JP2018095852A - ポリアミド樹脂組成物およびそれを成形してなる成形体 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い難燃性や機械的特性を有しながら金属腐食性を抑制することができるポリアミド樹脂組成物を提供する。【解決手段】融点が300〜350℃の半芳香族ポリアミド(A)を20〜80質量%、ホスフィン酸金属塩(B)を5〜30質量%、炭酸金属塩(C)を0.1〜8質量%、脂肪酸バリウム塩(D)を0.01〜3質量%、およびヒンダードフェノール構造を有するヒドラジン系化合物(E)を0.01〜5質量%含有することを特徴とするポリアミド樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、難燃性を有するポリアミド樹脂組成物に関する。
ポリアミドは、耐熱性、機械的特性が優れており、多くの電気・電子部品、自動車のエンジン周りの部品として使用されている。これらの部品の中でも、電気・電子部品に使用されるポリアミドには、さらに高度な難燃性が要求されている。
ポリアミドに難燃性を付与する方法として、難燃剤を用いる方法が通常行なわれている。近年、環境意識の高まりから、ハロゲン系難燃剤が避けられ、一般的に、非ハロゲン系難燃剤が使用されている。
例えば、特許文献1には、非ハロゲン系難燃剤として、メラミンとリン酸の反応生成物と、ホスフィン酸金属塩と、金属化合物との混合物を用いることが開示され、1/16インチの成形品において難燃規格UL94V−0規格を満足することが開示されている。しかしながら、ホスフィン酸金属塩を含有するポリアミド樹脂組成物は、金属腐食性が大きく、溶融加工時において、押出機のスクリューやダイス、また成形機のスクリューや金型などの金属部品を激しく摩耗するので、量産性に欠けるという問題があった。またこの組成物は、成形加工時に、ガスの発生が多く、金型に汚れが付着する問題もあった。
また、電気・電子部品の実装は表面実装が主流となっており、リフロー工程において、部品を構成するポリアミドは、最高温度260℃程度の高温にさらされることとなる。したがって、ポリアミドとして、耐リフロー性を有する、融点が270℃以上の耐熱ポリアミドの使用が必要とされる場面が多くなっている。耐熱ポリアミドは、高融点ゆえに加工温度が高いため、ホスフィン酸金属塩を含有する耐熱ポリアミド樹脂組成物においては、溶融加工時において、上記金属腐食性がさらに大きいという問題があった。
これらの問題に対して、金属腐食性やガス発生を抑制するための方法として、助剤を配合する技術が種々開示されており、特許文献2では酸化カルシウムを、また、特許文献3〜4では無機金属化合物や脂肪酸金属塩を助剤として配合する技術が開示され、特許文献5では、特定構造のポリアミドに無機アルミニウム化合物を配合する技術が開示され、また、特許文献6は、特定の条件で押出しする技術が開示されている。しかしながら、これらの技術は、難燃性や機械的特性を犠牲にした技術であり、ますます薄肉化・小型化・高性能化が求められる中で、十分なものとは言えなかった。
特開2007−023206号公報 特表2012−523469号公報 特表2011−513540号公報 国際公開第2008/126381号 国際公開第2014/148519号 国際公開第2009/107514号
本発明は、ホスフィン酸金属塩を含有し、金属腐食作用が促進される高温での溶融加工が必要となる300〜350℃の融点を有する半芳香族ポリアミドからなる樹脂組成物における上記課題を解決するものであって、従来技術では達成困難であった、高い難燃性や機械的特性を有しながら金属腐食性を抑制することができるポリアミド樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、ホスフィン酸金属塩を含有するポリアミド樹脂組成物は、複数の特定の化合物を特定量含有することにより、優れた難燃性や機械的特性を有しつつも、溶融加工時における金属腐食性が抑制されることを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明の要旨は下記の通りである。
(1)融点が300〜350℃の半芳香族ポリアミド(A)を20〜80質量%、ホスフィン酸金属塩(B)を5〜30質量%、炭酸金属塩(C)を0.1〜8質量%、脂肪酸バリウム塩(D)を0.01〜3質量%、およびヒンダードフェノール構造を有するヒドラジン系化合物(E)を0.01〜5質量%含有することを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
(2)ホスフィン酸金属塩(B)が、下記一般式(I)または(II)で表される化合物であることを特徴とする(1)記載のポリアミド樹脂組成物。
(式中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、直鎖または分岐鎖の炭素数1〜16のアルキル基またはフェニル基を表す。Rは、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数6〜10のアリーレン基、アリールアルキレン基、または、アルキルアリーレン基を表す。Mは、カルシウムイオン、アルミニウムイオン、マグネシウムイオンまたは亜鉛イオンを表す。mは、2または3である。n、a、bは、2×b=n×aの関係式を満たす整数である。)
(3)炭酸金属塩(C)を構成する金属が、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、リチウムからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする(1)または(2)に記載のポリアミド樹脂組成物。
(4)脂肪酸バリウム塩(D)を構成する脂肪酸が、ラウリン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
(5)ヒンダードフェノール構造を有するヒドラジン系化合物(E)が、下記式(III)で表される化合物であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
(6)さらに融点が200〜300℃の脂肪族ポリアミド(F)を含有することを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
(7)さらに強化材(G)を5〜60質量%含有することを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
(8)強化材(G)が、平均粒径が10〜30μmであるタルクを含有することを特徴とする(7)記載のポリアミド樹脂組成物。
(9)(1)〜(8)のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形体。
本発明によれば、高融点のポリアミドとホスフィン酸金属塩を含有する樹脂組成物における、高難燃性と低金属腐食性という従来両立が困難であった2つの性質を、高い水準で両立させることを可能とした難燃性ポリアミド樹脂組成物を提供することができ、同時に機械的特性に優れた成形体を提供することができる。
金属腐食性を評価するための装置を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、半芳香族ポリアミド(A)、ホスフィン酸金属塩(B)、炭酸金属塩(C)、脂肪酸バリウム塩(D)、およびヒンダードフェノール構造を有するヒドラジン系化合物(E)を含有する。
本発明のポリアミド樹脂組成物において、半芳香族ポリアミド(A)の含有量は、樹脂組成物全体に対して20〜80質量%であることが必要であり、30〜75質量%であることが好ましく、40〜55質量%であることがより好ましい。半芳香族ポリアミド(A)の含有量が、20質量%未満であると、樹脂組成物は、溶融混練や溶融成形が困難となったり、機械的特性が低下し、一方、半芳香族ポリアミド(A)の含有量が、80質量%を超えると、樹脂組成物は、高難燃性を発揮することが難しくなることがある。
本発明において、半芳香族ポリアミド(A)は、構成成分として芳香族ジカルボン酸成分と脂肪族ジアミン成分を含有する。半芳香族ポリアミド(A)は、共重合成分を含んでいてもよいが、耐熱性や機械強度、耐薬品性、結晶化が速く低温金型で成形体が得られるなどの点から、共重合していないことが好ましく、すなわち単一の芳香族ジカルボン酸成分と単一の脂肪族ジアミン成分からなることが好ましい。
本発明において、半芳香族ポリアミド(A)を構成する芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸が挙げられる。中でも、耐熱性を向上することができることから、テレフタル酸が好ましい。
芳香族ジカルボン酸成分以外に共重合する酸成分としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸や、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸等のジカルボン酸が挙げられる。テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸や脂肪族ジカルボン酸や脂環式ジカルボン酸の共重合量は、半芳香族ポリアミド(A)の融点や耐熱性を低下させないために、原料モノマーの総モル数に対し、5モル%以下であることが好ましく、実質的に含まれないことがより好ましい。
本発明において、半芳香族ポリアミド(A)を構成する脂肪族ジアミン成分としては、例えば、1,2−エタンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミンが挙げられる。脂肪族ジアミン成分は、上記の複数種を併用するよりも、1種を単独で用いることが好ましく、耐熱性、機械的特性、吸水性のバランスが良好であり、また耐薬品性に優れた成形体が得られることから、1,10−デカンジアミンを単独で用いることが好ましい。
脂肪族ジアミン成分以外に共重合するジアミン成分としては、シクロヘキサンジアミン等の脂環式ジアミンや、キシリレンジアミン、ベンゼンジアミン等の芳香族ジアミンが挙げられる。脂肪族ジアミン成分以外の脂環式ジアミンや芳香族ジアミンの共重合量は、脂肪族ジアミン成分によってもたらされる上記特性を損なわないため、原料モノマーの総モル数に対し、5モル%以下であることが好ましく、実質的に含まれないことがより好ましい。
本発明において、半芳香族ポリアミド(A)を構成する上記以外の共重合成分として、カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸等のω−アミノカルボン酸が挙げられる。これらの共重合量は、半芳香族ポリアミド(A)の耐熱性、機械的特性、耐薬品性を低下させないために、原料モノマーの総モル数に対し、5モル%以下であることが好ましく、実質的に含まれないことがより好ましい。
本発明において、半芳香族ポリアミド(A)は、モノカルボン酸成分を構成成分とすることが好ましい。モノカルボン酸成分の含有量は、半芳香族ポリアミド(A)を構成する全モノマー成分に対して0.3〜4.0モル%であることが好ましく、0.3〜3.0モル%であることがさらに好ましく、0.3〜2.5モル%であることがより好ましく、0.8〜2.5モル%であることが特に好ましい。上記範囲内でモノカルボン酸成分を含有することにより、重合時の分子量分布を小さくできたり、成形加工時の離型性の向上がみられたり、成形加工時においてガスの発生量を抑制することができたりする。一方、モノカルボン酸成分の含有量が上記範囲を超えると、機械的特性や難燃性が低下することがある。なお、本発明において、モノカルボン酸の含有量は、半芳香族ポリアミド(A)中のモノカルボン酸の残基、すなわち、モノカルボン酸から末端の水酸基が脱離したものが占める割合をいう。
半芳香族ポリアミド(A)は、モノカルボン酸成分として、分子量が140以上のモノカルボン酸を含有することが好ましく、分子量が170以上のモノカルボン酸を含有することがさらに好ましい。モノカルボン酸の分子量が140以上であると、離型性が向上し、成形加工時の温度においてガスの発生量を抑制することができ、また成形流動性も向上することができる。
モノカルボン酸成分としては、脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸が挙げられ、中でも、ポリアミド由来成分の発生ガス量を減少させ、金型汚れを低減させ、離型性を向上することができることから、脂肪族モノカルボン酸が好ましい。
分子量が140以上の脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、カプリル酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸が挙げられる。中でも、汎用性が高いことから、ステアリン酸が好ましい。
分子量が140以上の脂環族モノカルボン酸としては、例えば、4−エチルシクロヘキサンカルボン酸、4−へキシルシクロヘキサンカルボン酸、4−ラウリルシクロヘキサンカルボン酸が挙げられる。
分子量が140以上の芳香族モノカルボン酸としては、例えば、4−エチル安息香酸、4−へキシル安息香酸、4−ラウリル安息香酸、1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸およびそれらの誘導体が挙げられる。
モノカルボン酸成分は、単独で用いてもよいし、併用してもよい。また、分子量が140以上のモノカルボン酸と分子量が140未満のモノカルボン酸を併用してもよい。なお、本発明において、モノカルボン酸の分子量は、原料のモノカルボン酸の分子量を指す。
本発明において、半芳香族ポリアミド(A)は、融点が300〜350℃であることが必要であり、310〜350℃であることが好ましく、315〜340℃であることがより好ましい。半芳香族ポリアミド(A)は、融点が300℃未満であると、得られるポリアミド樹脂組成物は、耐熱性が不十分となる。一方、半芳香族ポリアミド(A)は、融点が350℃を超えると、ポリアミド結合の分解温度が約350℃であるため、溶融加工時に、炭化や分解が進行する。なお、本発明において、融点は、示差走査熱量計(DSC)にて、昇温速度20℃/分で昇温した際の吸熱ピークのトップとする。
本発明において、半芳香族ポリアミド(A)は、メルトフローレート(MFR)が1〜200g/10分であることが好ましく、10〜150g/10分であることがより好ましく、20〜120g/10分であることがさらに好ましい。MFRは、成形流動性の指標とすることができ、MFRの値が高いほど流動性が高いことを示す。半芳香族ポリアミド(A)のMFRが200g/10分を超えると、得られる樹脂組成物の機械的特性が低下する場合があり、半芳香族ポリアミド(A)のMFRが1g/10分未満であると、流動性が著しく低く、溶融加工できない場合がある。
半芳香族ポリアミド(A)は、従来から知られている加熱重合法や溶液重合法の方法を用いて製造することができる。中でも、工業的に有利である点から、加熱重合法が好ましく用いられる。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ホスフィン酸金属塩(B)を含有する。
本発明において、ホスフィン酸金属塩(B)の含有量は、樹脂組成物全体に対して5〜30質量%であることが必要であり、8〜25質量%であることが好ましく、8〜20質量%であることがさらに好ましい。ホスフィン酸金属塩(B)は、含有量が5質量%未満であると、必要とする難燃性を樹脂組成物に付与することが困難となる。一方、ホスフィン酸金属塩(B)の含有量が30質量%を超えると、樹脂組成物は、難燃性に優れる反面、金属腐食性が大きくなるとともに、溶融混練が困難となることがあり、また得られる成形体は機械的特性が不十分となることがある。
本発明におけるホスフィン酸金属塩(B)としては、下記一般式(I)で表されるホスフィン酸金属塩、および一般式(II)で表されるジホスフィン酸金属塩が挙げられる。
式中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、直鎖または分岐鎖の炭素数1〜16のアルキル基またはフェニル基であることが必要で、炭素数1〜8のアルキル基またはフェニル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−オクチル基、フェニル基であることがより好ましく、エチル基であることがさらに好ましい。RとRおよびRとRは互いに環を形成してもよい。
は、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数6〜10のアリーレン基、アリールアルキレン基、または、アルキルアリーレン基であることが必要である。直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜10のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、イソプロピリデン基、n−ブチレン基、tert−ブチレン基、n−ペンチレン基、n−オクチレン基、n−ドデシレン基が挙げられる。炭素数6〜10のアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基が挙げられる。アルキルアリーレン基としては、例えば、メチルフェニレン基、エチルフェニレン基、tert−ブチルフェニレン基、メチルナフチレン基、エチルナフチレン基、tert−ブチルナフチレン基が挙げられる。アリールアルキレン基としては、例えば、フェニルメチレン基、フェニルエチレン基、フェニルプロピレン基、フェニルブチレン基が挙げられる。
Mは、金属イオンを表す。金属イオンとしては、例えば、カルシウムイオン、アルミニウムイオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオンが挙げられ、アルミニウムイオン、亜鉛イオンが好ましく、アルミニウムイオンがより好ましい。
m、nは、金属イオンの価数を表す。mは、2または3である。aは、金属イオンの個数を表し、bは、ジホスフィン酸イオンの個数を表し、n、a、bは、「2×b=n×a」の関係式を満たす整数である。
ホスフィン酸金属塩やジホスフィン酸金属塩は、それぞれ、対応するホスフィン酸やジホスフィン酸と、炭酸金属塩、金属水酸化物または金属酸化物を用いて水溶液中で製造され、通常、モノマーとして存在するが、反応条件に依存して、縮合度が1〜3のポリマー性ホスフィン酸塩の形として存在する場合もある。
上記一般式(I)で表されるホスフィン酸塩の具体例としては、例えば、ジメチルホスフィン酸カルシウム、ジメチルホスフィン酸マグネシウム、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジメチルホスフィン酸亜鉛、エチルメチルホスフィン酸カルシウム、エチルメチルホスフィン酸マグネシウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸亜鉛、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸マグネシウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛、メチル−n−プロピルホスフィン酸カルシウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸マグネシウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸アルミニウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸亜鉛、メチルフェニルホスフィン酸カルシウム、メチルフェニルホスフィン酸マグネシウム、メチルフェニルホスフィン酸アルミニウム、メチルフェニルホスフィン酸亜鉛、ジフェニルホスフィン酸カルシウム、ジフェニルホスフィン酸マグネシウム、ジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ジフェニルホスフィン酸亜鉛が挙げられる。中でも、難燃性、電気特性のバランスに優れることから、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛が好ましく、ジエチルホスフィン酸アルミニウムがより好ましい。
また、ジホスフィン酸塩の製造に用いるジホスフィン酸としては、例えば、メタンジ(メチルホスフィン酸)、ベンゼン−1,4−ジ(メチルホスフィン酸)が挙げられる。
上記一般式(II)で表されるジホスフィン酸塩の具体例としては、例えば、メタンジ(メチルホスフィン酸)カルシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)マグネシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)アルミニウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)亜鉛、ベンゼン−1,4−ジ(メチルホスフィン酸)カルシウム、ベンゼン−1,4−ジ(メチルホスフィン酸)マグネシウム、ベンゼン−1,4−ジ(メチルホスフィン酸)アルミニウム、ベンゼン−1,4−ジ(メチルホスフィン酸)亜鉛が挙げられる。中でも、難燃性、電気特性のバランスに優れることから、メタンジ(メチルホスフィン酸)アルミニウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)亜鉛が好ましい。
ホスフィン酸金属塩(B)の具体的な商品としては、例えば、クラリアント社製「Exolit OP1230」、「Exolit OP1240」、「Exolit OP1312」、「Exolit OP1314」「Exolit OP1400」が挙げられる。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、金属腐食性を抑制する効果を得るために、炭酸金属塩(C)を含有することが必要であり、炭酸金属塩(C)の含有量は、樹脂組成物全体に対して0.1〜8質量%であることが必要であり、0.2〜5質量%であることが好ましく、0.5〜3質量%であることがより好ましい。ポリアミド樹脂組成物は、炭酸金属塩(C)の含有量が0.1質量%未満であると、十分な金属腐食性抑制効果が得られない。一方、炭酸金属塩(C)は、含有量が8質量%を超えると、ポリアミド樹脂組成物の難燃性に悪影響を与え、ポリアミド樹脂組成物は、十分な難燃性が得られなくなる。
炭酸金属塩(C)を構成する金属としては、例えば、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、リチウム、カリウム、バリウムなどが挙げられ、熱安定性や安全性の観点から、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、リチウムが好ましく、カルシウム、マグネシウムがさらに好ましく、カルシウムが特に好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、金属腐食性を抑制する効果を得るために、脂肪酸バリウム塩(D)を含有することが必要であり、脂肪酸バリウム塩(D)の含有量は、樹脂組成物全体に対して0.01〜3質量%であることが必要であり、0.05〜2質量%であることが好ましく、0.1〜1.5質量%であることがより好ましい。ポリアミド樹脂組成物は、脂肪酸バリウム塩(D)の含有量が、0.01質量%未満であると、十分な金属腐食抑制効果が得られない。一方、脂肪酸バリウム塩(D)は、含有量が3質量%を超えると、ポリアミド樹脂組成物の機械的特性への悪影響が大きく、ポリアミド樹脂組成物は、十分な機械強度が得られなくなる。
脂肪酸バリウム塩(D)を構成する脂肪酸としては、カプリン酸(C10)、ラウリン酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、ペンタデカン酸(C15)、パルミチン酸(C16)、マルガリン酸(C17)、ステアリン酸(C18)、12−ヒドロキシステアリン酸、アラキジン酸(C20)、ベヘン酸(C22)、リグノセリン酸(C24)、セロチン酸(C26)、モンタン酸(C28)、メリシン酸(C30)、エルカ酸、リシノール酸などが挙げられる。入手性や熱安定性の観点から、ラウリン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸が好ましく、ステアリン酸が特に好ましい。
本発明に用いるヒンダードフェノール構造を有するヒドラジン系化合物(E)は、パーオキシラジカルを補足する効果を有するヒンダートフェノール構造と、金属イオンをキレートするヒドラジン構造の両方を有している。具体的には、下記式(III)で表される化合物が挙げられる。
ポリアミド樹脂組成物は、ホスフィン酸金属塩(B)を含有すると、難燃性が向上するが、前述のように金属腐食性が大きくなる。しかしながら、ホスフィン酸金属塩(B)含有ポリアミド樹脂組成物は、上記炭酸金属塩(C)または脂肪酸バリウム塩(D)を含有することにより、金属腐食性を抑制することができ、これらを同時に含有すると、金属腐食性を著しく抑制することができる。その一方、ホスフィン酸金属塩(B)含有ポリアミド樹脂組成物は、炭酸金属塩(C)と脂肪酸バリウム塩(D)とを同時に含有すると、著しく難燃性が低下する。
しかしながら、ヒンダードフェノール構造を有するヒドラジン系化合物(E)をさらに含有することにより、樹脂組成物は、難燃性を飛躍的に向上させることができ、その結果、高い難燃性を有するともに、金属腐食性が抑制された樹脂組成物を得ることができる。またヒンダードフェノール構造を有するヒドラジン系化合物(E)を含有する樹脂組成物は、ホスフィン酸金属塩(B)の含有量を低減することができ、金属腐食性をさらに抑制することができる。
ヒンダードフェノール構造を有するヒドラジン系化合物(E)の含有量は、樹脂組成物全体に対して0.01〜5質量%であることが必要であり、0.05〜3質量%であることが好ましく、0.1〜2質量%であることがより好ましい。ヒンダードフェノール構造を有するヒドラジン系化合物(E)は、含有量が0.01質量%未満であると、難燃効率の向上効果が得られず、一方、含有量が5質量%を超えると、難燃効率が飽和し、それ以上の向上効果が見込めないばかりでなく、得られる成形体は、機械強度が不十分となる場合がある。
ヒンダードフェノール構造を有するヒドラジン系化合物(E)の具体的な商品としては、例えば、アデカ社製「CDA−10」、ビーエーエスエフ社製「IRGANOX MD 1024」などが挙げられる。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ホスフィン酸金属塩(B)、炭酸金属塩(C)、脂肪酸バリウム塩(D)、ヒンダードフェノール構造を有するヒドラジン系化合物(E)をそれぞれ特定量含有することにより、高融点のポリアミド樹脂組成物における、高難燃性と高機械的特性と低金属腐食性をすべて満足することができる。すなわち、溶融押出加工時の押出機のスクリューやダイス、また溶融成形加工時の成形機のスクリューや金型等の金属部品の腐食や摩耗を小さくすることができる。ホスフィン酸金属塩(B)を含有するポリアミド樹脂組成物における金属腐食性は、高温での溶融加工において特に顕著であることから、本発明の樹脂組成物の構成は、高融点ポリアミドを含有する樹脂組成物において、特に優れた効果を発揮することができる。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、融点が300℃〜350℃の半芳香族ポリアミド(A)とは別に、融点が200〜300℃の脂肪族ポリアミド(F)を含有してもよい。融点が200〜300℃の脂肪族ポリアミド(F)を含有することにより、樹脂組成物は、半芳香族ポリアミドに由来する耐熱性を有しながら、脂肪族ポリアミド(F)に由来する高流動性をも有する、バランスのとれた樹脂組成物を設計することが可能となる。さらには、樹脂組成物が高流動性となるため、溶融加工温度を下げることができ、また樹脂のせん断発熱を抑制できるので、金属腐食性をさらに抑制することができる。
融点が200〜300℃の脂肪族ポリアミド(F)としては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド10、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド1010、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド66/6共重合体などが挙げられる。中でも流動性の観点から、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46が好ましく、ポリアミド6、ポリアミド66がより好ましい。
半芳香族ポリアミド(A)と脂肪族ポリアミド(F)の質量比(A/F)は、95/5〜30〜70であることが好ましく、70/30〜40/60であることがより好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、さらに、強化材(G)を含有することが好ましい。
強化材(G)を含有する場合、含有量は、樹脂組成物全体に対して5〜60質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることがより好ましく、20〜50質量%であることがさらに好ましい。強化材(G)の含有量が5質量%未満であると、樹脂組成物は、機械的特性の向上効果が小さい場合がある。一方、含有量が60質量%を超えると、樹脂組成物は、機械的特性の向上効果が飽和しそれ以上の向上効果が見込めないばかりでなく、溶融加工時の作業性が低下し、樹脂組成物のペレットを得ることが困難になる場合がある。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、機械的特性の向上効果が高いことから、強化材(G)として、繊維状強化材を含有することが好ましい。
繊維状強化材としては、特に限定されないが、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ボロン繊維、アスベスト繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、全芳香族ポリアミド繊維、ポリベンズオキサゾール繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、ケナフ繊維、竹繊維、麻繊維、バガス繊維、高強度ポリエチレン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、チタン酸カリウム繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維、スチール繊維、セラミックス繊維、玄武岩繊維を挙げられる。中でも、機械的特性の向上効果の高く、ポリアミド(A)との溶融混練時の加熱温度に耐え得る耐熱性を有し、入手しやすいことから、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維が好ましい。繊維状強化材は、単独で用いてもよいし、併用してもよい。
ガラス繊維、炭素繊維は、シランカップリング剤で表面処理されていることが好ましい。シランカップリング剤は、集束剤に分散されていてもよい。シランカップリング剤としては、例えば、ビニルシラン系、アクリルシラン系、エポキシシラン系、アミノシラン系が挙げられ、中でも、半芳香族ポリアミド(A)とガラス繊維または炭素繊維との密着効果が高いことから、アミノシラン系カップリング剤が好ましい。
繊維状強化材の繊維長、繊維径は、特に限定されないが、繊維長は0.1〜7mmであることが好ましく、0.5〜6mmであることがさらに好ましい。繊維状強化材の繊維長が0.1〜7mmであることにより、成形性に悪影響を及ぼすことなく、樹脂組成物を補強することができる。また、繊維径は3〜20μmであることが好ましく、5〜13μmであることがさらに好ましい。繊維径が3〜20μmであることにより、溶融混練時に折損させることなく、樹脂組成物を補強することができる。
繊維状強化材の断面形状としては、円形、長方形、楕円、それ以外の異形断面等が挙げられ、中でも円形が好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、上記繊維状強化材に加えて、さらに、タルク、ガラスフレーク、マイカ、グラファイト、金属箔などの板状強化材を含有することが好ましく、平均粒径が10〜30μmのタルクを含有することがさらに好ましい。ポリアミド樹脂組成物は、脂肪族ポリアミド(F)を含有すると、流動性が高くなるが、耐リフロー性が低下し、ブリスターが発生することがある。しかし、上記平均粒径のタルクを含有することで、リフロー時のブリスター発生を抑制することができる。
タルクは、シランカップリング剤などの有機化合物で表面処理されていてもよい。表面処理されることにより,半芳香族ポリアミド(A)や脂肪族ポリアミド(F)との密着性が改善され、強度向上やブリスター抑制に効果がある。
本発明において、タルクの平均粒径とは、レーザー回折法により得られるメジアン径(D50)を指す。
タルクを含有する場合、含有量は,樹脂組成物全体に対して3〜15質量%であることが好ましく、5〜10質量%であることがより好ましい。タルクの含有量が3質量%未満であると、リフロー時のブリスター抑制効果が小さい。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、強化材(G)として、球状強化材を含有してもよく、球状強化材としては、カーボンブラック、炭化ケイ素、シリカ、石英粉末、ハイドロタルサイト、溶融シリカ、ガラス類(ガラスビーズ、ガラス粉、ミルドガラスファイバー)、ケイ酸塩(ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、カオリン、クレー、ケイ藻土等)、金属酸化物(酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ等)、硫酸塩(硫酸カルシウム、硫酸バリウム等)などが挙げられる。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、難燃助剤をさらに含有してもよい。難燃助剤としては、例えば、窒素系難燃剤、窒素−リン系難燃剤、無機系難燃剤が挙げられる。
窒素系難燃剤としては、メラミン系化合物、シアヌル酸またはイソシアヌル酸とメラミン化合物との塩等が挙げられる。メラミン系化合物の具体例として、メラミンをはじめ、メラミン誘導体、メラミンと類似の構造を有する化合物、メラミンの縮合物等であり、具体的には、メラミン、アンメリド、アンメリン、ホルモグアナミン、グアニルメラミン、シアノメラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、サクシノグアナミン、メラム、メレム、メトン、メロン等のトリアジン骨格を有する化合物、およびこれらの硫酸塩、メラミン樹脂等を挙げることができる。シアヌル酸またはイソシアヌル酸とメラミン化合物との塩とは、シアヌル酸類またはイソシアヌル酸類とメラミン系化合物との等モル反応物である。
窒素−リン系難燃剤としては、例えば、メラミンまたはその縮合生成物とリン化合物とから形成される付加物(メラミン付加物)、ホスファゼン化合物を挙げることができる。
前記メラミン付加物を構成するリン化合物としては、リン酸、オルトリン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸、ポリリン酸等が挙げられる。メラミン付加物の具体例として、メラミンホスフェート、メラミンピロホスフェート、ジメラミンピロホスフェート、メラミンポリホスフェート、メレムポリホスフェート、メラムポリホスフェートが挙げられ、中でも、メラミンポリホスフェートが好ましい。リンの数は、2以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましい。
ホスファゼン化合物の具体的な商品としては、例えば、伏見製薬所社製「ラビトルFP−100」、「ラビトルFP−110」、大塚化学社製「SPS−100」、「SPB−100」などが挙げられる。
無機系難燃剤としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物、ホウ酸亜鉛、リン酸亜鉛等の亜鉛塩、アルミン酸カルシウムなどが挙げられる。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、リン系酸化防止剤を含有することにより、さらに安定性、成形性に優れたものとすることができる。
リン系酸化防止剤は、無機化合物でも有機化合物いずれでもよい。リン系酸化防止剤としては、例えば、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸マグネシウム、亜リン酸マンガン等の無機リン酸塩、トリフェニルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリノニルフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(「アデカスタブPEP−36」)、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(「アデカスタブPEP−24G」)、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト(「アデカスタブPEP−8」)、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(「アデカスタブPEP−4C」)、1,1′−ビフェニル−4,4′−ジイルビス[亜ホスホン酸ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)]、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)4,4′−ビフェニレン−ジ−ホスホナイト(「ホスタノックスP-EPQ」)、テトラ(トリデシル−4,4′−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等の有機リン化合物が挙げられる。リン系酸化防止剤は、単独で用いてもよいし、併用してもよい。
リン系酸化防止剤は、ホスフィン酸金属塩(B)と均一に混ざりやすく、分解を防ぐため、難燃性を向上させることができる。また、リン系酸化防止剤は、半芳香族ポリアミド(A)の分解や分子量低下を防ぎ、溶融加工時の操業性、成形性、機械的特性を向上させることができる。
リン系酸化防止剤の含有量は、樹脂組成物全体に対し、0.1〜2質量%であることが好ましく、0.1〜1質量部であることがより好ましい。リン系酸化防止剤は、含有量を0.1〜2質量%であることにより、樹脂組成物の押出加工時の安定性、成形性、機械的特性を低下させることなく、成形時の金型からの離型性を向上させ、金型ガスベント口の詰まりを抑制し、連続射出成形性を向上させることができる。
本発明のポリアミド樹脂組成物には、必要に応じてその他の安定剤、着色剤、帯電防止剤、炭化抑制剤等の添加剤をさらに含有してもよい。着色剤としては、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック等の顔料、ニグロシン等の染料が挙げられる。安定剤としては、ヒンダートフェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、光安定剤、銅化合物からなる熱安定剤、アルコール類からなる熱安定剤等が挙げられる。炭化抑制剤は、耐トラッキング性を向上させる添加剤であり、金属水酸化物、ホウ酸金属塩等の無機物や、上記の熱安定剤等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物を製造する方法は、特に限定されないが、半芳香族ポリアミド(A)、ホスフィン酸金属塩(B)、炭酸金属塩(C)、脂肪酸バリウム塩(D)、およびヒンダードフェノール構造を有するヒドラジン系化合物(E)、また必要に応じて添加される脂肪族ポリアミド(F)、強化材(G)やその他添加剤などを配合して、溶融混練する方法が好ましい。溶融混練法としては、ブラベンダー等のバッチ式ニーダー、バンバリーミキサー、ヘンシェルミキサー、ヘリカルローター、ロール、一軸押出機、二軸押出機等を用いる方法が挙げられる。溶融混練温度は、半芳香族ポリアミド(A)が溶融し、半芳香族ポリアミド(A)が分解しない領域から選ばれる。溶融混練温度は、高すぎると、半芳香族ポリアミド(A)が分解するだけでなく、ホスフィン酸金属塩(B)も分解するおそれがあることから、半芳香族ポリアミド(A)の融点をTmとすると、(Tm−20℃)〜(Tm+50℃)であることが好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物を様々な形状に加工する方法としては、溶融混合物をストランド状に押出しペレット形状にする方法や、溶融混合物をホットカット、アンダーウォーターカットしてペレット形状にする方法や、シート状に押出しカッティングする方法、ブロック状に押出し粉砕してパウダー形状にする方法が挙げられる。
本発明のポリアミド樹脂組成物の成形方法としては、例えば、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、焼結成形法が挙げられ、機械的特性、成形性の向上効果が大きいことから、射出成形法が好ましい。
射出成形機としては、特に限定されず、例えば、スクリューインライン式射出成形機またはプランジャ式射出成形機が挙げられる。射出成形機のシリンダー内で加熱溶融されたポリアミド樹脂組成物は、ショットごとに計量され、金型内に溶融状態で射出され、所定の形状で冷却、固化された後、成形体として金型から取り出される。射出成形時の樹脂温度は、半芳香族ポリアミド(A)の融点(Tm)以上であることが好ましく、(Tm+50℃)未満であることがより好ましい。
なお、ポリアミド樹脂組成物の加熱溶融時には、十分に乾燥されたポリアミド樹脂組成物ペレットを用いることが好ましい。ポリアミド樹脂組成物ペレットは、含有する水分量が多いと、射出成形機のシリンダー内で発泡し、最適な成形体を得ることが困難となることがある。射出成形に用いるポリアミド樹脂組成物ペレットの水分率は、ポリアミド樹脂組成物100質量部に対して、0.3質量部未満であることが好ましく、0.1質量部未満であることがより好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、難燃性に優れ、また金属腐食性を抑制して成形することができ、自動車部品、電気電子部品、雑貨、土木建築用品等広範な用途の成形体として使用できる。
自動車部品としては、例えば、サーモスタットカバー、インバータのIGBTモジュール部材、インシュレーター部材、エキゾーストフィニッシャー、パワーデバイス筐体、ECU筐体、ECUコネクタ、モーターやコイルの絶縁材、ケーブルの被覆材が挙げられる。電気電子部品としては、例えば、コネクタ、LEDリフレクタ、スイッチ、センサー、ソケット、コンデンサー、ジャック、ヒューズホルダー、リレー、コイルボビン、ブレーカー、電磁開閉器、ホルダー、プラグ、携帯用パソコンやワープロ等の電気機器の筐体部品、抵抗器、IC、LEDのハウジングが挙げられる。中でも、本発明のポリアミド樹脂組成物は、特に難燃性に優れていることから、電気電子部品に好適に用いることができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
1.測定方法
ポリアミドおよびポリアミド樹脂組成物の物性は以下の方法により測定した。
(1)融点
示差走査熱量計(パーキンエルマー社製 DSC−7型)用い、昇温速度20℃/分で350℃まで昇温した後、370℃で5分間保持し、降温速度20℃/分で0℃まで降温し、さらに0℃で5分間保持後、再び昇温速度20℃/分で昇温した際の吸熱ピークのトップを融点(Tm)とした。
(2)メルトフローレート(MFR)
JIS K7210に従い、(融点+15℃)、1.2kgfの荷重で測定した。
MFRは、成形流動性の指標とすることができ、MFRの値が高いほど流動性が高いことを示す。
(3)機械的特性
ポリアミド樹脂組成物を、射出成形機(ファナック社製 S2000i−100B型)を用いて、シリンダー温度(融点+15℃)、金型温度(融点−185℃)の条件で射出成形し、試験片(ダンベル片)を作製した。
得られた試験片を用いて、ISO178に準拠して曲げ強度や曲げ弾性率を測定した。
曲げ強度や曲げ弾性率は、数値が大きいほど機械的特性が優れていることを示す。
(4)難燃性
ポリアミド樹脂組成物を、射出成形機(ニイガタマシンテクノ社製 CND15)を用いて、シリンダー温度(融点+15℃)、金型温度(融点−185℃)の条件で射出成形し、5インチ(127mm)×1/2インチ(12.7mm)×1/32インチ(0.79mm)の試験片を作製した。
得られた試験片を用いて、表1に示すUL94(米国Under Writers Laboratories Inc.で定められた規格)の基準に従って難燃性を評価した。いずれの基準にも満たない場合は、「not V−2」とした。
総残炎時間が短い方が、難燃性が優れていることを示す。
(5)金型汚れ
射出成形機(ファナック社製 α−100iA)を用いて、シリンダー温度(融点+25℃)、金型温度(融点−185℃)の条件下、1サイクル25秒で、浅いコップ形状(肉厚1.5mm、外径40mm、深さ30mm)の成形体を500ショット連続成形した。成形終了後に、深さ4μm、幅1mmのガスベントを目視で確認し、以下の基準で金型汚れを評価した。◎および○を合格とした。
◎:詰まりがまったく見られないもの
○:詰まりが一部見られるもの
×:完全に詰まっているもの
(6)離型性
上記(5)で連続成形したときの401〜500ショット目の成形体の突き出しピンの痕の有無を目視観察し、ピンの痕がない成形体の個数をカウントして、離型性を評価した。
ピンの痕がない成形体の個数は90個以上であることが好ましく、95個以上であることがより好ましい。
(7)金属腐食性
図1のように、二軸混練押出機(EX)(池貝社製PCM30)に、ダイス(D)を取り付け、通常押出機の鋼材として使用する金属プレート(MP)(材質SUS630、20×10mm、厚さ5mm、質量7.8g)を、溶融樹脂の流路(R)の上下に取り付け、1mmの隙間を設け、溶融樹脂が幅10mm、長さ20mmにわたって接するようにした。その隙間に、押出機バレル設定温度(融点+15℃)、吐出7kg/hの条件で、計25kgのポリアミド樹脂組成物を押出した。押出後、金属プレート(MP)を取り外し、500℃の炉の中に10時間放置し、付着した樹脂を取り除いた後に質量を測定し、押出前後の質量変化により金属腐食性を測定した。重量変化が大きいほど、金属腐食性が大きいことを示す。
(8)耐リフロー性
ポリアミド樹脂組成物を、射出成形機J35AD(日本製鋼所社製)を用いて、シリンダー温度(融点+15℃)、金型温度(融点−185℃)の条件で射出成形し、20mm×20mm×0.5mmの試験片と20mm×20mm×2mmの試験片を作製した。得られた試験成形片を、85℃×85%RHにて168時間吸湿処理を行った後、赤外線加熱式のリフロー炉中にて、150℃で1分間加熱し、100℃/分の速度で265℃まで昇温し、10秒間保持した。
加熱処理後の試験片において,試験片表面全体の内,試験片表面に発生したブリスター(水ぶくれ)の占める面積率が0%の場合を「◎」、0%より大きく25%以下の場合を「〇」、25%より大きく50%以下の場合を「△」、50%より大きい場合を「×」と評価した。
加熱処理後の試験片は、表面にブリスター(水ぶくれ)や溶融がないことが好ましい。
2.原料
実施例および比較例で用いた原料を以下に示す。
(1)半芳香族ポリアミド(A)
・半芳香族ポリアミド(A−1)
ジカルボン酸成分として粉末状のテレフタル酸(TPA)4.70kgと、モノカルボン酸成分としてステアリン酸(STA)0.32kgと、重合触媒として次亜リン酸ナトリウム一水和物9.3gとを、リボンブレンダー式の反応装置に入れ、窒素密閉下、回転数30rpmで撹拌しながら170℃に加熱した。その後、温度を170℃に保ち、かつ回転数を30rpmに保ったまま、液注装置を用いて、ジアミン成分として100℃に加温した1,10−デカンジアミン(DDA)4.98kgを、2.5時間かけて連続的(連続液注方式)に添加し反応生成物を得た。なお、原料モノマーのモル比は、TPA:DDA:STA=48.5:49.6:1.9(原料モノマーの官能基の当量比率は、TPA:DDA:STA=49.0:50.0:1.0)であった。
続いて、得られた反応生成物を、同じ反応装置で、窒素気流下、250℃、回転数30rpmで8時間加熱して重合し、半芳香族ポリアミドの粉末を作製した。
その後、得られた半芳香族ポリアミドの粉末を、二軸混練機を用いてストランド状とし、ストランドを水槽に通して冷却固化し、それをペレタイザーでカッティングして半芳香族ポリアミド(A−1)ペレットを得た。
・半芳香族ポリアミド(A−2)〜(A−5)
樹脂組成を表2に示すように変更した以外は、(A−1)と同様にして、(A−2)〜(A−5)を得た。
上記ポリアミド(A−1)〜(A−5)の樹脂組成と特性値を表2に示す。
(2)ホスフィン酸金属塩(B)
・B−1:ジエチルホスフィン酸アルミニウム(クラリアント社製 Exolit OP1230)
(3)炭酸金属塩(C)
・C−1:炭酸カルシウム
・C−2:炭酸マグネシウム
(4)脂肪酸バリウム塩(D)
・D−1:ステアリン酸バリウム(日東化成工業社製 Ba−St P)
・D−2:ラウリン酸バリウム(日東化成工業社製 BS−3)
(5)ヒンダードフェノール構造を有するヒドラジン系化合物(E)
・E−1:N,N′−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン(アデカ社製 CDA−10)
(6)脂肪族ポリアミド(F)
・F−1:ポリアミド66(ユニチカ社製 A125J)
・F−2:ポリアミド46(DSM社製 TW300)
(7)強化材(G)
・G−1:ガラス繊維(旭ファイバーグラス社製 03JAFT692、平均繊維径10μm、平均繊維長3mm)
・G−2:タルク(日本タルク社製 ミクロエースK−1、平均粒子径8μm)
・G−3:タルク(日本タルク社製 MSZ−C 平均粒径11μm 表面処理品)
・G−4:タルク(日本タルク社製 MS−P 平均粒径15μm)
・G−5:タルク(日本タルク社製 MS−KY 平均粒径25μm)
(8)トリアゾール系化合物
・H−1:2−ヒドロキシ−N−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル−ベンズアミド(アデカ社製 CDA−1)
実施例1
ポリアミド(A−1)50質量部、ホスフィン酸金属塩剤(B−1)17質量部、炭酸金属塩(C−1)1.5質量部、脂肪酸バリウム塩(D−1)1質量部、ヒンダードフェノール構造を有するヒドラジン系化合物(E−1)0.5質量部ドライブレンドし、ロスインウェイト式連続定量供給装置(クボタ社製 CE−W−1型)を用いて計量し、スクリュー径26mm、L/D50の同方向二軸押出機(東芝機械社製 TEM26SS型)の主供給口に供給して、溶融混練を行った。途中、サイドフィーダーより強化材(G−1)30質量部を供給し、さらに混練を行った。ダイスからストランド状に引き取った後、水槽に通して冷却固化し、それをペレタイザーでカッティングしてポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。押出機のバレル温度設定は、(融点−5〜+15℃)、スクリュー回転数250rpm、吐出量25kg/hとした。
実施例2〜31、比較例1〜14
ポリアミド樹脂組成物の組成を表3、4に示すように変更した以外は、実施例1と同様の操作をおこなってポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。
得られたポリアミド樹脂組成物ペレットを用い、各種評価試験を行った。その結果を表3、4に示す。
実施例1〜31の樹脂組成物は、本発明の要件を満足するため、難燃性が優れるのに加えて、高い機械的特性を有し、高温での金属腐食性が抑制されていた。また、実施例1〜31の樹脂組成物は、いずれもリフロー耐性を有しており、いずれの樹脂組成物においても、20mm×20mm×0.5mmの試験片ではブリスター(水ぶくれ)の発生や溶融などが見られなかった。
実施例1〜5の対比から、用いるポリアミドのモノカルボン酸成分として、分子量が140以上のモノカルボン酸を含有した実施例1、2、4、5の方が、金型汚れが少なく、離型性が優れていた。実施例1と実施例3の対比から、モノカルボン酸成分として、脂肪族モノカルボン酸を用いた実施例1の方が、芳香族モノカルボン酸を用いた実施例3よりも、離型性が優れていた。実施例1と実施例2の対比から、脂肪族ジアミン成分として、1,9−ノナンジアミンを用いた実施例2よりも、1,10−デカンジアミンを用いた実施例1の方が、機械的特性が優れていた。
実施例1、11〜14において、ヒンダードフェノール構造を有するヒドラジン系化合物の含有量を増加することにより、難燃性の向上がみられた。後述するように、比較例10は、ホスフィン酸金属塩を32質量%含有することにより、難燃性に優れるが、金属腐食性が著しく高いものであった。比較例10で得られた難燃性と同程度の難燃性は、ホスフィン酸金属塩の含有量を30質量%に低減させても、ヒンダードフェノール構造を有するヒドラジン系化合物を含有することによって得られ(実施例8)、ヒンダードフェノール構造を有するヒドラジン系化合物を含有する実施例においては、ホスフィン酸金属塩の含有量を低減することができ、金属腐食性を抑制することが可能となった。
実施例1、15〜17において、炭酸金属塩の含有量を増加することにより、金属腐食性の抑制効果の向上が見られた。しかし、炭酸金属塩の含有量を増加することにより、難燃性の低下も見られた。実施例1、19〜21において、脂肪酸バリウム塩の含有量を増加することにより、金属腐食性の抑制効果の向上が見られた。しかし、脂肪酸バリウム塩の含有量を増加することにより、機械的特性の低下も見られた。
実施例1と23の対比から、強化材としてガラス繊維を用いた実施例1の方が、板状のタルクを用いた実施例23よりも、機械的特性が優れていた。
実施例1、24、25の対比から、脂肪族ポリアミドを含有することにより、流動性が向上し、金属腐食性がより抑制される効果が見られた。なお、脂肪族ポリアミドを含有する実施例24、25では、20mm×20mm×2mmの試験片において、ブリスター(水ぶくれ)が発生し、耐リフロー性の低下が見られたが、実施例27〜31において、強化材として平均粒径が10〜30μmの範囲にあるタルクを含有することにより、耐リフロー性の低下は抑制された。
ホスフィン酸金属塩を含有しない比較例1は、難燃性に劣り、またホスフィン酸金属塩を含有する比較例2は、難燃性が著しく向上するが、金属腐食性が著しく大きいものであった。炭酸金属塩を含有する比較例3と、脂肪酸バリウム塩を含有する比較例4は、金属腐食性が抑制され、炭酸金属塩と脂肪酸バリウム塩を含有する比較例5は、金属腐食性が著しく抑制されたが、難燃性が著しく低下したものであった。
比較例6は、ヒンダードフェノール構造を有するヒドラジン化合物の含有量が多かったため、実施例1、11〜14と比較して機械的特性が低く、また難燃性の向上効果も飽和していた。比較例7は、ヒンダードフェノール構造を有するヒドラジン系化合物の代わりに、環内にヒドラジン構造を有するが、ヒンダードフェノール構造を有していないトリアゾール系化合物を使用したため、実施例1と比較して、難燃性の向上効果がみられなかった。
比較例8、9は、ホスフィン酸金属塩を含有しないか、その含有量が少なかったため、難燃性が劣るものであった。比較例10は、ホスフィン酸金属塩の含有量が多いため、難燃性に優れるものとなったが、金属腐食性が著しく高くなった。
比較例11は、炭酸金属塩を含有しなかったため、金属腐食性が著しいものであった。比較例12は、炭酸金属塩の含有量が多かったため、実施例1、15〜17と比較して難燃性が低く、また金属腐食性の抑制効果も飽和していた。比較例13は、脂肪酸バリウム塩を含有しなかったため、金属腐食性が著しいものであった。比較例14は、脂肪酸バリウム塩の含有量が多かったため、実施例1、19〜21と比較して難燃性が低く、また金属腐食性の抑制効果も飽和していた。
EX:二軸混練押出機
D:ダイス
MP:金属プレート
R:溶融樹脂の流路

Claims (9)

  1. 融点が300〜350℃の半芳香族ポリアミド(A)を20〜80質量%、ホスフィン酸金属塩(B)を5〜30質量%、炭酸金属塩(C)を0.1〜8質量%、脂肪酸バリウム塩(D)を0.01〜3質量%、およびヒンダードフェノール構造を有するヒドラジン系化合物(E)を0.01〜5質量%含有することを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
  2. ホスフィン酸金属塩(B)が、下記一般式(I)または(II)で表される化合物であることを特徴とする請求項1記載のポリアミド樹脂組成物。
    (式中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、直鎖または分岐鎖の炭素数1〜16のアルキル基またはフェニル基を表す。Rは、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数6〜10のアリーレン基、アリールアルキレン基、または、アルキルアリーレン基を表す。Mは、カルシウムイオン、アルミニウムイオン、マグネシウムイオンまたは亜鉛イオンを表す。mは、2または3である。n、a、bは、2×b=n×aの関係式を満たす整数である。)
  3. 炭酸金属塩(C)を構成する金属が、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、リチウムからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリアミド樹脂組成物。
  4. 脂肪酸バリウム塩(D)を構成する脂肪酸が、ラウリン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
  5. ヒンダードフェノール構造を有するヒドラジン系化合物(E)が、下記式(III)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
  6. さらに融点が200〜300℃の脂肪族ポリアミド(F)を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
  7. さらに強化材(G)を5〜60質量%含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
  8. 強化材(G)が、平均粒径が10〜30μmであるタルクを含有することを特徴とする請求項7記載のポリアミド樹脂組成物。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形体。

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