JP2018104734A - 被処理金属の防錆皮膜形成剤及び防錆皮膜付き被処理金属の製造方法。 - Google Patents
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Abstract
Description
特許第4493930号公報(特許文献2)では、三価クロム塩と有機酸、コバルトなどの金属塩を含む処理液を使用して処理する方法が記載されており、良好な耐食性が得られるとされているが、三価クロム濃度が高く、また、処理温度も高温であるため、安定して緻密な皮膜を形成することが難しく、安定した耐食性を得ることができない。また、有機酸を使用する組成物は、安定性に乏しく、処理外観や液のpHが数日〜数週間で変化するという問題や排水処理が困難になるという問題を抱えている。
特許第4529208号公報(特許文献3)では、三価クロム化合物とチタン化合物、タングステン化合物及びケイ素化合物からなる化成処理液、特許第3332374号公報(特許文献4)では、三価クロムイオン、シュウ酸、コバルト及びシリコン化合物を含有する処理液が記載されているが、処理外観が曇ったような外観となる場合や、耐食性が不十分な場合があるなど工業的に実用するにはばらつきが大きい。
以上のように、従来技術は処理外観及び耐食性の安定性の不足、コストパフォーマンス(処理条件に対する得られる性能)の低さという問題を抱えていた。
ここに、本発明者らは、特許第4090780号公報(特許文献5)において、上述のような従来技術の問題を解決できる防錆皮膜形成剤を開示した。しかし、ケイ素化合物を含有した処理液から得られた皮膜にオーバーコート皮膜を施す場合、耐食性の向上は見られるものの、オーバーコートの種類によっては密着性が不十分でオーバーコート皮膜がはく離して外観が損なわれるという問題が確認された。
すなわち、本発明は、(A)三価クロム、Mo、W、V、Nb、Ta、Ti、Zr、Ce、Co、Ni、Fe、Al、Mn及びアルカリ土類金属からなる群から選択した1種以上、(B)表面を金属アルコキシド及びシランカップリング剤からなる群から選択した1種以上で修飾した無機コロイド、(C)塩化物イオン、硫酸イオン及び硝酸イオンよりなる群から選択した1種以上を含有し、pHが1.5〜4であることを特徴とする被処理金属の防錆皮膜形成剤である。
また、前記無機コロイドがコロイダルシリカであることが好ましい。
また、更に(D)界面活性剤、有機酸、過酸化水素、尿素類、脂肪族アミン、アンモニウム塩よりなる群から選択した1種以上である安定剤を含むことができる。
また、本発明は、上記防錆皮膜形成剤を被処理金属に接触させることにより防錆皮膜を形成することを特徴とする防錆皮膜付き被処理金属の製造方法である。
また、上記防錆皮膜形成剤を被処理金属に接触させることにより防錆皮膜を形成した後、更にSi、樹脂、ワックス、固体潤滑剤からなる群のうちの1種以上を含有する液体組成物に接触させ、オーバーコートすることができる。
本発明において、被処理金属が、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、銅、ニッケル、クロム、鉄、錫及びこれらの合金とすることができる。
また、本発明は、上記被処理金属の防錆皮膜形成剤とSi、樹脂、ワックス、固体潤滑剤からなる群のうちの1種以上を含有する液体組成物との組み合わせよりなる、被処理金属の防錆皮膜形成用液体組成物の組み合わせである。
更に、本発明の防錆皮膜形成剤を用いて得られる防錆皮膜は、皮膜損傷時の耐食性低下抑制能力も付加された実用的なものが得られる。この耐食性低下抑制能力は、例えば自動車部品などにおける飛び石などによる皮膜損傷時の錆発生を抑制するものであり、工業上非常に重要な性能である。実際の生産ラインでは、ボルトなど適度の重量のものが大量に落下したり、ぶつかり合ったりし(処理中の共ズレ)、多くの傷がつく可能性がある。本発明によれば、皮膜損傷時の耐食性低下抑制能力も従来技術と比較して大幅に向上させることを可能とした。
本発明の被処理金属としては、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、銅、ニッケル、クロム、鉄、錫及びこれらの合金が挙げられる。本発明の防錆皮膜形成剤は、特に亜鉛めっき、亜鉛系合金めっき、亜鉛ダイキャスト、アルミニウム、ダイキャストを含むアルミニウム合金、マグネシウム、ダイキャストを含むマグネシウム合金に対し効果的に作用する。
本発明の防錆皮膜形成剤は、(A)三価クロム、Mo、W、V、Nb、Ta、Ti、Zr、Ce、Co、Ni、Fe、Al、Mn及びアルカリ土類金属からなる群から選択した1種以上、(B)表面を金属アルコキシド及びシランカップリング剤からなる群から選択した1種以上で修飾した無機コロイド、(C)塩化物イオン、硫酸イオン及び硝酸イオンよりなる群から選択した1種以上を含有し、pHが1.5〜4である。
表面を金属アルコキシド及びシランカップリング剤からなる群から選択した1種以上で修飾した無機コロイドは、金属アルコキシド及びシランカップリング剤を加水分解した水溶液と無機コロイド溶液を混合縮合反応させることで得られるが、より安定した縮合体を得るには1時間以上攪拌することが望ましい。
試験片(M8フランジボルト)を脱脂、酸活性などの適当な前処理を行った後、市販の薬剤(日本表面化学(株)製)を用いて亜鉛めっき(Zn)、亜鉛−鉄合金めっき(Zn/Fe)、亜鉛−ニッケル合金めっき(Zn/Ni)のいずれかを施してめっきの膜厚8〜9μmとした後、表1〜3に示す防錆皮膜形成剤に浸漬し、次いで水洗し乾燥を行い、防錆皮膜を形成した。オーバーコート処理を施す場合は、防錆皮膜形成後、表2、表3に示す液体組成物に浸漬した後、遠心乾燥機にて80℃、10分間乾燥を行った。表中、コロイダルシリカとして日産化学(株)製スノーテックス20、アルミナゾルとして日産化学(株)製アルミナゾル520、チタニアゾルとして富士チタン工業(株)製DC−Ti、ジルコニアゾルとして第一稀元素化学工業(株)製ZSL−10Lを使用した。金属アルコキシド又はシランカップリング剤による無機コロイドの修飾は、表1〜3に示す金属アルコキシド又はシランカップリング剤を加水分解した水溶液と無機コロイド溶液とを混合し、1時間攪拌することにより行った。比較例として、従来の組成及び金属アルコキシド又はシランカップリング剤を含有していない組成を使用して防錆皮膜を形成した。そして、比較例2及び比較例8において、無機コロイド表面を金属アルコキシド又はシランカップリング剤を用いて修飾する工程を経ず、防錆皮膜形成剤に単純に3−グリシドキシプロピルメチルトリメトキシランを添加したのみの組成を使用して防錆皮膜を形成した。
摩擦係数は、JIS B 1084に従う締め付け試験において測定を行った。サンプル数は10本で、平均値及び標準偏差を算出し、そのばらつきを評価した。
オーバーコート皮膜の密着性は、下記の手順で評価を行った。試験面にカッターナイフを用いて、素地に達する1mm間隔の切込みを11本入れた後、90°向きを変えて更に11本引く。カットした皮膜面にセロハンテープを強く圧着させ、テープの端を皮膜面に垂直に保ち、瞬間的に引きはがす。評価は、どの格子の目もはがれがない場合をA、皮膜がカットの線に沿って部分的、全面的にはがれている(15%未満)場合をB、15%以上はがれている場合をCとした。
実施例の結果から、(A)三価クロム、Mo、W、V、Nb、Ta、Ti、Zr、Ce、Co、Ni、Fe、Al、Mn及びアルカリ土類金属からなる群から選択した1種以上、(B)表面を金属アルコキシド及びシランカップリング剤からなる群から選択した1種以上で修飾した無機コロイド、(C)塩化物イオン、硫酸イオン及び硝酸イオンよりなる群から選択した1種以上を含有し、pHが1.5〜4である防錆皮膜形成剤を形成することにより、優れた耐食性、皮膜損傷時の耐食性、ばらつきの少ない摩擦係数及びオーバーコート皮膜との良好な密着性が得られることが確認された。一方、比較例の結果からは、上記成分(A)〜(C)のうちどれか一つが不足しても上記効果が得られないことが確認された。特に、比較例2及び8では、シランカップリング剤を単純に添加するのみで、無機コロイド表面を修飾する工程を経ていないため、比較例2については耐食性に対する効果が得られず、比較例8については耐食性及びオーバーコート皮膜との密着性に対する効果が得られなかった。
Claims (7)
- (A)三価クロム、Mo、W、V、Nb、Ta、Ti、Zr、Ce、Co、Ni、Fe、Al、Mn及びアルカリ土類金属からなる群から選択した1種以上、
(B)表面を金属アルコキシド及びシランカップリング剤からなる群から選択した1種以上で修飾した無機コロイド、
(C)塩化物イオン、硫酸イオン及び硝酸イオンよりなる群から選択した1種以上を含有し、
pHが1.5〜4であることを特徴とする被処理金属の防錆皮膜形成剤。 - 前記無機コロイドがコロイダルシリカであることを特徴とする請求項1に記載の被処理金属の防錆皮膜形成剤。
- 更に(D)界面活性剤、有機酸、過酸化水素、尿素類、脂肪族アミン、アンモニウム塩よりなる群から選択した1種以上である安定剤を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の被処理金属の防錆皮膜形成剤。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の防錆皮膜形成剤を被処理金属に接触させることにより防錆皮膜を形成することを特徴とする防錆皮膜付き被処理金属の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の防錆皮膜形成剤を被処理金属に接触させることにより防錆皮膜を形成した後、更にSi、樹脂、ワックス、固体潤滑剤からなる群のうちの1種以上を含有する液体組成物に接触させ、オーバーコートすることを特徴とする防錆皮膜付き被処理金属の製造方法。
- 前記被処理金属が、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、銅、ニッケル、クロム、鉄、錫及びこれらの合金である請求項4又は5に記載の防錆皮膜付き被処理金属の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の被処理金属の防錆皮膜形成剤とSi、樹脂、ワックス、固体潤滑剤からなる群のうちの1種以上を含有する液体組成物との組み合わせよりなる、被処理金属の防錆皮膜形成用液体組成物の組み合わせ。
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