本発明は、沈殿池に設置されて池底に堆積した汚泥を一方向に向けて掻き寄せる汚泥掻き寄せ装置に関する。
特許文献1には、汚泥掻き寄せ装置の一例が示されている。当該汚泥掻寄せ装置は、駆動用の支軸を含む複数の支軸間に巻回された一対の無端チェーンと、無端チェーンに取り付けられた複数のフライト板と、無端チェーンの走行に伴って移動するフライト板を支持する長尺のガイドレールとを備え、沈殿池の池底に堆積した汚泥をフライト板で掻き寄せるように構成されている。
支軸に備えたスプロケットに巻回された無端チェーンがスプロケットの回転に伴って走行すると無端チェーンに取り付けられたフライト板が沈殿池内で循環移動する。フライト板が沈殿池の池底に設置されたガイドレール上を移動するときに池底に堆積した汚泥が掻き寄せられ、フライト板が沈殿池の水面近傍に設置されたガイドレール上を移動するときに水面に浮遊したスカムが掻き寄せられる。
また、特許文献2には、汚泥掻寄せ装置の耐腐食性を確保するとともに耐摩耗性の向上を図るために、樹脂製のノッチチェーンを用いて無端チェーンを構成した、汚泥掻寄せ装置が提案されている。
特開平10−57713号公報
特開2009−241023号公報
ところで、沈殿池が設置された地域で大きな地震が発生すると、地震による長周期振動によって沈殿池の水が大きく波立つスロッシング現象が現れて、その影響によって支軸のスプロケットから無端チェーンが離脱する等、汚泥掻き寄せ装置が破損する虞があった。
そこで、新設の沈殿池のみならず既設の沈殿池に設置された汚泥掻き寄せ装置に対しても、スロッシング現象等に起因するスプロケットからの無端チェーンの離脱を防止するために、フライト板を挟んでガイドレールと対向する側に、フライト板の浮きを阻止する長尺の押え部材をガイドレールの延出方向に沿って配置することが考えられている。
この場合、フライト板と押え部材との離隔距離が長い場合には無端チェーンの離脱を防止することができず、フライト板と押え部材との離隔距離が短い場合にはフライト板と押え部材とが摺動する等の原因により無端チェーンの円滑な走行が妨げられ、汚泥掻き寄せ装置の破損を招く虞があった。
特に無端チェーンとして樹脂製のノッチチェーンを用いた場合には、軽量化が図られているが故にスロッシングの影響を受け易く、単に縦方向に揺れるのみならず横方向にも揺れる場合があり、駆動用スプロケットやシーブホイールの軸心方向にも離脱する虞があった。
本発明の目的は、上述した問題点に鑑み、ノッチチェーンの円滑な走行を確保しながらも、予期せぬノッチチェーンの離脱を防止できるフライト板と押え部材との相対的な位置関係を規定できる汚泥掻き寄せ装置を提供する点にある。
上述の目的を達成するため、本発明による汚泥掻き寄せ装置の第一特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、複数の支軸間に巻回された一対の無端状のノッチチェーンと、前記ノッチチェーンに取り付けられた複数のフライト板と、前記ノッチチェーンの走行に伴って移動する前記フライト板を支持する長尺のガイドレールとを備え、沈殿池の池底に堆積した汚泥を前記フライト板で掻き寄せる汚泥掻き寄せ装置であって、前記フライト板を挟んで前記ガイドレールと対向する側に、前記フライト板の浮きを阻止する押え部材が配置され、前記一対のノッチチェーンは駆動用支軸の両端部に固定された駆動軸スプロケット及び従動用支軸の両端部に設けられたホイールに巻回され、前記フライト板と前記押え部材との離隔距離h1が、前記ホイールの鍔部の最大高さH1に対して、h1≦H1を満たす値に設定されている点にある。
例えば、周面が滑らかでノッチチェーンと歯合することがないシーブホイールでは、スロッシングの影響を受けて横方向にも揺れる場合にノッチチェーンがシーブホイールの軸心方向に滑る虞がある。また、ノッチチェーンと歯合するピンを備えたスプロケットホイールでも、スロッシングの影響を受けて横方向にも揺れる場合にノッチチェーンがスプロケットホイールの軸心方向に滑る虞がある。そのような場合でも、フライト板と押え部材との離隔距離h1が、ホイールの鍔部の最大高さH1に対して、h1≦H1を満たす値に設定されていると、ノッチチェーン及びフライト板に大きな流体圧力が作用した場合でも、ノッチチェーンが最大高さH1以上にホイールから離脱する前に押え部材と当接するので、ノッチチェーンがホイールから軸心方向に滑ってホイールの鍔部を乗り越えて離脱するようなことが回避されるようになる。また、ノッチチェーンの通常の走行時にフライト板が押え部材に当接することも無いので、円滑な走行が妨げられることがなく当該当接による無端チェーンの破損が発生するようなこともない。
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、複数の支軸間に巻回された一対の無端状のノッチチェーンと、前記ノッチチェーンに取り付けられた複数のフライト板と、前記ノッチチェーンの走行に伴って移動する前記フライト板を支持する長尺のガイドレールとを備え、沈殿池の池底に堆積した汚泥を前記フライト板で掻き寄せる汚泥掻き寄せ装置であって、前記フライト板を挟んで前記ガイドレールと対向する側に、前記フライト板の浮きを阻止する押え部材が配置され、前記一対のノッチチェーンは駆動用支軸の両端部に固定された駆動軸スプロケット及び従動用支軸の両端部に設けられたホイールに巻回され、前記フライト板と前記押え部材との離隔距離h1が、前記駆動軸スプロケットの鍔部の最大高さH2に対して、h1≦H2を満たす値に設定されている点にある。
駆動軸スプロケットに歯合するノッチチェーンが、スロッシングの影響を受けて横方向にも揺れる場合に駆動軸スプロケットの鍔部を乗り越えて駆動軸スプロケットの軸心方向に滑る虞がある。そのような場合でも、フライト板と押え部材との離隔距離h1が、駆動軸スプロケットの鍔部の最大高さH2に対して、h1≦H2を満たす値に設定されていると、ノッチチェーン及びフライト板に大きな流体圧力が作用した場合でも、ノッチチェーンが最大高さH2以上に駆動軸スプロケットから離脱する前に押え部材と当接するので、ノッチチェーンが駆動軸スプロケットから軸心方向に滑って駆動軸スプロケットの鍔部を乗り越えて離脱するようなことが回避されるようになる。また、ノッチチェーンの通常の走行時にフライト板が押え部材に当接することも無いので、円滑な走行が妨げられることがなく当該当接による無端チェーンの破損が発生するようなこともない。
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第一または第二の特徴構成に加えて、前記フライト板と前記押え部材との離隔距離h1が、前記ノッチチェーンに形成され前記駆動軸スプロケットの駆動ピンと歯合するノッチ溝の深さH3に対して、h1≦H3を満たす値に設定されている点にある。
上述した構成によれば、ノッチチェーン及びフライト板に大きな流体圧力が作用した場合でも、ノッチチェーンが最大高さH3以上にスプロケットから離脱する前に押え部材と当接するので、ノッチチェーンに形成されたノッチ溝が駆動軸スプロケットの駆動ピンから離脱して空回りするような不都合な事態の発生が回避される。
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記フライト板と前記押え部材との離隔距離h1が、前記駆動軸スプロケットの外周部に配置され前記ノッチチェーンの歯飛びを防止するチェーンガードと前記ノッチチェーンとの間隙距離H4に対して、h1≦H4を満たす値に設定されている点にある。
フライト板と前記押え部材との離隔距離h1がチェーンガードとノッチチェーンとの間隙距離H4以下に設定されていると、ノッチチェーン及びフライト板に大きな流体圧力が作用した場合でも、駆動軸スプロケットとその外周部に配置されたチェーンガードとの間隙にノッチチェーンが進入する際にノッチチェーンがチェーンガードと接触して破損するような不都合な事態の発生が回避される。また、H4=h1の場合には、歯飛び防止のチェーンガードをスロッシング対策用としても利用できる。
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第一から第四の何れかの特徴構成に加えて、前記フライト板と前記押え部材との離隔距離h1が、前記駆動軸スプロケットの外周部に配置され前記ノッチチェーンの歯飛びを防止するチェーンガードと前記ノッチチェーンに取り付ける前記フライト板のアタッチメントとの間隙距離H5に対して、H5≦h1を満たす値に設定されている点にある。
チェーンガードとフライト板のアタッチメントの間隙距離を小さくすれば脱輪の抑制効果は上がるが、ノッチチェーンの通常走行時にフライト板が押え部材に当接する可能性があり摩耗及び破損の可能性がある。しかし、適正な下限値を設けることによりそのような不都合な事態の発生が回避される。
同第六の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、上述の第一から第五の何れかの特徴構成に加えて、前記駆動軸スプロケットの下流側に隣接配置されたホイールの軸心から前記ガイドレールの終端までの距離を基準に定めた所定距離L以上前記ホイールの軸心から上流側に離隔する迄の近傍領域で、前記フライト板と前記押え部材との離隔距離h2が、前記離隔距離h1より大きな値に設定されている点にある。
リンクプレートが互いに連結ピンで回動可能に連結されたノッチチェーンがホイールに支持されて走行方向が変化する際に、隣接するリンクプレート同士が摩擦などの影響を受けて連結ピン周りで滑らかに回動せずにホイールに接触する場合があり、そのような場合にホイールの上流側でノッチチェーンが径方向に膨らむ場合がある。ホイールの軸心から前記ガイドレールの終端までの距離を基準に定めた所定距離Lだけ離隔する迄の近傍領域で、そのような現象が生じる可能性がある。
当該近傍領域でフライト板と押え部材との離隔距離h2を、離隔距離h1より大きな値に設定することで、フライト板と押え部材との接触を回避することができ、仮にノッチチェーンが径方向に膨らんだ場合であっても、ノッチチェーンの安定な走行が確保される。
同第七の特徴構成は、同請求項7に記載した通り、複数の支軸間に巻回された一対の無端状のノッチチェーンと、前記ノッチチェーンに取り付けられた複数のフライト板と、前記ノッチチェーンの走行に伴って移動する前記フライト板を支持する長尺のガイドレールとを備え、沈殿池の池底に堆積した汚泥を前記フライト板で掻き寄せる汚泥掻き寄せ装置であって、前記フライト板を挟んで前記ガイドレールと対向する側に、前記フライト板の浮きを阻止する押え部材が配置され、前記フライト板と前記押え部材との離隔距離h1が、前記ノッチチェーンに形成され前記駆動軸スプロケットの駆動ピンと歯合するノッチ溝の深さH3に対して、h1≦H3を満たす値に設定されている点にある。
同第八の特徴構成は、同請求項8に記載した通り、複数の支軸間に巻回された一対の無端状のノッチチェーンと、前記ノッチチェーンに取り付けられた複数のフライト板と、前記ノッチチェーンの走行に伴って移動する前記フライト板を支持する長尺のガイドレールとを備え、沈殿池の池底に堆積した汚泥を前記フライト板で掻き寄せる汚泥掻き寄せ装置であって、前記フライト板を挟んで前記ガイドレールと対向する側に、前記フライト板の浮きを阻止する押え部材が配置され、前記フライト板と前記押え部材との離隔距離h1が、前記駆動軸スプロケットの外周部に配置され前記ノッチチェーンの歯飛びを防止するチェーンガードと前記ノッチチェーンとの間隙距離H4に対して、h1≦H4を満たす値に設定されている点にある。
同第九の特徴構成は、同請求項9に記載した通り、複数の支軸間に巻回された一対の無端状のノッチチェーンと、前記ノッチチェーンに取り付けられた複数のフライト板と、前記ノッチチェーンの走行に伴って移動する前記フライト板を支持する長尺のガイドレールとを備え、沈殿池の池底に堆積した汚泥を前記フライト板で掻き寄せる汚泥掻き寄せ装置であって、前記フライト板を挟んで前記ガイドレールと対向する側に、前記フライト板の浮きを阻止する押え部材が配置され、前記フライト板と前記押え部材との離隔距離h1が、前記駆動軸スプロケットの外周部に配置され前記ノッチチェーンの歯飛びを防止するチェーンガードと前記ノッチチェーンに取り付ける前記フライト板のアタッチメントとの間隙距離H5に対して、H5≦h1を満たす値に設定されている点にある。
同第十の特徴構成は、同請求項10に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、前記フライト板と前記押え部材との離隔距離h1が、前記ノッチチェーンに形成され前記駆動軸スプロケットの駆動ピンと歯合するノッチ溝の深さH3、及び、前記駆動軸スプロケットの外周部に配置され前記ノッチチェーンの歯飛びを防止するチェーンガードと前記ノッチチェーンとの間隙距離H4に対して、h1≦H4≦H3≦H1を満たす値に設定されている点にある。
同第十一の特徴構成は、同請求項11に記載した通り、上述の第十の特徴構成に加えて、前記フライト板と前記押え部材との離隔距離h1が、前記駆動軸スプロケットの外周部に配置され前記ノッチチェーンの歯飛びを防止するチェーンガードと前記ノッチチェーンに取り付ける前記フライト板のアタッチメントとの間隙距離H5に対して、H5≦h1≦H4≦H3≦H1を満たす値に設定されている点にある。
以上説明した通り、本発明によれば、ノッチチェーンの円滑な走行を確保しながらも、予期せぬノッチチェーンの離脱を防止できるフライト板と押え部材との相対的な位置関係を規定できる汚泥掻き寄せ装置を提供することができるようになった。
(a)は沈殿池に設置された本発明による汚泥掻き寄せ装置の縦断面図、(b)は平行に配置された各沈殿池で(a)に示した各汚泥掻き寄せ装置で掻き寄せられた汚泥をさらに一方向に掻き寄せる汚泥掻き寄せ装置の断面図
本発明による汚泥掻き寄せ装置の説明図
汚泥掻き寄せ装置のフライト板の一端部の要部説明図
(a)から(d)は本発明による支持機構の説明図
(a)はノッチチェーンの一部平面図、(b)は同正面図、(c)は駆動軸スプロケットとノッチチェーンの歯合状態の側面図説明図、(d)は駆動軸スプロケットとノッチチェーンの歯合状態の平面視説明図
(a)はフライト板と押え部材との離隔距離の説明図、(b)はノッチチェーンへのフライト板の取付部の要部説明図
(a)はフライト板と押え部材との離隔距離に対するノッチチェーンの駆動機構のクリアランスの説明図、(b)は(a)のA−A線断面の概略の説明図、(c)はフライト板と押え部材との離隔距離に対するシーブホイールの鍔部との関係を示す説明図
以下、本発明による汚泥掻き寄せ装置を図面に基づいて説明する。
図1(a)及び図2に示すように、汚泥掻き寄せ装置2は、例えば下水処理場の最初沈殿池や最終沈殿池等の沈殿池1に設置され、複数の支軸3a,3b,3c,3d間に巻回された一対の無端チェーン4,4と、無端チェーン4,4に取り付けられた複数のフライト板5と、無端チェーン4,4の走行に伴って移動するフライト板5を支持する長尺のガイドレール6,7とを備えている。
四本の支軸は、沈殿池1の上層に配置された支軸3a,3bと、下層に配置された支軸3c,3dで構成されている。詳述すると、駆動モータMと駆動チェーンCで連結された駆動用支軸3aと、駆動用支軸3aと同じ高さに配置されたアイドラ用支軸3bと、テークアップ用支軸3cと、水中支軸3dで構成され、それぞれ両端に配置された軸受によって回転自在に支承されている。
駆動用支軸3aの両端側に駆動軸スプロケットS1が支軸3aと一体回転するようにキーを介して取り付けられ、従動用支軸3b,3c,3dの両端側にそれぞれシーブホイールS2,S3,S4が各支軸3b,3c,3dと一体回転するようにキーを介して取り付けられ、駆動軸スプロケットS1及びシーブホイールS2,S3,S4に上述した一対の無端チェーン4,4が巻回されている。尚、駆動用支軸3aにはさらに上述した駆動チェーンCを巻回するための駆動用スプロケットSdが設けられている。
無端チェーン4,4には所定間隔でフライト板5が取り付けられている。駆動用支軸3aが回転すると無端チェーン4,4が各支軸3a,3b,3c,3d周りに循環するように走行して、無端チェーン4,4に取り付けられたフライト板5が沈殿池1の内部を循環移動する。
フライト板5が池底に敷設されたガイドレール6,6に支持されて沈殿池1の池底側を走行する時に、池底側に堆積した汚泥がフライト板5によって汚泥貯留部1aに掻き寄せられ、フライト板5が上層に設置されたガイドレール7,7に支持されて水面側を走行する時には水面に浮遊するスカムがスカムスキマ1bに掻き寄せられる。
スカムスキマ1bは、フライト板5で掻き寄せられたスカムをトラフ内に流入させる溢流堰を備えて構成され、フライト板5の走行に伴って溢流堰が押し下げられて、水面に浮遊しているスカムが水と共にトラフ内に流入するように構成されている。
尚、支軸3b,3c,3dは従動軸であり、テークアップ用支軸3cはフライト板5の走行方向に沿って前後に位置調整可能に配置され、無端チェーン4,4の張力を調節できるよう構成されている。
沈殿池1の上層で支軸3a,3b間に設置されたガイドレール7,7は、無端チェーン4,4の延出方向に沿って配置され、沈殿池1の側壁1cに所定間隔でアンカーを介して固定された耐食性の鋼材で構成される複数のレール支持部材70の上部に固定支持されている(図3参照)。
図1(a),(b)に示すように、このような沈殿池1が複数並列に設置され、各汚泥掻き寄せ装置2で汚泥貯留部1aに掻き寄せられた汚泥が、第2の汚泥掻き寄せ装置20で汚泥貯留部1aの一側に掻き寄せられて、ポンプPによって槽外に排泥される。
上述の汚泥掻き寄せ装置2と同様に、第2の汚泥掻き寄せ装置20も、支軸23a,23b,23c間に巻回された一対の無端チェーン24,24と、無端チェーン24,24に取り付けられた複数のフライト板25と、無端チェーン24,24の走行に伴って移動するフライト板25を支持する長尺のガイドレール27とを備えている。
何れの無端チェーン4,24も軽量化及び耐腐食性の確保のために樹脂材料を用いて成型されたノッチチェーンで構成されている。
図5(a),(b)には、ノッチチェーン4の一部が例示されている。ノッチチェーン4は、複数のリンクプレート41が連結ピン40で回動可能に連結されて無端状のチェーンに構成されている。
各リンクプレート41は、基端側に形成された幅狭の単一の環状部42と、先端側に形成されたフォーク状に二つ割れした幅広の一対の環状部43,43が、リンク部材44で一体に連結されるように一体形成されている。
一方のリンクプレート41の環状部42を他方のリンクプレート41の環状部43,43で挟んだ状態で、各環状部の軸心が一致するように連結ピン40が嵌め込まれて回動自在に連結されている。
正面視でリンク部材44の下縁である腹部のうち環状部42の近傍に駆動軸スプロケットS1の駆動ピンと係合するノッチ45が形成され、環状部43,43側にはシーブホイールS2,S3,S4の周面に沿う緩やかな曲面が形成されている。また、リンク部材44の背面にはフライト板25の取付座46が設けられている。
図5(c),(d)に示すように、駆動軸スプロケットS1は左右一対の円盤状の側板30,30が一体回転可能に支持環31で連結され、複数本の駆動ピン32が側板30,30の周部に支持環31と平行姿勢となるように配設されている。支持環31が支軸3a(図2参照)に嵌入固定されることにより、駆動軸スプロケットS1は支軸3aと一体回転する。
駆動軸スプロケットS1に巻回されたノッチチェーン4のノッチ45が駆動ピン32と噛み合うことにより、駆動軸スプロケットS1の回転方向にノッチチェーン4が送られて走行するようになる。
駆動軸スプロケットS1の外周部には、ノッチチェーン4が接近してノッチ45が駆動ピン32と噛み合う領域で、ノッチ45が駆動ピン32へ噛み合わない歯飛び現象を防止するチェーンガード10が設けられている。
チェーンガード10の駆動軸スプロケットS1への対向面は、駆動軸スプロケットS1と同軸の弧状曲面に形成され、ノッチチェーン4の背面とチェーンガード10の弧状曲面との最小間隔が歯飛び現象を防止可能な間隔に設定されている。尚、チェーンガード10は図示しない取付け金具によって左右の側壁に支持固定されている。
図6(b)に示すように、長尺のフライト板5の両端部には、ノッチチェーン4の取付座46にフライト板5を固定するアタッチメント50が設けられている。アタッチメント50にノッチチェーン4の背面を載せて、一対の取付孔51にボルトBを挿通してナットNで締付固定される。
ノッチチェーン4を挟んでアタッチメント50の上面及び下面にガイドシュー5a,5bが取り付けられている。フライト板5が上層に設置されたガイドレール7,7に支持されて走行する際にガイドシュー5aがガイドレール7,7上を摺動するとともにガイドシュー5bが後述の押え部材と対向し、フライト板5が池底に敷設されたガイドレール6,6に支持されて走行する際にガイドシュー5bがガイドレール6,6上を摺動するように構成されている。
図7(c)に示すように、シーブホイールS2,S3,S4は、滑らかな周面を備えた筒状体60の両側面に鍔部61が形成されて構成され、筒状体60の周部にノッチチェーン4を構成する各リンク部材44の腹部が当接してノッチチェーン4の走行軌道を支持するように構成されている。
ガイドレールの材料として樹脂やステンレス鋼等の耐食性の金属が好適に用いられ、フライト板の材料として木材や樹脂や耐食性の金属が好適に用いられる。
沈殿池1が設置された地域で大きな地震が発生すると、地震による長周期振動によって沈殿池1の水が大きく波立つスロッシング現象が現れて、その影響によって汚泥掻き寄せ装置2,20の各支軸に備えた駆動軸スプロケットやシーブホイールから無端チェーンが離脱して破損する虞がある。
そのため、図1から図4に示すように、フライト板5を挟んでガイドレール7と対向する側に、フライト板5の浮きを阻止する断面「L」字状のアングル部材でなる長尺の押え部材8が、支持機構9を介してガイドレール7の延出方向に沿って配置されている。尚、押え部材8は長尺でなくてもよく、その場合には定尺の押え部材8を連接すればよい。また、定尺の押え部材8を、部分的に距離を隔てて所々に配設してもよい。以下、詳述する。
図3及び図4(a)から図4(d)に示すように、支持機構9は、押え部材8の延出方向に沿って所定間隔で配置された複数の支持部材9Aと、押え部材8が支持部材9Aに支持されるように、押え部材8を支持部材9Aに位置決め固定する第1取付け部材9B及び第2取付け部材9Cを備えて構成されている。図3中、符号4はノッチ式無端チェーンを示し、符号5cはノッチ式無端チェーン4のフライト板5への取付け部を示している。
支持部材9Aは、沈殿池1の壁面(側壁)1cに所定間隔でアンカーを介して固定される耐食性の鋼材で構成され、押え部材8側に突出するように配置されている。支持部材9Aは、側壁1cに直接固定された態様に限らず、間接的に固定された態様を採用してもよい。例えば、上述したレール支持部材70にボルト固定または溶着固定してもよい。
第1取付け部材9Bは、押え部材8側への取付け位置を調整可能な第1固定機構91を介して支持部材9Aに取り付けられ、第2取付け部材9Cは、第2固定機構92を介して押え部材8を第1取付け部材9Bに固定する。第2固定機構92は、フライト板5と押え部材8との離隔距離h1及び押え部材8の延出方向に対する第1取付け部材9Bの支持位置を調整可能に構成されている。
詳述すると、第1取付け部材9Bは、断面視「T」字状の板状鋼材で構成され、上辺となる矩形の板状鋼材の長手方向、つまり平面視でガイドレールの延出方向に対して垂直方向に延びる板状鋼材に沿って2箇所に長孔91hが形成されている。支持部材9Aに形成された取付け孔と長孔91hとにボルト91aを挿通してナット91bで締付け固定される。つまり、長孔91hとボルト91aとナット91bで第1固定機構91が構成されている。
第2取付け部材9Cは、折り曲げ加工された板状の鋼材で構成され、断面視「L」字状の押え部材8の一側端に係合する係合部92aと、係合部92aと第1取付け部材9Bとの間に押え部材8を挟みつけた状態で、フライト板5と押え部材8との離隔距離h1を調整可能に第1取付け部9Bに締め付ける固定部92bとを備えている。フライト板5と押え部材8との離隔距離h1とはフライト板5に備えたガイドシュー5bの表面から押え部材8の先端までの距離である。
さらに、係合部92aと第1取付け部材9Bとの間に押え部材8を挟みつけた状態で、第2取付け部材9Cと押え部材8とが相対移動可能に構成され、第2取付け部材9Cを第1取付け部9Bに締付固定或いは仮固定した状態で第2取付け部材9Cに対して押え部材8を押え部材8の延出方向にスライド移動させることができ、また押え部材8に対して第2取付け部材9Cを押え部材8の延出方向にスライド移動させることで第2取付け部材9Cを第1取付け部9Bに位置合わせすることができるようになる。
第1取付け部材9Bのうち、固定部92bが取り付けられる下垂部には上下方向に沿う長孔92hが形成され、第1取付け部材9Bに形成された長孔92hと固定部92bに形成された取付け孔にボルト92cを挿通してナット92dで締付け固定される。つまり、長孔92hとボルト92aとナット92bで第2固定機構92が構成されている。尚、図4(d)には一つの長孔92hが形成された例を示しているが、実際には幅方向に二つの長孔92hが形成されている。
上述した構成によれば、重量のある押え部材を精度良く支持するための支持機構を設置するのは非常に困難な作業を伴い、特に既設の沈殿池で池の側壁が腐食している場合等には、側壁の大掛かりな修復作業を伴うばかりか、そのような側面に支持機構を精度良く固定するのは非常に困難を伴う作業が要求されるという課題、フライト板と押え部材との離隔距離やフライト板に対する押え部材の対向位置を精度良く調整する必要があるという課題に十分に対応できるようになる。
即ち、押え部材8に向けて突出するように支持部材9Aを沈殿池1の壁部に直接または間接的に固定した後に、フライト板5に対する押え部材8の対向位置が所定位置になるように第1固定機構91を介して調整しながら第1取付け部材9Bを支持部材9Aに固定し、さらに、フライト板5と押え部材8との離隔距離h1が所定距離になるように、そして押え部材8の延出方向に第2取付け部材9Cをスライド移動して第1取付け部材9Bに対する支持位置を合わせるように第2固定機構92を介して調整しながら第2取付け部材9Cを第1取付け部材9Bに固定すれば、支持部材9Aそのものの取付け精度が多少悪くても押え部材8を所望の位置に精度良く固定して支持することができるようになる。
長孔91h、92hを介して締付け対象となる両部材の相対位置を容易に調整できるように、予め上述の固定機構91,92が準備された取付け部材9B,9Cを用いるため、支持部材9Aの取付け精度が多少低下する場合でも、精度良く位置決め調整した後に、直ちにボルトとナットで締付け固定でき、現場で柔軟に対応することができる。
また、押え部材8が長尺で重量のあるアングル部材で構成されていても、第2取付け部材9Cの係合部92aを押え部材8の一側端に係合させて第1取付け部9Bとの間で押え部材8を挟みつけ、第2固定機構92を介して離隔距離h1が所定距離となるように調整した固定部92bを第1取付け部材9Bに締め付けることで、容易に位置調整しながら押え部材8を支持できるので、現場で押え部材8に固定用の孔加工等を施す等の必要が無く、極めて容易に施工できるようになる。
フライト板5のアタッチメント50の上面に備えたガイドシュー5bに対向する所定位置に押え部材8が支持機構9によって位置決めされている。ガイドシューはフライト板5よりも強度がある材料、例えば鋳物や硬質樹脂で構成されている。
フライト板5の上下両面に取り付けられたガイドシュー5a,5bのうち、ガイドレール7上を摺動するガイドシュー5aとは反対側のガイドシュー5bに対向する位置に抑え部材8が位置決めされるので、仮に地震によるスロッシング現象が現れてフライト板5が上方に移動しても、ある程度の強度を備えたガイドシュー5bが抑え部材と当接するため、ガイドシューと比較して強度が弱いフライト板5が破損するような事態の発生を未然に回避することができる。また、ガイドシューが破損した場合には交換もできる。
スロッシング現象が発生すると沈殿池の上層側の水ほど大きなうねりとなって、無端チェーン4,4及びフライト板5に大きな流体圧力が作用するため、下層に配置された支軸よりも上層に配置された支軸から無端チェーンが離脱し易くなる。
そのため、上述したように、少なくとも上層に配置された支軸3a,3bに巻回された無端チェーン4,4に対して抑え部材8が配置されていると、効果的に支軸から無端チェーン4の離脱を防止することができるようになる。
尚、抑え部材8の設置位置は、上層に配置された支軸3a,3bに巻回された無端チェーン4,4に対応する位置に限らず、下層に配置された支軸3c,3dに巻回された無端チェーン4,4に対応する位置に配置されていてもよい。
図6(a)及び図7(a),(b)に示すように、フライト板5と押え部材8との離隔距離h1は、シーブホイールS2の鍔部61の最大高さH1に対して、h1≦H1を満たす値に設定されている。既に説明したが、フライト板5と押え部材8との離隔距離h1とはフライト板5に備えたガイドシュー5bの表面から押え部材8の先端までの距離である。
周面が滑らかでノッチチェーン4と歯合することがないシーブホイールS2では、スロッシングの影響を受けて横方向にも揺れる場合にノッチチェーン4がシーブホイールS2の軸心方向に滑る虞がある。そのような場合でも、フライト板5と押え部材8との離隔距離h1が、シーブホイールS2の鍔部61の最大高さH1に対して、h1≦H1を満たす値に設定されていると、ノッチチェーン4及びフライト板5に大きな流体圧力が作用した場合でも、ノッチチェーン4が最大高さH1以上にシーブホイールS2から離脱する前に押え部材5と当接するので、ノッチチェーン4がシーブホイールS2から軸心方向に滑ってシーブホイールS2の鍔部61を乗り越えて離脱するようなことが回避されるようになる。
また、ノッチチェーン4の通常の走行時にフライト板5が押え部材8に当接することも無いので、円滑な走行が妨げられることがなく当該当接による無端チェーンの破損が発生するようなこともない。
また、フライト板5と押え部材8との離隔距離h1が、駆動軸スプロケットS1の側板30の周部に形成された鍔部30aの最大高さH2に対して、h1≦H2を満たす値に設定されている。鍔部30aの最大高さH2とは側板30の中心から駆動ピン32の最外周部と側板30の最外周部との最大距離をいう。鍔部30aは側板30と一体に形成されていてもよいし、側板30と別体で形成されていてもよい。
駆動軸スプロケットS1に歯合するノッチチェーン4が、スロッシングの影響を受けて横方向にも揺れる場合に駆動軸スプロケットS1の鍔部30aを乗り越えて駆動軸スプロケットS1の軸心方向に滑る虞がある。そのような場合でも、フライト板5と押え部材8との離隔距離h1が、駆動軸スプロケットS1の鍔部30aの最大高さH2に対して、h1≦H2を満たす値に設定されていると、ノッチチェーン4及びフライト板5に大きな流体圧力が作用した場合でも、ノッチチェーン4が最大高さH2以上に駆動軸スプロケットS1から離脱する前に押え部材と当接するので、ノッチチェーン4が駆動軸スプロケットS1から軸心方向に滑って駆動軸スプロケットS1の鍔部30aを乗り越えて離脱するようなことが回避されるようになる。
また、フライト板5と押え部材8との離隔距離h1が、ノッチチェーン4に形成され駆動軸スプロケットS1の駆動ピン32と歯合するノッチ溝45の深さH3に対して、h1≦H3を満たす値に設定されている。
上述した構成によれば、ノッチチェーン4及びフライト板5に大きな流体圧力が作用した場合でも、ノッチチェーン4が最大高さH3以上に駆動軸スプロケットS1から離脱する前に押え部材8と当接するので、ノッチチェーン4に形成されたノッチ溝45が駆動軸スプロケットS1の駆動ピン32から離脱して空回りするような不都合な事態の発生が回避される。
さらに、フライト板5と押え部材8との離隔距離h1が、駆動軸スプロケットS1の外周部に配置されノッチチェーン4の歯飛びを防止するチェーンガード10とノッチチェーン4との間隙距離H4に対して、h1≦H4を満たす値に設定されている。
フライト板4と押え部材8との離隔距離h1がチェーンガード10とノッチチェーン4との間隙距離H4以下に設定されていると、ノッチチェーン4及びフライト板8に大きな流体圧力が作用した場合でも、駆動軸スプロケットS1とその外周部に配置されたチェーンガード10との間隙にノッチチェーン4が進入する際にノッチチェーン4がチェーンガード10と接触して破損するような不都合な事態の発生が回避される。
そして、フライト板5と押え部材8との離隔距離h1が、チェーンガード10とノッチチェーン4に取り付けるフライト板5のアタッチメント50との間隙距離H5に対して、H5≦h1を満たす値に設定されていることが好ましい。
フライト板4と押え部材8との離隔距離h1が、シーブホイールS2の鍔部61の最大高さH1、ノッチチェーン4に形成されノッチ溝の深さH3、及び、チェーンガード10とノッチチェーン4との間隙距離H4に対して、h1≦H4≦H3≦H1を満たす値に設定されていることが好ましい。さらに、チェーンガード10とフライト板5のアタッチメント50との間隙距離H5に対して、H5≦h1≦H4≦H3≦H1を満たす値に設定されていることが好ましい。
本実施形態では、正面視でリンクプレート41の左右長さが約200mm、上下長さが約70mm、環状部42,43の外径が約50mm、内径が約30mm、最大奥行環状部43,43間の長さが約75mm、ノッチの深さH3が約20mmに設定されている。
そして、シーブホイールS2の鍔部61の最大高さH1が約40mm、駆動軸スプロケットS1の側板30の周部に形成された鍔部30aの最大高さH2が約30mm、チェーンガード10とノッチチェーン4との間隙距離H4が約20mm、チェーンガード10とフライト板5のアタッチメント50との間隙距離H5が約5mmに設定されている。
つまり、本実施形態では、H5(5mm)≦h1(20mm)≦H4(20mm)≦H3(20mm)≦H1(40mm)の関係となる。しかし、各部の具体的な寸法は、H5≦h1≦H4≦H3≦H1を満たす範囲で適宜設定可能である。
つまり、離隔距離h1は大き過ぎればスロッシングによりノッチチェーンが駆動スプロケットや従動シーブホイールから離脱し易くなり、一方、h1が小さすぎると通常の運行時における微小振動でもフライト板と押え部材が接触する可能が生じることから汚泥掻き寄せ装置に影響を与えない離隔距離h1としての最適な範囲が存在することになる。また、離隔距離h1を明確にすることにより、施工性の向上と品質の安定性の確保が期待できる。
この最適な範囲h1の上限としては、チェーンガードが一般的には設けられていない場合に、上部従動軸のシーブホイールの鍔高さH1とすることができ、以下、駆動軸スプロケットの鍔高さH2、次にノッチチェーンのノッチ溝深さH3、駆動軸スプロケットの外周部に設けられたノッチチェーンの歯飛び防止のチェーンガードとノッチチェーンの間隙距離H4と順々に決めることができる。
最適な範囲h1の下限としては上記駆動軸スプロケットの外周部に設けられたノッチチェーンの歯飛び防止のチェーンガードとノッチチェーンに取り付けるフライト板のアタッチメントとの間隙距離H5とすることができ、離隔距離h1を間隙距離H5より小さく設定すれば、汚泥掻き寄せ装置の運行時にスロッシングが発生した場合、アタッチメントがチェーンガードを通過しても押え部材で接触し、フライト板が損傷する可能性が生じる。
図6(a)に示すように、駆動軸スプロケットS1の下流側に隣接配置されたシーブホイールS2の軸心からガイドレール7の終端までの距離を基準に定めた所定距離L以上、シーブホイールS2の軸心から上流側に離隔した遠方領域で、フライト板5と押え部材8との離隔距離h1が、シーブホイールS2の鍔部61の最大高さH1に対して、h1≦H1を満たす値に設定され、シーブホイールS2の軸心から所定距離Lだけ離隔する迄の近傍領域で、フライト板5と押え部材8との離隔距離h2が、離隔距離h1より大きくシーブホイールの鍔部の最大高さH1以下に設定されていることが好ましい。尚、下流側とは、汚泥搬送のために駆動軸スプロケットS1によってノッチチェーン4が送り出される方向をいい、上流側とはその反対方向をいう。
リンクプレート41が互いに連結ピン40で回動可能に連結されたノッチチェーン4がシーブホイールS2に支持されて走行方向が下方に変化する際に、隣接するリンクプレート41同士が摩擦などの影響を受けて連結ピン40周りで滑らかに回動しない状態でシーブホイールS2に接触する場合があり、そのような場合にシーブホイールS2の上流側でノッチチェーン4が径方向に膨らむ場合がある。シーブホイールS2の軸心からガイドレール7の終端までの距離L1を基準に定めた所定距離Lだけ離隔する迄の近傍領域で、そのような現象が生じる可能性がある。
そこで、当該近傍領域でフライト板5と押え部材8との離隔距離h2を、離隔距離h1より大きく且つシーブホイールS2の鍔部61の最大高さH1より僅かに大きな値以下に設定することで、フライト板5と押え部材8との接触を回避することができ、仮にノッチチェーン4が径方向に膨らんだ場合であっても、ノッチチェーン4の安定な走行が確保され、しかも地震により発生するスロッシング現象でノッチチェーン4及びフライト板5に大きな流体圧力が作用した場合でも、ノッチチェーン4が最大高さH1よりも大きくシーブホイールS2から離脱する前に押え部材8と当接するので、ノッチチェーン4がシーブホイールS2から離脱することを未然に回避することができる。
所定距離Lは、シーブホイールS2の軸心からガイドレール7の終端までの距離L1よりも長い値に設定されることが好ましく、シーブホイールS2の外径Dに対して、0.8D≦L≦2.5Dの範囲に設定されることが好ましい。
実験によれば、シーブホイールS2の外径Dが約450mmの場合には360mm≦L≦1125mmの範囲に設定されるのが好ましく、400mm≦L≦1000mmの範囲に設定されるのがより好ましい。また、h1<h2≦H1の範囲に設定する場合、例えば、H1=40mmの場合、H5≦h1≦H3が成立する範囲になり、h1<h2≦40mmとなる。
以下に別実施形態を示す。
上述した実施形態では、従動用支軸の両端部に設けられたホイールとしてシーブホイールを例に説明したが、シーブホイールに代えてスプロケットホイールを用いてもよい。
図4(b),(c)には、断面「L」字状のアングル部材でなる2本の押え部材8が2本のボルトで連結され、段差部が発生しないように面取りされた態様が示されている。
図6(a),(b)に示すように、ガイドシュー5a,5bと、無端チェーン4のフライト板5への取付け部5cとの相対的な位置関係は特に制限されることはない。
押え部材8は、断面「L」字状のアングル部材に限るものではなく、長尺のパイプ部材や平板部材であってもよい。
ている。
る。
上述した実施形態では、支持機構9を介して支持される押え部材8が沈殿池1に設置された汚泥掻き寄せ装置2に組み込まれた例を説明したが、支持機構9を介して支持される押え部材8を、汚泥貯留部1aに掻き寄せられた汚泥を泥貯留部1aの一側に掻き寄せる第2の汚泥掻き寄せ装置20に組み込んでもよいことはいうまでも無い。
図1(b)には、支軸23a,23b,23c間に巻回された一対の無端チェーン24,24に対して、支軸23a,23c間に押え部材28が配置された例が示されている。当該押え部材28及び押え部材28の支持機構も、上述した態様と同様である。尚、無端チェーン24,24は左周りに走行するように駆動される。
上述した実施形態では、固定機構が取付け部材の一方に形成された長孔と、長孔を介して取付け部材を位置決めした後に締付けるボルトとナットで構成された例を説明したが、固定機構の具体的な構造はこのような態様に限定されず、取付け部材双方を位置調整自在に挟みつけて固定するクリップ等、適宜構成することができる。
上述した実施形態は本発明の一態様であり、該記載により本発明が限定されるものではなく、各部の具体的構成や制御態様は本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能であることはいうまでもない。
1:沈殿池
2:汚泥掻き寄せ装置
3a:駆動用支軸
3b,3c,3d:従動用支軸
30a:駆動軸スプロケットの鍔部
32:駆動ピン
4:ノッチチェーン(無端チェーン)
5:フライト板
6,7:ガイドレール
61:シーブホイールの鍔部
8:押え部材
9:支持機構
9A:支持部材
9B:第1取付け部材
9C:第2取付け部材
91:第1固定機構
92:第2固定機構
S1:駆動軸スプロケット
S2,S3,S4:シーブホイール
本発明は、沈殿池に設置されて池底に堆積した汚泥を一方向に向けて掻き寄せる汚泥掻き寄せ装置に関する。
特許文献1には、汚泥掻き寄せ装置の一例が示されている。当該汚泥掻寄せ装置は、駆動用の支軸を含む複数の支軸間に巻回された一対の無端チェーンと、無端チェーンに取り付けられた複数のフライト板と、無端チェーンの走行に伴って移動するフライト板を支持する長尺のガイドレールとを備え、沈殿池の池底に堆積した汚泥をフライト板で掻き寄せるように構成されている。
支軸に備えたスプロケットに巻回された無端チェーンがスプロケットの回転に伴って走行すると無端チェーンに取り付けられたフライト板が沈殿池内で循環移動する。フライト板が沈殿池の池底に設置されたガイドレール上を移動するときに池底に堆積した汚泥が掻き寄せられ、フライト板が沈殿池の水面近傍に設置されたガイドレール上を移動するときに水面に浮遊したスカムが掻き寄せられる。
また、特許文献2には、汚泥掻寄せ装置の耐腐食性を確保するとともに耐摩耗性の向上を図るために、樹脂製のノッチチェーンを用いて無端チェーンを構成した、汚泥掻寄せ装置が提案されている。
特開平10−57713号公報
特開2009−241023号公報
ところで、沈殿池が設置された地域で大きな地震が発生すると、地震による長周期振動によって沈殿池の水が大きく波立つスロッシング現象が現れて、その影響によって支軸のスプロケットから無端チェーンが離脱する等、汚泥掻き寄せ装置が破損する虞があった。
そこで、新設の沈殿池のみならず既設の沈殿池に設置された汚泥掻き寄せ装置に対しても、スロッシング現象等に起因するスプロケットからの無端チェーンの離脱を防止するために、フライト板を挟んでガイドレールと対向する側に、フライト板の浮きを阻止する長尺の押え部材をガイドレールの延出方向に沿って配置することが考えられている。
この場合、フライト板と押え部材との離隔距離が長い場合には無端チェーンの離脱を防止することができず、フライト板と押え部材との離隔距離が短い場合にはフライト板と押え部材とが摺動する等の原因により無端チェーンの円滑な走行が妨げられ、汚泥掻き寄せ装置の破損を招く虞があった。
特に無端チェーンとして樹脂製のノッチチェーンを用いた場合には、軽量化が図られているが故にスロッシングの影響を受け易く、単に縦方向に揺れるのみならず横方向にも揺れる場合があり、駆動用スプロケットやシーブホイールの軸心方向にも離脱する虞があった。
本発明の目的は、上述した問題点に鑑み、ノッチチェーンの円滑な走行を確保しながらも、予期せぬノッチチェーンの離脱を防止できるフライト板と押え部材との相対的な位置関係を規定できる汚泥掻き寄せ装置を提供する点にある。
上述の目的を達成するため、本発明による汚泥掻き寄せ装置の第一特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、複数の支軸間に巻回された一対の無端状のノッチチェーンと、前記ノッチチェーンに取り付けられた複数のフライト板と、前記ノッチチェーンの走行に伴って移動する前記フライト板を支持する長尺のガイドレールとを備え、沈殿池の池底に堆積した汚泥を前記フライト板で掻き寄せる汚泥掻き寄せ装置であって、前記フライト板を挟んで前記ガイドレールと対向する側に、前記フライト板の浮きを阻止する押え部材が配置され、前記一対のノッチチェーンは駆動用支軸の両端部に固定された駆動軸スプロケット及び従動用支軸の両端部に設けられたホイールに巻回され、前記フライト板と前記押え部材との離隔距離h1が、前記ホイールの鍔部の最大高さH1に対して、h1≦H1を満たす値に設定されている点にある。
例えば、周面が滑らかでノッチチェーンと歯合することがないシーブホイールでは、スロッシングの影響を受けて横方向にも揺れる場合にノッチチェーンがシーブホイールの軸心方向に滑る虞がある。また、ノッチチェーンと歯合するピンを備えたスプロケットホイールでも、スロッシングの影響を受けて横方向にも揺れる場合にノッチチェーンがスプロケットホイールの軸心方向に滑る虞がある。そのような場合でも、フライト板と押え部材との離隔距離h1が、ホイールの鍔部の最大高さH1に対して、h1≦H1を満たす値に設定されていると、ノッチチェーン及びフライト板に大きな流体圧力が作用した場合でも、ノッチチェーンが最大高さH1以上にホイールから離脱する前に押え部材と当接するので、ノッチチェーンがホイールから軸心方向に滑ってホイールの鍔部を乗り越えて離脱するようなことが回避されるようになる。また、ノッチチェーンの通常の走行時にフライト板が押え部材に当接することも無いので、円滑な走行が妨げられることがなく当該当接による無端チェーンの破損が発生するようなこともない。
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述した第一の特徴構成に加えて、前記フライト板と前記押え部材との離隔距離h1が、前記駆動軸スプロケットの鍔部の最大高さH2に対して、h1≦H2を満たす値に設定されている点にある。
駆動軸スプロケットに歯合するノッチチェーンが、スロッシングの影響を受けて横方向にも揺れる場合に駆動軸スプロケットの鍔部を乗り越えて駆動軸スプロケットの軸心方向に滑る虞がある。そのような場合でも、フライト板と押え部材との離隔距離h1が、駆動軸スプロケットの鍔部の最大高さH2に対して、h1≦H2を満たす値に設定されていると、ノッチチェーン及びフライト板に大きな流体圧力が作用した場合でも、ノッチチェーンが最大高さH2以上に駆動軸スプロケットから離脱する前に押え部材と当接するので、ノッチチェーンが駆動軸スプロケットから軸心方向に滑って駆動軸スプロケットの鍔部を乗り越えて離脱するようなことが回避されるようになる。また、ノッチチェーンの通常の走行時にフライト板が押え部材に当接することも無いので、円滑な走行が妨げられることがなく当該当接による無端チェーンの破損が発生するようなこともない。
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第一または第二の特徴構成に加えて、前記フライト板と前記押え部材との離隔距離h1が、前記ノッチチェーンに形成され前記駆動軸スプロケットの駆動ピンと歯合するノッチ溝の深さH3に対して、h1≦H3を満たす値に設定されている点にある。
上述した構成によれば、ノッチチェーン及びフライト板に大きな流体圧力が作用した場合でも、ノッチチェーンが最大高さH3以上にスプロケットから離脱する前に押え部材と当接するので、ノッチチェーンに形成されたノッチ溝が駆動軸スプロケットの駆動ピンから離脱して空回りするような不都合な事態の発生が回避される。
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記フライト板と前記押え部材との離隔距離h1が、前記駆動軸スプロケットの外周部に配置され前記ノッチチェーンの歯飛びを防止するチェーンガードと前記ノッチチェーンとの間隙距離H4に対して、h1≦H4を満たす値に設定されている点にある。
フライト板と前記押え部材との離隔距離h1がチェーンガードとノッチチェーンとの間隙距離H4以下に設定されていると、ノッチチェーン及びフライト板に大きな流体圧力が作用した場合でも、駆動軸スプロケットとその外周部に配置されたチェーンガードとの間隙にノッチチェーンが進入する際にノッチチェーンがチェーンガードと接触して破損するような不都合な事態の発生が回避される。また、H4=h1の場合には、歯飛び防止のチェーンガードをスロッシング対策用としても利用できる。
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第一から第四の何れかの特徴構成に加えて、前記フライト板と前記押え部材との離隔距離h1が、前記駆動軸スプロケットの外周部に配置され前記ノッチチェーンの歯飛びを防止するチェーンガードと前記ノッチチェーンに取り付ける前記フライト板のアタッチメントとの間隙距離H5に対して、H5≦h1を満たす値に設定されている点にある。
チェーンガードとフライト板のアタッチメントの間隙距離を小さくすれば脱輪の抑制効果は上がるが、ノッチチェーンの通常走行時にフライト板が押え部材に当接する可能性があり摩耗及び破損の可能性がある。しかし、適正な下限値を設けることによりそのような不都合な事態の発生が回避される。
同第六の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、上述の第一から第五の何れかの特徴構成に加えて、前記駆動軸スプロケットの下流側に隣接配置されたホイールの軸心から前記ガイドレールの終端までの距離を基準に定めた所定距離L以上前記ホイールの軸心から上流側に離隔する迄の近傍領域で、前記フライト板と前記押え部材との離隔距離h2が、前記離隔距離h1より大きな値に設定されている点にある。
リンクプレートが互いに連結ピンで回動可能に連結されたノッチチェーンがホイールに支持されて走行方向が変化する際に、隣接するリンクプレート同士が摩擦などの影響を受けて連結ピン周りで滑らかに回動せずにホイールに接触する場合があり、そのような場合にホイールの上流側でノッチチェーンが径方向に膨らむ場合がある。ホイールの軸心から前記ガイドレールの終端までの距離を基準に定めた所定距離Lだけ離隔する迄の近傍領域で、そのような現象が生じる可能性がある。
当該近傍領域でフライト板と押え部材との離隔距離h2を、離隔距離h1より大きな値に設定することで、フライト板と押え部材との接触を回避することができ、仮にノッチチェーンが径方向に膨らんだ場合であっても、ノッチチェーンの安定な走行が確保される。
同第七の特徴構成は、同請求項7に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、前記フライト板と前記押え部材との離隔距離h1が、前記ノッチチェーンに形成され前記駆動軸スプロケットの駆動ピンと歯合するノッチ溝の深さH3、及び、前記駆動軸スプロケットの外周部に配置され前記ノッチチェーンの歯飛びを防止するチェーンガードと前記ノッチチェーンとの間隙距離H4に対して、h1≦H4≦H3≦H1を満たす値に設定されている点にある。
同第八の特徴構成は、同請求項8に記載した通り、上述の第七の特徴構成に加えて、前記フライト板と前記押え部材との離隔距離h1が、前記駆動軸スプロケットの外周部に配置され前記ノッチチェーンの歯飛びを防止するチェーンガードと前記ノッチチェーンに取り付ける前記フライト板のアタッチメントとの間隙距離H5に対して、H5≦h1≦H4≦H3≦H1を満たす値に設定されている点にある。
以上説明した通り、本発明によれば、ノッチチェーンの円滑な走行を確保しながらも、予期せぬノッチチェーンの離脱を防止できるフライト板と押え部材との相対的な位置関係を規定できる汚泥掻き寄せ装置を提供することができるようになった。
(a)は沈殿池に設置された本発明による汚泥掻き寄せ装置の縦断面図、(b)は平行に配置された各沈殿池で(a)に示した各汚泥掻き寄せ装置で掻き寄せられた汚泥をさらに一方向に掻き寄せる汚泥掻き寄せ装置の断面図
本発明による汚泥掻き寄せ装置の説明図
汚泥掻き寄せ装置のフライト板の一端部の要部説明図
(a)から(d)は本発明による支持機構の説明図
(a)はノッチチェーンの一部平面図、(b)は同正面図、(c)は駆動軸スプロケットとノッチチェーンの歯合状態の側面図説明図、(d)は駆動軸スプロケットとノッチチェーンの歯合状態の平面視説明図
(a)はフライト板と押え部材との離隔距離の説明図、(b)はノッチチェーンへのフライト板の取付部の要部説明図
(a)はフライト板と押え部材との離隔距離に対するノッチチェーンの駆動機構のクリアランスの説明図、(b)は(a)のA−A線断面の概略の説明図、(c)はフライト板と押え部材との離隔距離に対するシーブホイールの鍔部との関係を示す説明図
以下、本発明による汚泥掻き寄せ装置を図面に基づいて説明する。
図1(a)及び図2に示すように、汚泥掻き寄せ装置2は、例えば下水処理場の最初沈殿池や最終沈殿池等の沈殿池1に設置され、複数の支軸3a,3b,3c,3d間に巻回された一対の無端チェーン4,4と、無端チェーン4,4に取り付けられた複数のフライト板5と、無端チェーン4,4の走行に伴って移動するフライト板5を支持する長尺のガイドレール6,7とを備えている。
四本の支軸は、沈殿池1の上層に配置された支軸3a,3bと、下層に配置された支軸3c,3dで構成されている。詳述すると、駆動モータMと駆動チェーンCで連結された駆動用支軸3aと、駆動用支軸3aと同じ高さに配置されたアイドラ用支軸3bと、テークアップ用支軸3cと、水中支軸3dで構成され、それぞれ両端に配置された軸受によって回転自在に支承されている。
駆動用支軸3aの両端側に駆動軸スプロケットS1が支軸3aと一体回転するようにキーを介して取り付けられ、従動用支軸3b,3c,3dの両端側にそれぞれシーブホイールS2,S3,S4が各支軸3b,3c,3dと一体回転するようにキーを介して取り付けられ、駆動軸スプロケットS1及びシーブホイールS2,S3,S4に上述した一対の無端チェーン4,4が巻回されている。尚、駆動用支軸3aにはさらに上述した駆動チェーンCを巻回するための駆動用スプロケットSdが設けられている。
無端チェーン4,4には所定間隔でフライト板5が取り付けられている。駆動用支軸3aが回転すると無端チェーン4,4が各支軸3a,3b,3c,3d周りに循環するように走行して、無端チェーン4,4に取り付けられたフライト板5が沈殿池1の内部を循環移動する。
フライト板5が池底に敷設されたガイドレール6,6に支持されて沈殿池1の池底側を走行する時に、池底側に堆積した汚泥がフライト板5によって汚泥貯留部1aに掻き寄せられ、フライト板5が上層に設置されたガイドレール7,7に支持されて水面側を走行する時には水面に浮遊するスカムがスカムスキマ1bに掻き寄せられる。
スカムスキマ1bは、フライト板5で掻き寄せられたスカムをトラフ内に流入させる溢流堰を備えて構成され、フライト板5の走行に伴って溢流堰が押し下げられて、水面に浮遊しているスカムが水と共にトラフ内に流入するように構成されている。
尚、支軸3b,3c,3dは従動軸であり、テークアップ用支軸3cはフライト板5の走行方向に沿って前後に位置調整可能に配置され、無端チェーン4,4の張力を調節できるよう構成されている。
沈殿池1の上層で支軸3a,3b間に設置されたガイドレール7,7は、無端チェーン4,4の延出方向に沿って配置され、沈殿池1の側壁1cに所定間隔でアンカーを介して固定された耐食性の鋼材で構成される複数のレール支持部材70の上部に固定支持されている(図3参照)。
図1(a),(b)に示すように、このような沈殿池1が複数並列に設置され、各汚泥掻き寄せ装置2で汚泥貯留部1aに掻き寄せられた汚泥が、第2の汚泥掻き寄せ装置20で汚泥貯留部1aの一側に掻き寄せられて、ポンプPによって槽外に排泥される。
上述の汚泥掻き寄せ装置2と同様に、第2の汚泥掻き寄せ装置20も、支軸23a,23b,23c間に巻回された一対の無端チェーン24,24と、無端チェーン24,24に取り付けられた複数のフライト板25と、無端チェーン24,24の走行に伴って移動するフライト板25を支持する長尺のガイドレール27とを備えている。
何れの無端チェーン4,24も軽量化及び耐腐食性の確保のために樹脂材料を用いて成型されたノッチチェーンで構成されている。
図5(a),(b)には、ノッチチェーン4の一部が例示されている。ノッチチェーン4は、複数のリンクプレート41が連結ピン40で回動可能に連結されて無端状のチェーンに構成されている。
各リンクプレート41は、基端側に形成された幅狭の単一の環状部42と、先端側に形成されたフォーク状に二つ割れした幅広の一対の環状部43,43が、リンク部材44で一体に連結されるように一体形成されている。
一方のリンクプレート41の環状部42を他方のリンクプレート41の環状部43,43で挟んだ状態で、各環状部の軸心が一致するように連結ピン40が嵌め込まれて回動自在に連結されている。
正面視でリンク部材44の下縁である腹部のうち環状部42の近傍に駆動軸スプロケットS1の駆動ピンと係合するノッチ45が形成され、環状部43,43側にはシーブホイールS2,S3,S4の周面に沿う緩やかな曲面が形成されている。また、リンク部材44の背面にはフライト板25の取付座46が設けられている。
図5(c),(d)に示すように、駆動軸スプロケットS1は左右一対の円盤状の側板30,30が一体回転可能に支持環31で連結され、複数本の駆動ピン32が側板30,30の周部に支持環31と平行姿勢となるように配設されている。支持環31が支軸3a(図2参照)に嵌入固定されることにより、駆動軸スプロケットS1は支軸3aと一体回転する。
駆動軸スプロケットS1に巻回されたノッチチェーン4のノッチ45が駆動ピン32と噛み合うことにより、駆動軸スプロケットS1の回転方向にノッチチェーン4が送られて走行するようになる。
駆動軸スプロケットS1の外周部には、ノッチチェーン4が接近してノッチ45が駆動ピン32と噛み合う領域で、ノッチ45が駆動ピン32へ噛み合わない歯飛び現象を防止するチェーンガード10が設けられている。
チェーンガード10の駆動軸スプロケットS1への対向面は、駆動軸スプロケットS1と同軸の弧状曲面に形成され、ノッチチェーン4の背面とチェーンガード10の弧状曲面との最小間隔が歯飛び現象を防止可能な間隔に設定されている。尚、チェーンガード10は図示しない取付け金具によって左右の側壁に支持固定されている。
図6(b)に示すように、長尺のフライト板5の両端部には、ノッチチェーン4の取付座46にフライト板5を固定するアタッチメント50が設けられている。アタッチメント50にノッチチェーン4の背面を載せて、一対の取付孔51にボルトBを挿通してナットNで締付固定される。
ノッチチェーン4を挟んでアタッチメント50の上面及び下面にガイドシュー5a,5bが取り付けられている。フライト板5が上層に設置されたガイドレール7,7に支持されて走行する際にガイドシュー5aがガイドレール7,7上を摺動するとともにガイドシュー5bが後述の押え部材と対向し、フライト板5が池底に敷設されたガイドレール6,6に支持されて走行する際にガイドシュー5bがガイドレール6,6上を摺動するように構成されている。
図7(c)に示すように、シーブホイールS2,S3,S4は、滑らかな周面を備えた筒状体60の両側面に鍔部61が形成されて構成され、筒状体60の周部にノッチチェーン4を構成する各リンク部材44の腹部が当接してノッチチェーン4の走行軌道を支持するように構成されている。
ガイドレールの材料として樹脂やステンレス鋼等の耐食性の金属が好適に用いられ、フライト板の材料として木材や樹脂や耐食性の金属が好適に用いられる。
沈殿池1が設置された地域で大きな地震が発生すると、地震による長周期振動によって沈殿池1の水が大きく波立つスロッシング現象が現れて、その影響によって汚泥掻き寄せ装置2,20の各支軸に備えた駆動軸スプロケットやシーブホイールから無端チェーンが離脱して破損する虞がある。
そのため、図1から図4に示すように、フライト板5を挟んでガイドレール7と対向する側に、フライト板5の浮きを阻止する断面「L」字状のアングル部材でなる長尺の押え部材8が、支持機構9を介してガイドレール7の延出方向に沿って配置されている。尚、押え部材8は長尺でなくてもよく、その場合には定尺の押え部材8を連接すればよい。また、定尺の押え部材8を、部分的に距離を隔てて所々に配設してもよい。以下、詳述する。
図3及び図4(a)から図4(d)に示すように、支持機構9は、押え部材8の延出方向に沿って所定間隔で配置された複数の支持部材9Aと、押え部材8が支持部材9Aに支持されるように、押え部材8を支持部材9Aに位置決め固定する第1取付け部材9B及び第2取付け部材9Cを備えて構成されている。図3中、符号4はノッチ式無端チェーンを示し、符号5cはノッチ式無端チェーン4のフライト板5への取付け部を示している。
支持部材9Aは、沈殿池1の壁面(側壁)1cに所定間隔でアンカーを介して固定される耐食性の鋼材で構成され、押え部材8側に突出するように配置されている。支持部材9Aは、側壁1cに直接固定された態様に限らず、間接的に固定された態様を採用してもよい。例えば、上述したレール支持部材70にボルト固定または溶着固定してもよい。
第1取付け部材9Bは、押え部材8側への取付け位置を調整可能な第1固定機構91を介して支持部材9Aに取り付けられ、第2取付け部材9Cは、第2固定機構92を介して押え部材8を第1取付け部材9Bに固定する。第2固定機構92は、フライト板5と押え部材8との離隔距離h1及び押え部材8の延出方向に対する第1取付け部材9Bの支持位置を調整可能に構成されている。
詳述すると、第1取付け部材9Bは、断面視「T」字状の板状鋼材で構成され、上辺となる矩形の板状鋼材の長手方向、つまり平面視でガイドレールの延出方向に対して垂直方向に延びる板状鋼材に沿って2箇所に長孔91hが形成されている。支持部材9Aに形成された取付け孔と長孔91hとにボルト91aを挿通してナット91bで締付け固定される。つまり、長孔91hとボルト91aとナット91bで第1固定機構91が構成されている。
第2取付け部材9Cは、折り曲げ加工された板状の鋼材で構成され、断面視「L」字状の押え部材8の一側端に係合する係合部92aと、係合部92aと第1取付け部材9Bとの間に押え部材8を挟みつけた状態で、フライト板5と押え部材8との離隔距離h1を調整可能に第1取付け部9Bに締め付ける固定部92bとを備えている。フライト板5と押え部材8との離隔距離h1とはフライト板5に備えたガイドシュー5bの表面から押え部材8の先端までの距離である。
さらに、係合部92aと第1取付け部材9Bとの間に押え部材8を挟みつけた状態で、第2取付け部材9Cと押え部材8とが相対移動可能に構成され、第2取付け部材9Cを第1取付け部9Bに締付固定或いは仮固定した状態で第2取付け部材9Cに対して押え部材8を押え部材8の延出方向にスライド移動させることができ、また押え部材8に対して第2取付け部材9Cを押え部材8の延出方向にスライド移動させることで第2取付け部材9Cを第1取付け部9Bに位置合わせすることができるようになる。
第1取付け部材9Bのうち、固定部92bが取り付けられる下垂部には上下方向に沿う長孔92hが形成され、第1取付け部材9Bに形成された長孔92hと固定部92bに形成された取付け孔にボルト92cを挿通してナット92dで締付け固定される。つまり、長孔92hとボルト92aとナット92bで第2固定機構92が構成されている。尚、図4(d)には一つの長孔92hが形成された例を示しているが、実際には幅方向に二つの長孔92hが形成されている。
上述した構成によれば、重量のある押え部材を精度良く支持するための支持機構を設置するのは非常に困難な作業を伴い、特に既設の沈殿池で池の側壁が腐食している場合等には、側壁の大掛かりな修復作業を伴うばかりか、そのような側面に支持機構を精度良く固定するのは非常に困難を伴う作業が要求されるという課題、フライト板と押え部材との離隔距離やフライト板に対する押え部材の対向位置を精度良く調整する必要があるという課題に十分に対応できるようになる。
即ち、押え部材8に向けて突出するように支持部材9Aを沈殿池1の壁部に直接または間接的に固定した後に、フライト板5に対する押え部材8の対向位置が所定位置になるように第1固定機構91を介して調整しながら第1取付け部材9Bを支持部材9Aに固定し、さらに、フライト板5と押え部材8との離隔距離h1が所定距離になるように、そして押え部材8の延出方向に第2取付け部材9Cをスライド移動して第1取付け部材9Bに対する支持位置を合わせるように第2固定機構92を介して調整しながら第2取付け部材9Cを第1取付け部材9Bに固定すれば、支持部材9Aそのものの取付け精度が多少悪くても押え部材8を所望の位置に精度良く固定して支持することができるようになる。
長孔91h、92hを介して締付け対象となる両部材の相対位置を容易に調整できるように、予め上述の固定機構91,92が準備された取付け部材9B,9Cを用いるため、支持部材9Aの取付け精度が多少低下する場合でも、精度良く位置決め調整した後に、直ちにボルトとナットで締付け固定でき、現場で柔軟に対応することができる。
また、押え部材8が長尺で重量のあるアングル部材で構成されていても、第2取付け部材9Cの係合部92aを押え部材8の一側端に係合させて第1取付け部9Bとの間で押え部材8を挟みつけ、第2固定機構92を介して離隔距離h1が所定距離となるように調整した固定部92bを第1取付け部材9Bに締め付けることで、容易に位置調整しながら押え部材8を支持できるので、現場で押え部材8に固定用の孔加工等を施す等の必要が無く、極めて容易に施工できるようになる。
フライト板5のアタッチメント50の上面に備えたガイドシュー5bに対向する所定位置に押え部材8が支持機構9によって位置決めされている。ガイドシューはフライト板5よりも強度がある材料、例えば鋳物や硬質樹脂で構成されている。
フライト板5の上下両面に取り付けられたガイドシュー5a,5bのうち、ガイドレール7上を摺動するガイドシュー5aとは反対側のガイドシュー5bに対向する位置に押え部材8が位置決めされるので、仮に地震によるスロッシング現象が現れてフライト板5が上方に移動しても、ある程度の強度を備えたガイドシュー5bが押え部材と当接するため、ガイドシューと比較して強度が弱いフライト板5が破損するような事態の発生を未然に回避することができる。また、ガイドシューが破損した場合には交換もできる。
スロッシング現象が発生すると沈殿池の上層側の水ほど大きなうねりとなって、無端チェーン4,4及びフライト板5に大きな流体圧力が作用するため、下層に配置された支軸よりも上層に配置された支軸から無端チェーンが離脱し易くなる。
そのため、上述したように、少なくとも上層に配置された支軸3a,3bに巻回された無端チェーン4,4に対して押え部材8が配置されていると、効果的に支軸から無端チェーン4の離脱を防止することができるようになる。
尚、押え部材8の設置位置は、上層に配置された支軸3a,3bに巻回された無端チェーン4,4に対応する位置に限らず、下層に配置された支軸3c,3dに巻回された無端チェーン4,4に対応する位置に配置されていてもよい。
図6(a)及び図7(a),(b)に示すように、フライト板5と押え部材8との離隔距離h1は、シーブホイールS2の鍔部61の最大高さH1に対して、h1≦H1を満たす値に設定されている。既に説明したが、フライト板5と押え部材8との離隔距離h1とはフライト板5に備えたガイドシュー5bの表面から押え部材8の先端までの距離である。
周面が滑らかでノッチチェーン4と歯合することがないシーブホイールS2では、スロッシングの影響を受けて横方向にも揺れる場合にノッチチェーン4がシーブホイールS2の軸心方向に滑る虞がある。そのような場合でも、フライト板5と押え部材8との離隔距離h1が、シーブホイールS2の鍔部61の最大高さH1に対して、h1≦H1を満たす値に設定されていると、ノッチチェーン4及びフライト板5に大きな流体圧力が作用した場合でも、ノッチチェーン4が最大高さH1以上にシーブホイールS2から離脱する前に押え部材5と当接するので、ノッチチェーン4がシーブホイールS2から軸心方向に滑ってシーブホイールS2の鍔部61を乗り越えて離脱するようなことが回避されるようになる。
また、ノッチチェーン4の通常の走行時にフライト板5が押え部材8に当接することも無いので、円滑な走行が妨げられることがなく当該当接による無端チェーンの破損が発生するようなこともない。
また、フライト板5と押え部材8との離隔距離h1が、駆動軸スプロケットS1の側板30の周部に形成された鍔部30aの最大高さH2に対して、h1≦H2を満たす値に設定されている。鍔部30aの最大高さH2とは側板30の中心から駆動ピン32の最外周部と側板30の最外周部との最大距離をいう。鍔部30aは側板30と一体に形成されていてもよいし、側板30と別体で形成されていてもよい。
駆動軸スプロケットS1に歯合するノッチチェーン4が、スロッシングの影響を受けて横方向にも揺れる場合に駆動軸スプロケットS1の鍔部30aを乗り越えて駆動軸スプロケットS1の軸心方向に滑る虞がある。そのような場合でも、フライト板5と押え部材8との離隔距離h1が、駆動軸スプロケットS1の鍔部30aの最大高さH2に対して、h1≦H2を満たす値に設定されていると、ノッチチェーン4及びフライト板5に大きな流体圧力が作用した場合でも、ノッチチェーン4が最大高さH2以上に駆動軸スプロケットS1から離脱する前に押え部材と当接するので、ノッチチェーン4が駆動軸スプロケットS1から軸心方向に滑って駆動軸スプロケットS1の鍔部30aを乗り越えて離脱するようなことが回避されるようになる。
また、フライト板5と押え部材8との離隔距離h1が、ノッチチェーン4に形成され駆動軸スプロケットS1の駆動ピン32と歯合するノッチ溝45の深さH3に対して、h1≦H3を満たす値に設定されている。
上述した構成によれば、ノッチチェーン4及びフライト板5に大きな流体圧力が作用した場合でも、ノッチチェーン4が最大高さH3以上に駆動軸スプロケットS1から離脱する前に押え部材8と当接するので、ノッチチェーン4に形成されたノッチ溝45が駆動軸スプロケットS1の駆動ピン32から離脱して空回りするような不都合な事態の発生が回避される。
さらに、フライト板5と押え部材8との離隔距離h1が、駆動軸スプロケットS1の外周部に配置されノッチチェーン4の歯飛びを防止するチェーンガード10とノッチチェーン4との間隙距離H4に対して、h1≦H4を満たす値に設定されている。
フライト板4と押え部材8との離隔距離h1がチェーンガード10とノッチチェーン4との間隙距離H4以下に設定されていると、ノッチチェーン4及びフライト板8に大きな流体圧力が作用した場合でも、駆動軸スプロケットS1とその外周部に配置されたチェーンガード10との間隙にノッチチェーン4が進入する際にノッチチェーン4がチェーンガード10と接触して破損するような不都合な事態の発生が回避される。
そして、フライト板5と押え部材8との離隔距離h1が、チェーンガード10とノッチチェーン4に取り付けるフライト板5のアタッチメント50との間隙距離H5に対して、H5≦h1を満たす値に設定されていることが好ましい。
フライト板4と押え部材8との離隔距離h1が、シーブホイールS2の鍔部61の最大高さH1、ノッチチェーン4に形成されノッチ溝の深さH3、及び、チェーンガード10とノッチチェーン4との間隙距離H4に対して、h1≦H4≦H3≦H1を満たす値に設定されていることが好ましい。さらに、チェーンガード10とフライト板5のアタッチメント50との間隙距離H5に対して、H5≦h1≦H4≦H3≦H1を満たす値に設定されていることが好ましい。
本実施形態では、正面視でリンクプレート41の左右長さが約200mm、上下長さが約70mm、環状部42,43の外径が約50mm、内径が約30mm、最大奥行環状部43,43間の長さが約75mm、ノッチの深さH3が約20mmに設定されている。
そして、シーブホイールS2の鍔部61の最大高さH1が約40mm、駆動軸スプロケットS1の側板30の周部に形成された鍔部30aの最大高さH2が約30mm、チェーンガード10とノッチチェーン4との間隙距離H4が約20mm、チェーンガード10とフライト板5のアタッチメント50との間隙距離H5が約5mmに設定されている。
つまり、本実施形態では、H5(5mm)≦h1(20mm)≦H4(20mm)≦H3(20mm)≦H1(40mm)の関係となる。しかし、各部の具体的な寸法は、H5≦h1≦H4≦H3≦H1を満たす範囲で適宜設定可能である。
つまり、離隔距離h1は大き過ぎればスロッシングによりノッチチェーンが駆動スプロケットや従動シーブホイールから離脱し易くなり、一方、h1が小さすぎると通常の運行時における微小振動でもフライト板と押え部材が接触する可能が生じることから汚泥掻き寄せ装置に影響を与えない離隔距離h1としての最適な範囲が存在することになる。また、離隔距離h1を明確にすることにより、施工性の向上と品質の安定性の確保が期待できる。
この最適な範囲h1の上限としては、チェーンガードが一般的には設けられていない場合に、上部従動軸のシーブホイールの鍔高さH1とすることができ、以下、駆動軸スプロケットの鍔高さH2、次にノッチチェーンのノッチ溝深さH3、駆動軸スプロケットの外周部に設けられたノッチチェーンの歯飛び防止のチェーンガードとノッチチェーンの間隙距離H4と順々に決めることができる。
最適な範囲h1の下限としては上記駆動軸スプロケットの外周部に設けられたノッチチェーンの歯飛び防止のチェーンガードとノッチチェーンに取り付けるフライト板のアタッチメントとの間隙距離H5とすることができ、離隔距離h1を間隙距離H5より小さく設定すれば、汚泥掻き寄せ装置の運行時にスロッシングが発生した場合、アタッチメントがチェーンガードを通過しても押え部材で接触し、フライト板が損傷する可能性が生じる。
図6(a)に示すように、駆動軸スプロケットS1の下流側に隣接配置されたシーブホイールS2の軸心からガイドレール7の終端までの距離を基準に定めた所定距離L以上、シーブホイールS2の軸心から上流側に離隔した遠方領域で、フライト板5と押え部材8との離隔距離h1が、シーブホイールS2の鍔部61の最大高さH1に対して、h1≦H1を満たす値に設定され、シーブホイールS2の軸心から所定距離Lだけ離隔する迄の近傍領域で、フライト板5と押え部材8との離隔距離h2が、離隔距離h1より大きくシーブホイールの鍔部の最大高さH1以下に設定されていることが好ましい。尚、下流側とは、汚泥搬送のために駆動軸スプロケットS1によってノッチチェーン4が送り出される方向をいい、上流側とはその反対方向をいう。
リンクプレート41が互いに連結ピン40で回動可能に連結されたノッチチェーン4がシーブホイールS2に支持されて走行方向が下方に変化する際に、隣接するリンクプレート41同士が摩擦などの影響を受けて連結ピン40周りで滑らかに回動しない状態でシーブホイールS2に接触する場合があり、そのような場合にシーブホイールS2の上流側でノッチチェーン4が径方向に膨らむ場合がある。シーブホイールS2の軸心からガイドレール7の終端までの距離L1を基準に定めた所定距離Lだけ離隔する迄の近傍領域で、そのような現象が生じる可能性がある。
そこで、当該近傍領域でフライト板5と押え部材8との離隔距離h2を、離隔距離h1より大きく且つシーブホイールS2の鍔部61の最大高さH1より僅かに大きな値以下に設定することで、フライト板5と押え部材8との接触を回避することができ、仮にノッチチェーン4が径方向に膨らんだ場合であっても、ノッチチェーン4の安定な走行が確保され、しかも地震により発生するスロッシング現象でノッチチェーン4及びフライト板5に大きな流体圧力が作用した場合でも、ノッチチェーン4が最大高さH1よりも大きくシーブホイールS2から離脱する前に押え部材8と当接するので、ノッチチェーン4がシーブホイールS2から離脱することを未然に回避することができる。
所定距離Lは、シーブホイールS2の軸心からガイドレール7の終端までの距離L1よりも長い値に設定されることが好ましく、シーブホイールS2の外径Dに対して、0.8D≦L≦2.5Dの範囲に設定されることが好ましい。
実験によれば、シーブホイールS2の外径Dが約450mmの場合には360mm≦L≦1125mmの範囲に設定されるのが好ましく、400mm≦L≦1000mmの範囲に設定されるのがより好ましい。また、h1<h2≦H1の範囲に設定する場合、例えば、H1=40mmの場合、H5≦h1≦H3が成立する範囲になり、h1<h2≦40mmとなる。
以下に別実施形態を示す。
上述した実施形態では、従動用支軸の両端部に設けられたホイールとしてシーブホイールを例に説明したが、シーブホイールに代えてスプロケットホイールを用いてもよい。
図4(b),(c)には、断面「L」字状のアングル部材でなる2本の押え部材8が2本のボルトで連結され、段差部が発生しないように面取りされた態様が示されている。
図6(a),(b)に示すように、ガイドシュー5a,5bと、無端チェーン4のフライト板5への取付け部5cとの相対的な位置関係は特に制限されることはない。
押え部材8は、断面「L」字状のアングル部材に限るものではなく、長尺のパイプ部材や平板部材であってもよい。
ている。
る。
上述した実施形態では、支持機構9を介して支持される押え部材8が沈殿池1に設置された汚泥掻き寄せ装置2に組み込まれた例を説明したが、支持機構9を介して支持される押え部材8を、汚泥貯留部1aに掻き寄せられた汚泥を泥貯留部1aの一側に掻き寄せる第2の汚泥掻き寄せ装置20に組み込んでもよいことはいうまでも無い。
図1(b)には、支軸23a,23b,23c間に巻回された一対の無端チェーン24,24に対して、支軸23a,23c間に押え部材28が配置された例が示されている。当該押え部材28及び押え部材28の支持機構も、上述した態様と同様である。尚、無端チェーン24,24は左周りに走行するように駆動される。
上述した実施形態では、固定機構が取付け部材の一方に形成された長孔と、長孔を介して取付け部材を位置決めした後に締付けるボルトとナットで構成された例を説明したが、固定機構の具体的な構造はこのような態様に限定されず、取付け部材双方を位置調整自在に挟みつけて固定するクリップ等、適宜構成することができる。
上述した実施形態は本発明の一態様であり、該記載により本発明が限定されるものではなく、各部の具体的構成や制御態様は本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能であることはいうまでもない。
1:沈殿池
2:汚泥掻き寄せ装置
3a:駆動用支軸
3b,3c,3d:従動用支軸
30a:駆動軸スプロケットの鍔部
32:駆動ピン
4:ノッチチェーン(無端チェーン)
5:フライト板
6,7:ガイドレール
61:シーブホイールの鍔部
8:押え部材
9:支持機構
9A:支持部材
9B:第1取付け部材
9C:第2取付け部材
91:第1固定機構
92:第2固定機構
S1:駆動軸スプロケット
S2,S3,S4:シーブホイール