JP2018099081A - 糖鎖の製造方法および糖鎖の製造キット - Google Patents

糖鎖の製造方法および糖鎖の製造キット Download PDF

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Abstract

【課題】糖鎖結合物質からの糖鎖の回収率をより一層向上させる。
【解決手段】本発明の糖鎖の製造方法は、分解工程と遊離工程とを含む。分解工程では、糖タンパク質を含む試料と、タンパク質分解酵素とを混合し、分解物を得る。遊離工程では、分解物と、糖鎖を遊離する化学試薬とを混合し、遊離分解物を得る。タンパク質分解酵素は、プロナーゼ、キモトリプシン、トリプシン、から選ばれる少なくとも1種であってよい。さらに、糖鎖はO結合型糖鎖であってよく、化学試薬がアンモニウム塩であってよい。
【選択図】図3

Description

本発明は、糖鎖の製造方法および糖鎖の製造キットに関する。より具体的には、本発明は糖タンパク質から糖鎖を遊離する方法およびその方法を行うためのキットに関する。
特許文献1(国際公開第2010/018834号)は、O結合型糖鎖を有する糖鎖結合物質からO結合型糖鎖を生産する方法であって、A)該糖鎖結合物質に、濃アンモニア水の不存在下、アンモニウム塩又はアンモニウムイオンを接触させる工程;B)A)で得られた反応液を中和するか又は酸性にする工程;及びC)遊離した糖鎖を回収する工程、を包含する方法を開示する。
国際公開第2010/018834号
特許文献1のように糖鎖結合物質から糖鎖を化学処理によって遊離することは、糖鎖を酵素処理によって遊離する場合に比べて、立体障害の影響を受けにくく効率的に糖鎖を回収することができると考えられていることが通常である。
本発明は、糖鎖結合物質からの糖鎖の回収率をより一層向上させることを目的とする。
上記本発明の目的を解決するため、本発明は以下の発明を含む。
(1)
本発明の糖鎖の製造方法は、分解工程と遊離工程とを含む。分解工程では、糖タンパク質を含む試料と、タンパク質分解酵素とを混合し、分解物を得る。遊離工程では、分解物と、糖鎖を遊離する化学試薬とを混合し、遊離分解物を得る。
これによって、糖タンパク質からの糖鎖の回収率をより一層向上させることができる。
なお、本発明において糖タンパク質のタンパク質部分のアミノ酸残基数は、50以上(たとえば50以上10000以下のタンパク質を構成する残基数)だけでなく、50未満(ペプチドを構成する残基数)であってもよい。
(2)
上記(1)の糖鎖の製造方法は、糖鎖がO結合型糖鎖であってよい。
このように、本発明は、糖鎖の遊離が化学処理によって行われるO結合型糖鎖である場合に特に有用である。
(3)
上記(1)の糖鎖の製造方法は、糖鎖がN結合型糖鎖であってよい。
この場合、糖タンパク質からの糖鎖の回収率をさらに向上させることができる。
(4)
上記(1)から(3)のいずれかの糖鎖の製造方法は、化学試薬がアンモニウム塩であってよい。
これによって、ピーリング反応を抑制し、回収される糖鎖の質を向上させることができる。
(5)
上記(1)から(4)のいずれかの糖鎖の製造方法は、タンパク質分解酵素がプロナーゼ、キモトリプシン、トリプシン、から選ばれる少なくとも1種であってよい。
これによって、糖鎖以外の部分がアミノ酸又はペプチドレベルまで分解され、糖タンパク質からの糖鎖の回収率をさらに向上させることができる。
特に分解酵素としてプロナーゼを用いた場合は、糖鎖以外の部分がアミノ酸レベルまで分解され、糖タンパク質からの回収率をより一層向上させることができる。
(6)
本発明の糖鎖の製造キットは、上記(1)から(5)のいずれかに記載の糖鎖の製造方法を示す情報の表示と、タンパク質分解酵素と、糖鎖を遊離する化学試薬と、
を含む。
これによって、糖タンパク質からの糖鎖の回収率をより一層向上させる糖鎖の製造方法を行うことができる。
実施例1から実施例3および比較例1で得られた液体クロマトグラフである。 図1で検出されたピーク(Peak1,Peak2,Peak3,Peak4)それぞれが占める面積の割合を示す。 図1で検出されたピーク(Peak1,Peak2,Peak3,Peak4)の総面積値を示す。
[1.分解工程]
分解工程では、糖タンパク質を含む試料と、タンパク質分解酵素とを混合し、分解物を得る。
[1−1.糖タンパク質を含む試料]
[1−1−1.糖タンパク質]
糖タンパク質は、少なくとも糖鎖を複合成分として含むタンパク質であればよい。
糖タンパク質の糖鎖部分は、修飾を受けているか否かにかかわらず、天然の構造を有していてもよいし、人工的に改変されていてもよい。糖鎖部分は、中性糖鎖であってもよいし、酸性糖鎖であってもよい。さらに、糖タンパク質における糖鎖結合部位も、天然物と同じ部位であってもよいし、天然物では糖鎖が結合していない部位であってもよい。
糖タンパク質の糖鎖部分は、O−結合型糖鎖であってもよいし、N−結合型糖鎖であってもよい。
O−結合型糖鎖は、酸素(O)原子を介して結合された糖鎖をいう。代表的には、セリン又はスレオニンのOH(水酸基)を介して結合することから、セリンスレオニン結合型糖鎖とも呼ばれる。このような糖鎖としては、たとえば、セリン又はスレオニン残基へのN−アセチルガラクトサミンの付加反応によって生じるO−N−アセチルガラクトサミン(O−GalNAc)が挙げられる。O−結合型糖鎖としては、このほかに、O−GlcNAc(O−N−アセチルグルコサミン)、O−フコース(Notchタンパク質のEGF様リピートのコンセンサス配列が−C−X−X−G−G−S/T−C−(Xは任意のアミノ酸残基。)、O−グルコース(Notchタンパク質のEGF様リピートのコンセンサス配列が−C−X−S−X−P−C−(Xは任意のアミノ酸残基)に付加するものが知られる)。O−マンノース配糖体も存在する。また、コンドロイチン硫酸及びヘパラン硫酸といったプロテオグリカンは、O−キシロース配糖体とみなせる。O−型糖鎖の具体例としては、ムチン、エリスロポエチン、フェツイン、IgA、エタネルセプトなどが挙げられる。
N−結合型糖鎖は、タンパク質のアスパラギン残基に結合している糖鎖をいう。
糖タンパク質のタンパク質部分は、アミノ酸残基数が50以上(たとえば50以上10000以下のタンパク質を構成する残基数)であるものであってよいが、本発明では、アミノ酸残基数が50未満(ペプチドを構成する残基数)であるものも含む。
糖タンパク質の具体例として、抗体、ホルモン、サイトカイン、酵素、血清タンパク質、ワクチン、受容体、およびこれらを含む複合体からなる群から選ばれる生理活性物質であってよい。複合体としては、抗原と抗体との複合体、ホルモンと受容体との複合体、サイトカインと受容体との複合体、血清タンパク質と薬物との複合体、酵素と基質、およびワクチンと病原体との複合体が挙げられる。
特に糖タンパク質が抗体を含む場合は、糖鎖解析の重要性が特に高い点で好ましい。抗体としては、IgG、IgM、IgA、IgD、IgEなどの免疫グロブリン;Fab、F(ab’)、F(ab’)、一本鎖抗体(scFv)、二重特異性抗体(diabody)などの低分子抗体;Fc領域と他の機能性蛋白質またはペプチドとの融合により構成されるFc融合タンパク質またはペプチドなどのFc含有分子;放射性同位元素配位性キレート、ポリエチレングリコール等の化学修飾基を付加した化学的修飾抗体などが挙げられる。また、抗体は、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体を問わない。さらに抗体は、抗体医薬品候補または抗体医薬品であってよい。抗体医薬品候補は、抗体医薬品の開発途上にある物質であり、抗体医薬品としての活性および安全性等の評価に基づく篩分けに供される物質である。
[1−1−2.試料]
糖タンパク質を含む試料としては、糖タンパク質から遊離糖鎖の分離、濃縮、精製又は分析を目的とするものであれば、特に限定されるものではない。たとえば、糖タンパク質を含む試料は、生物の全部又は一部から調製されたものであってよい。より具体的には、血清などの体液に由来する試料、培養細胞抽出物などの液体状の試料、組織試料等の固体試料(たとえば、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織サンプル)、およびそれらの試料から単離された糖タンパク質の溶液などが挙げられる。ほかに、糖タンパク質を含む試料は、人工的に合成された糖タンパク質の溶液であってもよい。
[1−2.タンパク質分解酵素]
タンパク質分解酵素は、酵素学的にアミノ酸残基間を切断することができるものであれば特に限定されない。タンパク質分解酵素の具体例としては、プロナーゼ、キモトリプシン、トリプシン、ペプシン、パパイン、フィシン、ブロメライン、Lys-C、Asp-N、Arg-C、プロテイナーゼK、リシルエンドペプチダーゼなどが挙げられる。
遊離糖鎖の回収率の点からは、タンパク質部分をより細かく切断することができるものほど好ましい。対象となる糖タンパク質のタンパク質部分のアミノ酸配列にも因るが、切断部分が多い酵素ほど好ましい。特に、3種以上のアミノ酸残基においてペプチド結合を切断する酵素であることが好ましい。たとえば上述の例で、プロナーゼ、キモトリプシンおよびトリプシンを挙げると、プロナーゼはアミノ酸レベルまで分解する酵素であり、キモトリプシンは、チロシン・トリプトファン・フェニルアラニンそれぞれの残基のC末端側を切断する酵素であり、トリプシンは、リシン・アルギニンそれぞれの残基のC末端側を切断する酵素であるから、プロナーゼ、キモトリプシン、トリプシンの順に好ましい。
タンパク質分解酵素は、水または緩衝液とともに用いられてよい。遊離糖鎖の回収量の点からは、水および緩衝液のいずれを用いても構わない。緩衝液を用いる場合、緩衝剤としては、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、塩化アンモニウム、クエン酸水素二アンモニウム、カルバミン酸アンモニウムなどが挙げられる。緩衝液は、pHが5以上10以下、好ましくは7.5以上10以下であってよい。緩衝液のpHがこの範囲内であることは、タンパク質分解酵素の活性を保つ点で好ましい。
[1−3.操作および反応条件]
分解工程では、タンパク質分解酵素の至適条件(温度およびpH)が満たされた、糖タンパク質とタンパク質分解酵素とを含む分解反応液が調製されればよい。
分解反応液において、糖タンパク質の濃度は、たとえば0.1μg/ml以上100mg/ml以下、好ましくは1μg/ml以上10mg/ml以下であってよい。分解反応液中の糖タンパク質の濃度が上記下限値以上であることは、検出性の点で好ましく、上記上限値以下であることは、定量性の点で好ましい。
タンパク質分解酵素の使用量を上記の範囲に設定することによって、効率的なタンパク質分解が可能となる。
反応pHは、タンパク質分解酵素の至適pHに合わせればよいが、たとえば5以上10以下、好ましくは7.5以上10以下であってよい。反応温度も、糖鎖分解酵素の至適温度に合わせればよいが、たとえば4℃以上90℃以下であってよい。
反応時間は、糖タンパク質のスケールなどにもよるが、たとえば5秒以上24時間以下であってよい。
[1−4.分解物]
分解工程によって得られる分解物は、アミノ酸またはペプチド断片と、アミノ酸またはペプチド断片に結合した糖鎖と、を含む。つまり、分解物は、糖タンパク質において存在していたアミノ酸残基と糖鎖との間の結合は切断されず、タンパク質部分が切断された混合物として得られる。分解物は、溶媒を含む状態で得てよい。
[2.遊離工程]
遊離工程では、分解物と、糖鎖を遊離する化学試薬とを混合し、遊離分解物を得る。
[2−1.糖鎖を遊離する化学試薬]
糖鎖を遊離する化学試薬は、糖鎖とアミノ酸残基との結合を化学分解できる試薬であれば特に限定されない。好ましくは、アンモニウム塩が挙げられる。アンモニウム塩としては、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、ギ酸アンモニウム等の無機塩及び有機塩、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。これらの中でも、アンモニウム塩としては、O−結合型糖鎖の遊離におけるピーリングの発生抑制および/または遊離反応時間の短縮化の点から、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、及びカルバミン酸アンモニウム、並びにこれらの組み合わせが好ましく、O−結合型糖鎖の回収量をより多く得る点からは、カルバミン酸アンモニウムが好ましい。
上記のアンモニウム塩は、アンモニウム塩以外の物質とともに用いられてよい。アンモニウム塩以外の物質としては、反応性向上および/またはpH安定化等の観点から、界面活性剤;無機塩(リン酸水素ナトリウムおよびリン酸水素カリウム等);カルバミン酸誘導体(カルバミン酸メチルおよびカルバミン酸エチル等);有機塩(酢酸ナトリウムおよびギ酸ナトリウム等)が挙げられる。
[2−2.操作および反応条件]
遊離工程では、分解物(分解工程の産物)と糖鎖を遊離する化学試薬とが混合された遊離反応液を調製し、糖鎖遊離反応を進行させる。化学試薬は、溶媒で希釈されない状態で分解物中に投入されてもよいし、一旦溶媒に溶解された状態で分解物中に投入されてもよい。
糖鎖を遊離する化学試薬の量は、遊離反応液1μmあたり0.5mg以上30mg以下であってよい。化学試薬の量を上記下限以上とすることは、反応を効率よく行なう点で好ましく、上記上限以下とすることは、試薬の除去を効率よく行う点で好ましい。これらの効果をより良好に得る観点から、遊離反応液1μmあたりの化学試薬の量は、好ましくは1.0mg以上25mg以下、より好ましくは1.5mg以上20mg以下であってよい。
遊離工程における反応温度は、たとえば45℃以上58℃以下であってよい。反応温度が上記下限以上であることは遊離反応時間短縮化の点で好ましく、上記上限以下であることはピーリング発生抑制の点で好ましい。これらの効果をより良好に得る観点から、反応温度は、好ましくは50℃以上58℃以下、より好ましくは53℃以上57℃以下、さらに好ましくは54℃以上56℃以下であってよい。
遊離工程における反応時間は、たとえば2時間以上24時間以下であってよい。反応時間が上記下限以上であることは遊離糖鎖の回収量の点で好ましく、上記上限以下であることはピーリングの発生抑制および/または遊離反応時間の短縮化の点で好ましい。これらの効果をより良好に得る観点から、反応時間は、好ましくは3時間以上20時間以下、より好ましくは4時間以上15時間以下であってよい。
[2−3.遊離分解物]
遊離工程によって得られる遊離分解物は、アミノ酸またはペプチド断片と、遊離した糖鎖とを含む。つまり、遊離分解物は、分解工程で得られた分解物に含まれていた、アミノ酸またはペプチド断片に結合した糖鎖から糖鎖が遊離した混合物として得られる。
[3.遊離分解物から遊離糖鎖の精製]
得られた遊離糖鎖は、任意の段階で(一例として、上述の遊離工程の後、後述の標識の前)遊離分解物中から分離して精製することができる。
遊離糖鎖の回収においては、遊離分解物から不要物を除去することで、遊離糖鎖を回収することができる。不要物の除去は、遊離分解物を精製用固相に接触させることで遊離糖鎖を精製用固相に捕捉させ、捕捉させた遊離糖鎖を再溶出することで行われてよい。
精製用固相の一例として、遊離糖鎖を非共有結合によって捕捉する固相が挙げられる。具体的には、シリカゲルカラム、アミノカラム、その他の順相固相を用いることができる。
精製用固相の他の例として、遊離糖鎖を共有結合によって捕捉する固相が挙げられる。これによって、アミノ酸またはペプチド断片などが混在する遊離分解物からの遊離糖鎖の精製度を向上させることができる。具体的には、ヒドラジド基を有するポリマーを精製用固相担体として用いることができる。分離液中では、遊離糖鎖は環状のヘミアセタール型と非環状のアルデヒド型との平衡状態を生じているため、このアルデヒド基−CHOとヒドラジド基−NH−NHとが特異的に反応し、安定的な結合−C=N−NH−を形成する。これによって、精製用固相担体に遊離糖鎖を捕捉することができる。再遊離では、酸と有機溶媒との混合溶媒または酸と水と有機溶媒の混合溶媒を固相担体に接触させて反応させることができる。当該混合溶媒のpHはたとえば2以上9以下、好ましくは2以上7以下、より好ましくは2以上6以下であってもよく、弱酸性から中性付近で反応させる場合は、シアル酸残基の脱離など糖鎖の加水分解を抑制することができる点で好ましい。しかしながら、さらにpHが低い強酸条件も許容する。なお、固相担体としては、好ましくはBlotGlyco(商標、住友ベークライト製)ビーズ、アミノオキシ基を有するビーズ、又はヒドラジドビーズなどが挙げられる。
[4.遊離糖鎖の標識]
得られた遊離糖鎖は、任意の段階で(一例として、上述の回収の後、後述の分析の前)、標識試薬と混合されることで標識されてよい。
標識試薬は、糖鎖に対する反応性基と、糖鎖に付すべき修飾基とを有するものであれば特に限定されない。糖鎖に対する反応性基としては、オキシルアミノ基、ヒドラジド基、アミノ基などが挙げられる。修飾基は、糖鎖の分析手法に応じて当業者が適宜選択することができる。
たとえば、修飾試薬が、糖鎖への反応性基としてオキシルアミノ基またはヒドラジド基を有する場合、糖鎖に付すべき修飾基としては、たとえば、アルギニン残基、トリプトファン残基、フェニルアラニン残基、チロシン残基、システイン残基、リジン残基からなる群から選ばれるアミノ酸残基を選択することができる。修飾試薬がアルギニン残基を含む場合、修飾された糖鎖のMALDI−TOF−MS測定時にイオン化促進され、検出感度が向上する点で好ましい。トリプトファン残基を含む場合、当該残基は蛍光性かつ疎水性であることから、修飾された糖鎖の逆相HPLC検出時に、分離性が向上および蛍光検出感度が向上する点で好ましい。修飾試薬がフェニルアラニン残基および/またはチロシン残基を含む場合、修飾された糖鎖のUV吸収による検出に適する点で好ましい。修飾試薬がシステイン残基を含む場合、当該残基の−SH基を標的としてICAT試薬(米国ABI社)などのラベル化試薬によるラベル化ができる。修飾試薬がリジン残基を含む場合、当該残基のアミノ基を標的としてiTRAQ試薬(米国Applied Biosystems社)、ExacTag試薬(米国Perkin社)などのラベル化試薬によるラベル化ができる。修飾試薬がトリプトファン残基を含む場合、当該残基のインドール基を標的としてNBS試薬(日本国、島津製作所)によるラベル化ができる。
またたとえば、修飾試薬が糖鎖への反応性基としてアミノ基を有する場合、糖鎖に付すべき修飾基としては、芳香族基が挙げられる。アミノ基および芳香族基を有する修飾試薬の使用では、還元アミノ化による修飾が行われる。芳香族基は、紫外可視吸収特性または蛍光特性を有するため、UV検出または蛍光検出での検出感度が向上する点で好ましい。このような芳香族基を与える修飾試薬としては、具体的には、8−aminopyrene−1,3,6−trisulfonate,8−aminonaphthalene−1,3,6−trisulphonate,7−amino−1,3−naphtalenedisulfonic acid,2−amino9(10H)−acridone,5−aminofluorescein,dansylethylenediamine,2−aminopyridine,7−amino−4−methylcoumarine,2−aminobenzamide,2−aminobenzoic acid,3−aminobenzoic acid,7−amino−1−naphthol,3−(acetylamino)−6−aminoacridine,2−amino−6−cyanoethylpyridine,ethyl p−aminobenzoate,p−aminobenzonitrile,及び7−aminonaphthalene−1,3−disulfonic acidが挙げられる。この中でも、2−aminobenzamideは、反応スケールが大きい場合であっても夾雑物(例えば、塩、タンパク質その他の生体分子)の影響を比較的受けにくい点で好ましい場合がある。一方、本発明の調製方法は反応スケールが小さい場合に特に有用であるため、反応スケールが小さいほど夾雑物の影響は受けにくくなるため、より多種多様の標識試薬へ適用することができる。なお、修飾試薬としての機能が維持される限りにおいて、上述の化合物の誘導体もまた好ましく用いられる。
修飾試薬は、水、緩衝液および/または有機溶媒に溶解させて使用される。緩衝液としては、前述の遊離工程で用いられるものと同様の緩衝剤の水溶液が挙げられる。有機溶媒としては、アセトニトリル、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)および酢酸などの極性有機溶媒、ならびにヘキサンなどの非極性溶媒が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独でまたは2種以上が混合されて使用されてよい。
還元アミノ化による修飾においては、糖鎖の還元末端に形成されるアルデヒド基と標識試薬のアミノ基とを反応させ、形成されたシッフ塩基を還元剤により還元することで糖鎖の還元末端に修飾基が導入される。
還元剤としては、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、メチルアミンボラン、ジメチルアミンボラン、トリメチルアミンボラン、ピコリンボラン、ピリジンボランなどが挙げられる。
この中でも、安全性および反応性の両方の観点から、ピコリンボラン(2−ピコリン−ボラン)を用いることが好ましい。同様の観点から、ピコリンボランを還元剤として用いる場合、標識試薬としてはたとえば2−アミノベンズアミドを用いることが好ましい。
標識工程では、遊離糖鎖を含む試料に対して標識試薬を加える。還元アミノ化による修飾を行う場合は、遊離糖鎖を含む試料に対して標識試薬と還元剤とを加える。
[5.遊離糖鎖の分析]
本発明によって調製された遊離糖鎖は、必要に応じて上述の精製および/または標識を経て、質量分析法(例えば、MALDI-TOF MS)、クロマトグラフィ(例えば、高速液体クロマトグラフィやHPAE−PADクロマトグラフィ)、電気泳動(例えば、キャピラリ電気泳動)などの公知の方法により、定性的および/または定量的に分析することができる。遊離糖鎖の分析においては、各種データベース(例えば、GlycoMod、Glycosuite、SimGlycan(登録商標)など)を利用することができる。
このような糖タンパク質から得た遊離糖鎖の分析によって、たとえば、糖鎖バイオマーカーの検索研究などの際に行われる血清などの検体中の糖タンパク質の分析;幹細胞の糖鎖分析;電気泳動ゲルバンド中の糖鎖分析;植物組織の糖鎖分析;抗体医薬品の研究開発、製造および品質保証などの際に行われる抗体医薬品の糖鎖修飾分析などを迅速に行うことが可能となる。
[6.キット]
本発明の糖鎖の製造キットは、上記の本発明の糖鎖の製造方法を実施するためのキットである。本発明のキットには、タンパク質分解酵素、糖鎖を遊離する化学試薬、および糖鎖の製造方法を示す情報の表示を含む。糖鎖の製造方法を示す情報の表示は、キット使用のためのプロトコル情報を示すものであり、上述の本発明の糖鎖の製造方法が示された印刷物であってもよいし、当該方法が示されたウェブ上の情報へのアクセスを可能とするアクセス情報であってもよい。
本発明のキットには、上記の他、容器、精製用固相、標識試薬の少なくともいずれかを含んでもよい。容器としては、カラム、マルチウェルプレート、フィルタープレート、マイクロチューブ、スピンカラム、コレクションチューブなどが挙げられる。
下記の試料を、下記のプロトコル(実施例1、実施例2および実施例3)に従って処理し、タンパク質部分の分解(分解工程)、糖鎖の遊離(遊離工程)、ビーズによる糖鎖捕捉、ビーズからの糖鎖遊離、及び2−ベンズアミド(2−AB)による糖鎖標識を行い、得られた遊離糖鎖の標識物を下記条件で分析した。なお、以下において特に言及のない限り、%で表される量は体積を基準とするものとする。
[試料の調製]
ウシ胎仔血清由来のO−結合型糖タンパク質フェチュイン(SIGMA社製「Fetuin from fetal calf serum」)を用いた。
[実施例1]
・分解工程
1mg以上の前記糖タンパク質を準備
↓超純水で1mg/mLのサンプル溶液に調整
↓20μLのサンプル溶液に、プロナーゼ(メルク社製、#537088)(1mg/mL)を2μL、重炭酸アンモニウム(2M)を1μL添加
↓37℃/4時間処理
・糖鎖遊離工程
↓カルバミン酸アンモニウム300mgと撹拌混合
(pH=9.3)
↓55℃、5時間で反応
・過剰試薬除去工程
60℃、オーバーナイト、遠心減圧乾燥
↓20μLの超純水に溶解して糖鎖溶液を調製
・糖鎖捕捉工程
50mgのBlotGlyco(商標、住友ベークライト製)ビーズを500μLの超純水に分散し、うち50μLを使用
↓20μLの糖鎖溶液(前工程で得たもの)と混合
↓180μLの2%酢酸−アセトニトリル溶液を添加
↓80℃、60分間で糖鎖を捕捉
・洗浄工程
↓200μLの2M塩酸グアニジン溶液で2回洗浄
↓200μLの超純水で2回洗浄
↓200μLの1%トリエチルアミン−メタノール溶液で2回洗浄
・官能基キャッピング工程
↓100μLの10%無水酢酸−メタノール溶液を前工程後のビーズに添加
↓室温、30分間で反応
・糖鎖再遊離工程
↓200μLの超純水で2回洗浄
↓20μLの超純水+180μLの2%酢酸−アセトニトリル溶液を添加
↓70℃、90分間で糖鎖を再遊離
・標識工程
↓350mMの2−アミノベンズアミド(2−AB)、1Mシアノ水素化ホウ素ナトリウム、30%酢酸/DMSO溶液を50μL添加
↓60℃、120分間で2−ABラベル化反応し、遊離糖鎖の2−AB標識物を取得
[実施例2]
プロナーゼ(メルク社製、#537088)(1mg/mL)の代わりに、トリプシン(シグマ社製、T0303)(1mMのHCl中1mg/mL)を用いたことを除いて、実施例1と同様に遊離糖鎖の2−AB標識物を取得した。
[実施例3]
プロナーゼ(メルク社製、#537088)(1mg/mL)の代わりに、キモトリプシン(カルビオケム社製、#230832)(1mg/mL)を用いたことを除いて、実施例1と同様に遊離糖鎖の2−AB標識物を取得した。
[比較例1]
分解工程を以下の対照工程に置き換えたことにより実質的に分解工程を行わなかったことを除いて、実施例1と同様にして遊離糖鎖の2−AB標識物を取得した。
・対照工程
1mg以上の前記糖タンパク質を準備
↓超純水で1mg/mLのサンプル溶液に調整
↓37℃/4時間処理
[遊離糖鎖の2−AB標識物の検出条件]
実施例1から実施例3および比較例で得られた遊離糖鎖の2−AB標識物を以下の条件で検出した。その結果を図1から図3に示す。図1は液体クロマトグラフを示し、図2は図1で検出されたピーク(Peak1,Peak2,Peak3,Peak4)それぞれが占める面積の割合(Peak1,Peak2,Peak3,Peak4の面積の合計を100%とした場合の割合)を示し、図3は実施例1から実施例3および比較例1で得られた上記ピーク(Peak1,Peak2,Peak3,Peak4)の総面積値を示す。なお、Peak1は(Hex)(NeuAc)のピーリング産物、Peak2はO型糖鎖(HexNAc)(Hex)(NeuAc)、Peak3はO型糖鎖(HexNAc)(Hex)(NeuAc)、Peak4はO型糖鎖(HexNAc)(Hex)(NeuAc)であった。
(糖鎖検出条件)
LC装置:Nexera(島津製作所製)
LC分析条件
カラム:ACQUITY UPLC(商標) BEH Glycan, 1.7 μm(2.1 mm I.D. × 150 mm L.)
カラム温度:40 ℃
移動相A:0.1%ギ酸含有40%アセトニトリル水溶液
移動相B:0.1%ギ酸含有90%アセトニトリル水溶液
流速:0.2 mL/min
注入量:1 μL
蛍光検出器:RF−20A xs(励起波長 330nm, 蛍光波長 420nm)
濃度勾配条件:表1のとおり

Claims (6)

  1. 糖タンパク質を含む試料と、タンパク質分解酵素とを混合し、分解物を得る分解工程と、
    前記分解物と、糖鎖を遊離する化学試薬とを混合し、遊離分解物を得る遊離工程と、
    を含む、糖鎖の製造方法。
  2. 前記糖鎖がO結合型糖鎖である、請求項1に記載の糖鎖の製造方法。
  3. 前記糖鎖がN結合型糖鎖である、請求項1に記載の糖鎖の製造方法。
  4. 前記化学試薬がアンモニウム塩である、請求項1から3のいずれか1項に記載の糖鎖の製造方法。
  5. 前記タンパク質分解酵素がプロナーゼ、キモトリプシン、トリプシンから選ばれる少なくとも1種である、請求項1から4のいずれか1項に記載の糖鎖の製造方法。
  6. 請求項1から5のいずれか1項に記載の糖鎖の製造方法を示す情報の表示と、
    前記タンパク質分解酵素と、
    前記糖鎖を遊離する化学試薬と、
    を含む、糖鎖の製造キット。
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