51u、V相コイル51vおよびW相コイル51w)は、Y結線で接続することができる。同図では、中性点を中性点51nで示している。なお、X相の固定子巻線51c(X相コイル51x)と電気的に接続される相端子をX相端子43xで示している。xは、u、v、wのうちのいずれかであり、Xは、U、V、Wのうちのいずれかである。例えば、U相端子43uは、U相の固定子巻線51c(U相コイル51u)と電気的に接続される。また、固定子巻線51c(U相コイル51u、V相コイル51vおよびW相コイル51w)は、Δ結線で接続することもできる。
図2に示すように、可動子52は、可動子鉄心52aと、複数(本実施形態では、八つ)の永久磁石52bと、シャフト52cとを備えている。同図は、可動子52の軸線方向(同図の紙面垂直方向)視の模式図であり、これらの配置を模式的に示している。可動子鉄心52aは、薄板状の電磁鋼板(例えば、ケイ素鋼板)が軸線方向に複数積層されて円柱状に形成されている。可動子鉄心52aには、シャフト52cが設けられており、シャフト52cは、可動子鉄心52aの軸心を軸線方向に沿って貫通している。シャフト52cの軸線方向両端部は、ベアリングなどの軸受部材(図示略)によって、回転可能に支持されている。
可動子鉄心52aには、複数(八つ)の永久磁石52bが埋設されている。具体的には、可動子鉄心52aには、周方向に等間隔で、複数の磁石収容部が設けられている。複数の磁石収容部には、所定磁極対分(本実施形態では四磁極対分であり、八つ)の永久磁石52bが埋設されている。複数(八つ)の永久磁石52bは、例えば、公知のフェライト系磁石や希土類系磁石を用いることができる。複数(八つ)の永久磁石52bの製法は、限定されない。複数(八つ)の永久磁石52bは、例えば、樹脂ボンド磁石や焼結磁石を用いることができる。樹脂ボンド磁石は、例えば、フェライト系の原料磁石粉末と樹脂などを混合して、射出成形などによって可動子鉄心52aに鋳込み形成することができる。焼結磁石は、例えば、希土類系の原料磁石粉末を磁界中で加圧成形して、高温で焼き固めて形成することができる。なお、固定子51のスロット数および可動子52の磁極数は、限定されない。また、可動子52は、可動子鉄心52aの表面(外周表面)に複数(八つ)の永久磁石52bを設ける表面磁石形とすることもできる。
(制御装置60)
制御装置60は、電力変換器40を含む電力変換システム1を制御する。また、制御装置60は、例えば、パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)制御によって、電力変換器40の複数(六つ)のスイッチング素子(複数(三つ)の正極側スイッチング素子4xpおよび複数(三つ)の負極側スイッチング素子4xn)の各々を開閉制御することができる。図3に示すように、制御装置60は、公知の中央演算装置60a、記憶装置60bおよび入出力インターフェース60cを備えており、これらは、バス60dを介して接続されている。
中央演算装置60aは、CPU:Central Processing Unitであり、種々の演算処理を行うことができる。記憶装置60bは、第一記憶装置60b1および第二記憶装置60b2を備えている。第一記憶装置60b1は、読み出しおよび書き込み可能な揮発性の記憶装置(RAM:Random Access Memory)であり、第二記憶装置60b2は、読み出し専用の不揮発性の記憶装置(ROM:Read Only Memory)である。
また、図1に示すように、制御装置60は、直流電圧検出器61と、駆動回路62と、位置検出器63とを備えている。直流電圧検出器61は、電力変換器40に入力される直流電力(平滑コンデンサ30によって平滑された直流電力)の直流電圧Vdcを検出する。具体的には、直流電圧検出器61は、例えば、抵抗値が既知の複数の抵抗器によって当該直流電圧を分圧して、分圧された直流電圧を制御装置60に出力する。制御装置60は、公知のA/D変換器(図示略)などによって分圧された直流電圧を知得し、電力変換器40に入力される直流電力(平滑コンデンサ30によって平滑された直流電力)の直流電圧Vdcを知得することができる。駆動回路62は、制御装置60から出力される駆動信号を増幅する駆動回路であり、例えば、公知のドライバ回路を用いることができる。
位置検出器63は、非通電相の固定子巻線51cと電気的に接続される相端子(U相端子43u、V相端子43v、W相端子43w)の電圧と、電力変換器40に入力される直流電力の直流電圧Vdcに基づいて設定される基準電圧との大小比較により、固定子51に対する可動子52の位置の基準になる基準位置を検出する。本実施形態では、固定子巻線51c(U相コイル51u、V相コイル51vおよびW相コイル51w)がY結線で接続されている。そのため、例えば、通電相の固定子巻線51cがV相コイル51vおよびW相コイル51wのときに、非通電相の固定子巻線51cは、U相コイル51uになる。後述するように、通電相および非通電相の固定子巻線51cは、電気角60°単位で、順に切り替わる。また、本実施形態では、基準電圧は、直流電圧Vdcの1/2の電圧に設定されている。
図1に示すように、位置検出器63は、基準電圧生成部63aと、相端子電圧出力部63bと、電圧比較部63cとを備えている。基準電圧生成部63aは、第一抵抗器63a1と、第二抵抗器63a2とを備えており、直流電圧Vdcを分圧して基準電圧を生成する。具体的には、第一抵抗器63a1の一端側は、直流電源20の正極側20pと接続されており、第一抵抗器63a1の他端側は、第二抵抗器63a2の一端側と接続されている。第二抵抗器63a2の他端側は、直流電源20の負極側20nのパワーグランド(直流電源20を含む高電圧側の回路の基準電位)と接続されている。第一抵抗器63a1および第二抵抗器63a2は、抵抗値が同一に設定されており、第一抵抗器63a1と第二抵抗器63a2との接続点63pには、電力変換器40に入力される直流電力の直流電圧Vdcの1/2の電圧が生成される。
相端子電圧出力部63bは、第一抵抗器63b1と、第二抵抗器63b2とを備えており、各相の相端子(U相端子43u、V相端子43vおよびW相端子43w)の電圧を分圧した電圧を出力する。具体的には、U相の第一抵抗器63b1の一端側は、U相電力ライン44uと接続されており、U相の第一抵抗器63b1の他端側は、U相の第二抵抗器63b2の一端側と接続されている。U相の第二抵抗器63b2の他端側は、直流電源20の負極側20nのパワーグランドと接続されている。相端子電圧出力部63bは、V相電力ライン44vとパワーグランドとの間においても同様の構成を備えており、W相電力ライン44wとパワーグランドとの間においても同様の構成を備えている。
電圧比較部63cは、基準電圧生成部63aによって生成された基準電圧と、相端子電圧出力部63bから出力された電圧(相端子(U相端子43u、V相端子43vおよびW相端子43w)の電圧を分圧した電圧)とを大小比較する。具体的には、U相の第一抵抗器63b1と第二抵抗器63b2との接続点63qは、U相の電圧比較部63cの非反転入力端子(プラス端子)と接続されている。また、基準電圧生成部63aの第一抵抗器63a1と第二抵抗器63a2との接続点63pは、U相の電圧比較部63cの反転入力端子(マイナス端子)と接続されている。U相の接続点63qの電圧が接続点63pの電圧と比べて小さい場合、U相の電圧比較部63cは、ローレベル(所定電圧値以下の状態)を出力する。一方、U相の接続点63qの電圧が接続点63pの電圧と比べて大きい場合、U相の電圧比較部63cは、ハイレベル(所定電圧値を超えている状態)を出力する。電圧比較部63cは、V相およびW相についても同様の構成を備えている。
後述するように、可動子52の位置に応じて、非通電相が順に切り替わる。位置検出器63は、非通電相の電圧比較部63cの出力変化によって、固定子51に対する可動子52の位置の基準になる基準位置を検出することができる。基準位置は、電気角60°ピッチの可動子52の位置をいい、ゼロクロス位置ともいう。なお、制御装置60は、上述した検出器以外にも種々の検出器を設けることができる。例えば、制御装置60は、電力変換器40から出力される出力電流を検出する電流検出器を設けることができる。この場合、位置検出器63は、出力電流の経時変化に基づいて、基準位置を検出することもできる。
図3に示す中央演算装置60aは、第二記憶装置60b2に記憶されている電力変換器40の制御プログラムを第一記憶装置60b1に読み出して、制御プログラムを実行する。また、上述した検出値などは、絶縁部(図示略)および入出力インターフェース60cを介して、制御装置60に入力される。中央演算装置60aは、入出力インターフェース60c、絶縁部(図示略)および図1に示す駆動回路62を介して、電力変換器40の各スイッチング素子に開閉信号を出力して、電力変換器40を開閉制御する。なお、絶縁部は、制御装置60を含む低電圧側の回路と、直流電源20を含む高電圧側の回路とを電気的に絶縁する。絶縁部は、例えば、公知のフォトカプラなどを用いることができる。
(センサレス制御)
制御装置60は、固定子51の非通電相の固定子巻線51cに生じる誘起電圧(U相の誘起電圧Vui、V相の誘起電圧VviおよびW相の誘起電圧Vwi)に基づいて、固定子51に対する可動子52の位置を推定する。そして、制御装置60は、推定された可動子52の位置に基づいて、複数(六つ)のスイッチング素子(複数(三つ)の正極側スイッチング素子4xpおよび複数(三つ)の負極側スイッチング素子4xn)の各々を開閉制御する。
図1に示す複数(六つ)のスイッチング素子(複数(三つ)の正極側スイッチング素子4xpおよび複数(三つ)の負極側スイッチング素子4xn)の各々は、開状態または閉状態に制御される。これにより、各相の相端子(U相端子43u、V相端子43vおよびW相端子43w)の電圧は、三つの状態を採り得る。具体的には、U相の正極側スイッチング素子4upが閉状態に制御され、かつ、U相の負極側スイッチング素子4unが開状態に制御されるときに、U相端子43uは、直流電源20から出力された直流電圧Vdcに拘束される。また、U相の正極側スイッチング素子4upが開状態に制御され、かつ、U相の負極側スイッチング素子4unが閉状態に制御されるときに、U相端子43uは、ゼロ電圧に拘束される。さらに、U相の正極側スイッチング素子4upおよびU相の負極側スイッチング素子4unの両方が開状態に制御されるときに、U相端子43uは、ハイインピーダンス状態になる。
ハイインピーダンス状態のU相端子43uには、U相の誘起電圧Vuiが生じる。U相の誘起電圧Vuiは、通電相の固定子巻線51c(この場合、V相コイル51vおよびW相コイル51w)に、可動子磁極(可動子52の複数(八つ)の永久磁石52b)の磁束が鎖交することによって発生する。したがって、U相の誘起電圧Vuiは、通電相の固定子巻線51c(V相コイル51vおよびW相コイル51w)と可動子52との相対的な位置関係に基づいて変化し、固定子51に対する可動子52の位置を推定する際の指標になる。上述したことは、V相端子43vおよびW相端子43wの電圧についても同様に言え、V相端子43vおよびW相端子43wの電圧は、三つの状態を採り得る。
図4は、各相の相端子(U相端子43u、V相端子43vおよびW相端子43w)に発生する電圧の状態制御の一例を示している。同図に示すように、制御装置60は、期間T1〜期間T6に分けて、各相の相端子(U相端子43u、V相端子43vおよびW相端子43w)に発生する電圧の状態制御を行う。同図は、期間T1〜期間T6のそれぞれの期間における各相の相端子(U相端子43u、V相端子43vおよびW相端子43w)の電圧の状態を示している。具体的には、「Hi−Z」は、ハイインピーダンス状態を示し、「L」は、ゼロ電圧に拘束される状態を示し、「PWM」は、パルス幅変調(PWM)制御される状態を示している。
例えば、期間T1のU相の欄は、「Hi−Z」であり、U相の正極側スイッチング素子4upおよびU相の負極側スイッチング素子4unの両方が開状態に制御される。これにより、U相端子43uは、ハイインピーダンス状態になる。また、期間T1のV相の欄は、「L」であり、V相の正極側スイッチング素子4vpが開状態に制御され、かつ、V相の負極側スイッチング素子4vnが閉状態に制御される。これにより、V相端子43vは、ゼロ電圧に拘束される状態になる。
さらに、期間T1のW相の欄は、「PWM」であり、W相の正極側スイッチング素子4wpが所定のキャリア周波数およびデューティ比でパルス幅変調(PWM)制御され、かつ、W相の負極側スイッチング素子4wnが開状態に制御される。これにより、W相端子43wは、直流電圧Vdcに拘束される状態と、ゼロ電圧に拘束される状態とが交互に繰り返される状態になる。期間T1は、U相の非通電期間であり、U相の誘起電圧Vuiが生じる。
次に、期間T2のU相の欄は、「PWM」であり、U相の正極側スイッチング素子4upが所定のキャリア周波数およびデューティ比でパルス幅変調(PWM)制御され、かつ、U相の負極側スイッチング素子4unが開状態に制御される。これにより、U相端子43uは、直流電圧Vdcに拘束される状態と、ゼロ電圧に拘束される状態とが交互に繰り返される状態になる。また、期間T2のV相の欄は、「L」であり、V相の正極側スイッチング素子4vpが開状態に制御され、かつ、V相の負極側スイッチング素子4vnが閉状態に制御される。これにより、V相端子43vは、ゼロ電圧に拘束される状態になる。さらに、期間T2のW相の欄は、「Hi−Z」であり、W相の正極側スイッチング素子4wpおよびW相の負極側スイッチング素子4wnの両方が開状態に制御される。これにより、W相端子43wは、ハイインピーダンス状態になる。期間T2は、W相の非通電期間であり、W相の誘起電圧Vwiが生じる。
期間T3〜期間T6についても同様であり、各相の相端子(U相端子43u、V相端子43vおよびW相端子43w)の電圧の状態が、順に変更される。また、誘起電圧(U相の誘起電圧Vui、V相の誘起電圧Vvi、W相の誘起電圧Vwi)が生じる相端子(U相端子43u、V相端子43v、W相端子43w)が、順に変更される。なお、期間T1〜期間T6の状態制御は、繰り返される。また、期間T1〜期間T6の各々の期間は、電気角60°に相当し、期間T1から始まり期間T6を経て再び期間T1の状態になるまでの期間は、電気角の一周期(360°)に相当する。
図5は、参考形態に係り、各相の相端子(U相端子43u、V相端子43vおよびW相端子43w)に発生する電圧波形の一例を示している。図4に示すように、各相の相端子(U相端子43u、V相端子43vおよびW相端子43w)の電圧が状態制御されると、図5に示す電圧波形が発生する。図5の横軸は共通の時間軸(時刻)であり、期間T1〜期間T6は、図4に示す期間に対応している。また、波形L11は、U相端子43uに発生する電圧波形の一例を示している。同様に、波形L12は、V相端子43vに発生する電圧波形の一例を示している。また、波形L13は、W相端子43wに発生する電圧波形の一例を示している。
波形L11に示すように、期間T2および期間T3は、パルス幅変調(PWM)制御される通電期間であり、期間T5および期間T6は、ゼロ電圧に拘束される通電期間である。また、期間T1および期間T4は、非通電期間であり、期間T1における電圧が次第に増加する電圧波形および期間T4における電圧が次第に減少する電圧波形は、U相の誘起電圧Vuiを示している。波形L12および波形L13についても、通電期間(非通電期間)が異なる点を除いて、波形L11と同様に電圧波形が変化する。
波形L11に示すように、期間T1において、U相端子43uに発生する電圧(U相の誘起電圧Vui)が、基準電圧(直流電圧Vdcの1/2の電圧)と比べて小さい場合、図1に示すU相の接続点63qの電圧は、接続点63pの電圧と比べて小さくなる。この場合、U相の電圧比較部63cは、ローレベル(所定電圧値以下の状態)を出力する。一方、期間T1において、U相端子43uに発生する電圧(U相の誘起電圧Vui)が、基準電圧(直流電圧Vdcの1/2の電圧)と比べて大きい場合、U相の接続点63qの電圧が接続点63pの電圧と比べて大きくなる。この場合、U相の電圧比較部63cは、ハイレベル(所定電圧値を超えている状態)を出力する。上述したことは、期間T4においても同様に言える。
このように、U相端子43uに発生する電圧(U相の誘起電圧Vui)が基準電圧(直流電圧Vdcの1/2の電圧)に対して、増加し若しくは減少することにより、U相の電圧比較部63cの出力が切り替わる。図5では、U相の電圧比較部63cの出力が切り替わるタイミングは、タイミングPM1およびタイミングPM4で示されている。上述したことは、V相およびW相についても同様に言える。同図では、V相の電圧比較部63cの出力が切り替わるタイミングは、タイミングPM3およびタイミングPM6で示されている。また、W相の電圧比較部63cの出力が切り替わるタイミングは、タイミングPM2およびタイミングPM5で示されている。
タイミングPM1〜タイミングPM6は、順に、30°、90°、150°、210°、270°および330°(いずれも電気角)の可動子52の位置を示しており、基準位置に相当する。制御装置60は、位置検出器63から出力される基準位置(タイミングPM1〜タイミングPM6)に基づいて、固定子51に対する可動子52の位置(例えば、電気角1°ピッチの可動子52の位置)を推定することができる。また、制御装置60は、基準位置(タイミングPM1〜タイミングPM6)の発生間隔から可動子52の速度(回転数)を推定することもできる。なお、各相の相端子(U相端子43u、V相端子43vおよびW相端子43w)には、複数(六つ)のスイッチング素子(複数(三つ)の正極側スイッチング素子4xpおよび複数(三つ)の負極側スイッチング素子4xn)の開閉に伴う逆起電力Zが発生する。逆起電力Zは、期間T1〜期間T6の各期間の境界において重畳される。図5では、逆起電力Zは、所定の時間幅をもって記載されているが、実際には瞬間的な波形である。制御装置60は、逆起電力Zに基づいて、通電期間(非通電期間)の始点および終点を知得することができる。
図6は、参考形態に係り、誘起電圧(U相の誘起電圧Vui)に高周波ノイズが重畳する要因を説明するための図である。同図は、図1に示す直流電源20、複数(六つ)のスイッチング素子(複数(三つ)の正極側スイッチング素子4xpおよび複数(三つ)の負極側スイッチング素子4xn)および固定子51の固定子巻線51c(U相コイル51u、V相コイル51vおよびW相コイル51w)を抜き出した模式図である。同図では、正極側スイッチング素子4xpおよび負極側スイッチング素子4xnは、開閉状態がスイッチを用いて模式的に示されている。また、同図は、図4および図5の期間T4における各スイッチング素子の開閉状態の一例を示している。
期間T4では、U相の正極側スイッチング素子4upおよびU相の負極側スイッチング素子4unの両方が開状態に制御される。また、V相の正極側スイッチング素子4vpが所定のキャリア周波数およびデューティ比でパルス幅変調(PWM)制御され、かつ、V相の負極側スイッチング素子4vnが開状態に制御される。さらに、W相の正極側スイッチング素子4wpが開状態に制御され、かつ、W相の負極側スイッチング素子4wnが閉状態に制御される。期間T4は、U相の非通電期間であり、U相の誘起電圧Vuiが生じる。
ここで、複数(六つ)のスイッチング素子(複数(三つ)の正極側スイッチング素子4xpおよび複数(三つ)の負極側スイッチング素子4xn)のうちの非通電相の複数(二つ)のスイッチング素子(一つの正極側スイッチング素子4xpおよび一つの負極側スイッチング素子4xn)と、非通電相の固定子巻線51cとを電気的に接続する電力ラインを非通電相電力ライン44cとする。期間T4では、非通電相は、U相であり、U相の一対のスイッチング素子41の接続部42uとU相の固定子巻線51c(U相コイル51u)とを電気的に接続するU相電力ライン44uが、非通電相電力ライン44cに相当する。また、同図では、非通電相電力ライン44c(U相電力ライン44u)と直流電源20の正極側20pとの間の寄生容量をU相正極側寄生容量4Cupで示している。同様に、非通電相電力ライン44c(U相電力ライン44u)と直流電源20の負極側20nとの間の寄生容量をU相負極側寄生容量4Cunで示している。
期間T4では、V相の正極側スイッチング素子4vpが所定のキャリア周波数およびデューティ比でパルス幅変調(PWM)制御される。その結果、V相端子43vは、直流電圧Vdcに拘束される状態と、ゼロ電圧に拘束される状態とが交互に繰り返される状態になる。この際、第一電流と第二電流とが共振(並列共振)する共振現象が生じる。第一電流は、U相コイル51u、U相正極側寄生容量4Cup、V相の正極側スイッチング素子4vp、V相コイル51vを順に通って、U相コイル51uに戻る電流をいう。第二電流は、U相コイル51u、U相負極側寄生容量4Cun、W相の負極側スイッチング素子4wn、W相コイル51wを順に通って、U相コイル51uに戻る電流をいう。第一電流と第二電流との共振(並列共振)は、U相の誘起電圧Vuiに高周波ノイズを重畳する。具体的には、V相の正極側スイッチング素子4vpがパルス幅変調(PWM)制御により開状態から閉状態に切り替えられると、U相の誘起電圧Vuiが生じる(図5の期間T4における複数の矩形波のうちの一つの矩形波に相当)。このときのU相の誘起電圧Vuiの立ち上がり時に、スパイクノイズが生じる。
既述したように、位置検出器63は、非通電相のU相端子43uに発生する電圧(U相の誘起電圧Vui)と、電力変換器40に入力される直流電力の直流電圧Vdcに基づいて設定される基準電圧(本実施形態では、直流電圧Vdcの1/2の電圧)との大小比較により、可動子52の基準位置を検出する。そのため、U相の誘起電圧Vuiに高周波ノイズが重畳し、U相の誘起電圧Vuiのピーク値が直流電圧Vdcの1/2の電圧を超えると、制御装置60は、図5に示す基準位置(タイミングPM4)を誤検出する可能性がある。よって、V相の正極側スイッチング素子4vpがパルス幅変調(PWM)制御により開状態から閉状態に切り替えられてから、U相の誘起電圧Vuiに重畳する高周波ノイズが収束するまでの所定期間が経過した後に、可動子52の基準位置の検出を開始する手法が考えられる。上述したことは、期間T1においても同様に言える。また、上述したことは、V相およびW相についても同様に言える。
しかしながら、上述した手法では、上述した所定期間よりも短いパルス幅を採用するパルス幅変調(PWM)制御が困難である。そのため、上述した所定期間がパルス幅変調(PWM)制御における最小のデューティ比になる。一般に、電動機50の負荷トルクが同じ場合、電動機50の駆動回転数が低下する程、パルス幅変調(PWM)制御におけるデューティ比は、小さく設定される。よって、誘起電圧(U相の誘起電圧Vui、V相の誘起電圧VviおよびW相の誘起電圧Vwi)に重畳する高周波ノイズによりデューティ比が制限されると、電動機50の最低回転数などが制約を受ける可能性がある。また、特許文献1に記載の発明のように、キャリア周波数を変更すると、キャリア周波数が可聴周波数帯域に設定される可能性がある。この場合、電力変換器40の駆動時に異音(騒音)が生じ、防音対策などが必要になる。そこで、本実施形態の電動機制御装置10は、誘起電圧(U相の誘起電圧Vui、V相の誘起電圧VviおよびW相の誘起電圧Vwi)に重畳する高周波ノイズ自体を低減する。
(直流電力供給部70)
直流電力供給部70は、非通電相電力ライン44cに対して、誘起電圧(U相の誘起電圧Vui、V相の誘起電圧Vvi、W相の誘起電圧Vwi)に重畳する高周波ノイズを低減可能な直流電力である第一直流電力P1を供給する。これにより、本実施形態の電動機制御装置10は、誘起電圧(U相の誘起電圧Vui、V相の誘起電圧Vvi、W相の誘起電圧Vwi)に重畳する高周波ノイズの要因となる電流共振(第一電流と第二電流との並列共振)を軽減して、高周波ノイズを低減する。直流電力供給部70は、非通電相電力ライン44cに対して、第一直流電力P1を供給することができれば良く、その構成は、限定されない。
図7は、誘起電圧(U相の誘起電圧Vui)に重畳する高周波ノイズを低減する原理を説明するための図である。図1および図7に示すように、直流電力供給部70(直流電力供給部70x)は、直流電力生成部71xと、電流制御部72xと、第一スイッチング素子73xと、第一スイッチング素子制御部74xとを備えると好適である。既述したように、xは、u、v、wのうちのいずれかである。例えば、直流電力供給部70uは、U相の直流電力供給部70を示している。同様に、直流電力生成部71uは、U相の直流電力生成部を示し、電流制御部72uは、U相の電流制御部を示している。また、第一スイッチング素子73uは、U相の第一スイッチング素子を示し、第一スイッチング素子制御部74uは、U相の第一スイッチング素子制御部を示している。以下、U相を例に説明するが、V相およびW相についても同様である。
直流電力生成部71uは、第一直流電力P1を生成する。既述したように、位置検出器63は、非通電相の固定子巻線51cと電気的に接続される相端子(U相端子43u、V相端子43v、W相端子43w)の電圧と、基準電圧(本実施形態では、直流電圧Vdcの1/2の電圧)との大小比較により、可動子52の基準位置を検出する。そこで、直流電力生成部71uは、電力変換器40に入力される直流電力の直流電圧Vdcに基づいて設定される基準電圧(本実施形態では、直流電圧Vdcの1/2の電圧)と比べて、第一直流電力P1の直流電圧Vu1を小さく設定すると好適である。これにより、直流電力供給部70uは、可動子52の基準位置の検出に悪影響を与えることなく、第一直流電力P1を供給することができる。
また、第一直流電力P1の直流電流は、非通電相電力ライン44cの寄生容量(既述した例では、U相正極側寄生容量4CupおよびU相負極側寄生容量4Cun)に応じて、設定することができる。具体的には、図7に示す寄生容量に相当する静電容量をもつコンデンサを考える。第一直流電力P1の直流電流は、V相の正極側スイッチング素子4vpがパルス幅変調(PWM)制御により閉状態に制御される期間において、当該コンデンサを充電可能な電流とすることができる。なお、寄生容量を正確に算定することは困難であるので、予め、シミュレーション、実機による検証などによって、誘起電圧(U相の誘起電圧Vui、V相の誘起電圧VviおよびW相の誘起電圧Vwi)に重畳する高周波ノイズの低減効果を確認して、第一直流電力P1の直流電圧Vu1および直流電流を設定しておくと良い。
本実施形態の直流電力生成部71uは、第一抵抗器71aと、第二抵抗器71bと、コンデンサ71cとを備えている。第一抵抗器71aの一端側は、直流電源20の正極側20pと接続されており、第一抵抗器71aの他端側は、第二抵抗器71bの一端側と接続されている。第二抵抗器71bの他端側は、直流電源20の負極側20nのパワーグランド(直流電源20を含む高電圧側の回路の基準電位)と接続されている。第一抵抗器71aと第二抵抗器71bとの接続点71pは、コンデンサ71cの一端側と接続されており、コンデンサ71cの他端側は、接続点71qを介して、直流電源20の負極側20nのパワーグランドと接続されている。これにより、電流制御部72uと接続される接続点71rには、電力変換器40に入力される直流電力の直流電圧Vdcを分圧した直流電圧が発生する。本実施形態では、第二抵抗器71bの抵抗値は、第一抵抗器71aの抵抗値と比べて小さく設定されている。そのため、接続点71rには、直流電圧Vdcの1/2の電圧より小さい直流電圧Vu1が出力される。このように、第一抵抗器71aおよび第二抵抗器71bの各抵抗値を規定することによって、第一直流電力P1の直流電圧Vu1および直流電流を設定することができる。なお、直流電力生成部71uは、公知の直流電源を用いることもできる。
電流制御部72uは、直流電力生成部71uから非通電相電力ライン44c(U相電力ライン44u)への電流の流出を許容し、かつ、非通電相電力ライン44c(U相電力ライン44u)から直流電力生成部71uへの電流の流入を規制する。電流制御部72uは、例えば、公知の整流素子(ダイオード)を用いることができる。電流制御部72uの入力端子7aは、直流電力生成部71uの接続点71rと接続されており、電流制御部72uの出力端子7kは、第一スイッチング素子73uと接続されている。なお、電流制御部72uがダイオードの場合、入力端子7aは、アノード端子に相当し、出力端子7kは、カソード端子に相当する。
第一スイッチング素子73uは、直流電力生成部71uによって生成された第一直流電力P1を非通電相電力ライン44c(U相電力ライン44u)に対して、供給可能または供給不可能にする。第一スイッチング素子73uは、正極側スイッチング素子4xpおよび負極側スイッチング素子4xnと同様に、公知の電力用スイッチング素子を用いることができる。図1に示すように、第一スイッチング素子73uは、制御端子7gと、入力端子7cと、出力端子7eと、還流ダイオード7dとを備えている。制御端子7gは、制御端子4gに対応し、入力端子7cは、入力端子4cに対応する。また、出力端子7eは、出力端子4eに対応し、還流ダイオード7dは、還流ダイオード4dに対応する。
第一スイッチング素子制御部74uは、非通電相(U相)の複数(二つ)のスイッチング素子(正極側スイッチング素子4upおよび負極側スイッチング素子4un)がいずれも開状態に制御されている期間(図4および図5に示す期間T1および期間T4)に、第一スイッチング素子73uを断続制御する。図7に示すように、第一スイッチング素子制御部74uが第一スイッチング素子73uを閉状態に制御すると、直流電力生成部71uによって生成された第一直流電力P1は、電流制御部72u、第一スイッチング素子73uを介して、非通電相電力ライン44c(U相電力ライン44u)に対して、供給可能になる。一方、第一スイッチング素子制御部74uが第一スイッチング素子73uを開状態に制御すると、直流電力生成部71uによって生成された第一直流電力P1は、非通電相電力ライン44c(U相電力ライン44u)に対して、供給不可能になる。
このようにして、U相の誘起電圧Vuiが生じる期間T4において、第一スイッチング素子73uが断続制御され、非通電相電力ライン44c(U相電力ライン44u)に対して、第一直流電力P1が断続供給される。これにより、誘起電圧(U相の誘起電圧Vui)が検出される際に、図7に示す非通電相(U相)のU相正極側寄生容量4CupおよびU相負極側寄生容量4Cunが充電される。U相正極側寄生容量4Cupが第一直流電力P1によって充電されることにより、U相コイル51u、U相正極側寄生容量4Cup、V相の正極側スイッチング素子4vp、V相コイル51vを順に通って、U相コイル51uに戻る第一電流が減少する。同様に、U相負極側寄生容量4Cunが第一直流電力P1によって充電されることにより、U相コイル51u、U相負極側寄生容量4Cun、W相の負極側スイッチング素子4wn、W相コイル51wを順に通って、U相コイル51uに戻る第二電流が減少する。その結果、第一電流と第二電流とが共振(並列共振)する共振現象の発生が抑制される。また、U相の誘起電圧Vuiに重畳する高周波ノイズ(U相の誘起電圧Vuiの立ち上がり時に生じるスパイクノイズ)が低減する。
第一スイッチング素子制御部74uは、上述した期間に、第一スイッチング素子73uを断続制御することができれば良く、その構成は、限定されない。第一スイッチング素子制御部74uは、通電相のスイッチング素子(図4および図5の期間T4では、V相の正極側スイッチング素子4vp)がパルス幅変調(PWM)制御されるときに、当該スイッチング素子の開閉制御に同期して、第一スイッチング素子73uを断続制御すると好適である。
図1に示すように、本実施形態の第一スイッチング素子制御部74uは、第一論理素子74aと、第二論理素子74bとを備えている。第一論理素子74aおよび第二論理素子74bは、公知の論理素子を用いることができる。本実施形態では、第一論理素子74aおよび第二論理素子74bは、否定論理和を出力する論理素子を用いる。第一論理素子74aは、第一入力端子7i1と、第二入力端子7i2と、出力端子7oとを備えている。第一論理素子74aは、第一入力端子7i1および第二入力端子7i2の両方がローレベル(所定電圧値以下の状態)のときに、ハイレベル(所定電圧値を超えている状態)を出力する。一方、第一論理素子74aは、第一入力端子7i1および第二入力端子7i2のうちの少なくとも一方がハイレベル(所定電圧値を超えている状態)のときに、ローレベル(所定電圧値以下の状態)を出力する。上述したことは、第二論理素子74bについても同様に言える。
図1に示すように、U相の正極側スイッチング素子4upの制御端子4gは、V相の第一論理素子74aの第一入力端子7i1およびW相の第一論理素子74aの第一入力端子7i1の両方と接続されている。また、V相の正極側スイッチング素子4vpの制御端子4gは、U相の第一論理素子74aの第一入力端子7i1およびW相の第一論理素子74aの第二入力端子7i2の両方と接続されている。さらに、W相の正極側スイッチング素子4wpの制御端子4gは、U相の第一論理素子74aの第二入力端子7i2およびV相の第一論理素子74aの第二入力端子7i2の両方と接続されている。
また、U相の第二論理素子74bの第一入力端子7i1は、U相の第一論理素子74aの出力端子7oと接続され、U相の第二論理素子74bの第二入力端子7i2は、U相の負極側スイッチング素子4unの制御端子4gと接続されている。U相の第二論理素子74bの出力端子7oは、U相の第一スイッチング素子73uの制御端子7gと接続されている。U相の第一スイッチング素子73uの入力端子7cは、U相の電流制御部72uの出力端子7kと接続され、U相の第一スイッチング素子73uの出力端子7eは、U相電力ライン44uと接続されている。
さらに、V相の第二論理素子74bの第一入力端子7i1は、V相の第一論理素子74aの出力端子7oと接続され、V相の第二論理素子74bの第二入力端子7i2は、V相の負極側スイッチング素子4vnの制御端子4gと接続されている。V相の第二論理素子74bの出力端子7oは、V相の第一スイッチング素子73vの制御端子7gと接続されている。V相の第一スイッチング素子73vの入力端子7cは、V相の電流制御部72vの出力端子7kと接続され、V相の第一スイッチング素子73vの出力端子7eは、V相電力ライン44vと接続されている。
また、W相の第二論理素子74bの第一入力端子7i1は、W相の第一論理素子74aの出力端子7oと接続され、W相の第二論理素子74bの第二入力端子7i2は、W相の負極側スイッチング素子4wnの制御端子4gと接続されている。W相の第二論理素子74bの出力端子7oは、W相の第一スイッチング素子73wの制御端子7gと接続されている。W相の第一スイッチング素子73wの入力端子7cは、W相の電流制御部72wの出力端子7kと接続され、W相の第一スイッチング素子73wの出力端子7eは、W相電力ライン44wと接続されている。
図8は、第一直流電力P1を供給するタイミングの一例を示している。同図の横軸は共通の時間軸(時刻)であり、期間T1〜期間T6は、図4および図5に示す期間に対応している。また、各縦軸は、電圧を示しており、「Lo」は、ローレベル(所定電圧値以下の状態)を示し、「Hi」は、ハイレベル(所定電圧値を超えている状態)を示している。さらに、波形L21は、U相の正極側スイッチング素子4upの制御端子4gに印加される電圧波形の一例を示している。同様に、波形L22は、V相の正極側スイッチング素子4vpの制御端子4gに印加される電圧波形の一例を示している。波形L23は、W相の正極側スイッチング素子4wpの制御端子4gに印加される電圧波形の一例を示している。
また、波形L24は、U相の負極側スイッチング素子4unの制御端子4gに印加される電圧波形の一例を示している。同様に、波形L25は、V相の負極側スイッチング素子4vnの制御端子4gに印加される電圧波形の一例を示している。波形L26は、W相の負極側スイッチング素子4wnの制御端子4gに印加される電圧波形の一例を示している。さらに、波形L27は、U相の第一スイッチング素子73uの制御端子7gに印加される電圧波形の一例を示している。同様に、波形L28は、V相の第一スイッチング素子73vの制御端子7gに印加される電圧波形の一例を示している。波形L29は、W相の第一スイッチング素子73wの制御端子7gに印加される電圧波形の一例を示している。
図9は、図8に示す制御によってU相端子43uに発生する電圧波形の一例を示している。同図の横軸は時刻を示し、期間T1〜期間T6は、図4、図5および図8に示す期間に対応している。また、縦軸は、電圧を示している。波形L31は、U相端子43uに発生する電圧波形の一例を示している。以下、図1、図8および図9に基づいて、U相の誘起電圧Vuiが生じる期間T1および期間T4について、詳細に説明する。U相の誘起電圧Vuiについて記述することは、V相の誘起電圧Vvi(期間T3および期間T6)についても同様に言え、W相の誘起電圧Vwi(期間T2および期間T5)についても同様に言える。
図8に示すように、期間T1では、U相の正極側スイッチング素子4upおよびU相の負極側スイッチング素子4unの両方が開状態に制御される(波形L21および波形L24を参照)。また、V相の正極側スイッチング素子4vpが開状態に制御され、かつ、V相の負極側スイッチング素子4vnが閉状態に制御される(波形L22および波形L25を参照)。さらに、W相の正極側スイッチング素子4wpが所定のキャリア周波数およびデューティ比でパルス幅変調(PWM)制御され、かつ、W相の負極側スイッチング素子4wnが開状態に制御される(波形L23および波形L26を参照)。期間T1は、U相の非通電期間であり、U相の誘起電圧Vuiが生じる。
期間T1では、図1に示すU相の第一論理素子74aの第一入力端子7i1は、ローレベル(所定電圧値以下の状態)になる。また、U相の第一論理素子74aの第二入力端子7i2は、W相の正極側スイッチング素子4wpがパルス幅変調(PWM)制御される際のデューティ比と同じデューティ比で、ローレベル(所定電圧値以下の状態)とハイレベル(所定電圧値を超えている状態)とが繰り返される。その結果、U相の第一論理素子74aの出力端子7oは、U相の第一論理素子74aの第二入力端子7i2の電圧波形を反転した電圧波形(ローレベル(所定電圧値以下の状態)とハイレベル(所定電圧値を超えている状態)とを反転した電圧波形)になる。
U相の第一論理素子74aの出力端子7oから出力された反転した電圧波形は、U相の第二論理素子74bの第一入力端子7i1に入力される。また、U相の第二論理素子74bの第二入力端子7i2は、ローレベル(所定電圧値以下の状態)になる。その結果、U相の第二論理素子74bの出力端子7oは、反転した電圧波形がさらに反転されて、W相の正極側スイッチング素子4wpがパルス幅変調(PWM)制御される際のデューティ比と同じデューティ比で、ローレベル(所定電圧値以下の状態)とハイレベル(所定電圧値を超えている状態)とが繰り返される電圧波形を出力する。U相の第二論理素子74bの出力端子7oから出力された電圧波形は、U相の第一スイッチング素子73uの制御端子7gに印加される。
よって、図8に示すように、第一スイッチング素子制御部74uは、通電相のスイッチング素子(期間T1では、W相の正極側スイッチング素子4wp)がパルス幅変調(PWM)制御されるときに、当該スイッチング素子の開閉制御に同期して、第一スイッチング素子73uを断続制御することができる(波形L23および波形L27を参照)。なお、期間T1において、V相およびW相の第二論理素子74bの出力端子7oは、いずれもローレベル(所定電圧値以下の状態)になる。よって、V相の第一スイッチング素子73vおよびW相の第一スイッチング素子73wは、いずれも開状態に制御される。その結果、V相およびW相では、いずれも第一直流電力P1が供給されない(波形L28および波形L29を参照)。
このように、期間T1では、U相の直流電力供給部70uが、非通電相電力ライン44c(U相電力ライン44u)に対して、第一直流電力P1を供給する。そのため、図9に示すように、逆起電力Zが発生した直後から、U相端子43uに発生する電圧(U相の誘起電圧Vui)の矩形波のピーク値は、第一直流電力P1の直流電圧Vu1で一定になる。その後、U相端子43uに発生する電圧(U相の誘起電圧Vui)が第一直流電力P1の直流電圧Vu1と比べて大きくなると、U相の電流制御部72uの出力端子7kの電圧が、入力端子7aの電圧(第一直流電力P1の直流電圧Vu1)と比べて大きくなる。よって、U相端子43uに発生する電圧(U相の誘起電圧Vui)の矩形波のピーク値は、第一直流電力P1の直流電圧Vu1に対して、上昇し始める。
そして、U相端子43uに発生する電圧(U相の誘起電圧Vui)の矩形波のピーク値が基準電圧(直流電圧Vdcの1/2の電圧)と比べて大きくなると、図1に示すU相の電圧比較部63cの出力が切り替わり、位置検出器63は、可動子52の電気角30°の位置を示す基準位置(図9に示すタイミングPM1)を検出する。このとき、U相の誘起電圧Vuiに重畳する高周波ノイズ(U相の誘起電圧Vuiの立ち上がり時に生じるスパイクノイズ)は、低減されており、U相の誘起電圧Vuiに重畳する高周波ノイズに起因する可動子52の基準位置の検出精度の低下が抑制されている。
上述したことは、期間T4についても同様に言える。図8に示すように、期間T4では、U相の直流電力供給部70uが、非通電相電力ライン44c(U相電力ライン44u)に対して、第一直流電力P1を供給する。図9に示すように、期間T3から期間T4に切り替わった直後は、U相端子43uに発生する電圧(U相の誘起電圧Vui)が第一直流電力P1の直流電圧Vu1と比べて大きいので、U相の電流制御部72uの出力端子7kの電圧が、入力端子7aの電圧(第一直流電力P1の直流電圧Vu1)と比べて大きくなる。よって、U相端子43uに発生する電圧(U相の誘起電圧Vui)の矩形波のピーク値は、U相の誘起電圧Vuiの低下に合わせて、次第に低下する。
そして、U相端子43uに発生する電圧(U相の誘起電圧Vui)の矩形波のピーク値が基準電圧(直流電圧Vdcの1/2の電圧)と比べて小さくなると、図1に示すU相の電圧比較部63cの出力が切り替わり、位置検出器63は、可動子52の電気角210°の位置を示す基準位置(図9に示すタイミングPM4)を検出する。その後、U相端子43uに発生する電圧(U相の誘起電圧Vui)が第一直流電力P1の直流電圧Vu1と比べて小さくなると、U相の電流制御部72uの出力端子7kの電圧が、入力端子7aの電圧(第一直流電力P1の直流電圧Vu1)と比べて小さくなる。よって、U相端子43uに発生する電圧(U相の誘起電圧Vui)の矩形波のピーク値は、第一直流電力P1の直流電圧Vu1で一定になる。このとき、U相の誘起電圧Vuiに重畳する高周波ノイズ(U相の誘起電圧Vuiの立ち上がり時に生じるスパイクノイズ)が低減されている。そのため、U相端子43uに発生する電圧(U相の誘起電圧Vui)の矩形波のピーク値が、図9に示すタイミングPM4の付近で、再び基準電圧(直流電圧Vdcの1/2の電圧)と比べて大きくなることを抑制することができる。つまり、U相の誘起電圧Vuiに重畳する高周波ノイズに起因する可動子52の基準位置の検出精度の低下が抑制されている。
様相1に係る電動機制御装置10によれば、電力変換器40と制御装置60とを具備する電動機制御装置10において、直流電力供給部70を備える。直流電力供給部70は、複数(六つ)のスイッチング素子(複数(三つ)の正極側スイッチング素子4xpおよび複数(三つ)の負極側スイッチング素子4xn)のうちの非通電相の複数(二つ)のスイッチング素子(一つの正極側スイッチング素子4xpおよび一つの負極側スイッチング素子4xn)と、非通電相の固定子巻線51cとを電気的に接続する非通電相電力ライン44cに対して、誘起電圧(U相の誘起電圧Vui、V相の誘起電圧Vvi、W相の誘起電圧Vwi)に重畳する高周波ノイズを低減可能な直流電力である第一直流電力P1を供給する。これにより、様相1に係る電動機制御装置10は、誘起電圧(U相の誘起電圧Vui、V相の誘起電圧Vvi、W相の誘起電圧Vwi)に重畳する高周波ノイズの要因となる電流共振(第一電流と第二電流との並列共振)を軽減して、高周波ノイズを低減することができる。そのため、様相1に係る電動機制御装置10は、誘起電圧(U相の誘起電圧Vui、V相の誘起電圧Vvi、W相の誘起電圧Vwi)に重畳する高周波ノイズに起因する可動子52の位置推定精度の低下を抑制することができる。
様相2に係る電動機制御装置10によれば、様相1に係る電動機制御装置10において、制御装置60は、位置検出器63を備える。位置検出器63は、非通電相の固定子巻線51cと電気的に接続される相端子(U相端子43u、V相端子43v、W相端子43w)の電圧と、電力変換器40に入力される直流電力の直流電圧Vdcに基づいて設定される基準電圧との大小比較により、固定子51に対する可動子52の位置の基準になる基準位置を検出する。また、直流電力供給部70は、基準電圧と比べて、第一直流電力P1の直流電圧を小さく設定する。これにより、様相2に係る電動機制御装置10は、可動子52の基準位置の検出に悪影響を与えることなく、第一直流電力P1を供給することができる。
様相3に係る電動機制御装置10によれば、様相1または様相2に係る電動機制御装置10において、直流電力供給部70(直流電力供給部70x)は、直流電力生成部71xと、第一スイッチング素子73xと、第一スイッチング素子制御部74xとを備える。直流電力生成部71xは、第一直流電力P1を生成する。第一スイッチング素子73xは、直流電力生成部71xによって生成された第一直流電力P1を非通電相電力ライン44cに対して、供給可能または供給不可能にする。第一スイッチング素子制御部74xは、非通電相の複数(二つ)のスイッチング素子(一つの正極側スイッチング素子4xpおよび一つの負極側スイッチング素子4xn)がいずれも開状態に制御されている期間に、第一スイッチング素子73xを断続制御する。これにより、様相3に係る電動機制御装置10は、非通電相電力ライン44cに対して、直流電力生成部71xによって生成された第一直流電力P1を断続供給することができる。
様相4に係る電動機制御装置10によれば、様相3に係る電動機制御装置10において、第一スイッチング素子制御部74xは、通電相のスイッチング素子がパルス幅変調(PWM)制御されるときに、当該スイッチング素子の開閉制御に同期して、第一スイッチング素子73xを断続制御する。これにより、様相4に係る電動機制御装置10は、誘起電圧(U相の誘起電圧Vui、V相の誘起電圧Vvi、W相の誘起電圧Vwi)が発生するタイミングに合わせて、第一直流電力P1を断続供給することができる。
様相5に係る電動機制御装置10によれば、様相3または様相4に係る電動機制御装置10において、直流電力供給部70(直流電力供給部70x)は、電流制御部72xを備える。電流制御部72xは、直流電力生成部71xから非通電相電力ライン44cへの電流の流出を許容し、かつ、非通電相電力ライン44cから直流電力生成部71xへの電流の流入を規制する。これにより、様相5に係る電動機制御装置10は、第一直流電力P1を供給しつつ、誘起電圧(U相の誘起電圧Vui、V相の誘起電圧Vvi、W相の誘起電圧Vwi)を検出することができる。
<その他>
本発明は、上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施することができる。例えば、誘起電圧(U相の誘起電圧Vui)が増加する期間T1において、当該誘起電圧を検出する場合、直流電力供給部70uは、当該誘起電圧を検出した後は、第一直流電力P1の供給を停止しても良い。逆に、誘起電圧(U相の誘起電圧Vui)が減少する期間T4において、当該誘起電圧を検出する場合、直流電力供給部70uは、当該誘起電圧を検出するまでの間は、第一直流電力P1の供給を停止しても良い。上述したことは、V相およびW相についても同様に言える。
また、本実施形態では、第一スイッチング素子制御部74xは、第一論理素子74aおよび第二論理素子74bで構成されているが、これに限定されない。第一スイッチング素子制御部74xは、複数(六つ)のスイッチング素子(複数(三つ)の正極側スイッチング素子4xpおよび複数(三つ)の負極側スイッチング素子4xn)の開閉信号に合わせて、直接、第一スイッチング素子73xを断続制御することもできる。さらに、本実施形態では、制御装置60は、通電相の正極側スイッチング素子4xpをパルス幅変調(PWM)制御する。しかしながら、制御装置60は、通電相の負極側スイッチング素子4xnをパルス幅変調(PWM)制御することもできる。また、制御装置60は、正極側スイッチング素子4xpおよび負極側スイッチング素子4xnの両方においてパルス幅変調(PWM)制御を行う相補パルス幅変調(PWM)制御を行うこともできる。
さらに、本実施形態では、制御装置60は、各相において電気角120°の期間、パルス幅変調(PWM)制御する120°通電制御を行う。しかしながら、制御装置60は、各相において電気角120°よりも長い期間、パルス幅変調(PWM)制御する広角通電制御を行うこともできる。また、制御装置60は、ベクトル制御による正弦波駆動を行うこともできる。なお、電動機制御装置10は、例えば、ハイブリッド自動車などの車両の駆動用電動機を含む電力変換システム1に用いると好適である。
<付記項>
本発明は、電動機制御装置10の制御方法として、捉えることもできる。直流電力供給工程は、直流電力供給部70(直流電力供給部70x)が行う制御に対応する。また、直流電力生成工程は、直流電力生成部71xが行う制御に対応し、電流制御工程は、電流制御部72xが行う制御に対応する。第一スイッチング素子制御工程は、第一スイッチング素子制御部74xが行う制御に対応する。電動機制御装置10の制御方法においても、電動機制御装置10について既述した作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
(付記項1)
複数のスイッチング素子が開閉制御されることにより直流電力を交流電力に変換して、固定子と可動子とを備える電動機に対して前記変換された前記交流電力を出力する電力変換器と、
前記固定子の非通電相の固定子巻線に生じる誘起電圧に基づいて、前記固定子に対する前記可動子の位置を推定して、前記推定された前記可動子の前記位置に基づいて前記複数のスイッチング素子の各々を前記開閉制御する制御装置と、
を具備する電動機制御装置の制御方法であって、
前記複数のスイッチング素子のうちの前記非通電相の複数のスイッチング素子と前記非通電相の前記固定子巻線とを電気的に接続する非通電相電力ラインに対して、前記誘起電圧に重畳する高周波ノイズを低減可能な直流電力である第一直流電力を供給する直流電力供給工程を備える電動機制御装置の制御方法。
(付記項2)
前記制御装置は、前記非通電相の前記固定子巻線と電気的に接続される相端子の電圧と、前記電力変換器に入力される前記直流電力の直流電圧に基づいて設定される基準電圧との大小比較により、前記可動子の前記位置の基準になる基準位置を検出する位置検出器を備え、
前記直流電力供給工程は、前記基準電圧と比べて、前記第一直流電力の直流電圧を小さく設定する付記項1に記載の電動機制御装置の制御方法。
(付記項3)
前記直流電力供給工程は、前記第一直流電力を生成する直流電力生成工程と、
前記直流電力生成工程によって生成された前記第一直流電力を前記非通電相電力ラインに対して供給可能または供給不可能にする第一スイッチング素子を用いて、前記非通電相の複数のスイッチング素子がいずれも開状態に制御されている期間に前記第一スイッチング素子を断続制御する第一スイッチング素子制御工程と、
を備える付記項1または付記項2に記載の電動機制御装置の制御方法。
(付記項4)
前記第一スイッチング素子制御工程は、通電相のスイッチング素子がパルス幅変調制御されるときに、当該スイッチング素子の開閉制御に同期して、前記第一スイッチング素子を前記断続制御する付記項3に記載の電動機制御装置の制御方法。
(付記項5)
前記直流電力供給工程は、前記直流電力生成工程によって生成された前記第一直流電力の電流を前記非通電相電力ラインへ流出させ、かつ、前記非通電相電力ラインから流入する電流を規制する電流制御工程を備える付記項3または付記項4に記載の電動機制御装置の制御方法。