JP2018094246A - 吸収体 - Google Patents
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Abstract
Description
吸水性ポリマー材は、例えば自重の数十倍の液体を吸収して膨潤しながら該液体を内部に保持し閉じ込めることができ、パルプ繊維よりも液吸収保持性能が高い。一方で、吸水性ポリマー材は、吸水により膨潤するとゲル化する。吸収体内において、受液面に近い側で先にゲル化した吸水性ポリマー材がゲル層を形成し、液の透過や拡散を阻害(ゲルブロッキング)することがある。これにより、吸収体内での液の通液性が阻害され、液吸収速度が低下しかねない。この場合、液量が多くなり過ぎると、液残りやそれに伴う肌側への液戻りが生じることがある。
この問題に対して、特許文献1では、吸水性ポリマー材に繊維を含有させた複合物を用いることが記載されている。これにより、繊維の持つ水分の捕獲性等が吸水性ポリマー材に付与され、液の吸収速度に寄与するとされる。
特許文献2では、繊維を埋め込んだ複合吸収材を、脱落防止の観点から、綿状やシート状のセルロース系繊維と混合ないし積層して用いることが記載されている。同様に、特許文献3には、吸水性樹脂粒子の繊維への固着性を高める観点から、前記吸水性樹脂粒子と熱融着性樹脂粉末とを特定の重量比で混合することが記載されている。
特許文献4には、親水性の長繊維のウエブに高吸収性ポリマーを埋没担持させた吸収体を具備する吸収性物品が記載されている。液の吸収速度を高める観点から、高吸収性ポリマーは、表面シート側と裏面シート側とで粒径を相違させている。
しかし、パルプ繊維の量を低減していくと、吸水性ポリマー材の担持力(固定性)が低下してしまう。すなわち、吸水性ポリマー材は吸収体内で動きやすくなる。吸収体を備える吸収性物品の使用時において、吸水性ポリマー材が動くことで肌に違和感や異物感を与え、吸収体の型崩れや破壊につながりかねない。吸収体の薄型化と良好な装着感とが両立し難い。更なる薄型化に伴う違和感や異物感を解消することについて、上記特許文献には記載はない。
液吸収性複合粒材3は、接合基部2を介して、基材不織布4の繊維5に固着されている。具体的には、接合基部2の樹脂成分によって液吸収性複合粒材3と繊維5とが溶融一体されている。繊維5に固着された液吸収性複合粒材3は、基材不織布4の一方の面側(第1面A側)から厚み方向に点在して分散配置されている。さらに液吸収性複合粒材3は、基材不織布4の表面及び厚み方向内部において、面方向にも点在して分散配置されている。
本実施形態において、一方の面(第1面A)の表面では、液吸収性複合粒材3は露出しているものがある。また、液吸収性複合粒材3は、一方の面側(第1面A側)とは反対側の他方の面側(第2面B側)の表面にも露出して配されるものがあったほうが好ましいが、なくてもよい。
なお、ここで、一方の面側(第1面A側)及び他方の面側(第2面B側)とは、基材不織布のシートの両面を意味する。図1に示すように凹凸(第1突出部と第2突出部)がある場合、これらを含めて基材不織布全体の形状として一方の面と他方の面とする。
また、繊維層とは、基材不織布が図1に示すような両面に凹凸のあるものである場合、各凹凸を構成する局所的な部位の繊維集合部分を意味する。局所的な部位においても第1面A側と第2面B側とがある。基材不織布が凹凸の無いものである場合、繊維層は、上記局所的な部位はなく、基材不織布全体における繊維集合部分を意味する。
基材不織布の厚みというとき、両面に凹凸がある場合、見掛けの厚みと、繊維層の厚みとがある。見掛けの厚みとは、両面の凸の頂部間の距離であり、基材不織布の全体形状としての厚みである。繊維層の厚みとは、基材不織布の各凹凸を構成する局所的な部位(例えば図1における第1突出部41A及び第2突出部41C)の繊維集合部分の厚み(第1面側と第2面側との間の繊維集合部分の厚み)である。繊維層の厚み方向とは、前記局所的な部位における繊維集合部分の厚み方向(第1面側と第2面側とを結ぶ方向)である。
評価対象の吸収体が吸収性物品等の製品に組み込まれている場合は、コールドスプレーを用いてホットメルト接着剤の接着力を弱め、各部材を丁寧に剥がして吸収体を取り出す。測定対象面(第1面A又は第2面B)を上にして吸収体表面を、株式会社キーエンス製デジタルマイクロスコープVHX−1000(商品名)を用いて、液吸収性複合粒材が十分に視野に入り測定できる大きさになるよう拡大し、測定する。なお、粒径の測定は、吸水性ポリマー材1の表面の一部にある接合基部2までを液吸収性複合粒材3の外周とみなして行われる。
測定は10箇所行い、平均値を測定対象面側(第1面A側又は第2面B側)の液吸収性複合粒材3の粒径とする。なお、液吸収性複合粒材3が測定対象面に露出していない場合は、吸収体10の厚み断面方向に切断し、測定対象面から繊維層厚みの1/3の範囲にある液吸収性複合粒材の測定を行うこととする。
上記の点を考慮すると、液吸収性複合粒材3の粒径は、吸収体10の受液面側(吸収性物品における肌面側)において、その反対面側(吸収性物品における非肌面側)よりも大きくされていることが好ましい。これにより、排泄液は受液面側から反対面側に透過しやすくなり、吸収体3の液吸収速度が向上する。また、受液面側でゲルブロッキングによる液吸収阻害が生じ難くなる。これにより、液吸収性能が良好なものとなる。また、受液面から離れた位置の液吸収性複合粒材3から先に液を吸収するので、余剰の液があっても受液面側の液吸収性複合粒材3が液を吸収保持して、液戻り(受液面からの液の漏出)が抑えられる。
第1面A側の液吸収性複合粒材3の粒径(S1)は、液吸収性複合粒材3間の空間を確保する観点から、350μm以上が好ましく、380μm以上がより好ましく400μm以上が更に好ましい。また、液吸収性複合粒材の異物感を解消する観点から、1000μm以下が好ましく、850μ以下がより好ましく、700μm以下が更に好ましい。具体的には、350μm以上1000μm以下が好ましく、380μ以上850μ以下がより好ましく、400μm以上700μ以下が更に好ましい。
このことが、前述した第1面A側と第2面B側で粒径を異ならせていることと相俟って、液吸収阻害の原因となるゲルブロッキングを抑制することができる。
前記樹脂成分としては、特に制限なく種々のものを用いることができる。具体的には、ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、プロピレンとαオレフィンとからなる結晶性プロピレン共重合体等のポリオレフィン類;ポリアミド類;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ジオールとテレフタル酸/イソフタル酸等を共重合した低融点ポリエステル、ポリエステルエラストマー等のポリエステル類;フッ素樹脂等が挙げられる。オレフィン系の樹脂から調整される不織布を基材不織布4として用いる場合には、ポリオレフィン類を用いることが好ましい。このように接合基部2を構成する樹脂成分は、基材不織布4を構成する樹脂成分と同種のものとすることが好ましい。
吸水性ポリマー材1としては、吸収体に用いられるものを特に制限なく種々採用することができる。例えば、アクリル酸又はアクリル酸塩を主成分とし、場合によって架橋剤を添加してなる水溶性のエチレン性不飽和モノマーを重合させて得られるヒドロゲル材料が挙げられる。また、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、スルホン化ポリスチレン及びポリビニルピリジンの架橋物、デンプン−ポリ(メタ)アクリロニトリルグラフト共重合物のケン化物、デンプン−ポリ(メタ)アクリル酸グラフト共重合物、デンプン−ポリ(メタ)アクリルエステルグラフト共重合物の加水分解物などが挙げられる。これらの吸水性ポリマー材は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
具体的には、吸水性ポリマー材1が粒状である場合、吸水性ポリマー材1の平均粒径は第1面A側のものについては、膨潤する前の状態で、300μm以上が好ましく、330μm以上がより好ましく、350μm以上が更に好ましい。また、前記平均粒径は、繊維5への固着性の観点から、800μm以下が好ましく、650μm以下がより好ましく、500μm以下が更に好ましい。具体的には、前記平均粒径は300μm以上800μm以下が好ましく、330μm以上650μm以下がより好ましく、350μm以上500μm以下が更に好ましい。
第2面B側の吸水性ポリマー材1の平均粒径は、20μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましく、40μm以上が更に好ましい。また、250μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましく、150μm以下が更に好ましい。具体的には、前記平均粒径は20μm以上250μm以下が好ましく、30μm以上200μm以下がより好ましく、40μm以上150μm以下が更に好ましい。
なお、吸水性ポリマー材1が「膨潤する前の状態」とは、室温22℃、湿度50%で平衡状態に達した後の状態をいう。吸水性ポリマー材1の平均粒径は、後述する(平均粒径の測定方法)で測定される粒径である。
吸水性ポリマー材1及び接合基部2の平均粒径は下記方法により測定される値である。
まず、市販の製品等から分析する場合には、コールドスプレーを用いてホットメルト接着剤の接着力を弱め、各部材を丁寧に剥がして、液吸収性複合粒材が固着した吸収体を取り出す。次いで、日本電子株式会社製の走査電子顕微鏡JCM−5100(商品名)を使用し、基材不織布4に固着されている液吸収性複合粒材3を撮影する(測定する吸水性ポリマー材1又は接合基部2が測定できる倍率に調整、20サンプル測定)。撮影した画像の長軸径を粒径とし、20サンプルの平均値を平均粒径とする。なお、吸水性ポリマー材1と接合基部2の見分け方は、吸水により形状変形を起こすかどうかで判別できる。吸水により形状変形を起こすものが吸水性ポリマー材1である。
吸水性ポリマー材1の表面における接合基部2の被覆の程度は、例えば、液吸収性複合粒材3における吸水性ポリマー材1と接合基部2の質量比として示すことができる。なお、接合基部2の質量とは、1つの液吸収性複合粒材3において接合基部2として存在する樹脂成分全体の質量である。したがって、接合基部2が1つの液吸収性複合粒材3に複数ある場合は、該複数の接合基部2の樹脂成分の合計質量である。液吸収性複合粒材3における吸水性ポリマー材1と接合基部2の質量比は、30:1〜2:1であることが好ましく、15:1〜3:1であることがより好ましく、10:1〜4:1であることが更に好ましい。
(被覆率の測定方法)
液吸収性複合粒材3における接合基部2の被覆率は、次の方法により測定することができる。
日本電子株式会社製の走査電子顕微鏡JCM−5100(商品名)を使用し、液吸収性複合粒材3を静置し、サンプルの測定する面に対して垂直の方向から撮影した画像(測定する液吸収性複合粒材3が測定できる倍率に調整)を印刷し、透明PET製シート上に液吸収性複合粒材3全体の面積と、接合基部2それぞれの面積をなぞる。前記の画像を二値化処理する。前記二値化した画像を用い、液吸収性複合粒材3の面積と接合基部2の面積を得る。被覆率(%)=接合基部2の合計面積/液吸収性複合粒材3の面積×100として算出する。測定は10ヶ所行い、平均して被覆率とする。
基材不織布4の繊維層の厚み(基材不織布の各凹凸を構成する局所的な部位の繊維集合部分の厚み)は、液吸収性複合粒材3の厚み方向に分散配置させて吸収体10の良好な液吸収性を実現する観点から、0.2mm以上が好ましく、0.3mm以上がより好ましく、0.4mm以上が更に好ましい。具体的には、基材不織布4の繊維層の厚みは、0.2mm以上3.0mm以下が好ましく、0.3mm以上2.5mm以下がより好ましく、0.4mm以上2.0mm以下が更に好ましい。
このような凹凸形状を有することにより、基材不織布4のシートの大きさに対して、液吸収性複合体3を配置する領域が平面方向及び厚み方向に拡大する。これにより、液吸収性複合体3の分散性を高めながら含有量を増やすことができ好ましい。また、凹凸形状に沿って液の流れを制御でき、液との接触性を高めることができ、結果、液吸収速度の向上に貢献できる。同時に、前記分散性の向上によって、液吸収性複合体3の液吸収時に膨潤する余地が広がり、ゲルブロッキング及びそれによる吸収阻害を更に生じ難くすることができる。
これにより、上記した液吸収性複合体3を配置する領域が更に拡大し好ましい。また、両面における凹凸形状は、液と液吸収性複合体3との接触性を更に高め、液吸収速度の向上に貢献する。
すなわち、吸収体10において、液吸収性複合粒材3が配されている第1面A側では、第2窪み部41Bが複数の第1突出部41Aで囲まれているため、液の捕捉性が高い。これにより、前述した液吸収性複合粒材3の固定性の向上と共に、吸収体10表面上での液流れを抑えて、各第2窪み部41Bでより多くの液が液吸収性複合粒材3と接触しやすくなる。これにより、吸収体10の液吸収速度が向上する。一方、第2面B側の第1窪み部41Dは、空隙がつながっていることで液の拡散性があがり、第2面B側において、液が液吸収性複合粒材3と接触しやすくなり、結果、吸収体10の液吸収速度が向上する。また、液の拡散性があがることで、液吸収性複合粒材3の1粒あたりの液吸収量が過剰にならず抑えられるため、液戻り量が減少する。
また、液吸収速度の向上の観点から、第2窪み部41B下の繊維層(第2突出部41C)内において、前述した第2面B側の粒径(S2)が小さい液吸収性複合粒材3Bが他の部位よりも多く配されていることが好ましい。
第1突出部41Aにおける繊維密度は上記理由から、30本/mm2以上130本/mm2以下が好ましく、50本/mm2以上100本/mm2以下がより好ましい。第2突出部41Cにおける繊維密度は上記理由から、250本/mm2以上500本/mm2以下が好ましく、300本/mm2以上450本/mm2以下がより好ましい。また、第1突出部41Aにおける繊維密度と第2突出部41Cにおける繊維密度の差は、150本/mm2以上であることが好ましい。
上記の第1突出部41A及び第2突出部41Cの繊維密度は、それぞれ下記の方法により測定することができる。
まず、基材不織布4の測定対象とする部分の切断面を、走査電子顕微鏡JCM−5100(商品名、日本電子(株)社製)を用いて拡大観察(繊維断面が30から60本計測できる倍率(150〜500倍)に調整(本実施例については150倍とした)する。次に、繊維の断面数を測定し、繊維断面数を測定した視野部分の面積を求める。そして、1mm2辺りの繊維の断面数に換算し、これを繊維密度(本/mm2)とする。測定は3ヶ所行い、平均してそのサンプルの繊維密度とする。また、観察は、第1突出部41A及び第2突出部41Cそれぞれの頂部において、繊維層の厚みの中点を中心に行う。
すなわち、両面の交差する異なる方向のそれぞれに点在する第1突出部41A及び第2突出部41Cを軸として柔軟で立体的な変形性を有する。これにより、厚み方向における柔らかなクッション性に優れる。加えて、基材不織布4が凹凸形状を有することで、接合基部2による繊維5との溶融一体化の作用と相まって、液吸収性複合粒材3は脱落し難くなり、液吸収後の吸収体10の型崩れが更に生じ難い。
ただし、前述のとおり液吸収性複合粒材3の分散性、液と液吸収性複合粒材3との接触性を更に高める観点から、凹凸形状を有することが好ましい。このとき、基材不織布4は、少なくとも一方の面側に凸部及び凹部を備えた凹凸面を有する不織布であることが好ましい。また、凹凸形状は図1に示す形態に限定されることなく、種々の形状とすることができる。
吸収体20において、基材不織布42は、受液面である第1面A側に、筋状の第1突出部42A及び第2窪み部(空間部)42Bを有する。第1面A側とは反対側の第2面B側に、筋状の第2突出部42C及び第1窪み部(空間部)42Dを有する。第2面B側の第2突出部42Cは、第1面A側の第2窪み部42Bに対応する位置にある。第2面B側の第1窪み部42Dは、第1面A側の第1突出部42Aに対応する位置にある。
吸収体20においては、前述した液吸収性複合粒材3の固定性及び分散性の向上と共に、筋状の凹部41Bに沿って液が広がり、より多くの液吸収性複合粒材3で液の吸収保持が可能となる。すなわち、液吸収速度の向上に寄与し得る。また、凹凸形状により肌に触れたときの柔らかさにも優れる。
さらに、液吸収性複合体の繊維への固着が溶融一体化によるものであるため、液吸収性複合体が繊維間距離よりも小さな粒径で、従来よりも表面積の大きいものを用いることが可能となる。この粒径が小さい液吸収性複合体を、受液面とは反対側に配置して、第1面側と第2面側とで液吸収性複合粒材の粒径を異ならせる。これにより、吸収体は液吸収速度が向上し、吸収体内での液の拡散性とゲルブロッキング防止性が高まり、液戻りが低く抑えられる。
また、本発明の吸収体は、液吸収性複合体の繊維への溶融一体化により、固着のためのパルプ繊維層を不要とし、従来のものから更なる薄型化を実現できる。また、柔らかさが向上する。加えて、液吸収性複合粒材の脱落及び移動に伴う異物感が抑えられる。さらに吸収後において、液吸収性複合粒材の脱落による吸収体の型崩れや破壊が抑えられ、この点からも装着感が向上する。このように、吸収体の薄型化による吸収性物品の柔らかさの向上とともに、装着感が向上する。
予め準備した吸水性ポリマー材に加水して混練し、さらに、熱融着性を有する樹脂成分を添加して混練する。これにより、接合基部を吸水性ポリマーに形成する。前記加水により吸水性ポリマー材の表面に粘着性を生じさせ、これにより熱溶融性の樹脂成分を含む接合基部を形成し易くする。そのため、加水は、粘着性を生じさせる程度であればよい。具体的には、吸水性ポリマー材に対する質量比で、水を10倍程度加えることが好ましい。吸水性ポリマー材としては、吸収性物品等に通常用いられるものを特に制限なく用いることができる。
次いで、前記樹脂成分を添加した吸水性ポリマー材に対し、乾燥、粉砕、分級などの処理を行って、本発明の吸収体に用いられる液吸収性複合粒材を得る。
なお、上記混練、乾燥、粉砕及び分級には、通常用いられる装置を特に制限なく用いることができる。
基材不織布に対して、上記の液吸収性複合粒材を散布する(前段工程)。このとき、受液面とする面側(上記実施形態の第1面A側)に散布する。なお、基材不織布は、通常、長尺でロール状にされたものから巻き出されて使用するため、液吸収性複合粒材を散布する前に、必要により熱風回復処理しておくことが好ましい。また、散布前に必要により毛羽加工しておくことが好ましい。
液吸収性複合粒材は、前述のとおり、第1面A側と第2面B側とで粒径を異ならせるため、少なくとも2種類の粒径(S1とS2)のもの(液吸収性複合粒材3Aと液吸収性複合粒材3B)を混合して散布する。なお、粒径は、上記2種類に限定されず、上記粒径S1と粒径S2との間の大きさのものを含め、3種類以上の液吸収性複合粒材を用いてもよい。
次いで、基材不織布の上記の液吸収性複合粒材を散布した面の反対側(上記実施形態の第2面A側)から吸引処理を行う(中段工程)。これにより、散布された液吸収性複合粒材が、基材不織布の繊維層の厚み方向内部に引き込まれ、分散して配置される。このとき、粒径が小さい液吸収性複合粒材3Bなどは、抵抗が小さいため、粒径の大きい液吸収性複合粒材(液吸収性複合粒材3Aなど)などよりも、吸引面側(上記実施形態の第2面A側)へと優先的に引き込まれる。したがって、この吸引により、第1面A側と第2面B側とで液吸収性複合粒材の粒径が相違することとなる。すなわち、繊維層の第1面A側から第2面B側へと厚み方向に粒径が小さくなるように液吸収性複合粒子材を分散配置させることができる。この吸引の力は、第1面A側と第2面B側とで粒径を異ならせるようにして、厚み方向に好適に分散配置させる観点から、適宜調整可能であるが、1m/s以上80m/s以下が好ましく、2m/s以上70m/s以下がより好ましく、3m/s以上60m/s以下が更に好ましい。
この中段工程は、温風を吹き付けながら、前記液吸収性複合粒材を吸引させる工程であることが好ましい。温風の温度は、繊維ウエブの繊維の融点又は接合基部の融点のうち、低い融点に対して10℃から30℃低いことが好ましく、15℃から20℃低いことがより好ましい。このような温風による吸引処理によって、液吸収性複合材の接合基部を軟化ないし溶融させながら同時に吸引することができる。これにより、より小さい粒径の吸収性複合粒材3を、繊維に付着させながら吸引によって基材不織布4の繊維層の内部へと移動させるため、脱落することなく、分散性良く確実に繊維と一体させることができる。
次いで、液吸収性複合粒材を散布した基材不織布に対して加熱処理を行って、接合基部及び基材不織布の繊維を溶融一体化させる(後段工程)。ここでの加熱処理は、通常不織布に用いられる方法を特に制限なく採用することができる。その加熱温度は、基材不織布の繊維の融点又は接合基部の融点のうち、高い融点に対して3℃から50℃高いことが好ましく、5℃から30℃高いことがより好ましい。該加熱処理が熱風処理である場合、熱風の風速は、1m/s以上10m/s以下に設定され、好ましくは1.5m/s以上8m/s以下に設定される。この熱風の風速は、上記の下限以上とすることで、基材不織布の繊維及び接合基部への熱伝達し、確実に溶融固着させることができ、固定性が担保できる。一方、上記の上限以下とすることで、繊維へ熱が当たりすぎず、基材不織布の風合いが良くなる。
その後、厚み調整のため、必要により加圧処理を行ってもよい。また、基材不織布として凹凸形状を有するものを用いる場合に、プリーツ折り加工(凹凸を折り畳んだ状態にする加工)を行ってもよい。
(1)液吸収性複合粒材の調製
前述した(液吸収性複合粒材の製造方法)に基づいて液吸収性複合粒材を調製した。吸水性ポリマー30gに300gのイオン交換水を加えニーダーで5分間混合しながら均等に膨潤させた。次いで、接合基部となる熱溶融性の樹脂成分であるポリエチレンパウダー「XM−220」(商品名、三井化学株式会社製)5.0gを前記ニーダーに投入して更に10分間混合した。その後、電気乾燥機を用いて、105℃にて8時間乾燥を行った。次いで、粉砕機(大阪ケミカル製、ワンダークラッシャーWC−3L)を用いて粉砕し、電磁ふるいを用いて分級を行い、粒径300μm〜350μmの液吸収性複合粒材を得た。この液吸収性複合粒材における接合基部の被覆率は、前述した(被覆率の測定方法)に基づいて測定した結果、24%であった。
(2)吸収体の作製
特開2012−136791実施例1記載の方法において、繊維ウエブに噴き付ける熱風の温度を140℃、風速を10m/秒に変更した方法を用いて、図1に示す、凹凸面を有する基材不織布を作製した。この不織布の該公報中の説明における第1突出部面をバフィングで起毛処理した。該基材不織布の大きさは、135mm×280mmとした。この基材不織布の構成繊維は芯がポリエチレンテレフタレート(融点258℃)で鞘がポリエチレン(融点135℃)からなる2.4dtex×51mmの芯鞘型複合繊維を用いた。なお、液吸収性複合粒材の散布面となる第1面A側(吸収体の受液面側)の第1突出部の繊維密度は、128本/mm2であった。反対側の第2面B側の第2突出部の繊維密度は、295本/mm2であった。
前記基材不織布の起毛処理した1面に上述の液吸収性複合粒材7.2gを散布し、散布面とは反対側の面から吸引処理(常温、5m/s)を行った。次いで、140℃の熱風を風速1.4m/sで3分間を吹き付ける熱風処理を行い、液吸収性複合粒材の接合基部及び基材不織布の構成繊維の表面成分を溶融一体化させる処理を行った。すなわち、液吸収性複合粒材を、接合基部を介して、基材不織布の繊維に固着させる処理を行った。これにより、図1に示す実施例1の吸収体試料S1を作製した。
作製した吸収体試料S1の厚みは、下記測定方法に基づいて測定した結果、2.0mmであった。また、第1面A側の液吸収性複合粒材の粒径は粒径350μmであり、第2面B側の液吸収性複合粒材の粒径は粒径300μmであった。
(3)おむつの作製
花王株式会社製、商品名「メリーズパンツさらさらエアスルーLサイズ」(2016年製)から吸収体を取り除き、その代わりに、吸収体試料S1を導入し、評価用のベビー用おむつを得た。
粒径150μm〜650μmの液吸収性複合粒材を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例2の吸収体試料S2を作製した。第1面A側の液吸収性複合粒材の粒径は粒径650μmであり、第2面B側の液吸収性複合粒材の粒径は粒径150μmであった。また、別途、吸収体試料S2を用いて、実施例1と同様にして、実施例2の評価用のベビー用おむつを得た。
粒径50μm〜800μmの液吸収性複合粒材を用い、吸引処理を110℃の温風にした以外は、実施例1と同様にして実施例3の吸収体試料S3を作製した。第1面A側の液吸収性複合粒材の粒径は粒径800μmであり、第2面B側の液吸収性複合粒材の粒径は粒径50μmであった。また、別途、吸収体試料S3を用いて、実施例1と同様にして、実施例3の評価用のベビー用おむつを得た。
吸収体の液保持部を、坪量225g/m2のパルプ繊維と坪量190g/m2の吸水性ポリマー材(粒径500μm)をとの混合積繊体とする構成とし、その外表面をティッシュペーパーで被覆した吸収体を作製した。これを比較例1の吸収体試料C1とした。吸収体試料C1の厚みは、5.7mmであった。また、別途、吸収体試料C1を用いて、実施例1と同様にして、比較例1の評価用のベビー用おむつを得た。
パルプ繊維の坪量を75g/m2とした以外は、比較例1と同様にして、比較例2の吸収体試料C2を作製した。吸収体試料C1の厚みは、2.1mmであった。また、別途、吸収体試料C2を用いて、実施例1と同様にして、比較例2の評価用のベビー用おむつを得た。
先行技術文献4(特開2006−305327号)の実施例1(段落[0106]及び[0107])に記載の方法により、比較例3の吸収体試料C3、比較例3の評価用おむつを作製した。その際、用いた吸水性ポリマー材の粒径は、第1面A側(表面シート側)で650μm、第2面B側(裏面シート側)で300μmとした。また、吸収体試料C3の厚みは、2.1mmであった。
1.吸収体の厚みの測定
吸収体の切断面を、キーエンス製デジタルマイクロスコープVHX−1000で測定する部位が十分に視野に入り測定できる大きさに拡大し、0.05kPaの圧力がかかるように重りを吸収体の上に置き、厚みを測定する。測定は、10回行い、平均値を吸収体の厚みとした。
吸収体の中心を幅方向に切断した。切断面を下に向けて、手で50回振とうした。
担持率=(振とう前の吸水性ポリマー材重量(g)−脱落した吸水性ポリマー材重量(g))/振とう前の吸水性ポリマー材重量(g)x100
で算出した。
ハンドルオ・メーターを用いておむつの柔軟性を評価した。ハンドルオ・メーターの測定値は、その数値が小さい程、装着しやすさやフィット性が良好であることを示す。ハンドルオ・メーターによる測定方法は次の通りである。JIS L 1096(剛軟性測定法)に準じて測定を行った。幅30mmの溝を刻んだ支持台上に、測定するおむつを、溝と直交する方向に配置する。製品の中央を厚み2mmのブレードで押した時に要する力を測定する。本発明で用いた装置は、大栄科学精機製作所製、風合い試験機(ハンドルオ・メーター法)、HOM−3型である。3点の平均値を測定値とする。値が小さいほど柔軟性が高いことを示す。
得られた測定値に基づき、以下の基準に従って柔軟性を評価した。
A: ハンドルオ・メーターの測定値が20kgf/30mm以下である。
B: ハンドルオ・メーターの測定値が20kgf/30mmを超え、30kgf/30mm以下である
C: ハンドルオ・メーターの測定値が30kgf/30mmを超え、40kgf/30mm以下である
D: ハンドルオ・メーターの測定値が40kgf/30mmを超える。
評価対象のおむつ表面シート上に3.5kPaの圧力を均等にかけ、試験体のほぼ中央に設置した断面積1000mm2の筒を当て、そこから人口尿を注入した。10分ごとに40gずつ4回にわたり、計160gの人工尿を注入し、4回目の注入の際に円筒から液がおむつ表面から全てなくなる時間を測定した。3回測定し、その平均を吸収時間(秒)とした。吸収時間の短いものが吸収速度が速いことになる。
注入完了から10分静置した後に、上述の円筒および圧力を取り除いた。そして、コラーゲンフィルムEDICOL−R 400 (70mm×70mm)(商品名、PRIRO社製)を4枚重ねた吸収シート(質量=M1)に3.0kPaの圧力がかかるように調整した重りを、注入点を中心として不織布試験体上に置いた。
30秒静置した後に重りを取り除き、ろ紙の質量(M2)を測定し、次式のようにして、液戻り量を算出した。3回測定し、その平均を液戻り量とした。
液戻り量(mg)=加圧後の吸収シートの質量(M2)−加圧前の吸収シートの質量(M1)
前記測定方法で用いた人工尿の組成は次の通り。尿素1.94質量%、塩化ナトリウム0.7954質量%、硫酸マグネシウム(七水和物)0.11058質量%、塩化カルシウム(二水和物)0.06208質量%、硫酸カリウム0.19788質量%、ポリオキシエチレンラウリルエーテル0.0035質量%及びイオン交換水(残量)。
加えて、比較例1〜3の中で、比較例3の吸収体試料は、吸水性ポリマー材の固定性を上げるため、接着剤を使用し、更に不織布で外面を被覆して形成しなければならなかった。そのため、比較例3は、実施例と比較して、薄くても硬く(柔軟性が低く)、使用した接着剤及び被覆不織布が液吸収阻害剤として働くため、液戻り量、吸収時間が悪化していた。また、固定性に関しても、比較例3は、接着剤が届きにくい非塗工面の吸収ポリマーの固定性が悪いため、実施例より性能が劣っていた。
2 接合基部
3 液吸収性複合粒材
4 基材不織布
5 繊維
10、20 吸収体
Claims (8)
- 吸水性ポリマー材の表面に熱溶融性の樹脂成分を含む接合基部を有する液吸収性複合粒材が、前記接合基部を介して基材不織布に固着されており、前記液吸収性複合粒材が、前記基材不織布の繊維層の厚み方向において、該基材不織布の一方の面側と他方の面側とで粒径が異なっている吸収体。
- 前記接合基部は前記吸水性ポリマー材の表面に直接接合されている請求項1記載の吸収体。
- 前記基材不織布が前記一方の面側に突出する第1突出部と前記他方の面側に突出する第2突出部とを有する凹凸形状を有し、
前記第1突出部の繊維密度が前記第2突出部の繊維密度よりも小さく、前記一方の面側の液吸収性複合粒材の粒径が前記他方の面側の液吸収性複合粒材の粒径より大きい、請求項1又は2記載の吸収体。 - 前記一方の面側と前記他方の面側との液吸収性複合粒材の粒径差が50μm以上770μm以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収体。
- 前記一方の面側の液吸収性複合粒材の粒径が350μm以上800μm以下であり、前記他方の面側の液吸収性複合粒材の粒径が30μm以上300μm以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸収体。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸収体が、前記一方の面側及び前記他方の面側のうち粒径の大きい液吸収性複合粒材が配されている側を肌当接面側に向けて配置されている吸収性物品。
- 吸収体を構成する基材不織布に対し、一方の面側から、吸水性ポリマー材の表面に熱溶融性の樹脂成分を含む接合基部を有する液吸収性複合粒材を散布する前段工程と、前記基材不織布の前記液吸収性複合粒材を散布した面の反対側から吸引処理を行う中段工程と、前記液吸収性複合粒材を散布した基材不織布に対して加熱処理を行って前記接合基部と前記基材不織布とを溶融一体化させる後段工程とを有する、吸収体の製造方法。
- 前記中段工程が、温風を吹き付けながら、前記液吸収性複合粒材を吸引させる工程である、請求項7記載の吸収体の製造方法。
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