JP2018107703A - 磁気抵抗効果デバイス - Google Patents

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晋治 原
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哲也 柴田
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哲人 篠原
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Abstract

【課題】共振器に適用可能な磁気抵抗効果デバイスを提供する。【解決手段】この磁気抵抗効果デバイスは、閉回路と、第1のポートと、第2のポートとを備える。閉回路は、磁化固着層、スペーサ層および磁化自由層を含む磁気抵抗効果素子と、直流電流入力端子と、第1の信号線路と、第2の信号線路とを有する。第1のポートは、第1の信号線路と接続され、高周波信号が入力される。第2のポートは、第2の信号線路と接続され、高周波信号のうちの一部の高周波成分が出力される。第1のポート、磁気抵抗効果素子および第2のポートがこの順に直列接続される。磁気抵抗効果素子の最深部は、磁気抵抗効果素子の表面から10nm以上80nm以下の位置にある。【選択図】図1A

Description

本発明は、磁気抵抗効果素子を含む磁気抵抗効果デバイスに関する。
近年、携帯電話等の移動通信端末の高機能化に伴い、無線通信の高速化が進められている。通信速度は使用する周波数の帯域幅に比例するため、通信に必要な周波数バンドは増加し、それに伴って、移動通信端末に必要な高周波フィルタの搭載数も増加している。また、近年新しい高周波用部品に応用できる可能性のある分野として研究されているのがスピントロニクスであり、その中で注目されている現象の一つが、磁気抵抗効果素子によるスピントルク共鳴現象である(非特許文献1参照)。
Nature、Vol.438、No.7066、pp.339−342、17 November 2005
磁気抵抗効果素子に対し、交流電流を流すのと同時に、磁場印加機構によって磁場を印加することで、その磁気抵抗効果素子にスピントルク共鳴を起こすことができる。その際、磁気抵抗効果素子の抵抗値は、スピントルク共鳴周波数に対応した周波数で周期的に振動する。また、磁気抵抗効果素子に印加される磁場の強さによって、その磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数は変化する。その共鳴周波数は、例えば数〜数十GHzの高周波帯域である。このような性質を有する磁気抵抗効果素子を利用して、例えば高周波フィルタなどの共振器に適用可能な磁気抵抗効果デバイスを提供することが望ましい。
本発明の一実施の形態としての第1の磁気抵抗効果デバイスは、閉回路と、第1のポートと、第2のポートとを備える。閉回路は、磁化固着層、スペーサ層および磁化自由層を含む磁気抵抗効果素子と、直流電流入力端子と、第1の信号線路と、第2の信号線路とを有する。第1のポートは、閉回路の第1の信号線路と接続され、高周波信号が入力されるものである。第2のポートは、閉回路の第2の信号線路と接続され、高周波信号のうちの一部の高周波成分が出力されるものである。第1のポート、磁気抵抗効果素子および第2のポートは、この順に直列接続されている。磁気抵抗効果素子の最深部は、磁気抵抗効果素子の表面から10nm以上80nm以下の位置にある。なお、ここでいう最深部とは、磁気抵抗効果素子の表面から最も遠い部分を意味する。
本発明の一実施の形態としての第1の磁気抵抗効果デバイスでは、閉回路に含まれる磁気抵抗効果素子の最深部が、磁気抵抗効果素子の表面から10nm以上80nm以下の位置にある。このため、交流電流が磁気抵抗効果素子を流れる際の表皮効果により生じる、磁気抵抗効果素子中の電流密度のばらつきが低減される。よって、磁気抵抗効果素子におけるスピントルク共鳴周波数の分散が抑制される。
本発明の一実施の形態としての第1の磁気抵抗効果デバイスでは、磁気抵抗効果素子の最深部は、磁気抵抗効果素子の表面から10nm以上50nm以下の位置にあることがより好ましく、10nm以上30nm以下の位置にあることがよりいっそう好ましい。磁気抵抗効果素子中の電流密度のばらつきがよりいっそう低減されるので、磁気抵抗効果素子におけるスピントルク共鳴周波数の分散がよりいっそう抑制されるからである。
本発明の一実施の形態としての第2の磁気抵抗効果デバイスは、閉回路と、第1のポートと、第2のポートとを備える。閉回路は、磁化固着層、スペーサ層および磁化自由層を含む磁気抵抗効果素子と、直流電流入力端子と、第1の信号線路と、第2の信号線路とを有する。第1のポートは、閉回路の第1の信号線路と接続され、高周波信号が入力されるものである。第2のポートは、閉回路の第2の信号線路と接続され、高周波信号のうちの一部の高周波成分が出力されるものである。第1のポート、磁気抵抗効果素子および第2のポートは、この順に直列接続されている。さらに、磁気抵抗効果素子における電流が流れる有効領域のうち、最も狭い部分の直径が20nm以上160nm以下である。
本発明の一実施の形態としての第2の磁気抵抗効果デバイスでは、閉回路に含まれる磁気抵抗効果素子における電流が流れる有効領域のうち、最も狭い部分の直径が20nm以上160nm以下である。このため、交流電流が磁気抵抗効果素子を流れる際の表皮効果により生じる、磁気抵抗効果素子中の電流密度のばらつきが低減される。よって、磁気抵抗効果素子におけるスピントルク共鳴周波数の分散が抑制される。
本発明の一実施の形態としての第2の磁気抵抗効果デバイスでは、磁気抵抗効果素子における電流が流れる有効領域のうち、最も狭い部分の直径が20nm以上100nm以下であることが好ましく、20nm以上60nm以下であることがよりいっそう好ましい。磁気抵抗効果素子中の電流密度のばらつきがよりいっそう低減されるので、磁気抵抗効果素子におけるスピントルク共鳴周波数の分散がよりいっそう抑制されるからである。
本発明の一実施の形態としての磁気抵抗効果デバイスでは、例えば、磁化自由層の最大寸法が好ましくは160nm以下、より好ましくは20nm以上100nm以下、よりいっそう好ましくは20nm以上60nm以下であるとよい。また、磁化自由層は、例えば鉄およびコバルトを含有するものである。また、閉回路は、信号線路と、インピーダンス素子とをさらに有するようにしてもよい。
本発明の一実施の形態としての磁気抵抗効果デバイスでは、磁気抵抗効果素子に対して磁場を印加する磁場供給部をさらに備えるものであるとよい。その場合、磁場供給部は、磁気抵抗効果素子に対して印加する磁場の強度を変化させるものであるとよい。磁気抵抗効果素子におけるスピントルク共鳴周波数を変化させることができるからである。
本発明の一実施の形態としての磁気抵抗効果デバイスによれば、磁気抵抗効果素子を流れる交流電流の電流密度のばらつきを低減することにより、磁気抵抗効果素子におけるスピントルク共鳴周波数の分散を抑制できる。その結果、本発明の一実施の形態としての磁気抵抗効果デバイスは、安定した性能を有する共振器として振舞うことができる。なお、本発明の効果はこれに限定されるものではなく、以下に記載のいずれの効果であってもよい。
本発明の一実施の形態としての磁気抵抗効果デバイスの全体構成を表す断面模式図である。 図1Aに示した磁気抵抗効果素子の平面形状を表す模式図である。 図1Aに示した磁気抵抗効果デバイスの直流電流に対する周波数と減衰量との関係を表す特性図である。 図1Aに示した磁気抵抗効果デバイスの磁場強度に対する周波数と減衰量との関係を表す特性図である。 図1Aに示した磁気抵抗効果素子に適用可能な材料における、相対電流密度の深さ依存性を表す特性図である。 図1Aに示した磁気抵抗効果素子の詳細を表す断面模式図である。 図1Aに示した磁気抵抗効果素子における、減衰量の周波数依存性を表す特性図である。 図1Aに示した磁気抵抗効果素子に含まれる磁化自由層における、直径と減衰量との関係を表す特性図である。 図1Aに示した磁気抵抗効果素子の変形例を表す断面模式図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.一実施の形態
2.実験例
3.その他の変形例
<1.一実施の形態>
[磁気抵抗効果デバイス100の構成]
図1Aは、本発明の第1の実施形態に係る磁気抵抗効果デバイス100の断面模式図である。磁気抵抗効果デバイス100は、例えば磁気抵抗効果素子1と、上部電極5と、下部電極6と、第1のポート9Aと、第2のポート9Bと、信号線路7A,7Bと、チョークコイル10と、直流電流入力端子11と、磁場供給部12と、直流電流源13とを有している。
第1のポート9A、磁気抵抗効果素子1および第2のポート9Bは、信号線路7A,7Bを介してこの順に直列接続されている。すなわち、第1のポート9Aと磁気抵抗効果素子1とが信号線路7Aにより接続され、磁気抵抗効果素子1と第2のポート9Bとが信号線路7Bにより接続されている。チョークコイル10は、接続点P2において信号線路7Bと接続された一端と、グラウンド8に接続された他端とを有する。直流電流入力端子11は、接続点P1において信号線路7Aと接続された一端と、直流電流源13と接続された他端とを含んでいる。直流電流源13は、直流電流入力端子11と接続された一端と、グラウンド8に接続された他端とを含んでいる。このように磁気抵抗効果デバイス100においては、信号線路7A、磁気抵抗効果素子1、信号線路7B、チョークコイル10、グラウンド8、直流電流源13および直流電流入力端子11を含む閉回路が形成されている。
第1のポート9Aは交流信号である高周波信号が入力される入力ポートである。第2のポート9Bは、第1のポート9Aから入力された高周波信号のうち、磁気抵抗効果素子1を通過した一部の高周波成分が出力される出力ポートである。
信号線路7Aは、第1のポート9Aと接続された一端と、上部電極5と接続された他端とを含んでいる。信号線路7Bは、第2のポート9Bと接続された一端と、下部電極6と接続された他端とを含んでいる。上部電極5と下部電極6との間には、それらと電気的に接続されるように磁気抵抗効果素子1が設けられている。また、高周波信号が第1のポート9Aから第2のポート9Bに至る際の電力比(出力電力/入力電力)のdB値である減衰量S21は、例えばネットワークアナライザなどの高周波測定器により測定することができる。
上部電極5および下部電極6は、一対の電極としての機能を有し、磁気抵抗効果素子1を構成する各層の積層方向において磁気抵抗効果素子1を挟んで配設されている。すなわち、上部電極5および下部電極6は、磁気抵抗効果素子1に対し、磁気抵抗効果素子1を構成する各層の面と交差する方向、例えば、磁気抵抗効果素子1を構成する各層の面に対して垂直をなす方向に信号電流を流すように機能する。上部電極5および下部電極6は、例えばTa(タンタル),Cu(銅),Au(金),AuCu(金銅合金)もしくはRu(ルテニウム)を主たる材料として含む単層膜、またはこれらを主たる材料として含む単層膜を2以上積層してなる積層膜により構成されることが好ましい。
磁気抵抗効果素子1は、例えば磁化固着層2とスペーサ層3と磁化自由層4とが下部電極6の上に順に積層された積層体を有するものである。
磁化固着層2は、例えば強磁性体材料を主たる材料として含んでおり、その磁化方向が実質的に一方向に固着されている。磁化固着層2に含まれる上記強磁性体材料としては、例えばFe(鉄),Co(コバルト)もしくはNi(ニッケル)の単体、またはニッケルと鉄との合金、鉄とコバルトとの合金、もしくは鉄とコバルトとB(ボロン)との合金などの、高スピン分極率材料が好ましい。そのような高スピン分極率材料を選択することにより、磁気抵抗効果素子1における高い磁気抵抗変化率が得られるからである。
さらに、磁化固着層2を構成する強磁性材料として、例えばCo,CoCr系合金,Co多層膜,CoCrPt系合金,FePt系合金,希土類を含むSmCo系合金またはTbFeCo系合金、などを用いることもできる。これらの強磁性材料を主たる構成材料として含む磁化固着層2は、膜面法線方向に沿って固着された磁化を有することとなる。膜面法線方向に沿って固着された磁化を有する磁化固着層2を構成する強磁性材料としては、上記のもののほか、例えばCo/Pt人工格子膜,Co/Pd人工格子膜,Fe/Pd人工格子膜およびFeBなどが挙げられる。また、磁化固着層2は、ホイスラー合金を主たる材料として含むようにしてもよい。磁化固着層2の膜厚は、例えば1nm〜10nm程度とすることができる。また、磁化固着層2の磁化を安定化するために、磁化固着層2の、スペーサ層3と反対側の面と接するように反強磁性層をさらに設けるようにしてもよい。あるいは結晶構造や形状などに起因する磁気異方性を利用して磁化固着層2の磁化を安定化するようにしてもよい。そのような反強磁性層の構成材料としては、例えばFeO,CoO,NiO,CuFeS2,IrMn,FeMn,PtMn,Cr(クロム)またはMn(マンガン)などを用いることができる。
スペーサ層3は、磁化固着層2と磁化自由層4の間に配置される。磁気抵抗効果素子1では、磁化固着層2の磁化と磁化自由層4の磁化とがスペーサ層3を介して相互作用することにより磁気抵抗効果が得られる。スペーサ層3は、導電体、絶縁体、半導体によって構成される層、もしくは、絶縁体中に導体によって構成される通電点を含む層(電流狭窄層)により構成される。
スペーサ層3として適用される非磁性導電材料としては、例えば銅,Ag(銀),金またはルテニウムなどが挙げられる。スペーサ層3がそのような非磁性導電材料からなる場合、磁気抵抗効果素子1は巨大磁気抵抗(GMR:Giant Magneto-Resistive)効果を発現する。その際、スペーサ層3の膜厚は、例えば0.5nm〜3.0nm程度とするとよい。
スペーサ層3として適用される非磁性絶縁材料としては、例えばAl2 3 (アルミナ)またはMgO(酸化マグネシウム)などが挙げられる。スペーサ層3がそのような非磁性絶縁材料からなる場合、磁気抵抗効果素子1はトンネル磁気抵抗(TMR:Tunneling Magneto-Resistive)効果を発現する。その際、磁化固着層2と磁化自由層4との間にコヒーレントトンネル効果が発現するようにスペーサ層3の膜厚が調整される。スペーサ層3の膜厚は、例えば0.5nm〜3.0nm程度とするとよい。
スペーサ層3として適用される非磁性半導体材料としては、例えばZnO,In2 3 ,SnO2 ,ITO、GaOxまたはGa2xなどが挙げられる。その場合のスペーサ層3の膜厚は、例えば1.0nm〜4.0nm程度とすることが望ましい。
スペーサ層3として適用される電流狭窄層としては、Al2 3 またはMgOなどからなる非磁性絶縁体中に、CoFe,CoFeB,CoFeSi,CoMnGe,CoMnSi,CoMnAl,Fe,Co,Au,Cu,AlまたはMgなどの導体によって構成される通電点を設けるようにした構造を有するものが好ましい。この場合、スペーサ層3の膜厚は、0.5nm〜2.0nm程度とすることが好ましい。
磁化自由層4は、外部印加磁場もしくはスピン偏極電子によって変化する磁化方向を有するものであり、強磁性材料により構成されている。磁化自由層4を構成する強磁性材料としては、例えばNiFe,CoFe,CoFeB,CoFeSi,CoMnGe,CoMnSiまたはCoMnAlなどが挙げられる。これらの強磁性材料を主たる構成材料として含む場合、膜面内方向に沿って磁化容易軸を有することとなる。その場合、磁化自由層4は、例えば1nm〜10nm程度の厚さを有するとよい。
さらに、磁化自由層4を構成する強磁性材料として、例えばCo,CoNi系合金,CoCr系合金,Co多層膜,CoCrPt系合金,FePt系合金,希土類を含むSmCo系合金またはTbFeCo系合金などを用いることもできる。これらの強磁性材料を主たる構成材料として含む磁化自由層4は、膜面法線方向に磁化容易軸を有することとなる。膜面法線方向に磁化容易軸を有する磁化自由層4を構成する強磁性材料としては、上記のもののほか、例えばCo/Pt人工格子膜,Co/Pd人工格子膜,Fe/Pd人工格子膜およびFeBなどが挙げられる。
また、磁化自由層4は、ホイスラー合金により構成されていてもよい。また、磁化自由層4とスペーサ層3との間に高スピン分極率材料が挿入されていてもよい。磁化自由層4とスペーサ層3との間に高スピン分極率材料を挿入することにより、磁気抵抗効果素子1においてより高い磁気抵抗変化率を得ることができるからである。そのような高スピン分極率材料としては、CoFeまたはCoFeBなどが挙げられる。磁化自由層4は、その構成材料としてCoFeまたはCoFeBいずれを用いた場合であっても、例えば0.2nm〜1.0nm程度の厚さを有するとよい。
また、上部電極5と磁気抵抗効果素子1との間、および下部電極6と磁気抵抗効果素子1との間に、それぞれキャップ層、シード層またはバッファー層を配設してもよい。キャップ層、シード層またはバッファー層としては、Ru,Ta,CuもしくはCrなどからなる単層膜、またはそれらの単層膜が複数積層されてなる積層膜などが挙げられる。キャップ層、シード層またはバッファー層の膜厚は、いずれも1nm〜20nm程度とすることが好ましい。
ここで、磁気抵抗効果素子1の最深部は、磁気抵抗効果素子1の表面から10nm以上80nm以下の位置にある。磁気抵抗効果素子1の最深部は、好ましくは磁気抵抗効果素子の表面から10nm以上50nm以下の位置、より好ましくは10nm以上30nm以下の位置にあるとよい。ここでいう最深部とは、磁気抵抗効果素子1の表面から最も遠い部分をいう。
例えば図1Bに示したように、磁気抵抗効果素子1の、積層方向と直交する断面(XY平面)における最大寸法W1が160nm以下であるとよい。この場合、磁気抵抗効果素子1の端面1Sから最深部D0までの距離δ(例えば磁化自由層4の端面4Sから最深部D0までの距離δ)は80nm以下となるからである。したがって、最大寸法W1は、より好ましくは20nm以上100nm以下、よりいっそう好ましくは20nm以上60nm以下であるとよい。なお、図1Bでは磁気抵抗効果素子1(磁化自由層4)の平面形状が楕円形状である場合を例示したが、その平面形状は特にこれに限定されず、例えば円形状や四角形状であってもよい。
グラウンド8は、基準電位として機能する。信号線路7A,7Bおよびグラウンド8の形状は、例えばマイクロストリップライン(MSL)型やコプレーナウェーブガイド(CPW)型であるとよい。信号線路7A,7Bの特性インピーダンスと、閉回路におけるその他のインピーダンスとが等しくなるように信号線路7A,7Bの幅や信号線路7A,7Bとグラウンド8との距離を設計することにより、伝送損失の少ない信号線路7A,7Bが実現される。
チョークコイル10は、信号線路7Bとグラウンド8との間に接続され、インダクタ成分により電流の高周波成分をカットすると同時に電流の直流成分を通す機能を有する。本明細書において、「チョークコイル」という用語は、インダクタ成分により電流の高周波成分をカットすると同時に電流の直流成分を通す機能を有する素子の総称として用いる。チョークコイル10は、チップインダクタまたはパターン線路によるインダクタのどちらでもよい。また、インダクタ成分を有する抵抗素子でもよい。チョークコイル10のインダクタンス値は10nH以上であることが好ましい。チョークコイル10の存在により、磁気抵抗効果素子1を通過する高周波信号の特性を劣化させることなく、磁気抵抗効果素子1、信号線路7A,7B、チョークコイル10、グラウンド8および直流電流入力端子11などを含む閉回路に、直流電流入力端子11から印加された直流電流を流すことができる。
直流電流入力端子11は、磁気抵抗効果素子1を挟んでチョークコイル10とは反対側の信号線路7Aに接続されている。直流電流入力端子11に直流電流源13が接続されることで、磁気抵抗効果素子1に直流電流を印加することができる。図1Aに示した磁気抵抗効果デバイス100では、磁気抵抗効果素子1に、磁化自由層4から磁化固着層2の方向に流れる直流電流が印加される。また、直流電流入力端子11と直流電流源13との間に、高周波信号をカットするための、チョークコイルまたは抵抗素子が直列に接続されてもよい。
直流電流源13は、グラウンド8および直流電流入力端子11に接続され、直流電流入力端子11から、磁気抵抗効果素子1、信号線路7A,7B、チョークコイル10、グラウンド8および直流電流入力端子11などを含む閉回路に対し直流電流を印加するものである。直流電流源13は、例えば、可変抵抗と直流電圧源との組み合わせの回路により構成され、直流電流の電流値を変化可能に構成されている。直流電流源13は、一定の直流電流を発生可能な、固定抵抗と直流電圧源との組み合わせの回路により構成されてもよい。
磁場供給部12は、磁気抵抗効果素子1の近傍に配設され、磁気抵抗効果素子1に対し磁場を印加するものである。磁場供給部12は、例えば電圧もしくは電流のいずれかを変化させることにより印加磁場強度を可変制御できる電磁石型あるいはストリップライン型の磁場印加装置である。また、磁場供給部12は、電磁石型あるいはストリップライン型の磁場印加装置と、一定の磁場のみを供給する永久磁石との組み合わせにより構成されていてもよい。磁場供給部12は、磁気抵抗効果素子1に対し磁場を印加することにより、磁気抵抗効果素子1にスピントルク共鳴現象を誘起することができる。また、磁場供給部12は、磁気抵抗効果素子1に印加する磁場を変化させることで磁気抵抗効果素子1のスピントルク共鳴周波数を変化することができる。
[磁気抵抗効果デバイス100の動作]
次に、磁気抵抗効果デバイス100の動作について説明する。ここでは、まずスピントルク共鳴現象について説明する。
磁気抵抗効果素子1に対し磁場供給部12により磁場を印加すると同時に、磁気抵抗効果素子1に固有のスピントルク共鳴周波数と同じ周波数の高周波信号を第1のポート9Aへ入力すると、磁化自由層4の磁化がスピントルク共鳴周波数で振動する。この現象をスピントルク共鳴現象と呼ぶ。磁気抵抗効果素子1の素子抵抗値は、磁化固着層2と磁化自由層4との磁化の相対角で決定される。そのため、スピントルク共鳴時の磁気抵抗効果素子1の抵抗値は、磁化自由層4の磁化の振動に伴い、周期的に変化する。すなわち磁気抵抗効果素子1は、スピントルク共鳴周波数においてその抵抗値が周期的に変化する抵抗振動素子として取り扱うことができる。さらに、その抵抗振動素子(磁気抵抗効果素子1)にスピントルク共鳴周波数と同じ周波数の高周波信号を入力すると、磁化自由層4の磁化の振動の位相と、入力した高周波信号の位相とが同期し、この高周波信号に対するインピーダンスは減少する。すなわち、磁気抵抗効果素子1は、スピントルク共鳴現象により、スピントルク共鳴周波数において高周波信号のインピーダンスが減少する抵抗素子(共振器)として取り扱うことができる。また、磁気抵抗効果素子1に印加される磁場が強くなるに従ってスピントルク共鳴周波数は高くなる。
また、スピントルク共鳴時に磁気抵抗効果素子1に直流電流が印加されることにより、磁気抵抗効果素子1におけるスピントルクが増加し、振動する磁気抵抗効果素子1の抵抗値の振幅が増加する。振動する磁気抵抗効果素子1の抵抗値の振幅が増加することにより、磁気抵抗効果素子1の素子インピーダンスの変化量が増加する。また、磁気抵抗効果素子1に対して印加される直流電流の電流密度が大きくなるに従い、磁気抵抗効果素子1のスピントルク共鳴周波数は低くなる。したがって、磁気抵抗効果素子1のスピントルク共鳴周波数は、磁気抵抗効果素子1に対し磁場供給部12により印加される磁場の強度を変化させたり、直流電流入力端子11から磁気抵抗効果素子1に対し印加される直流電流を変化させたりすることで、変化させることができる。
スピントルク共鳴現象により、第1のポート9Aから入力された高周波信号の高周波成分の中で磁気抵抗効果素子1のスピントルク共鳴周波数と一致する、もしくはスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数成分は、低インピーダンス状態の磁気抵抗効果素子1を通過したのち、第2のポート9Bから出力される。したがって、磁気抵抗効果デバイス100は、スピントルク共鳴周波数の近傍の周波数帯域を通過帯域とする高周波フィルタとして機能する。
図2および図3は、磁気抵抗効果デバイス100に入力される高周波信号の周波数と減衰量との関係を示した特性図である。図2および図3の縦軸は減衰量、横軸は周波数を表している。図2は、磁気抵抗効果素子1に印加された磁場が一定である場合の、高周波信号の周波数と減衰量との関係を表している。図2において、プロット線100a1は直流電流入力端子11から磁気抵抗効果素子1に対して印加される直流電流値がIa1である場合に対応し、プロット線100a2は直流電流入力端子11から磁気抵抗効果素子1に対して印加される直流電流値がIa2である場合に対応する。ここで、直流電流値Ia2は直流電流値Ia1よりも大きい(Ia1<Ia2)。一方、図3は、磁気抵抗効果素子1に印加される直流電流値が一定である場合の、高周波信号の周波数と減衰量との関係を表している。図3のプロット線100b1は、磁場供給部12から磁気抵抗効果素子1に対し印加される磁場強度がHb1である場合に対応し、プロット線100b2は磁場供給部12から磁気抵抗効果素子1に対し印加される磁場強度がHb2である場合に対応する。ここで、磁場強度Hb2は磁場強度Hb1よりも大きい(Hb1<Hb2)。
例えば、図2に示したように、直流電流入力端子11から磁気抵抗効果素子1に印加する直流電流値をIa1からIa2に増大させた場合、その直流電流値の増大に伴い磁気抵抗効果素子1のスピントルク共鳴周波数の近傍の周波数(通過帯域の周波数)での素子インピーダンスの低下量が増加する。そのため、第2のポート9Bから出力される高周波信号がさらに大きくなり、減衰量(減衰量の絶対値)が小さくなる。したがって、磁気抵抗効果デバイス100は、遮断特性のレンジおよび通過特性のレンジが大きな高周波フィルタとして機能する。また、直流電流値をIa1からIa2に大きくすると磁気抵抗効果素子1のスピントルク共鳴周波数はfa1からfa2に低下する。すなわち通過周波数帯域は低周波数側へシフトする。したがって、磁気抵抗効果デバイス100は、通過周波数帯域の周波数を変化することのできる高周波フィルタとしても機能する。
さらに、図3に示したように、磁場供給部12から印加される磁場強度をHb1からHb2に高めた場合、磁気抵抗効果素子1のスピントルク共鳴周波数はfb1からfb2に上昇する。すなわち、通過周波数帯域は高周波数側へシフトする。また、磁場強度を変化させる場合のほうが、直流電流値を変化させる場合よりも通過周波数帯域を大きくシフトさせることができる。このように、磁気抵抗効果デバイス100は、磁場強度を変化させることで通過周波数帯域の周波数を変化可能な高周波フィルタとして機能することもできる。
さらに、通過周波数帯域が変化する際、通過周波数帯域の任意の周波数1点に注目すると、通過信号の位相が変化する。すなわち、磁気抵抗効果デバイス100は、通過周波数帯域の周波数の信号の位相を変化可能なフェイズシフターとして機能することもできる。
このように、磁気抵抗効果デバイス100では、磁気抵抗効果素子1に対し第1のポート9Aから信号線路7Aを介して高周波信号が入力されると同時に、磁場供給部12から磁気抵抗効果素子1に対し磁場が印加されることにより、磁気抵抗効果素子1にスピントルク共鳴を誘起させることができる。そのスピントルク共鳴により、磁気抵抗効果素子1は、スピントルク共鳴周波数に対応した周波数で周期的に抵抗値が振動する素子として扱うことができる。このため、磁気抵抗効果素子1のスピントルク共鳴周波数と同じ周波数に対する素子インピーダンスが減少する。第1のポート9A、磁気抵抗効果素子1および第2のポート9Bがこの順に直列接続されることにより、高周波信号を高インピーダンスの非共鳴周波数では遮断し、低インピーダンスの共鳴周波数では通過させることができる。すなわち、磁気抵抗効果デバイス100は、高周波フィルタとしての周波数特性をもつことが可能となる。
また、信号線路7Bとグラウンド8とを繋ぐチョークコイル10(インピーダンス素子)は、高周波信号は通さずに直流信号を選択的にグラウンドに流すことができる。これにより、直流電流入力端子11から入力された直流電流は、磁気抵抗効果素子1、信号線路7A,7B、チョークコイル10(インピーダンス素子)、グラウンド8および直流電流入力端子11を含んで形成される閉回路を流れる。この閉回路により、磁気抵抗効果素子1に効率的に直流電流を印加することができる。磁気抵抗効果素子1は、この直流電流が印加されることにより、スピントルクが増加して、振動する抵抗値の振幅が増加する。振動する抵抗値の振幅が増加することにより、磁気抵抗効果素子1の素子インピーダンスの変化量が増加するため、磁気抵抗効果デバイス100は、遮断特性のレンジと通過特性のレンジとが大きな高周波フィルタとして機能することが可能となる。
また、直流電流入力端子11から印加される直流電流を変化させることにより、磁気抵抗効果素子1のスピントルク共鳴周波数を可変制御することができる。このため、磁気抵抗効果デバイス100は、周波数可変フィルタとしても機能する。
さらに、磁気抵抗効果デバイス100は、磁場供給部12が、磁気抵抗効果素子1に印加する磁場を変化させて磁気抵抗効果素子1のスピントルク共鳴周波数を変化可能であるので、周波数可変フィルタとして機能することが可能となる。
さらに、磁気抵抗効果デバイス100には、第2のポート9Bに対して並列に信号線路7A,7Bおよびグラウンド8と接続された磁気抵抗効果素子が存在しない。信号線路7およびグラウンド8に、第2のポート9Bに対して並列に接続された磁気抵抗効果素子を設けた場合、その磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数に対するインピーダンス減少の影響により、高周波信号の損失増加が生じる。磁気抵抗効果デバイス100では、そのような高周波信号の損失増加を防ぐことができる。これにより、磁気抵抗効果デバイス100は、通過特性のよい高周波フィルタとして機能することができる。
また、本実施の形態の磁気抵抗効果デバイス100では、閉回路に含まれる磁気抵抗効果素子1の最深部D0が、磁気抵抗効果素子1の表面(端面1S)から10nm以上80nm以下の位置にある。このため、交流電流が磁気抵抗効果素子1を流れる際の表皮効果により生じる、磁気抵抗効果素子1中の電流密度のばらつきが低減される。よって、磁気抵抗効果素子1におけるスピントルク共鳴周波数の分散が抑制される。最深部D0が磁気抵抗効果素子1の表面(端面1S)から10nm以上50nm以下の位置にある場合、磁気抵抗効果素子1中の電流密度のばらつきがより低減され、磁気抵抗効果素子1におけるスピントルク共鳴周波数の分散がより抑制される。さらに、最深部D0が磁気抵抗効果素子1の表面(端面1S)から10nm以上30nm以下の位置にある場合には、磁気抵抗効果素子1中の電流密度のばらつきがよりいっそう低減され、磁気抵抗効果素子1におけるスピントルク共鳴周波数の分散がよりいっそう抑制される。その結果、磁気抵抗効果デバイス100は、安定した性能を有する共振器として振舞うことができる。
ここで表皮効果について説明する。表皮効果は導体を交流電流が流れるとき、電流密度が導体の表面から離れると低くなる現象のことである。周波数が高くなるほど電流が表面へ集中するため、導体全体としての交流抵抗は高くなる。導体の電流密度Jの導体表面からの距離(深さδ)の依存性は、以下の数1の式で表される。
Figure 2018107703
数1の式において、ここで、δは深さであり、dは表皮深さ(電流が表面電流の1/eとなる深さ)である。表皮深さdは、以下の数2の式で表現される。
Figure 2018107703
数2の式において、ρは導体の電気抵抗率、ωは電流の角周波数、μは導体の絶対透磁率である。
上記の数1および数2の式を用い、磁気抵抗効果素子1の構成材料として用いられる各種金属の透磁率を元に、3GHzにおける電流密度Jと表面からの深さδの関係を表した特性図が図4である。なお、各材料の電気抵抗率および比透磁率は、表1に記載された値を用いている。電流密度Jは表面での値を100%%として規格化している。Feはその透磁率の高さから、表面から10nmで相対電流密度が78%、30nmで48%と表皮効果が顕著に表れる。つまりFeのような材料の中では、素子中電流密度の均一性が著しく失われることは明らかである。したがって、本実施の形態では、磁気抵抗効果素子1の最大寸法を制限することにより、磁気抵抗効果素子1中の電流密度のばらつきを低減するようにしている。
Figure 2018107703
以上説明した磁気抵抗効果デバイス100に対しては、様々な構成要素を追加することができる。例えば、第1のポート9Aに接続された高周波回路に直流信号が流れるのを防ぐために、第1のポート9Aと直流電流入力端子11との間の信号線路7Aに、直流信号をカットするためのコンデンサを直列に接続してもよい。また、第2のポート9Bに接続された高周波回路に直流信号が流れるのを防ぐために、第2のポート9Bとチョークコイル10との間の信号線路7Bに、直流信号をカットするためのコンデンサを直列に接続してもよい。
<2.実験例>
[2.1 実験例1−1〜1−12]
次に、本発明の磁気抵抗効果デバイス(例えば磁気抵抗効果デバイス100)を作製し、その評価を実施した。具体的には、図5に示した積層構造を有する磁気抵抗効果素子1Aを含む磁気抵抗効果デバイスのサンプルを作製した。磁気抵抗効果素子1Aは、下部電極6の上に、下地層16と、反強磁性層15と、磁化固着層2と、スペーサ層3と、磁化自由層4と、キャップ層14とが順に積層されたものである。磁化固着層2は、反強磁性層15の上に、磁化固定膜2Bと交換結合膜2Cと磁化固定膜2Aとが順に積層された構造を有する。下地層16はTa(タンタル)膜とルテニウム膜とが下部電極6の上に順に積層されてなる2層構造(Ta/Ru)とした。反強磁性層15は、IrMnからなる単層構造とした。磁化固着層2は、CoFeからなる磁化固定膜2Bと、Ruからなる交換結合膜2Cと、CoFeBからなる磁化固定膜2Aとの3層構造とした。スペーサ層3はMgOからなる単層構造とし、磁化自由層4はFeBからなる単層構造とし、キャップ層14はTaからなる単層構造とした。ここで磁気抵抗効果素子1Aの形状は略円柱状とした。但し、磁気抵抗効果素子1Aの直径を、実験例1−1では20nmΦとし、実験例1−2では30nmΦとし、実験例1−3では40nmΦとし、実験例1−4では50nmΦとし、実験例1−5では60nmΦとし、実験例1−6では70nmΦとし、実験例1−7では80nmΦとし、実験例1−8では100nmΦとし、実験例1−9では120nmΦとし、実験例1−10では140nmΦとし、実験例1−11では160nmΦとし、実験例1−12では200nmΦとした。
[2.2 実験例2−1〜2−12]
磁化自由層4を、CoBからなる単層構造としたことを除き、他は実験例1−1〜1−12とそれぞれ同様にして磁気抵抗効果素子1Aを含む磁気抵抗効果デバイスのサンプルを作製した。
ところで、磁化自由層4の磁化の歳差運動を表すLLG方程式は以下の数3の式で表される。
Figure 2018107703
数3の式において、右辺は、左側から順に歳差運動項、ダンピング項、スピントランスファートルク項をそれぞれ表している。また、数3の式において、mは磁化自由層4の磁化、γはジャイロ定数、αはギルバートダンピング定数、Heffは磁化自由層4に対し実効的に印加される実効磁場、Iは磁気抵抗効果素子1を流れる信号電流、μBはボーア磁子、g(θ)はg因子と呼ばれる定数、eは電気素量、Msは磁化自由層4の飽和磁化、Vは磁化自由層4の体積、pは磁化固着層2の磁化を表す。スピントランスファートルク項に信号電流Iが含まれることからもわかるように、磁化自由層4の磁化の歳差運動は電流密度に影響を受ける。すなわち、電流密度のばらつきは、スピントランスファートルクのばらつきを招き、歳差運動における周波数のばらつきに影響を与えることは明白である。減衰量S21の周波数依存性は、その差分ΔS21の差異として現れると考えられる。
そこで上記の磁気抵抗効果素子1Aの各サンプルにつき、磁場供給部12を用いて磁場を印加し、ネットワークアナライザを用いて磁気抵抗効果素子1Aの減衰量S21を測定した。磁気抵抗効果素子1Aの減衰量S21は、例えば図6に示したように、ある特定の周波数帯域においてピークを発現した。そこで、そのピーク高さを減衰量の差分ΔS21として求めた。その結果を図7に示す。図7において、横軸が磁気抵抗効果素子1A(磁化自由層4)の直径[nm]を表し、縦軸が減衰量の差分ΔS21[dB]を表している。
図7に示したように、磁化自由層4の構成材料としてFeBを用いた場合(実験例1−1〜1−12)のほうが、磁化自由層4の構成材料としてCoBを用いた場合(実験例2−1〜2−12)よりも減衰量の差分ΔS21が高くなった。なお、FeBやCoBといったB(ホウ素)を添加した材料においては、成膜後の熱処理(例えば磁化固着層2の磁化方向を固着するための加熱処理)の際、多くのB(ホウ素)が拡散し、結果として磁化自由層4にはFeおよびCoが主たる構成材料として残存することとなる。したがって、図7に示した減衰量の差分ΔS21の相違は、FeとCoとの相違が強く影響を与えた結果と考えられる。
また、図7に示したように、磁化自由層4の構成材料としてFeBまたはCoBのいずれを用いた場合であっても、磁気抵抗効果素子1A(磁化自由層4)の直径を好ましくは160nm以下、より好ましくは100nm、よりいっそう好ましくは60nm以下とすることにより、比較的大きな減衰量の差分ΔS21を維持することができる。但し、磁気抵抗効果素子1A(磁化自由層4)の直径を20nmとすると、減衰量の差分ΔS21が減少した。これは、面内の面積の減少により、面内磁気異方性が弱まったことに起因するものと考えられる。また、磁気抵抗効果素子1A(磁化自由層4)の直径を160nm超とすると、十分な大きさの減衰量の差分ΔS21は得られなかった。上述の表皮効果に起因するものと考えられる。したがって、磁気抵抗効果素子1の最深部D0は、磁気抵抗効果素子1の表面(端面1S)から10nm以上80nm以下の位置にあることが好ましく、10nm以上50nm以下の位置にあることがより好ましく、10nm以上30nm以下の位置にあることがよりいっそう好ましいことが確認された。
また、本実施例においては磁化自由層の直径を以て素子サイズとしたが、実質的に電流が流れる面積が重要となることから、仮に近隣層(キャップ層やバリア層、磁化固着層)が磁化自由層よりも面積が小さい場合、素子サイズは最小の近隣層で定義すべきである。さらに本実施例では略円柱状の素子を用いたが、基本的には表面からの最深部が80nm以下となるよう磁気抵抗効果素子の設計を行うことで、同様の効果が確認されると考えられる。
<3.その他の変形例>
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明では、軟磁性層の形状は上記実施の形態等のものに限定されない。例えば上記実施の形態では、磁気抵抗効果素子1を構成する各層の平面寸法が全て同一である場合を例示して説明するようにしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば図8に示した磁気抵抗効果素子1Bのように、例えば磁化自由層4Bの平面寸法が他の層(磁化固着層2およびスペーサ層3)の平面寸法よりも小さいものでもよい。その場合、磁気抵抗効果素子1において信号電流が流れる有効領域のうち最も狭い部分が磁化自由層4Bであるので、その磁化自由層4Bの直径D4Bが20nm以上160nm以下、より好ましくは20nm以上100nm以下、よりいっそう好ましくは20nm以上60nm以下であるとよい。
また、上記実施の形態では、インピーダンス素子としてチョークコイル10を用いた例を説明したが、本発明ではチョークコイル10に替えて抵抗素子をインピーダンス素子として備えてもよい。この場合、その抵抗素子は、信号線路7Bとグラウンド8との間に接続され、その抵抗素子の抵抗成分により電流の高周波成分をカットする機能を有する。この抵抗素子は、チップ抵抗またはパターン線路による抵抗のどちらでもよい。
100…磁気抵抗効果デバイス、1,1A,1B…磁気抵抗効果素子、2…磁化固着層、3…スペーサ層、4…磁化自由層、5…上部電極、6…下部電極、7A,7B…信号線路、8…グラウンド、9A…第1のポート、9B…第2のポート、10…チョークコイル、11…直流電流入力端子、12…磁場供給部、13…直流電流源。

Claims (11)

  1. 磁化固着層、スペーサ層および磁化自由層を含む磁気抵抗効果素子と、直流電流入力端子と、第1の信号線路と、第2の信号線路とを有する閉回路と、
    前記第1の信号線路と接続され、高周波信号が入力される第1のポートと、
    前記第2の信号線路と接続され、前記高周波信号のうちの一部の高周波成分が出力され る第2のポートと
    を備え、
    前記第1のポート、前記磁気抵抗効果素子および前記第2のポートがこの順に直列接続され、
    前記磁気抵抗効果素子の最深部は、前記磁気抵抗効果素子の表面から10nm以上80nm以下の位置にある
    磁気抵抗効果デバイス。
  2. 前記磁気抵抗効果素子の最深部は、前記磁気抵抗効果素子の表面から10nm以上50nm以下の位置にある
    請求項1記載の磁気抵抗効果デバイス。
  3. 前記磁気抵抗効果素子の最深部は、前記磁気抵抗効果素子の表面から10nm以上30nm以下の位置にある
    請求項1記載の磁気抵抗効果デバイス。
  4. 磁化固着層、スペーサ層および磁化自由層を含む磁気抵抗効果素子と、直流電流入力端子と、第1の信号線路と、第2の信号線路とを有する閉回路と、
    前記第1の信号線路と接続され、高周波信号が入力される第1のポートと、
    前記第2の信号線路と接続され、前記高周波信号のうちの一部の高周波成分が出力され る第2のポートと
    を備え、
    前記第1のポート、前記磁気抵抗効果素子および前記第2のポートがこの順に直列接続され、
    前記磁気抵抗効果素子における電流が流れる有効領域のうち、最も狭い部分の直径が20nm以上160nm以下である
    磁気抵抗効果デバイス。
  5. 前記磁化自由層の最大寸法が160nm以下である
    請求項4記載の磁気抵抗効果デバイス。
  6. 前記磁気抵抗効果素子における電流が流れる有効領域のうち、最も狭い部分の直径が20nm以上100nm以下である
    請求項4記載の磁気抵抗効果デバイス。
  7. 前記磁気抵抗効果素子における電流が流れる有効領域のうち、最も狭い部分の直径が20nm以上60nm以下である
    請求項4記載の磁気抵抗効果デバイス。
  8. 前記磁化自由層は、鉄(Fe)およびコバルト(Co)を含有する
    請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の磁気抵抗効果デバイス。
  9. 前記閉回路は、信号線路と、インピーダンス素子とをさらに有する
    請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の磁気抵抗効果デバイス。
  10. 前記磁気抵抗効果素子に対して磁場を印加する磁場供給部をさらに備えた
    請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の磁気抵抗効果デバイス。
  11. 前記磁場供給部は、前記磁気抵抗効果素子に対して印加する前記磁場の強度を変化させる
    請求項10記載の磁気抵抗効果デバイス。
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