JP2018103446A - フィルムインサート成形品及びフィルムインサート成形品の製造方法 - Google Patents

フィルムインサート成形品及びフィルムインサート成形品の製造方法 Download PDF

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麻衣子 生嶋
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靖之 大山
薫宏 松本
Shigehiro Matsumoto
薫宏 松本
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Abstract

【課題】高い表面硬度、耐久性及び耐溶剤性を有するフィルムインサート成形品の提供。
【解決手段】少なくとも、アリルエステル樹脂層、接着剤層、熱可塑性樹脂層をこの順で含む積層体からなるフィルムインサート成形品。アリルエステル樹脂層はアリルエステル樹脂組成物の硬化物であり、アリルエステル樹脂組成物が一般式(2)で示される基を末端基として有し、かつ一般式(3)で示される構造を構成単位として有するアリルエステルオリゴマーを含むものであることが好ましい。
Figure 2018103446

【選択図】図1

Description

本発明はフィルムインサート成形品及びフィルムインサート成形品の製造方法に関する。さらに詳しく言えば、優れた硬度、耐久性、耐溶剤性を有するアリルエステル樹脂フィルムを表面に有するフィルムインサート成形品及びフィルムインサート成形品の製造方法に関する。
従来、ポリカーボネート樹脂やABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂)等の熱可塑性樹脂の射出成形品は、ガラスや金属に比べ軽量で、形状の自由度の高さから、輸送機器、生活家電、電子機器等の様々な用途で使用されてきた。一般的に射出成形に使用される熱可塑性樹脂は硬度、耐溶剤性に乏しいため、射出成形後に射出成形品の表面をコーティングにより改質する方法やPETフィルム(ポリエチレンテレフタレート)やアクリル樹脂製フィルムを射出成形時に成形品の表面に付与するフィルムインサート成形が適応されてきた(特許文献1)。
また、射出成形品に意匠性を付与するために、射出成形品の表面を塗装することや、フィルムインサート成形時に加飾層付のフィルムを使用することが行われてきた。
ところが、これまでの射出成形品、フィルムインサート成形品は耐傷つき性、耐溶剤性が十分とは言い切れず、使用時に傷つきや白化等の意匠性の低下の問題があり、硬度、耐溶剤性に優れた成形品が強く望まれていた。
特開2000−167869号公報
本発明の課題は高い表面硬度、耐久性及び耐溶剤性を有するフィルムインサート成形品を提供することにある。
本発明は以下の[1]〜[10]に関する。
[1]少なくとも、アリルエステル樹脂層、接着剤層、熱可塑性樹脂層をこの順で含む積層体からなることを特徴とするフィルムインサート成形品。
[2]前記アリルエステル樹脂層がアリルエステル樹脂組成物の硬化物であり、前記アリルエステル樹脂組成物が一般式(2)
Figure 2018103446
(式中、R3はアリル基またはメタリル基を表し、A2はジカルボン酸に由来する脂環式構造または芳香環構造を有する有機残基を表し、同一分子中に存在する複数のR3及びA2は互いに同一でも異なっていても良い。)で示される基を末端基として有し、かつ一般式(3)
Figure 2018103446
(式中、A3はジカルボン酸に由来する脂環式構造または芳香環構造を有する有機残基を表し、Xは多価アルコールから誘導された有機残基を表し、同一分子中にA3及びXが複数存在する場合には複数のA3及びXは互いに同一でも異なっていても良い。Xが3価以上のアルコールから誘導された有機残基を表す場合、2個のヒドロキシル基はエステル結合により主鎖の一部を構成するが、残りの1以上のヒドロキシル基はその一部またはすべてがエステル結合によって、さらに上記一般式(2)で示される基を末端基とし、上記一般式(3)で示される構造を構成単位とする分岐構造を有していても良い。)で示される構造を構成単位として有するアリルエステルオリゴマーを含むものである前記1に記載のフィルムインサート成形品。
[3]前記アリルエステル樹脂層と前記接着剤層の間に少なくとも1層のプライマー層を有する前記1または2に記載のフィルムインサート成形品。
[4]前記プライマー層が着色剤を含有する前記3に記載のフィルムインサート成形品。
[5]前記アリルエステル樹脂層と前記プライマー層の間、あるいは前記プライマー層と前記接着剤層の間に少なくとも1層の加飾層を有する前記3または4に記載のフィルムインサート成形品。
[6]前記アリルエステル樹脂層の少なくとも一方の面に機能層を有する前記1〜5のいずれかに記載のフィルムインサート成形品。
[7]前記機能層がハードコート層、高屈折率層、導電層、活性エネルギー線遮蔽層、赤外線遮蔽層、磁性層、強磁性層、誘電体層、強誘電体層、エレクトロクロミック層、エレクトロルミネッセンス層、絶縁層、光吸収層、光選択吸収層、反射層、反射防止層、防眩層、撥水層、親水層、抗菌層、触媒層及び光触媒層からなる群から選択されるいずれかである前記1〜6のいずれかに記載のフィルムインサート成形品。
[8]アリルエステル樹脂フィルムの一方の面に少なくとも1層の接着剤層を形成することを含むフィルムインサート成形用フィルムを製造する第1工程、及び得られたフィルムインサート成形用フィルムを、一対の成形用金型のキャビティ内に挿入し、前記接着剤層側から、加熱加圧により溶融した熱可塑性樹脂を充填する第2工程を含むことを特徴とするフィルムインサート成形品の製造方法。
[9]フィルムインサート成形用フィルムを製造する第1工程が、アリルエステル樹脂フィルムの少なくとも一方の面に少なくとも1層のプライマー層を形成し、次いでプライマー層の上面に少なくとも1層の接着剤層を形成することを含む、前記8に記載のフィルムインサート成形品の製造方法。
[10]アリルエステル樹脂フィルムの少なくとも一方の面に機能層を設ける工程を含む前記8または9に記載のフィルムインサート成形品の製造方法。
本発明のフィルムインサート成形品は高い表面硬度、耐久性及び耐溶剤性を有する。また、表面層を構成するアリルエステル樹脂層は優れた透明性を有するため、下層部の意匠性を損なわず、耐傷つき性を付与することもできる。
本発明の一実施態様のフィルムインサート成形品の断面図。 本発明の他の実施態様のフィルムインサート成形品の断面図。 本発明の他の実施態様のフィルムインサート成形品の断面図。 本発明の一実施態様で使用するフィルムインサート成形用フィルムの断面図。 本発明の他の一実施態様で使用するフィルムインサート成形用フィルムの断面図。 本発明の他の一実施態様で使用するフィルムインサート成形用フィルムの断面図。 本発明の他の一実施態様で使用するフィルムインサート成形用フィルムの断面図。 本発明の他の一実施態様で使用するフィルムインサート成形用フィルムの断面図。 本発明の他の一実施態様で使用するフィルムインサート成形用フィルムの断面図。 本発明の他の一実施態様で使用するフィルムインサート成形用フィルムの断面図。 本発明の他の一実施態様で使用するフィルムインサート成形用フィルムの断面図。 本発明の他の一実施態様で使用するフィルムインサート成形用フィルムの断面図。 本発明の一実施態様で使用するフィルムインサート成形用フィルムに加飾層を部分的に設ける場合の模式図。 本発明の一実施態様で使用するフィルムインサート成形用フィルムの製造フロー図。 フィルムインサート成形法の概念模式図。
(I)フィルムインサート成形品
本発明の一実施態様におけるフィルムインサート成形品は、少なくとも、アリルエステル樹脂層1、接着剤層2、熱可塑性樹脂層3をこの順で含む積層体からなる(図1)。アリルエステル樹脂層1と接着剤層2との間にはプライマー層4が設けられていてもよい(図2)。また、プライマー層4と接着剤層2との間に加飾層5が設けられていてもよい(図3)。加飾層はアリルエステル樹脂層と接着剤層との間に設けることもできる(図示せず)。
[アリルエステル樹脂層]
アリルエステル樹脂層はアリルエステル樹脂からなる層であり、前記アリルエステル樹脂とはアリルエステル樹脂組成物の硬化物である。一般的に、「アリルエステル樹脂」は硬化する前のプレポリマー(オリゴマーや添加剤、モノマーを含む。)を指す場合とその硬化物を示す場合の二通りの場合があるが、本明細書中では「アリルエステル樹脂」は硬化物を示し、「アリルエステル樹脂組成物」は硬化前のプレポリマーを示すものとする。
アリルエステル樹脂層の厚さは0.1〜1mmであり、0.1〜0.8mmの範囲が好ましく、0.1〜0.5mmの範囲がより好ましい。アリルエステル樹脂層の厚さが0.1mm以上であると硬度の高いフィルムインサート成形品が得られ、また加飾層を設けた際の見た目の質感も向上する。アリルエステル樹脂層の厚さが1mm以下であると製品コストを抑えることができる。アリルエステル樹脂層は、フィルム状のアリルエステル樹脂(アリルエステル樹脂フィルム)を後述のインサート成形により、フィルムインサート成形品である積層体に組み込まれる。
一般的に、フィルムは膜厚が250μm未満のものを指し、シートは厚みが250μm以上のものを指すが、両者の区別は厳密なものではない。本明細書では、単に「フィルム」と表現してもシート領域の厚さのものも含まれる。
[アリルエステル樹脂組成物]
アリルエステル樹脂組成物はアリル基またはメタリル基(以降、両者を併せて(メタ)アリル基と言う場合がある。)とエステル構造を有する化合物を主な硬化成分として含有する組成物である。
(メタ)アリル基とエステル構造を有する化合物は、
(1)(メタ)アリル基及び水酸基を含む化合物(以下、(メタ)アリルアルコールと総称する。)とカルボキシル基を含む化合物とのエステル化反応、
(2)(メタ)アリル基及びカルボキシル基を含む化合物と水酸基を含む化合物とのエステル化反応、または
(3)(メタ)アリルアルコールとジカルボン酸からなるエステル化合物と多価アルコールとのエステル交換反応
により得ることができる。カルボキシル基を含む化合物がジカルボン酸とジオールとのオリゴエステルである場合には、末端のみ(メタ)アリルアルコールとのエステルとすることもできる。
上記(3)の(メタ)アリルアルコールとジカルボン酸からなるエステル化合物の具体例としては、一般式(1)
Figure 2018103446
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して水素原子またはメチル基を表し、A1はジカルボン酸に由来する脂環式構造または芳香環構造を有する有機残基を表す。)
で示される化合物が挙げられる。この化合物は後述の反応性希釈剤(反応性モノマー)としてアリルエステル樹脂組成物に含まれてもよい。一般式(1)中のA1は後述の一般式(2)及び一般式(3)におけるA2及びA3と同様のものが好ましい。
アリルエステル樹脂組成物の主な硬化成分である(メタ)アリル基とエステル構造を有する化合物としては、アリル基及び/またはメタリル基を末端基として有し、多価アルコールとジカルボン酸とから形成されたエステル構造を有するアリルエステル化合物(以下、「アリルエステルオリゴマー」と記載することがある。)であることが好ましい。
アリルエステル樹脂組成物は、後述する硬化剤、反応性モノマー、添加剤、その他ラジカル反応性の樹脂成分等を含有することができる。
[アリルエステルオリゴマー]
アリルエステルオリゴマーとしては、下記一般式(2)で示される基を末端基として有し、かつ下記一般式(3)で示される構造を構成単位として有する化合物が好ましい。
Figure 2018103446
式中、R3はアリル基またはメタリル基を表し、A2はジカルボン酸に由来する脂環式構造または芳香環構造を有する有機残基を表し、同一分子中に存在する複数のR3及びA2は互いに同一でも異なっていても良い。
Figure 2018103446
式中、A3はジカルボン酸に由来する脂環式構造または芳香環構造を有する有機残基を表し、Xは多価アルコールから誘導された有機残基を表し、同一分子中にA3及びXが複数存在する場合には複数のA3及びXは互いに同一でも異なっていても良い。Xが3価以上のアルコールから誘導された有機残基を表す場合、2個のヒドロキシル基はエステル結合により主鎖の一部を構成するが、残りの1以上のヒドロキシル基はその一部またはすべてがエステル結合によって、さらに上記一般式(2)で示される基を末端基とし、上記一般式(3)で示される構造を構成単位とする分岐構造を有していても良い。
アリルエステルオリゴマーにおいて、前記一般式(2)で示される末端基の数は少なくとも2個であり、前記一般式(3)のXが分岐構造を有する場合には3個以上となる。そのため、各末端基のR3も同一分子中に複数個存在することになるが、これらの各R3は必ずしも同じ種類でなくてもよく、ある末端はアリル基、他の末端はメタリル基という構造でもよい。また、全てのR3がアリル基またはメタリル基である必要はなく、硬化性を損なわない範囲で、その一部はメチル基またはエチル基等の非重合性基でもよい。
2で示される構造についても同様に、各末端基で異なっていてもよい。例えば、ある末端のA2はベンゼン環、他方はシクロヘキサン環という構造でもよい。
一般式(2)におけるA2はジカルボン酸に由来する脂環式構造、または芳香環構造を有する有機残基である。ジカルボン酸に由来する部分はA2に隣接するカルボニル構造で示されている。したがって、A2の部分はベンゼン骨格やシクロヘキサン骨格を示す。
2構造を誘導するジカルボン酸としては特に制限はないが、原料の入手しやすさの点からは、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニル−m,m’−ジカルボン酸、ジフェニル−p,p’−ジカルボン酸、ベンゾフェノン−4,4’−ジカルボン酸、p−フェニレンジ酢酸、p−カルボキシフェニル酢酸、メチルテレフタル酸、テトラクロルフタル酸が好ましく、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が特に好ましい。
また、本発明の効果を損なわない範囲であれば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、無水エンディック酸、無水クロレンド酸等の(反応時において)非環状のジカルボン酸を使用してもよい。
一般式(3)で示される構造単位は、アリルエステルオリゴマー中に少なくとも1つは必要であるが、この構造が繰り返されることによりアリルエステルオリゴマー全体の分子量がある程度大きくなった方が適切な粘度が得られ作業性が向上し、硬化物の靭性も向上するので好ましい。しかし、分子量が大きくなりすぎると架橋点間分子量が大きくなりすぎTgが低下し、耐熱性が低下するおそれもある。用途に応じて適切な分子量に調整することが好ましい。
アリルエステルオリゴマーの重量平均分子量は500〜200,000が好ましく、1,000〜100,000がさらに好ましい。
また、一般式(3)におけるA3はジカルボン酸に由来する脂環式構造または芳香環構造を有する有機残基であり、その定義及び好ましい化合物の例は一般式(2)におけるA2と同様である。一般式(3)中のXは、多価アルコールから誘導された有機残基を表す。
多価アルコールは2個以上の水酸基を有する化合物であり、Xは、多価アルコールの水酸基以外の骨格部分を示す。
また、多価アルコール中の水酸基の数は少なくとも2個あればよく、原料となる多価アルコールが3価以上、すなわち、水酸基が3個以上のときは、未反応の水酸基が残っていてもよい。
多価アルコールの具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、イソシアヌル酸のエチレンオキシド3モル付加体、ペンタエリスリトール、トリシクロデカンジメタノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールのエチレンオキシド3モル付加体、D−ソルビトール及び水素化ビスフェノールA等が挙げられる。これらの化合物の製造方法としては特に制限はないが、例えば特公平6−74239号公報に挙げられる方法で製造することができる。
アリルエステルオリゴマー中の一般式(3)で示される構造単位は、同一の構造単位が繰り返されていてもよいが、異なる構造単位が含まれていてもよい。すなわち、アリルエステルオリゴマーは共重合タイプでもよい。この場合、1つのアリルエステルオリゴマーには数種類のXが存在することになる。例えば、Xの1つがプロピレングリコール由来の残基、もう1つのXがトリメチロールプロパン由来の残基である構造でもよい。この場合、アリルエステルオリゴマーはトリメチロールプロパン残基の部分で枝分かれすることになる。A3も同様にいくつかの種類が存在してもよい。
以下にR3がアリル基、A2及びA3がイソフタル酸由来の残基、Xがプロピレングリコールとトリメチロールプロパンの場合の構造式の一例を示す。ただしこの他にも繰り返し単位の長さが異なる等、多種類の分子が存在する。
Figure 2018103446
[硬化剤]
アリルエステル樹脂組成物は硬化剤を含むことができる。硬化剤としては特に制限はなく、一般に重合性樹脂の硬化剤として知られているものを用いることができる。中でも、アリル基の重合開始の点からラジカル重合開始剤が望ましい。ラジカル重合開始剤としては、有機過酸化物、光重合開始剤、アゾ化合物等が挙げられる。
有機過酸化物としては、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ケトンパーオキサイド、パーオキシエステル等の公知のものが使用可能であり、その具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルクミルパーオキサイド、p−メチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート及び2,5−ジメチル−2,5−ジブチルパーオキシヘキシン−3等が挙げられる。
光重合開始剤としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン及び2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
アゾ化合物としては、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)などが挙げられる。
ラジカル重合開始剤は1種単独で、または2種以上を混合または組み合わせて用いてもよい。
硬化剤の配合量には特に制限はないが、アリルエステル樹脂組成物中の全ラジカル重合性成分100質量部に対し、0.1〜10質量部が好ましく、0.5〜5質量部がより好ましい。硬化剤の配合量が0.1質量部より少ないと、配合の効果が得られない場合があり、また配合量が10質量部を超えると、最終的な硬化物がもろくなり、機械強度が低下する場合がある。
[反応性モノマー]
アリルエステル樹脂組成物は反応性モノマー(反応性希釈剤)を含むことができる。反応性モノマーは、硬化反応速度のコントロール、粘度調整(作業性の改善)、架橋密度の向上、機能付加等を目的として添加される。
反応性モノマーとしては特に制限はなく、種々のものが使用できるが、アリルエステルオリゴマーと反応させるためにはビニル基、アリル基等のラジカル重合性の炭素−炭素二重結合を有するモノマーが好ましい。例えば、不飽和脂肪酸エステル、芳香族ビニル化合物、飽和脂肪酸または芳香族カルボン酸のビニルエステル及びその誘導体、架橋性多官能モノマー等が挙げられる。中でも、架橋性多官能性モノマーを使用すれば、硬化物の架橋密度や硬度を制御することができる。反応性モノマーの好ましい具体例を以下に示す。
不飽和脂肪酸エステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート及びメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸脂肪族エステル;
フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、1−ナフチル(メタ)アクリレート、フルオロフェニル(メタ)アクリレート、クロロフェニル(メタ)アクリレート、シアノフェニル(メタ)アクリレート、メトキシフェニル(メタ)アクリレート及びビフェニル(メタ)アクリレート等の芳香族系(メタ)アクリル酸エステル;
フルオロメチル(メタ)アクリレート及びクロロメチル(メタ)アクリレート等のハロアルキル(メタ)アクリレート;
さらに、グリシジル(メタ)アクリレート、アルキルアミノ(メタ)アクリレート、及びα−シアノアクリル酸エステル等が挙げられる。
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、スチレンスルホン酸、4−ヒドロキシスチレン及びビニルトルエン等が挙げられる。
飽和脂肪酸または芳香族カルボン酸のビニルエステル及びその誘導体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル及び安息香酸ビニル等が挙げられる。
架橋性多官能モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、オリゴエステルジ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン及び2,2−ビス(4−ω−(メタ)アクリロイロキシピリエトキシ)フェニル)プロパン等のジ(メタ)アクリレート;
フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジメタリル、テレフタル酸ジアリル、トリメリット酸トリアリル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジアリル、1,5−ナフタレンジカルボン酸ジアリル、1,4−キシレンジカルボン酸ジアリル及び4,4’−ジフェニルジカルボン酸ジアリル等の芳香族カルボン酸ジアリル類;
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアリル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジアリル、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジアリル及びジビニルベンゼン等の二官能の架橋性モノマー;
トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アリルイソシアヌレート、トリ(メタ)アリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート及びジアリルクロレンデート等の三官能の架橋性モノマー;
さらにペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート等の四官能以上の架橋性基を有するモノマー等が挙げられる。
上記の反応性モノマーは、1種単独で、または2種以上を混合または組み合わせて用いることができる。
これらの反応性モノマーの樹脂成分の配合量は特に制限はないが、(メタ)アリル基とエステル構造を有する化合物100質量部に対して、1〜1000質量部が好ましく、2〜500質量部がより好ましく、5〜100質量部が特に好ましい。反応性モノマーの配合量が1質量部未満であると、配合の効果が得られ難い。また、反応性モノマーとして単官能モノマーを使用した場合には、配合量が多すぎると、架橋密度が低くなり硬度が不十分になることがある。また、使用量が1000質量部を超えるとアリルエステル樹脂自体の優れた透明性や機械強度が低下する場合がある。
[添加剤]
アリルエステル樹脂組成物には、硬度、強度、成形性、耐久性、耐水性、色相を改良する目的で、酸化防止剤、滑剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤、架橋助剤、無機充填材、有機充填材等の添加剤を添加することができる。
酸化防止剤としては、特に制限はなく、一般に用いられているものを用いることができる。中でも、ラジカル連鎖禁止剤であるフェノール系酸化防止剤やアミン系酸化防止剤が好ましく、フェノール系酸化防止剤が特に好ましい。フェノール系酸化防止剤としては2,6−t−ブチル−p−クレゾール、2,6−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)及び1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン等が挙げられる。
酸化防止剤の配合量としては、通常はアリルエステル樹脂組成物中の全ラジカル重合性成分100質量部に対して0.01〜5質量部が好ましい。
滑剤としては、特に制限はなく、一般に用いられているものを用いることができる。中でも、金属石鹸系滑剤、脂肪酸エステル系滑剤、脂肪族炭化水素系滑剤等が好ましく、金属石鹸系滑剤が特に好ましい。金属石鹸系滑剤としては、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸アルミニウム等が挙げられる。これらは複合体として用いることもできる。
滑剤の配合量としては、通常はアリルエステル樹脂組成物中の全ラジカル重合性成分100質量部に対して0.1〜5質量部が好ましい。
紫外線吸収剤としては、特に制限はなく、一般に用いられているものを用いることができる。中でも、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤が好ましく、特に、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましい。ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール及び2−(2−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
紫外線吸収剤の配合量としては、通常はアリルエステル樹脂組成物中の全ラジカル重合性成分100質量部に対して0.01〜1質量部が好ましい。
着色剤としては、アントラキノン系、アゾ系、カルボニウム系、キノリン系、キノンイミン系、インジゴイド系、フタロシアニン系等の有機顔料、アゾイック染料、硫化染料等の有機染料、ウルトラマリン、チタンイエロー、黄色酸化鉄、亜鉛黄、クロムオレンジ、モリブデンレッド、コバルト紫、コバルトブルー、コバルトグリーン、酸化クロム、酸化チタン、硫化亜鉛、カーボンブラック等の無機顔料等が挙げられる。その配合量は特に限定されない。
難燃剤としては、臭素化エポキシ化合物、酸変性臭素化エポキシ化合物、アクリロイル基を有する臭素化エポキシ化合物、アクリロイル基を有する酸変性臭素化エポキシ化合物等のような臭素含有化合物、赤リン、酸化スズ、アンチモン系化合物、水酸化ジルコニウム、メタホウ酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機系難燃剤、リン酸アンモニウム化合物、ホスフェート化合物、芳香族縮合リン酸エステル、含ハロゲン縮合リン酸エステル、含窒素リン化合物、ホスファゼン化合物等のリン系化合物等が挙げられる。
難燃剤の配合量としては、他の配合物の種類、量等により変わるが、一般的には、アリルエステル樹脂組成物中の全ラジカル重合性成分100質量部に対して10〜50質量部が好ましい。難燃剤が10質量部未満では十分な難燃効果が期待できず、50質量部を超えると透明性が低下する場合があり好ましくない。
架橋助剤とは、熱重合開始剤による部分架橋処理に際し架橋助剤として働く化合物であり、具体的にはジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレートのような多官能性ビニルモノマーが例示される。
架橋助剤の配合量は、他の配合物の種類、量により変わるが、一般的には、アリルエステル樹脂組成物中の全ラジカル重合性成分100質量部に対して、1〜30質量部が好ましい、架橋助剤が1質量部未満では配合による十分な効果が期待できず、30質量部を超えるとアリルエステル樹脂の柔軟性が低下する場合があり好ましくない。
無機充填材としては、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化ケイ素粉、微粉状酸化ケイ素、結晶性シリカ、無定形シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、雲母粉、ガラス球、ガラス繊維、炭素繊維等の公知慣用の無機充填材を例示できるが、これらに限定されるものではない。
有機充填材の具体例としては、アクリル樹脂、メラミン樹脂、スチレン樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、フッ素樹脂等の公知慣用の有機充填材を例示できるが、これらに限定されるものではない。
これらの無機充填材や有機充填材は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができ、本発明の主旨を損ねない範囲、すなわち本発明のアリルエステル樹脂組成物中の全ラジカル重合性成分100質量部に対して1〜50質量部で添加することができる。
さらに、アリルエステル樹脂組成物には、必要に応じて、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジン等の公知慣用の重合禁止剤、シリカ、アスベスト、オルベン、ベントン、モンモリロナイト等の公知慣用の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、アクリル系、高分子系等の消泡剤及び/またはレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系、シランカップリング剤等の密着性付与剤のような公知慣用の添加剤類を、本発明の主旨を損ねない範囲で添加することができる。
これらの添加剤は上述した具体例に制限されるものではなく、本発明の目的、または効果を阻害しない範囲であらゆるものを添加することができる。
[アリルエステル樹脂フィルム]
アリルエステル樹脂フィルムはフィルム化した前記アリルエステル樹脂組成物の硬化物であり、インサート成形品の製造に用いる。インサート成形品ではアリルエステル樹脂層となる。
アリルエステル樹脂フィルムの厚さは、0.1〜1mmであり、0.1〜0.8mmの範囲が好ましく、0.1〜0.5mmの範囲がより好ましい。0.1mm以上であると硬度の高いフィルムインサート成形品が得られ、また加飾層を設けた際の見た目の質感も向上する。1mm以下であると製品コストを抑えることができる。
アリルエステル樹脂フィルムはアリルエステル樹脂組成物を硬化することにより製造することができる。硬化方法は、一定の表面硬度(鉛筆硬度4H以上)が得られれば制限されない。一定以上の表面硬度を得るには、アリルエステル樹脂組成物をフィルム形状に成形した後(例えば塗工)、光硬化及び熱硬化手法、もしくは熱硬化手法のみをとるのが好ましい。
アリルエステル樹脂組成物の硬化条件は特に制限はないが、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムやPEN(ポリエチレンナフタレート)フィルム等の透明プラスチックフィルム、金属シート、もしくはガラス板上にアリルエステル樹脂組成物を塗工し流延させた後、光硬化及び熱硬化するか、もしくは熱硬化することが好ましい。
光硬化としては、紫外線照射法が使用できる。紫外線照射法は、例えば、紫外線ランプにより発生させた紫外線をアリルエステル樹脂組成物に照射させる。紫外線ランプには、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、パルス型キセノンランプ、キセノン/水銀混合ランプ、低圧殺菌ランプ、無電極ランプ、LEDランプ等があり、いずれも使用することができる。これらの紫外線ランプの中でも、メタルハライドランプもしくは高圧水銀ランプが好ましい。照射条件はそれぞれのランプ条件によって異なるが、照射露光量が20〜5000mJ/cm2程度が好ましい。また、紫外線ランプには楕円型、放物線型、拡散型等の反射板を取り付け、冷却対策として熱カットフィルター等を装着するのが好ましい。また、硬化促進のために、予め30〜80℃に加温し、これに紫外線を照射してもよい。
熱硬化における加熱方法は特に限定されないが、熱風オーブン、遠赤外線オーブン等の均一性に優れた加熱方法がよい。加熱温度は約100〜200℃、好ましくは120〜180℃である。加熱時間は、加熱方法により異なり、熱風オーブンであれば0.5〜5時間、遠赤外線オーブンであれば0.5〜60分間が好ましい。
光重合開始剤を用いた紫外線硬化や、有機過酸化物やアゾ化合物を用いた熱硬化は、ラジカル反応であるため酸素による反応阻害を受けやすい。硬化反応時の酸素による反応阻害を防止するため、アリルエステル樹脂組成物は、透明プラスチックフィルム、金属シート、もしくはガラス板上へ塗工、流延後、光硬化を実施する前に、アリルエステル樹脂組成物上へ透明カバーフィルムを施し、流延されたアリルエステル樹脂組成物表面の酸素濃度を1%以下にすることが好ましい。透明カバーフィルムは、表面に空孔がなく、酸素透過率の小さいもので、かつ紫外線硬化や熱硬化時に発生する熱に耐えられるものを使用する。例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PC(ポリカーボネート)、PP(ポリプロピレン)、アセテート樹脂、アクリル樹脂、フッ化ビニル、ポリアミド、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、シクロオレフィンポリマー(ノルボルネン樹脂)等のフィルムであり、これらを単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用できる。ただし、硬化後の硬化物との剥離が可能でなければならないため、これらの透明カバーフィルムの表面にシリコーン樹脂塗布、フッ素樹脂塗布等の易剥離処理が施されていてもよい。
本発明の一実施態様で使用するアリルエステル樹脂組成物は液状であることから、公知の塗布装置を用いて所定の形状や形態となるように塗布、塗工等を行うことができる。塗布方式としては、グラビアコート、ロールコート、リバースコート、ナイフコート、ダイコート、リップコート、ドクターコート、エクストルージョンコート、スライドコート、ワイヤーバーコート、カーテンコート、スピンコート等が挙げられる。塗布、塗工、成形時のアリルエステル樹脂組成物の好ましい粘度範囲としては常温で100〜100,000mPa・sの範囲である。
[アリルエステル樹脂の構造]
アリルエステル樹脂は前述のようにアリルエステル樹脂組成物の硬化物である。アリルエステル樹脂組成物の主要成分であるアリルエステルオリゴマーは、式(4)で示されるアリルエステルオリゴマーのように複数の(メタ)アリル基を有する。硬化反応においてはこれらの(メタ)アリル基が付加重合を行うこととなる。アリルエステルオリゴマーには1分子中に(メタ)アリル基が複数存在するため、単純に線形の重合体とはならず、枝分かれ、分子間架橋等きわめて複雑な分子構造を有する架橋重合体(硬化物)が形成される。さらに反応性モノマーやその他の架橋剤(架橋性多官能モノマー等)も併せて硬化させると、反応性モノマー重合体による橋架け構造や架橋剤による橋架け点等も加わり、その硬化物の構造はさらに複雑となり、化学式や構造式で表記することは実質的に不可能であり、非実際的である。
[機能層]
アリルエステル樹脂層の少なくとも一方の面に機能層を有していてもよい。機能層はアリルエステル樹脂層の片面にあってもよいし、両面にあってもよい。機能層としては、ハードコート層、高屈折率層、導電層、活性エネルギー線遮蔽層、赤外線遮蔽層、磁性層、強磁性層、誘電体層、強誘電体層、エレクトロクロミック層、エレクトロルミネッセンス層、絶縁層、光吸収層、光選択吸収層、反射層、反射防止層、防眩層、撥水層、親水層、抗菌層、触媒層、光触媒層等が挙げられ、目的用途に適用される機能層であれば、特に制限されるものではない。
機能層は、公知の装置を用いて所定の形状や形態となるように塗布、塗工、蒸着、転写等を行うことにより形成することができる。
[接着剤層]
接着剤層に使用される接着剤は、アリルエステル樹脂と熱可塑性樹脂を接着させるためのものであり、ウレタン系、アクリル系、ポリエステル系、ポリアミド系、エチレン酢酸ビニル共重合体系等の各種バインダーの他、エポキシ樹脂系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、ウレタン系接着剤、アクリル変成シリコーン樹脂系接着剤、酢酸ビニル樹脂系接着剤、クロロプレンゴム系溶剤型接着剤、合成ゴム系ラテックス型接着剤、エマルジョン型接着剤、ホットメルト型接着剤等のような各種接着剤を用いることができる。
接着剤層の厚みとしては1〜100μmが好ましく、さらに好ましくは5〜50μmである。1μmより薄いと十分な接着強度が得られず、100μmを超えると製膜時に時間を要する、溶剤の残存等の問題を生ずる。
接着剤層は、予めアリルエステル樹脂フィルムの片面に形成して、熱可塑性樹脂のインサート成形を行うことが好ましい。
接着剤層は、液状の接着剤を公知の塗布装置を用いてアリルエステル樹脂フィルム表面に塗布、塗工等を行うことで形成することができる。塗布方式としては、グラビアコート、ロールコート、リバースコート、ナイフコート、ダイコート、リップコート、ドクターコート、エクストルージョンコート、スライドコート、ワイヤーバーコート、カーテンコート、スピンコート、スクリーンコート等が挙げられる。液状の接着剤が溶媒を含む場合は塗工後に溶媒を乾燥させる。
接着剤層は2層以上設けてもよい。
[熱可塑性樹脂層]
熱可塑性樹脂層を構成する樹脂には、射出成形が可能な公知の熱可塑性樹脂を用いることができる。具体的には、ポリカーボネート系樹脂、ABS系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂を使用することができる。また、ポリカーボネート/ABS系ポリマーアロイ、PC/AS系ポリマーアロイ、PBT/ABS系ポリマーアロイ等のポリマーアロイを使用することもできる。
熱可塑性樹脂層の厚みとしては0.3mm以上が好ましく、さらに好ましくは0.5mm以上である。0.3mm以上であれば、成形品の強度が十分に保たれる。また成形不良による生産性の低下の影響も小さくすることができる。厚みの上限は特にない。所望の成形品の形状に合わせて適切に設定すればよい。
熱可塑性樹脂には、硬度、強度、成形性、耐久性、耐水性、色相等を改良する目的で無機充填材、有機充填材、酸化防止剤、滑剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤等を添加することができる。
無機充填剤の具体例としては酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、シリカ、炭酸カルシウム、酸化鉄、アルミナ、チタン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、亜硫酸カルシウム、珪酸マグネシウム(タルク)、珪酸アルミニウム(マイカ)、珪酸カルシウム(ウォラストナイト)、クレー、ガラスビーズ、ガラスパウダー、ガラスフレーク、ガラス繊維、カーボン繊維、シリカアルミナ繊維、ジルコニア繊維、ホウ素繊維、窒化ホウ素繊維、窒化珪素繊維、チタン酸カリウム繊維、金属繊維等の無機繊維等が挙げられる。充填剤の形状としては球状、立方形状、粒状、針状、板状、繊維状が挙げられるが、板状、針状、繊維状が好ましい。
有機充填剤の具体例としてはアラミド繊維、生分解性繊維、セルロース繊維、フッ素樹脂繊維、ポリエステル繊維等が挙げられる。充填剤の形状としては球状、立方形状、粒状、針状、板状、繊維状が挙げられるが繊維状が好ましい。
酸化防止剤、滑剤、紫外線吸収剤、着色剤及び難燃剤としては、アリルエステル樹脂組成物の説明で示したものと同様のものを使用することができる。ただしその添加量は熱可塑性樹脂の特性に合わせて変えることができる。
[プライマー層]
本発明の一実施態様におけるフィルムインサート成形品は、アリルエステル樹脂層と接着剤層との密着性を向上させるために、両層間に少なくとも1層のプライマー層を設けることができる(図2)。
プライマー層に含まれるバインダー樹脂としては、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等が挙げられる。
光硬化性樹脂の具体例としては、ポリウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレートが挙げられる。これら光硬化性樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
熱硬化性樹脂の具体例としては、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。これら熱硬化性樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
熱可塑性樹脂の具体例としては、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリイミド樹脂等の合成樹脂、アセチルセルロース等のセルロース誘導体等が挙げられる。これら熱可塑性樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
プライマー層の厚みは1〜100μmが好ましく、さらに好ましくは5〜50μmである。厚みが1μm以上であれば、十分な接着強度が得られる。厚みが100μm以下であれば、製膜時の時間が短縮され、溶剤の残存等も少なくすることができる。
プライマー層は、装飾機能を付与するために着色剤を含有することができる。着色剤を含有する場合、プライマー層は後述の加飾層の機能を併せ持つことができる。
通常、プライマー層はフィルムインサート成形品の全面に設けられるため、着色剤を含有するプライマー層により部分的に装飾を施したいときは、プライマー層を形成するための着色剤を複数種用意し印刷技術により塗り分けて行うことができる。また、プライマー層とは別に、部分的な装飾を施すための加飾層を設けることもできる(例えば図13)。
着色剤としては、例えば、顔料、染料、金属粉、蛍光顔料、蓄光顔料等が挙げられる。
顔料は特に制限されるものではないがアントラキノン系、アゾ系、カルボニウム系、キノリン系、キノンイミン系、インジゴイド系、フタロシアニン系等の有機顔料、シリカ、ウルトラマリン、チタンイエロー、黄色酸化鉄、亜鉛黄、クロムオレンジ、モリブデンレッド、コバルト紫、コバルトブルー、コバルトグリーン、酸化クロム、酸化チタン、硫化亜鉛、カーボンブラック、炭酸カルシウム、タルク等の無機顔料、アルミニウム、硫化亜鉛(蛍光顔料)等の機能性顔料が挙げられる。
プライマー層は先にアリルエステル樹脂フィルムの片面に形成し、その上に接着剤層を形成することが好ましい。その後、熱可塑性樹脂のインサート成形を行う。
[加飾層]
本発明の一実施態様におけるフィルムインサート成形品は、上記プライマー層に加えて、着色、絵柄、光沢、金属調等の装飾を施すために加飾層を有することができる。加飾層は、アリルエステル樹脂層とプライマー層との間、またはプライマー層と接着剤層との間に設けることができ、プライマー層と接着剤層との間に設けることが好ましい。
加飾層5は、アリルエステル樹脂層1またはプライマー層4の全面に設けることができ、また図13に示すように一部に形成してもよい。例えば、インサート成形品の周辺部のみに額縁状の着色部を形成する態様であってもよい。
加飾層は、前記プライマー層と同様の材料が使用できる。装飾のための着色剤等についても同様の材料が使用できる。
加飾層の厚みは1〜100μmが好ましく、さらに好ましくは5〜50μmである。1μm以上であれば十分な接着強度が得られる。100μm以下であれば、製膜時の時間が短縮され、溶剤の残存等も少なくなくすることができる。
加飾層は先にアリルエステル樹脂フィルムの片面に形成し、その上にプライマー層及び接着剤層を形成するか、アリスエステル樹脂フィルムの上に形成されたプライマー層の上に形成し、次いで接着剤層を形成することが好ましい。その後、熱可塑性樹脂のインサート成形を行う。
(II)フィルムインサート成形品の製造方法
本発明の一実施態様におけるフィルムインサート成形品は、アリルエステル樹脂フィルムの一方の面に少なくとも1層の接着剤層を形成することを含むフィルムインサート成形用フィルムを製造する第1工程、及び得られたフィルムインサート成形用フィルムを、接着剤層が内側となるようにして一対の成形用金型のキャビティ内に挿入し、加熱加圧により溶融した熱可塑性樹脂を充填する第2工程を含む。
第1工程:フィルムインサート成形用フィルムの製造
フィルムインサート成形用フィルム10はアリルエステル樹脂フィルム1aの一方の面に少なくとも1層の接着剤層2を製膜することで得られる(図4)。接着剤層の製膜方法は特に制限はないが、コーティング法、転写法等の公知の方法を用いることができる。
コーティング法としては、例えば、接着剤成分を溶剤に溶解した接着剤溶液をフィルムの表面に塗布し、溶剤成分を乾燥させる溶液コーティング法や、溶融した接着剤をフィルム表面に押出しするエクストルージョンコーティング法等が挙げられる。コーティング法の中でも特にグラビア方式やスクリーン方式が好ましい。
接着剤を製膜する際のフィルムインサート成形用フィルムの形状に特に制限はなく、ロール状、シート状、その他の形状のものが使用できる。
プライマー層を設ける場合は、アリルエステル樹脂フィルム1aの一方の面に、接着剤層2を製膜する前に、プライマー層4を製膜する(図5)。プライマー層の製膜方法としては溶剤にバインダー樹脂や任意成分としての着色剤等のプライマー層を形成するための成分が溶解、分散された組成物をグラビア方式、スクリーン方式、グラビアオフセット方式等により塗布し、溶剤を乾燥することにより行う。中でもグラビア方式、スクリーン方式が好ましい。
プライマー層の製膜はアリルエステル樹脂フィルムの全面に行うことが好ましい。
プライマー層が光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂を含む場合、加熱や活性エネルギー線の照射により、硬化させ、膜強度を高めることができる。
加飾層5を設ける場合は、プライマー層4の上面に、接着剤層2を製膜する前に、加飾層5を製膜する(図6)。
加飾層の製膜方法としては、溶剤にバインダー樹脂、顔料等の加飾層を形成するための成分が溶解、分散されたインキ、塗料をグラビア方式、スクリーン方式、グラビアオフセット方式等により塗布し、溶剤を乾燥することにより行う。中でもグラビア方式、スクリーン方式が好ましい。
加飾層5の製膜はプライマー層4の全面に行ってもよいし、目的とする意匠性を得るために部分的に製膜してもよい(図13)。また、2層以上製膜してもよい。
加飾層が光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂を含む場合、目的とする絵柄に加飾層を製膜した後、加熱や活性エネルギー線の照射により、硬化させ、膜強度を高めることができる。
また、図示していないが、加飾層5はアリルエステル樹脂フィルム1aの一方の面に、プライマー層4を製膜する前に製膜することもできる。
機能層6を設ける場合、アリルエステル樹脂フィルム1aの一方の面に機能層6を製膜し、その上に接着剤層2を製膜してもよいし(図7)、アリルエステル樹脂フィルム1aの一方の面に機能層6を製膜し、その反対の面に接着剤層2を製膜してもよい(図8)。
プライマー層4及び機能層6を設ける場合は、アリルエステル樹脂フィルム1aの一方の面に機能層6を製膜し、その上にプライマー層4及び接着剤層2を製膜してもよいし(図9)、アリルエステル樹脂フィルム1aの一方の面に機能層6を製膜し、その反対の面にプライマー層4及び接着剤層2を製膜(図10、図14)してもよい。
プライマー層4、加飾層5及び機能層6を設ける場合は、アリルエステル樹脂フィルム1aの一方の面に機能層6を製膜し、その上にプライマー層4、加飾層5及び接着剤層2を製膜してもよいし(図11)、アリルエステル樹脂フィルム1aの一方の面に機能層6を製膜し、その反対の面にプライマー層4、加飾層5及び接着剤層2を製膜してもよい(図12)。
第2工程:熱可塑性樹脂の充填
第1工程で得られたフィルムインサート成形用フィルム及び充填用の熱可塑性樹脂を用いてフィルムインサート成形を行う。フィルムインサート成形は従来知られた方法を用いることができる。
本発明の一実施態様においては、図15に示すように、一対のインサート成形用金型20のキャビティ内にフィルムインサート成形用フィルム10を入れ、前記フィルムの接着剤層側から加熱加圧により溶融した熱可塑性樹脂3aを充填する。
具体的には、まず金型21と金型22の間にフィルムインサート成形用フィルム10を挿入する(図15(a))。枚葉のフィルムを1枚ずつ挿入してもよいし、長尺の加飾フィルムを間欠的に挿入してもよいが、フィルムの割れを抑制するためには、枚葉のフィルムを挿入する方が好ましい。
金型内部でのフィルムの固定は、例えばフィルムに設けた固定用穴に固定用ピンを差し込む方法や、真空吸引により金型に固定する方法等が挙げられる。
インサート成形用金型を閉じた後(図15(b))、金型に設けた樹脂射出口より熱可塑性樹脂3aをキャビティ内に射出充填させ、同時に熱可塑性樹脂の表面にフィルムインサート成形用フィルムを、接着剤を介して接着させ(図15(c))、次いで金型21と金型22を開き、フィルムインサート成形品を取り出す(図15(d))。熱可塑性樹脂充填時のフィルムインサート成形用フィルムの割れを抑制するため、金型21と金型22を閉じた際に、フィルムインサート成形用フィルムが2つの型に挟まれないようにする等、フィルムインサート成形用フィルムに過剰な負荷がかからないような処方をとることが望ましい。
インサート成形用の金型は、必要により加温、冷却することができる。対となる金型21と金型22の温度は同じであってもよいし、それぞれ別の温度で制御してもよい。
キャビティ内に熱可塑性樹脂を導入するゲートの形状としてはダイレクトゲート方式、ディスクゲート方式、サイドゲート方式、ファンゲート方式、フィルムゲート方式、トンネルゲート方式等の各種方式をフィルムインサート成形品の形状に応じて適用できる。
[フィルムインサート成形品の加工方法]
フィルムインサート成形品は必要に応じ、公知の切断、切削、穴あけ加工を行うことができる。加工方法としては、例えば、鋸盤法、コンターマシン法、シャーリング法、旋盤法、ルータ加工、ガス切断法、レーザー切断法、プラズマ切断法、ウォータージェット切断法等が挙げられる。
以下に本発明について代表的な例を示し、さらに具体的に説明する。
実施例及び比較例で用いた物性の評価方法は以下の通りである。
[鉛筆硬度]
表面硬度の指標としてJIS K5600−5−4に準じて鉛筆硬度を測定した。具体的には、被測定物に対し円柱状に削った鉛筆芯を45度の角度に傾けて上から750gの荷重を掛けた状態で、被測定物の表面を10mm程度引掻いて傷の有無を確認した。
[耐溶剤性]
被測定物の表面に対し、酢酸エチルを浸み込ませたPET製のワイパーに500gの荷重を掛けた状態で、速度1600mm/minで100回往復させて、フィルムインサート成形品の外観の変化を観察した。
[耐久性]
被測定物の表面に対し、スチールウール♯0000番(製品名「ボンスター」(登録商標)、日本スチールウール株式会社製)を荷重を掛けた状態(27mmΦ、1500g)で、速度1800mm/minで100往復し、試験後、傷の有無を3波長蛍光ランプ下での目視により観察した。
アリルエステル化合物1の合成:
蒸留装置の付いた2リットルの三口フラスコに、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアリル1625g、トリメチロールプロパン167g、ジブチル錫オキサイド0.813gを仕込み、窒素ガス気流下、180℃で生成してくるアルコールを留去しながら加熱した。留去したアルコールが約170gになったところで反応系内を約4時間かけて6.6kPaまで減圧し、アルコールの留出速度を速めた。留出液が殆ど出なくなった時点で、反応系内を0.5kPaに減圧し、さらに1時間反応させた後、反応物を冷却し、アリルエステル化合物1(以下、アリルエステルオリゴマー1とする。)を得た。
アリルエステルオリゴマー1に含まれる分子の構造式の一例を下記に示す。
Figure 2018103446
アリルエステル樹脂フィルム1の作製:
アリルエステルオリゴマー1を60質量部とペンタエリスリトールトリアクリレート20質量部、トリアリルイソシアヌレート20質量部、パーヘキシル(登録商標)I(日油(株)製)1質量部、Irgacure(登録商標)TPO(BASF社製)0.5質量部を均一となるまで混合し、アリルエステル樹脂組成物1を調整した。次いで当該樹脂組成物を硬化後の厚さが120μmとなるように厚さが100μmのPETフィルム上にアプリケーターを用いて塗布した。さらに塗布面に厚さが100μmのPETフィルムを被せた後、紫外線照射装置(アイグラフィックス(株)製アイグランデージ、メタルハライドランプ)を用いて300mW/cm2、800mJ/cm2の条件で紫外線を照射して、樹脂組成物をゲル化(半硬化)させて半硬化フィルムを得た。
得られた半硬化フィルムを両面のPETフィルムを付けたままガラス板に挟み、160℃に保った強制対流式オーブンに入れ、1時間かけて硬化させた。硬化完了後に両面のPETフィルムを剥がすことで厚さが120μmの透明なアリルエステル樹脂フィルム1を得た。
アリルエステル樹脂フィルム2の作製:
アリルエステルオリゴマー1を80質量部とトリメチロールプロパントリアクリレート20質量部、パーヘキシル(登録商標)I(日油(株)製)1質量部、Irgacure(登録商標)TPO(BASF社製)0.5質量部を均一となるまで混合し、アリルエステル樹脂組成物2を調整した。次いで当該樹脂組成物を硬化後の厚さが300μmとなるように厚さが100μmのPETフィルム上にアプリケーターを用いて塗布した。さらに塗布面に厚さが100μmのPETフィルムを被せた後、紫外線照射装置(アイグラフィックス(株)製アイグランデージ、メタルハライドランプ)を用いて300mW/cm2、800mJ/cm2の条件で紫外線を照射して、樹脂組成物をゲル化(半硬化)させて半硬化フィルムを得た。
得られた半硬化フィルムを両面のPETフィルムを付けたままガラス板に挟み、160℃に保った強制対流式オーブンに入れ、1時間かけて硬化させた。硬化完了後に両面のPETフィルムを剥がすことで厚さが300μmの透明なアリルエステル樹脂フィルム2を得た。
アリルエステル樹脂フィルム3の作製:
アリルエステル樹脂フィルム2の片面に真空蒸着法によりアルミニウムを蒸着し、アルミニウム膜を有する厚さ300μmのアリルエステル樹脂フィルム3を得た。
このフィルムのアルミニウム蒸着面の波長380−780nmの領域の平均反射率は86%であった。
フィルムインサート成形用フィルム1の製造:
スクリーンインキ(帝国インキ製造株式会社製MIX−HF(メタリック))100質量部と希釈用溶剤15部(帝国インキ製造株式会社製C−002溶剤)、硬化剤3部(帝国インキ製造株式会社製210硬化剤)を混合して加飾層製膜用のインキを得た。次いでアリルエステル樹脂フィルム1の一方の面に250メッシュのスクリーンを用いてスクリーン印刷により前記インキを塗布し、80℃に保った強制対流式オーブン内で10分間加熱し、加飾層を形成した。
次に接着剤層用の接着剤溶液(帝国インキ製造株式会社製IMB−HF009バインダー)を加飾層上に250メッシュのスクリーンを用いてスクリーン印刷により塗布し、80℃に保った強制対流式オーブン内で60分間加熱することで接着剤層を形成し、フィルムインサート成形用フィルム1を得た。
フィルムインサート成形用フィルム2の製造:
スクリーンインキ(帝国インキ製造株式会社製INQ−HF)100質量部と希釈用溶剤15部(帝国インキ製造株式会社製F−003溶剤)、硬化剤4部(帝国インキ製造株式会社製200硬化剤)を混合して加飾層製膜用のインキを得た。次いでアリルエステル樹脂フィルム3のアルミニウム蒸着膜の上に250メッシュのスクリーンを用いてスクリーン印刷により前記インキを塗布し、80℃に保った強制対流式オーブン内で10分間加熱し、加飾層を形成した。
次に接着剤層用の接着剤溶液(帝国インキ製造株式会社製IMB−HF009バインダー)を加飾層上に250メッシュのスクリーンを用いてスクリーン印刷により塗布し、80℃に保った強制対流式オーブン内で60分間加熱することで接着剤層を形成し、フィルムインサート成形用フィルム2を得た。
実施例1:フィルムインサート成形品1の製造
フィルムインサート成形用フィルム1を所定の形状に個片化し、80℃に加熱された1対の金型内に配置した。次いで加熱溶融したポリカーボネート(PC)/ABS系ポリマーアロイ(ガラス繊維10質量%含有)をキャビティ内のインサート成形用フィルムの接着剤層側に射出成形し、インサート成形用フィルムと熱可塑性樹脂が一体化したフィルムインサート成形品1を得た。この成形品のアリルエステル樹脂層表面の鉛筆硬度を測定したところ、9Hであった。
実施例2:フィルムインサート成形品2の製造
フィルムインサート成形用フィルム2を所定の形状に個片化し、80℃に加熱された1対の金型内に配置した。次いで加熱溶融したPC/ABS系ポリマーアロイ(ガラス繊維10質量%含有)をキャビティ内のインサート成形用フィルムの接着剤層側に射出成形し、インサート成形用フィルムと熱可塑性樹脂が一体化したフィルムインサート成形品2を得た。この成形品のアリルエステル樹脂層表面の鉛筆硬度を測定したところ、4Hであった。
比較例1:フィルムインサート成形品3の製造
フィルムインサート成形用フィルム1の製造においてアリルエステル樹脂フィルム1を125μmのPETフィルムに替え、フィルムインサート成形用フィルム3を作製した。
フィルムインサート成形用フィルム2をフィルムインサート成形用フィルム3に代えた以外は実施例2と同様に操作を行い、フィルムインサート成形品3を得た。この成形品のPET樹脂層表面の鉛筆硬度を測定したところ、Hであった。
比較例2:フィルムインサート成形品4の製造
フィルムインサート成形用フィルム2の製造においてアリルエステル樹脂フィルム3を厚み125μmのアルミ蒸着層を有するPETに替え、フィルムインサート成形用フィルム4を作製した。
フィルムインサート成形用フィルム2をフィルムインサート成形用フィルム4に代えた以外は実施例2と同様に操作を行い、フィルムインサート成形品4を得た。この成形品のPET樹脂層表面の鉛筆硬度を測定したところ、Hであった。
比較例3:
実施例1においてフィルムインサート成形用フィルム1を金型内に挿入せず、PC/ABS系ポリマーアロイ(ガラス繊維10質量%含有)からなる樹脂層のみの射出成形品1を得た。この成形品の鉛筆硬度を測定したところ、HBであった。
比較例4:
80℃に加熱された金型内に加熱溶融したPC樹脂を射出し、PC樹脂層のみの射出成形品2を得た。この成形品の鉛筆硬度を測定したところ、2Bであった。
実施例及び比較例で得た各成形品について、耐久性及び耐溶剤性を評価し、その結果を鉛筆硬度の値と共に表1に示す。
表1から明らかなように、実施例の成形品は傷がつきにくく、耐溶剤性に優れていることがわかる。
Figure 2018103446
本発明のフィルムインサート成形品は高い表面硬度、耐久性及び耐溶剤性を有することから、輸送機器、生活家電、電子機器等に使用される部材として有用である。
1 アリルエステル樹脂層
1a アリルエステル樹脂フィルム
2 接着剤層
3 熱可塑性樹脂層
3a 熱可塑性樹脂
4 プライマー層
5 加飾層
6 機能層
10 フィルムインサート成形用フィルム10
20 インサート成形用金型
21 金型1
22 金型2

Claims (10)

  1. 少なくとも、アリルエステル樹脂層、接着剤層、熱可塑性樹脂層をこの順で含む積層体からなることを特徴とするフィルムインサート成形品。
  2. 前記アリルエステル樹脂層がアリルエステル樹脂組成物の硬化物であり、前記アリルエステル樹脂組成物が一般式(2)
    Figure 2018103446
    (式中、R3はアリル基またはメタリル基を表し、A2はジカルボン酸に由来する脂環式構造または芳香環構造を有する有機残基を表し、同一分子中に存在する複数のR3及びA2は互いに同一でも異なっていても良い。)で示される基を末端基として有し、かつ一般式(3)
    Figure 2018103446
    (式中、A3はジカルボン酸に由来する脂環式構造または芳香環構造を有する有機残基を表し、Xは多価アルコールから誘導された有機残基を表し、同一分子中にA3及びXが複数存在する場合には複数のA3及びXは互いに同一でも異なっていても良い。Xが3価以上のアルコールから誘導された有機残基を表す場合、2個のヒドロキシル基はエステル結合により主鎖の一部を構成するが、残りの1以上のヒドロキシル基はその一部またはすべてがエステル結合によって、さらに上記一般式(2)で示される基を末端基とし、上記一般式(3)で示される構造を構成単位とする分岐構造を有していても良い。)で示される構造を構成単位として有するアリルエステルオリゴマーを含むものである請求項1に記載のフィルムインサート成形品。
  3. 前記アリルエステル樹脂層と前記接着剤層の間に少なくとも1層のプライマー層を有する請求項1または2に記載のフィルムインサート成形品。
  4. 前記プライマー層が着色剤を含有する請求項3に記載のフィルムインサート成形品。
  5. 前記アリルエステル樹脂層と前記プライマー層の間、あるいは前記プライマー層と前記接着剤層の間に少なくとも1層の加飾層を有する請求項3または4に記載のフィルムインサート成形品。
  6. 前記アリルエステル樹脂層の少なくとも一方の面に機能層を有する請求項1〜5のいずれかに記載のフィルムインサート成形品。
  7. 前記機能層がハードコート層、高屈折率層、導電層、活性エネルギー線遮蔽層、赤外線遮蔽層、磁性層、強磁性層、誘電体層、強誘電体層、エレクトロクロミック層、エレクトロルミネッセンス層、絶縁層、光吸収層、光選択吸収層、反射層、反射防止層、防眩層、撥水層、親水層、抗菌層、触媒層及び光触媒層からなる群から選択されるいずれかである請求項1〜6のいずれかに記載のフィルムインサート成形品。
  8. アリルエステル樹脂フィルムの一方の面に少なくとも1層の接着剤層を形成することを含むフィルムインサート成形用フィルムを製造する第1工程、及び得られたフィルムインサート成形用フィルムを、一対の成形用金型のキャビティ内に挿入し、前記接着剤層側から、加熱加圧により溶融した熱可塑性樹脂を充填する第2工程を含むことを特徴とするフィルムインサート成形品の製造方法。
  9. フィルムインサート成形用フィルムを製造する第1工程が、アリルエステル樹脂フィルムの少なくとも一方の面に少なくとも1層のプライマー層を形成し、次いでプライマー層の上面に少なくとも1層の接着剤層を形成することを含む、請求項8に記載のフィルムインサート成形品の製造方法。
  10. アリルエステル樹脂フィルムの少なくとも一方の面に機能層を設ける工程を含む請求項8または9に記載のフィルムインサート成形品の製造方法。
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