JP2018095709A - 繊維状セルロース含有組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、特定の有機溶媒の存在下であっても、分散性が良好な微細繊維状セルロース含有組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、繊維幅が1000nm以下である繊維状セルロース、水、及びアルコールを含有する繊維状セルロース含有組成物であって、アルコールは、1価の第1級アルコール、1価の第2級アルコール及び多価アルコールから選択される少なくとも1種であり、繊維状セルロース含有組成物の25℃における比誘電率が55以上80未満である繊維状セルロース含有組成物に関する。
【選択図】なし

Description

本発明は、繊維状セルロース含有組成物に関する。具体的には、本発明は、微細繊維状セルロースと、水と、所定のアルコールとを含む繊維状セルロース含有組成物に関する。
近年、石油資源の代替及び環境意識の高まりから、再生産可能な天然繊維を利用した材料が着目されている。天然繊維の中でも、繊維径が10μm以上50μm以下の繊維状セルロース、特に木材由来の繊維状セルロース(パルプ)は、主に紙製品としてこれまで幅広く使用されてきた。
繊維状セルロースとしては、繊維径が1μm以下の微細繊維状セルロースも知られている。微細繊維状セルロースは増粘作用を発揮することができるため、微細繊維状セルロースを増粘剤として各種用途に用いることも検討されている。
微細繊維状セルロースを増粘剤として用いる場合には、有機溶媒を含む分散媒に微細繊維状セルロースを分散させる場合がある。例えば、特許文献1の実施例では、水と水溶性有機溶剤を含む分散媒に微細繊維状セルロースを分散させた分散液が作製されている。また、特許文献2の実施例では、水とt−ブチルアルコールを含む分散媒に微細繊維状セルロースを分散させた分散液を作製しており、この分散液を凍結乾燥させることによってセルロース多孔質体を形成している。なお、いずれの文献においても分散液の比誘電率をコントロールすることについては、開示されていない。
国際公開第2011/111612号公報 特開2015−105453号公報
上述したように、微細繊維状セルロースの分散媒としては、有機溶媒を含む分散媒が用いられる場合がある。しかしながら、第1級もしくは第2級アルコールや、多価アルコールといった特定の有機溶媒の存在下では微細繊維状セルロースの分散性が低下する傾向があることが本発明者らの検討により明らかとなった。
そこで本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために、第1級もしくは第2級アルコールや多価アルコールといった特定の有機溶媒の存在下であっても、分散性が良好な微細繊維状セルロース含有組成物を提供することを目的として検討を進めた。
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、微細繊維状セルロース、水、及び特定のアルコールを含む繊維状セルロース含有組成物において、繊維状セルロース含有組成物の25℃における比誘電率を所定の範囲内とすることにより、微細繊維状セルロースの分散性が良好な繊維状セルロース含有組成物が得られることを見出した。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
[1] 繊維幅が1000nm以下である繊維状セルロース、水、及びアルコールを含有する繊維状セルロース含有組成物であって、アルコールは、1価の第1級アルコール、1価の第2級アルコール及び多価アルコールから選択される少なくとも1種であり、繊維状セルロース含有組成物の25℃における比誘電率が55以上80未満である繊維状セルロース含有組成物。
[2] アルコールの含有量は、繊維状セルロース含有組成物の全質量に対して10質量%以上である[1]に記載の繊維状セルロース含有組成物。
[3] 繊維状セルロース含有組成物を固形分濃度が0.2質量%のスラリーとし、25℃の環境下にて16時間以上静置した後、JIS K 7136に準拠して測定されるスラリーのヘーズが20%以下である[1]又は[2]に記載の繊維状セルロース含有組成物。
[4] 繊維状セルロース含有組成物を固形分濃度が0.4質量%のスラリーとし、25℃の環境下にて16時間以上静置した後、B型粘度計を用いて、25℃にて回転数3rpmで3分間回転させることで測定されるスラリーの粘度が、10000mPa・s以上である[1]〜[3]のいずれかに記載の繊維状セルロース含有組成物。
[5] 繊維状セルロース含有組成物を固形分濃度が0.2質量%のスラリーとし、25℃の環境下にて16時間以上静置した後、JIS K 7136に準拠して測定されるスラリーの全光線透過率が98%以上である[1]〜[4]のいずれかに記載の繊維状セルロース含有組成物。
本発明によれば、微細繊維状セルロースの分散性が良好な繊維状セルロース含有組成物を得ることができる。
図1は、リン酸基を有する繊維原料に対するNaOH滴下量と電気伝導度の関係を示すグラフである。 図2は、カルボキシル基を有する繊維原料に対するNaOH滴下量と電気伝導度の関係を示すグラフである。
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。
(繊維状セルロース含有組成物)
本発明は、繊維幅が1000nm以下である繊維状セルロース、水、及びアルコールを含有する繊維状セルロース含有組成物に関する。ここで、アルコールは、1価の第1級アルコール、1価の第2級アルコール及び多価アルコールから選択される少なくとも1種である。また、繊維状セルロース含有組成物の25℃における比誘電率は55以上80未満である。なお、本明細書において、繊維幅が1000nm以下である繊維状セルロースは、微細繊維状セルロースと呼ぶことがあり、このような微細繊維状セルロースを含む繊維状セルロース含有組成物を微細繊維状セルロース含有組成物と呼ぶことがある。
繊維状セルロース含有組成物は、アルコールを含む。ここで、アルコールは、1価の第1級アルコール、1価の第2級アルコール及び多価アルコールから選択される少なくとも1種である。微細繊維状セルロースは、アルコールの中でも第3級アルコールの存在下では、比較的分散性が良好であり、第3級アルコール以外の第1級アルコール、第2級アルコールでは、微細繊維状セルロースの分散性が劣る場合があることを本発明者らは知見した。また、本発明者らは多価アルコールにおいても微細繊維状セルロースの分散性が劣る場合があることを知見した。このため、本発明は、1価の第1級アルコール、1価の第2級アルコール及び多価アルコールから選択される少なくとも1種のアルコールの存在下においても、微細繊維状セルロースの分散性を高めることを目的とするものである。
本発明の繊維状セルロース含有組成物においては、1価の第1級アルコール、1価の第2級アルコール及び多価アルコールから選択される少なくとも1種のアルコールが溶媒中に存在している場合であっても、微細繊維状セルロースは、良好な分散性を発揮することができる。ここで、微細繊維状セルロースの分散性は、繊維状セルロース含有組成物中の凝集物や相分離の発生の有無で評価することができる。また、微細繊維状セルロースの分散性が良好である場合、繊維状セルロース含有組成物の透明性が高く、かつ繊維状セルロース含有組成物の粘度が高くなる。すなわち、繊維状セルロース含有組成物の透明性と粘度が所定値以上であることをもって、繊維状セルロース含有組成物の分散性が良好であると評価することもできる。
本発明の繊維状セルロース含有組成物の25℃における比誘電率は55以上であればよく、56以上であることが好ましく、59以上であることがより好ましい。また、繊維状セルロース含有組成物の25℃における比誘電率は80未満であればよく、78以下であることが好ましく、75以下であることがより好ましい。本発明においては、1価の第1級アルコール、1価の第2級アルコール及び多価アルコールから選択される少なくとも1種のアルコールが溶媒中に存在している場合であっても、繊維状セルロース含有組成物の25℃における比誘電率を上記範囲内とすることにより、微細繊維状セルロースの分散性を高めることができる。本発明は、特定のアルコールを含む場合であっても、繊維状セルロース含有組成物の比誘電率を適切に制御することで、微細繊維状セルロースの分散性を高め得ることに成功したものであり、繊維状セルロース含有組成物の比誘電率と微細繊維状セルロースの分散性の関係性を新たに見出したものである。
繊維状セルロース含有組成物の比誘電率は、誘電率測定計を用いることで測定することができる。誘電率測定計としては、例えば、液体用誘電率計(日本ルフト株式会社製、Model−871)を挙げることができる。なお、繊維状セルロース含有組成物の比誘電率を測定する前には、繊維状セルロース含有組成物の液温が25℃になるように、25℃の環境下に16時間以上静置する。また、測定は、25℃の環境下で行う。
繊維状セルロース含有組成物を固形分濃度が0.2質量%のスラリーとし、25℃の環境下にて16時間以上静置した後、JIS K 7136に準拠して測定されるスラリーのヘーズは、20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましく、7%以下であることが特に好ましい。スラリーのヘーズの測定に用いるヘーズメータとしては、例えば、ヘーズメータ(村上色彩技術研究所社製、HM−150)を挙げることができる。ヘーズを測定する際には、25℃の環境下にて16時間以上静置した固形分濃度が0.2質量%のスラリーを、光路長1cmの液体用ガラスセルに入れ、測定を行う。なお、ゼロ点測定は、同ガラスセルに入れたイオン交換水で行う。
繊維状セルロース含有組成物を固形分濃度が0.4質量%のスラリーとし、25℃の環境下にて16時間以上静置した後、B型粘度計を用いて、25℃にて回転数3rpmで3分間回転させることで測定されるスラリーの粘度は、10000mPa・s以上であることが好ましく、15000mPa・s以上であることがより好ましく、20000mPa・s以上であることがさらに好ましい。また、スラリーの粘度の上限値は特に限定されるものではないが、例えば、100000mPa・sとすることができる。粘度を測定する際には、25℃の環境下にて16時間以上静置した固形分濃度が0.4質量%のスラリーを、B型粘度計を用いて測定する。B型粘度計としては、例えば、B型粘度計(No.3ローター)(BLOOKFIELD社製、アナログ粘度計T−LVT)を挙げることができる。
繊維状セルロース含有組成物を固形分濃度が0.2質量%のスラリーとし、25℃の環境下にて16時間以上静置した後、JIS K 7136に準拠して測定されるスラリーの全光線透過率は、98%以上であることが好ましく、98.5%以上であることがより好ましく、99%以上であることがさらに好ましい。スラリーの全光線透過率の測定にはヘーズメータを用いることができ、ヘーズメータとしては例えば、ヘーズメータ(村上色彩技術研究所社製、HM−150)を挙げることができる。全光線透過率を測定する際には、25℃の環境下にて16時間以上静置した固形分濃度が0.2質量%のスラリーを、光路長1cmの液体用ガラスセルに入れ、測定を行う。なお、ゼロ点測定は、同ガラスセルに入れたイオン交換水で行う。
繊維状セルロース含有組成物の形態は特に制限されるものではなく、例えば、スラリー状やゲル状の形態で存在する。中でも、繊維状セルロース含有組成物は、スラリーであることが好ましい。
微細繊維状セルロースの含有量は、繊維状セルロース含有組成物の全質量に対して、0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。また、微細繊維状セルロースの含有量は、繊維状セルロース含有組成物の全質量に対して、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。
1価の第1級アルコール、1価の第2級アルコール及び多価アルコールから選択される少なくとも1種のアルコールの含有量は、繊維状セルロース含有組成物の全質量に対して、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。また、1価の第1級アルコール、1価の第2級アルコール及び多価アルコールから選択される少なくとも1種のアルコールの含有量は、繊維状セルロース含有組成物の全質量に対して、75質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることがさらに好ましい。本発明においては、1価の第1級アルコール、1価の第2級アルコール及び多価アルコールから選択される少なくとも1種のアルコールが10質量%以上含まれている場合であっても、微細繊維状セルロースの分散性を高く維持することができる。なお、水の25℃における比誘電率は80であるため、1価の第1級アルコール、1価の第2級アルコール及び多価アルコールから選択される少なくとも1種のアルコールの含有量は、添加するアルコールの比誘電率によって適宜調整され、繊維状セルロース含有組成物全体の比誘電率が55以上80未満となるように調整される。
繊維状セルロース含有組成物における、水の含有量とアルコールの含有量の質量比(水:アルコール)は添加するアルコールの比誘電率によって変動するが、9:1〜3:7であることが好ましく、8:2〜5:5であることがより好ましい。水の含有量とアルコールの含有量の質量比を上記範囲内とすることにより、微細繊維状セルロースの分散性をより効果的に高めることができる。
(微細繊維状セルロース)
繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースである微細繊維状セルロースを得るためのセルロース原料としては、特に限定されないが、入手しやすく安価である点から、パルプを用いることが好ましい。パルプとしては、木材パルプ、非木材パルプ、脱墨パルプを挙げることができる。木材パルプとしては例えば、広葉樹クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)、ソーダパルプ(AP)、未晒しクラフトパルプ(UKP)、酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプ等が挙げられる。また、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプ等が挙げられるが、特に限定されない。非木材パルプとしてはコットンリンターやコットンリント等の綿系パルプ、麻、麦わら、バガス等の非木材系パルプ、ホヤや海草等から単離されるセルロース、キチン、キトサン等が挙げられるが、特に限定されない。脱墨パルプとしては古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられるが、特に限定されない。本実施態様のパルプは上記の1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。上記パルプの中で、入手のしやすさという点で、セルロースを含む木材パルプ、脱墨パルプが好ましい。木材パルプの中でも化学パルプはセルロース比率が大きいため、繊維微細化(解繊)時の微細繊維状セルロースの収率が高く、またパルプ中のセルロースの分解が小さく、軸比の大きい長繊維の微細繊維状セルロースが得られる点で好ましい。中でもクラフトパルプ、サルファイトパルプが最も好ましく選択される。
微細繊維状セルロースの平均繊維幅は、電子顕微鏡で観察して、1000nm以下である。平均繊維幅は、好ましくは2nm以上1000nm以下、より好ましくは2nm以上100nm以下であり、より好ましくは2nm以上50nm以下であり、さらに好ましくは2nm以上10nm以下であるが、特に限定されない。微細繊維状セルロースの平均繊維幅が2nm未満であると、セルロース分子として水に溶解しているため、微細繊維状セルロースとしての物性(強度や剛性、寸法安定性)が発現しにくくなる傾向がある。なお、微細繊維状セルロースは、たとえば繊維幅が1000nm以下である単繊維状のセルロースである。
微細繊維状セルロースの電子顕微鏡観察による繊維幅の測定は以下のようにして行う。濃度0.05質量%以上0.1質量%以下の微細繊維状セルロースの水系懸濁液を調製し、この懸濁液を親水化処理したカーボン膜被覆グリッド上にキャストしてTEM観察用試料とする。幅の広い繊維を含む場合には、ガラス上にキャストした表面のSEM像を観察してもよい。構成する繊維の幅に応じて1000倍、5000倍、10000倍あるいは50000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。但し、試料、観察条件や倍率は下記の条件を満たすように調整する。
(1)観察画像内の任意箇所に一本の直線Xを引き、該直線Xに対し、20本以上の繊維が交差する。
(2)同じ画像内で該直線と垂直に交差する直線Yを引き、該直線Yに対し、20本以上の繊維が交差する。
上記条件を満足する観察画像に対し、直線X、直線Yと交錯する繊維の幅を目視で読み取る。こうして少なくとも重なっていない表面部分の画像を3組以上観察し、各々の画像に対して、直線X、直線Yと交錯する繊維の幅を読み取る。このように少なくとも20本×2×3=120本の繊維幅を読み取る。微細繊維状セルロースの平均繊維幅(単に、「繊維幅」ということもある。)はこのように読み取った繊維幅の平均値である。
微細繊維状セルロースの繊維長は特に限定されないが、0.1μm以上1000μm以下が好ましく、0.1μm以上800μm以下がさらに好ましく、0.1μm以上600μm以下が特に好ましい。繊維長を上記範囲内とすることにより、微細繊維状セルロースの結晶領域の破壊を抑制でき、また微細繊維状セルロースのスラリー粘度を適切な範囲とすることができる。なお、微細繊維状セルロースの繊維長は、TEM、SEM、AFMによる画像解析より求めることができる。
微細繊維状セルロースはI型結晶構造を有していることが好ましい。ここで、微細繊維状セルロースがI型結晶構造をとっていることは、グラファイトで単色化したCuKα(λ=1.5418Å)を用いた広角X線回折写真より得られる回折プロファイルにおいて同定できる。具体的には、2θ=14°以上17°以下付近と2θ=22°以上23°以下付近の2箇所の位置に典型的なピークをもつことから同定することができる。
微細繊維状セルロースに占めるI型結晶構造の割合は30%以上であることが好ましく、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上である。この場合、耐熱性と低線熱膨張率発現の点でさらに優れた性能が期待できる。結晶化度については、X線回折プロファイルを測定し、そのパターンから常法により求められる(Seagalら、Textile Research Journal、29巻、786ページ、1959年)。
微細繊維状セルロースは、置換基を有するものであることが好ましく、置換基はアニオン基であることが好ましい。アニオン基としては、例えば、リン酸基又はリン酸基に由来する置換基(単にリン酸基ということもある)、カルボキシル基又はカルボキシル基に由来する置換基(単にカルボキシル基ということもある)、及び、スルホン基又はスルホン基に由来する置換基(単にスルホン基ということもある)から選択される少なくとも1種であることが好ましく、リン酸基及びカルボキシル基から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、リン酸基であることが特に好ましい。すなわち、本発明で用いられる微細繊維状セルロースはリン酸化セルロースであることが好ましい。
微細繊維状セルロースは、リン酸基又はリン酸基に由来する置換基を有するものであることが好ましい。リン酸基はリン酸からヒドロキシル基を取り除いたものにあたる、2価の官能基である。具体的には−PO32で表される基である。リン酸基に由来する置換基は、リン酸基が縮重合した基、リン酸基の塩、リン酸エステル基などの置換基が含まれ、イオン性置換基であっても、非イオン性置換基であってもよい。
本発明では、リン酸基又はリン酸基に由来する置換基は、下記式(1)で表される置換基であってもよい。
Figure 2018095709
式(1)中、a、b、m及びnはそれぞれ独立に整数を表す(ただし、a=b×mである);αn(n=1以上n以下の整数)およびα’はそれぞれ独立にR又はORを表す。Rは、水素原子、飽和−直鎖状炭化水素基、飽和−分岐鎖状炭化水素基、飽和−環状炭化水素基、不飽和−直鎖状炭化水素基、不飽和−分岐鎖状炭化水素基、芳香族基、又はこれらの誘導基である;βは有機物または無機物からなる1価以上の陽イオンである。
<リン酸基導入工程>
リン酸基導入工程は、セルロースを含む繊維原料に対し、リン酸基を有する化合物及びその塩から選択される少なくとも1種(以下、「リン酸化試薬」又は「化合物A」という)を反応させることにより行うことができる。このようなリン酸化試薬は、乾燥状態または湿潤状態の繊維原料に粉末や水溶液の状態で混合してもよい。また別の例としては、繊維原料のスラリーにリン酸化試薬の粉末や水溶液を添加してもよい。
リン酸基導入工程は、セルロースを含む繊維原料に対し、リン酸基を有する化合物及びその塩から選択される少なくとも1種(リン酸化試薬又は化合物A)を反応させることにより行うことができる。なお、この反応は、尿素及びその誘導体から選択される少なくとも1種(以下、「化合物B」という)の存在下で行ってもよい。
化合物Aを化合物Bの共存下で繊維原料に作用させる方法の一例としては、乾燥状態または湿潤状態の繊維原料に化合物Aおよび化合物Bの粉末や水溶液を混合する方法が挙げられる。また別の例としては、繊維原料のスラリーに化合物Aおよび化合物Bの粉末や水溶液を添加する方法が挙げられる。これらのうち、反応の均一性が高いことから、乾燥状態の繊維原料に化合物Aおよび化合物Bの水溶液を添加する方法、または湿潤状態の繊維原料に化合物Aおよび化合物Bの粉末や水溶液を添加する方法が好ましい。また、化合物Aと化合物Bは同時に添加してもよいし、別々に添加してもよい。また、初めに反応に供試する化合物Aと化合物Bを水溶液として添加して、圧搾により余剰の薬液を除いてもよい。繊維原料の形態は綿状や薄いシート状であることが好ましいが、特に限定されない。
本実施態様で使用する化合物Aは、リン酸基を有する化合物及びその塩から選択される少なくとも1種である。
リン酸基を有する化合物としては、リン酸、リン酸のリチウム塩、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩などが挙げられるが、特に限定されない。リン酸のリチウム塩としては、リン酸二水素リチウム、リン酸水素二リチウム、リン酸三リチウム、ピロリン酸リチウム、またはポリリン酸リチウムなどが挙げられる。リン酸のナトリウム塩としてはリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、またはポリリン酸ナトリウムなどが挙げられる。リン酸のカリウム塩としてはリン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、またはポリリン酸カリウムなどが挙げられる。リン酸のアンモニウム塩としては、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウムなどが挙げられる。
これらのうち、リン酸基の導入の効率が高く、後述する解繊工程で解繊効率がより向上しやすく、低コストであり、かつ工業的に適用しやすい観点から、リン酸、リン酸のナトリウム塩、またはリン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩が好ましい。リン酸二水素ナトリウム、またはリン酸水素二ナトリウムがより好ましい。
また、反応の均一性が高まり、かつリン酸基導入の効率が高くなることから化合物Aは水溶液として用いることが好ましい。化合物Aの水溶液のpHは特に限定されないが、リン酸基の導入の効率が高くなることから7以下であることが好ましく、パルプ繊維の加水分解を抑える観点からpH3以上pH7以下がさらに好ましい。化合物Aの水溶液のpHは例えば、リン酸基を有する化合物のうち、酸性を示すものとアルカリ性を示すものを併用し、その量比を変えて調整してもよい。化合物Aの水溶液のpHは、リン酸基を有する化合物のうち、酸性を示すものに無機アルカリまたは有機アルカリを添加すること等により調整してもよい。
繊維原料に対する化合物Aの添加量は特に限定されないが、化合物Aの添加量をリン原子量に換算した場合、繊維原料(絶乾質量)に対するリン原子の添加量は0.5質量%以上100質量%以下が好ましく、1質量%以上50質量%以下がより好ましく、2質量%以上30質量%以下が最も好ましい。繊維原料に対するリン原子の添加量が上記範囲内であれば、微細繊維状セルロースの収率をより向上させることができる。繊維原料に対するリン原子の添加量が100質量%を超えると、収率向上の効果は頭打ちとなり、使用する化合物Aのコストが上昇する。一方、繊維原料に対するリン原子の添加量を上記下限値以上とすることにより、収率を高めることができる。
本実施態様で使用する化合物Bとしては、尿素、ビウレット、1−フェニル尿素、1−ベンジル尿素、1−メチル尿素、1−エチル尿素などが挙げられる。
化合物Bは化合物A同様に水溶液として用いることが好ましい。また、反応の均一性が高まることから化合物Aと化合物Bの両方が溶解した水溶液を用いることが好ましい。繊維原料(絶乾質量)に対する化合物Bの添加量は1質量%以上500質量%以下であることが好ましく、10質量%以上400質量%以下であることがより好ましく、100質量%以上350質量%以下であることがさらに好ましく、150質量%以上300質量%以下であることが特に好ましい。
化合物Aと化合物Bの他に、アミド類またはアミン類を反応系に含んでもよい。アミド類としては、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトアミド、ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。アミン類としては、メチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。これらの中でも、特にトリエチルアミンは良好な反応触媒として働くことが知られている。
リン酸基導入工程においては加熱処理を施すことが好ましい。加熱処理温度は、繊維の熱分解や加水分解反応を抑えながら、リン酸基を効率的に導入できる温度を選択することが好ましい。具体的には50℃以上300℃以下であることが好ましく、100℃以上250℃以下であることがより好ましく、150℃以上200℃以下であることがさらに好ましい。また、加熱には減圧乾燥機、赤外線加熱装置、マイクロ波加熱装置を用いてもよい。
加熱処理の際、化合物Aを添加した繊維原料スラリーに水が含まれている間において、繊維原料を静置する時間が長くなると、乾燥に伴い水分子と溶存する化合物Aが繊維原料表面に移動する。そのため、繊維原料中の化合物Aの濃度にムラが生じる可能性があり、繊維表面へのリン酸基の導入が均一に進行しない恐れがある。乾燥による繊維原料中の化合物Aの濃度ムラ発生を抑制するためには、ごく薄いシート状の繊維原料を用いるか、ニーダー等で繊維原料と化合物Aを混練又は攪拌しながら加熱乾燥又は減圧乾燥させる方法を採ればよい。
加熱処理に用いる加熱装置としては、スラリーが保持する水分及びリン酸基などの繊維の水酸基への付加反応で生じる水分を常に装置系外に排出できる装置であることが好ましく、例えば送風方式のオーブン等が好ましい。装置系内の水分を常に排出すれば、リン酸エステル化の逆反応であるリン酸エステル結合の加水分解反応を抑制できることに加えて、繊維中の糖鎖の酸加水分解を抑制することもでき、軸比の高い微細繊維を得ることができる。
加熱処理の時間は、加熱温度にも影響されるが繊維原料スラリーから実質的に水分が除かれてから1秒以上300分以下であることが好ましく、1秒以上1000秒以下であることがより好ましく、10秒以上800秒以下であることがさらに好ましい。本発明では、加熱温度と加熱時間を適切な範囲とすることにより、リン酸基の導入量を好ましい範囲内とすることができる。
リン酸基の導入量は、微細繊維状セルロース1g(質量)あたり0.10mmol/g以上であることが好ましく、0.20mmol/g以上であることがより好ましく、0.50mmol/g以上であることがさらに好ましく、1.00mmol/g以上であることが特に好ましい。また、リン酸基の導入量は、微細繊維状セルロース1g(質量)あたり3.65mmol/g以下であることが好ましく、3.50mmol/g以下であることがより好ましく、3.00mmol/g以下であることがさらに好ましい。リン酸基の導入量を上記範囲内とすることにより、繊維原料の微細化を容易にし、微細繊維状セルロースの安定性を高めることができる。また、リン酸基の導入量を上記範囲内とすることにより、微細繊維状セルロースのスラリーの粘度を適切な範囲に調整することができ、これにより、所望の厚みを有するシートを形成しやすくなる。なお、本明細書において、微細繊維状セルロースが有するリン酸基の含有量(リン酸基の導入量)は、後述するように微細繊維状セルロースが有するリン酸基の強酸性基量と等しい。
リン酸基の繊維原料への導入量は、伝導度滴定法により測定することができる。具体的には、解繊処理工程により微細化を行い、得られた微細繊維状セルロース含有スラリーをイオン交換樹脂で処理した後、水酸化ナトリウム水溶液を加えながら電気伝導度の変化を求めることにより、導入量を測定することができる。
伝導度滴定では、アルカリを加えていくと、図1に示した曲線を与える。最初は、急激に電気伝導度が低下する(以下、「第1領域」という)。その後、わずかに伝導度が上昇を始める(以下、「第2領域」という)。さらにその後、伝導度の増分が増加する(以下、「第3領域」という)。すなわち、3つの領域が現れる。なお、第2領域と第3領域の境界点は、伝導度の2回微分値、すなわち伝導度の増分(傾き)の変化量が最大となる点で定義される。このうち、第1領域で必要としたアルカリ量が、滴定に使用したスラリー中の強酸性基量と等しく、第2領域で必要としたアルカリ量が滴定に使用したスラリー中の弱酸性基量と等しくなる。リン酸基が縮合を起こす場合、見かけ上弱酸性基が失われ、第1領域に必要としたアルカリ量と比較して第2領域に必要としたアルカリ量が少なくなる。一方、強酸性基量は、縮合の有無に関わらずリン原子の量と一致することから、単にリン酸基導入量(またはリン酸基量)、または置換基導入量(または置換基量)と言った場合は、強酸性基量のことを表す。すなわち、図1に示した曲線の第1領域で必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象スラリー中の固形分(g)で除して、置換基導入量(mmol/g)とする。
リン酸基導入工程は、少なくとも1回行えば良いが、複数回繰り返すこともできる。例えば、リン酸基導入工程を2回行うことが好ましい。この場合、より多くのリン酸基が導入されるので好ましい。
<カルボキシル基導入工程>
微細繊維状セルロースがカルボキシル基を有するものである場合、カルボキシル基導入工程を経ることで微細繊維状セルロースにカルボキシル基を導入することができる。カルボキシル基導入工程では、TEMPO酸化処理などの酸化処理やカルボン酸由来の基を有する化合物、その誘導体、またはその酸無水物もしくはその誘導体によって繊維原料を処理することで、微細繊維状セルロースにカルボキシル基を導入することができる。
カルボキシル基を有する化合物としては特に限定されないが、マレイン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、イタコン酸等のジカルボン酸化合物やクエン酸、アコニット酸等トリカルボン酸化合物が挙げられる。
カルボキシル基を有する化合物の酸無水物としては特に限定されないが、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水イタコン酸等のジカルボン酸化合物の酸無水物が挙げられる。
カルボキシル基を有する化合物の誘導体としては特に限定されないが、カルボキシル基を有する化合物の酸無水物のイミド化物、カルボキシル基を有する化合物の酸無水物の誘導体が挙げられる。カルボキシル基を有する化合物の酸無水物のイミド化物としては特に限定されないが、マレイミド、コハク酸イミド、フタル酸イミド等のジカルボン酸化合物のイミド化物が挙げられる。
カルボキシル基を有する化合物の酸無水物の誘導体としては特に限定されない。例えば、ジメチルマレイン酸無水物、ジエチルマレイン酸無水物、ジフェニルマレイン酸無水物等の、カルボキシル基を有する化合物の酸無水物の少なくとも一部の水素原子が置換基(例えば、アルキル基、フェニル基等)で置換されたものが挙げられる。
カルボキシル基導入工程において、TEMPO酸化処理を行う場合、その処理をpHが6以上8以下の条件で行うことも好ましい。このような処理工程は中性TEMPO酸化処理ともいう。中性TEMPO酸化処理は、例えば、リン酸ナトリウム緩衝液(pH=6.8)に、パルプと、触媒としてTEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル)等のニトロキシラジカル、犠牲試薬として次亜塩素酸ナトリウムを添加することで行うことができる。さらに亜塩素酸ナトリウムを共存させることによって、酸化の過程で発生するアルデヒドを、効率的にカルボキシル基まで酸化することが出来る。
カルボキシル基の導入量は、微細繊維状セルロース1g(質量)あたり0.10mmol/g以上であることが好ましく、0.20mmol/g以上であることがより好ましく、0.50mmol/g以上であることがさらに好ましく、1.00mmol/g以上であることが特に好ましい。また、カルボキシル基の導入量は、3.65mmol/g以下であることが好ましく、3.50mmol/g以下であることがより好ましく、3.00mmol/g以下であることがさらに好ましい。
カルボキシル基の導入量は伝導度滴定法で測定することができる。伝導度滴定法による測定の際には、得られた微細繊維状セルロース含有スラリーに、水酸化ナトリウム水溶液を加えながら伝導度の変化を求めることにより、導入量を測定する。
伝導度滴定法では、アルカリを加えていくと、図2に示した曲線を与える。この曲線は、電気伝導度が減少した後、伝導度の増分(傾き)がほぼ一定となるまでを第1領域、その後、伝導度の増分(傾き)が増加する第2領域に区分される。なお、第1領域、第2領域の境界点は、伝導度の2回微分値、すなわち伝導度の増分(傾き)の変化量が最大となる点で定義される。図2で示した曲線の第1領域で必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象の微細繊維状セルロース含有スラリー中の固形分(g)で除して、カルボキシル基の導入量(mmol/g)とする。
<アルカリ処理>
微細繊維状セルロースを製造する場合、リン酸基導入工程やカルボキシル基導入工程といったイオン性置換基導入工程と、後述する解繊処理工程との間にアルカリ処理を行ってもよい。アルカリ処理の方法としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ溶液中に、イオン性置換基導入繊維を浸漬する方法が挙げられる。
アルカリ溶液に含まれるアルカリ化合物は、特に限定されないが、無機アルカリ化合物であってもよいし、有機アルカリ化合物であってもよい。アルカリ溶液における溶媒としては水または有機溶媒のいずれであってもよい。溶媒は、極性溶媒(水、またはアルコール等の極性有機溶媒)が好ましく、少なくとも水を含む水系溶媒がより好ましい。
また、アルカリ溶液のうちでは、汎用性が高いことから、水酸化ナトリウム水溶液、または水酸化カリウム水溶液が特に好ましい。
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液の温度は特に限定されないが、5℃以上80℃以下が好ましく、10℃以上60℃以下がより好ましい。
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液への浸漬時間は特に限定されないが、5分以上30分以下が好ましく、10分以上20分以下がより好ましい。
アルカリ処理におけるアルカリ溶液の使用量は特に限定されないが、イオン性置換基導入繊維の絶対乾燥質量に対して100質量%以上100000質量%以下であることが好ましく、1000質量%以上10000質量%以下であることがより好ましい。
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液使用量を減らすために、アルカリ処理工程の前に、イオン性置換基導入繊維を水や有機溶媒により洗浄しても構わない。アルカリ処理後には、取り扱い性を向上させるために、解繊処理工程の前に、アルカリ処理済みイオン性置換基導入繊維を水や有機溶媒により洗浄することが好ましい。
<解繊処理>
イオン性置換基導入繊維は、解繊処理工程で解繊処理される。解繊処理工程では、通常、解繊処理装置を用いて、繊維を解繊処理して、微細繊維状セルロース含有スラリーを得るが、処理装置、処理方法は、特に限定されない。
解繊処理装置としては、高速解繊機、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザーや超高圧ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ビーズミルなどを使用できる。あるいは、解繊処理装置としては、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナー、二軸混練機、振動ミル、高速回転下でのホモミキサー、超音波分散機、またはビーターなど、湿式粉砕する装置等を使用することもできる。解繊処理装置は、上記に限定されるものではない。好ましい解繊処理方法としては、粉砕メディアの影響が少なく、コンタミの心配が少ない高速解繊機、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザーが挙げられる。
解繊処理の際には、繊維原料を水と有機溶媒を単独または組み合わせて希釈してスラリー状にすることが好ましいが、特に限定されない。分散媒としては、水の他に、極性有機溶剤を使用することができる。好ましい極性有機溶剤としては、アルコール類、ケトン類、エーテル類、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、またはジメチルアセトアミド(DMAc)等が挙げられるが、特に限定されない。アルコール類としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、またはt−ブチルアルコール等が挙げられる。ケトン類としては、アセトンまたはメチルエチルケトン(MEK)等が挙げられる。エーテル類としては、ジエチルエーテルまたはテトラヒドロフラン(THF)等が挙げられる。分散媒は1種であってもよいし、2種以上でもよい。また、分散媒中に繊維原料以外の固形分、例えば水素結合性のある尿素などを含んでも構わない。
本発明では、微細繊維状セルロースを濃縮、乾燥させた後に解繊処理を行ってもよい。この場合、濃縮、乾燥の方法は特に限定されないが、例えば、微細繊維状セルロースを含有するスラリーに濃縮剤を添加する方法、一般に用いられる脱水機、プレス、乾燥機を用いる方法等が挙げられる。また、公知の方法、例えばWO2014/024876、WO2012/107642、およびWO2013/121086に記載された方法を用いることができる。また、濃縮した微細繊維状セルロースをシート化してもよい。該シートを粉砕して解繊処理を行うこともできる。
微細繊維状セルロースを粉砕する際に粉砕に用いる装置としては、高速解繊機、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ビーズミル、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナー、二軸混練機、振動ミル、高速回転下でのホモミキサー、超音波分散機、ビーターなど、湿式粉砕する装置等を使用することもできるが特に限定されない。
(アルコール)
繊維状セルロース含有組成物は、1価の第1級アルコール、1価の第2級アルコール及び多価アルコールから選択される少なくとも1種のアルコールを含む。アルコールは1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
1価の第1級アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール等の脂肪族アルコールや、ベンジルアルコール等の芳香族アルコールを挙げることができる。中でも、メタノール、エタノールは好ましく用いられる。
1価の第2級アルコールとしては、2−プロパノール(イソプロピルアルコール)、2−ブタノール、2−ペンタノール、シクロヘキサノール等を挙げることができる。中でも、2−プロパノール(イソプロピルアルコール)は好ましく用いられる。
多価アルコールとしては、2価以上のアルコールを挙げることができる。中でも、多価アルコールは2価又は3価のアルコールであることが好ましい。多価アルコールとしては、例えば、メチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等を挙げることができる。中でも、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンは好ましく用いられる。
1価の第1級アルコール、1価の第2級アルコール及び多価アルコールから選択される少なくとも1種のアルコールの炭素数は、10以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましく、6以下であることがさらに好ましい。
1価の第1級アルコール、1価の第2級アルコール及び多価アルコールから選択される少なくとも1種のアルコールの比誘電率は60以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましい。なお、アルコールの比誘電率の下限値は特に限定されるものではなく、例えば、1とすることができる。
(任意成分)
本発明の繊維状セルロース含有組成物は、任意成分として、親水性高分子や有機イオンをさらに含んでもよい。親水性高分子としては、例えば、ポリエチレングリコール、セルロース誘導体(ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等)、カゼイン、デキストリン、澱粉、変性澱粉、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール(アセトアセチル化ポリビニルアルコール等)、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸塩類、ポリアクリルアミド、アクリル酸アルキルエステル共重合体、ウレタン系共重合体などを挙げることができる。中でも、親水性高分子は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、変性ポリビニルアルコール(変性PVA)及びポリエチレンオキサイド(PEO)から選択される少なくとも1種であることが好ましく、ポリエチレンオキサイド(PEO)であることがより好ましい。
有機イオンとしては、例えば、テトラアルキルアンモニウムイオンやテトラアルキルホスホニウムイオンを挙げることができる。テトラアルキルアンモニウムイオンとしては、例えば、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、テトラペンチルアンモニウムイオン、テトラヘキシルアンモニウムイオン、テトラヘプチルアンモニウムイオン、トリブチルメチルアンモニウムイオン、ラウリルトリメチルアンモニウムイオン、セチルトリメチルアンモニウムイオン、ステアリルトリメチルアンモニウムイオン、オクチルジメチルエチルアンモニウムイオン、ラウリルジメチルエチルアンモニウムイオン、ジデシルジメチルアンモニウムイオン、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムイオン、トリブチルベンジルアンモニウムイオンが挙げられる。テトラアルキルホスホニウムイオンとしては、例えばテトラメチルホスホニウムイオン、テトラエチルホスホニウムイオン、テトラプロピルホスホニウムイオン、テトラブチルホスホニウムイオン、およびラウリルトリメチルホスホニウムイオンが挙げられる。また、テトラプロピルオニウムイオン、テトラブチルオニウムイオンとして、それぞれテトラn−プロピルオニウムイオン、テトラn−ブチルオニウムイオンなども挙げることができる。
また、繊維状セルロース含有組成物は、任意成分として、例えば、フィラー、顔料、染料、紫外線吸収剤、香料、防腐剤、界面活性剤、酸化防止剤等をさらに含んでもよい。
繊維状セルロース含有組成物は、熱可塑性樹脂をさらに含んでもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、芳香族ポリカーボネート系樹脂、脂肪族ポリカーボネート系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリオレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、熱可塑性ポリイミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリスルホン系樹脂、非晶性フッ素系樹脂等が挙げられるがこれらに制限されない。中でも、熱可塑性樹脂は、芳香族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリオレフィン系樹脂、芳香族ポリカーボネート系樹脂、脂肪族ポリカーボネート系樹脂であることが好ましい。より具体的には、熱可塑性樹脂は例えば、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、エチレン−ビニルアルコール共重合体、非晶質PET、ポリプロピレン、酸変性ポリプロピレン、ポリカーボネート及びポリエチレンから選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、ポリプロピレン及び酸変性ポリプロピレンから選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
熱可塑性樹脂は、熱可塑性樹脂エマルジョンであってもよいが、エマルジョンであることが好ましい。なお、熱可塑性樹脂が熱可塑性樹脂繊維である場合、熱可塑性樹脂繊維の繊維長(数平均繊維長)は、0.5mm以上であることが好ましく、1mm以上であることがより好ましく、3mm以上であることがさらに好ましい。また、熱可塑性樹脂繊維の繊維長(数平均繊維長)は、100mm以下であることが好ましく、50mm以下であることがより好ましく、25mm以下であることがさらに好ましい。
また、熱可塑性樹脂繊維の繊維径(数平均繊維径)は、0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、3μm以上であることがさらに好ましい。また、熱可塑性樹脂繊維の繊維径(数平均繊維径)は、50μm以下であることが好ましく、25μm以下であることがより好ましく、15μm以下であることがさらに好ましい。
繊維状セルロース含有組成物が熱可塑性樹脂を含む場合、熱可塑性樹脂の含有量は、繊維状セルロース100質量部に対して、50質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましい。
(繊維状セルロース含有組成物の製造方法)
本発明の繊維状セルロース含有組成物は、繊維幅が1000nm以下である繊維状セルロースと、水と、1価の第1級アルコール、1価の第2級アルコール及び多価アルコールから選択される少なくとも1種のアルコールと、必要に応じてその他の成分と、を混合することにより得ることができる。混合方法は、特に限定されないが、たとえば真空ホモミキサー、ディスパー、プロペラミキサー、ニーダー等の各種混練器、ブレンダー、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミル、ペブルミル、ビーズミル粉砕機、高圧ホモジナイザーなどを用いて混合することができる。
繊維状セルロース含有組成物の各成分を混合する際には、解繊処理を行った微細繊維状セルロース含有スラリーに、さらに、水と、1価の第1級アルコール、1価の第2級アルコール及び多価アルコールから選択される少なくとも1種のアルコールと、を混合してもよい。また、水と、1価の第1級アルコール、1価の第2級アルコール及び多価アルコールから選択される少なくとも1種のアルコールと、の混合溶媒中で繊維状セルロースの解繊処理を行ってもよい。
(用途)
本発明の繊維状セルロース含有組成物は、例えば、増粘剤として各種用途に使用することができる。また、樹脂やエマルジョンと混合し補強材として用いることもできるし、繊維状セルロース含有組成物を用いて製膜し、各種シートを作製してもよい。さらに、糸、フィルタ、織物、緩衝材、スポンジ、研磨材として用いることもできる。
本発明の繊維状セルロース含有組成物においては、微細繊維状セルロースが均一に分散しており、かつ繊維状セルロース含有組成物の透明性が高いという特徴がある。このため、繊維状セルロース含有組成物を用いて透明性の高いシートを製造することができる。このようなシートは、各種のディスプレイ装置、各種の太陽電池、等の光透過性基板の用途に適している。また、電子機器の基板、家電の部材、各種の乗り物や建物の窓材、内装材、外装材、包装用資材等の用途にも適している。
繊維状セルロース含有組成物からシートを形成する際には、スラリー状の繊維状セルロース含有組成物を基材上に塗工する工程を設けることが好ましい。また、スラリー状の繊維状セルロース含有組成物を抄紙することによって、シートを形成することもできる。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
〔実施例1〕
<リン酸基導入セルロース繊維の作製>
針葉樹クラフトパルプとして、王子製紙製のパルプ(固形分濃度93質量%、坪量208g/m2シート状、離解してJIS P 8121に準じて測定されるカナダ標準濾水度(CSF)700ml)を使用した。上記針葉樹クラフトパルプ100質量部(絶乾質量)に、リン酸二水素アンモニウムと尿素の混合水溶液を含浸し、リン酸二水素アンモニウム49質量部、尿素130質量部となるように圧搾し、薬液含浸パルプを得た。得られた薬液含浸パルプを105℃の乾燥機で乾燥し、水分を蒸発させてプレ乾燥させた。その後、140℃に設定した送風乾燥機で、10分間加熱し、パルプ中のセルロースにリン酸基を導入し、リン酸化パルプを得た。得られたリン酸化パルプ100質量部(絶乾質量)に対して10000質量部のイオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた後、濾過脱水して、脱水シートを得る工程を2回繰り返し、リン酸変性セルロース繊維を得た。次いで、リン酸基を導入したセルロースに5000mlのイオン交換水を加え、撹拌洗浄後、脱水した。脱水後のパルプを5000mlのイオン交換水で希釈し、撹拌しながら、1Nの水酸化ナトリウム水溶液をpHが12以上13以下になるまで少しずつ添加して、パルプ分散液を得た。その後、このパルプ分散液を脱水し、5000mlのイオン交換水を加えて洗浄を行った。この脱水洗浄をさらに1回繰り返した。
<機械処理>
洗浄脱水後に得られたリン酸変性セルロース繊維にイオン交換水を添加して、固形分濃度が1.0質量%のパルプ懸濁液にした。このパルプ懸濁液を、湿式微粒化装置(スギノマシン社製、アルティマイザー)で245MPaの圧力にて5回処理し、微細繊維状セルロース含有スラリーを得た。
<置換基量の測定>
置換基導入量は、繊維原料へのリン酸基の導入量であり、この値が大きいほど、多くのリン酸基が導入されている。置換基導入量は、対象となる微細繊維状セルロースをイオン交換水で含有量が0.2質量%となるように希釈した後、イオン交換樹脂による処理、アルカリを用いた滴定によって測定した。イオン交換樹脂による処理では、0.2質量%繊維状セルロース含有スラリーに体積で1/10の強酸性イオン交換樹脂(アンバージェット1024;オルガノ株式会社、コンディショング済)を加え、1時間振とう処理を行った。その後、目開き90μmのメッシュ上に注ぎ、樹脂とスラリーを分離した。アルカリを用いた滴定では、イオン交換後の繊維状セルロース含有スラリーに、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液を加えながら、スラリーが示す電気伝導度の値の変化を計測した。すなわち、図1(リン酸基)に示した曲線の第1領域で必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象スラリー中の固形分(g)で除して、置換基導入量(mmol/g)とした。算出した結果、1.29mmol/gであった。
<繊維幅の測定>
微細繊維状セルロースの繊維幅を下記の方法で測定した。
微細繊維状セルロース含有スラリーの上澄み液を濃度が0.01質量%以上0.1質量%以下となるように水で希釈し、親水化処理したカーボングリッド膜に滴下した。乾燥後、酢酸ウラニルで染色し、透過型電子顕微鏡(日本電子社製、JEOL−2000EX)により観察した。得られたリン酸変性セルロース繊維の繊維幅は、4〜20nm程度であった。
<組成物の調製>
上記の微細繊維状セルロース含有スラリー(固形分濃度2.0質量%)に水とイソプロピルアルコールを添加して、微細繊維状セルロース0.4質量部に対し、水が80質量部、イソプロピルアルコールが19.6質量部になるように調製した。すなわち、固形分濃度が0.4質量%となるよう濃度調整した。このようにして、微細繊維状セルロース含有組成物を得た。
〔実施例2〕
微細繊維状セルロース0.4質量部に対し、水の添加量が70質量部、イソプロピルアルコールの添加量が29.6質量部となるように調製した以外は、実施例1と同様にして微細繊維状セルロース含有組成物を得た。
〔実施例3〕
微細繊維状セルロース0.4質量部に対し、水の添加量が80質量部、エタノールの添加量が19.6質量部となるように調製した以外は、実施例1と同様にして微細繊維状セルロース含有組成物を得た。
〔実施例4〕
微細繊維状セルロース0.4質量部に対し、水の添加量が70質量部、エタノールの添加量が29.6質量部となるように調製した以外は、実施例1と同様にして微細繊維状セルロース含有組成物を得た。
〔実施例5〕
微細繊維状セルロース0.4質量部に対し、水の添加量が80質量部、プロピレングリコールの添加量が19.6質量部となるように調製した以外は、実施例1と同様にして微細繊維状セルロース含有組成物を得た。
〔実施例6〕
微細繊維状セルロース0.4質量部に対し、水の添加量が70質量部、プロピレングリコールの添加量が29.6質量部となるように調製した以外は、実施例1と同様にして微細繊維状セルロース含有組成物を得た。
〔実施例7〕
微細繊維状セルロース0.4質量部に対し、水の添加量が80質量部、メタノールの添加量が19.6質量部となるように調製した以外は、実施例1と同様にして微細繊維状セルロース含有組成物を得た。
〔実施例8〕
微細繊維状セルロース0.4質量部に対し、水の添加量が80質量部、エチレングリコールの添加量が19.6質量部となるように調製した以外は、実施例1と同様にして微細繊維状セルロース含有組成物を得た。
〔実施例9〕
微細繊維状セルロース0.4質量部に対し、水の添加量が49.8質量部、エチレングリコールの添加量が49.8質量部となるように調製した以外は、実施例1と同様にして微細繊維状セルロース含有組成物を得た。
〔実施例10〕
微細繊維状セルロース0.4質量部に対し、水の添加量が80質量部、グリセリンの添加量が19.6質量部となるように調製した以外は、実施例1と同様にして微細繊維状セルロース含有組成物を得た。
〔実施例11〕
微細繊維状セルロース0.4質量部に対し、水の添加量が49.8質量部、グリセリンの添加量が49.8質量部となるように調製した以外は、実施例1と同様にして微細繊維状セルロース含有組成物を得た。
〔比較例1〕
微細繊維状セルロース0.4質量部に対し、水の添加量が60質量部、イソプロピルアルコールの添加量が39.6質量部となるように調製した以外は、実施例1と同様にして微細繊維状セルロース含有組成物を得た。
〔比較例2〕
微細繊維状セルロース0.4質量部に対し、水の添加量が49.8質量部、イソプロピルアルコールの添加量が49.8質量部となるように調製した以外は、実施例1と同様にして微細繊維状セルロース含有組成物を得た。
〔比較例3〕
微細繊維状セルロース0.4質量部に対し、水の添加量が19.6質量部、イソプロピルアルコールの添加量が80質量部となるように調製した以外は、実施例1と同様にして微細繊維状セルロース含有組成物を得た。
〔比較例4〕
微細繊維状セルロース0.4質量部に対し、水の添加量が60質量部、エタノールの添加量が39.6質量部となるように調製した以外は、実施例1と同様にして微細繊維状セルロース含有組成物を得た。
〔比較例5〕
微細繊維状セルロース0.4質量部に対し、水の添加量が49.8質量部、エタノールの添加量が49.8質量部となるように調製した以外は、実施例1と同様にして微細繊維状セルロース含有組成物を得た。
〔比較例6〕
微細繊維状セルロース0.4質量部に対し、水の添加量が19.6質量部、エタノールの添加量が80質量部となるように調製した以外は、実施例1と同様にして微細繊維状セルロース含有組成物を得た。
〔比較例7〕
微細繊維状セルロース0.4質量部に対し、水の添加量が19.6質量部、プロピレングリコールの添加量が80質量部となるように調製した以外は、実施例1と同様にして微細繊維状セルロース含有組成物を得た。
〔比較例8〕
微細繊維状セルロース0.4質量部に対し、水の添加量が49.8質量部、メタノールの添加量が49.8質量部となるように調製した以外は、実施例1と同様にして微細繊維状セルロース含有組成物を得た。
〔比較例9〕
微細繊維状セルロース0.4質量部に対し、水の添加量が19.6質量部、メタノールの添加量が80質量部となるように調製した以外は、実施例1と同様にして微細繊維状セルロース含有組成物を得た。
〔比較例10〕
微細繊維状セルロース0.4質量部に対し、水の添加量が19.6質量部、エチレングリコールの添加量が80質量部となるように調製した以外は、実施例1と同様にして微細繊維状セルロース含有組成物を得た。
〔評価〕
<方法>
実施例及び比較例で作製した微細繊維状セルロース含有組成物について以下の評価方法に従って評価を実施した。
(1)分散性の評価
実施例及比較例で得られた微細繊維状セルロース含有組成物の分散状態を目視で観察した。評価基準は次の通りである。
○:微細繊維状セルロース含有組成物中に(有機溶媒が存在する場合であっても)凝集物の発生がなく、微細繊維状セルロースが均一なまま分散状態に変化がない。
×:微細繊維状セルロース含有組成物中に凝集物が発生し、微細繊維状セルロースの分散状態に変化が起きる。
(2)粘度測定
実施例及比較例で得られた微細繊維状セルロース含有組成物を25℃の環境下にて16時間以上静置し、B型粘度計(No.3ローター)(BLOOKFIELD社製、アナログ粘度計T−LVT)を用いて25℃にて回転数3rpmで3分間回転させて粘度を測定した。なお、粘度測定に用いた組成物の固形分濃度は0.4質量%とした。
(3)全光線透過率測定
実施例及比較例で得られた微細繊維状セルロース含有組成物を25℃の環境下に16時間以上静置後、JIS K 7361に準拠し、ヘーズメータ(村上色彩技術研究所社製、HM−150)を用いて全光線透過率を測定した。微細繊維状セルロース含有組成物の固形分濃度は0.2質量%とした。測定の際には、光路長1cmの液体用ガラスセル(藤原製作所製、MG−40、逆光路)に組成物を入れ、測定した。なお、ゼロ点測定は、同ガラスセルに入れたイオン交換水で行った。
(4)ヘーズ測定
実施例及比較例で得られた微細繊維状セルロース含有組成物を25℃の環境下に16時間以上静置後、JIS K 7136に準拠し、ヘーズメータ(村上色彩技術研究所社製、HM−150)を用いてヘーズを測定した。微細繊維状セルロース含有組成物の固形分濃度は0.2質量%とした。測定の際には、光路長1cmの液体用ガラスセル(藤原製作所製、MG−40、逆光路)に組成物を入れ、測定した。なお、ゼロ点測定は、同ガラスセルに入れたイオン交換水で行った。
(5)比誘電率測定
実施例及比較例で得られた微細繊維状セルロース含有組成物の比誘電率を液体用誘電率計(日本ルフト株式会社製、Model−871)を用いて測定した。なお、繊維状セルロース含有組成物の比誘電率を測定する前には、繊維状セルロース含有組成物の液温が25℃になるように、25℃の環境下に16時間以上静置した。また、測定は、25℃の環境下で行った。
Figure 2018095709
表1から明らかなように、微細繊維状セルロース含有組成物の比誘電率が55以上である実施例1〜11では、分散媒に所定の有機溶媒を含んでいても凝集物の発生がなく、粘度やヘーズが維持された良好な分散性を示した。微細繊維状セルロース含有組成物の比誘電率が55未満である比較例1〜10では、分散媒に有機溶媒が含まれることで凝集物が発生し、粘度やヘーズが低下するなど分散状態が変化した。このように、微細繊維状セルロース含有組成物の比誘電率を適切に制御することにより、その分散性を向上させ得ることが示唆された。

Claims (5)

  1. 繊維幅が1000nm以下である繊維状セルロース、水、及びアルコールを含有する繊維状セルロース含有組成物であって、
    前記アルコールは、1価の第1級アルコール、1価の第2級アルコール及び多価アルコールから選択される少なくとも1種であり、
    前記繊維状セルロース含有組成物の25℃における比誘電率が55以上80未満である繊維状セルロース含有組成物。
  2. 前記アルコールの含有量は、前記繊維状セルロース含有組成物の全質量に対して10質量%以上である請求項1に記載の繊維状セルロース含有組成物。
  3. 前記繊維状セルロース含有組成物を固形分濃度が0.2質量%のスラリーとし、25℃の環境下にて16時間以上静置した後、JIS K 7136に準拠して測定される前記スラリーのヘーズが20%以下である請求項1又は2に記載の繊維状セルロース含有組成物。
  4. 前記繊維状セルロース含有組成物を固形分濃度が0.4質量%のスラリーとし、25℃の環境下にて16時間以上静置した後、B型粘度計を用いて、25℃にて回転数3rpmで3分間回転させることで測定される前記スラリーの粘度が、10000mPa・s以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の繊維状セルロース含有組成物。
  5. 前記繊維状セルロース含有組成物を固形分濃度が0.2質量%のスラリーとし、25℃の環境下にて16時間以上静置した後、JIS K 7136に準拠して測定される前記スラリーの全光線透過率が98%以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載の繊維状セルロース含有組成物。
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