JP2018092848A - スパークプラグの電極の製造方法、及び、スパークプラグの製造方法 - Google Patents

スパークプラグの電極の製造方法、及び、スパークプラグの製造方法 Download PDF

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穂波 大原
洋樹 山本
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Abstract

【課題】スパークプラグの電極の着火側端面に突起を形成するのに、抵抗溶接方法や切削加工方法によって形成する場合の問題もなく、その形成ができる方法を含む電極の製造方法を提供する。【解決手段】電極121の着火側端面23に突起を形成するのに、その端面23にレーザ光Laの走査予定線を設定し、所定のスポット径で照射するレーザ光Laを、着火側端面23に適度の溶融が得られる条件の下で、該走査予定線の一端23cから他端23fに向けて片道で走査し、この照射、走査による金属の溶融、凝固の過程で、その照射、走査の開始端側である一端23c側が、終端側である他端23f側よりも高位となって着火側端面23において隆起することになるレーザ光の照射、走査工程を、複数回、その隆起が所望とする高さの突起になるまで、繰り返し行う。【選択図】図3

Description

本発明は、内燃機関に用いられるスパークプラグの電極である、中心電極又は接地電極(以下、両者を含め、単に電極ともいう)の製造方法、及びこの電極の製造方法を含むスパークプラグの製造方法に関する。
この種のスパークプラグにおいては、着火性(放電着火性)を高めるため、火花ギャップを形成する電極の先端(着火側端面)を細くしたり、耐久性(耐火花消耗性)を高めるため、電極本体の先端に微小な貴金属チップ(白金やイリジウムの微小な円柱体(円板)、又は角柱体(板))を溶接等により設けてなる電極が多数提案されている。そして、近時は、さらにその着火性を高めるため、このような電極の先端を鋭利な突起状(鋭利端)に形成する技術も提案されている(特許文献1)。
一方、これらの電極の先端を鋭利な突起状に形成する方法としては、突起形状を有する微小なチップ(円錐状や角錐状の微小な貴金属チップ。以下、突起用チップ)を、電極(電極部材)の先端面(着火側端面)に抵抗溶接等によって溶接することで、鋭利な先端を有する電極を形成する方法(抵抗溶接方法)がある。また、これとは別に、電極の先端面を微細な切削加工により鋭利に仕上げる方法(切削加工方法)も知られている。
特表2001−5225982号公報
上記した抵抗溶接方法により、電極の先端を鋭利な突起状に形成する場合には、微小な突起用チップの鋭利な先端(鋭利端)を、溶接用(溶接器)電極で加圧して行うことになるため、その先端が潰され易く、変形しやすいという問題がある。そして、溶接における溶融時には、その加圧力により溶融部分が座屈状等に圧縮変形を起こし易い。しかも、溶融金属のはみ出しの発生があるため、その除去加工を要する等の課題もある。さらに、突起用チップ自体の形成、製造においても、その微小さに起因する難題があり、突起自体の設計の自由度も低いなどという課題があった。特に、電極の先端面(着火側端面)に複数の突起用チップを配置するような場合には、各突起用チップの更なる微小化を招く上に、それらの位置決めや、均一な加圧自体も容易でないため、所望とする配置、形状の突起を得難いという問題もある。
また、切削加工方法により、電極の先端面を鋭利な突起状に形成する場合には、電極の着火側端面が、径又は辺において、1mm〜2mm程度といった微小な部分である上に、その微小部分における精密加工となるため、加工効率が高められないという課題がある。さらに、その突起形状には、自ずと切削加工上の制約があり、特に、複数の微小な突起としたい場合には、切削工具の切れ刃の干渉により、加工が不可能となることもあり、極めて設計の自由度が低いといった問題があった。
このように、抵抗溶接方法や切削加工方法により、電極(接地電極又は中心電極)の先端面(着火側端面)に1又は複数の微小な突起を形成するには、諸種の加工上の難点や制約があり、しかも、加工コストの増大を招くという課題があった。結果、先端が鋭利な電極を有するスパークプラグを製造する場合には、その製造コストの増大を招いていたのが実情である。
こうした中、本願発明者は、例えばレーザ加工において、加工対象物の表面に、適度の溶融が得られる条件で、所定のスポット径でレーザ光を照射し、走査させる場合には、溶融金属の凝固後において、その走査予定線(走査をする予定の設計上のライン)に沿う照射、走査(溶融・凝固)の開始端側が終端側に比べ、極微量ではあるが、その凝固金属の表面が隆起する(盛り上がる)傾向がある、ことを知った。このような隆起が生じるメカニズムは次のように考えられる。レーザ光の照射、走査により、金属が溶融し、その通過により生じる冷却、凝固は、走査の開始端側から始まり終端側に向かって続く。そして、溶融後、冷却されて凝固する際においては、凝固に伴う収縮があるため、その走査予定線に沿い、相対的に走査の先側(進行先側)にある溶融している金属を後側に引き寄せる作用が働く。結果、このような照射、走査を行う場合には、凝固後において、溶融開始端側がその終端側よりも相対的に凝固金属の表面が隆起する(盛り上がる)と考えられる。そこで、本願発明者は、数mm長さの走査予定線を設定し、適度の溶融が得られる条件の下で、レーザ光の照射、走査を数十回、数百回と多数回、繰り返す、微細レーザ加工試験を行ったところ、電極の先端面である着火側端面においても、その回数次第で、走査の開始端側において相当高さの頂部を有する凝固金属による突起が得られることが知られた。
そして、このような突起は、加工対象物の表面に設定された走査予定線に沿い、その一端から他端に向けて、その表面に溶融、凝固が走査(移動)して行われることが、複数回、繰り返される結果として得られるものであるから、レーザ光の照射、走査によるだけでなく、例えば、電子ビームの照射、走査によるなど、その表面の溶融が得られる他のエネルギーの投入、走査によっても具体化できる。本願発明は、このような知見に基づいてなされたもので、抵抗溶接方法や切削加工方法によって突起を形成する場合におけるような如上の問題もなく、着火側端面に突起を有する電極を得られる技術を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための請求項1にかかる発明は、スパークプラグの電極の製造方法であって、
該電極の平坦な着火側端面に突起を形成する方法として、
該着火側端面にエネルギー投入手段から投入されるエネルギーの走査予定線を設定する工程と、
この設定工程の後、
前記エネルギーを、該走査予定線の一端側から他端側に向けて片道で相対的に走査し、前記走査による金属の溶融、凝固の過程で、前記走査の開始端側である前記一端側が、終端側である前記他端側よりも高位となって隆起することになる前記エネルギーの走査工程を、該隆起が所望とする高さの前記突起になるまで、繰り返し行う加工工程を含むことを特徴とする。
請求項2にかかる発明は、前記電極が、前記着火側端面をなす貴金属チップと、それと異材質の電極部材とが溶接されてなる接合体であることを特徴とする、請求項1に記載のスパークプラグの電極の製造方法である。
請求項3にかかる発明は、請求項2において、
前記電極部材に前記貴金属チップを溶接するに際し、前記電極部材に貴金属チップを加圧し又は仮溶接することで位置決めし、この位置決め状態において該貴金属チップの前記着火側端面に前記走査予定線を設定し、
前記加工工程において、前記突起が前記貴金属チップの成分と前記電極部材の成分とを含むことを特徴とする、スパークプラグの電極の製造方法である。
請求項4にかかる発明は、前記突起が複数、形成されるように、前記走査予定線を設定することを特徴とする、請求項1又は2のいずれか1項に記載のスパークプラグの電極の製造方法である。
請求項5にかかる発明は、前記走査予定線を複数とし、かつ、その各走査予定線が、前記着火側端面の所定点から外方に放射状に延びる複数の仮想線上に存在するように設定し、その各走査予定線とも前記所定点側を前記一端側とし、その反対側を前記他端側として、各走査予定線において前記エネルギーの走査を行うことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のスパークプラグの電極の製造方法である。
請求項6にかかる発明は、前記複数の走査予定線おける前記エネルギーの走査を同時に行うことを特徴とする、請求項5に記載のスパークプラグの電極の製造方法である。
請求項7にかかる発明は、前記エネルギーは、レーザ光であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のスパークプラグの電極の製造方法である。
請求項8にかかる発明は、1つのレーザ光を、回折光学素子を用いて前記複数の走査予定線の数に分岐することにより得られた複数の各レーザ光が、該回折光学素子と前記着火側端面とが所定距離にあるときに、前記複数の走査予定線におけるそれぞれの前記一端側を照射し、その照射の開始と同時に、前記所定距離にある前記回折光学素子を前記着火側端面から離間する方向に所定量動かすことで、前記複数の走査予定線において、レーザ光の走査を同時に行うことを特徴とする、請求項7に記載のスパークプラグの電極の製造方法である。
請求項9にかかる発明は、前記エネルギーの走査を、減圧下の空間、又は、不活性ガス雰囲気下で行うことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のスパークプラグの電極の製造方法である。
請求項10にかかる発明は、請求項1〜9のいずれか1項に記載のスパークプラグの電極の製造方法を含むスパークプラグの製造方法である。
上述したように、例えば、前記着火側端面に投入される前記エネルギーがレーザ光の場合においては、所定のスポット径のレーザ光を、適度の溶融(適度の溶し込み深さの溶融)が得られる条件の下で、該着火側端面に投入(照射)することになる。そして、そのレーザ光を走査予定線の所定の一端側から他端側に向けて片道で走査すると、この照射、走査による金属の溶融、凝固は、その照射、走査の開始端側である前記一端側から、収縮を伴いながら他端側である終端側に向かう。これにより、その開始端側の凝固金属は終端側である前記他端側よりも、微量、高位となって、照射、走査の開始前の面より隆起する(盛り上がる)。本願発明は、このように、レーザ光の照射によるなど、前記着火側端面に投入されるエネルギーの走査によって生じる溶融金属の凝固、収縮を利用したものであり、前記エネルギーの走査予定線を設定する工程とは別に、このような溶融が得られるエネルギーの投入、走査(走査工程)を、同方向(片道)に多数回繰り返すことによる溶融金属の凝固、収縮を繰り返すことで、走査の開始端側に頂部をなすような突起を形成する、という突起の形成方法を用いた電極の製造方法である。なお、前記エネルギー投入手段から投入されるエネルギーは、上述したように前記着火側端面に、その投入により溶融を生じさせ、その走査(移動)により溶融、凝固を生じさせることができるものであればよいから、レーザ光に限られず、電子ビームやアーク放電、或いはプラズマジェットなどを用いることもできる。
このように、本願発明では、上述した従来の突起の形成方法である抵抗溶接方法や、切削加工方法とは、全く異なる加工法であるから、それらの方法に因る場合のような、上述したような課題や問題は存在せず、走査予定線の設定次第で、着火側端面において、所望とする、長さ、配置、組合せによる突起を形成できる。そして、突起の走査予定線に沿う幅、高さも、例えば、レーザ光を用いる場合には、そのスポット径、照射、走査の繰り返し回数次第で所望とするものが得られる。このように本願発明では、投入される前記エネルギーの走査の繰り返しだけで突起を形成できるため、着火側端面に突起を備えた電極を、効率よく、したがって、低コストで製造できる。走査の回数は、要請される高さの突起が得られるよう、電極の材質、前記エネルギーの種類、その出力(パワー)、走査速度(時間)等の加工条件に基き、試験走査を繰り返すことで設定すればよい。ここに、該エネルギーの出力、走査速度は、1回の走査で適度の溶融が得られるように設定すればよい。
本発明において、走査予定線は、突起の平面形状に応じた長さ、配置、組合せとして設定すればよい。すなわち、前記エネルギーの走査による溶融金属の隆起は、走査予定線に沿って生じるから、それが1つの直線であれば、前記エネルギーの投入、走査(以下、「投入、走査」又は、単に「走査」ともいう)の開始側である、前記一端側が高く、他端側に向けて低位をなすよう、高さにおいて傾斜する筋状の隆起が得られる。そして、この筋状の隆起の幅は、例えば、前記エネルギーがレーザ光である場合には、その照射スポット径と略同じとなるから、照射、走査の多数回の繰り返しで得られる突起は、前記一端側における隆起が大きい場合には、その径を厚みとして、該一端側を頂部とし、ここから他端側に向けて片傾斜(勾配)で延びる傾斜壁状(直角三角形の壁に近似)のものとなる。そして、低位をなす前記他端側は、前記一端側が高くなるのに伴い、すなわち、溶融金属が前記一端側に収縮に伴って引き寄せられため、レーザ加工の開始前における着火側端面より低位となる。
本願発明の製造対象である電極の着火側端面は、円形の場合の直径、又は、方形の場合の辺長においても、1〜2mm程度と小さいため、走査予定線の長さも小さい。このような走査予定線は、形成したい突起の平面形状に応じて、適宜の長さ、配置、組合せとすればよいのは上記したとおりである。そして、上記したことからも理解されるが、例えば、1つの直線からなる走査予定線を、着火側端面の中央において、2つ直列で接続するように設定し、その各走査予定線におけるその接続端を一端側とし、他端側に向けて、それぞれ、投入される前記エネルギーの走査を繰り返し行うこととすれば、その接続箇所を頂部として左右に傾斜する山形壁状の突起が得られる。この場合、走査予定線を、着火側端面の中央において接続することなく、その中央において融着することのない、ある程度の間隔をあけて直列で設定し、各走査予定線において、着火側端面の中央寄り側の端を一端側として走査を繰り返し行うこととすれば、その中央寄りに頂部を有する2つの直角三角形状の壁となる。そして、その間隔が微小であれば、開始端における溶融金属の流れにより中央寄りに頂部を2つ有して左右に傾斜する山形壁状の突起を得ることもできる。詳細は後述する。
本願発明において、前記エネルギーの走査は、一端側から他端側に向けて片道で、多数回、繰り返し行うのであるが、この繰り返しにおける走査の開始端、終端は同一(一定)でなくともよいが、一定とするのがよい。すなわち、同一走査予定線上を少なくともその先後において一部長さ範囲部分が重複するように、片道で繰り返す走査工程を多数回行えば、その重複範囲における開始端側が高位となる突起が得られるが、始端、終端を同一(走査工程を同じ)とすれば、走査の繰り返しの工程制御が容易となるためである。
本願における、スパークプラグの電極は、中心電極又は接地電極のいずれにも適用できるが、それらは、単体又は接合体からなる電極完成品又は電極仕掛品を含むものであり、ここに接合体は、着火側端面をなす貴金属チップ等の電極部材と、電極本体(電極母材)等の電極部材との溶接等による接合構造のものをいう。接合体は、3以上の接合構造からなる複合体(電極複合体)であってもよい。この接合体をなす電極部材は、同種金属でも異種金属でもよい。請求項2に記載の発明のように、前記電極が、着火側端面をなす貴金属チップと、それと異材質の電極部材とが溶接されてなる接合体である場合には、貴金属チップを用いない電極に比べ、耐久性の向上が期待される。
そして、電極がこのような接合体であるような場合には、請求項2に記載の発明のように、その接合体の段階において、該貴金属チップの着火側端面(先端面)に突起を形成することとしてもよいが、請求項3に記載のように、接合体とするための溶接を、突起の形成のための前記加工工程において、同時に行うこととしてもよい。このようにすれば、接合体として溶接して得た電極に対し、その後、別途、独立の加工工程による突起の形成工程を要しないため、接合体の電極でありながらも、効率的に突起のある電極を製造できる。なお、この場合には、前記貴金属チップと、電極部材との溶接による接合強度が高められるように、なるべく溶接領域(溶融による合金となる領域)が大きくなるように、走査予定線を多く設定するのがよい。詳細は後述するが、着火側端面の中心から放射状に、小さい角度間隔で、多数、設定するのがよい。
本発明において、突起の数は、1でもよいが、複数、形成されるものとしてもよい。この場合には、請求項4に記載のように、前記突起が複数、形成されるように、前記走査予定線を設定すればよい。複数にすれば、火花発生箇所の数を増やすことができる。この場合においては、前記突起の高さは、同じでも異なるものでもよい。また、個々の突起の平面形状も、前記走査予定線の設定次第で、任意のものに設定できる。
請求項5に記載の発明のように、前記走査予定線を複数とし、かつ、その各走査予定線が、前記着火側端面の所定点から外方に放射状に延びる複数の仮想線上に存在するように設定し、その各走査予定線とも前記所定点側を前記一端側とし、その反対側を前記他端側として、各走査予定線において前記エネルギーの走査を行うこととする場合においては、なるべくその仮想線を等角度間隔とし、走査予定線も等角度間隔で存在するようにするのがよい。すなわち、仮想線を所定点から、例えば、等角度間隔で4方に延びるようにし、走査予定線を、その4の仮想線上に存在するように設定すれば、着火側端面において十字の放射状を呈し、十字の交差部を頂部とする突起が得られる。このような場合、着火側端面における複数個所に所定点を設定して、複数の突起を形成してもよい。ただし、1つの突起とする場合には、例えば、着火側端面の中心を所定点として放射状に延びる複数の走査予定線とするのがよい。
そして、請求項5に記載の発明においては、1走査予定線ごと、走査を繰り返して、1つの突起を形成し、これを全走査予定線において行うこととしてもよいが、1走査予定線ごと、走査を、1回又は複数回単位で繰り返して、各走査予定線における隆起高さが少しずつ高くなるように、その走査を行うこととしてもよい。ただし、このような走査予定線を、着火側端面の中心を所定点として設定して、1つの突起を形成するような場合には、請求項6に記載のように、複数の走査予定線における、その走査を同時に行うのがよい。このように同時に行えば、着火側端面の全体における熱的影響(熱応力の分布)のバランスがとれるためである。とくに、請求項3に記載のように、その溶接を、突起の形成のための前記加工工程において、同時に行う場合に好適である。そして、この場合には、走査予定線を等角度間隔とし、かつその数を増やし、他端側における溶接領域(溶接による合金となる領域)が大きくなるようにするのがよい。このようにすれば、前記貴金属チップの前記電極部材の先端面への溶接強度も高められるためである。本発明において、前記着火側端面に投入される前記エネルギーは、上記もしたように、電子ビームやアーク放電、或いはプラズマジェットでもよいが、請求項7に記載のように、レーザ光とするのが加工上の制約も少なく、制御も容易のため好ましい。
なお、放射状の複数の走査予定線において同時に、走査をする場合においては、請求項8に記載のように、1つのレーザ光を回折光学素子(Diffractive Optical Element 以下、DOEともいう)を用いて分岐し、着火側端面から所定距離にあるDOEを離間する方向に所定量動かすことで、走査を得るようにするのがよい。このようにすれば、1つのレーザ発振器の使用で、放射状の複数の走査予定線において同時に、照射、走査をすることができるため、レーザ加工装置の簡略化も図られる。
このように回折光学素子(DOE)を用いる場合には、1つのレーザ光から分岐された各レーザ光が、DOEから所定距離にある着火側端面おける各走査予定線の一端側を照射するように、所定の分岐角度(回折角度)で拡散状に照射するように設定しておく。そして、レーザ光の照射をした状態で、各レーザ光が他端側の終端を照射するまで、所定距離にあるDOEを着火側端面から離間する方向に所定量動かす。こうすることで、複数の走査予定線において同時に、照射、走査をすることができるから、効率的に、しかも、熱的影響(熱応力の分布)のアンバランスもなく、レーザ加工できる。このため、放射状をなす突起の形成において、とくに請求項3に記載の発明のように、その溶接を、突起の形成のためのレーザ加工において、同時に行う場合において、走査予定線を、着火側端面の中心を所定点として放射状に複数設定して、その中心が頂部をなすような1つの突起を形成する場合には、その効果が大きい。なお、請求項8に記載のように、前記エネルギーの走査工程は、突起の部位の酸化を防止するため、減圧下の空間、又は、不活性ガス雰囲気下で、行うのがよい。
上記本発明の電極における前記突起の形成は、電極自体(部品としての電極)の製造過程で行ってもよいし、スパークプラグの製造、組立工程中において行ってもよい。特に、接地電極に突起を形成する場合には、接地電極が、スパークプラグの組立の最終工程で、主体金具の先端に突き合せ溶接で固定されている接地電極用棒材を曲げ加工して、その主体金具内の碍子(筒状絶縁部材)内に組み付けられた中心電極との火花ギャップを保持、形成することが行われる。このため、その組立工程における曲げ加工前に、突起を形成するのが好ましい場合がある。具体的な理由は次のようである。接地電極に関しては、接地電極用棒材の溶接における微妙な長さのバラツキ(誤差)が生じることがあり、これがその曲げ加工後の火花ギャップ寸法に影響し、その正規寸法(設計寸法)の精度に影響することがある。このような場合、同仕掛品における主体金具の先端に突き合せ溶接されている曲げ加工前の接地電極(接地電極用棒材)の段階において、前記突起の形成を行うこととすれば、その形成過程でその突起の高さの調整をすることとすることで、曲げ加工後の上記火花ギャップのバラツキを吸収できるためである。
本発明の製造方法によって製造された電極を用いるスパークプラグの一例を示すその半断縦断正面図、及びその火花ギャップを含む電極部分の拡大図。 本発明の電極の製造方法を具体化した実施の形態例1を説明するもので、Aは、電極(中心電極)をなす貴金属チップの平坦な円形の着火側端面(先端面)に、その中央を頂部とするフカヒレ形状(直角三角形近似形状)の突起を形成した後の着火側端面を含む部分の説明用斜視図、Bは、突起形状(隆起状態)を説明する同部分の正面図(側面図)。 図2の突起を形成する際に設定する、着火側端面の走査予定線を説明する図。 図2の突起が形成される電極の着火側端面を含む部分の正面図(側面図)であって、突起が形成される過程(隆起の増大過程)の説明図。 図2の突起を着火側端面において左右に対称配置で連ねた形状としたものを説明する図であって、Aは、着火側端面の走査予定線を説明する図、Bは、突起形状(隆起状態)を説明する電極の着火側端面を含む部分の正面図(側面図)、Cは、突起を形成した後の着火側端面を含む部分の説明用斜視図。 突起の別形状を説明する図であって、Aは、着火側端面の走査予定線を説明する図、Bは、突起形状(隆起状態)を説明する電極の着火側端面を含む部分の正面図(側面図)、Cは、突起を形成した後の着火側端面を含む部分の説明用斜視図。 図6の突起を小型化して複数設けた変形例を説明する着火側端面を含む部分の説明用斜視図。 貴金属チップを電極本体に溶接する過程で、突起を形成する場合の説明用概念図であって、Aは、照射、走査前の電極の着火側端面を含む部分の正面図(側面図)、B、Cは、溶接、及び突起形成の途中を示す同正面図(側面図)、Dは、突起形成(溶接)後を示す同正面図(側面図)。 1つのレーザ光をDOEで複数に分岐し、分岐した各レーザ光で複数の走査予定線における走査を同時にする工程(及びレーザ加工装置)の説明用概念図。 接地電極に突起を形成する例を説明する着火側端面を含む部分の図であって、Aは、その着火側端面に突起を形成した後の正面図(側面図)、Bは、Aを右から見た図(着火側端面を正面として見た図)。
本発明のスパークプラグの電極の製造方法を具体化した実施の形態例1について説明するが、その前に、図1を参照してこのような電極が用いられるスパークプラグ101の1例を説明する。ただし、図1のスパークプラグ101は、中心電極121と、接地電極251における着火側端面にそれぞれの微小な突起25、55を備えているが、このような突起はその一方に備えるものとしてもよい。そして、このスパークプラグ101は、突起を備えている点を除けば、従来公知のスパークプラグと同じであるため、その主要な構成についてのみ説明する。すなわち、図1のスパークプラグ101は、軸線G方向に軸孔111を有する筒状絶縁部材110と、この軸孔111内においてその先端(図1上端)側に突出するように配置された中心電極121と、筒状絶縁部材110の周囲を取り囲む筒状の主体金具131と、一端がこの主体金具131の先端133に突き合せ溶接された接地電極251を備える構造のものである。ただし、接地電極251は、その他端が中心電極121の先端に、所定の火花ギャップHgを介して対向するように曲げ加工されている。本例では、このような各電極121,251は、着火側端面(火花ギャップHg)を形成するよう、それぞれ、例えばNi合金からなる電極本体120,250に対し、電極部材である円柱(円板)形状、又は角柱(角板)形状に形成された貴金属チップ(イリジウム、又は白金)20、50が溶接されてなる接合体構造を呈しており、突起25、55は、それぞれ貴金属チップ20、50の着火側端面23、53に形成されているものとする。筒状絶縁部材110の後端には中心電極121の電極端子123が設けられており、主体金具131の外周面には、エンジンのプラグホールにねじ込み方式で固定するためのオネジ135を備えている。
前記両電極121,251に突起25,55を形成する方法は同じであるが、本例においては、中心電極121における着火側端面23に突起25を形成する場合で説明する。なお、この中心電極121は、図1の拡大図に示したように、その電極本体120と、その先端部位である先細りテーパに続く短円柱部の先端面に溶接されている円柱形状(又は円板形状)の貴金属チップ20との接合体から構成されている。そして、突起25は、図2に示したように、貴金属チップ20の平坦な円形の着火側端面(先端面)23に形成されたものであり、着火側端面23に、その中心(中央)23cを頂部25pとするフカヒレ形状(直角三角形近似形状)のものとして形成する。なお、本例を含め、以下の各例において突起を形成するのに着火側端面に投入される前記エネルギーにはレーザ光を用いるものとする。
このような突起25の形成においては、図3に示したように、その形成前の貴金属チップ(電極部材)20の着火側端面23を正面としてみたとき、その中心23cから半径外方(図3左)に向けて1つの走査予定線(2点鎖線図示)Lsを設定する。そして、この走査予定線Lsのうち、着火側端面23の中心23c側に位置する端を一端として、その一端側から半径外方に向けて、着火側端面23の外縁23fを通過するよう、その走査予定線Lsに沿って着火側端面23に適度の溶融が得られる条件で、レーザ光を所定のスポット径(集光径)Dsで照射(投入)し、その走査(移動)を行う。これによりこの走査工程においては、そのスポット径Dsを幅として着火側端面23において走査予定線Lsに沿って延びる形で、中心23cから外縁23fに向けて、溶融が起きると共に凝固が生じる。
すなわち、図4−Aに示したように、図示しないレーザ発振器(エネルギー投入手段)のレーザヘッド(図示せず)から発振されるレーザ光Laを所定のスポット径(集光径)で照射し、走査予定線Lsに沿い、着火側端面23の中心23cから外縁23fを通過するよう、その走査(移動)を行う。こうすることにより、金属の溶融、凝固は、その照射、走査の開始端(中心23c)から、収縮を伴いながら他端側である外縁23fに向かう。これにより、図4−Aに示したように、中心23c側の凝固金属25aは、外縁23f側よりも微量、高位となって、着火側端面23より隆起する(盛り上がる)。これにより、同じレーザ光Laの照射、走査を、同じ片道で、次々と繰り返すことにより、図4−B,C,Dに模式的に誇張して示したように、その回数が増加するに従い中心23c側が外縁23f側に比べ、次第に盛り上がる。したがって、このようなレーザ光Laの照射、走査を、要請される高さの突起が得られるまで、数十回、ないし数百回、繰り返すことで、最終的に、図2−A,Bに示したよう、その着火側端面23の中央23cにおいて頂部25pを有するようなフカヒレ形状(直角三角形近似形状)の突起25が形成される。
このように、突起25は、エネルギー付加によって発生する材料溶融範囲を幅として、走査予定線Lsに沿って延び、走査開始端から終端に向けて下向き傾斜状の壁となる。これにより、このような突起25を適宜に、組合せ、或いは配置することで、所望とする形状、構造の突起を形成できる。なお、上記例における突起25の形成に至る着火側端面23における金属の溶融、凝固による隆起の過程では、走査の開始端である着火側端面23の中心23c寄りが隆起することに対応して、逆に、外縁23f側ではその分の肉がとられる形となるため、着火側端面23より低位となる。すなわち、各走査ごとの溶融、凝固に伴う収縮に起因して、走査予定線Lsに沿って溶融金属が中心23cに向けて、少しずつ引き寄せられる(流れる)ことになるため、外縁23f側では陥没状ないし切り込み状の凹みが生じる。
上記例において所定のスポット径Dsで照射する(着火側端面23に投入される)レーザ光Laは、1回の走査で、適度の溶し込み深さの溶融が得られる出力、走査速度(照射時間)に設定すればよい。これは、電極の材質(融点)等に応じ、試験加工を行うことで設定すればよい。なお、このような走査は、例えば、ガルバノミラーを用いる方法によってもよいし、レーザ光Laを移動させることなく、電極121を走査予定線Ls方向に往復動させ、その片道においてのみ、その照射が行われるようにしてもよいなど、適宜の方法を用いればよい。なお、レーザは、CO2レーザやYAGレーザなどレーザ加工において使用される公知のレーザを用いればよい。
しかして、このような本例では、従来の突起の形成方法である抵抗溶接方法や、切削加工方法におけるような上述したような課題もなく、レーザ光Laの照射、走査の繰り返しだけで、突起25の形成ができるため、その形成を効率的にできる。結果、着火側端面23に突起25を備えた電極121を低コストで製造できる。そして、このようにして突起25の形成された、電極121を、図1に示したようなスパークプラグ101の中心電極として用いる場合には、着火側端面23が平坦なものに比べ、着火性を高めることができる。本例では、中心電極121の製造において具体化したが、接地電極251においても同様に適用できる。
本発明における突起は、本例では、上述したようなレーザ加工によって形成するものであるため、走査予定線の配置、組合せ次第で、形状、構造を含め略自在に形成できる。例えば、上記例の変形例として、図5−Aに示したように、走査予定線Lsを、着火側端面23における中心23cを通る仮想線Kのうち、その中心23cから左右に微量、離れた位置23hを外方に向けての走査の出発点とする2つの走査予定線Lsを設定し、各走査予定線Lsにおいて、それぞれ同条件で上記した照射、走査を繰り返し行う場合には、各走査における溶融金属の融着により、図5−B,Cに示したように、その中心23c寄り部位に、2つの頂部25pを有する三角山型の突起25を得ることができる。この場合、各走査予定線Lsにおける走査の出発点を中心23cに近づけるか、中心23cにおいて一致させれば、図示はしないが中心23cに1つの頂部を有する三角山型の突起を得ることができる。また、走査の開始点、相互に、溶融金属の融着が生じない間隔をつけることにすれば、突起は、各走査予定線において走査の開始端を頂部とするそれぞれ独立した突起とすることができる。このように、突起は、本例では、レーザ光の照射、走査次第で、任意の形状、数のものとして形成できる。
また、図6−Aに示したように、着火側端面23における中心23cから、90度間隔で、外方に向けて延びる4つの仮想線K上にそれぞれ走査予定線Lsを設定し、各走査予定線Lsにおいて、中心23cを走査の出発点とする同じ条件の照射、走査を上記例におけるように繰り返しを行う場合には、図6−B,Cに示したように、その中心23cに1つの頂部25pを有する平面視、十字をなす、山型の突起25(十字ドライバの先端近似の形状の突起25)を得ることができる。図7は、このような、1つの頂部25pを有する平面視、十字をなす、山型の突起25を小さいものとして、着火側端面23に複数配置した例である。このように、突起は、走査予定線の配置、組合せ次第で自由に設定すればよい。
前例では電極(中心電極)が、例えば、Ni合金製の電極本体(電極母材)の先端面に、貴金属チップ20が溶接されてなる接合体であり、その貴金属チップ20の先端面である着火側端面23に突起25を形成する場合について説明したが、このような突起25は、電極が単独材からなるものであれば、その先端面に直接形成すればよい。そして、例えば、電極本体に対し、着火側端面をなす貴金属チップと別の電極用部材との2部材からなる接合体(複合体)を溶接してなる3部材からなる複合構造の電極では、電極本体に溶接する前の接合体の段階において、その貴金属チップの先端面(着火側端面)に対し、先に突起を形成しておいてもよい。突起は、電極の加工仕掛品のいずれの段階に形成してもよい。
次に、図8を参照し、Ni合金製の電極本体120の先端面120cに、貴金属チップ20が溶接されてなる接合体の電極121において、その貴金属チップ20のなす着火側端面23に突起25を形成する方法として、貴金属チップ20を溶接する過程で、突起25を形成する場合の1例について説明する。この場合には、電極本体120の先端部位である先細りテーパ120aに続く短円柱部120bの先端面120cに対し、貴金属チップ(円柱体又は円板)20を溶接するに際し、その先端面120cに貴金属チップ20を加圧し又は仮溶接することで位置決めする。そして、この位置決め状態において、貴金属チップ20の先端面である着火側端面23に、上記図6−Aに示したのと同様に、レーザ光Laの走査予定線Lsを設定する。この場合、走査予定線Lsは、溶接強度を高めるためには着火側端面23における中心23cから、なるべく小さい角度の等角度間隔で、外方に向けて延びる放射状のものとし、その走査の出発点は、各走査予定線Lsにおけるその中心23c又はその近傍とするのがよい。
そして、図8−Aに示したように、所定のスポット径で照射するレーザ光Laを、上記各例と同様、適度の溶し込み深さの溶融が得られる条件の下で、各走査予定線において、所定の一端側、すなわち、着火側端面23における中心23c又はその近傍から外縁23fに向けて片道で走査する。こうして、各走査予定線においてこの照射、走査による金属の溶融、凝固を多数回、繰り返すことで、上記したのと同様に、図8−Bに示したように、その照射、走査の開始端側であるその中心23c側が、終端側である外縁23f側よりも高位となって着火側端面23において隆起する。そして、このようにその中心23c側が他端側(外縁23f側)よりも高位となって着火側端面23において隆起するということは、上記もしたように、その他端側(外縁23f側)における溶融金属が中心23c側に流れていることから、各走査予定線Lsに沿う他端側(外縁23f側)においては、その溶融、凝固過程で、着火側端面23よりも低位となり陥没状になる。
このため、このようなレーザ光Laの照射、走査工程をさらに繰り返し続けることで、貴金属チップ20は、図8−Cに示したように、その他端側(外縁23f側)では、着火側端面23から、電極本体120の先端面120cに接している後端面まで溶融され、その電極本体120の先端面120cも溶融される。これにより、走査予定線に沿うこのような両部材の溶融により、電極本体120の先端面120c近傍(両部材の接合面近傍)においては、それと貴金属チップ20とをなす金属の溶融、凝固による合金層(破線ハッチ部)が得られ、両者が溶接される。そして、図8−Dに示したように、このような溶接が確保され、しかも、隆起が所望とする突起25の高さとなるまで、その走査を行う。かくして、1つの走査予定線における溶接と突起の形成を行い、これを他の走査予定線においてもそれぞれ行うことで、貴金属チップ20は、電極本体120の先端面120cに合金層(破線ハッチ部)を増大して溶接され、そして着火側端面23に所望とする突起が形成される。こうして本例では、突起25が貴金属チップ20の成分と電極本体(電極部材)120の成分とを含むことになる。
このように、本例では、突起25の形成過程で溶接を行うものであるため、その照射、走査の繰り返し回数は、少なくとも、貴金属チップ(円板)20が、着火側端面23において相対的に低位となる走査の終端側(外縁23f側)の部位で、貴金属チップ20と電極本体120に適度の溶融、凝固が得られ、電極本体120に適度の溶接強度が得られる複数回である。そして、最終的なその繰り返し回数は、隆起が所望とする高さの突起25になるまでである。かくして、本例によれば、貴金属チップ(円板)20が電極本体120に溶接されると共に、その溶接過程で突起25も形成できるから、突起25を形成するための別途のレーザ加工工程を省略できる。このようにして突起25を形成する場合には、接合強度を高めるため、貴金属チップ(円板)20のできるだけ広い面で、電極本体120に溶接されるようにするべきである。したがって、本例におけるように、走査予定線Lsを放射状配置とする場合には、上記もしたように、放射状の角度間隔はなるべく小さくするのがよい。なお、上記したような放射状配置の複数の走査予定線Lsで、同じ走査を行う場合には、複数のレーザ光(発振器)Laを用い、対称配置にある1又は複数の走査予定線、又は全走査予定線Lsにおいて同時に走査を行うのがよい。熱応力のバランスがとれるためである。
さて次に、前例におけるように走査予定線を複数とした場合において、その全部における照射、走査を同時に行う例について、1つのレーザ光を回折光学素子(DOE)を用い、その走査予定線の数に分岐して行う場合について、図9のレーザ加工装置の概念図を参照して説明する。ただし、このレーザ加工では、貴金属チップ(円板)20の着火側端面23に設定される複数の走査予定線Lsは、その所定点(上記例の中心23c)から外方に放射状に延びる複数の仮想線K上に存在し、その各走査予定線Lsとも中心23cの近傍の所定点から他端側(外縁23f)に向けて走査を行う場合とする。なお、説明を簡易とするため、図9に示した貴金属チップ20おいては、中心23cを挟んで左右の対称配置で、2つの走査予定線Lsのみを示している。
このレーザ加工装置においては、1つのレーザ光Laを、集光レンズ300を通してDOE400を通過させることで、複数の走査予定線Lsの数に分岐させる設定とされている。そして、DOE400は、これが着火側端面23と所定距離N1にあるときに、分岐させられた各レーザ光Lbが、レーザ光Laの光軸Lgに対し所定の角度で拡散されて、各走査予定線Lsの中心23c寄りの所定点を照射するように、設定、製作しておく。なお、集光レンズ300と、着火側端面23との距離Nは一定とされる。これにより、1つのレーザ光Laを集光レンズ300を通してDOE400で分岐し、分岐した複数の各レーザ光Lbが、DOE400と着火側端面23とが所定距離N1にあるときに、複数の走査予定線Lsにおけるそれぞれ中心23c寄りの所定点を照射するが、その照射の開始と同時に、該所定距離N1にあるDOE400を着火側端面23から離間する方向に所定量動かすことで、各レーザ光Lbは複数の各走査予定線Lsにおいて、その他端側(外縁23f)に向けて走査することになる。かくして、このレーザ加工装置を用いる場合には、DOE400が、着火側端面23と所定距離N1にあるときに、レーザ光Laの照射を開始し、各レーザ光Lbが複数の各走査予定線Lsにおいて、その他端(外縁23f)まで、或いはそれを越える位置までの走査が得られるように、その照射の開始と同時に、DOE400を着火側端面23から離間する方向に所定量S、動かすことで、全走査予定線Lsにおいてレーザ光Laの照射、走査を同時に行うことができる。これにより、全走査予定線Lsにおいて、同時に、溶融、凝固が行われ、中心23c寄り部位を隆起させることができる。なお、集光レンズ300と、着火側端面23との距離Nは、所定量Sより大きく設定される。
このため、本例では、レーザ光Lbの照射を行いながら、該所定距離N1にあるDOE400を着火側端面23から離す方に所定量S、動かす行程を、その隆起が所望とする高さの前記突起25になるまで、繰り返し行うこととすればよい。なお、DOE400は、往復動させればよく、したがって、DOE400を着火側端面23から離す方に動かす行程においてのみ、照射が行われるようにその制御をすればよい。このような本例では、分岐された各レーザ光Lbの、DOE400に入射されるレーザ光Laの光軸Lgに対する回折角度に基き、DOE400と着火側端面23との距離の増大を利用して、その走査を行うものであるから、照射の開始端は、中心23cに同軸で一致させることはできないが、所定距離N1を小さくするか、回折角度が小さくなるようにDOE400を設定、製作することで、中心23cに近づけることができる。
このようにDOE400を用いる場合には、1つレーザ発振器で、簡易に、多数の走査予定線を同時に走査することができるため、突起の形成の簡易、迅速化が図られる。しかも、着火側端面23における熱応力の分布のバランスを図ることができる。このため、上述した例におけるように、接合体を得るための溶接工程において突起を形成する場合には、特に適する。溶接される貴金属チップ等の傾斜(接合面の隙間の発生)や、周方向における溶接の不均一や歪の発生を有効に防止できるためである。
上記例では、中心電極の製造において、本発明を具体化した場合を説明したが、上記スパークプラグ101における接地電極251の着火側端面53に突起55を形成する場合にも同様に適用できる。図10は、このような接地電極251の着火側端面53に突起55を形成した一例を説明する拡大図であり、その接地電極本体250の先端寄り部位に、貴金属チップ50を溶接してなるものの説明用の部分拡大図である。なお、上記した中心電極121の製造における場合とは、電極形状の相違があるだけであり、突起55を形成することについての本質的な相違はないので、その相違点のみ説明する。
すなわち、本例では、接地電極本体(例えば、ニッケル合金からなる帯板状の角棒部材)250の先端寄り部位の板面(平面)253に、貴金属チップ(白金やイリジウム等の貴金属、又はこれらを主成分とする合金からなる各辺が1mm〜2mm程度の微小直方体)50が、位置決め、溶接されている。このため、この貴金属チップ50の着火側端面53に対し、上記したのと同様に、走査予定線を設定してレーザ光の照射、走査をするレーザ加工工程を経ることで、その着火側端面53に突起55を形成でき、突起55を備えた接地電極本体250を得ることができる。
電極の製造は、上述もしたように、突起55の形成のためのレーザ加工ができる段階であれば、部品としての電極の製造段階の他、スパークプラグの製造、組立工程中のいずれで行ってもよい。一方、上述もしたように、接地電極251の着火側端面53に突起55を形成する場合には、スパークプラグの組み立て工程中の最終工程において、すなわち、図1を参照して説明すると、スパークプラグ101の組立て仕掛品における主体金具131の先端133に突き合せ溶接で固定されている曲げ加工前の接地電極251の段階で行う場合には、次のような効果が得られる。というのは、接地電極(接地電極用棒材)251を主体金具131の先端133に突き合せ溶接したときの接地電極251に関しては、長さに微妙なバラツキ(誤差)を生じることがある。このため、このバラツキがその曲げ加工後の火花ギャップHg寸法に影響することがある。しかし、同仕掛品における主体金具131の先端133に溶接されている曲げ加工前の接地電極251の段階において、突起55の形成を行うこととすれば、その形成過程でその高さの調整をすることもできるから、曲げ加工後の火花ギャップHgの寸法精度を保持できる。これがその効果である。
本発明における電極の製造方法は、以上、詳述した実施例等に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜に変更して具体化できる。回折光学素子を用い、レーザ光を複数に分岐する場合には、レーザ光の発振装置で生成され、ヘッドから照射されるレーザ光の強度は、分岐されるレーザ光の合計強度に基づき、それが得られるものに設定すればよい。この場合も含め、複数の走査予定線を設定して走査するレーザ光の強度、照射スポット径は、走査予定線ごと、或いは、溶融したい深さ、幅に応じて変更してもよい。すなわち、本発明では、電極の着火側端面に形成したい突起の幅、高さが、その照射、走査の繰り返しによって得られるその開始端側の隆起を利用して突起を形成するものであるから、そのような突起が形成できさえすればよいので、レーザ加工条件は適宜のものとして具体化すればよい。
また、上記各例では突起を形成するのに着火側端面に投入される前記エネルギーに、レーザ光を用いた場合で説明したが、上述したように、本発明において形成される突起は、着火側端面に設定された走査予定線に沿い、投入されるエネルギーの走査によってその一端から他端に向けて溶融、凝固が移動して行われることの繰り返しの結果として得られるものである。よって、本発明において投入されるエネルギーは、電子ビームの照射や、プラズマジェットの投射、或いはその面にアーク放電、プラズマ放電を発生させること、としてもよい。そして、それらエネルギーの出力(大きさ)、走査速度等は、走査の適数回の繰り返しによって所望とする突起が形成されるよう、エネルギーの投入手段や加工条件に応じて適宜に設定すればよい。
20,50 貴金属チップ
23,53 電極の着火側端面
23c 着火側端面の中心(走査予定線の一端)
23f 着火側端面の外縁(走査予定線の他端)
25、55 突起
101 スパークプラグ
121 中心電極
120,250 電極本体(電極部材)
251 接地電極
300 集光レンズ
400 回折光学素子(DOE)
La レーザ光
Ls 走査予定線
K 仮想線
Lb DOEで分岐した複数の各レーザ光
N1 所定距離

Claims (10)

  1. スパークプラグの電極の製造方法であって、
    該電極の平坦な着火側端面に突起を形成する方法として、
    該着火側端面にエネルギー投入手段から投入されるエネルギーの走査予定線を設定する工程と、
    この設定工程の後、
    前記エネルギーを、該走査予定線の一端側から他端側に向けて片道で相対的に走査し、前記走査による金属の溶融、凝固の過程で、前記走査の開始端側である前記一端側が、終端側である前記他端側よりも高位となって隆起することになる前記エネルギーの走査工程を、該隆起が所望とする高さの前記突起になるまで、繰り返し行う加工工程を含むことを特徴とする、スパークプラグの電極の製造方法。
  2. 前記電極が、前記着火側端面をなす貴金属チップと、それと異材質の電極部材とが溶接されてなる接合体であることを特徴とする、請求項1に記載のスパークプラグの電極の製造方法。
  3. 請求項2において、
    前記電極部材に前記貴金属チップを溶接するに際し、前記電極部材に貴金属チップを加圧し又は仮溶接することで位置決めし、この位置決め状態において該貴金属チップの前記着火側端面に前記走査予定線を設定し、
    前記加工工程において、前記突起が前記貴金属チップの成分と前記電極部材の成分とを含むことを特徴とする、スパークプラグの電極の製造方法。
  4. 前記突起が複数、形成されるように、前記走査予定線を設定することを特徴とする、請求項1又は2のいずれか1項に記載のスパークプラグの電極の製造方法。
  5. 前記走査予定線を複数とし、かつ、その各走査予定線が、前記着火側端面の所定点から外方に放射状に延びる複数の仮想線上に存在するように設定し、その各走査予定線とも前記所定点側を前記一端側とし、その反対側を前記他端側として、各走査予定線において前記エネルギーの走査を行うことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のスパークプラグの電極の製造方法。
  6. 前記複数の走査予定線おける前記エネルギーの走査を同時に行うことを特徴とする、請求項5に記載のスパークプラグの電極の製造方法。
  7. 前記エネルギーは、レーザ光であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のスパークプラグの電極の製造方法。
  8. 1つのレーザ光を、回折光学素子を用いて前記複数の走査予定線の数に分岐することにより得られた複数の各レーザ光が、該回折光学素子と前記着火側端面とが所定距離にあるときに、前記複数の走査予定線におけるそれぞれの前記一端側を照射し、その照射の開始と同時に、前記所定距離にある前記回折光学素子を前記着火側端面から離間する方向に所定量動かすことで、前記複数の走査予定線において、レーザ光の走査を同時に行うことを特徴とする、請求項7に記載のスパークプラグの電極の製造方法。
  9. 前記エネルギーの走査を、減圧下の空間、又は、不活性ガス雰囲気下で行うことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のスパークプラグの電極の製造方法。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載のスパークプラグの電極の製造方法を含むスパークプラグの製造方法。
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