JP2018099821A - 液体噴射ヘッド、液体噴射装置及び圧電デバイス - Google Patents
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Abstract
【課題】流路形成基板や振動板等の破壊を抑制した液体噴射ヘッド、液体噴射装置及び圧電デバイスを提供する。【解決手段】圧力発生室12に連通するノズルが設けられたノズルプレートを少なくとも具備する接合部材と、流路形成基板10の他方面側に振動板50を介して設けられた第1電極60、圧電体層70及び第2電極80を有する圧電アクチュエーター300と、を具備し、圧力発生室12は、第1の方向に直交する第2の方向Yの長さは、第1の方向の長さよりも長く、隔壁は、第2の方向Yに沿って形成されており、隔壁の一方面側において、隔壁の仮想平面Fに対する垂線方向の距離は、前記第2の方向Yにおいて圧力発生室12の中央部が長く、圧力発生室12の両端部側は短く、隔壁と接合部材との間には、接着剤200が設けられている。【選択図】図4
Description
本発明は、ノズルから液体を噴射する液体噴射ヘッド、液体噴射装置及び圧電デバイスに関する。
液滴を吐出する液体噴射ヘッドの代表例としては、インク滴を吐出するインクジェット式記録ヘッドが挙げられる。このインクジェット式記録ヘッドとしては、例えば、圧力発生室が形成された流路形成基板と、流路形成基板の一方面側に接合されて圧力発生室に連通するノズルが形成されたノズルプレートと、流路形成基板の他方面側に振動板を介して設けられた圧電アクチュエーターと、を具備し、圧電アクチュエーターによって振動板を変形させて圧力発生室内のインクに圧力変化を生じさせることで、ノズルからインク滴を吐出させるものがある(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、流路形成基板とノズルプレート等の接合部材とを接合した際に、流路形成基板の圧力発生室を画成する隔壁や振動板などにクラック等の破壊が発生するという問題がある。
なお、このような問題はインクジェット式記録ヘッドに代表される液体噴射ヘッドだけではなく、他の圧電デバイスにおいても同様に存在する。
本発明はこのような事情に鑑み、流路形成基板や振動板等の破壊を抑制した液体噴射ヘッド、液体噴射装置及び圧電デバイスを提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明の態様は、圧力発生室が隔壁によって形成された流路形成基板と、前記流路形成基板の一方面側に接着剤を介して接着された接合部材であって、前記圧力発生室に連通するノズルが設けられたノズルプレートを少なくとも具備する前記接合部材と、前記流路形成基板の他方面側に振動板を介して設けられた第1電極、圧電体層及び第2電極を有する圧電アクチュエーターと、を具備し、前記圧力発生室は、第1の方向に直交する第2の方向の長さは、前記第1の方向の長さよりも長く、前記隔壁は、前記第2の方向に沿って形成されており、前記隔壁の前記一方面側において、当該隔壁の仮想平面に対する垂線方向の距離は、前記第2の方向において前記圧力発生室の中央部が長く、前記圧力発生室の両端部側は短く、前記隔壁と前記接合部材との間には、前記接着剤が設けられていることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる態様では、流路形成基板と接合部材とを接着剤によって接着する際の荷重が隔壁の中央部に集中するのを抑制することができる。したがって、荷重の集中による隔壁自体のクラックや、隔壁への荷重が振動板の隔壁と圧力発生室との境界部分に集中することによる振動板の破壊を抑制することができる。
かかる態様では、流路形成基板と接合部材とを接着剤によって接着する際の荷重が隔壁の中央部に集中するのを抑制することができる。したがって、荷重の集中による隔壁自体のクラックや、隔壁への荷重が振動板の隔壁と圧力発生室との境界部分に集中することによる振動板の破壊を抑制することができる。
また、本発明の他の態様は、圧力発生室が隔壁によって形成された流路形成基板と、前記流路形成基板の一方面側に接着剤を介して接着された接合部材であって、前記圧力発生室に連通するノズルが設けられたノズルプレートを少なくとも具備する前記接合部材と、前記流路形成基板の他方面側に振動板を介して設けられた第1電極、圧電体層及び第2電極を有する圧電アクチュエーターと、を具備し、前記圧力発生室は、第1の方向に直交する第2の方向の長さは、前記第1の方向の長さよりも長く、前記隔壁は、前記第2の方向に沿って形成されており、前記接着剤の積層方向において、前記第2の方向における前記圧力発生室の中央部と前記圧力発生室の端部とでは、中央部の方が厚いことを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる態様では、流路形成基板と接合部材とを接着剤によって接着する際の荷重が隔壁の中央部に集中するのを抑制することができる。したがって、荷重の集中による隔壁自体のクラックや、隔壁への荷重が振動板の隔壁と圧力発生室との境界部分に集中することによる振動板の破壊を抑制することができる。
かかる態様では、流路形成基板と接合部材とを接着剤によって接着する際の荷重が隔壁の中央部に集中するのを抑制することができる。したがって、荷重の集中による隔壁自体のクラックや、隔壁への荷重が振動板の隔壁と圧力発生室との境界部分に集中することによる振動板の破壊を抑制することができる。
ここで、前記隔壁上の前記他方面側に積層された膜の内部応力の総和は、圧縮応力であることが好ましい。これによれば、流路形成基板の隔壁を積層された膜の内部応力によって反らせることで、隔壁の仮想平面に対する距離又は接着剤の厚さを上記のごとく実現できる。
また、前記隔壁上には、酸化シリコンからなる弾性膜及び前記弾性膜上に設けられて酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜を有する前記振動板と、前記第2電極と、が設けられているのが好ましい。これによれば、隔壁の上に設けられた積層された膜の内部応力を容易に調整することができる。
また、前記絶縁体膜の内部応力が引っ張り応力であり、前記第2電極の内部応力が圧縮応力であることが好ましい。これによれば、隔壁の上に設けられた積層された膜の内部応力を容易に調整することができる。
また、前記弾性膜、前記振動板及び前記第2電極のヤング率は、前記第2電極が最も大きく、前記弾性膜が最も小さいことが好ましい。これによれば、隔壁の上に設けられた積層された膜の内部応力を容易に調整することができる。
また、前記第2の方向における前記隔壁上の前記振動板は、前記圧力発生室の中央部の厚さが、他の領域よりも薄いことが好ましい。これによれば、隔壁の上に設けられた積層された膜の内部応力を容易に調整することができる。
さらに、本発明の他の態様は、上記態様の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置にある。
かかる態様では、破壊を抑制した液体噴射装置を実現できる。
かかる態様では、破壊を抑制した液体噴射装置を実現できる。
また、本発明の他の態様は、凹部が隔壁によって形成された基板と、前記基板の一方面側に接着剤を介して接着された接合部材と、前記基板の他方面側に振動板を介して設けられた第1電極、圧電体層及び第2電極を有する圧電アクチュエーターと、を具備し、前記凹部は、第1の方向に直交する第2の方向の長さは、前記第1の方向の長さよりも長く、前記隔壁は、前記第2の方向に沿って形成されており、前記隔壁の前記一方面側において、当該隔壁の仮想平面に対する垂線方向の距離は、前記第2の方向において前記凹部の中央部が長く、前記凹部の両端部側は短く、前記隔壁と前記接合部材との間には、前記接着剤が設けられていることを特徴とする圧電デバイスにある。
かかる態様では、基板と接合部材とを接着剤によって接着する際の荷重が隔壁の中央部に集中するのを抑制することができる。したがって、荷重の集中による隔壁自体のクラックや、隔壁への荷重が振動板の隔壁と圧力発生室との境界部分に集中することによる振動板の破壊を抑制することができる。
かかる態様では、基板と接合部材とを接着剤によって接着する際の荷重が隔壁の中央部に集中するのを抑制することができる。したがって、荷重の集中による隔壁自体のクラックや、隔壁への荷重が振動板の隔壁と圧力発生室との境界部分に集中することによる振動板の破壊を抑制することができる。
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドであるインクジェット式記録ヘッドの分解斜視図であり、図2は、記録ヘッドの流路形成基板の平面図であり、図3は、図2のA−A′線断面図であり、図4は、図3の要部を拡大した図であり、図5は、図2のB−B′線断面図である。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドであるインクジェット式記録ヘッドの分解斜視図であり、図2は、記録ヘッドの流路形成基板の平面図であり、図3は、図2のA−A′線断面図であり、図4は、図3の要部を拡大した図であり、図5は、図2のB−B′線断面図である。
図示するように、本実施形態のインクジェット式記録ヘッド1(以下、単に記録ヘッド1とも言う)を構成する基板である流路形成基板10には、一方面側から異方性エッチングすることにより、複数の隔壁11によって区画された凹部である圧力発生室12がインクを吐出する複数のノズル21が並設される方向に沿って並設されている。以降、この方向を圧力発生室12の並設方向、又は第1の方向Xと称する。また、流路形成基板10には、圧力発生室12が第1の方向Xに並設された列が複数列、本実施形態では、2列設けられている。この圧力発生室12の列が複数列設された列設方向を、以降、第2の方向Yと称する。本実施形態の圧力発生室12は、第1の方向Xに短く、第2の方向Yに長い、所謂高いアスペクト比を有する。なお、本実施形態では、流路形成基板10の第1の方向Xに並設された圧力発生室12の間の部分を隔壁11と称する。この隔壁11は、第2の方向Yに沿って形成されている。すなわち、隔壁11は、流路形成基板10の第2の方向Yにおける圧力発生室12に重なる部分のことをいう。さらに、第1の方向X及び第2の方向Yの両方に直交する方向を第3の方向Zと称し、詳しくは後述するケース部材40側をZ1側、ノズルプレート20側をZ2側と称する。なお、第1の方向X、第2の方向Y及び第3の方向Zは、互いにそれぞれ直交する方向としたが、特にこれに限定されず、直交以外の角度で交差する方向であってもよい。
このような流路形成基板10の一方面側であるZ2側の面側には、連通板15と、ノズルプレート20とが順次積層されている。すなわち、本実施形態では、流路形成基板10のZ2側に接合される接合部材は、連通板15とノズルプレート20とを含む。本実施形態では、流路形成基板10と連通板15とは、接着剤200で接合されている。また、連通板15とノズルプレート20との接合方法は特に限定されず、例えば、接着剤による接合や、直接接合等を用いることができる。
ここで、図4に示すように、流路形成基板10の隔壁11の接合部材を構成する連通板15が接合されるZ2側の面において、仮想平面Fに対する垂線方向の距離は、第2の方向Yにおいて圧力発生室12の中央部の距離d1が長く、圧力発生室12の両端部の距離d2が短くなっている。ここで、仮想平面Fとは、第1の方向X及び第2の方向Yを含む方向が面方向となるものを言う。このため、仮想平面Fの垂線方向とは、第3の方向Zのことを言う。そして、隔壁11のZ2側の面において、仮想平面Fに対する垂線方向の距離は、圧力発生室12の両端部側から圧力発生室12の中央部側に向かって徐々に漸大して設けられている。本実施形態では、流路形成基板10の隔壁11は、圧力発生室12の第2の方向Yの中央部がZ2側に凹むように反っており、隔壁11の反りによって隔壁11の仮想平面Fに対する垂線方向の距離が、第2の方向Yにおいて圧力発生室12の中央部の距離d1が長く、圧力発生室12の両端部の距離d2が短くなっている。
なお、隔壁11の第2の方向Yにおける圧力発生室12の端部とは、圧力発生室12を画成する隔壁11において圧力発生室12の第2の方向Yの端部を画成する部分をいう。また、隔壁11の第2の方向Yにおける圧力発生室12の中央部とは、隔壁11において各圧力発生室12の第2の方向Yの中央部を画成する部分をいう。そして、少なくとも、第2の方向Yにおいて、流路形成基板10の圧力発生室12の最も外側(隔壁11の端部)における距離d2が、これよりも圧力発生室12の内側の中央部の距離d1よりも短ければよい。
また、連通板15の流路形成基板10側、すなわち、Z1側の面は、略平坦面となっており、流路形成基板10のZ2側の面と連通板15のZ1側の面との間に亘って接着剤200が充填されている。したがって、流路形成基板10と連通板15とを接着する接着剤200の積層方向である第3の方向Zの厚さは、第2の方向Yにおいて、圧力発生室12の中央部が圧力発生室12の端部に比べて厚くなっている。すなわち、接着剤200の第3の方向Zの厚さは、第2の方向Yにおいて、圧力発生室12の中央部がd1となっており、圧力発生室12の両端部がd2となっている。
なお、隔壁11の第2の方向Yに沿った反り量は、隔壁11毎に異なる反り量であってもよい。すなわち、流路形成基板10の第1の方向Xの両端部の隔壁11と、中央部側の隔壁11とで反り量が異なっていてもよい。また、隔壁11の反りは、詳しくは後述する流路形成基板10のZ1側の面に形成された振動板50や圧電アクチュエーター300によって調整することができる。また、流路形成基板10は、第1の方向Xに沿って第3の方向Zに反っていてもよい。
連通板15には、図3に示すように、圧力発生室12とノズル21とを連通するノズル連通路16が設けられている。連通板15は、流路形成基板10よりも大きな面積を有し、ノズルプレート20は流路形成基板10よりも小さい面積を有する。このように連通板15を設けることによってノズルプレート20のノズル21と圧力発生室12とを離せるため、圧力発生室12の中にあるインクは、ノズル21付近のインクで生じるインク中の水分の蒸発による増粘の影響を受け難くなる。また、ノズルプレート20は圧力発生室12とノズル21とを連通するノズル連通路16の開口を覆うだけで良いので、ノズルプレート20の面積を比較的小さくすることができ、コストの削減を図ることができる。なお、本実施形態では、ノズルプレート20のノズル21が開口されて、インク滴が吐出される面を液体噴射面20aと称する。
また、連通板15には、マニホールド100の一部を構成する第1マニホールド部17と、本実施形態の凹部である第2マニホールド部18とが設けられている。
第1マニホールド部17は、連通板15を第3の方向Zに貫通して設けられている。
また、第2マニホールド部18は、連通板15を第3の方向Zに貫通することなく、連通板15のノズルプレート20側に開口して設けられている。
第1マニホールド部17は、連通板15を第3の方向Zに貫通して設けられている。
また、第2マニホールド部18は、連通板15を第3の方向Zに貫通することなく、連通板15のノズルプレート20側に開口して設けられている。
さらに、連通板15には、圧力発生室12の第2の方向Yの一端部に連通する供給連通路19が、圧力発生室12の各々に対して独立して設けられている。この供給連通路19は、第2マニホールド部18と圧力発生室12とを連通する。すなわち、供給連通路19は、マニホールド100に対して、第1の方向Xに並設されている。
ノズルプレート20には、各圧力発生室12とノズル連通路16を介して連通するノズル21が形成されている。すなわち、ノズル21は、同じ種類の液体(インク)を噴射するものが第1の方向Xに並設され、この第1の方向Xに並設されたノズル21の列が第2の方向Yに2列形成されている。
一方、流路形成基板10の他方面側であるZ1側の面側には、振動板50が形成されている。本実施形態では、振動板50として、流路形成基板10側に設けられた酸化シリコンからなる弾性膜51と、弾性膜51上に設けられた酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜52と、を設けるようにした。なお、圧力発生室12等の液体流路は、流路形成基板10を一方面側(ノズルプレート20が接合された面側)から異方性エッチングすることにより形成されており、圧力発生室12の他方面は、弾性膜51によって画成されている。
また、図4及び図5に示すように、流路形成基板10の振動板50上には、厚さが例えば、約0.2μmの第1電極60と、厚さが例えば約1.0μmの圧電体層70と、厚さが例えば、約0.05μmの第2電極80とで構成される圧電アクチュエーター300が形成されている。本実施形態では、圧電アクチュエーター300が圧力発生室12内のインクに圧力変化を生じさせる圧力発生手段となっている。ここで、圧電アクチュエーター300は、圧電素子ともいい、第1電極60、圧電体層70及び第2電極80を含む部分をいう。また、第1電極60と第2電極80との間に電圧を印加した際に、圧電体層70に圧電歪みが生じる部分を能動部310と称する。すなわち、能動部310は、第1電極60と第2電極80とによって第3の方向Zで挟まれた部分を言う。本実施形態では、詳しくは後述するが、圧力発生室12毎に能動部310が形成されている。そして、一般的には、能動部310の何れか一方の電極を複数の能動部310に共通する共通電極とし、他方の電極を能動部310毎に独立する個別電極として構成する。本実施形態では、第1電極60を個別電極とし、第2電極80を共通電極としているが、これを逆にしてもよい。なお、上述した例では、振動板50及び第1電極60が振動板として作用するが、勿論これに限定されるものではなく、例えば、振動板50を設けずに、第1電極60のみが振動板として作用するようにしてもよい。また、圧電アクチュエーター300自体が実質的に振動板を兼ねるようにしてもよい。
ここで、本実施形態の圧電アクチュエーター300を構成する第1電極60は、圧力発生室12毎に切り分けてあり、圧電アクチュエーター300の実質的な駆動部である能動部310毎に独立する個別電極を構成する。この第1電極60は、圧力発生室12の第1の方向Xにおいては、圧力発生室12の幅よりも狭い幅で形成されている。すなわち、圧力発生室12の第1の方向Xにおいて、第1電極60の端部は、圧力発生室12に対向する領域の内側に位置している。また、第2の方向Yにおいて、第1電極60の両端部は、それぞれ圧力発生室12の外側まで延設されている。
なお、第1電極60の材料は、後述する圧電体層70を成膜する際に酸化せず、導電性を維持できる材料であることが必要であり、例えば、白金(Pt)、イリジウム(Ir)等の貴金属、またはランタンニッケル酸化物(LNO)などに代表される導電性酸化物が好適に用いられる。
また、第1電極60として、前述の導電材料と、振動板50との間に、密着力を確保するための密着層を用いてもよい。本実施形態では、特に図示していないが密着層としてチタンを用いている。なお、密着層としては、ジルコニウム、チタン、酸化チタンなどを用いることができる。すなわち、本実施形態では、チタンからなる密着層と、上述した導電材料から選択される少なくとも一種の導電層とで第1電極60が形成されている。
圧電体層70は、図4に示すように、第2の方向Yが所定の幅となるように、第1の方向Xに亘って連続して設けられている。圧電体層70の第2の方向Yの幅は、圧力発生室12の第2の方向Yの長さよりも広い。このため、圧力発生室12の第2の方向Yでは、圧電体層70は圧力発生室12の外側まで設けられている。
圧力発生室12の第2の方向Yにおいて、圧電体層70の供給連通路19側の端部は、第1電極60の端部よりも外側に位置している。すなわち、第1電極60の端部は圧電体層70によって覆われている。また、圧電体層70のノズル21側の端部は、第1電極60の端部よりも内側(圧力発生室12側)に位置しており、第1電極60のノズル21側の端部は、圧電体層70に覆われていない。
圧電体層70は、第1電極60上に形成される分極構造を有する酸化物の圧電材料からなり、例えば、一般式ABO3で示されるペロブスカイト型酸化物からなることができ、鉛を含む鉛系圧電材料や鉛を含まない非鉛系圧電材料などを用いることができる。圧電体層70は、例えば、ゾル−ゲル法、MOD(Metal-Organic Decomposition)法などの液相法や、スパッタリング法、レーザーアブレーション法等などのPVD(Physical Vapor Deposition)法(気相法)などで形成することができる。
このような圧電体層70には、図5に示すように、各隔壁11に対応する凹部71が形成されている。この凹部71の第1の方向Xの幅は、各隔壁11の第1の方向Xの幅と略同一、もしくはそれよりも広くなっている。これにより、振動板50の圧力発生室12の第2の方向Yの端部に対向する部分(いわゆる振動板50の腕部)の剛性が押さえられるため、圧電アクチュエーター300を良好に変位させることができる。
第2電極80は、圧電体層70の第1電極60とは反対面側に設けられており、複数の能動部310に共通する共通電極を構成する。また、第2電極80は、凹部71の内面、すなわち、第3の方向Zにおいて隔壁11上の振動板50上に設けられている。
また、本実施形態では、凹部71の底面の振動板50は、第3の方向Zの厚さd3が、他の領域、具体的には能動部310の振動板50の厚さd4よりも薄くなっている。このような厚さの異なる振動板50は、詳しくは後述するが、圧電体層70をドライエッチングしてパターニングする際にオーバーエッチングすることによって形成することができる。
なお、第2電極80は、圧電体層70の界面を良好に形成できること、導電性及び圧電特性を発揮できる材料が望ましく、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、金(Au)等の貴金属材料、及びランタンニッケル酸化物(LNO)に代表される導電性酸化物が好適に用いられる。また、第2電極80は、複数材料の積層であってもよい。本実施形態では、イリジウムとチタンとの積層電極(イリジウムが圧電体層70と接する)を用いている。そして、第2電極80は、スパッタリング法、レーザーアブレーション法などのPVD(Physical Vapor Deposition)法(気相法)、ゾル−ゲル法、MOD(Metal-Organic Decomposition)法、メッキ法などの液相法により形成することができる。また、第2電極80の形成後に、加熱処理を行うことにより、圧電体層70の特性改善を行うことができる。
このような、隔壁11上に設けられた積層膜、本実施形態では、弾性膜51及び絶縁体膜52を有する振動板50と、第2電極80との内部応力の総和は、圧縮応力となっている。これにより、流路形成基板10の隔壁11を第2の方向Yに沿ってZ2側の圧力発生室12の中央部が凹むように反らせることができる。
ここで、本実施形態の酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜52は、内部応力が引っ張り応力となっている。また、本実施形態の第2電極80は、内部応力が圧縮応力となっている。このため、隔壁11上の振動板50の厚さ、特に、第2電極80側に設けられた絶縁体膜52の厚さd3を、他の領域の厚さd4よりも薄くすることで、隔壁11上に形成された積層された膜の内部応力の総和が、圧縮応力となるように調整されている。
つまり、隔壁11上に形成された絶縁体膜52が厚いと、絶縁体膜52の引っ張り応力が第2電極80の圧縮応力に打ち勝ってしまい、積層された膜の内部応力の総和として引っ張り応力になってしまうからである。このため、本実施形態では、隔壁11上の絶縁体膜52の厚さを薄くすることで、絶縁体膜52の引っ張り応力を低減して、隔壁11上に積層された膜の内部応力の総和が圧縮応力となるようにした。
ちなみに、弾性膜51、絶縁体膜52及び第2電極80のヤング率は、第2電極80が最も高く、弾性膜51が最も小さい。したがって、内部応力が圧縮応力である第2電極80の厚さが、隔壁11上に積層された膜の内部応力の総和に影響を及ぼし易い。このため、例えば、隔壁11上の第2電極80の厚さを厚くすることで、隔壁11上に積層された膜の内部応力の総和を圧縮応力となるようにしてもよい。つまり、隔壁11上の振動板50の厚さを変更することなく、第2電極80の厚さで隔壁11上に積層された膜の内部応力の総和が圧縮応力となるようにしてもよい。さらに、隔壁11上に設けられた第2電極80上に、内部応力が圧縮応力の膜を新たに成膜するようにしてもよい。また、第2電極80としてヤング率の高く内部応力が圧縮応力となる材料を用いもよい。もちろん、上述した振動板50の厚さの調整、第2電極80の厚さの調整、新たな圧縮応力となる膜の成膜、第2電極80の材料の選定から選択される少なくとも1つ以上を組み合わせることで、隔壁11上に積層された膜の内部応力の総和が圧縮応力となるようにしてもよい。
また、図2に示すように、圧電アクチュエーター300の第1電極60からは、引き出し配線である個別配線91が引き出されている。また、第2電極80からは、引き出し配線である共通配線92が引き出されている。さらに、個別配線91及び共通配線92の圧電アクチュエーター300に接続された端部とは反対側の延設された端部には、フレキシブルケーブル120が接続されている。フレキシブルケーブル120は、可撓性を有する配線基板であって、本実施形態では、駆動素子である駆動回路121が実装されている。
このような流路形成基板10のZ1側の面側には、流路形成基板10と略同じ大きさを有する保護基板30が接合されている。保護基板30は、圧電アクチュエーター300を保護するための空間である保持部31を有する。保持部31は、第1の方向Xに並設された圧電アクチュエーター300の列の間に第2の方向Yに2つ並んで形成されている。また、保護基板30には、第2の方向Yで並設された2つの保持部31の間に第3の方向Zに貫通する貫通孔32が設けられている。圧電アクチュエーター300の電極から引き出された個別配線91及び共通配線92の端部は、この貫通孔32内に露出するように延設され、個別配線91及び共通配線92とフレキシブルケーブル120とは、貫通孔32内で電気的に接続されている。なお、個別配線91及び共通配線92と、フレキシブルケーブル120との接続方法は、特に限定されず、例えば、ハンダ付けやろう付けなどのろう接や、共晶接合、溶接、導電性粒子を含む導電性接着剤(ACP、ACF)、非導電性接着剤(NCP、NCF)等が挙げられる。
また、図3に示すように、保護基板30上には、複数の圧力発生室12に連通するマニホールド100を流路形成基板10と共に画成するケース部材40が固定されている。ケース部材40は、平面視において上述した連通板15と略同一形状を有し、保護基板30に接合されると共に、上述した連通板15にも接合されている。本実施形態では、ケース部材40は、連通板15に接着剤201を介して接着されている。また、特に図示していないが、ケース部材40と保護基板30とも接着剤によって接着すればよい。
このようなケース部材40は、保護基板30側に流路形成基板10及び保護基板30が収容される深さの凹部41を有する。この凹部41は、保護基板30の流路形成基板10に接合された面よりも広い開口面積を有する。そして、凹部41に流路形成基板10等が収容された状態で凹部41のノズルプレート20側の開口面が連通板15によって封止されている。これにより、流路形成基板10の外周部には、ケース部材40と流路形成基板10とによって第3マニホールド部42が画成されている。そして、連通板15に設けられた第1マニホールド部17及び第2マニホールド部18と、ケース部材40と流路形成基板10とによって画成された第3マニホールド部42と、によって本実施形態のマニホールド100が構成されている。マニホールド100は、圧力発生室12の並設方向である第1の方向Xに亘って連続して設けられており、各圧力発生室12とマニホールド100とを連通する供給連通路19は、第1の方向Xに並設されている。
また、連通板15の第1マニホールド部17及び第2マニホールド部18が開口するZ2側の面には、コンプライアンス基板45が設けられている。このコンプライアンス基板45が、第1マニホールド部17と第2マニホールド部18の液体噴射面20a側の開口を封止している。このようなコンプライアンス基板45は、本実施形態では、可撓性を有する薄膜からなる封止膜46と、金属等の硬質の材料からなる固定基板47と、を具備する。固定基板47のマニホールド100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部48となっているため、マニホールド100の一方面は可撓性を有する封止膜46のみで封止された可撓部であるコンプライアンス部49となっている。
なお、ケース部材40には、マニホールド100に連通して各マニホールド100にインクを供給するための導入路44が設けられている。また、ケース部材40には、保護基板30の貫通孔32に連通してフレキシブルケーブル120が挿通される接続口43が設けられている。
このような記録ヘッド1では、インクを噴射する際に、インクを導入路44から取り込み、マニホールド100からノズル21に至るまで流路内部をインクで満たす。その後、駆動回路121からの信号に従い、圧力発生室12に対応する各能動部310に電圧を印加することにより、能動部310と共に振動板50をたわみ変形させる。これにより、圧力発生室12内の圧力が高まり所定のノズル21からインク滴が噴射される。
ここで、本実施形態の記録ヘッド1の製造方法について、図6〜図17を参照して説明する。なお、図6〜図15は、記録ヘッドの製造方法を示す図2のB−B′線に準じた断面図であり、図16〜図17は、記録ヘッドの製造方法を示す図2のA−A′線に準じた断面図である。
まず、図6に示すように、シリコンウェハーである流路形成基板用ウェハー110の表面に弾性膜51を構成する二酸化シリコン(SiO2)等からなる弾性膜51を熱酸化等で形成する。次いで、弾性膜51上に、酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜52を形成する。絶縁体膜52は、ジルコニウムをスパッタリング法等により形成後、加熱することで熱酸化して形成してもよく、酸化ジルコニウムを反応性スパッタリング法により形成するようにしてもよい。このようにした弾性膜51及び絶縁体膜52からなる振動板50を形成する。
次いで、図7に示すように、絶縁体膜52上の全面に第1電極60を形成すると共に圧力発生室12毎にパターニングする。この第1電極60の材料は、特に限定されないが、圧電体層70としてチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用いる場合には、酸化鉛の拡散による導電性の変化が少ない材料であることが望ましい。このため、第1電極60の材料としては白金、イリジウム等が好適に用いられる。また、第1電極60は、例えば、スパッタリング法やPVD法(物理蒸着法)などにより形成することができる。
次に、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる圧電体層70を形成する。ここで、本実施形態では、金属錯体を溶媒に溶解・分散したいわゆるゾルを塗布乾燥してゲル化し、さらに高温で焼成することで金属酸化物からなる圧電体層70を得る、いわゆるゾル−ゲル法を用いて圧電体層70を形成している。なお、圧電体層70の製造方法は、ゾル−ゲル法に限定されず、例えば、MOD(Metal-Organic Decomposition)法やスパッタリング法又はレーザーアブレーション法等のPVD(Physical Vapor Deposition)法等を用いてもよい。
圧電体層70の具体的な形成手順としては、まず、図8に示すように、絶縁体膜52上及び第1電極60上にPZT前駆体膜である圧電体前駆体膜72を成膜する。すなわち、絶縁体膜52及び第1電極60が形成された流路形成基板用ウェハー110上に金属錯体を含むゾル(溶液)を塗布する(塗布工程)。次いで、この圧電体前駆体膜72を所定温度に加熱して一定時間乾燥させる(乾燥工程)。例えば、本実施形態では、圧電体前駆体膜72を170〜180℃で8〜30分間保持することで乾燥することができる。
次に、乾燥した圧電体前駆体膜72を所定温度に加熱して一定時間保持することによって脱脂する(脱脂工程)。例えば、本実施形態では、圧電体前駆体膜72を300〜400℃程度の温度に加熱して約10〜30分保持することで脱脂した。なお、ここでいう脱脂とは、圧電体前駆体膜72に含まれる有機成分を、例えば、NO2、CO2、H2O等として離脱させることである。
次に、図9に示すように、圧電体前駆体膜72を所定温度に加熱して一定時間保持することによって結晶化させ、圧電体膜73を形成する(焼成工程)。この焼成工程では、圧電体前駆体膜72を700℃以上に加熱するのが好ましい。なお、焼成工程では、昇温レートを50℃/sec以上とするのが好ましい。これにより優れた特性の圧電体膜73を得ることができる。
なお、このような乾燥工程、脱脂工程及び焼成工程で用いられる加熱装置としては、例えば、ホットプレートや、赤外線ランプの照射により加熱するRTP(Rapid Thermal Processing)装置などを用いることができる。
そして、図10に示すように、上述した塗布工程、乾燥工程、脱脂工程及び焼成工程からなる圧電体膜形成工程を複数回繰り返すことにより複数層の圧電体膜73からなる圧電体層70を形成する。
次に、図11に示すように、圧電体層70を各圧力発生室12に対向する領域にパターニングする。本実施形態では、圧電体層70上に所定形状に形成した図示しないマスクを設け、このマスクを介して圧電体層70をエッチングする、いわゆるフォトリソグラフィーによってパターニングした。なお、圧電体層70のパターニングとしては、例えば、反応性イオンエッチングやイオンミリング等のドライエッチングが挙げられる。また、このとき、振動板50の一部、すなわち、圧電体層70側の絶縁体膜52の一部を同時にエッチングにより除去する。これにより、振動板50の隔壁11上となる部分の厚さを他の領域に比べて薄くすることができる。
次に、図12に示すように、圧電体層70上及び絶縁体膜52上に亘って、第2電極80を形成し、所定形状にパターニングして圧電アクチュエーター300を形成する。そして、特に図示しないが、流路形成基板用ウェハー110上に個別配線91及び共通配線92を形成する。
次に、図13に示すように、流路形成基板用ウェハー110の圧電アクチュエーター300側に、シリコンウェハーであり複数の保護基板30となる保護基板用ウェハー130を接合した後、流路形成基板用ウェハー110を所定の厚みに薄くする。
次に、図14に示すように、流路形成基板用ウェハー110にマスク膜53を新たに形成し、所定形状にパターニングする。そして、図15に示すように、流路形成基板用ウェハー110をマスク膜53を介してKOH等のアルカリ溶液を用いた異方性エッチング(ウェットエッチング)することにより、隔壁11によって区画された圧力発生室12を形成する。
次いで、流路形成基板用ウェハー110及び保護基板用ウェハー130の外周縁部の不要部分を、例えば、ダイシング等により切断することによって除去する。そして、流路形成基板用ウェハー110と保護基板用ウェハー130との接合体を図1に示すような一つのチップサイズの流路形成基板10等に分割する。このように形成された流路形成基板10の隔壁11は、図16に示すように、第2の方向Yに沿って、圧力発生室12の中央部がZ2側に凹むように反った状態となる。すなわち、流路形成基板10の隔壁11は、隔壁11に接合される接合部材を構成する連通板15が接合されるZ2側の面において、仮想平面Fに対する垂線方向の距離は、第2の方向Yにおいて圧力発生室12の中央部の距離d1が長く、圧力発生室12の両端部の距離d2が短くなる。これは、流路形成基板10に圧力発生室12が形成されることで、流路形成基板10の隔壁11の剛性が低下して、流路形成基板10が反ってしまうからである。
次に、図17に示すように、保護基板30が接合された流路形成基板10と連通板15とを接着剤200によって接着する。このとき、流路形成基板10のZ2側の面は、仮想平面Fからの垂線方向の距離は、圧力発生室12の中央部の距離d1が、圧力発生室12の両端部の距離d2よりも長い。したがって、流路形成基板10を連通板15に向かって押圧した際の荷重が、隔壁11に集中するのを抑制して、荷重の集中による隔壁11自体のクラックや、隔壁11への荷重が振動板50の隔壁11と圧力発生室12との境界部分に集中することによる振動板50の破壊を抑制することができる。ちなみに、流路形成基板10のZ2側の面が、第2の方向Yにおいて、圧力発生室12の中央部が連通板15側に凸状に突出するように反っていた場合、流路形成基板10を連通板15に押圧した際の荷重が、中央部に設けられた隔壁11に集中し、隔壁11の破壊や、振動板50の隔壁11と圧力発生室12との境界部分などの脆弱な部分にクラックが生じてしまう。
また、本実施形態では、隔壁11が反るように変形しているため、振動板50の内部応力が開放される。したがって、隔壁11の変形量の違いによる振動板50の内部応力のばらつきが生じ難く、圧力発生室12毎にインク滴の吐出特性のばらつきが生じ難い。
その後は、流路形成基板10、保護基板30及び連通板15が一体となった部材に、ノズル21が形成されたノズルプレート20、コンプライアンス基板45及びケース部材40等を接合することで、本実施形態の記録ヘッド1とする。
以上説明したように、本実施形態では、圧力発生室12は、第1の方向Xに直交する第2の方向Yの長さは、第1の方向Xの長さよりも長く、圧力発生室を区画する隔壁11は、第2の方向Yに沿って形成されており、隔壁11のZ2側において、当該隔壁11の仮想平面Fに対する垂線方向の距離は、第2の方向Yにおいて圧力発生室12の中央部の距離d1が長く、圧力発生室12の両端部側の距離d2は短く、隔壁11と連通板15との間には、接着剤200が設けられているようにした。このように、隔壁11の仮想平面Fに対する垂線方向の距離は、第2の方向Yにおいて圧力発生室12の中央部の距離d1が長く、圧力発生室12の両端部側の距離d2は短くしたため、流路形成基板10と連通板15とを接着剤200によって接着する際に、流路形成基板10を連通板15に向かって押圧した際の荷重が、隔壁11に集中するのを抑制することができる。したがって、荷重の集中による隔壁11自体のクラックや、隔壁11への荷重が振動板50の隔壁11と圧力発生室12との境界部分に集中することによる振動板50の破壊を抑制することができる。
また、本実施形態では、隔壁11が反るように変形しているため、振動板50の内部応力が開放される。したがって、隔壁11の変形量の違いによる振動板50の内部応力のばらつきが生じ難く、圧力発生室12毎にインク滴の吐出特性のばらつきが生じ難い。
また、本実施形態では、隔壁11上のZ1側の面に積層された膜の内部応力の総和を圧縮応力とすることにより、隔壁11を第2の方向Yに沿って第3の方向ZのZ2側の面の中央部が凹むように反らせることができる。このため、上述した隔壁11のZ2側の面と仮想平面Fとの距離の規定を容易に実現することができる。
(他の実施形態)
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明の基本的な構成は上述したものに限定されるものではない。
例えば、上述した実施形態1では、流路形成基板10のZ2側の面に接合される接合部材として、連通板15及びノズルプレート20を有するものを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、連通板15を設けずに、流路形成基板10のZ2側の面にノズルプレート20が直接、接着されるものであってもよい。すなわち、流路形成基板10のZ2側の面に接合される接合部材として、ノズルプレート20のみで構成されるものであってもよい。もちろん、接合部材は、上述したものに限定されず、連通板15、ノズルプレート20に加えてさらにその他の部材を有するものであってもよい。
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明の基本的な構成は上述したものに限定されるものではない。
例えば、上述した実施形態1では、流路形成基板10のZ2側の面に接合される接合部材として、連通板15及びノズルプレート20を有するものを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、連通板15を設けずに、流路形成基板10のZ2側の面にノズルプレート20が直接、接着されるものであってもよい。すなわち、流路形成基板10のZ2側の面に接合される接合部材として、ノズルプレート20のみで構成されるものであってもよい。もちろん、接合部材は、上述したものに限定されず、連通板15、ノズルプレート20に加えてさらにその他の部材を有するものであってもよい。
また、上述した実施形態1では、流路形成基板10として単結晶シリコン基板を用いるようにしたが、特にこれに限定されず、流路形成基板10として、SOI基板、ガラス等の材料を用いるようにしてもよい。
このような記録ヘッド1は、インクジェット式記録装置Iに搭載される。図18は、本実施形態のインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。
図18に示すインクジェット式記録装置Iにおいて、記録ヘッド1は、液体供給手段を構成するカートリッジ2が着脱可能に設けられ、この記録ヘッド1を搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。
図18に示すインクジェット式記録装置Iにおいて、記録ヘッド1は、液体供給手段を構成するカートリッジ2が着脱可能に設けられ、この記録ヘッド1を搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。
そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッド1を搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4には搬送手段としての搬送ローラー8が設けられており、紙等の記録媒体である記録シートSが搬送ローラー8により搬送されるようになっている。なお、記録シートSを搬送する搬送手段は、搬送ローラーに限られずベルトやドラム等であってもよい。
また、上述した例では、インクジェット式記録装置Iは、インク供給手段であるカートリッジ2がキャリッジ3に搭載された構成であるが、特にこれに限定されず、例えば、インクタンク等の液体供給手段を装置本体4に固定して、液体供給手段と記録ヘッド1とをチューブ等の供給管を介して接続してもよい。また、液体供給手段がインクジェット式記録装置に搭載されていなくてもよい。
さらに、上述したインクジェット式記録装置Iでは、記録ヘッド1がキャリッジ3に搭載されて主走査方向に移動するものを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、記録ヘッド1が固定されて、紙等の記録シートSを副走査方向に移動させるだけで印刷を行う、所謂ライン式記録装置にも本発明を適用することができる。
また、本発明は、広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種のインクジェット式記録ヘッド等の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等にも適用することができる。また、液体噴射装置の一例としてインクジェット式記録装置Iを挙げて説明したが、上述した他の液体噴射ヘッドを用いた液体噴射装置にも用いることが可能である。
また、本発明は、液体噴射ヘッドに限定されず、凹部が設けられた基板と圧電アクチュエーターとを有する他の圧電デバイスにも用いることができる。他の圧電デバイスとしては、例えば、超音波発信器等の超音波デバイス、超音波モーター、温度−電気変換器、圧力−電気変換器、強誘電体トランジスター、圧電トランス、赤外線等の有害光線の遮断フィルター、量子ドット形成によるフォトニック結晶効果を使用した光学フィルター、薄膜の光干渉を利用した光学フィルター等のフィルター、赤外線センサー、超音波センサー、感熱センサー、圧力センサー、焦電センサー、及びジャイロセンサー(角速度センサー)等の各種センサー、強誘電体メモリーなどが挙げられる。
I…インクジェット式記録装置(液体噴射装置)、1…インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、2…カートリッジ、3…キャリッジ、4…装置本体、5…キャリッジ軸、6…駆動モーター、7…タイミングベルト、8…搬送ローラー、10…流路形成基板(基板)、11…隔壁、12…圧力発生室(凹部)、15…連通板、16…ノズル連通路、17…第1マニホールド部、18…第2マニホールド部、19…供給連通路、20…ノズルプレート、20a…液体噴射面、21…ノズル、30…保護基板、31…保持部、32…貫通孔、40…ケース部材、41…凹部、42…第3マニホールド部、43…接続口、44…導入路、45…コンプライアンス基板、46…封止膜、47…固定基板、48…開口部、49…コンプライアンス部、50…振動板、51…弾性膜、52…絶縁体膜、53…マスク膜、60…第1電極、70…圧電体層、71…凹部、72…圧電体前駆体膜、73…圧電体膜、80…第2電極、91…個別配線、92…共通配線、100…マニホールド、110…流路形成基板用ウェハー、120…フレキシブルケーブル、121…駆動回路、130…保護基板用ウェハー、200、201…接着剤、300…圧電アクチュエーター、310…能動部、F…仮想平面、X…第1の方向、Y…第2の方向、Z…第3の方向
Claims (9)
- 圧力発生室が隔壁によって形成された流路形成基板と、
前記流路形成基板の一方面側に接着剤を介して接着された接合部材であって、前記圧力発生室に連通するノズルが設けられたノズルプレートを少なくとも具備する前記接合部材と、
前記流路形成基板の他方面側に振動板を介して設けられた第1電極、圧電体層及び第2電極を有する圧電アクチュエーターと、を具備し、
前記圧力発生室は、第1の方向に直交する第2の方向の長さは、前記第1の方向の長さよりも長く、
前記隔壁は、前記第2の方向に沿って形成されており、
前記隔壁の前記一方面側において、当該隔壁の仮想平面に対する垂線方向の距離は、前記第2の方向において前記圧力発生室の中央部が長く、前記圧力発生室の両端部側は短く、
前記隔壁と前記接合部材との間には、前記接着剤が設けられていることを特徴とする液体噴射ヘッド。 - 圧力発生室が隔壁によって形成された流路形成基板と、
前記流路形成基板の一方面側に接着剤を介して接着された接合部材であって、前記圧力発生室に連通するノズルが設けられたノズルプレートを少なくとも具備する前記接合部材と、
前記流路形成基板の他方面側に振動板を介して設けられた第1電極、圧電体層及び第2電極を有する圧電アクチュエーターと、を具備し、
前記圧力発生室は、第1の方向に直交する第2の方向の長さは、前記第1の方向の長さよりも長く、
前記隔壁は、前記第2の方向に沿って形成されており、
前記接着剤の積層方向において、前記第2の方向における前記圧力発生室の中央部と前記圧力発生室の端部とでは、中央部の方が厚いことを特徴とする液体噴射ヘッド。 - 前記隔壁上の前記他方面側に積層された膜の内部応力の総和は、圧縮応力であることを特徴とする請求項1又は2記載の液体噴射ヘッド。
- 前記隔壁上には、
酸化シリコンからなる弾性膜及び前記弾性膜上に設けられて酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜を有する前記振動板と、
前記第2電極と、
が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の液体噴射ヘッド。 - 前記絶縁体膜の内部応力が引っ張り応力であり、前記第2電極の内部応力が圧縮応力であることを特徴とする請求項4記載の液体噴射ヘッド。
- 前記弾性膜、前記振動板及び前記第2電極のヤング率は、前記第2電極が最も大きく、前記弾性膜が最も小さいことを特徴とする請求項4又は5記載の液体噴射ヘッド。
- 前記第2の方向における前記隔壁上の前記振動板は、前記圧力発生室の中央部の厚さが、他の領域よりも薄いことを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
- 請求項1〜7の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置。
- 凹部が隔壁によって形成された基板と、
前記基板の一方面側に接着剤を介して接着された接合部材と、
前記基板の他方面側に振動板を介して設けられた第1電極、圧電体層及び第2電極を有する圧電アクチュエーターと、を具備し、
前記凹部は、第1の方向に直交する第2の方向の長さは、前記第1の方向の長さよりも長く、
前記隔壁は、前記第2の方向に沿って形成されており、
前記隔壁の前記一方面側において、当該隔壁の仮想平面に対する垂線方向の距離は、前記第2の方向において前記凹部の中央部が長く、前記凹部の両端部側は短く、
前記隔壁と前記接合部材との間には、前記接着剤が設けられていることを特徴とする圧電デバイス。
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