JP2018100007A - 踏切における列車検出装置 - Google Patents

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隆喜 江頭
吉永 憲市
Kenichi Yoshinaga
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Abstract

【課題】レールめっきのコスト対効果を最適化しつつ騒音などの問題も生じさせない、列車の接近を確実に検出できる踏切における列車検出装置を提供する。【解決手段】列車検出装置は、レール10における踏切の始動点に対応する第1区間に施される第1レールめっきと、踏切での警報開始および動作終了の少なくとも一方を検出する第1検出器を備える。第1レールめっきは、レールで列車の車輪と接触する頭部表面に、所定幅、所定深さおよび所定形状の少なくとも一つの条件で形成された溝31と、溝に所定温度条件および所定時間条件で溶着された、銀を主成分とする金属ろう剤と、を有する。金属ろう剤は、溶着後に自然冷却および所定高さ未満での研磨を受ける。所定高さは、0.2mm以上0.5mm以下である。【選択図】図2

Description

本発明は、踏切での列車の接近や離脱を検出する踏切検出装置であって、踏切における列車検出装置に関する。
線路上には、列車の走るレールが敷設されている。線路においては、道路と交差する場所など、必要な場所に踏切が設けられている。踏切は、列車が通る際の、安全を確保するためのものであるので、踏切に列車が近付いたことが検出されて遮断機等が作動し、列車が離脱したことが検出されて遮断機等が解放される。
このとき、列車の接近が確実に検出できない場合には、当然に遮断機が作動できない。遮断機が作動しないままに列車が踏切を通過することは、安全性から当然に好ましくない。もちろん、列車の離脱を検出して遮断機を開放することも線路上では重要である。しかしながら、列車の近接を検出して遮断機を作動させる(遮断機が、踏切への侵入を防止する状態となる)ことは、交通の安全上、非常に重要である。
このため、踏切において、列車の接近を、確実に検出できる踏切検出装置が重要となっている。
線路を構成するレールを走る列車は、列車の車輪をレールに当てて回転させることで、線路上を走ることができる。車輪は、鉄系金属であり、レールも鉄製金属である。このため、踏切の前後のレール上の所定位置に、車輪が接触したことを検出する検出器を実装し、所定位置に列車の車輪が到達したことを検出する検出装置が使用されている。
列車の車輪とレールとが接触すると、車輪とレールとが電気的に接続される。更に、車輪は、車軸によって両側にそれぞれ一つ設けられる。この結果、2本のレールを、2つの車輪と車軸が結んで、レール、車輪、車軸との間に閉回路が形成される。すなわち、この閉回路の形成により、車輪とレールとが所定位置で短絡する。検出器は、リレーなどを備えており、リレーが短絡を検出する。リレーが短絡を検出すれば、リレーは踏切を制御する制御部に通知する。この通知を受けて、制御部は踏切の遮断などの所定の動作を実行する。このような検出装置によって、踏切での列車の接近を検出し、安全対応を含めた踏切動作が実現される。
ここで、踏切での検出装置は、踏切に列車が接近や離脱する場合に踏切を作動させる始動点に設置される必要がある。
このような踏切での列車の検出を行う検出装置について提案がなされている(例えば、特許文献1参照)。
特開2013−95151号公報
特許文献1は、終止点BDC(又はDDC)での列車検知と拡張点BBDC(又はDDDC)での列車検知とを切替制御部55の制御下の切替回路部56の接続先切替にて一台の終止点用踏切制御子22(又は24)に時分割で行わせるとともに、出力形成部57にて、障検マスク区間を、従来の短かった終止点BDC(又はDDC)の列車検知長の区間だけから、新たな拡張点BBDC(又はDDDC)への列車進入と終止点BDC(又はDDC)からの列車進出とに亘る広い区間に拡張する。同様に単線区間における踏切道の両側に設定した接続先を列車運転方向により選択し、当該列車が踏切道を通過し終わった時点で警報を停止させる踏切保安装置を開示する。
このように、特許文献1は、踏切検出において、始動点と終動点の両方を活用する技術を開示する。
しかしながら、踏切での列車の接近の検出においては、車輪とレールとの電気的な短絡が基点となる。この車輪とレールとが電気的に接続することが不十分である場合には、特許文献1のような踏切保安装置であっても、列車の接近などを検出できない問題がある。
レールは、鉄製金属で形成されているが、屋外に設置されているので風雨を始めとした自然環境や経年劣化により表面に錆が生じやすい。この錆が生じている場合には、車輪とレールとが接触しても、電気的に短絡しにくい。錆が電気伝導を阻害するからである。
特に、数分間隔ごとに次々と列車が走行する線路のレールであれば、車輪によってレール表面が削られて錆が残りにくい。都市部の通勤列車等であれば、このようにレール表面の錆を残しにくい。しかしながら、走行本数が少ない線路であったり、気候の厳しい土地に設置されていたりする線路(例えば海岸線沿いなど)のレールは、錆が生じやすく更には錆が残りやすい。
このようにレール表面に錆が生じている状態では、車輪がレールの所定位置に到達しても車輪とレールとが短絡できなくなってしまう。短絡できなければ、踏切の前後に設けられた列車検出装置は、列車の接近を検出するのが難しくなり、踏切の正確な作動を行うことが難しくなる。
このようなレール表面の錆などによる車輪とレールとの短絡困難に対応するために、レールにレールめっきを施すことが行われる。レールめっきは、レール表面の一部を、レールの延伸方向にそって切削して溝を形成する。この溝に、所定の導電性金属材料を充填する。充填された導電性金属材料は、錆などへの耐久力が高く、導電性を失いにくい。この導電性金属材料が、レール表面に備わることで、車輪とレールとの短絡を確実に生じさせることができる。
レールめっきに使用される導電性金属材料は、銀(や銅)などの素材を使用する。銀(や銅)などの素材から形成されることで、高い導電性を実現しつつ、錆などの劣化にも強くなる。このようなレールめっきにより、踏切の前後の所定位置において、列車の車輪とレールとが確実に導電して短絡する。短絡によって、踏切の検出装置は、列車の接近や離脱を確実に検出できるようになる。
一方で、銀などの素材を用いる導電性金属材料のため、レールめっきはコストが高い。材料コストが高いことに加えて、レールめっきは、敷設されているレールに対して施工する必要があり、施工コストも高くなりやすい。このため、レールの全てにレールめっきを施工することは、現実的ではない。
もちろん、レールの全てとまでではないが、踏切の前後においてきわめて広い範囲にレールめっきが施されれば、列車検出の確実性は上がる。しかしこの場合も、レールめっきの材料コスト、施工コストが高まり、コスト面あるいは施工後のメンテナンスコストの面から現実的ではない。
このため、踏切において踏切を作動および作動解除するために必要となる部位であって、最適な範囲においてレールめっきを施すことが必要である。このレールめっきが施される最適な範囲は、踏切において列車の接近を検出するための検出器の動作を確実に行わせることのできる時間に基づいて考えられる。
すなわち、列車の接近を確実に踏切で検出できるために、コスト対効果を最適にしつつ検出器の動作を確実に行わせる時間に基づく、レールめっきを有する踏切における列車検出装置が、必要である。
一方で、レールめっきは、レールの表面(頂部)に溝が形成されて、この溝にレールめっきを形成する導電性金属材料が充填されて形成される。このとき、形成されたレールめっきの高さが、レール表面より低い(溝の中に凹んでしまっている状態)と、車輪とレールめっきとの接触状態が悪くなる。接触状態が悪くなれば、短絡状態が悪くなり、列車の接近を検出することが難しくなる問題がある。
あるいは、レールめっきの高さがレール表面よりも高すぎる(溝から上方に突出してしまっている状態)と、レールの上を走行する車輪が大きな振動を生じさせて、騒音が大きくなってしまう問題がある。
すなわち、従来技術におけるレールめっきを使用した踏切における列車検出装置では、次のような問題があった。
(問題1)レールめっきのコストを最小化しつつ、確実な検出を行うことができなかった。
(問題2)レールめっきによる車輪との導電状態が不十分となる問題があった。
(問題3)レールめっきの形成状態によって、列車走行時の振動や騒音がひどくなる問題があった。
本発明は、レールめっきのコスト対効果を最適化しつつ騒音などの問題も生じさせない、列車の接近を確実に検出できる踏切における列車検出装置を提供することを目的とする。
上記課題に鑑み、本発明の踏切における列車検出装置は、レールにおける踏切の始動点に対応する第1区間に施される第1レールめっきと、
踏切での警報開始および動作終了の少なくとも一方を検出する第1検出器を備え、
第1レールめっきは、
レールで列車の車輪と接触する頭部表面に、所定幅、所定深さおよび所定形状の少なくとも一つの条件で形成された溝と、
溝に、所定温度条件および所定時間条件で溶着された、銀を主成分とする金属ろう剤と、を、有し、
金属ろう剤は、溶着後に自然冷却および所定高さ未満での研磨を受け、
所定高さは、0.2mm以上0.5mm以下である。
本発明の踏切における列車検出装置は、レールめっきの材料と施工に係るコストを最小限に抑えた上で、踏切において列車の接近や離脱を確実に検出できる。特に、線路が単線であって同じレール上を双方向に列車が走行する場合であっても、列車の接近を確実に検出できる。
すなわち、始動点として踏切の動作と動作終了を行う列車の接近と離脱を、確実に検出できる。このとき、レールめっきに係る材料、施工などのコストを最小限に抑えることができるので、多くの踏切での施工展開も行いやすくなる。結果として、鉄道全体での安全性が高まる。
また、レールめっきの形成が最適であることで、検出もれや騒音などの問題を生じさせることも低減できる。
以上より、乗客や周辺にとっても不快感がなく、安全面でも確実な検出ができる踏切における列車検出装置が実現できる。
踏切の全体構成を示す模式図である。 本発明の実施の形態1におけるレールめっきの施されたレールの斜視図である。 本発明の実施の形態1における列車検出装置全体の模式図である。 本発明の実施の形態1におけるレールと始動点付近を走行する列車との模式図である。 本発明の実施の形態1における第1レールめっきを通過する車輪の模式図である。 本発明の実施の形態1における第1区間の長さを定義する模式図である。 本発明の実施の形態1における第1検出器での不短絡状態の検出を示す説明図である。 本発明の実施の形態1における第1検出器での短絡状態の検出を示す説明図である。 本発明の実施の形態2におけるレールに設けられた溝の断面図である。 本発明の実施の形態2における溝への金属ろう剤の充填を示す説明図である。
本発明の第1の発明に係る踏切における列車検出装置は、レールにおける踏切の始動点に対応する第1区間に施される第1レールめっきと、
踏切での警報開始および動作終了の少なくとも一方を検出する第1検出器を備え、
第1レールめっきは、
レールで列車の車輪と接触する頭部表面に、所定幅、所定深さおよび所定形状の少なくとも一つの条件で形成された溝と、
溝に、所定温度条件および所定時間条件で溶着された、銀を主成分とする金属ろう剤と、を、有し、
金属ろう剤は、溶着後に自然冷却および所定高さ未満での研磨を受け、
所定高さは、0.2mm以上0.5mm以下である。
この構成により、レールにおける導電性が劣化することが低減されると共に、レールめっきを施されたレール上を走行する列車の騒音も軽減できる。
本発明の第2の発明に係る踏切における列車検出装置では、第1の発明に加えて、第1検出器は、第1レールめっきと列車の車輪との導電時間である始動点短絡時間を計測し、
始動点短絡時間は、第1所定値以上であって、
第1所定値は、検出器の動作必要時間に基づき、
第1区間の長さは、始動点短絡時間が第1所定値以上であることに基づく。
この構成により、第1レールめっきの必要量を最小限に抑えることができて、コストを低減できる。
本発明の第3の発明に係る踏切における列車検出装置では、第2の発明に加えて、第1所定値は、200m秒である。
この構成により、第1レールめっきの必要長さを、列車の検出精度に合わせて決定できる。
本発明の第4の発明に係る踏切における列車検出装置では、第3の発明に加えて、第1区間の長さをX、列車の台車の車軸間距をD、列車の速度をVとすると、
(X+D)/V > 200m秒 (数1)
によって、第1区間の長さが定義される。
この構成により、第1レールめっきの必要長さを、列車の検出精度に合わせて決定できる。
本発明の第5の発明に係る踏切における列車検出装置では、第1から第4のいずれかの発明に加えて、始動点は、踏切での警報開始および踏切での動作終了の少なくとも一方を検出する部位である。
この構成により、踏切での動作が、安全を確保することができる。
本発明の第6の発明に係る踏切における列車検出装置では、第1の発明に加えて、所定幅は、6mm以上8mm以下であり、所定深さは、1.0mm以上1.2mm以下である。
この構成により、レール上を走行する列車の騒音を低減しつつも、導電としての反応を確実に行うことができる。
本発明の第7の発明に係る踏切における列車検出装置では、第1の発明に加えて、所定形状は、溝の底部が幅方向全体における曲線により形成される。
この構成により、レールめっき部分の接合強度が高くなる。また、レールそのものへの熱処理での悪影響を抑えることができる。
本発明の第8の発明に係る踏切における列車検出装置では、第7の発明に加えて、曲線は、溝の底面および端部においても形成されている。
この構成により、レールめっきの接合強度が更に強くなる。また作業性も高くなる。
本発明の第9の発明に係る踏切における列車検出装置では、第1の発明に加えて、所定幅は、所定深さの6倍以上8倍以下であって、当該所定幅および所定深さの比率によって、溝の曲線が定義される。
この構成により、列車の車輪との導電性の高いレールめっきを実現できる。
本発明の第10の発明に係る踏切における列車検出装置では、第1から第9のいずれかの発明に加えて、金属ろう剤は、銀、銅および亜鉛を含む銀ろうである。
この構成により、導電性および耐久性が高い。
本発明の第11の発明に係る踏切における列車検出装置では、第10の発明に加えて、銀ろうは、更に貴金属素材を含む。
この構成により、耐久性と導電性の精度が更に高まる。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
(踏切の全体構成)
まず、線路での踏切の全体構成について説明する。図1は、踏切の全体構成を示す模式図である。線路には、レールが敷設されている。このレールと道路などが交差する場所が踏切である。
踏切においては、列車が近付くと、警報が鳴動して遮断機が下がる。列車が遠ざかると、警報の鳴動が終了して遮断機が上がる。列車の近接に合わせて警報が鳴動して遮断機が降りることで、道路から線路内に人や車両が入るのを防止でき、当然に踏切での安全が保たれる。また、列車の離脱に合わせて警報鳴動が終了して遮断機が上がることで、踏切における人や車両の通行が再開でき、交通が維持できる。
ここで、レールにおいては、踏切での警報鳴動を開始し、踏切動作を終了させる部位に、始動点が設けられる。ここでは、踏切の両側のそれぞれに、始動点Bと始動点Dが設けられる。線路が単線である場合には、同じレール上を上り列車と下り列車の両方が走ることになる。
このため、図1において左側から右側に向けての進行方向で走る列車と、右側から左側に向けて走る列車のそれぞれが、同じレールを使用する。
左側から右側に向けての進行方向で走る列車は、始動点Bにおいて列車が検出されて踏切動作が開始される。すなわち、踏切に列車が近接しているとして、警報の鳴動が開始される。この左側から右側に向けての進行方向で走る列車が、始動点Dで検出されると、列車が踏切から離脱しているとして、踏切の動作が終了する。
逆に、右側から左側に向けての進行方向で走る列車は、始動点Dにおいて列車が踏切に近接しているとして検出される。この始動点Dにおける検出により、踏切動作が開始され、警報が鳴動を開始する。更に、踏切を過ぎて走行して、始動点Bで検出されると、列車が踏切から離脱しているとして、踏切の動作が終了する。
また、踏切は、終動点Cを備える。終動点Cは、踏切に近接した列車が、踏切を通過する状態を検出して、警報の鳴動を終了させる。終動点Cは、左方向から右方向に進行する列車であっても、右方向から左方向へ進行する列車であっても、同様に検出する。この検出によって、列車が踏切を通過していることを判断し、警報の鳴動を終了することのきっかけを生成する。警報の鳴動が終了して、その後始動点での遮断機の解除などと合わせて、踏切動作が終了し、交通が再開される。
このように、踏切は、列車の近接を検出して、踏切鳴動開始、遮断機開始などの踏切動作を開始する始動点、列車の離脱を検出して、遮断機の解除などの踏切動作の終了を行う始動点、列車の踏切通過を検出して警報の鳴動を終了させる終動点を備えている。
(全体構造)
実施の形態1における踏切における列車検出装置(以下、必要に応じて「列車検出装置」と略す)1は、レールにおける踏切の始動点B(D)に対応する第1区間2に対応する第1レールめっき3と、踏切での警報開始および動作終了の少なくとも一方を検出する第1検出器4を備える。
第1レールめっき3は、レールで列車の車輪と接触する頭部表面に、所定幅、所定深さおよび所定形状の少なくとも一つの条件で形成された溝と、溝に所定温度条件および所定時間条件で溶着された銅を主成分とする金属ろう材と、を有する。ここで、金属ろう材は、溝に溶着された後で自然冷却および所定高さまでの研磨を受ける。この所定高さは、0.2mm以上0.5mm以下である。
すなわち、列車検出装置1は、第1検出器4とこれが検出の起点とする第1区間2に対応する第1レールめっき3とで、構成される。この第1レールめっき3は、レールでの第1区間2に形成されており、所定形状等の溝に金属ろう材が溶着されて形成される。このとき、金属ろう材は、所定高さ未満までに研磨を受けることで、レールの頭部表面からの突出が少なすぎることも大きすぎることもない。
(レールめっき)
図2は、本発明の実施の形態1におけるレールめっきの施されたレールの斜視図である。レール10の頭頂部に、溝31が形成される。この溝31に、銀や銅などを成分とする金属ろう材が溶接される。この溶接によって、レールめっきが施される。レール10の第1区間2に施されると、第1レールめっき3が形成される。始動点B、Dにおいては、この第1レールめっき3が形成されている。
第1レールめっき3は、上述したように、レールにおいて列車の車輪と接触する頭部表面に形成された溝31に充填溶接された金属ろう材を備える。溝31は、所定幅、所定深さおよび所定形状の少なくとも一つの条件で形成される。金属ろう材は、溶着後に自然冷却および所定高さ未満までの研磨を受ける。この結果、溝31に充填溶着された金属ろう材の突出高さは、頭部表面から0.2mm以上0.5mm以下となる。
(始動点での列車検出)
実施の形態1における列車検出装置1の列車検出について説明する。図3は、本発明の実施の形態1における列車検出装置全体の模式図である。なお、始動点B、始動点Dのそれぞれは、列車の進行方向(左方向から右方向、もしくは右方向から左方向)によって、踏切動作の開始もしくは踏切動作の終了のきっかけを生成する点で相違する。しかしながら、始動点Bおよび始動点Dのそれぞれでの構成は同様であるので、始動点B、始動点Dを同じ始動点として説明する。
列車検出装置1は、始動点B(D)に対応する、レール上の第1区間2に施される第1レールめっき3と、第1検出器4と、を備える。第1レールめっき3は、上述したような構成を有している。
第1レールめっき3は、始動点Bに対応する第1区間2に施される。すなわち、第1レールめっき3は、レール上であって、第1区間2となる部分に設けられる。第1検出器4は、踏切での警報開始および踏切動作終了の少なくとも一つを検出する。列車の進行方向が左側から右側であれば、始動点Bに備わる第1検出器4は、警報開始を検出し、始動点Dに備わる第1検出器4は、踏切動作終了を検出する。
列車の進行方向が逆の場合には、始動点Bに備わる第1検出器4が踏切動作終了を検出し、始動点Dに備わる第1検出器4が、警報開始を検出する。すなわち、始動点B、始動点Dのそれぞれに備わる第1検出器4は、線路が単線であるか複線であるかによって、警報開始のみ、動作終了のみ、両方のどれかを検出する。すなわち、第1検出器4は、警報開始および踏切動作終了の少なくとも一方を検出する。
このように、列車検出装置1は、始動点において警報開始および動作終了の少なくとも一方を確実に検出できる。また、第1区間2のみに第1レールめっき3が施される。このため、レールにおいてレールめっきが施される区間が短くでき、コスト面でのメリットもある。
加えて、第1レールめっき3において、金属ろう材は、レールの頭部表面から0.2mm以上0.5mm以下の突出状態である。このため、突出が小さすぎることも無く大きすぎることもない。このため、第1レールめっき3での金属ろう材と列車との車輪が、接触不良で導通短絡がエラーとなることも少ない。加えて、金属ろう材の突出高さが高すぎることも無いので、レール上を走る列車の車輪との間で発生する振動も抑えられて、騒音が抑えられる。このように、列車検出装置1による振動や騒音の発生も抑えられて、快適な列車運行が実現できる。
図4は、本発明の実施の形態1におけるレールと始動点付近を走行する列車との模式図である。列車20は、レール10を走行する。始動点B(D)においては、第1区間2に対応するレール部分に第1レールめっき3が施されている。
列車20は、本体の下に台車21を備えている。この台車21が、車輪22を備え、この車輪22が、レール10と接触して走行する。台車21は、列車20の本体に前後1台ずつ備わっていることが多い。
第1区間2においては、第1レールめっき3が施されており、車輪22は、その走行位置に応じて第1レールめっき3と接触できる。第1レールめっき3は、既述した通り、導電性を維持している。車輪22も、導電性の素材で形成されている。このため、車輪22と第1レールめっき3とが接触していると、導電状態となる。ある車輪22が第1レールめっき3の端部に接触を開始してから、同じ車輪22が、第1レールめっき3の逆側の端部から抜けるまでの間は、導電状態が維持される。この導電している状態では、列車20とレール10とは短絡した状態である。この短絡している時間が、始動点短絡時間である。
第1検出器4は、車輪22と第1レールめっき3とが接触して導電状態となっていることを検出する。更にいえば、導電時間である始動点短絡時間を計測する。
このため、始動点短絡時間は、第1レールめっき3の長さによって定まる。第1検出器4は、リレー回路などを含んでおり、車輪22と第1レールめっき3との接触による導電状態によって、リレー回路が、動作する。リレー回路が動作を行うことで、第1検出器4は、第1レールめっき3に列車20が進入していることを検出できる。この検出が、始動点B、Dにおける列車20の検出である。
ここで、第1検出器4が含むリレー回路は、その動作を確立するためには、一定の時間を必要とする。この一定の時間は、動作必要時間であり、車輪22と第1レールめっき3との導電時間が、この動作必要時間以上でなければリレー回路(直接的な検知を行うリレー素子や、直接的な検知を担保する制御リレー素子などの単数または複数のリレー素子やこれに必要となる他の素子や回路を含みうる)が動作を確立できない。確立できなければ、第1検出器4は、列車20を、確実に検出できない。
このため、始動点短絡時間は、第1所定値以上であることが好適である。この第1所定値は、第1検出器4の動作必要時間(リレー回路の動作必要時間)に基づく。始動点短絡時間は、第1レールめっき3の長さを一つのパラメータとする。すなわち、第1レールめっき3の長さは、第1検出器4で列車20を確実に検出できる動作必要時間に対応できることが必要である。
このため、第1レールめっき3が施される第1区間2の長さは、始動点短絡時間が、第1所定値以上となることに基づいて定められる。
このように、列車検出装置1は、始動点B,Dに対応する第1区間2に施される第1レールめっき3と、第1レールめっき3と列車20との導電を検出して、踏切での警報開始および動作終了の少なくとも一方を検出する第1検出器4を備える。第1検出器4は、第1レールめっき3と列車20との導電を検出して、警報開始および動作終了の少なくとも一方の検出を確立する検出動作を行う。この検出動作においては、動作必要時間を有している。
第1レールめっき3が施される第1区間2の長さは、この動作必要時間に基づいて定められる。このとき、第1レールめっき3と列車20の車輪22の導電している始動点短絡時間が、第1検出器4の動作必要時間以上である。このため、第1レールめっき3の施される第1区間2の長さは、始動点短絡時間が、第1検出器4の動作必要時間となる長さであればよい。この長さを有することで、第1レールめっき3において車輪22が接触して導電する始動点短絡時間は、第1検出器4での動作が確実に確立する。
この結果、第1検出器4は、列車20の近接に伴う踏切での警報の鳴動開始などの警報開始を確実に行うことができる。あるいは、第1検出器4は、列車20の離脱に伴う踏切での動作終了を確実に行うことができる。
実施の形態1における列車検出装置1は、始動点B,Dにおいて、以上のような構成と機能を有する。この構成によって、第1検出器4は、始動点において列車の接近と離脱を確実に検出できる。上述のように、最適なコストと環境性を実現できる。
(第1区間2の定義)
第1区間2の定義について説明する。
図5は、本発明の実施の形態1における第1レールめっきを通過する車輪の模式図である。図5では、ある列車20に設けられる一つの台車21が、左側から右側に向けて、第1レールめっき3を通過する状況を示している。
ある一つの台車21が、レール10を走行する。このとき、台車21の前側の車輪22Aが、最初に第1レールめっき3に到達する。車輪22Aは、第1レールめっき3の左側の端部に到達して、そのまま第1レールめっき3に進入する。車輪22Aが第1レールめっき3の左側端部に到達すると、第1レールめっき3と列車20とは導電状態となる。すなわち、第1レールめっき3が短絡状態となる。
次いで、台車21が走行するのに合わせて、車輪22Aは、第1レールめっき3から抜け出る。しかし、この状態でも、台車21の後輪である車輪22Bは、まだ第1レールめっき3に乗っている。更に進んで、図5の右側のような状態になると、車輪22Bは、第1レールめっき3の右側端部に乗っている最終状態となる。この図5の左側の状態から右側の状態である、車輪22Aが第1レールめっき3と接触し始めた状態から、車輪22Bが第1レールめっき3と離れる状態までが、始動点短絡時間である。
この始動点短絡時間が、第1検出器4の動作必要時間である第1所定値以上であれば、第1検出器4は、列車20を確実に検出できる。始動点B,Dは、踏切での警報開始および踏切の動作終了の少なくとも一方を検出する部位であるので、第1検出器4は、始動点B,Dでの必要となる動作の基準を生成できる。
(第1所定値)
第1所定値は、一例として200m秒である。200m秒は、第1検出器4の動作必要時間から算出される例である。第1検出器4は、短絡を検出するリレー回路を備えていることが多い。このリレー回路が、短絡を検出してスイッチングするまでに必要となる時間から、200m秒が算出できる。
もちろん、第1検出器4が動作として必要となる動作必要時間に応じて、第1所定値は、200m秒以外の値により定義されてもよい。この200m秒は、第1検出器4が備えるリレーの動作仕様に基づくものであり、このリレーの動作仕様が異なったり、リレー以外の素子が使用されたりする場合などにおいて、200m秒以外が、第1所定値として選択されてもよい。あるいは、他の理由によって、200m秒以外が選択されてもよい。
(第1区間の長さの定義)
第1区間2の長さは、上述の通り、始動点短絡時間が第1所定値以上であることに基づく。このとき、図6に基づき、第1区間2の長さを定義することも可能である。図6は、本発明の実施の形態1における第1区間の長さを定義する模式図である。
第1区間2の長さをX(m)、台車21の車軸間距離をD(m)、列車20の速度をV(km/h)とすると、
(X+D)/V > 200m秒 (数1)
によって、第1区間2の長さが定義される。
数1により、第1区間2の長さは、列車20の速度も考慮して決定されるので、列車20の速度の相違に応じて、第1区間2の長さの長短も確実に設定される。第1区間2を車輪22が通過して接触が維持される始動点短絡時間が、第1所定値以上であればよい。この始動点短絡時間は、列車20の速度Vによって変化しうるので、第1区間2の長さXは、この速度Vを考慮して、数1によって定められることも好適である。
この数1によって第1区間2の長さXが定められることで、列車20の速度Vによって変わりうる始動点短絡時間を考慮して、列車検出装置1は、始動点B,Dにおいて、確実に列車20を検出できる。
(第1検出器の動作)
第1検出器4は、上述の通り、第1レールめっき3と車輪22との接触による始動点での短絡を検出する。もちろん、車輪22が第1レールめっき3と接触していない場合には、第1検出器4は、始動点で短絡していないことを検出する。
図7は、本発明の実施の形態1における第1検出器での不短絡状態の検出を示す説明図である。図7では、始動点にある第1区間2に列車20が進入していない。当然に車輪22が、第1区間2の第1レールめっき3と接触していない。
第1検出器4では、第1レールめっき3と車輪22との接触による始動点短絡により、リレー回路が扛上と落下を切り替える。図7では、始動点での不短絡状態であるので、第1検出器4は、リレー回路4を扛上させた状態とする。扛上によって、警報動作を行わせることが無い。あるいは、踏切動作中での踏切動作の終了を行わせることもない。
図7では、第1レールめっき3の施されている第1区間2に車輪22が無いので、リレー回路は扛上している。扛上していることで、第1検出器4は、始動点としての動作を行わない。なお、図7中の矢印は、レールとリレー回路との間で流れる電流の経路を示している。
図8は、本発明の実施の形態1における第1検出器での短絡状態の検出を示す説明図である。図8は、図7と同じ始動点での第1レールめっき3と第1検出器4が示されている。第1検出器4は、リレー回路を備えている。図8では、車輪22が、第1区間2に進入して、第1レールめっき3と接触している。この接触により、図8の矢印に描かれるような閉回路が形成される。この閉回路によって、レール10同士が短絡する始動点短絡が成立する。この始動点短絡によって、第1検出器4のリレー回路は、リレー駆動電流が遮断されて落下する。
この落下によって、第1検出器4は、列車20を検出し、警報開始および踏切動作終了の少なくとも一方を検出できる。
以上のように、実施の形態1における列車検出装置1は、始動点において、確実に列車20を検出できる。特に、レール10に形成される第1レールめっき3の長さを、第1検出器4による列車の検出に十分であって低コストとなる範囲に収めることができる。結果として、列車検出の精度と低コストとのバランスを取ることができる。
なお、始動点は、踏切での警報開始および踏切での動作終了の少なくとも一方を検出する部位である。
以上のように、実施の形態1における列車検出装置1は、始動点において列車の接近と離脱を確実に検出できる。このとき、第1レールめっき3に必要となるコストを最小化できると共に、検出精度の向上と騒音の低減とを両立できる。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。実施の形態2では、第1レールめっき3に関して説明する。
第1レールめっき3は、レールで列車の車輪と接触する頭部表面に、所定幅、所定深さおよび所定形状の少なくとも一つの条件で形成された溝31と、溝31に所定温度条件および所定時間条件で溶着された銀を主成分とする金属ろう材と、を有する。この金属ろう材は、溶着後に自然冷却および所定高さ未満までの研磨を受け、この所定高さは、0.2mm以上0.5mm以下である。
この金属ろう材が溶着されることで、レール上に車輪と接触できる導電部分が確実に形成された、第1レールめっき3は、列車の車輪と導電するようになる。この導電によって、列車が確実に検出できる。すなわち、レールを走行する列車の車輪との電気的接続(電気的短絡)が確実に生じ、列車の通過や到達が、検出できるようになる。
第1レールめっき3が施されたレールは、図2に示される通りである。
(溝31の形態)
ここで、溝31の所定幅は、6mm以上8mm以下であることが好適である。レールに対する切削負荷が大きくなりすぎず、車輪との導電性の接触として十分な幅であるからである。
また、溝31の所定深さは、1.0mm以上1.2mm以下であることが好適である。この深さであることで、レールに対する切削負荷が大きくなりすぎず、車輪との導電性接触を生じさせる耐久性が十分となるからである。溝31には、金属ろう材が充填・溶着されるので、この溝31に充填された金属ろう材が、レールと車輪との導電性を実現するようになる。
溝31は、所定形状を有することが好ましい。図9は、本発明の実施の形態2におけるレールに設けられた溝の断面図である。レールにおける溝31の形態を断面形状で分かるように示している。図9の通り、溝31は、所定形状を有している。所定形状は、溝31の底部311が幅方向(図9における横方向)における曲線により形成される。すなわち、溝31の底部311は、幅方向に沿って曲線を有している。図9より明らかな通り、溝31の底部311は、角部や直線部を有さずに、その横断面(幅方向の断面)は、曲線だけで構成される。
ここで、角部や直線部を有さないとは、物理的測定での厳密なものを意味するのではなく、一般的な視覚上で角部や直線部を有さないという意味である。製造上のばらつきや精度によって、僅かな角部や直線部が生じていることを除く意図ではない。
この曲線は、溝31の底部311だけでなく端部312にも形成されている。すなわち、溝31の一方の端部312から他方の端部312にかけて(底部311を経由して)、上方向へ膨らむ曲線、下方向に膨らむ曲線、上方向へ膨らむ曲線が、連続して、曲線全体を形成している。このようななだらかな曲線を有することで、溝31の形状が決定される。更に詳述すると、溝31の底部311は、略U字状の曲線を有し、溝31の端部312は、溝31内部からレール10の頭部11表面に繋がるR状の曲線を有している。
この溝31には、金属ろう剤が充填されるので、溝31の形状によって、金属ろう剤の形状も決定される。金属ろう剤は、幅方向全体での曲線に沿って充填されて溶着される。金属ろう剤がこのような構造を有することで、金属ろう剤は、頭部11の表面の幅方向に広がって形成される。特に、端部312が、頭部11表面に広がるような曲線形状を有するので、金属ろう剤がこれに合わせて広がる。頭部11表面の幅方向に金属ろう剤が広がれば、導電性が高まる。
(第1レールめっき3の形成手順)
上述したような大きさや形状を有する溝31によって形成される第1レールめっき3の形成手順について説明する。第1レールめっき3は、次のステップでの手順で形成される。
(ステップ1)レールの頭部表面に、所定幅、所定深さおよび所定形状の少なくとも一つの条件で溝31が形成される。
(ステップ2)溝31に、所定温度条件および所定時間条件の銀を主成分とする金属ろう剤が充填されて溶着される。
(ステップ3)溶着された金属ろう剤が自然冷却される。
(ステップ4)自然冷却された金属ろう剤が、レール頭部の表面より所定高さ未満の突出となる要に、研磨される。
これらの、ステップ1〜ステップ4によって、レール10に第1レールめっき3が形成される。この第1レールめっき3は、レールの強度低下をもたらさずに車輪とレールとの導電性を実現する。この車輪とレールとの導電性の実現によって、第1検出器4での検出ができ、始動点での列車の検出が確実に行われるようになる。
このとき、金属ろう剤が、銀を主成分とすることで、溶着に必要となる加熱温度がオーステナイト変態点未満とできる。この結果、金属ろう剤の溶着作業において、レールにマルテンサイト組織を発生させることが無くなって、レールの強度低下を防止できる。
(ステップ1)
溝31は、上述したように、所定深さ、所定幅、所定形状の少なくとも一つを有する形状で切削や研削されて形成される。
溝31に金属ろう剤を溶融充填する際、当然ながら溝31近傍は加熱される。この際、溝13の底部311及び端部312はバーナーによる加熱を受け、その断面形状に角部(Rが小さい曲線部分を含む。)があると、その部分に熱が滞留し温度が上昇してしまう。このため、溝の断面が一様な温度分布とならず、角部ではオーステナイト変態点温度を越えてしまい、マルテンサイトを生成する懸念が生じる。
溝31の断面形状に角部が存在しないことで、加熱時に溝31の断面を均等な温度分布とすることが可能となり、この結果、金属ろう剤を、オーステナイト変態点温度未満で、溝3全体に均等に、溶融充填することが可能となる。
また、溝31の断面形状に角部が存在しないことで、レール10と金属ろう剤との接合面の特定の部位に、応力が掛かりにくくなるというメリットもある。この結果、溶着された金属ろう剤は、溝31から剥離しにくくなる。レール10には、列車の走行による圧力や負荷が掛かるが、このような圧力や負荷による剥離にも耐えやすくなる。
このように、溝31が端部312、底部311、端部312にかけて、なだらかな曲線状の断面を有することで、オーステナイト変態点温度未満で金属ろう剤の溶着ができ、溶着された金属ろう剤が、高い導電性と高い耐久性を有するようになる。
また、上述の所定幅と所定深さが定義されることで、この所定形状を有するようになる。すなわち、所定形状は、所定幅と所定深さによって、その形成が実現される。溝加工器具は、この所定幅および所定深さを設定として有して溝31を研削もしくは切削することで、溝31の所定形状を実現する。なお、研削であるか、切削であるかは、特に大きな区別ではなく、レール10の頭部11表面に溝31を形成できる工程であれば何でも良い。
溝加工器具は、種々の要素を設定できる。溝31の所定幅および所定深さをパラメータとして設定可能である。溝加工器具は、設定されたパラメータに従い、レール10の頭部11を研削する。ここで、所定幅と所定深さとを、所定関係として設定することで、溝加工器具は、図9に示されるような所定形状を有する溝3を形成できる。
一例として、所定幅と所定深さの比が、6〜8倍(所定幅の数値が、所定深さの数値の6倍から8倍である)である。所定幅が、所定深さの6〜8倍の数値を有することで、溝加工器具は、図9に示すように、端部312と底部311とが全体としてなだらかな曲線で繋がるようになる。
特に、溝31の所定深さは、1.0mm〜1.2mm程度であるので、余り深いものではない。この余り深くない所定深さを基準に、所定幅がこの所定深さの6倍〜8倍であることで、溝31の端部312および底部311は、自然と曲線状となる。溝加工器具は、このような設定を利用することで、端部312から底部311にかけて連続的かつ全体的に繋がる曲線を、溝31の断面に形成することができる。
(ステップ2の詳細)
次に、ステップ2の詳細について説明する。ステップ2では、溝31に所定温度条件および所定時間条件で、銀を主成分とする金属ろう剤が充填されて溶着される。
溝31は、ステップ1で形成されているので、金属ろう剤が、この溝31に充填される。このとき、レール10および金属ろう剤の少なくとも一方が加熱されることで、金属ろう剤は、融点を越えて溶融する。溶融した金属ろう剤は、溝31内部に充填されるようになる。例えば、(図10のように)金属ろう剤の棒100を溝31の上に斜めから突き立てた状態でバーナー111で加熱することで、金属ろう剤を溶融させながら、ビート状に溝31内部に充填していく。
図10は、本発明の実施の形態2における溝への金属ろう剤の充填を示す説明図である。バーナー111で加熱されて溶融した金属ろう剤が、棒100によって溝31内部に充填されていく様子が示されている。
この金属ろう剤を充填する際の所定温度条件は、加熱温度が750℃未満であることが好適である。750℃未満であることで、オーステナイト変態点未満で留まるからである。一方、ろう接では母材の温度を金属ろう剤の溶融温度以上に加熱しておく必要がある。このため、金属ろう剤の溶着には、先ずレール10をバーナーなどで加熱する。この加熱において、レール10がオーステナイト変態点以上に加熱されると、レール10にマルテンサイト組織が発生してしまう危険性がある。
ここで用いる金属ろう剤の溶融温度は、750℃未満であるので、レール10を750℃以上に加熱する必要は無い。ステップ2で用いられる金属ろう剤は、銀を主成分としているので、銅などを主成分とする金属ろう剤と異なり融点が低い。このため、加熱の際の所定温度を、750℃未満とすることができる。
加熱時のレール10の温度をオーステナイト変態点以下とするために、加熱に用いられるバーナーや加熱器具が、バーナー火口やガス圧などの設定によりその加熱温度を750℃未満としておけば良い。
また、金属ろう剤の溶着は、130mm/分〜150mm/分の速度である所定時間条件で行われれば良い。金属ろう剤の溶融温度が低いことで、加熱して溶融させる時間が節減できることで、溶着速度が高まる。従来技術の一例として、黄銅を主成分とする金属ろう剤では、加熱温度を900℃程度としなければならなかったことで、溶着速度は、70mm/分〜90mm/分程度であった。溶着速度が遅いことは、作業性・安全性の低減という、作業者側の問題だけでなく、レール1の長時間の加熱による損耗を生じさせかねない。
金属ろう剤は、銀を主成分としており、所定温度および所定時間条件が上述の通りであるので、作業性・安全性を高めると共に、レール10の損耗を生じさせにくい。また、溶着速度が速いことで、加熱作業に必要となる燃料(バーナーの燃料)の量を少なくできる。量が少ないことで、運搬作業も効率が高まり、遠隔地での作業も容易化される。
この金属ろう材の充填と溶着は、線路が敷設されている場所で行う必要がある。すなわち、鉄道敷に敷設されているレールに、表面処理を施す必要がある。レールが敷設されているのは、山間地や郊外などの不便な場所であったり、頻繁に列車が走行する近傍の側線であったりする。前者の場合には、必要な装置や器具の運搬が用意であることが求められる。後者の場合には、作業時間が短いことが求められる。ここでは、ステップ2が金属ろう剤の溶着に必要な燃料が少ないので、前者の場合にも好適である。また、ステップ2の時間も短いので、後者の場合にも好適である。
(ステップ3)
次に、ステップ3について説明する。
溝31に充填されて溶着された金属ろう剤は、自然冷却される。レール10は、外界に敷設されているので、外気温に合わせて冷却される。すなわち、自然冷却の一例として溶着された後のレール10をそのまま放置する。金属ろう剤の溶着時の加熱温度は、750℃未満であるので、そのまま放置される場合でも、外気温によって十分に冷却される。また、冷却を加速したり、冷却時の損耗を防止したりするために、レール10に毛布やシートが被せられることも好適である。
もちろん、レール10は、溶着された金属ろう材に比べて、圧倒的に比熱容量が大きいため、外界に露出されて外気温で冷却される場合でも、濡れた毛布やシートが被せられて冷却される場合でも、金属ろう剤は、徐々に冷却されることになる。すなわち、急冷されることはない。このため、溶着された金属ろう剤は、結晶構造や格子構造を欠損させることがない。もちろん、レール10も損耗したりすることがない。これらの結果、溶着された金属ろう剤は、確実に溝31に固着されて、レール10と接合する。
ステップ3により、レール10に形成された溝31に、金属ろう剤が固着される。
(ステップ4)
次に、ステップ4について説明する。ステップ4では、冷却されて固着された金属ろう剤が、レール10の頭部11表面より所定高さ以下の突出となるように、金属ろう剤の突出部分が研磨される。
金属ろう剤は、作業者の作業によって、溝31に溶着される。このとき、作業者は、溝31を加熱し、棒状の金属ろう剤を溝31に触れさせた棒の先端部の金属ろう剤を溶融させる、次にろうが溶着した先の溝31を加熱し、同じようにろうを溶着させる、を繰り返しながら金属ろう剤の溶着を繰り返す。このため、硬化したあとの金属ろう剤は、溝31にビート状に固着しており、レール10の頭部11表面より波状に突出した状態となる。突出状態が大きすぎると、当然ながら列車の走行に支障を来たす。このため、冷却されて硬化したあとで、ステップ4にて、突出部分が研磨される。
研磨には、研磨剤、研磨器具などが用いられる。十分に冷却された後で、作業者が研磨剤で研磨したり、研磨器具で研磨したりすることで、突出部分は徐々に平らにならされていく。ただし、レール10の頭部11表面を研磨しすぎてしまわないように注意することも必要である。一方で、研磨が不足することも好ましくない。
このため、所定高さが規定されて、この所定高さ以下となるように研磨されることが好適である。作業工程においてはこの所定高さが規定され、作業者(あるいは作業器具の設定)は、この規定された所定高さ以下となるように、研磨作業を行う。
ここで、所定高さは、0.2mm以上0.5mm以下である。これは、金属ろう剤の溶着面が列車の車輪踏面と確実に接触するためには、レール頭部の表面よりもいくらか高く盛り上げる必要があるが、施工上、高さを0.2mm以下で均一化することは困難であり、一方、金属ろう剤の溶着面は、車輪の主荷重によって押さえつけられ、その際に張り出しが生じて剥離を生成する危険性があるため、頭頂面から高く張り出すことは好ましくないからである。また、この程度の突出であれば、レール10を走行する列車に、異音や衝撃などの支障が出ることがほとんどないからである。
以上のように、所定高さを規定した上で研磨されることで、第1レールめっき3の形成が完了する。レール表面処理が完了することで、レール10の導電性が確保され、列車の到達や通過が、確実に検出されるようになる。もちろん、レール10へのオーステナイト変態点以上の加熱がなされないことで、レール10の損耗も生じにくい。結果として、十分な耐久性と導電性を有するレール10が実現できる。これにより、レール種別及び線路の種別を問わず、第1レールめっき3が形成される。
(金属ろう剤)
このような溶着時間を短縮できるのは、金属ろう剤の融点がオーステナイト変態点以下であることによる。また金属ろう剤の融点や凝固点のほか、導電率などの電気的特性や、硬度、強度や鋼との相性(溶着力)と言った物理的特性は、金属ろう剤の成分や成分比に左右される。
金属ろう剤は、銀を主成分とする。銀を主成分とすることで、黄銅ろうと比較して、先ず電気的特性に優れる、次に、融点が下がる、というメリットがある。またここで、金属ろう剤は、銀、銅および亜鉛を含む銀ろうであることも好適である。銀ろうの場合、溶着後の電気的特性試験において、黄銅ろうとの対比で、約1.7倍の導電率を示している。これにより良好な導電率を保持できる。また、このような成分を含有することで、金属ろう剤は、オーステナイト変態点以下の融点を有するようになる。例えば、銀:銅:亜鉛の比が40:30:30である銀ろう剤は、融点が730℃であり、45:30:25では745℃であることが知られている。したがって、銀、銅および亜鉛の含有割合は、諸条件を勘案して、適宜定められれば良い。
また、銀ろうは、更に貴金属素材を含むことも好適である。貴金属素材は、銀ろうの融点、強度、耐久性にメリットを与えることが多いからである。貴金属素材は、銀ろうの仕様及び母材である鋼との相性に合わせて、適宜選択されればよい。選択された貴金属素材の特性に応じて、銀ろう(すなわち金属ろう剤)が、溶着された後で、その輝度や色味に特徴が生じることもある。
金属ろう剤は、ステップ1で形成された溝31に加熱されつつ充填される。すなわち、金属ろう剤は溶融状態となって溝31に充填される。このため、溝31の内部に十分に拡張しつつ充填される。この結果、金属ろう剤は、溝31の端部312から底面311にかけた曲線にあわせて、充填される。言い換えれば、金属ろう剤とレール10との接合面は、溝31の有する曲線に沿っている。曲線に合っていることで、角部や屈曲部が存在しにくくなり、溶着の耐久性が高まる。
以上のように、実施の形態2で説明したように第1レールめっき3が形成されることで、列車検出装置1での列車の検出が確実になる。また、レール10を走る列車の騒音も低減でき、環境にも配慮した列車検出装置1が実現できる。
なお、実施の形態1、2で説明された踏切における列車検出装置は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
1 列車検出装置
2 第1区間
3 第1レールめっき
4 第1検出器
10 レール
11 頭部
20 列車
21 台車
22 車輪
31 溝

Claims (11)

  1. レールにおける踏切の始動点に対応する第1区間に施される第1レールめっきと、
    前記踏切での警報開始および動作終了の少なくとも一方を検出する第1検出器を備え、
    前記第1レールめっきは、
    前記レールで列車の車輪と接触する頭部表面に、所定幅、所定深さおよび所定形状の少なくとも一つの条件で形成された溝と、
    前記溝に、所定温度条件および所定時間条件で溶着された、銀を主成分とする金属ろう剤と、を、有し、
    前記金属ろう剤は、溶着後に自然冷却および所定高さ未満での研磨を受け、
    前記所定高さは、0.2mm以上0.5mm以下である、踏切における列車検出装置。
  2. 前記第1検出器は、前記第1レールめっきと列車の車輪との導電時間である始動点短絡時間を計測し、
    前記始動点短絡時間は、第1所定値以上であって、
    前記第1所定値は、前記検出器の動作必要時間に基づき、
    前記第1区間の長さは、前記始動点短絡時間が前記第1所定値以上であることに基づく、請求項1記載の、踏切における列車検出装置。
  3. 前記第1所定値は、200m秒である、請求項2記載の踏切における列車検出装置。
  4. 前記第1区間の長さをX、前記列車の台車の車軸間距をD、前記列車の速度をVとすると、
    (X+D)/V > 200m秒 (数1)
    によって、前記第1区間の長さが定義される、請求項3記載の踏切における列車検出装置。
  5. 前記始動点は、前記踏切での警報開始および前記踏切での動作終了の少なくとも一方を検出する部位である、請求項1から4のいずれか記載の踏切における列車検出装置。
  6. 前記所定幅は、6mm以上8mm以下であり、前記所定深さは、1.0mm以上1.2mm以下である、請求項1記載の踏切における列車検出装置。
  7. 前記所定形状は、前記溝の底部が幅方向全体における曲線により形成される、請求項1記載の踏切における列車検出装置。
  8. 前記曲線は、前記溝の底面および端部においても形成されている、請求項7記載の踏切における列車検出装置。
  9. 前記所定幅は、前記所定深さの6倍以上8倍以下であって、当該所定幅および所定深さの比率によって、前記溝の曲線が定義される、請求項1記載の踏切における列車検出装置。
  10. 前記金属ろう剤は、銀、銅および亜鉛を含む銀ろうである、請求項1から9のいずれか記載の踏切における列車検出装置。
  11. 前記銀ろうは、更に貴金属素材を含む、請求項10記載の踏切における列車検出装置。
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