JP2018092866A - アトムプローブ分析システムおよびアトムプローブ分析方法 - Google Patents

アトムプローブ分析システムおよびアトムプローブ分析方法 Download PDF

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Abstract

【課題】レーザーアトムプローブ分析において、照射パルスレーザーのパルス幅を可変とし、パルス幅を短い時間で最適化する手法を提供する。【解決手段】波長変換後の出力をモニタ・フィードバックすることでパルス出力を一定に保つ機構を有し、複数点のパルス幅で各パルス幅のレーザー光を用いて一定時間計測を行い、得られる質量電荷比スペクトル中のメインピークのピークテールの高さを測定し、最もピークテールの高さが低くなるパルス幅を選択して、以後の測定に前記パルス幅のレーザー光を用いるアトムプローブ分析システムを構成する。【選択図】 図1

Description

本発明は、アトムプローブ分析システムおよびアトムプローブ分析方法に関する。
アトムプローブ分析とは針形状に加工された試料先端の原子配列・組成分布を原子スケールで直接観測することのできる分析手法である。図1にアトムプローブ分析システムの概略構成図を示すが、真空槽4内の針状試料1の表面から電界蒸発によりイオン化される原子は、針の表面から放射状に飛行して検出器3に2次元マッピングされる。原子は常に試料表面からイオン化されるので、連続的に原子を表面から収集することにより、2次元マップを深さ方向に拡張していくことが出来る。全検出イオンの質量とその座標をコンピュータに蓄積し、3次元グラフィック機能により3次元的に表示すると、試料中の原子の分布を3次元実空間中でほぼ原子レベルの分解能で再現することができる。
アトムプローブ分析では高い直流電圧39を印加して針形状試料1の先端に高電界を発生させ、そこにパルス電圧印加またはパルスレーザー7を照射することで表面第1層に属する原子の電界蒸発を誘起し、電界蒸発したイオンの質量を飛行時間計測することで元素種を決定することができる。この電界蒸発が1原子層ごとに進行するため、アトムプローブ分析は深さ方向に原子レベルの分解能を持つ。
アトムプローブ分析における試料形状には厳しい制約があり、先端曲率半径が数十nmの針状でなければならない。このため、測定対象とする試料自体を針形状に加工する必要があり、従来は角柱状若しくは円柱状に切削加工された金属試料を電解研磨する手法によって針形状試料を作製していた。このため、アトムプローブ分析対象としては電解研磨法によって針形状試料を得ることができるものに限られていた。近年、集束イオンビーム(FIB)法の進展により、薄膜や実デバイス中の特定の界面等、従来、電解研磨では針形状に成形することが非常に困難であった測定対象も針形状に加工することができるようになった。
アトムプローブ分析では飛行時間計測の精度が一定であれば、イオンの飛行距離を伸ばすほど飛行時間が増大するため時間分解能が改善し、結果としてアトムプローブ分析の質量分解能が改善する。このときスタートシグナルとして照射されるレーザー7のパルス幅は、イオンの飛行時間に比べ十分短い必要がある。また、単位時間当たりの蒸発量を増やすことで、一定体積をアトムプローブ分析するのに掛かる時間を短くすることができるが、レーザー照射の周期は基本的に電界蒸発イオンの飛行時間より短くすることはできない。例えば、仮にイオンの飛行距離が1 m、針形状試料に与えた電圧が10 kV、1価イオンの質量数を20とすると、イオンの針先端から検出器までの飛行時間は3μsec程度となり、この場合照射レーザーの繰返し周波数を約300 kHz以上にすると、検出器に到達したイオンはいつのパルスレーザー照射によって電界蒸発誘起されたイオンか判別できなくなるため、測定可能な周波数には上限がある。
電界蒸発は温度の影響を受け、高温であるほど蒸発に必要な電界が小さくなることが知られている。また一般的に、電界蒸発に熱が大きく寄与すると、表面拡散・蒸発遅延等の影響により、空間分解能・質量分解能が劣化する。この時、図3に示すような一定時間の間に検出器に到達したイオンのデータから作成した質量電荷比スペクトル中のピーク形状はガウス分布からずれた非対称なピーク形状41をしており、ピークテールと呼ばれる高質量電荷比側に尾を引いたような構造42を持つ。レーザー照射7によって針形状試料1の先端で生じた熱は針の先端から根元方向へ拡散し、針形状試料を保持するホルダ2を通じて冷却器へ拡散していく。針形状試料自体は通常、先端曲率半径100 nm、直径0.2 mm以下、長さ数mm以下であり、熱容量は殆ど無く、熱容量の大きなホルダと接するため短い時間で冷却される。
特表2007−531218号公報 特開2006−260780号公報
Journal of Applied Physics 110, 094901 (2011)
従来、パルスレーザーのパルス幅はナノ秒オーダであったが、近年、パルス幅をピコ秒やフェムト秒までより短くすることで、ピークテールの低減、質量分解能・空間分解能の向上(特許文献1)や、半導体・絶縁体材料の分析を可能としている (特許文献2、非特許文献1)。しかし、アトムプローブ分析に最も適したパルス幅はこれまでのところ、明らかにはされていない。
一般に数eVのエネルギー波長のレーザーと物質の相互作用においては、物質中の電子が励起状態へと遷移することで物質はレーザーのエネルギーを吸収する。この遷移にかかる時間は一般的にフェムト秒のオーダであるが、励起状態の寿命が約1 p秒程度のオーダであるため、励起源となるパルスレーザーの時間幅がこれより長い場合、一回のパルス照射の間に繰返し生じる無輻射緩和(物質中の何らかの粒子の励起状態のエネルギーが、分子内振動や隣接分子へと逃げてしまう輻射ではない緩和をおこし、最終的に熱になる。)により試料の温度は上昇すると考えられる。これら励起状態の寿命は材料や励起される電子により異なる。
パルス幅が数nsecから数十psecの領域では、1パルス照射の間に電子励起―緩和のサイクルを何度も繰り返すことにより熱が発生し、パルス照射が終了するまでの間熱拡散も継続する。このためパルス幅が短い程、針先端の生じた熱による温度上昇を抑えることができ、アトムプローブ分析の空間分解能・S/Nを改善させることができる。
しかし、パルス幅がさらに小さくなると、パルスの終了までに熱が誘起されず、針先端と根元の間での温度勾配が極端に急峻になる。フーリエの法則により、熱流束はその座標での温度勾配に比例するため、針先端で生じた熱は速やかに根元の方向へ拡散し、針先端の温度は下がる。このため、レーザー照射によって針先端へ導入したエネルギーの多くは針根元のバルク部へ移動し、結果として蒸発に寄与するレーザーエネルギーの割合は低下することになる。このため、レーザーエネルギーを最も効率的に電界蒸発に寄与させるためにはレーザーのパルス幅には最適な値が存在する。
(課題1)しかし、これは測定対象とする材料系や測定条件によって微妙に変化するため、測定前に最適測定条件を予測することが難しい。この課題に対し、連続的にパルス幅を変化させることのできる光源を用いることで、測定対象ごとに最適な条件で測定を行うことができ、得られるマススペクトルのピークテールをできるだけ抑えることが可能なアトムプローブ分析システムを構成することを目的とする。
ピークテールを最大限抑える為にパルス幅の最適化を行うにあたって、測定条件のうちパルス幅だけを振ってピークテールの大小を比較しなければならない。しかし、アトムプローブ分析の原理上、パルス幅を含む測定条件の調整作業中にも試料の測定は進んでしまい、一度測定した部位を再度別条件で測定することはできない。(課題2)このため、測定条件の最適化はできるだけ短い時間で完了させなければならない。
また、アトムプローブ分析では、一般に非線形結晶を用いて高調波発生した短波長の光を用いることが多い。高調波発生の強度はもととなる光の時間的・空間的なフォトン密度の二乗に比例するため、パルス幅を変化させると高調波発生強度が変化してしまう。(課題3)このため、パルス幅を変更した際に針形状試料に照射する高調波光の強度を一定としようとすると、再度、非線形結晶に入力する基本波長光の強度を調整する必要が生じてしまい、これをユーザーがマニュアル作業によって行う分、タイムラグが生じ必要以上の作業時間を掛けてしまう。この課題に対し、照射する高調波光強度を常にモニタリングし、照射する高調波光強度が設定通りとなるようフィードバックをかけることで、針状試料先端に照射される高調波光の強度が一定となるよう制御することが可能なアトムプローブ分析システムを構成することを目的とする。
上述課題を解決するために本発明のアトムプローブ分析システムを、分析対象とする針形状試料を保持することができる試料マウントと、パルス幅を可変とするレーザー発振器と、前記レーザー発振器から出力された光を、前記針形状試料が帯電しているときに前記針形状試料の先端に照射するよう配置された照射光学系と、前記レーザー光の照射により前記針形状試料の先端から電界蒸発したイオンが放射状に飛行して到達した座標と時刻を検出する、前記試料マウントに保持された前記針形状試料の先端と対向するように、かつ針形状試料の中心軸線と垂直に設置された二次元検出器と、前記針形状試料の先端に照射されたレーザー光の分光を読取り、イオンの電界蒸発のトリガーとなったレーザーパルスが照射された時刻を検出する光強度検出器と、第一のパルス幅のレーザー光を用いて一定時間計測を行うことで得られる質量電荷比スペクトル中のメインピークの高質量電荷比側に現れるピークテールの高さと、第二のパルス幅のレーザー光を用いて一定時間計測を行うことで得られる質量電荷比スペクトル中のメインピークの高質量電荷比側に現れるピークテールの高さを比較して、ピークテール高さが低くなるパルス幅を選択する指示を前記レーザー発振器へ出力する制御装置とを有するように構成する。
また、本発明の他の特徴として、前記アトムプローブ分析システムにおいて、前記制御装置は、ユーザーが定義したパルス幅実行範囲の中で複数点のパルス幅を選択して、順次選択したパルス幅に変更するよう前記レーザー発振器へ指示を出し、各パルス幅のレーザー光を用いて一定時間計測を行うことで得られる質量電荷比スペクトル中のメインピークの高質量電荷比側に現れるピークテールの高さを測定し、各パルス幅におけるピークテールの高さを比較して、最もピークテールの高さが低くなるパルス幅を選択する指示を前記レーザー発振器へ出力する。
また、本発明の更に他の特徴として、前記アトムプローブ分析システムにおいて、前記レーザー発振器がパルス幅を変更してレーザー光を出力し、前記照射光学系を介して前記針形状試料の先端に照射するレーザー光の分光を前記光強度検出器が読取り、光強度を検出して前記レーザー発振器へフィードバックし、及び前記レーザー発振器は、検出された光強度が減った場合は出力するレーザー光の強度を一定量増大させ、検出された光強度が増えた場合は出力するレーザー光の強度を一定量減少させるフィードバック制御を行う。
また、上述課題を解決するために本発明のアトムプローブ分析方法を、制御装置が、パルス幅を可変とするレーザー発振器へユーザーが指定した第一のパルス幅に変更する指示を送り、前記第一のパルス幅のレーザー光を用いて一定時間計測を行うことで得られる質量電荷比スペクトル中のメインピークの高質量電荷比側に現れるピークテールの高さを求めて記録し、制御装置が、ユーザーが指定した第二から第Nまでのそれぞれが異なるパルス幅を順次選択して、前記レーザー発振器へ選択したパルス幅に変更する指示を送り、選択したパルス幅のレーザー光を用いて一定時間計測を行うことで得られる質量電荷比スペクトル中のメインピークの高質量電荷比側に現れるピークテールの高さを求めて記録する処理を選択したパルス幅ごとに繰り返し、その後、制御装置が、全てのパルス幅ごとに記録したピークテールの高さを比較して、最もピークテールの高さが低くなるパルス幅を選択する指示を前記レーザー発振器へ出力し、それ以後は、アトムプローブ分析システムが、前記選択する指示を出したパルス幅のレーザー光を用いて測定を継続するようにする。
アトムプローブ分析において、測定対象ごとに最適なパルス幅で測定できるようになり、マススペクトルにおけるピークテールを短時間で最小化させることができる。また、パルス幅を可変としたことによる高調波発生の強度の増減をフィードバック機構によって抑えることができるようになり、アトムプローブ分析における光のパルス幅条件のみを連続的に振って測定を行うことができるようになる。これらのことから、任意の測定試料においてS/Nおよび分解能を最大化させるパルス幅でアトムプローブ分析を実行できるようになり、測定条件最適化の条件出しの間に電界蒸発が進行してしまうことによって失われる試料体積を小さく抑えることができるようになる。
本発明のパルス幅制御アトムプローブ分析システムの全体構成の概略図である。 本発明のアトムプローブ分析システムの制御装置100の構成図である。 横軸に質量電荷比(mass-to-charge ratio)、縦軸に得られたカウント数をプロットして得られるヒストグラム(マススペクトル)の一例である。 パルス幅Δtに対するピークテール高さhの変化のグラフの一例である。 一般的なアトムプローブ分析の流れを表すフローチャートである。 本実施例のアトムプローブ分析制御部が制御するアトムプローブ分析の流れを表すフローチャートである。 パルス幅最適化処理の流れを表すフローチャートである。 制御装置の制御パラメータ設定部がユーザーに提示するグラフィックユーザーインタフェース(GUI)の一例である。 マススペクトルのピークテール評価に関して、ピークテール高さhを定義する仕方を説明する図である。 光源に含まれるパルス幅を可変とする機能の構造の一例を示す図である。
以下、本発明の実施形態を、図面を用いて詳細に説明する。
図1は本発明のパルス幅制御アトムプローブ分析システムの全体構成の概略図である。まず、本発明の前提技術としてのアトムプローブ分析に係る部分について説明し、その後、本発明に係る部分について説明する。
《前提となる技術》
分析対象となる針形状試料1は試料マウント2によって保持されており、試料マウント2は冷却機構(図示せず)によって40ケルビン以下程度まで冷却できる。また試料マウント2は導電性材料で構成され、DC電源6より試料マウント2へ数kVの電圧39を印加することで、保持されている針形状試料1の先端に数十V/nm程度の高電界を生じさせる。この高電界に加えて、針形状試料の先端にレーザーパルス7を照射することにより、針形状試料1を構成する元素が1原子ずつ針形状試料先端から電界蒸発する。電界蒸発したそれぞれのイオンはMulti Channel Plate(MCP)ディレイライン検出器3に向かって飛行し、イオンの衝突したxy座標とイオンの飛行時間が記録される。このときイオンの持っていたエネルギーは、
Figure 2018092866
によって記述され、飛行時間tから質量電荷比m/nを求めることができ、元素種が同定できる。但し、mはイオンの質量、vはイオンの飛行速度、Lは針形状試料先端からMCPディレイライン検出器3までのイオンごとの飛行距離、nはイオンの価数、eは素電荷、Vは針形状試料に印加した電圧である。
MCPディレイライン検出器3上のイオンの衝突したxy座標は電界蒸発したイオンの元々存在していた針形状試料1先端での拡大投影座標であり、ここからイオンの元いたxy座標が求まる。イオンの飛行距離は数十〜数百cm程度であるが、この飛行中に他の原子・分子と衝突すると針形状試料1先端から蒸発したイオンのxy座標情報が保存されなくなってしまうため、少なくともイオンの飛行路は真空槽4内に含まれている必要がある。
イオンの飛行時間tはレーザー7が照射されたタイミングのスタート信号の時刻とイオンが検出器3に到達したタイミングの検出信号の時刻の差分から求める。図1はレーザーパルス型のアトムプローブ分析システムであり、電界蒸発はレーザーアシストによってトリガーされる。つまり、針形状試料1の先端にレーザーパルス7が照射された時刻をtsとし、電界蒸発したイオンがMCPディレイライン検出器3へと衝突した時刻をtgとすると、飛行時間t=tg−tsとなる。レーザーパルスが照射された時刻は、照射する光強度の一定割合を例えば波長板と偏光ビームスプリッター若しくはダイクロイックミラー等13でサンプリングしたものを光強度検出器14によって読み取ることで記録する。光強度検出器14にはイオンの飛行時間分析に対応できる応答速度が求められ、例えばフォトダイオードが用いられる。フォトダイオードは光パルスのエネルギーを電圧パルスへと変換する。この電圧パルスが発生した時刻をレーザーパルスが照射された時刻tsとする。イオンがMCPディレイライン検出器3へ衝突した時刻tgは、MCP部で増倍された電圧パルスを読み取ることで記録する。
アトムプローブ分析を継続すると、電界蒸発によって針形状試料1の先端曲率径が段々大きくなる。試料マウント2を通して針形状試料1に印加された電圧が一定のまま針形状試料1先端の曲率が大きくなると、針先端に生じる電界が小さくなり、単位時間当たりに蒸発する原子の数が減っていく。測定中は針先端に生じる電界が一定となる様測定を行う必要があるので、測定中に照射するレーザーの強度は常に一定にし、大きくなる針形状試料1先端の曲率に合わせて針形状試料1に印加される電圧を大きくしていく必要がある。但し、針形状試料先端の曲率を直接観察することは困難であるため、通常は単位時間当たりに電界蒸発し検出されたイオンの個数を用い、検出数が一定となる様に電圧へとフィードバックする方式をとる。
アトムプローブ分析を実行継続し、一定量のデータが得られた時、横軸に質量電荷比(mass-to-charge ratio)、縦軸に得られたカウント数をプロットして得られるヒストグラムをマススペクトルという。図3にマススペクトルの例を示す。マススペクトルにおけるピークの形状はガウス関数からずれた左右非対称な形をとる場合があり、高質量電荷比側の非対称成分となるピークの右側に尾を引いたようなピーク構造をピークテールと呼ぶ。
図5のフローチャートは一般的なアトムプローブ分析の流れを表す。
まず初めにステップS101において、測定を行う準備として、針形状試料1を真空槽4内の試料マウント2に固定し、試料の冷却を行う。アトムプローブ分析を行うための試料は一般的に数十ケルビン以下に冷やされている必要がある。また真空槽に導入する前に大気中で冷却してしまうと表面に霜が付く等の汚染が考えられるため、試料の冷却は真空槽内部で初めて行うことが多い。これらの理由により、針先端まで十分に温度を下げるには十分な冷却時間を設ける必要がある。
十分冷却を行った後、ステップS102において、針形状試料1に印加するDC電圧を電界蒸発が確認されるまで増加させてゆく。電界蒸発の確認には不活性ガス導入による電界イオン化観察(FIM観察)手段を用いても良い。不活性ガスを導入すると、不活性ガスが電界蒸発イオンとなり確認の余裕が生ずる。不活性ガスを導入したら、確認後、不活性ガスを排気して再び真空状態とする。
この状態で、ステップS103において、針形状試料1先端にレーザー照射を開始する。レーザーが針形状試料1先端に正しく照射されていれば電界蒸発する原子の数は増大する。またレーザーパルスのタイミングに同期した電界蒸発が確認できるため、飛行時間分析によりユーザーインタフェース上にマススペクトルが更新され続ける。
その後、ステップS104において、パルス周波数や電圧制御パラメータ等の測定条件の設定を行う。この設定作業はここよりも前の段階で予め設定されていても良く、またこれ以後の測定条件設定中に設定し直しても良い。この設定を行うことで、それ以降、電界蒸発量が増え過ぎた際には針形状試料1に印加するDC電圧を減少させ、電界蒸発量が減った際には針形状試料1に印加するDC電圧を増大させるフィードバックが働く。
その後、ステップS105において、レーザー照射位置の最適化を行う。レーザー光は真空槽4の窓5を通して通常直径数μmから数十μmにフォーカスされるため、目視等の光軸調整では針形状試料1先端に正しくフォーカスされていないことが多く、また温度変化や冷凍機の振動等によって針形状試料1先端の位置がずれる可能性もある。このため、フォーカス位置を中心にユーザーが設定したx,y,z走査範囲内で振り、電界蒸発量で最適化を行う(特許文献1)。フォーカス位置を三軸で振る方法としては、真空槽4の外に設置された最終段の集光レンズ17を三軸並進移動させる方法(移動機構は図示せず)等がある。
フォーカス位置が正しく調整されたら、ステップS106において、光強度の最適化を行う。光強度は増大させればさせる程、レーザーによる蒸発の寄与を増やし、それだけ電圧を下げることが出来て試料の電界による破断リスクは下げられる。しかし、光の強度を上げることは、ピークテールの増大や分解能の低下が見られる。どうしてもトレードオフがあるため、試料に応じて、ユーザーが決定することになる。
ステップS107において、光強度の最適化を終えマススペクトルを確認し、その条件で問題なければS108へ移行して、設定した分析量が得られるまで測定を継続する(S108)。マススペクトル形状等から設定条件に修正が必要であればS104へ移行して、再度測定条件を設定し直す。
ステップS109において、針形状試料1内に観察したい粒界などが含まれていて、その領域の測定が終了したとユーザーが判定した場合、または予めユーザーが測定を終了させる終了条件を設定しておいて、その条件を満たした場合には測定を終了させる。
《制御装置100の構成》
図2は、本発明によるアトムプローブ分析システムの制御装置100の構成について説明した図である。
制御装置100は、汎用の計算機上に構成することができて、そのハードウェア構成は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)などにより構成される演算部110、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリなどを用いたSSD(Solid State Drive)などにより構成される記憶部120、キーボードやマウス等の入力デバイスより構成される入力部130、CRTディスプレイ、LCD(Liquid Crystal Display)、有機ELディスプレイなどの表示装置により構成される表示部140、パラレルインタフェース形式、またはシリアルインタフェース形式の接続装置よりなる入出力インタフェース150、NIC(Network Interface Card)などにより構成される通信部160、などを備える。
入出力インタフェース150は、MCPディレイライン検出器3、DC電源6、光源11、および光強度検出器14などと接続されている。また、通信部160は、ネットワーク170を介して外部の例えばグラフィックワークステーション180などと接続されている。
記憶部120は、本発明のパルス幅制御アトムプローブ分析を制御するアトムプローブ分析プログラム記憶領域121と、アトムプローブ分析を制御する制御パラメータ記憶領域122と、ユーザーインタフェースを表示部140に表示するために使用するユーザーインタフェースデータ記憶領域123と、新たに作成、または更新されたマススペクトルを記憶するマススペクトル記憶領域124と、針形状試料先端から蒸発して検出器にて検出された飛着イオンを記録する飛着検出イオンデータ記憶領域125とを備えている。
演算部110は、記憶部120に記憶されているアトムプローブ分析プログラムをRAMへロードしてCPUで実行することにより以下の各機能部を実現する。演算部110は、本発明におけるアトムプローブ分析の各ステップを制御するアトムプローブ分析制御部111と、測定に先立って、ユーザーインタフェースを介してユーザーより入力された制御パラメータを受け付けて、又は自動測定により作成した制御パラメータを制御パラメータ記憶領域122へ格納する制御パラメータ設定部112と、本実施例のアトムプローブ分析システムにおいて、針形状試料1に対して設定された制御パラメータに従って測定を継続する測定継続部113と、レーザーのパルス幅最適化処理を実行するパルス幅最適化処理部114と、アトムプローブ分析を実行継続し、一定量の飛着検出イオンデータが得られた時、マススペクトルを作成して、マススペクトル記憶領域124に記憶するとともに、表示部140に表示するマススペクトル作成部115とを備えている。
図6のフローチャートは本実施例のアトムプローブ分析制御部111が制御するアトムプローブ分析の流れを表す。図5のフローチャートと同じステップNo.が付されているステップは同等の処理が行われ、特にS101〜S107,S109において、ユーザーによる作業・設定行為、データ入力行為が主体のステップにおいては、ユーザーの行為・判断をサポートするユーザーインタフェースを表示して、ユーザーによる設定・入力されたデータを受け付けて、該当する制御パラメータに反映する処理が、アトムプローブ分析システム内の各構成機器の制御と共にアトムプローブ分析制御部111の制御内容となる。
図6のS103では、アトムプローブ分析制御部111が、レーザー照射開始後に、針形状試料1先端から電界蒸発してMCPディレイライン検出器3で検出されたイオンについては、検出器3からイオン検出時刻tg、イオン検出座標x(i), y(i)を入力(33)し、光強度検出器14から光パルス照射時刻tsを入力(34)して、両入力データ(32)より質量電荷比m/nを算出して、飛着検出イオンデータ記憶領域125に時刻データ、座標データと共に記録する処理を分析処理終了まで継続する。
図6のS104では、アトムプローブ分析制御部111が制御パラメータ設定部112を起動して、制御パラメータ設定部112はユーザーインタフェースデータ記憶領域123に予め登録されていたデータに従って、表示部140にグラフィックユーザーインタフェース(GUI)を表示して、ユーザーに周波数・電圧制御パラメータ等測定条件の入力を要求する。ユーザーは適宜パラメータを入力する。
制御パラメータ設定部112から光源11へ出力される情報31は、光源11から発振されるレーザーパルス36のON/OFF、パルス幅、周波数、光強度である。
本実施例のアトムプローブ分析の流れ(図6)と、図5に示す従来のアトムプローブ分析の流れと異なる点は、測定条件の最適化中にパルス幅を調整することでピークテールを最小化する工程(S200)を含むことである。ステップS200において、ユーザーは例えば最もピークテール高さが抑えられるレーザー光の最適なパルス幅を求めることが可能となる。
アトムプローブ分析制御部111は、図6のS200において、ユーザーが予め後述するパルス幅最適化処理の制御パラメータを定義していれば、パルス幅最適化処理部114を起動して、図7にフローチャートを示すパルス幅最適化処理を実行する。ユーザーが未だパルス幅最適化処理の制御パラメータを定義していなければ、下記のグラフィックユーザーインタフェースを表示して、ユーザーに定義入力を促す。
ユーザーは、パルス幅最適化処理に先立って、制御パラメータ設定部112が表示部140に表示する例えば図8に示す様なグラフィックユーザーインタフェース(GUI)50において、「パルス幅最適化」欄51に制御パラメータを入力する。制御パラメータの例としては、パルス幅最適化を行うパルス幅の範囲60,61とその刻み幅(ステップ幅62)と1つのパルス幅当たりにどの程度原子を検出するか(検出数64)、を指定する。例えば、実行範囲500から2500fsとし、ステップ幅を200fsと指定すると、測定点数63は11点と計算されこれはGUI上に自動表示される。1点あたりの測定量を検出数2000個(64)と設定すると、例えば検出rateが1000個/秒の状態ではパルス幅1点当たり約2秒の測定時間65が掛かりそれを11回繰り返すことになる。
この際、最適化対象となるピークテール高さhを正しく定義(指定)しておく必要がある。マススペクトルのピークテール評価に関しては図9を用いて説明する。マススペクトル最適化対象となるピークテール高さhは、ピークX1の高質量電荷比側に表れるピークの裾の広がりの高さであり、本発明では新しく定義される。マススペクトル中で最も高いピーク41(メインピーク)は自動判定されX1としてGUI上に表示されるが(図8の「マススペクトル」欄55)、X1(66)はユーザーがGUI上に手入力することで自由に選択することもできる。このピーク位置X1よりもDだけ質量電荷比の大きい点X1+Dでのカウント数N(X1+D)からバックグランド高さB(バックグランド高さBの定義は、図8のパルス幅最適化欄51のpre-peak範囲68,69をユーザーが指定することにより、マススペクトル欄55に表示されているマススペクトル上で該当する範囲の2点68,69を結ぶバックグランドライン74の高さをバックグランド高さBとする。)を引いたものをピークテール高さhと定義する。この時、D(67)の値の大きさもGUIを通してユーザーが指定する必要がある。
例えば、Fe系磁石材料や鉄鋼材料などの場合、質量電荷比28や56のFeのピークをメインピークとすることが多い。但しこの場合において、同材料中にCoが含まれている場合、Coは29.5や59にピークを持つため、純粋なFeだけのピークテール高さを評価しようとする場合、X1+DがCoのピーク位置よりも小さい質量電荷比となる様、Dを小さめに設定する等工夫が必要な場合がある。若しくは、Fe以外の元素を用いてピークテール評価をすることも考えられる。この点は測定材料や得られるマススペクトルを見ながら判断する必要がある。
以上のパルス幅最適化欄51へのユーザーによる定義入力が終了したなら、ユーザーは実行釦56を押下することによって、パルス幅最適化処理を実行することができる。以下、図7に示すパルス幅最適化処理の流れについて説明する。
ステップS201において、レーザーのパルス幅をユーザーが定義したパルス幅最適化処理の制御パラメータである実行範囲の最小値60へ変更する。
ステップS202において、針形状試料1に照射するレーザー光7を照射前に波長板と偏光ビームスプリッター若しくはダイクロイックミラー等13でサンプリング(37)して、その光強度を光強度検出器14によって読み取って、読み取った光強度35を光源11へフィードバックして、光源11はレーザー光強度が設定値通りとなるように出力強度を調整する。
ステップS203において、測定継続部113により測定が継続されて、電界蒸発したイオンが検出器3により検出された記録が飛着検出イオンデータ記憶領域125に記録される。
ステップS204において、S201、またはS207でパルス幅を設定してからS203でカウントした飛着検出イオンデータ数、または測定時間が、ユーザーが定義したパルス幅最適化処理の制御パラメータの1点あたりの測定量の検出数64、または時間65を超えたらS205へ移行して、超えていない場合はS202へ移行する。
ステップS205において、マススペクトル作成部115が、S203において検出した飛着検出イオンデータを飛着検出イオンデータ記憶領域125から読み出し、そのデータに基づきマススペクトルを作成する。作成したマススペクトルより、マススペクトル中で最も高い(もしくはユーザーが任意に設定できる)メインピーク41を判定し、ユーザーが定義したピークテール指定データに従って、このピーク位置X1よりもDだけ質量電荷比の大きい点X1+Dでのカウント数N(X1+D)からバックグランド高さBを引いたピークテール高さhを算出する。
ステップS206において、算出したピークテール高さhと、S201、またはS207で設定した現在のパルス幅を記録する。
ステップS207において、現在のパルス幅をユーザーが定義したパルス幅最適化処理の制御パラメータのステップ幅62だけ増加させる。新たなレーザーのパルス幅とする。
ステップS208において、S207で増加させた新たなパルス幅が、ユーザーが定義したパルス幅最適化処理の制御パラメータの実行範囲最大値61より大きければS209へ移行し、新たなパルス幅が実行範囲最大値61以下であれば、新たなパルス幅を光源11の出力36に設定して、S202へ移行する。
ステップS209において、S206で記録したピークテール高さhとパルス幅のデータに基づき、図4に示すパルス幅vsピークテール高さhのグラフ(説明を後述する)を表示部140に表示する。
ステップS210において、S209で作成したパルス幅vsピークテール高さhのグラフの中で、ピークテール高さhが最も小さくなるパルス幅を選択して、そのパルス幅を光源11の出力に設定する。
図4には、パルス幅Δtに対するピークテール高さhの変化のグラフを示す。例えば図8に示すユーザーが定義したパルス幅最適化処理の制御パラメータに従って、図7に示すパルス幅最適化処理を実行して11点の測定を終えると、GUI上に図4の様なパルス幅vsピークテール高さhの変化がプロットされ、ピークテール高さhが最も小さくなるパルス幅Δtへと設定パルス幅が変更される。以上の流れによってパルス幅最適化が完了する。
上述した図4のグラフを出すまでの工程は出来るだけ短いものでなければならない。何故なら、スペクトルを積算している間にも電界蒸発は進行しており、パルス幅を変更して測定を継続していくうちに、材料中の特定の領域から別の組成の異なる部位へと観察領域が進行してしまう恐れがあるためである。組成の異なる、得られるマススペクトル形状が異なる部位でパルス幅等の最適化を行うことは難しい。本発明はパルス幅を最適化するために必要な、人間側が行う必要のある処理をできるだけ少なくしているため、短い時間で測定条件の調整を可能としている。
但し、レーザー出力を一定若しくは電界蒸発レートを一定に保ったままパルス幅を可変とするためには、波長変換時の効率と非線形結晶への入力強度をコントロールする必要がある。アトムプローブ分析において、照射するレーザーの波長は赤外や可視領域よりも紫外域を用いた方が良い分解能でデータが得られることが知られている(非特許文献1)。基本波である赤外光から紫外光を作り出す場合、非線形結晶を通すことで波長変換を行う必要がある。この波長変換の効率は光子密度の二乗に比例する。本発明の光源はパルス幅を可変としているため、例えば同じエネルギーでもパルス幅を短くすると波長変換効率が高まり、発生した高調波の強度は増大する。パルス幅を連続的に可変としながら出力を一定に保つことを目的として、フィードバック機構を設ける。
例えば光源11としてNd-YAGレーザーを用い、THG(Third Harmonic Generation)光を針形状試料1先端に照射することを考える。基本波の波長は1064nmであり、出力されたレーザー光36はまずSHG(Second Harmonic Generation)結晶15に導入され、SHG結晶15の後段では波長1064nmの光と532nmの光が混ざった状態となる。これをこのままTHG結晶16へと導入することで、THG結晶16の後段では基本波と2倍波を合わせたTHG光も足し合わされた状態となる。これを例えばダイクロイックミラー等で目的のTHG光だけを選択的に抽出する光学系を挟むことで、余計な基本波やSHG光を除去することもできる。得られたTHG光を適切な光学系を設定して針形状試料1先端に照射する。
ユーザーは、表示部140に表示されるGUIを通して、光源11から出力される光のパルス幅を連続的に変更することができる。図10にパルス幅を可変とする機能を有する光源11に含まれる構造の一例を示す。パルス幅は例えば光源11内部に含まれる2枚のグレーティング21の角度を外部からの電気信号に応じて圧電素子・ステップモーター等によって連続的に変えることで制御できる。図10の方式は一般的なパルス幅伸長の方式であり、短パルス幅光源22から出力されたパルス幅を連続的に伸長することができる。本発明はどのようなパルス幅可変手段によってパルス幅が制御されていてもよく、パルス幅可変とする手段によって限定されるものではない。また、下記フィードバック機構により、パルス幅を変更しても光の強度が一定となるよう予め設定する。
フィードバック制御機構の一例を説明する。照射するTHG光強度の一定割合を波長板と偏光ビームスプリッター等13でサンプリング(37)し、光パルスエネルギーの大きさを光強度検出器14として用いられるフォトダイオードとフォトダイオードに接続された抵抗によって光強度に比例した電圧値としてモニタリングすることができる。この電圧値は光源11の電気信号入力端子へ導かれるよう配線35される。
予め光源11に対し、光強度フィードバック制御パラメータとして例えば2つの上限閾値と下限閾値と、光強度変更ステップ幅が設定される。光源11は電気信号入力端子から読み取った電圧値35が上限閾値よりも大きい場合、それ以降に発振するパルス光強度を光強度変更ステップ幅だけ減少させ、また、電気信号入力端子から読み取った電圧値35が下限閾値よりも小さい場合、それ以降に発振するパルス光強度を光強度変更ステップ幅だけ増大させることができる。ただし、フォトン密度がSHG結晶15などの損傷閾値を越えないよう光強度の上限には制限が設定される。フィードバックの不安定化を抑えるための上記閾値とステップ幅は、制御パラメータ設定部112が表示部140上にユーザーインタフェースを表示して、ユーザーが任意に入力でき(図8に示すユーザーインタフェースの例には記載していない)、制御装置100から光源11へ命令が送られる31ことで調整できる。さらにユーザーが入力したパルス幅の値72を用いてフィードフォワード機構を併用することも可能である。このアルゴリズムによって、ユーザーがパルス幅を任意の値へと変更してもレーザー強度を一定の値に保つことができる。
光源11から出力されるレーザーパルスの周波数は例えば数十kHzから数MHz程度のものを用いる。照射されるレーザーパルスの強度を、例えば100回のパルスで1個程度の原子がパルス電界蒸発するような強度に調整する。すると1秒間に数十個から数百個程度の原子がパルス電界蒸発することになる。これらのレーザー照射条件は、制御パラメータ設定部112が表示部140上に表示するユーザーインタフェース50のレーザー照射条件欄52に、ユーザーが周波数70、強度71、パルス幅72を指定入力することを可能としている。また、レーザー照射位置の最適化のためにフォーカス位置を三軸で振る走査範囲をユーザーはレーザー照射条件欄52のfocus位置最適化欄73に入力する。
マススペクトル作成部115は、レーザーが照射開始された後は、ユーザーが定義した1点あたりの測定量ごとに、または測定継続中は飛着検出イオンデータ記憶領域125から継続して飛着検出イオンデータを読み出し、表示部140に表示されるGUI上に積算マススペクトルとして表示・更新し続ける。
図6のS108では、アトムプローブ分析制御部111が測定継続部113を起動して、測定継続部113が既に設定された制御パラメータに従って測定が継続される。測定継続部113は、例えば図8のユーザーインタフェース50の電圧上昇制御パラメータ欄54に入力された制御パラメータに従い、検出原子数/pulse が下限80を下回ったら電圧へのfeedbackを増加幅82を加え、検出原子数/pulse が上限81を上回ったら電圧へのfeedbackを減少幅83を減らす制御を、Feedback rate 84 の間隔でDC電源6への制御(38)を行い、針形状試料1先端に生じる電界を一定とするように制御する。
測定継続部113は、電界蒸発したイオンが検出器3により検出された記録を飛着検出イオンデータ記憶領域125に記録することを継続して行い、計測状態を例えば図8のユーザーインタフェース50の計測状態欄53に出力する。測定継続部113は、計測状態のパラメータが、ユーザーが設定した計測終了条件85を満たすものがあれば、アトムプローブ分析処理を終了させる。
アトムプローブ分析処理の終了後、例えば外部に接続されたグラフィックワークステーション180へ、飛着検出イオンデータ記憶領域125に記録されたデータを適宜ダウンロードすることによって、試料中の原子の分布を3次元的に分析することができる。
1…針形状試料、2…試料マウント、3…MCPディレイライン検出器、4…真空槽、5…窓、6…DC電源、7…針形状試料の先端に照射するレーザーパルス、
11…光源、12…ミラー、13…ビームスプリッターまたはダイクロイックミラー、14…光強度検出器、15…SHG結晶、16…THG結晶、17…集光レンズ、
21…グレーティング、22…短パルス幅光源、23…レンズ、
31…制御装置から光源へ出力される情報、32…MCPディレイライン検出器と、光強度検出器から制御装置へ入力される情報、33…MCPディレイライン検出器から制御装置へ出力される情報、34…光強度検出器から制御装置へ出力される情報、35…光強度検出器から光源へフィードバックする光強度情報、36…光源から出力されたレーザー光、37…針形状試料に照射するレーザー光をサンプリングした分光、38…制御装置からDC電源への制御情報、
41…メインピーク、42…ピークテール、
51…パルス幅最適化欄、52…レーザー照射条件欄、53…計測状態欄、54…電圧上昇制御パラメタ欄、55…マススペクトル欄、56,57…実行釦、
60…パルス幅最適化の実行範囲最小値、61…パルス幅最適化の実行範囲最大値、62…パルス幅最適化のステップ幅、63…パルス幅最適化の測定点数、64…パルス幅最適化の1点あたりの測定量の検出数、65…パルス幅最適化の1点あたりの測定量の時間、66…ピークテール指定のピーク位置X1、67…ピークテール指定のD、68…pre-peak範囲の最小値、69…pre-peak範囲の最大値、
70…レーザーの周波数、71…レーザーの強度、72…レーザーのパルス幅、73…focus位置最適化欄、74…バックグランドライン
80…電圧キープ条件の下限、81…電圧キープ条件の上限、82…電圧へのfeedbackの増加幅、83…電圧へのfeedbackの減少幅、84…電圧へのfeedback rate、85…計測終了条件(電圧)、
100…制御装置、110…演算部、111…アトムプローブ分析制御部、112…制御パラメータ設定部、113…測定継続部、114…パルス幅最適化処理部、115…マススペクトル作成部、120…記憶部、121…アトムプローブ分析プログラム記憶領域、122…制御パラメータ記憶領域、123…ユーザーインタフェースデータ記憶領域、124…マススペクトル記憶領域、125…飛着検出イオンデータ記憶領域、130…入力部、140…表示部、150…入出力インタフェース、160…通信部、170…ネットワーク、180…グラフィックワークステーション。

Claims (8)

  1. 分析対象とする針形状試料を保持することができる試料マウントと、
    パルス幅を可変とするレーザー発振器と、
    前記レーザー発振器から出力された光を、前記針形状試料が帯電しているときに前記針形状試料の先端に照射するよう配置された照射光学系と、
    前記レーザー光の照射により前記針形状試料の先端から電界蒸発したイオンが放射状に飛行して到達した座標と時刻を検出する、前記試料マウントに保持された前記針形状試料の先端と対向するように、かつ針形状試料の中心軸線と垂直に設置された二次元検出器と、
    前記針形状試料の先端に照射されたレーザー光の分光を読取り、イオンの電界蒸発のトリガーとなったレーザーパルスが照射された時刻を検出する光強度検出器と、
    第一のパルス幅のレーザー光を用いて一定時間計測を行うことで得られる質量電荷比スペクトル中のメインピークの高質量電荷比側に現れるピークテールの高さと、第二のパルス幅のレーザー光を用いて一定時間計測を行うことで得られる質量電荷比スペクトル中のメインピークの高質量電荷比側に現れるピークテールの高さを比較して、ピークテール高さが低くなるパルス幅を選択する指示を前記レーザー発振器へ出力する制御装置と、
    を有することを特徴とするアトムプローブ分析システム。
  2. 前記第一のパルス幅と前記第二のパルス幅は少なくともどちらか一方が1×10-13秒から1×10-12秒の間に含まれることを特徴とする請求項1記載のアトムプローブ分析システム。
  3. 前記制御装置は、ユーザーが定義したパルス幅実行範囲の中で複数点のパルス幅を選択して、順次選択したパルス幅に変更するよう前記レーザー発振器へ指示を出し、各パルス幅のレーザー光を用いて一定時間計測を行うことで得られる質量電荷比スペクトル中のメインピークの高質量電荷比側に現れるピークテールの高さを測定し、各パルス幅におけるピークテールの高さを比較して、最もピークテールの高さが低くなるパルス幅を選択する指示を前記レーザー発振器へ出力することを特徴とする請求項1記載のアトムプローブ分析システム。
  4. 前記制御装置は、前記複数点のパルス幅のレーザー光を用いて測定した結果を元にして、横軸にパルス幅、縦軸にピークテールの高さをプロットしたグラフをユーザーインタフェースに表示することを特徴とする請求項3記載のアトムプローブ分析システム。
  5. 前記レーザー発振器がパルス幅を変更してレーザー光を出力し、前記照射光学系を介して前記針形状試料の先端に照射するレーザー光の分光を前記光強度検出器が読取り、光強度を検出して前記レーザー発振器へフィードバックし、及び
    前記レーザー発振器は、検出された光強度が減った場合は出力するレーザー光の強度を一定量増大させ、検出された光強度が増えた場合は出力するレーザー光の強度を一定量減少させるフィードバック制御を行うことを特徴とする請求項1記載のアトムプローブ分析システム。
  6. 前記制御装置は、表示部にグラフィックユーザーインタフェースを表示して、パルス幅最適化処理の制御パラメータとして、複数のパルス幅測定点を指定する情報、1点あたりの測定量、およびピークテール高さを定義するための指定情報を入力することを要求し、ユーザーによる入力を受付けて、ユーザー入力の制御パラメータに従って、パルス幅最適化処理を実行することを特徴とする請求項1記載のアトムプローブ分析システム。
  7. 制御装置が、パルス幅を可変とするレーザー発振器へユーザーが指定した第一のパルス幅に変更する指示を送り、前記第一のパルス幅のレーザー光を用いて一定時間計測を行うことで得られる質量電荷比スペクトル中のメインピークの高質量電荷比側に現れるピークテールの高さを求めて記録し、
    制御装置が、ユーザーが指定した第二から第Nまでのそれぞれが異なるパルス幅を順次選択して、前記レーザー発振器へ選択したパルス幅に変更する指示を送り、選択したパルス幅のレーザー光を用いて一定時間計測を行うことで得られる質量電荷比スペクトル中のメインピークの高質量電荷比側に現れるピークテールの高さを求めて記録する処理を選択したパルス幅ごとに繰り返し、
    その後、制御装置が、全てのパルス幅ごとに記録したピークテールの高さを比較して、最もピークテールの高さが低くなるパルス幅を選択する指示を前記レーザー発振器へ出力し、
    それ以後は、アトムプローブ分析システムが、前記選択する指示を出したパルス幅のレーザー光を用いて測定を継続することを特徴とするアトムプローブ分析方法。
  8. 前記レーザー発振器が指示されたパルス幅に変更してレーザー光を出力し、
    照射光学系を介して針形状試料の先端に照射するレーザー光の分光を光強度検出器が読取り、光強度を検出して前記レーザー発振器へフィードバックし、及び
    前記レーザー発振器は、検出された光強度が減った場合は出力するレーザー光の強度を一定量増大させ、検出された光強度が増えた場合は出力するレーザー光の強度を一定量減少させるフィードバック制御を行うことを特徴とする請求項7記載のアトムプローブ分析方法。
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