JP2018092039A - 光学反射フィルム - Google Patents

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洋一 斎藤
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翔太 畠沢
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Takaaki Morita
陽明 森田
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Abstract

【課題】車窓、窓ガラス等への水貼りに適し、水貼り時の位置調整性が良好な光学反射フィルムを提供する。
【解決手段】基材と、前記基材の一方の面上に配置された、低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層されてなる誘電体多層膜と、前記誘電体多層膜の前記基材と反対側の面上に設けられる粘着層と、を有し、前記低屈折率層および前記高屈折率層のうち少なくとも1層は、水溶性樹脂を含み、前記粘着層は、粘着剤と、ポリエーテル変性シリコーン化合物とを含む、光学反射フィルムである。
【選択図】なし

Description

本発明は、光学反射フィルムに関する。
近年、建築物の窓や車両の窓などに貼合するウインドウフィルムとして、光学反射フィルムが多く利用されている。かような光学反射フィルムとしては、例えば、赤外線の侵入を抑え、建物室内温度が過剰に上昇するのを防ぐ機能を有する赤外遮蔽フィルムがあり、冷房の使用を低減し省エネルギー化に貢献している。かような光学反射フィルムとしては、屈折率の異なる層を積層させた誘電体多層膜が知られている。
高屈折率層と低屈折率層とを、それぞれ光学的膜厚を調整して基材の表面に積層させた誘電体多層膜は、特定の波長の光を選択的に反射する。このような誘電体多層膜を有する光学反射フィルムは、例えば、可視光線を透過し、近赤外線を選択的に遮蔽することができるが、各層の膜厚や屈折率を調整するだけで、反射波長をコントロールすることができ、紫外線や可視光を反射することが可能である。
誘電体多層膜のような積層体の形成方法として、一般的には乾式製膜法で積層する方法
があるが、乾式製膜法による誘電体多層膜の形成は、多くの製造コストを要するため、実
用的ではない。実用的な方法としては、安価に薄膜を成膜可能な塗布法が多く採用されており、昨今、環境負荷を低減する観点から水系での塗布が望まれている。例えば、水溶性樹脂および無機微粒子の混合物を含む塗布液を、湿式塗布方式により塗布して積層する方法が採用され、特に、高屈折率層用の塗布液と低屈折率層用の塗布液とを同時重層塗布することによって製造する方法は、コストの面から優れている。
これらの光学反射フィルムは、その一方の表面に粘着層を設けた構成を有し、粘着層を介して車窓や窓ガラスなどの基体に貼り付けて用いられる。施工方法としては、張り直しや位置直しが容易であることからいわゆる水貼り法が汎用される。水貼り法の一般的な施工方法は、フィルムが貼付される基体の表面に水や界面活性剤液を吹き付けてウェット状態にした後、ヘラ等のゴム部材で圧力をかけながら、光学反射フィルムと基体の表面との間の水分等を押し出して基体の表面に光学反射フィルムを貼合する、というものである。このとき、通常は最初に光学反射フィルムを置いた位置から微妙な位置調整が行われ、車窓のように曲面を有する基体に貼合する場合は、位置調整が特に重要になる。そのため、貼合後に高い接着性を有するだけでなく、水貼りの際に位置調整が容易な光学反射フィルムが求められている。
このような光学反射フィルムとして、例えば、特許文献1には、誘電体多層膜の粘着層と接する層に反応性官能基を有する水溶性樹脂を含有し、粘着層に前記反応性官能基と反応しうる架橋剤を含む、光学反射フィルムが開示されている。これにより、水貼りの際に粘着層が湿潤して架橋剤が誘電体多層膜まで拡散し、水溶性樹脂と反応硬化して粘着層と誘電体多層膜との密着性が向上する。そのため、一度貼ったフィルムを容易に剥がすことができるようになるとされている。
特開2012−131130号公報
しかしながら、特許文献1に記載されるような含む光学反射フィルムでは、水貼りの際にフィルムが滑りにくく、位置調整がしにくいことがわかった。
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、水溶性樹脂を含む屈折率層を有する光学反射フィルムにおいて、車窓、窓ガラス等への水貼りに適し、水貼り時の位置調整性が良好な光学反射フィルムを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の問題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、下記構成を採ることにより本発明の目的が達成されることが判明した。
すなわち、本発明の上記課題は、基材と、前記基材の一方の面上に配置された、低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層されてなる誘電体多層膜と、前記誘電体多層膜の前記基材と反対側の面上に設けられる粘着層と、を有し、前記低屈折率層および前記高屈折率層のうち少なくとも1層は、水溶性樹脂を含み、前記粘着層は、粘着剤と、ポリエーテル変性シリコーン化合物とを含む、光学反射フィルムにより解決される。
本発明によれば、車窓、窓ガラス等への水貼りの際に、位置調整性が良好な光学反射フィルムが得られうる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明の一実施形態は、基材と、前記基材の一方の面上に配置された、低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層されてなる誘電体多層膜と、前記誘電体多層膜の前記基材と反対側の面上に設けられる粘着層と、を有し、前記低屈折率層および前記高屈折率層のうち少なくとも1層は、水溶性樹脂を含み、前記粘着層は、粘着剤と、ポリエーテル変性シリコーン化合物とを含む、光学反射フィルムである。
本発明の光学反射フィルムは、高屈折率層および低屈折率層のうち少なくとも1つの屈折率層に水溶性樹脂を含有する。しかしながら、水溶性樹脂を含む光学反射フィルムにおいては、水貼りの際にフィルムが滑りにくく、位置調整がしにくいという問題があることがわかった。
誘電体多層膜に水溶性樹脂を有する光学反射フィルムにおいては、水溶性樹脂が水分を吸収しやすいため、水貼りの際に、誘電体多層膜が粘着層を通り越して水分を吸収してしまい、粘着層と基体との間の水分が少なくなってしまうものと考えられる。そのため、粘着層と基体とが局所的に、粘着層の本来の粘着力で粘着してしまって滑りにくくなるため、位置調整がしにくくなるものと考えられる。このとき、無理に位置を合わせようとすると、フィルムが折れてしまって位置合わせはできなくなってしまう。
これに対して、本発明によれば、ポリエーテル変性シリコーン化合物を有する粘着層を用いることで、粘着層の表面にポリエーテル変性シリコーン化合物が配向し、基体との間の水分が蒸発しにくくなり、さらに、粘着層が水で濡れたときの接着力が、ポリエーテル変性シリコーン化合物を含まない場合よりも低下するものと考えられる。これにより、水貼りの際に、はじめは基体に対して光学反射フィルムが滑りやすく位置調整が容易であるが、水分が蒸発した後は光学反射フィルムが基体に強く接着して剥がれにくくなるものと考えられる。なお、上記機構は推測によるものであり、本発明はこれに何ら制限される
ものではない。
以下、本発明の光学反射フィルムの構成要素について、詳細に説明する。なお、以下では、低屈折率層および高屈折率層を区別しない場合は、両者を含む概念として「屈折率層」と称する。
また、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%RHの条件で測定する。
〔光学反射フィルム〕
本発明に係る光学反射フィルムは、基材と、前記基材の一方の面上に配置された、低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層されてなる誘電体多層膜と、前記誘電体多層膜の前記基材と反対側の面上に設けられる粘着層と、を有する。
すなわち、本発明に係る光学反射フィルムは、基材、誘電体多層膜および粘着層がこの順に積層された層構成を有する。
[基材]
本発明に係る光学反射フィルムは、誘電体多層膜などを支持するための基材を含む。基材としては、種々の樹脂フィルムを用いることができ、ポリオレフィンフィルム(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等)、ポリ塩化ビニル、3酢酸セルロース等を用いることができ、好ましくはポリエステルフィルムである。ポリエステルフィルム(以降ポリエステルと称す)としては、特に限定されるものではないが、ジカルボン酸成分とジオール成分とを主要な構成成分とするフィルム形成性を有するポリエステルを用いることが好ましい。中でも、透明性、機械的強度、寸法安定性などの点から、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸や2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジオール成分として、エチレングリコールや1,4−シクロヘキサンジメタノールを主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。具体的には、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートを主要な構成成分とするポリエステルや、テレフタル酸と2,6−ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールとからなる共重合ポリエステル、およびこれらのポリエステルの2種以上の混合物を主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。
本発明に用いられる基材の厚みは、10〜300μm、特に20〜150μmであることが好ましい。また、基材は、2枚重ねたものであってもよく、この場合、その種類が同じでも異なってもよい。
基材は、JIS R3106−1998で示される可視光領域の透過率が85%以上であることが好ましく、特に90%以上であることが好ましい。基材が上記透過率以上であることにより、積層フィルムとしたときのJIS R3106−1998で示される可視光領域の透過率を50%以上(上限:100%)にするという点で有利であり、好ましい。
また、上記基材は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。強度向上、熱膨張抑制の点から延伸フィルムが好ましい。
基材は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押し出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の基材を製造することができる。また、未延伸の基材を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、基材の流れ(縦軸)方向、または基材の流れ方向と直角(横軸)方向に延伸することにより延伸基材を製造することができる。この場合の延伸倍率は、基材の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向および横軸方向にそれぞれ2〜10倍が好ましい。
なお、上記の基材には、添加剤として、例えば安定剤、界面活性剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、抗酸化剤、熱安定剤、滑剤、充填剤、着色剤、色素、接着調整剤等を含有させることもできる。
[誘電体多層膜]
誘電体多層膜は、低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層されてなる構成を有するものであり、低屈折率層と高屈折率層とからなるユニットを少なくとも1つ有する。誘電体多層膜がこのように異なる屈折率を有する屈折率層を含む構成であることにより、所定の波長を有する光(例えば、赤外光)が入射した場合に、少なくともこの光の一部を反射して遮蔽効果(ひいては赤外光の場合には遮熱効果)を発揮することができる。
本形態において、誘電体多層膜を構成する屈折率層が、低屈折率層であるか高屈折率層であるかは、隣接する屈折率層との屈折率の対比によって判断される。具体的には、ある屈折率層を基準層としたとき、当該基準層に隣接する屈折率層が基準層より屈折率が低ければ、基準層は高屈折率層である(隣接層は低屈折率層である)と判断される。一方、基準層より隣接層の屈折率が高ければ、基準層は低屈折率層である(隣接層は高屈折率層である)と判断される。したがって、屈折率層が高屈折率層であるか低屈折率層であるかは、隣接層が有する屈折率との関係で定まる相対的なものであり、ある屈折率層は、隣接層との関係によって高屈折率層にも低屈折率層にもなりうる。
屈折率層としては、誘電体多層膜を構成する高屈折率層および低屈折率層のうち、少なくとも1つの屈折率層が水溶性樹脂を含むものであれば特に制限はなく、当該技術分野において用いられる公知の屈折率層が用いられうる。公知の屈折率層としては、例えば、製造効率の観点から、湿式製膜法を用いて形成する屈折率層が好ましく用いられる。
さらに、反射特性の観点から、高屈折率層および低屈折率層の少なくとも一方が、屈折率調整剤を含むことが好ましく、高屈折率層および低屈折率層の両方が屈折率調整剤を含むことがより好ましい。
また、湿式製膜法によって形成される光学反射フィルムの屈折率層は、水溶性樹脂を含有する塗布液(通常は水等の水系溶媒を含む)を塗布した塗膜であることが好ましい。水溶性樹脂は、有機溶剤を用いないため、環境負荷が少なく、また、柔軟性が高いため、屈曲時の膜の耐久性が向上するため好ましい。
なお、本明細書において「水溶性」とは、物質が最も溶解する温度で、0.5質量%の濃度となるように水に溶解させた際、G2グラスフィルタ(最大細孔40〜50μm)で濾過した場合に、濾別される不溶物の質量が加えた高分子の50質量%以内であることを意味する。
以下、代表的な高屈折率層および低屈折率層の構成について説明する。
<低屈折率層>
(水溶性樹脂)
本発明の光学反射フィルムの誘電体多層膜において、低屈折率層および高屈折率層の各屈折率層は、バインダーとしての水溶性樹脂を含むことが好ましい。水溶性樹脂は、溶剤として水を用いることができるため、基材に対して腐食、溶解、浸透を起こさないという点で好ましい。また、水溶性樹脂は、柔軟性が高いため、屈曲時の誘電体多層膜の耐久性が向上するため好ましい。さらに、低屈折率層同様、高屈折率層においても水溶性樹脂を含むことが好ましい。なお、低屈折率層に含まれる水溶性樹脂は、高屈折率層に含まれる水溶性樹脂と同じであっても、互いに異なるものであってもよい。
本発明において、水溶性樹脂としては、特に制限されないが、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの合成水溶性高分子;ゼラチン、増粘多糖類などの天然水溶性高分子などが挙げられる。これらの中でも、酸化ケイ素粒子との相互作用の観点から、水溶性樹脂は、水酸基を有するものであると好ましい。なかでも、酸素透過性が低いという観点から、ポリビニルアルコールを用いると好ましい。また、ポリビニルアルコールは、屈折率層が光触媒作用を有する金属酸化物粒子をさらに含む場合には、その光触媒作用を抑制するという効果も得られる。これらの観点から、ポリビニルアルコールは、高屈折率層および低屈折率層の両方において含まれていると好ましい。
本発明において水溶性樹脂として含まれるポリビニルアルコールには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、カルボキシル基のようなアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール、ノニオン性基を有するノニオン変性ポリビニルアルコール、シリル基を有するシリル変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは、平均重合度が200以上のものが好ましく用いられ、さらに、1,000以上のものが好ましく、平均重合度が1,500〜5,000のものがより好ましく、2,000〜5,000のものが特に好ましく用いられる。ポリビニルアルコールの重合度が200以上であると塗布膜のひび割れがなく、5,000以下であると塗布液が安定するからである。なお、塗布液が安定するとは塗布液が経時的に安定することを意味する。
また、鹸化度は、70〜100モル%のものが好ましく、80〜99.5モル%のものが水への溶解性の点でより好ましい。
アニオン変性ポリビニルアルコールは、例えば、特開平1−206088号公報に記載されているようなアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号公報および同63−307979号公報に記載されているような、ビニルアルコールと水溶性基とを有するビニル化合物との共重合体および特開平7−285265号公報に記載されているような水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平7−9758号公報に記載されているようなポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号公報に記載されている疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体、シラノール基を有するシラノール変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル基やカルボニル基、カルボキシル基などの反応性基を有する反応性基変性ポリビニルアルコール等が挙げられる。
これらポリビニルアルコールは、単独でも、または重合度や変性の種類違いなどの2種以上を併用してもよい。また、ポリビニルアルコールは、市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。市販品の例としては、例えば、PVA−102、PVA−103、PVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−120、PVA−124、PVA−135、PVA−203、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−235等のポバール(登録商標、以上、株式会社クラレ製)、JC−25、JC−33、JC−40、JF−03、JF−04、JF−05、JP−03、JP−04、JP−05、JP−45(以上、日本酢ビ・ポバール株式会社製)、RS−4104、RS−2117、RS−1117、RS−2817、RS−1717、RS−1113、RS−1713、HR−3010等のエクセバール(登録商標、以上、株式会社クラレ製)、ニチゴーGポリマー(登録商標、日本合成化学工業株式会社製)等が挙げられる。
各屈折率層(低屈折率層または高屈折率層)における水溶性樹脂の含有量は、屈折率層の全固形分に対して、好ましくは3〜70質量%、より好ましくは5〜60質量%、さらに好ましくは10〜50質量%、特に好ましくは13〜45質量%である。なお、複数の種類の水溶性樹脂を含む場合には、その合計が、上記範囲内であると好ましい。
(低屈折率層中に含まれる屈折率調整剤)
低屈折率層は屈折率調整剤を含むことが好ましい。低屈折率層に用いられる屈折率調整剤としては、特に制限されないが、酸化ケイ素(二酸化ケイ素)粒子を用いることが好ましい。低屈折率層に含まれる屈折率調整剤としては、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
酸化ケイ素(二酸化ケイ素)粒子の具体的な例としては、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ等が挙げられる。これらのうち、コロイダルシリカゾル、特に酸性のコロイダルシリカゾルを用いることがより好ましく、有機溶媒に分散させたコロイダルシリカを用いることが特に好ましい。また、屈折率をより低減させるために、低屈折率層の酸化ケイ素粒子として、粒子の内部に空孔を有する中空微粒子を用いてもよく、特に酸化ケイ素(二酸化ケイ素)の中空微粒子が好ましい。
低屈折率層に含まれる屈折率調整剤は、その平均粒径(個数平均;直径)が1〜100nmであることが好ましい。屈折率調整剤の一次粒子の平均粒径(平均一次粒径、塗布前の分散液状態での粒径)は、1〜50nmであることがより好ましく、1〜40nmであることがさらに好ましく、3〜20nmであることが特に好ましく、4〜10nmであることが最も好ましい。また、二次粒子の平均粒径としては、30nm以下であることが、ヘイズが少なく可視光透過性に優れる観点で好ましい。
上記平均一次粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)等による電子顕微鏡写真から計測することができる。動的光散乱法や静的光散乱法等を利用する粒度分布計等によって計測してもよい。透過型電子顕微鏡により求める場合、粒子の平均一次粒径は、粒子そのものあるいは屈折率層の断面や表面に現れた粒子を電子顕微鏡で観察し、1000個の任意の粒子の粒径を測定し、その単純平均値(個数平均)として求められる。ここで個々の粒子の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定したときの直径で表したものである。
本発明で用いられるコロイダルシリカは、珪酸ナトリウムの酸等による複分解やイオン交換樹脂層を通過させて得られるシリカゾルを加熱熟成して得られるものであり、例えば、特開昭57−14091号公報、特開昭60−219083号公報、特開昭60−219084号公報、特開昭61−20792号公報、特開昭61−188183号公報、特開昭63−17807号公報、特開平4−93284号公報、特開平5−278324号公報、特開平6−92011号公報、特開平6−183134号公報、特開平6−297830号公報、特開平7−81214号公報、特開平7−101142号公報、特開平7−179029号公報、特開平7−137431号公報、および国際公開第94/26530号などに記載されているものである。
このようなコロイダルシリカは合成品を用いてもよいし、市販品を用いてもよい。市販品としては、日産化学工業株式会社から販売されているスノーテックス(登録商標、以下同じ)シリーズ(スノーテックスOS、OXS、S、OS、20、30、40、O、N、C等)が挙げられる。
コロイダルシリカは、その表面をカチオン変性されたものであってもよく、また、Al、Ca、MgまたはBa等で処理されたものであってもよい。
また、酸化ケイ素粒子としては、上述のように、中空微粒子を用いることもできる。中空微粒子を用いる場合には、平均粒子空孔径が、3〜70nmであると好ましく、5〜50nmであるとより好ましく、5〜45nmであるとさらに好ましい。なお、中空微粒子の平均粒子空孔径とは、中空微粒子の内径の平均値である。中空微粒子の平均粒子空孔径は、上記範囲であれば、十分に低屈折率層の屈折率が低減される。平均粒子空孔径は、電子顕微鏡観察で、円形、楕円形または実質的に円形は楕円形として観察できる空孔径を、ランダムに50個以上観察し、各粒子の空孔径を求め、その数平均値を求めることにより得られる。なお、平均粒子空孔径は、円形、楕円形または実質的に円形もしくは楕円形として観察できる空孔径の外縁を、2本の平行線で挟んだ距離のうち、最小の距離を意味する。
低屈折率層における屈折率調整剤の含有量は、低屈折率層の全固形分に対して、20〜90質量%であることが好ましく、30〜85質量%であることがより好ましく、40〜80質量%であることがさらに好ましい。20質量%以上であると、所望の屈折率が得られ90質量%以下であると塗布性が良好となり好ましい。なお、複数の種類の屈折率調整剤を含む場合には、その合計が、上記範囲内であると好ましい。
(カチオンポリマー)
本発明に係る光学反射フィルムの誘電体多層膜において、低屈折率層は、カチオンポリマーを含んでもよい。当該カチオンポリマーは、アニオン性である酸化ケイ素粒子などの屈折率調整剤を用いる場合、酸化ケイ素粒子の表面に吸着し、酸化ケイ素粒子のゼータ電位をプラスとし、カチオン性を帯びさせるように作用する。その結果、以下で詳説する高屈折率層との界面混合が抑制され、ヘイズを低減することができる。なお、低屈折率層同様、高屈折率層においてもカチオンポリマーを含んでもよい。この場合、高低屈折率層に含まれるカチオンポリマーは、低屈折率層に含まれるカチオンポリマーと同じであっても、互いに異なるものであってもよい。
本明細書中、カチオンポリマーはカチオンまたはカチオン性基を有するポリマーを意味する。また、「カチオン性基」とは、酸の存在下でカチオンに変換される基を指す。
カチオンポリマーは、無機ポリマーであってもよいし、有機ポリマーであってもよい。
無機ポリマーとしては、加水分解重縮合が可能な金属塩化合物を、所謂ゾル・ゲル法によって、加水分解重縮合することで形成される金属酸化物からなる無機ポリマーが挙げられる。なかでも、ジルコニウム原子を含む化合物、またはアルミニウム原子を含む化合物等を用いて、これを、加水分解重縮合することで形成される無機ポリマーが好ましい。これらの無機ポリマーは、加水分解の過程で生じる水酸基が、重縮合反応後にも残るため、水酸基の水素結合のネットワークを形成するため柔軟性が向上すると考えられる。
ジルコニウム原子を含む無機ポリマーの具体例としては、塩化ジルコニル、硝酸ジルコニル等が挙げられる。上記化合物の具体的商品名としては、第一稀元素化学工業株式会社製のジルコゾール(登録商標)ZC−2(塩化ジルコニル)、第一稀元素化学工業株式会社製のジルコゾール(登録商標)ZN(硝酸ジルコニル)等が挙げられる。
アルミニウム原子を含む無機ポリマーの具体例としては、塩基性塩化アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウム、塩基性硫酸珪酸アルミニウム等が挙げられる。これらの中でも、塩基性塩化アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウムが好ましい。上記化合物の商品名としては、多木化学株式会社製のタキバイン(登録商標)#1500等が挙げられる。
上記無機ポリマーは、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が混合されて用いられてもよい。
本発明におけるカチオンポリマーは、有機ポリマーであることが好ましい。これは、無機ポリマーに比べ有機ポリマーは伸縮性に優れるため、屈折率を維持するために酸化ケイ素粒子のような屈折率調整剤を高充填した場合であっても、温度変化による層の膨張、収縮に追随しやすく、クラックが生じにくいためである。
有機ポリマーであるカチオンポリマーとしては、特に制限されないが、ビニルピロリドン・N,N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩、デンプン糖ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドエーテル、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリビニルピリジン、ポリエチレンイミン−エピクロルヒドリン反応物、ポリアミド−ポリアミン樹脂、ポリアミド−エピクロルヒドリン樹脂、キトサン類、カチオン化デンプン、ポリアミンスルフォン、ポリビニルイミダゾール、ポリアミジン、ジシアンアミドポリアルキレンポリアミン縮合物、ポリアルキレンポリアミンジシアンジアミドアンモニウム塩縮合物、ジシアンジアミドホルマリン縮合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合物及び共重合物、ビニルピロリドン・ビニルイミダゾール共重合体、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド重合物及び共重合物、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート重合物及び共重合物、(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウムクロライド重合物及び共重合物、(メタ)アクリロイルオキシアルキルジアルキルベンジルアンモニウムクロライド重合物などが挙げられる。
また、例えば、特開昭61−10483号公報に記載されているような、第1級〜第3級アミノ基や第4級アンモニウム基をポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するカチオン変性ポリビニルアルコールを用いることもできる。カチオン変性ポリビニルアルコールは、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、トリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(2−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、例えば、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
本発明におけるカチオンポリマーは、カチオン性基として、第1級から第3級アミノ基およびそのカチオン(塩)、ならびに第4級アンモニウム基からなる群から選択される少なくとも一種を含む有機アミン系ポリマーであると好ましい。これらのポリマーは、上記カチオン性基によって酸化ケイ素粒子のような屈折率調整剤の表面に比較的強く結合し、屈折率調整剤の表面をカチオン性とすることができる。よって、高屈折率層にてカチオン性の金属酸化物粒子を含む場合、高屈折率層と低屈折率層との界面混合を抑制する効果が高まり、ヘイズの低減効果をより向上させることができる。なかでも、カチオンポリマーは、第3級アミノ基、第3級アミノ基のカチオン、および第4級アンモニウム基からなる群から選択される少なくとも一種のカチオン性基を含んでいると好ましい。これらのカチオン性基はカチオンが安定化して酸化ケイ素粒子表面に特異的に吸着しやすい。したがって、低屈折率層のカチオン性がより高まり、界面混合を抑制しやすくなる結果、よりヘイズを低減することができる。
例えば、有機アミン系ポリマーとして、ポリアリルアミンおよびその第4級化物、ポリアリルアミン塩酸塩(PAH)、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(PDDA)、ポリビニルピリジン(PVP)、ポリリジン、ポリアクリルアミド、ポリピロール、ポリアニリン、ポリパラフェニレン(+)、ポリパラフェニレンビニレン、ポリエチレンイミンおよびそれらを少なくとも2種以上含む共重合体や塩の種類を変えたものなどを用いることができる。
より具体的には、ポリアリルアミンアミド硫酸塩、アリルアミン塩酸塩とジアリルアミン塩酸塩との共重合体、アリルアミン塩酸塩とジメチルアリルアミン塩酸塩との共重合体、アリルアミン塩酸塩とその他の共重合体、部分メトキシカルボニル化アリルアミン重合体、部分メチルカルボニル化アリルアミン酢酸塩重合体、ジアリルアミン塩酸塩重合体、メチルジアリルアミン塩酸塩重合体、メチルジアリルアミンアミド硫酸塩重合体、メチルジアリルアミン酢酸塩重合体、ジアリルアミン塩酸塩と二酸化イオウの共重合体、ジアリルアミン酢酸塩と二酸化イオウとの共重合体、ジアリルメチルエチルアンモニウムエチルサルフェイトと二酸化イオウとの共重合体、メチルジアリルアミン塩酸塩と二酸化イオウとの共重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドと二酸化イオウとの共重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドとアクリルアミドとの共重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドとジアリルアミン塩酸塩誘導体との共重合体、ジメチルアミンとエピクロロヒドリンとの共重合体、ジメチルアミンとエチレンジアミンとエピクロロヒドリンとの共重合体、ポリアミドポリアミンとエピクロロヒドリンとの共重合体等が挙げられる。
上記有機ポリマーは、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が混合されて用いられてもよい。
本発明においては、低屈折率層に2種以上のカチオンポリマーを用いることが好ましい。1種類のカチオンポリマーだけを用いる場合と比較して、酸化ケイ素粒子のような屈折率調整剤を微凝集させつつ、沈降させずに低屈折率層中に分散させることが可能になり、その結果、ヘイズの少ない光学反射フィルムが得られる。したがって、酸化ケイ素粒子のような屈折率調整剤の分散安定性を保つ効果の高いカチオンポリマーと、凝集性の高いカチオンポリマーとの2種類のカチオンポリマーを併用すると、本発明の効果がより顕著に得られうる。例えば、カチオン性基として、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基またはこれらのカチオン(塩)を有するカチオンポリマー、特に第3級アミノ基、またはそのカチオン(塩)を有するカチオンポリマーは屈折率調整剤の表面を効果的にカチオン化し、低屈折率層塗布液中の屈折率調整剤の分散安定性を保つことに寄与する。そのため、低屈折率層中のカチオンポリマーは、カチオン性基として第3級アミノ基またはそのカチオン(塩)を有するカチオンポリマーを含むことが好ましい。一方、カチオン性基として、第4級アンモニウム基、第1級アミノ基、第2級アミノ基およびこれらのカチオン(塩)を有するカチオンポリマー、特に第4級アンモニウム基を有するカチオンポリマーは、屈折率調整剤の微凝集を発生させ、屈折率調整剤を保護する効果を有する。そのため、第4級アンモニウム基を有するカチオンポリマーをさらに用いることで、屈折率調整剤を沈降させずに微凝集を起こすことが容易となり、本発明の効果がさらに顕著に得られうる。すなわち、本発明においては、カチオンポリマーとして、第3級アミノ基またはそのカチオン(塩)を有するカチオンポリマーと、第4級アンモニウム基を有するカチオンポリマーとを併用すると好ましい。
特に、メチルジアリルアミン塩酸塩重合体、メチルジアリルアミンアミド硫酸塩重合体、メチルジアリルアミン酢酸塩重合体などが第3級アミノ基またはそのカチオン(塩)を含むカチオンポリマーとして好適に用いられ、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体などが第4級アンモニウム基を含むカチオンポリマーとして好適に用いられうる。
上記カチオンポリマーの含有量は、特に制限されないが、カチオンポリマーの含有量が、低屈折率層中に含まれる屈折率調整剤(複数種類の屈折率調整剤を含む場合には、その合計質量)に対して、0.5〜20質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましく、2〜8質量%であることが特に好ましい。なお、複数の種類のカチオンポリマーを含む場合には、その合計が、上記範囲内であると好ましい。カチオンポリマーの含有量が低屈折率層中に含まれる屈折率調整剤の総量に対して0.5質量%以上であれば、本発明の効果がより顕著に得られうる。一方、20質量%以下であれば、塗膜の物性へのカチオンポリマー由来の耐候性劣化がなく好適である。
上記カチオンポリマーの重量平均分子量は、特に制限されないが、例えば、10,000〜100,000であると好ましく、20,000〜50,000であるとより好ましく、20,000〜30,000であるとさらに好ましい。また、カチオンポリマーを二種以上用いる場合には、2種以上のカチオンポリマーのいずれもの重量平均分子量が上記範囲であると好ましい。なお、本明細書において、「重量平均分子量」の値は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって測定した値を採用するものとする。
(硬化剤)
低屈折率層および高屈折率層の形成には、硬化剤を用いてもよい。水溶性樹脂としてポリビニルアルコールを用いた場合、その効果は特に発揮されうる。
ポリビニルアルコールと共に用いることのできる硬化剤としては、ポリビニルアルコールと硬化反応を起こすものであれば特に制限はないが、ホウ酸およびその塩が好ましい。ホウ酸またはその塩とは、硼素原子を中心原子とする酸素酸およびその塩のことをいい、具体的には、オルトホウ酸、二ホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸および八ホウ酸およびそれらの塩が挙げられる。硬化剤としてのホウ酸およびホウ酸塩は、単独の水溶液でも、また、2種以上を混合して使用してもよい。
硬化剤としては、上記ホウ酸およびその塩以外にも、公知のものを使用することができ、一般的にはポリビニルアルコールと反応し得る基を有する化合物あるいはポリビニルアルコールが有する異なる基同士の反応を促進するような化合物であり、適宜選択して用いられる。硬化剤の具体例としては、例えば、エポキシ系硬化剤(ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系硬化剤(ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系硬化剤(2,4−ジクロロ−4−ヒドロキシ−1,3,5,−s−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(1,3,5−トリスアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、アルミニウム明礬等が挙げられる。
各屈折率層が硬化剤を含む場合、上記硬化剤の総使用量は、水溶性樹脂としてポリビニルアルコールを使用する場合、ポリビニルアルコール1g当たり10〜600mgが好ましく、20〜500mgがより好ましい。
(界面活性剤)
低屈折率層および高屈折率層は、塗布性の観点から界面活性剤を含有することが好ましい。
塗布時の表面張力調整のため用いられる界面活性剤としてアニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤などを用いることができるが、両性界面活性剤がより好ましい。
本発明に好ましく用いられる両性界面活性剤としては、アミドスルホベタイン型、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、イミダゾリウム型などがある。本発明に好ましく用いられる両性界面活性剤の具体例を以下に示す。本発明ではスルホベタイン型、カルボキシベタイン型が塗布ムラの観点から好ましく、製品としてはソフタゾリン(登録商標、以下同じ)LSB−R、LSB、LMEB−R(以上、川研ファインケミカル株式会社製)、アンヒトール(登録商標)20HD(花王株式会社製)等が挙げられる。界面活性剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が混合されて用いられてもよい。
各屈折率層が界面活性剤を含む場合、屈折率層における界面活性剤の含有量は、屈折率層の全固形分に対して、0.001〜1質量%であることが好ましく、0.005〜0.80質量%であることがより好ましい。
(その他の樹脂)
低屈折率層および高屈折率層は、上記水溶性樹脂以外の樹脂を含んでいてもよい。かような樹脂としては、例えば、水分散性疎水性樹脂が挙げられる。水分散性疎水性樹脂は、水系溶媒に分散された疎水性ポリマーが、光学反射フィルムの製造工程における屈折率層の成膜時に融着して形成される樹脂である。かような樹脂を含むことにより、融着して造膜されたときに疎水性の強い膜が得られる。そのため、大気中の水分量変化による膜の膨張、収縮を低減できるため、クラックの発生が防止できる。また、塗布膜が柔軟化し、大気中の水分量変化による膜の膨張、収縮の際に塗膜にかかる力が低減されうる。
前記水分散性疎水性樹脂は、エマルジョン樹脂でありうる。エマルジョン樹脂とは、水系媒体中に微細な、例えば、平均一次粒径が2.0μm以下の樹脂粒子がエマルジョン状態で分散されている樹脂であって、油溶性のモノマーを、高分子分散剤などの分散剤を用いてエマルジョン重合して得られる。エマルジョン樹脂の平均一次粒径は、動的光散乱法によって測定することができる。
用いられうる油溶性のモノマーは、特に制限されないが、エチレン、プロピレン、ブタジエン、酢酸ビニルおよびその部分加水分解物、ビニルエーテル、アクリル酸およびそのエステル類、メタクリル酸およびそのエステル類、アクリルアミドおよびその誘導体、メタクリルアミドおよびその誘導体、スチレン、ジビニルベンゼン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、マレイン酸、ビニルピロリドン、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネート類、ポリイソシアネート類、ジオール類、ポリオール類、ジカルボン酸類などが挙げられる。
また、用いられうる分散剤は、特に制限されないが、例えば、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジエチルアミン、エチレンジアミン、4級アンモニウム塩のような低分子の分散剤の他に、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエキシエチレンラウリル酸エーテル、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドンのような高分子分散剤が挙げられる。
上記のエマルジョン重合される樹脂(エマルジョン樹脂)としては、例えばアクリル樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アクリル酸エステル樹脂等が挙げられる。
エマルジョン樹脂としては、市販されているものを用いてもよく、例えば、モビニール(登録商標)718A、710A、731A、LDM7582、5450、6960(以上、日本合成化学工業株式会社製)、スーパーフレックス(登録商標)150、170、300、500M、620、650(以上、第一工業製薬株式会社製)、アデカボンタイター(登録商標)HUX−232、HUX−380、HUX−386、HUX−830、HUX−895(以上、株式会社ADEKA製)、AE−116、AE−120A、AE−200A、AE−336B、AE−981A、AE−986B(以上、株式会社イーテック製)、ETERNACOLL(登録商標)UW−1005E、UW−5002、UW−5034E、UE−5502(以上、宇部興産株式会社製)、およびアクリット(登録商標)UW−309、UW−319SX、UW−520(以上、大成ファインケミカル株式会社製)などが挙げられる。
エマルジョン樹脂としては、アニオン性エマルジョン樹脂、上記カチオンポリマー以外のカチオン性エマルジョン樹脂、ノニオン性エマルジョン樹脂のいずれも用いられうる。
エマルジョン樹脂の屈折率も特に制限されないが、1.3〜1.7であることが好ましく、1.4〜1.6であることがより好ましい。上記範囲であれば、水溶性樹脂の屈折率に近くなるため、得られる光学反射フィルムのヘイズが低減されうる。
上記水分散性疎水性樹脂は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が混合されて用いられてもよい。
屈折率層において上記水分散性疎水性樹脂を含む場合、水分散性疎水性樹脂の含有量は、屈折率層の全固形分に対して、好ましくは1〜30質量%、より好ましくは3〜20質量%、特に好ましくは5〜10質量%である。なお、複数の種類の水分散性疎水性樹脂を含む場合には、その合計が、上記範囲内であると好ましい。
(その他の添加剤)
低屈折率層および高屈折率層は、例えば、特開昭57−74193号公報、同57−87988号公報及び同62−261476号公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号公報、同57−87989号公報、同60−72785号公報、同61−146591号公報、特開平1−95091号公報および同3−13376号公報等に記載されている退色防止剤、特開昭59−42993号公報、同59−52689号公報、同62−280069号公報、同61−242871号公報および特開平4−219266号公報等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有していてもよい。
<高屈折率層>
高屈折率層は、上記低屈折率層よりも屈折率が高い層であれば特に限定されない。本発明において、高屈折率層は、高屈折率層塗布液の塗布によって形成されると好ましい。高屈折率層塗布液は上記の水溶性高分子を含むことが好ましく、屈折率の観点からさらに金属酸化物粒子などの屈折率調整剤を含むことが好ましい。なお、上述のように、水溶性樹脂、カチオンポリマー、硬化剤、界面活性剤、その他の樹脂、その他の添加剤については低屈折率層と同様の構成が採用されうる。
(高屈折率層中に含まれる屈折率調整剤)
高屈折率層に用いられる屈折率調整剤としては、例えば、酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化亜鉛粒子、アルミナ粒子、コロイダルアルミナ、酸化ニオブ粒子、酸化ユーロピウム粒子、ジルコン粒子等の高い屈折率を有する金属酸化物粒子を挙げることができる。屈折率調整剤は1種であっても2種以上を併用してもよい。
高屈折率層に含まれる屈折率調整剤の大きさは、特に制限されるものではないが、高屈折率層に含まれる屈折率調整剤の体積平均粒径は、100nm以下であると好ましく、1〜100nmであるとより好ましく、2〜50nmであるとさらに好ましい。また、高屈折率層に含まれる屈折率調整剤の平均一次粒径(個数平均粒径)は、100nm以下であることが好ましく、1〜100nmであることがより好ましく、2〜50nmであることがさらに好ましい。体積平均粒径または一次平均粒径のいずれかが上記範囲であれば、ヘイズが少なく可視光透過性に優れる観点で好ましい。
なお、本明細書でいう体積平均粒径(D50)とは、粒子そのものをレーザー回折散乱法、動的光散乱法、あるいは電子顕微鏡を用いて観察する方法や、屈折率層の断面や表面に現れた粒子像を電子顕微鏡で観察する方法により、1,000個の任意の粒子の粒径を測定し、それぞれd1、d2・・・di・・・dkの粒径を持つ粒子がそれぞれn1、n2・・・ni・・・nk個存在する粒子の集団において、粒子1個当りの体積をviとした場合に、体積平均粒径mv={Σ(vi・di)}/{Σ(vi)}で表される体積で重み付けされた平均粒径を算出する。また、平均一次粒径は、上述した平均一次粒径の測定方法により求めることができる。
高屈折率層における屈折率調整剤の含有量としては、高屈折率層の全固形分に対して、15〜95質量%であると好ましく、20〜90質量%であるとより好ましく、30〜90質量%であると特に好ましい。なお、複数の種類の屈折率調整剤を含む場合には、その合計が、上記範囲内であると好ましい。
透明でより屈折率の高い高屈折率層を形成するために、高屈折率層は、高屈折率を有する酸化チタン粒子または酸化ジルコニウム粒子を含むことが好ましく、酸化ジルコニウム粒子を含むことが特に好ましい。酸化ジルコニウム粒子を含む高屈折率層は、透明でより高い屈折率を発現することができる。また、光触媒活性が低いことから、高屈折率層や隣接した低屈折率層の耐光性、耐候性が高くなる。なお、本発明において、酸化ジルコニウムとは二酸化ジルコニウム(ZrO)を意味する。
上記酸化ジルコニウム粒子は、立方晶でも正方晶であってもよく、また、それらの混合物であってもよい。
また、酸化ジルコニウム粒子としては、水系の酸化ジルコニウムゾルの表面を変性して有機溶剤等に分散可能な状態にしたものを用いてもよい。
酸化ジルコニウム粒子またはその分散液の調製方法としては、従来公知のいずれの方法も用いることができる。例えば、特開2014−80361号公報に記載されるように、ジルコニウム塩を水中にてアルカリと反応させて、酸化ジルコニウム粒子のスラリーを調製し、有機酸を加えて水熱処理する方法が用いられうる。
酸化ジルコニウム粒子は、市販のものを使用してもよく、例えば、SZR−W、SZR−CW、SZR−M、およびSZR−K等(以上、堺化学工業株式会社製)を好適に使用することができる。
さらに、本発明で用いられる金属酸化物粒子などの屈折率調整剤は、単分散であることが好ましい。ここでいう単分散とは、下記式で求められる単分散度が40%以下であることをいう。この単分散度は、さらに好ましくは30%以下であり、特に好ましくは0.1〜20%である。
高屈折率層における屈折率調整剤の含有量としては、特に制限されないが、高屈折率層の全固形分に対して、15〜95質量%であると好ましく、20〜90質量%であるとより好ましく、30〜90質量%であると特に好ましい。上記範囲とすることで、光学反射特性の良好なものとできる。
〔誘電体多層膜の調製方法〕
誘電体多層膜の製造方法は、基材上に、上記低屈折率層と高屈折率層とから構成されるユニットを少なくとも1つ形成することができるものであれば、いかなる方法でも用いられうる。
具体的には低屈折率層と高屈折率層とを交互に塗布、乾燥して積層体を形成することが好ましい。具体的には以下の形態が挙げられる;(1)基材上に、高屈折率層塗布液を塗布し乾燥して高屈折率層を形成した後、低屈折率層塗布液を塗布し乾燥して低屈折率層を形成し、誘電体多層膜を形成する方法;(2)基材上に、低屈折率層塗布液を塗布し乾燥して低屈折率層を形成した後、高屈折率層塗布液を塗布し乾燥して高屈折率層を形成し、誘電体多層膜を形成する方法;(3)基材上に、高屈折率層塗布液と、低屈折率層塗布液とを交互に逐次重層塗布した後乾燥して、高屈折率層、および低屈折率層を含む誘電体多層膜を形成する方法;(4)基材上に、高屈折率層塗布液と、低屈折率層塗布液とを同時重層塗布し、乾燥して、高屈折率層、および低屈折率層を含む誘電体多層膜を形成する方法;などが挙げられる。なかでも、より簡便な製造プロセスとなる上記(4)の方法が好ましい。すなわち、同時重層塗布法により前記高屈折率層と前記低屈折率層とを積層することが好ましい。
塗布方式としては、例えば、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布法、あるいは米国特許第2,761,419号、同第2,761,791号公報に記載のホッパーを使用するスライドビード塗布法、エクストルージョンコート法等が好ましく用いられる。
高屈折率層塗布液および低屈折率層塗布液を調製するための溶媒は、特に制限されないが、水、有機溶媒、またはその混合溶媒が好ましい。本発明においては、水溶性樹脂を用いるために、水系溶媒を用いることができる。水系溶媒は、有機溶媒を用いる場合と比較して、大規模な生産設備を必要とすることがないため、生産性の点で好ましく、また環境保全の点でも好ましい。
前記有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノールなどのアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル類、ジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類、アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノンなどのケトン類などが挙げられる。これら有機溶媒は、単独でもまたは2種以上混合して用いてもよい。環境面、操作の簡便性などから、塗布液の溶媒としては、水系溶媒が好ましく、水、または水とメタノール、エタノール、もしくは酢酸エチルとの混合溶媒がより好ましく、水が特に好ましい。
水と少量の有機溶媒との混合溶媒を用いる際、当該混合溶媒中の水の含有量は、混合溶媒全体を100質量%として、80〜99.9質量%であることが好ましく、90〜99.5質量%であることがより好ましい。ここで、80質量%以上にすることで、溶媒の揮発による体積変動が低減でき、ハンドリングが向上し、また、99.9質量%以下にすることで、液添加時の均質性が増し、安定した液物性を得ることができるからである。
高屈折率層塗布液中の水溶性樹脂の濃度は、0.5〜10質量%であることが好ましい。また、高屈折率層塗布液中の屈折率調整剤の濃度は、1〜50質量%であることが好ましい。
低屈折率層塗布液中の水溶性樹脂の濃度は、0.5〜10質量%であることが好ましい。また、低屈折率層塗布液中の屈折率調整剤の濃度は、1〜50質量%であることが好ましい。
高屈折率層塗布液および低屈折率層塗布液の調製方法は、特に制限されず、例えば、屈折率調整剤、水溶性樹脂、硬化剤などを水系溶媒に添加し、攪拌混合する方法が挙げられる。この際、各成分の添加順も特に制限されず、攪拌しながら各成分を順次添加し混合してもよいし、攪拌しながら一度に添加し混合してもよい。
また、上述のように、本発明の好ましい形態として、高屈折率層および低屈折率層において、水溶性樹脂としてのポリビニルアルコールを含む形態が挙げられる。この場合、同時重層塗布を行う場合は高屈折率層塗布液および低屈折率層塗布液に用いるポリビニルアルコールの鹸化度が異なることが好ましい。鹸化度が異なることによって塗布、乾燥工程の各工程において層の混合を抑制することができる。この仕組みはいまだ明らかではないが、鹸化度差に由来する表面張力差によって混合が抑制されていると考えられる。本発明においては高屈折率層塗布液と低屈折率層塗布液とに用いるポリビニルアルコールの鹸化度の差は3モル%以上が好ましく、8モル%以上がより好ましい。すなわち、高屈折率層の鹸化度と低屈折率層の鹸化度との差が3モル%以上であることが好ましく、8モル%以上であることがより好ましい。高屈折率層の鹸化度と低屈折率層の鹸化度との差の上限は、高屈折率層と低屈折率層との層間混合の抑制/防止効果を考慮すると、高いほど好ましいため、特に制限されないが、20モル%以下であることが好ましく、15モル%以下であることがより好ましい。
各屈折率層中で鹸化度の相違を比較する際、各屈折率層が(鹸化度および重合度が異なる)複数のポリビニルアルコールを含む場合には、屈折率層中で最も含有量の高いポリビニルアルコールを比較する。ここで、「屈折率層中で最も含有量が高いポリビニルアルコール」という際には、鹸化度の差が3モル%以内のポリビニルアルコールは同一のポリビニルアルコールであるとし、重合度を算出する。具体的には、鹸化度が90モル%、鹸化度が91モル%、鹸化度が93モル%のポリビニルアルコールが同一層内にそれぞれ10質量%、40質量%、50質量%含まれる場合には、これら3つのポリビニルアルコールは同一のポリビニルアルコールとし、これら3つの混合物の鹸化度は、(90×0.1+91×0.4+93×0.5)/1=91.9モル%となる。また、上記「鹸化度の差が3モル%以内のポリビニルアルコール」とは、いずれかのポリビニルアルコールに着目した場合に3モル%以内であれば足り、例えば、90、91、92、94モル%のビニルアルコールを含む場合には、91モル%のビニルアルコールに着目した場合にいずれのポリビニルアルコールも3モル%以内なので、同一のポリビニルアルコールとなる。
同一層内に鹸化度が3モル%以上異なるポリビニルアルコールが含まれる場合、異なるポリビニルアルコールの混合物とみなし、それぞれに重合度と鹸化度を算出する。
同時重層塗布を行う際の高屈折率層塗布液および低屈折率層塗布液の温度は、スライドビード塗布方式を用いる場合は、25〜60℃の温度範囲が好ましく、30〜45℃の温度範囲がより好ましい。また、カーテン塗布方式を用いる場合は、25〜60℃の温度範囲が好ましく、30〜45℃の温度範囲がより好ましい。
同時重層塗布を行う際の高屈折率層塗布液および低屈折率層塗布液の粘度は、特に制限されない。しかしながら、スライドビード塗布方式を用いる場合には、上記の塗布液の好ましい温度の範囲において、5〜160mPa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは60〜140mPa・sの範囲である。また、カーテン塗布方式を用いる場合には、上記の塗布液の好ましい温度の範囲において、5〜1200mPa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは25〜500mPa・sの範囲である。このような粘度の範囲であれば、効率よく同時重層塗布を行うことができる。
また、塗布液の15℃における粘度としては、100mPa・s以上が好ましく、100〜30,000mPa・sがより好ましく、さらに好ましくは2,500〜30,000mPa・sである。
塗布および乾燥方法の条件は、特に制限されないが、例えば、逐次塗布法の場合は、まず、30〜60℃に加温した高屈折率層塗布液および低屈折率層塗布液のいずれか一方を基材上に塗布、乾燥して層を形成した後、もう一方の塗布液をこの層上に塗布、乾燥して積層膜前駆体(ユニット)を形成する。次に、所望の遮蔽性能を発現するために必要なユニット数を、前記方法にて逐次塗布、乾燥して積層させて積層膜前駆体を得る。乾燥する際は、形成した塗膜を、30℃以上で乾燥することが好ましい。例えば、湿球温度5〜50℃、膜面温度5〜100℃(好ましくは10〜50℃)の範囲で乾燥するのが好ましく、例えば、40〜60℃の温風を1〜5秒吹き付けて乾燥する。乾燥方法としては、温風乾燥、赤外乾燥、マイクロ波乾燥が用いられる。また単一プロセスでの乾燥よりも多段プロセスの乾燥が好ましく、恒率乾燥部の温度<減率乾燥部の温度にするのがより好ましい。この場合の恒率乾燥部の温度範囲は30〜60℃、減率乾燥部の温度範囲は50〜100℃にするのが好ましい。
また、同時重層塗布を行う場合の塗布および乾燥方法の条件は、高屈折率層塗布液および低屈折率層塗布液を30〜60℃に加温して、基材上に高屈折率層塗布液および低屈折率層塗布液の同時重層塗布を行った後、形成した塗膜の温度を好ましくは1〜15℃にいったん冷却し(セット)、その後10℃以上で乾燥することが好ましい。より好ましい乾燥条件は、湿球温度5〜50℃、膜面温度10〜50℃の範囲の条件である。例えば、40〜80℃の温風を1〜5秒吹き付けて乾燥する。また、塗布直後の冷却方式としては、形成された塗膜の均一性向上の観点から、水平セット方式で行うことが好ましい。
ここで、前記セットとは、冷風等を塗膜に当てて温度を下げるなどの手段により、塗膜組成物の粘度を高め、各層間および各層内の物質の流動性を低下させたり、またゲル化する工程のことを意味する。冷風を塗布膜に表面から当てて、塗布膜の表面に指を押し付けたときに指に何もつかなくなった状態を、セット完了の状態と定義する。
塗布した時点から、冷風を当ててセットが完了するまでの時間(セット時間)は、5分以内であることが好ましく、2分以内であることがより好ましい。また、下限の時間は特に制限されないが、45秒以上の時間をとることが好ましい。セット時間が短すぎると、層中の成分の混合が不十分となる虞がある。一方、セット時間が長すぎると、金属酸化物粒子の層間拡散が進み、高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が不十分となるおそれがある。
セット時間の調整は、水溶性高分子(ポリビニルアルコール)の濃度、金属酸化物粒子の濃度を調整したり、ゼラチン、ペクチン、寒天、カラギ−ナン、ゲランガム等の各種公知のゲル化剤など、他の成分を添加することにより調整することができる。
冷風の温度は、0〜25℃であることが好ましく、5〜10℃であることがより好ましい。また、塗膜が冷風に晒される時間は、塗膜の搬送速度にもよるが、好ましくは10〜360秒、より好ましくは10〜300秒、さらに好ましくは10〜120秒である。
高屈折率層塗布液および低屈折率層塗布液の塗布厚は、以下で示すような好ましい乾燥
時の厚みとなるように塗布すればよい。
[光学特性]
本発明に係る光学反射フィルムが赤外光を反射する赤外遮蔽フィルムである場合には、低屈折率層と高屈折率層との屈折率の差を大きく設計することが、少ない層数で赤外反射率を高くすることができるという観点から好ましい。本形態では、低屈折率層および高屈折率層から構成される積層ユニットの少なくとも1つにおいて、隣接する低屈折率層と高屈折率層との屈折率差が0.15以上であることが好ましく、0.2以上であることがより好ましく、0.21以上であることがさらに好ましい。また、上限には特に制限はないが通常0.5以下である。高屈折率層および低屈折率層の積層体を複数有する場合には、全ての積層体における高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が上記好適な範囲内にあることが好ましい。ただし、この場合でも誘電体多層膜の最上層や最下層を構成する屈折率層に関しては、上記好適な範囲外の構成であってもよい。
本形態の光学反射フィルムの光学特性として、JIS R3106−1998で示される可視光領域の透過率が50%以上であることが好ましく、より好ましくは75%以上であり、さらに好ましくは85%以上である。また、波長900nm〜1400nmの領域に反射率50%を超える領域を有することが好ましい。
誘電体多層膜の屈折率層の層数(高屈折率層および低屈折率層の総層数)としては、特に湿式製膜法で作製する場合、生産性の観点から、基材の片面あたり、6〜50層であることが好ましく、8〜40層であることがより好ましく、9〜30層であることがさらに好ましく、11〜31層であることが特に好ましい。誘電体多層膜の屈折率層の層数が上記範囲にあると、優れた遮熱性能および透明性、膜剥がれやひび割れの抑制等が実現されうることから好ましい。なお、誘電体多層膜が、複数の高屈折率層および/または低屈折率層を有する場合には、各高屈折率層および/または各低屈折率層はそれぞれ同じものであっても、異なるものであってもよい。
各屈折率層(高屈折率層および低屈折率層)の1層当たりの厚さは、20〜800nmであることが好ましく、50〜500nmであることがより好ましく、50〜350nmであることがさらに好ましい。
ここで、1層あたりの厚さを測定する場合、高屈折率層および低屈折率層の境界において明確な界面を持たず、連続的に組成が変化する場合がある。このような組成が連続的に変化するような界面領域においては、最大屈折率−最小屈折率=Δnとした場合、2層間の最小屈折率+Δn/2の地点を層界面とみなすものとする。
なお、高屈折率層および低屈折率層が屈折率調整剤を含む場合には、当該屈折率調整剤の濃度プロファイルにより上記組成を観察することができる。当該屈折率調整剤の濃度プロファイルは、スパッタ法を用いて表面から深さ方向へエッチングを行い、XPS表面分析装置を用いて、最表面を0nmとして、0.5nm/minの速度でスパッタし、原子組成比を測定することで見ることができる。また、積層膜を切断して、切断面をXPS表面分析装置で原子組成比を測定することで確認してもよい。
XPS表面分析装置は、特に制限されず、いかなる機種も使用することができる。当該XPS表面分析装置としては、例えば、VGサイエンティフィックス社製ESCALAB−200Rを用いることができる。X線アノードにはMgを用い、出力600W(加速電圧15kV、エミッション電流40mA)で測定する。
[粘着層]
本発明に係る光学反射フィルムは、粘着層を有する。この粘着層は、誘電体多層膜の基材とは反対側の面に設けられ、さらに公知の剥離紙またはセパレータがさらに設けられていてもよい。粘着層の構成としては、粘着剤およびポリエーテル変性シリコーン化合物を含むものであれば特に制限されない。
本発明の光学反射フィルムは、窓ガラスに貼り合わせる場合、窓に水を吹き付け、濡れた状態のガラス面に光学反射フィルムの粘着層を合わせる貼り方、いわゆる水貼り法が貼り直し、位置直し等の観点で好適に用いられる。そのため、水が存在する湿潤下では粘着力が弱い粘着剤が好ましく用いられる。
粘着層に用いられる粘着剤は、特に限定されず、公知の粘着剤が使用できる。具体的には、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリビニルブチラール系粘着剤、エチレン−酢酸ビニル系粘着剤などを例示することができる。これらのうち、アクリル系粘着剤が、耐久性、透明性、粘着特性の調整の容易さなどの面から好ましい。
アクリル系粘着剤は、アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、これに極性単量体成分を共重合したアクリル系ポリマーを用いたものである。上記アクリル酸アルキルエステルとはアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルであって、特に限定されるものではない。使用されるアクリル系粘着剤は、溶剤系およびエマルジョン系どちらでもよいが、粘着力等を高め易いことから、溶剤系粘着剤が好ましく、その中でも溶液重合で得られたものが好ましい。このような溶剤系アクリル系粘着剤を溶液重合で製造する場合の原料としては、例えば、骨格となる主モノマーとして、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等のアクリル酸エステル、凝集力を向上させるためのコモノマーとして、酢酸ビニル、アクリルニトリル、スチレン、メチルメタクリレート等、さらに架橋を促進し、安定した粘着力を付与させ、また水の存在下でもある程度の粘着力を保持するために官能基含有モノマーとして、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、ヒドロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。粘着層には、主ポリマーとして、特に高タック性を要するため、ブチルアクリレート等のような低いガラス転移温度(Tg)を有するものが特に有用である。
上記アクリル系粘着剤の市販品としては、たとえば、日本合成化学工業株式会社製コーポニール(登録商標)(例えば、N−2147、5697、5698、5705L)等が挙げられる。
また、粘着層をアクリル系粘着剤で形成する場合には、アクリル系粘着剤の硬化剤を使用することができる。アクリル系粘着剤の硬化剤は、特に制限されないが、例えば、イソシアネート系、エポキシ系、アリジリン系硬化剤が利用できる。イソシアネート系硬化剤では、長期保存後も安定した粘着力を得ることと、より硬い粘着層とする目的で、トルイレンジイソシアネート(TDI)等の芳香族系のタイプを好ましく用いることができる。具体的には、東洋インキ株式会社製BXX5134、東ソー株式会社製コロネート(登録商標)HL等を使用することができる。これらの硬化剤は、単独で使用しても、複数種を併用してもよい。
硬化剤の添加量(固形分換算)は、粘着剤に対して、1〜9質量%であることが好ましく、より好ましくは2〜7質量%である。このような範囲であれば、粘着剤が残りにくく、十分な接着力も確保できる。
(ポリエーテル変性シリコーン化合物)
本発明の光学反射フィルムは、粘着層にポリエーテル変性シリコーン化合物を有する。
ポリエーテル変性シリコーン化合物は、ポリシロキサン化合物のシロキサン結合の一部にポリオキシアルキレン基が導入された化合物であり、ポリオキシアルキレン基がシロキサン骨格の側鎖や末端などの任意の位置に導入された化合物を使用することができるが、ポリオキシアルキレン基が側鎖に導入されたものを用いることが好ましい。
ポリエーテル変性シリコーン化合物としては、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、または、ポリジメチルシロキサンのジメチル基の一つを部分的または全体的に長鎖アルキル基で置換されたポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサンが好ましく用いられうる。これらの具体例としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシドまたはそれらの混合物で変性されたポリジメチルシロキサンが挙げられる。これらのポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンは、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドまたはポリブチレンオキシドの量や混合比率等を適宜、変化させて得られる。
また、ポリオキシアルキレンをポリジメチルシロキサンの側鎖に有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンにおいては、ジメチルポリシロキサンの構造部分と、ポリオキシアルキレン鎖を有する構造とが交互に繰り返し結合した直鎖状のブロックコポリマーであることが好ましい。
ポリエーテル変性シリコーン化合物は、ポリオキシアルキレン基以外に、ポリエステル鎖などの他の有機変性基がさらに導入された化合物であってもよく、このうち、ポリエステル基(ポリエステル鎖)が導入されたポリエーテル−ポリエステル変性シリコーン化合物を用いることが好ましい。ポリエステル鎖の具体的な構造や、ポリエステル鎖を有する構造単位の混合比率は特に制限されない。ポリエーテル−ポリエステル変性シリコーン化合物としては、例えば、ポリエーテル−ポリエステル変性ポリジメチルシロキサンが挙げられる。詳細な機構は不明だが、ポリエステル基を有することで、ポリエーテル変性シリコーン化合物が粘着層の表面により配向しやすくなるものと考えられる。その結果、ガラスなどの基体との摩擦力が低減し、位置調整性がより向上しうると考えられる。
ポリエーテル変性シリコーン化合物は、水酸基を有する水酸基含有ポリエーテル変性シリコーン化合物であってもよい。水酸基含有ポリエーテル変性シリコーン化合物としては、末端にポリエーテル由来の水酸基を含有するものであることが好ましいが、ポリエステル基などの他の有機変性基が導入された化合物の場合、当該有機変性基の末端に反応性基として水酸基を有していてもよい。水酸基含有ポリエーテル変性シリコーン化合物としては、例えば、ポリエーテル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル−ポリエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサンが挙げられる。水酸基を有することで、粘着層がより水分を保持しやすくなり、その結果、ガラスなどの基体との摩擦力が低減し、位置調整性がより向上しうると考えられる。
ポリエーテル変性シリコーン化合物は、市販品を用いてもよく、例えば、ビックケミー・ジャパン株式会社製のBYK−300、BYK−302、BYK−306、BYK−307、BYK−320、BYK−325、BYK−330、BYK−331、BYK−333、BYK−337、BYK−344、BYK−375、BYK−377、BYK−378、BYK−UV3500、BYK−UV3510、信越化学工業株式会社製のKF−945、KF−352A、KF−640、KF−351A、KF−354L、KF−6011、KF−6015、KF−6020、などを挙げることができる。
ポリエーテル変性シリコーン化合物の添加量(固形分換算)は、粘着剤100質量部に対して、好ましくは0.01〜1質量部であり、より好ましくは0.1〜0.5質量部である。ポリエーテル変性シリコーン化合物の含有量が粘着剤100質量部に対して0.01質量部以上であれば、水貼り時に光学反射フィルムの移動が容易になるため、位置調整性に優れる。また、1質量部以下であれば、水貼り時に光学反射フィルムが滑りすぎないので、位置を固定しやすい。また、貼った後の粘着力が確保でき、時間が経ってもフィルムが剥がれにくいため好ましい。
粘着層は、上記粘着剤およびポリエーテル変性シリコーン化合物に加えて、添加剤を含んでもよい。ここで、添加剤としては、特に制限されないが、例えば、安定剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、難燃剤、帯電防止剤、抗酸化剤、熱安定剤、滑剤、充填剤、着色、接着調整剤等が得られる。これらのうち、粘着層は、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。紫外線吸収剤を含む粘着層を誘電体多層膜に対して太陽光の入射側(光入射側)に設けることによって、誘電体多層膜に侵入する太陽光(特に赤外光)吸収量はより低減される。また、本実施形態の光学反射フィルムを窓貼用として使用する場合には、紫外線による光学反射フィルムの劣化を抑制できる。
ここで、紫外線吸収剤としては、特に制限されず、公知の紫外線吸収剤を使用できる。例えば、2,4−ジヒドロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;2−(2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;フェニルサリチレート、2−4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のサリチル酸フェニル系紫外線吸収剤;ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケート等のヒンダードアミン系紫外線吸収剤;2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン等のトリアジン系紫外線吸収剤;等が挙げられる。
なお、紫外線吸収剤は、単独でもまたは2種以上混合して用いてもよい。また、紫外線吸収剤は、合成品を用いてもよいし市販品を用いてもよい。市販品の例としては、例えば、Tinuvin(登録商標)320、Tinuvin(登録商標)328、Tinuvin(登録商標)234、Tinuvin(登録商標)477、Tinuvin(登録商標)1577、Tinuvin(登録商標)622(以上、BASFジャパン株式会社製)、アデカスタブ(登録商標)LA−31(以上、株式会社アデカ製)、SEESORB(登録商標)102、SEESORB(登録商標)103、SEESORB(登録商標)501(以上、シプロ化成株式会社製)などが挙げられる。
紫外線吸収剤の添加量(固形分換算)は、粘着剤に対して、0.1〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%である。このような範囲であれば、誘電体多層膜の太陽光吸収量をより有効に低減できる。
また、粘着層の厚さは、0.5〜30μmであることが好ましく、1〜30μmであることがより好ましく、5〜10μmであることがさらに好ましい。粘着層の厚さは、粘着力(水貼りの場合は、特に乾燥した後の粘着力)に影響しうる。粘着層の厚さが30μm以下であれば、粘着力が強くなりすぎず、貼りなおす際に、溶剤などを用いることなく容易に剥がすことができる。また、剥がした後に粘着剤が基体側に残りにくい。そのため、基体にダメージを与えることがなく、容易に位置調整ができるため好ましい。また、粘着層の厚さが0.5μm以上であれば、貼った後の粘着力が十分に高くなり、経時で光学反射フィルムが剥がれてしまうことを防止できるため好ましい。
誘電体多層膜への粘着層の形成方法としては、特に制限されないが、誘電体多層膜とは別に、剥離フィルム(剥離層)として利用可能なセパレータ上に粘着層形成塗布液を塗布し乾燥させて粘着層を形成した後、粘着層と誘電体多層膜とを貼り合わせる方法が好ましい。粘着層形成塗布液の塗工方法としては、特に制限されず、任意の公知の方法が使用でき、例えば、バーコート法、ダイコーター法、コンマコーティング法、グラビアロールコーター法、ブレードコーター法、スプレーコーター法、エアーナイフコート法、ディップコート法、転写法等が好ましく挙げられ、単独または組合せて用いることができるが、ロール式で連続的に行うのが経済性及び生産性の点から好ましい。粘着層形成塗布液に用いられる溶剤は、粘着層を構成する各成分を溶解できるものであればよく、公知のものを使用することができる。粘着層形成塗布液を塗工した後の乾燥温度は、残留溶剤ができるだけ少なくなることが好ましく、50〜150℃の温度で、10秒〜5分の乾燥時間を設けることが好ましい。
この際用いられるセパレータとしては、例えば、シリコーンコート離型PETフィルム、シリコーンコートPEフィルム等が挙げられる。セパレータ上への粘着層形成塗布液の塗布方法は、特に制限されず、ワイヤーバーによるコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング等により塗布液を塗布し製膜する方法が挙げられ、また、ダイコーター、グラビアコーター、コンマコーターなどの連続塗布装置でも塗布、製膜することが可能である。
本実施形態の光学反射フィルムの粘着力は、JIS K6854(1999)記載の180°剥離試験にて測定した剥離強度が4〜30N/25mmであることが好ましく、4〜20N/25mmであることがより好ましい。
[ハードコート層]
本発明の光学反射フィルムは、耐擦過性を高めるための表面保護層として、熱や紫外線などで硬化する樹脂を含むハードコート層を積層してもよい。例えば、基材表面に誘電体多層膜、粘着層の順に積層し、さらにこれらの層が積層されている側とは逆の側の基材表面にハードコート層を塗設する形態が好ましい一例として挙げられる。
ハードコート層で使用される硬化樹脂としては、熱硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂が挙げられるが、成形が容易なことから、紫外線硬化性樹脂が好ましく、その中でも鉛筆硬度が少なくとも2Hのものがより好ましい。かような硬化性樹脂は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化性ウレタンアクリレート樹脂、紫外線硬化性ポリエステルアクリレート樹脂、紫外線硬化性エポキシアクリレート樹脂、紫外線硬化性ポリオールアクリレート樹脂、紫外線硬化性アクリルアクリレート樹脂、または紫外線硬化性エポキシ樹脂等が好ましく用いられる。このうち、熱線吸収層が、紫外線硬化性ウレタンアクリレート樹脂、紫外線硬化性ポリエステルアクリレート樹脂、紫外線硬化性エポキシアクリレート樹脂、紫外線硬化性ポリオールアクリレート樹脂、または紫外線硬化性アクリルアクリレート樹脂から選択されるアクリレート樹脂を含有することがさらに好ましい。
紫外線硬化性ウレタンアクリレート樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、またはプレポリマーを反応させて得られた生成物にさらに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下、アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることができる。例えば、特開昭59−151110号公報に記載のユニディック(登録商標)17−806(DIC株式会社製)100質量部とコロネート(登録商標)L(東ソー株式会社製)1質量部との混合物等が好ましく用いられる。
紫外線硬化性ポリエステルアクリレート樹脂は、一般にポリエステル末端の水酸基やカルボキシル基に2−ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、アクリル酸のようなモノマーを反応させることによって容易に得ることができる(例えば、特開昭59−151112号公報)。
紫外線硬化性エポキシアクリレート樹脂は、エポキシ樹脂の末端の水酸基にアクリル酸、アクリル酸クロライド、グリシジルアクリレートのようなモノマーを反応させて得られる。
紫外線硬化性ポリオールアクリレート樹脂としては、例えば、エチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等のモノマーの1種または2種以上を硬化させて得られる樹脂を挙げることができる。例えば、紫外線硬化性ポリオールアクリレート樹脂の重合性成分である(メタ)アクリレート系化合物として、アロニックス(登録商標)M−405(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート=10〜20:90〜80(質量比)の混合物(東亞合成株式会社製)等が好ましく用いられる。
ハードコート層中、上記紫外線硬化性樹脂の含有量は、ハードコート層の全固形分に対して、好ましくは20〜70質量%であり、より好ましくは30〜60質量%である。このような量であれば、製膜性が良く遮熱性も確保できる。
さらにまた、これらの樹脂の光増感剤(ラジカル重合開始剤)として、ベンゾイン、べンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のべンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:イルガキュア(登録商標)184、BASF社製)等のアセトフェノン類;メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン等のアントラキノン類;チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、4,4−ビスメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド(商品名:Irgacure(登録商標)819、BASFジャパン株式会社製)等のアシルホスフィンオキサイド類;およびアゾ化合物等を用いることができる。これらは単独でもまたは2種以上組み合わせても使用することができる。加えて、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン等の第3級アミン;2−ジメチルアミノエチル安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル等の安息香酸誘導体等の光開始助剤等と組み合わせて使用することができる。これらラジカル重合開始剤の使用量は、樹脂の重合性成分100質量部に対して好ましくは0.5〜20質量部、より好ましくは1〜15質量部である。
ハードコート層形成に用いられる紫外線硬化性樹脂の市販品の例としては、上記の他に、例えば、ユニディック(登録商標)シリーズ(DIC株式会社)(例えば、ユニディック(登録商標)V−4018、ユニディック(登録商標)V−4025、ユニディック(登録商標)17−806、ユニディック(登録商標)17−824−9)、ヒタロイド(登録商標)シリーズ(日立化成株式会社製)、紫光(登録商標)シリーズ(日本合成化学工業株式会社製)、ビームセット(登録商標)シリーズ(荒川化学工業株式会社)(例えば、ビームセット(登録商標)575、ビームセット(登録商標)577)、ETERMER2382(ETERNAL CHEMICAL社製)、EBECRYL(登録商標)350(シリコンジアクリレート、ダイセル・オルネクス株式会社製)等を挙げることができる。
(近赤外線吸収材料)
ハードコート層は、近赤外線吸収材料として熱線吸収能に優れるタングステン酸化物や複合タングステン酸化物、特には、赤外線吸収材料としての光学特性及び耐候性向上効果の観点から、セシウム含有酸化タングステンを含むことが好ましい。
複合タングステン酸化物の1種であるセシウム含有酸化タングステンの組成は、特に制限されないが、安定性の観点から、一般式:Csで表される酸化物であることが好ましく、特開2013−64042号公報や特開2010−215451号公報に記載されるのと同様のものが使用できる。上記一般式中、Csは、セシウムを表す。Wは、タングステンを表わす。Oは、酸素を表わす。x、y及びzは、タングステンとセシウムとの組成(タングステンに対するセシウムの組成、x/y)が0.001≦x/y≦1の関係を満たし、タングステンと酸素との組成(タングステンに対する酸素の組成、z/y)が2.2≦z/y≦3の関係を満たすことが好ましい。
セシウム含有酸化タングステンの形状は、特に制限されず、粒子状、球状、棒状、針状、板状、柱状、不定形状、燐片状、紡錘状など任意の構造をとりうるが、好ましくは粒子状である。また、セシウム含有酸化タングステンの大きさも特に制限されないが、セシウム含有酸化タングステンが粒子状である場合には、セシウム含有酸化タングステン粒子の平均粒径(平均一次粒径)は、可視光の反射を抑制しつつ、熱線吸収効果を確保できること、また散乱によるヘイズの劣化が生じず、透明性を確保できることから、5〜200nmであることが好ましく、10〜100nmであることがより好ましい。上記平均粒径は、粒子そのものあるいは屈折率層の断面や表面に現れた粒子を電子顕微鏡で観察し、1,000個の任意の粒子の粒径を測定し、その単純平均値(個数平均)として求められる。ここで個々の粒子の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定したときの直径で表したものである。
また、ハードコート層中、セシウム含有酸化タングステンの含有量は、ハードコート層の全固形分に対して、好ましくは10〜80質量%であり、より好ましくは20〜70質量%である。このような量であれば、十分熱線を吸収できるため、赤外遮蔽フィルムとして用いた場合の遮熱性能をより良くすることができる。
上記したようなセシウム含有酸化タングステンは、例えば、セシウムドープト酸化タングステン分散液(YMF−02A、全固形分濃度28質量%(セシウムドープト酸化タングステン濃度18.5質量%)、組成:Cs0.33WO、平均粒子径50nm、住友金属鉱山株式会社製)等を用いることができる。
このハードコート層には、添加剤として、例えば安定剤、界面活性剤、上記タングステン酸化物や複合タングステン酸化物以外の赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、抗酸化剤、熱安定剤、滑剤、充填剤、着色剤、色素、接着調整剤等を含有させることもできる。
ハードコート層の厚みは、ハードコート性の向上と、光学反射フィルムの透明性の向上という観点から、0.1〜50μmが好ましく、1〜20μmがより好ましい。
ハードコート層の形成方法は特に制限されず、例えば、上記各成分を含むハードコート層塗布液を調製した後、塗布液をワイヤーバー等により塗布し、熱および/またはUVで塗布液を硬化させ、ハードコート層を形成する方法などが挙げられる。紫外線硬化性樹脂を含む場合の成膜条件は、例えば、紫外線ランプを用いる場合、その照度は50〜1500mW/cmが好ましく、照射エネルギー量は50〜1500mJ/cmが好ましい。
ハードコート層塗布液に用いる溶媒は、特に制限されず、例えば、炭化水素類(例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等)、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール等)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン等)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン等)、グリコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシブタノール、3−メトキシ−3−メチルブタノール、3−メトキシ−3−メチルブチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、1−エトキシ−2−プロパノール、1−プロポキシ−2−プロパノール、3−メトキシブチルアセテート、3−エトキシプロピオン酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート等)、エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸メチル等)、その他の有機溶媒の中から適宜選択し、またはこれらを混合し利用できる。
ハードコート層塗布液は、界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤を含むハードコート層塗布液により塗膜が形成されると、レベリング性の高い塗膜となるため、残存溶媒量が部分的に多い箇所や少ない箇所が形成されることを防止し、基材との密着性が向上しうる。また、ハードコート層に、撥水性、滑り性等を付与することができる。界面活性剤の種類として、特に制限はなく、フッ素系界面活性剤、アクリル系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等を用いることができる。特に塗布液のレベリング性、撥水性、滑り性という観点で、フッ素系界面活性剤を用いることが好ましい。フッ素系界面活性剤の例としては、例えば、DIC株式会社製のメガファック(登録商標)Fシリーズ(F−430、F−477、F−552〜F−559、F−561、F−562等)、DIC株式会社製のメガファック(登録商標)RSシリーズ(RS−76−E等)、AGCセイミケミカル株式会社製のサーフロン(登録商標)シリーズ、OMNOVA SOLUTIONS社製のPOLYFOXシリーズ、株式会社T&K TOKAのZXシリーズ、ダイキン工業株式会社製のオプツール(登録商標)シリーズ、株式会社ネオス製のフタージェント(登録商標)シリーズ(602A、650A等)等の市販品を使用することができる。アクリル系界面活性剤としては、ポリフローシリーズ(共栄社化学株式会社製)、ニューコールシリーズ(日本乳化剤株式会社製)、BYK(登録商標)−354(ビックケミー・ジャパン社製)が挙げられる。シリコーン系界面活性剤としては、BYK(登録商標)−345、BYK(登録商標)−347、BYK(登録商標)−348、BYK(登録商標)−349(ビックケミー・ジャパン社製)が挙げられる。界面活性剤は、単独でもまたは2種以上混合して用いてもよい。界面活性剤の量は特に制限されないが、ハードコート層の乾燥質量当たり0.01〜5質量%であることが好ましい。
[その他の層]
本発明に係る光学反射フィルムは、さらなる機能の付加を目的として、各層間や基材と各層との間に、導電性層、帯電防止層、ガスバリア層、易接着層(接着層)、防汚層、消臭層、流滴層、易滑層、耐摩耗性層、反射防止層、電磁波シールド層、紫外線吸収層、赤外吸収層、印刷層、蛍光発光層、ホログラム層、剥離層、上記高屈折率層および低屈折率層以外の赤外線カット層(金属層、液晶層)、着色層(可視光線吸収層)などの機能層の1つ以上を有していてもよい。
<光学反射体>
本発明の光学反射フィルムは、幅広い分野に応用することができる。よって、本発明の一実施形態は、上記の光学反射フィルムが、基体の少なくとも一方の面に設けられてなる光学反射体である。例えば、建物の屋外の窓や自動車の窓等、長期間太陽光に晒らされる基体に貼り合せ、熱線反射効果を付与する熱線反射フィルム等のウインドウフィルム等として、主として耐候性を高める目的で用いられる。本発明に係る光学反射フィルムは、粘着層を介してガラスもしくはガラス代替樹脂等の基体に貼合される。
[基体]
本実施形態の光学反射フィルムは、基体に貼付されて用いられうる。本発明の光学反射フィルムは、窓ガラスなどの室内側に貼る(内貼り)仕様でもよく、窓の外側に貼る(外貼り)仕様でもよい。
基体への貼付方法は特に限定されないが、基体としてガラスを用いる場合、濡れた状態のガラス面に光学反射フィルムの粘着層を合わせる貼り方、いわゆる水貼り法が用いられることが好ましい。すなわち、基体への貼付方法は、基体を水系媒体で濡らす工程と、光学反射フィルムを基体上に配置し、基体と反対側のフィルム表面を押擦して、基体上の水系媒体を除去する工程と、を有することが好ましい。
用いられる水系媒体としては特に限定されないが、水、または水および界面活性剤を含む溶液(または懸濁液)であることが好ましい。用いられる界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤などを用いることができる。
水系媒体中に用いられる界面活性剤の含有量は、水系媒体100質量%に対して通常0.1〜10質量%程度である。
基体を水系媒体で濡らす方法としては特に限定されず、噴霧器などを用いて貼付箇所前面に水系媒体を噴霧する方法などが挙げられる。
その後、水系媒体が基体上に残存している間に貼付位置を定め、フィルムを基体上に配置する。
基体と反対側のフィルム表面(フィルム最表層)を押擦する際に用いる部材の材質としてはゴムであることが好ましく、例えば、ウレタン、シリコン、ラテックス、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、およびこれらの組み合わせから構成されるゴムであることがより好ましい。部材としては、スキージー、ローラーなどが挙げられる。
本実施形態の光学反射フィルムは樹脂を含む誘電体多層膜を有しているため、車両の窓、例えば、自動車の窓などの曲面形状を有する貼付対象物(基体)に貼付するウインドウフィルムとして用いられることが好ましい。かような曲面形状を有する基体、特に曲率半径が2000mm未満の曲面形状を有する基体の場合、平面の基体に比べて光学反射フィルムの位置合わせに時間がかかったり、繰り返し行う必要が生じる場合があるため、本発明の効果がより顕著に得られうる。曲率半径の下限は特に限定されるものではないが、成形性などの観点から、通常50mm以上である。
貼付対象物である基体としては、特に制限されないが、ガラスであることが好ましい。ガラスとしては、無機ガラスおよび有機ガラスが挙げられる。無機ガラスとしては、特に限定されないが、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、線入り板ガラス、熱線吸収板ガラス、着色板ガラスなどの各種無機ガラスなどが挙げられる。
また、有機ガラスとしては、ポリカーボネート類、ポリスチレン類、ポリメチルメタクリレート類等の樹脂からなるガラス板などが挙げられる。これらの有機ガラス板は、上記樹脂からなるシート形状のものを複数積層してなる積層体であってもよい。色についても、透明ガラス板に限らず車両等に用いられる汎用の緑色、茶色、青色等の様々な色のガラス板を用いることができる。
ガラスの厚さは、強度および可視光域の赤外光の透過性を考慮して、1〜10mm程度であることが好ましい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。なお、実施例において「部」または「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」または「質量%」を表す。また、特記しない限り、各操作は、室温(25℃)で行われる。
≪光学反射フィルムの作製≫
[実施例1]
〈高屈折率層塗布液1の調製〉
30質量%のジルコニアゾル(SZR−W、粒度分布:D50 3〜5nm、堺工業株式会社製)384.8gに対してクエン酸(1.9質量%水溶液)を175.4g加えた。ここに界面活性剤の5質量%水溶液としてソフタゾリン(登録商標)LMEB−R(川研ファインケミカル株式会社製)を1.94g添加し、これを40℃まで加温した。さらに、ポリビニルアルコールの8質量%水溶液(エクセバール(登録商標)RS−2117、平均重合度1700、鹸化度97.5〜99.0モル%、株式会社クラレ製)を120.4g加え、さらに純水9.9gを加えた。10分撹拌後、ポリビニルアルコールの6質量%水溶液(JC−40、平均重合度4000、鹸化度99.0モル%以上、日本酢ビ・ポバール株式会社製)240.8gと純水66.7gとを加えた。この後、40℃で撹拌し、高屈折率層塗布液1を得た。上記高屈折率層塗布液1を塗布して作製した単層の屈折率は1.73であった。なお、屈折率の測定方法は下記の通りである(以下同様)。
〈各層の単膜屈折率の測定〉
屈折率を測定するため、基材上に上記高屈折率層塗布液1を単層で塗布したサンプルを作製し、このサンプルを10cm×10cmに裁断した後、下記の方法に従って屈折率を求めた。株式会社日立ハイテクサイエンス製の分光光度計 U−4100(固体試料測定システム)を用いて、各サンプルの測定面とは反対側の面(裏面)を粗面化処理した後、黒色のスプレーで光吸収処理を行って裏面での光の反射を防止して、5°正反射の条件にて可視光領域(400nm〜700nm)の反射率の測定を行い、結果より屈折率を求めた。
〈低屈折率層塗布液1の調製〉
撹拌容器にカチオンポリマーとしてメチルジアリルアミン塩酸塩重合体(3級アミノ基を含む)(PAS M−1、重量平均分子量20,000、50質量%水溶液、ニットーボーメディカル株式会社製)4.0gおよびジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体(4級アンモニウム基を含む)(PAS H−5、重量平均分子量30,000、28質量%水溶液、ニットーボーメディカル株式会社製)4.9gと、ゆすぎ水47.0gと、ほう酸(3質量%水溶液)31.9gとを混合した。ここに酸性コロイダルシリカの10質量%水溶液(ST−OXS、平均一次粒子径:4〜6nm、日産化学工業株式会社製)を490.0g加えた。これを撹拌しながら40℃まで加温した。ここに、ポリビニルアルコールの8質量%水溶液(JP−45、平均重合度4500、鹸化度:88モル%、日本酢ビ・ポバール株式会社製)369.0g、エマルジョン樹脂(スーパーフレックス(登録商標)650、第一工業製薬株式会社製)30.3g、および5質量%の界面活性剤の溶液(ソフタゾリン(登録商標)LMEB−R、川研ファインケミカル株式会社製)12.7g、および純水9.8gの混合液を加え、40℃で撹拌して混合し、低屈折率層塗布液1を得た。低屈折率層塗布液1を塗布して作製した単層の屈折率は1.48であった。
〈誘電体多層膜の調製〉
21層重層塗布可能なスライドビート(スライドホッパー)塗布装置を用いて、上記で調製した高屈折率層塗布液1および低屈折率層塗布液1を、40℃に保温しながら、基材である厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社製A4300:両面易接着層)上に積層した。このとき、最下層および最上層(最表層)は低屈折率層とし、それ以外は低屈折率層と高屈折率層とがそれぞれ交互になるように、計21層の同時重層塗布を行った。この際、乾燥時の膜厚は、低屈折率層の各層が150nm、高屈折率層の各層が130nmになるように調整した。塗布直後、5℃の冷風を吹き付けて増粘させた。増粘後、80℃の温風を吹き付けて乾燥させて、計21層からなる誘電体多層膜を作製した。
[粘着層の形成]
次いで、基材上に積層された誘電体多層膜の基材と反対側の表面上に、粘着層を形成した。具体的には、下記粘着層形成塗布液をセパレータである中本パックス株式会社製セパレータ NS23MAのシリコーン離型面に対して、コンマコーターにて乾燥膜厚が8μmになるように塗工し、90℃、1分間乾燥して粘着層を形成した。この粘着層に、上記にて作製した誘電体多層膜を貼り合わせ、誘電体多層膜上に粘着層を形成した。
粘着層形成塗布液の調製
アクリル系粘着剤であるコーポニール(登録商標)N−2147(固形分35質量%、酢酸エチル溶媒、日本合成化学工業株式会社製)100質量部、ポリエーテル変性シリコーン化合物としてポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンであるBYK−333(固形分97質量%、ビックケミー・ジャパン株式会社製)0.195質量部、紫外線吸収剤としてTINUVIN(登録商標)477(固形分80質量%、BASFジャパン株式会社製)2.1質量部、およびイソシアネート系硬化剤としてコロネート(登録商標)HL(固形分75質量%、東ソー株式会社製)1.0質量部を混合して粘着層形成塗布液を作製した。
[ハードコート層の形成]
次に、上述の方法で粘着層を貼り合わせたフィルムの基材の他方の面に、下記の方法で調製したハードコート層塗布液を、グラビアコーターで塗布し、恒率乾燥区間温度50℃、減率乾燥区間温度90℃で乾燥の後、紫外線ランプを用いて、照度100mW/cm、照射量0.2J/cm、酸素濃度200体積ppmの条件で塗膜の基材から遠い面側から紫外線を照射することにより塗膜を硬化させ、乾燥膜厚が6μmになるようにハードコート層を形成した。
ハードコート層塗布液の調製
紫外線硬化性樹脂として、アロニックス(登録商標)M−405(東亞合成株式会社製)390質量部と、EBECRYL(登録商標)350(ダイセル・オルニクス株式会社製)0.4質量部とを混合し、セシウム含有酸化タングステンとしてセシウムドープトタングステン分散液YMF−02A(全固形分濃度28質量%、セシウムドープト酸化タングステン粒子の濃度18.5質量%、組成:Cs0.33WO、住友金属鉱山株式会社製)650質量部、溶媒としてメチルエチルケトン300質量部を加えた。さらに、重合開始剤としてIrgacure(登録商標)819(BASFジャパン株式会社製)20質量部、フッ素系界面活性剤であるフタージェント(登録商標)650A(株式会社ネオス製)0.5質量部を添加して、ハードコート層塗布液を調製した。
以上のようにして、ハードコート層、基材、誘電体多層膜、粘着層がこの順で積層されてなる光学反射フィルム1を得た。
[実施例2〜12、比較例1〜4]
上記実施例1において、粘着層に添加するポリエーテル変性シリコーン化合物の種類および添加量と、粘着層の厚さとを下記表1に示すように変更したことを除いては、実施例1と同様にして、光学反射フィルムを作製した。表1中、ポリエーテル変性シリコーン化合物の添加量は、粘着剤100質量%に対する質量%(固形分換算)を表す。
≪評価≫
<WET摩擦力>
市販のベビーシャンプーの0.5体積%の水溶液を作製し、施工液とした。厚さ3mm、幅50mm、長さ120mmの青板ガラス上に上記施工液をスポイトで1ml滴下し、ガラス上で広げた。次いで、実施例1〜12、比較例1〜4で作製した光学反射フィルムの試料をそれぞれ幅50mm、長さ120mmに裁断して上記で作製した施工液に1分間浸漬した後、上記の施工液を滴下したガラスの上に載せ、さらにその上に荷重50gの分銅を載せて40秒間放置した。その後、横方向(長さ方向)に速度600mm/minで引っ張るときに必要な力を日本電産シンポ社製デジタルフォースゲージで測定し、ガラスに対する試料のWET摩擦力(N/50mm)とした。4.5N/50mm以下であれば実用上問題ないといえる。
<位置調整性>
縦1800mm×横900mm×厚さ3mmの車用ガラス窓に、実施例1〜12、比較例1〜4で作製した光学反射フィルムを室内側から貼り付けた。
具体的には、まず、内側に最大曲率半径400mmの三次元に湾曲したガラス窓の外側に、実施例1〜12、比較例1〜4で作製した光学反射フィルム(縦2000mm×横1000mm)を、セパレータ側を上にして置き、300℃のヒートガンで熱風を当ててガラスの形状に沿うように熱成型した。
次に、前記ガラスの大きさに合わせて切り取ったあと、上記ガラス窓の内側に、施工液を適量噴霧すると共に、上記熱成型した光学反射フィルムのセパレータを剥がし、粘着層表面に施工液を適量噴霧した。次いで、光学反射フィルムをガラス窓に沿わせ、光学反射フィルムがガラス窓上をスライドできている間に、貼り付けたいエリアにフィルムを手で動かして位置決めをした。位置が決まった後、端部の数箇所を強く押し当てて光学反射フィルムのスライドを止め、中央部から端部に向かって、スキージーを使って貼り付けた。このときの位置決めのしやすさを官能評価した。○、○△、△は実用上問題ないと判断した。
○:フィルムを手で動かしている際に、特に抵抗なく位置調整できる、
○△:若干抵抗があるが、力をかければ問題なく位置調整できる、
△:抵抗があり、位置を動かすのにかなりの力が必要となるが、フィルム自体は折れ等なく位置調整できる、
△×:抵抗が大きく位置調整時にフィルム折れが生じる、
×:フィルムが直ぐ貼りついてしまい移動不可で位置調整できない。
<DRY粘着力>
上記で作製した実施例1〜12、比較例1〜4の光学反射フィルムの各試料の塗布方向に25mm幅の短冊を作製した。長さ方向にサンプルを切り出した。サンプルの長さは250mmであった。この短冊の粘着層の側を、JIS Z0237:2009に規定される圧着ローラーで1往復して厚さ3mmの青板ガラスに貼り付けた。これを23℃55%RHの温湿度下に3日間保存した後、JIS S3107:2013に準じて、ガラス板から180°方向に引き剥がすのに要する力を測定し、DRY粘着力(N/25mm)とした。4.0N/25mm以上であれば実用上問題ないといえる。
<近赤外反射率の測定>
分光光度計としてU−4000型(積分球使用、株式会社日立製作所製)を用いて、各実施例および比較例の光学反射フィルムの波長800〜1400nmの領域における反射率を測定し、その最大値を求め、これを近赤外反射率とした。各実施例、比較例のいずれの光学反射フィルムにおいても、70%以上の良好な近赤外反射率が得られることが確認された。
結果を下記の表1に示す。
上記表1の結果から、水溶性樹脂を含む誘電体多層膜を有する光学反射フィルムにおいて、粘着層にポリエーテル変性シリコーン化合物を含む実施例1〜12の光学反射フィルムは、比較例1〜4の光学反射フィルムと比較して、位置調整性に優れることが明らかになった。
また、実施例2〜7を比較すると、ポリエーテル変性シリコーン化合物の含有量が粘着剤100質量部に対して0.01〜1質量部である、実施例2〜6の光学反射フィルムは、水貼りの際の位置調整性が良好であると同時に、貼った後の粘着力がより高く、保存後も剥がれにくい。実施例8〜11を比較すると、粘着層の厚さが1〜30μmである実施例8〜10の光学反射フィルムは、水貼りの際の位置調整性が良好であると同時に、貼った後の粘着力がより高く、保存後も剥がれにくいことがわかった。

Claims (3)

  1. 基材と、
    前記基材の一方の面上に配置された、低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層されてなる誘電体多層膜と、
    前記誘電体多層膜の前記基材と反対側の面上に設けられる粘着層と、
    を有し、
    前記低屈折率層および前記高屈折率層のうち少なくとも1層は、水溶性樹脂を含み、
    前記粘着層は、粘着剤と、ポリエーテル変性シリコーン化合物とを含む、光学反射フィルム。
  2. 前記ポリエーテル変性シリコーン化合物の添加量は、前記粘着剤100質量部に対して、0.01〜1質量部である、請求項1に記載の光学反射フィルム。
  3. 前記粘着層の厚さが、1〜30μmである、請求項1または2に記載の光学反射フィルム。
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