JP2018091305A - エンジンの摩擦異常検出装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】摩擦平均有効圧に基づくエンジンの正常性判定の精度を向上し、エンジンを安全に制御することが可能なエンジンの摩擦異常検出装置を提供する。【解決手段】エンジンの摩擦異常検出装置は、エンジンの運転状態に基づいて算出される実際の実摩擦平均有効圧と標準の標準摩擦平均有効圧との差異が所定の閾値を超えるか否かを判定し、差異が閾値を超えた場合を異常状態として検出する摩擦異常検出部と、摩擦異常検出部が異常状態を検出した場合、かつ、実摩擦平均有効圧が標準摩擦平均有効圧よりも大きい場合に、エンジンの出力を低下させると共に出力を所定の上限出力以下に制限するための出力制限を実行する出力制限部と、を備える。【選択図】図1

Description

本開示は、エンジンの摩擦平均有効圧に基づいてエンジンの異常状態を検出するエンジンの摩擦異常検出装置に関する。
通常、エンジンは、往復運動するピストンとシリンダの間の摩擦など、エンジンの駆動部における摩擦を軽減するために、エンジンの各部にエンジンオイル(潤滑油)を循環させる潤滑装置を備えている。潤滑装置は、オイルパンに蓄えられたエンジンオイルをポンプにより吸い上げて、オイルギャラリーを介してエンジンの各部に供給する。エンジンの各部に供給されたエンジンオイルは重力により落下するなどしてオイルパンに戻る。これが繰り返されることで、潤滑装置はエンジンオイルをエンジン内で循環させる。こうしたエンジンオイルは、エンジン部品の表面に油膜を作ることで摩擦を軽減するといった潤滑作用を発揮する他、燃焼によって高温となる部分に直接触れることよって熱を奪う冷却作用や、燃焼、膨張行程において各部に生じる衝撃を緩衝する緩衝作用など、様々な役割を担っている。このため、何らかの原因によってエンジンが異常な状態になるなどして、例えばピストンや、クランクシャフト、コンロッドといった駆動部品に適切な量の潤滑油が存在しない状態が生じると(過熱状態)、上述した潤滑作用等が損なわれ、摩擦熱による過熱で駆動部品が溶けて部品同士が固着するなど、エンジンに重大な損傷が生じるおそれある。
ところで、上述したようなエンジンの過熱状態は、その熱によってエンジン部品と直接接触するエンジンオイルの温度も上昇するため、例えばオイルパンのエンジンオイルの温度(油温)をセンサなどで計測することによって検出することが可能である。例えば、特許文献1では、冷却水温度、潤滑油温度、給気温度または燃料温度の少なくともいずれか一つの要素が各々の設定値以上であることを所定時間継続して検知した場合、エンジンのオーバヒートの防止のために負荷抑制が必要と判断し、エンジンの出力を所定値以下に制限する。また、上記の設定値以上であることを検知した要素の温度が出力制限状態で設定値以下であることを検知した場合、段階的に制限前の出力に復帰させている。
一方、特許文献2には、摩擦平均有効圧力を用いてエンジンの運転状態を判定して、エンジンの異常時にはエンジンを安全に制御することができるエンジンの制御システムが開示されている。摩擦平均有効圧力は、エンジンが動作する時にピストンとシリンダなどで発生する摩擦力をピストンに作用する燃焼圧力に換算することにより、摩擦によって生じる燃焼圧力の損失程度を表わすものである。より具体的には、特許文献2に開示されているエンジンの制御システムは、エンジンにおける第1の摩擦平均有効圧力(実摩擦平均有効圧力)をエンジン回転数、燃焼圧力、ひずみ量(正味平均有効圧力)に基づいて算出するための算出手段と、標準の摩擦平均有効圧力である第2の摩擦平均有効圧力(標準摩擦平均有効圧力)をエンジン回転数およびひずみ量(正味平均有効圧力)を用いて算出可能なマップに基づいて算定するための算定手段と、実摩擦平均有効圧力と標準摩擦平均有効圧力とに基づいてエンジンの運転状態を判定するための判定手段と、判定手段による判定の結果、エンジンの運転状態が異常であると判定された場合には、異常の度合いが進まないようにエンジンを制御するための制御手段と、を含むことが開示されている。
特開2011−163149号公報 特開2006−46108号公報
しかしながら、特許文献1のように、潤滑油温度などに基づいてエンジンの異常状態(過熱状態)を判定する方法では、エンジンが過熱状態となってから、その判定が可能となる程度まで潤滑油温度などが上昇するまでにタイムラグがあることから、過熱状態の迅速な検出に限界がある。また、潤滑油温度などは外気温によっても左右されるため、過熱状態の検出精度に影響を与える要因を考慮する必要がある。一方、摩擦平均有効圧は1燃焼サイクル毎に算出可能であるため、過熱状態の迅速な検出が可能と考えられる。ところが、特許文献1は、エンジンの運転状態の正常、異常の判定を実摩擦平均有効圧力と標準摩擦平均有効圧力とが一致するか否かで判定するため、センサの誤差などの何らかの原因で不一致になった場合には、実際にはエンジンの運転状態が正常状態であるにもかかわらず、異常状態であるとの誤判定が生じるおそれがある。
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、摩擦平均有効圧に基づくエンジンの正常性判定の精度を向上し、エンジンを安全に制御することが可能なエンジンの摩擦異常検出装置を提供することを目的とする。
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係るエンジンの摩擦異常検出装置は、
エンジンの運転状態に基づいて算出される実際の実摩擦平均有効圧と標準の標準摩擦平均有効圧との差異が所定の閾値を超えるか否かを判定し、前記差異が前記閾値を超えた場合を異常状態として検出する摩擦異常検出部と、
前記摩擦異常検出部が前記異常状態を検出した場合、かつ、前記実摩擦平均有効圧が前記標準摩擦平均有効圧よりも大きい場合に、前記エンジンの出力を低下させると共に前記出力を所定の上限出力以下に制限するための出力制限を実行する出力制限部と、を備える。
通常、エンジンの運転状態が実際には正常であったとしても、例えば摩擦平均有効圧を算出する際のセンサの検出誤差などによって、エンジンの運転状態に基づいて算出された標準摩擦平均有効圧と実摩擦平均有効圧とには不可避的に差異が生じる場合がある。
上記(1)の構成によれば、エンジンの運転状態に基づいてそれぞれ算出される実摩擦平均有効圧と標準摩擦平均有効圧との差異と、閾値との差異に基づいてエンジンの運転状態の正常性が判定されると共に、上記の異常状態を検出した場合にはエンジンの出力制限が実行される。したがって、例えば、エンジンの運転状態が正常である場合においても不可避的に生じる差異を考慮して閾値を設定することにより、エンジンの上記の異常状態(過熱状態)の判定精度を向上することができる。また、上記の異常状態を検出した場合に実行するエンジンの出力制限によって、エンジンの運転を継続可能としつつ、エンジンの温度の低下が図れる。これによって、エンジンの過熱状態が継続されるのを回避し、エンジンに重大な故障が生じるのを防止することができ、エンジンを安全に制御することができる。
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記摩擦異常検出部は、
前記標準摩擦平均有効圧を、前記エンジンの最大の筒内圧力である最大筒内圧力と前記エンジンのエンジン回転数とに基づいて算出すると共に、
前記実摩擦平均有効圧を、前記筒内圧力に基づいて算出するよう構成される。
上記(2)の構成によれば、摩擦異常検出装置は、標準摩擦平均有効圧および実摩擦平均有効圧の算出の両方を、筒内圧力を用いて行うよう構成される。また、摩擦異常検出装置は、最大筒内圧力とエンジン回転数と標準摩擦平均有効圧との関係を例えば試験を通して予め取得するなどすることで、この関係を用いて、最大筒内圧力とエンジン回転数とに基づいて標準摩擦平均有効圧を算出するよう構成される。これによって、摩擦異常検出装置は、シリンダの筒内圧力を検出可能な筒内圧検出手段(筒内圧センサなど)を利用することによって、特許文献2のようにひずみ量を計測することなく、異常状態の判定を行うことができると共に、標準摩擦平均有効圧をより簡易に迅速に算出することができる。また、ひずみゲージといったひずみ量を検出可能なひずみ量検出手段をエンジンに設ける必要がないため、コストを抑制することもできる。
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、
前記摩擦異常検出部は、前記エンジン回転数および前記筒内圧力を変数として前記標準摩擦平均有効圧を算出可能な関数を有し、前記関数を用いて前記標準摩擦平均有効圧を算出するよう構成される。
上記(3)の構成によれば、関数を用いて、エンジン回転数および前記筒内圧力から標準摩擦平均有効圧を算出(演算)するよう構成することにより、メモリ使用量の節約や処理の高速化を図ることができると共に、コストを低減することができる。
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(3)の構成において、
前記閾値は、前記エンジンの運転状態が正常である場合の試験データにおける前記標準摩擦平均有効圧からの前記実摩擦平均有効圧のばらつき度合に基づいて設定される。
上記(4)の構成によれば、予め取得した、エンジンの運転状態の正常性が確認されている場合の試験データにおける、標準摩擦平均有効圧からの実摩擦平均有効圧のばらつきに基づいて閾値を設定することにより、摩擦平均有効圧に基づくエンジンの異常状態の判定精度を向上させることができる。
(5)幾つかの実施形態では、上記(4)の構成において、
前記閾値は、前記標準摩擦平均有効圧からの前記実摩擦平均有効圧の標準偏差に基づいて設定される。
上記(5)の構成によれば、統計的手法を用いて合理的に閾値を設定することができる。
(6)幾つかの実施形態では、上記(4)〜(5)の構成において、
前記閾値は、前記試験データのうちの、前記標準摩擦平均有効圧から前記実摩擦平均有効圧を引いた偏差が負の値となる複数の特定データを抽出し、前記複数の特定データに基づいて設定される。
上記(6)の構成によれば、閾値は、複数の特定データに基づいて設定される。特定データは、実摩擦平均有効圧が標準摩擦平均有効圧よりも小さいものであるため、実摩擦平均有効圧と標準摩擦平均有効圧差異との差異が閾値よりも大きい場合であっても、出力制限は実行されない場合を示すものである。つまり、特定データは、そもそも異常状態として検出されない場合に対応する。このため、この特定データVsにおけるばらつきが実摩擦平均有効圧の標準摩擦平均有効圧Fsからのばらつきの程度を示すものとみなすことにより、上記のばらつきを考慮した閾値を簡単な方法で設定することができる。
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(6)の構成において、
前記出力制限部が前記出力制限を実行してから所定の待機時間の経過後に、前記エンジンの潤滑油の温度を計測することによって得られる実油温が、前記エンジンの出力と前記エンジンのエンジン回転数と外気温とに応じた標準油温範囲に入っているか否かを判定する油温異常判定部と、
前記標準油温範囲に前記実油温が入っている場合に、前記出力制限部による前記出力制限を解除する出力制限解除部と、をさらに備える。
上記(7)の構成によれば、摩擦平均有効圧に基づく異常状態の検出を通して出力制限を実行した後、所定の待機時間の経過後に、実油温に基づいてエンジンの正常性の判定がなされる。また、実油温が標準油温範囲に入っている場合には、エンジンの運転状態は正常であるとして、既に実行されている出力制限が解除される。ここで、摩擦平均有効圧は1燃焼サイクル毎に算出可能なように異常状態の迅速な検出が可能であるが、その判定は偶発的に生じた事象による影響を受ける恐れがある。これに対して、潤滑油の実油温によって異常状態を検出する方法では、異常状態の原因となる事象が継続されることによって標準油温範囲を外れるようになるので、一定のタイムラグが生じるものの、偶発的に生じた事象の影響を受けにくい。このため、摩擦平均有効圧に基づく異常状態の判定の後に潤滑油の実油温に基づく過熱状態(異常状態)の判定をすることによって、摩擦異常検出部によって判定された異常状態の原因が継続しているかを判定することができると共に、異常状態が継続していない場合に出力制限を解除することによって、エンジンの効率的な運転に復帰することができる。
(8)幾つかの実施形態では、上記(7)の構成において、
前記標準油温範囲に前記実油温が入っていない場合に、前記出力制限の実行を報知する報知部を、さらに備える。
上記(8)の構成によれば、出力制限の実行が報知されることによって、エンジンを過熱状態にさせる異常がエンジンに生じていることをオペレータ等に知らせることができる。
本発明の少なくとも一実施形態によれば、摩擦平均有効圧に基づくエンジンの正常性判定の精度を向上し、エンジンを安全に制御することが可能なエンジンの摩擦異常検出装置が提供される。
本発明の一実施形態に係るエンジンの摩擦異常検出装置を備えるエンジンの構成を概略的に示す図である。 本発明の一実施形態に係るエンジンの摩擦異常検出装置の機能ブロック図である。 図2のエンジンの摩擦異常検出装置の動作を示すフロー図である。 本発明の他の一実施形態に係るエンジンの摩擦異常検出装置の機能ブロック図であり、摩擦異常検出装置は、油温異常判定部および出力制限解除部をさらに備える。 図4のエンジンの摩擦異常検出装置の動作を示すフロー図である。 本発明の一実施形態に係る閾値を説明するための図である。 本発明の一実施形態に係る標準油温範囲を規定する標準油温マップを示す図である。
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
図1は、本発明の一実施形態に係るエンジン2の摩擦異常検出装置1を備えるエンジン2の構成を概略的に示す図である。図2は、本発明の一実施形態に係るエンジン2の摩擦異常検出装置1の機能ブロック図である。図3は、図2のエンジン2の摩擦異常検出装置1の動作を示すフロー図である。図4は、本発明の他の一実施形態に係るエンジン2の摩擦異常検出装置1の機能ブロック図であり、摩擦異常検出装置1は、油温異常判定部13および出力制限解除部14をさらに備える。図5は、図4のエンジンの摩擦異常検出装置の動作を示すフロー図である。図6は、本発明の一実施形態に係る閾値Pthを説明するための図である。また、図7は、本発明の一実施形態に係る標準油温範囲Rtを規定する標準油温マップMtを示す図である。
図1に示されるように、エンジン2の摩擦異常検出装置1はエンジン2に設けられる。まず、エンジン2について説明すると、エンジン2は、レシプロエンジンであり、図1に示されるように、シリンダ21(気筒)と、シリンダ21内を往復運動するピストン22とを備えている。そして、ピストン22は、コンロッド23を介してクランク軸24(クランクシャフト)に機械的に接続されており、ピストン22の上面とシリンダ21の容積部分とによって画される空間が燃焼室25となる。通常、エンジン2は複数の気筒(シリンダ21)を備えており、後述する筒内圧センサ3はシリンダ21毎に設置されても良く、シリンダ21毎に筒内圧力Pを検出する。なお、図1では、1つのシリンダ21が示されているが、シリンダ21の数は1以上であれば良く、単気筒エンジン、多気筒エンジンであっても良い。また、エンジン2は、ガスエンジンやガソリンエンジン等であっても良い。
また、シリンダ21には、燃焼室25に空気と燃料の混合気を供給するための給気配管26と、燃焼室25から燃焼ガス(排ガス)を排出するための排気配管27とが接続されている。上記の給気配管26には、給気配管26の上流側から燃焼室25に向けて流れてくる空気と燃料ガスとを混合するためのミキサ29が設けられており、燃料ガスは、燃料調節弁29vによって燃料供給量が調節されながら、ミキサ29に接続された燃料供給管29fからミキサ29に供給されるようになっている。また、燃焼室25には、燃焼室25と給気配管26との連通状態を制御する給気弁26vと、燃焼室25と排気配管27との連通状態を制御する排気弁27vと、点火プラグ28とが設けられている。図1に示される実施形態では、エンジン2は副室式ガスエンジンとなっており、燃焼室25は、内部に点火プラグ28が設けられる副室25aと、噴孔25cを介して副室25aに連通される主室25bとを備えている。副室式ガスエンジンでは、副室25a内にトーチ生成用として供給された少量の燃料ガスが点火プラグ28により直接点火され、この副室25a内の点火によって噴孔25cから吹き出すトーチによって、上記の主室25bに存在する混合気が点火される。なお、こうしたエンジンの点火時期や燃料噴射タイミングといったエンジン2の出力制御はエンジン制御装置9(ECU)によって行われる。
また、図1に示される実施形態では、図示されるように、エンジン2は、エンジン2の有する気筒の筒内圧力Pを検出可能な筒内圧センサ3と、エンジンのクランク軸24のクランク角θ(以下、単に、クランク角θという)を検出可能なクランク角センサ4と、を備えている。そして、クランク角センサ4の検出値に基づいてエンジン2の回転数(以下、エンジン回転数Neという)が算出される。クランク角センサ4は、クランク軸24に設けられることにより、クランク軸24の位相角度を検出し、現在のクランク角位相を表す信号(クランク角位相信号)を摩擦異常検出装置1に出力する。他方、筒内圧センサ3は、シリンダ21に設けられることにより、検出した燃焼室35内部の圧力値を示す信号(筒内圧信号)を摩擦異常検出装置1に出力する。また、エンジン2は、潤滑油(エンジンオイル)の実油温Toを検出可能な油温センサ5と、外気温を検出可能な外気温センサ7を備えていても良い。油温センサ5は、例えばオイルパン6に蓄えられている潤滑油の温度を検出する。油温センサ5が検出する実油温Toを示す信号、および外気温センサ7が検出するが外気温Taを示す信号は、それぞれ摩擦異常検出装置1に入力される(図1参照)。
次に、エンジン2の摩擦異常検出装置1(以下、単に、摩擦異常検出装置1という。)について、図1〜図7を用いて説明する。
エンジン2の摩擦異常検出装置1は、摩擦平均有効圧Fに基づいてエンジン2の正常性を判定すると共に、特に過熱状態といった異常な運転状態(異常状態)を検出した場合にはエンジン2の出力制限を実行する装置である。摩擦異常検出装置1は、ECU(電子制御装置)などのコンピュータで構成されており、図示しないCPU(プロセッサ)や、ROMやRAMといったメモリ18(記憶装置)を備えている。そして、主記憶装置にロードされたプログラムの命令に従ってCPUが動作(データの演算など)することで、後述する各機能部を実現する。そして、図2、図4に示されるように、摩擦異常検出装置1は、摩擦異常検出部11と、出力制限部12と、を備える。図1には、摩擦異常検出装置1はエンジン制御装置9と同じECUに実装されているが、これには限定されず、摩擦異常検出装置1はエンジン制御装置9とは別体のECUで実現されていても良い。
以下、摩擦異常検出装置1が備える各機能部の各々について、それぞれ説明する。
摩擦異常検出部11は、エンジン2の運転状態に基づいて算出される実際の摩擦平均有効圧Fである実摩擦平均有効圧Frと標準の摩擦平均有効圧Fである標準摩擦平均有効圧Fsとの差異Dが所定の閾値Pthを超えるか否かを判定する。また、その差異Dが閾値Pth(後述)を超えた場合を異常状態として検出する。例えば、後述するように、実摩擦平均有効圧Frを、筒内圧力Pを用いて算出可能な図示平均有効圧力から正味平均有効圧力を減算することにより算出しても良い。ここで、正味平均有効圧力は種々の方法から取得可能である。例えば、正味平均有効圧力を、エンジンの出力軸におけるひずみ量に基づいて算出しても良い。あるいは、正味平均有効圧力を、燃料噴射ラック量(≒燃料噴射量)のモニタリング(例えば、船舶であれば出力レバーの押し込み量)、発電用エンジンであれば発電機側からの情報などの出力情報に基づいて取得しても良い。他方、標準摩擦平均有効圧Fsは、後述するように、筒内圧力Pの最大値となる最大筒内圧力Pmaxとエンジン回転数Neとに基づいて算出されても良い。
図1〜図7に示される実施形態では、摩擦異常検出部11は、入力されたセンサの検出値に基づいて、実摩擦平均有効圧Frおよび標準摩擦平均有効圧Fsを算出するよう構成されている。そして、算出した実摩擦平均有効圧Frと標準摩擦平均有効圧Fsとの差異Dを、実摩擦平均有効圧Frから標準摩擦平均有効圧Fsを減算することにより算出している(D=Fr−Fs)。ただし、本実施形態には限定されず、他の幾つかの実施形態では、実摩擦平均有効圧Frと標準摩擦平均有効圧Fsとの比を算出するなど、上記の差異Dは、この差異Dを定量的に得ることが可能な他の方法により算出されても良い。また、上記の閾値Pthの詳細は後述するが、閾値Pthは、摩擦異常検出装置1が備えるメモリ18に保持される(図2、図4参照)。
出力制限部12は、摩擦異常検出部11が異常状態を検出した場合、かつ、実摩擦平均有効圧Frが標準摩擦平均有効圧Fsよりも大きい場合に、エンジン2の出力を低下させると共に、エンジン2の出力(以下、適宜、エンジン出力Epという。)を所定の上限出力以下に制限するための出力制限を実行する。図1〜図7に示される実施形態では、図2、図4に示されるように、出力制限部12は、前述した摩擦異常検出部11に接続されており、摩擦異常検出部11が異常状態を検出した場合、かつ、実摩擦平均有効圧Frが標準摩擦平均有効圧Fsよりも大きい場合(Fr−Fs>Pth)に出力制限指令を出力制限部12に送信し、出力制限部12は、出力制限指令を受信すると、出力制限を実行するように構成されている。具体的には、摩擦異常検出装置1は、上述したエンジン制御装置9に出力制限の実行を命令する信号を送信する。
ここで、本発明においては、摩擦異常検出部11は、エンジンの運転状態に基づいてそれぞれ算出した実摩擦平均有効圧Frと標準摩擦平均有効圧Fsとが一致しているか否かによってではなく、両者の差異Dが所定の閾値Pthを超えるか否かを判定することによって、異常状態を判定している。通常、エンジン2の運転状態が実際には正常であったとしても、例えば摩擦平均有効圧Fを算出する際のセンサの検出誤差などによって、エンジン2の運転状態に基づいて算出された標準摩擦平均有効圧Fsと実摩擦平均有効圧Frとには不可避的に差異Dが生じる場合があり(後述する図6参照)、これを考慮するためである。そして、図1〜図7に示される実施形態では、閾値Pthは、事前に行った試験等を通して、エンジン2の運転状態が正常である場合における試験データEd(後述する図6参照)に基づいて設定されている。
このように、エンジン2の運転状態に基づいてそれぞれ算出される実摩擦平均有効圧Frと標準摩擦平均有効圧Fsとの差異Dが、例えば、エンジン2の運転状態が正常である場合において不可避的に生じる差異Dを考慮して設定した閾値Pthを超えるか否かを判定することにより、エンジン2の異常状態の判定を向上することができる。換言すれば、実際にはエンジン2の運転状態が正常であるにもかかわらず、上述した不可避的に生じる差異Dによって、エンジン2の運転状態に基づいてそれぞれ算出される実摩擦平均有効圧Frと標準摩擦平均有効圧Fsとの差異Dが0でないために異常状態と判定するような事態を抑制することができる。また、異常状態を検出した場合に実行するエンジン2の出力制限によって、エンジン2の運転を継続可能としつつ、エンジン2の温度の低下を図ることで、エンジン2の異常状態(過熱状態)が継続されるのを回避し、エンジン2に重大な故障が生じるのを防止することができる。
また、幾つかの実施形態では、図1〜図5に示されるように、摩擦異常検出部11は、標準摩擦平均有効圧Fsを、最大の筒内圧力Pである最大筒内圧力Pmaxとエンジン2のエンジン回転数Neとに基づいて算出すると共に、実摩擦平均有効圧Frを筒内圧力Pに基づいて算出するよう構成されても良い。図1〜図7に示される実施形態では、最大筒内圧力Pmaxとエンジン回転数Neと標準摩擦平均有効圧Fsとの関係は、試験などを通して予め作成した上で、メモリ18に予め格納されている(図2、図4参照)。また、図1、図2、図4に示されるように、摩擦異常検出部11には、筒内圧センサ3からの入力信号に基づいて筒内圧力Pを取得し、クランク角センサ4からの入力信号に基づいてエンジン回転数Neを取得し、筒内圧力Pとクランク角センサ4とに基づいて燃焼サイクル毎の最大筒内圧力Pmaxを取得するよう構成されている。そして、センサからの入力に基づいて取得した最大筒内圧力Pmaxおよびエンジン回転数Neを用いて、メモリ18に格納された上述の関係を参照し、標準摩擦平均有効圧Fsを算出している。一方、実摩擦平均有効圧Frは、筒内圧力Pに基づいて図示平均有効圧力を算出し、ひずみ量の情報とは異なる出力情報(上述)などに基づいて正味平均有効圧力を算出し、図示平均有効圧力から正味平均有効圧力を減算することにより算出している。換言すれば、摩擦異常検出装置1は、エンジン2の出力軸におけるひずみ量の計測などを行うことなく、エンジン2の運転状態などに基づいて、標準摩擦平均有効圧Fsおよび実摩擦平均有効圧Frを算出している。
次に、本実施形態に係る摩擦異常検出装置1の制御フロー(摩擦異常検出方法)を、図3のステップに沿って説明する(図5のステップS1〜S6も内容は同じ)。図3のステップS1において、エンジン2の運転状態(筒内圧力P)に基づいて実摩擦平均有効圧Frを算出する。また、ステップS2において、エンジン2の運転状態(最大筒内圧力Pmax、エンジン回転数Ne)に基づいて標準摩擦平均有効圧Fsを算出する。そして、ステップS3において、実摩擦平均有効圧Frから標準摩擦平均有効圧Fsを減算するなどして、その差異Dを算出する。ステップS4において、ステップS3で算出した差異Dが閾値Pthよりも大きいか否かを確認し、その結果、差異Dが閾値Pthよりも大きい場合には、ステップS5において、エンジン2の現在の運転状態は異常状態にあると判定し、ステップS6において、エンジン2に対して上述した出力制限を実行する。逆に、ステップS4において、ステップS3で算出した差異Dが閾値Pth以下である場合には、上述の出力制限(ステップS5)を実行することなく、フローを終了する。
上記の構成によれば、摩擦異常検出装置1は、標準摩擦平均有効圧Fsおよび実摩擦平均有効圧Frの算出は、いずれも筒内圧力Pを用いて行うよう構成される。また、摩擦異常検出装置1は、最大筒内圧力Pmaxとエンジン回転数Neとに基づいて標準摩擦平均有効圧Fsを算出するよう構成される。これによって、摩擦異常検出装置1は、シリンダ21の筒内圧力Pを検出可能な筒内圧検出手段(筒内圧センサなど)を利用することによって異常状態の判定を行うことができると共に、標準摩擦平均有効圧Fsをより簡易に迅速に算出することができる。また、ひずみゲージといったひずみ量を検出可能なひずみ量検出手段をエンジンに設ける必要がないため、コストを抑制することもできる。
また、幾つかの実施形態では、摩擦異常検出部11は、エンジン回転数Neおよび筒内圧力Pを変数として標準摩擦平均有効圧Fsを算出可能な関数を有し、この関数を用いて標準摩擦平均有効圧Fsを算出するよう構成されても良い。このように、関数を用いて、エンジン回転数Neおよび最大筒内圧力Pmaxから標準摩擦平均有効圧Fsを算出(演算)するよう構成することにより、例えば、エンジン回転数Neと最大筒内圧力Pmaxと標準摩擦平均有効圧Fsとの関係をマップで規定し、エンジン回転数Neおよび最大筒内圧力Pmaxとでマップを検索するような方法に比べて、メモリ18のメモリ使用量の節約や処理の高速化を図ることができると共に、コストを低減することができる。
また、幾つかの実施形態では、図6に示されるように、閾値Pthは、エンジン2の運転状態が正常である場合の試験データEdにおける標準摩擦平均有効圧Fsからの実摩擦平均有効圧Frのばらつき度合に基づいて設定されても良い。図6には、エンジン2の運転状態の正常性が確認されている状態において試験した試験データEdを例示する図であり、上述したように、最大筒内圧力Pmaxとエンジン回転数Neとに基づいて算出した標準摩擦平均有効圧Fsに対して、筒内圧力Pに基づいて算出した実摩擦平均有効圧Frをプロットしたものを例示している。図6に例示されるように、エンジン2の運転状態の正常性が確認されている状態においても、実摩擦平均有効圧Frと標準摩擦平均有効圧Fsとが一致しない場合があることが分かる。また、標準摩擦平均有効圧Fsが大きいほど、上記の差異Dが大きくても正常状態と判定しても良いことが分かる。
この理由を考察すると、複数の燃焼サイクルの間で比較した場合、その各々におけるエンジン回転数Neが同一であったとしても、燃焼サイクル毎に筒内圧力履歴が異なる場合が存在するためである。このため、エンジン回転数Neおよび最大筒内圧力Pmaxが同一(つまり、標準摩擦平均有効圧Fsが同一)となる複数の燃焼サイクルにおいて、筒内圧力Pに基づいて算出する実摩擦平均有効圧Frが異なる場合があると共に、実摩擦平均有効圧Frも様々な値を取りうる。このため、実摩擦平均有効圧Frの算出値は、複数回の試験において、各々の標準摩擦平均有効圧Fsに対してばらつく。
したがって、本実施形態では、図6に示した試験データEdにおける、各々の標準摩擦平均有効圧Fsに対する実摩擦平均有効圧Frのばらつきを考慮して、閾値Pthを設定している。このように、予め取得した、エンジン2の運転状態の正常性が確認されている場合の試験データEdにおける、各々の標準摩擦平均有効圧Fsからの実摩擦平均有効圧Frのばらつきに基づいて閾値Pthを設定することにより、摩擦平均有効圧Fに基づくエンジンの異常状態の判定精度を向上させることができる。
より具体的には、閾値Pthは、幾つかの実施形態では、標準摩擦平均有効圧Fsの所定の割合α(例えば±10%など)として設定しても良い。例えば、図6に示されるような試験データEdに基づいて、エンジン2の運転状態の正常性が確認されている複数の試験データEdが包含されるように、所定の割合αを設定しても良い。
他の幾つかの実施形態では、閾値Pthは、標準摩擦平均有効圧Fsからの実摩擦平均有効圧Frの標準偏差σに基づいて設定されても良い。すなわち、エンジン2の運転状態の正常性が確認されている複数の試験データEdを用いて、実摩擦平均有効圧Frの標準摩擦平均有効圧Fsに対する標準偏差σを求め、算出された1σ、2σあるいは3σを閾値Pthとして設定する。これによって、統計的手法を用いて合理的に閾値Pthを設定することができる。
その他の幾つかの実施形態では、閾値Pthは、上述した試験データEdのうちの、標準摩擦平均有効圧Fsから実摩擦平均有効圧Frを引いた偏差が負の値(Fs−Fr<0)となる複数の特定データVsを抽出し、複数の特定データVsに基づいて設定されても良い。図6の例示では、上述の特定データVsは、標準摩擦平均有効圧Fsと実摩擦平均有効圧Frとが一致する一致線Lcよりも実摩擦平均有効圧Frが小さい領域の試験データEdとなる。そして、特定データVsを対象に、例えば、前述した所定の割合αや、標準偏差σを算出し、閾値Pthを設定しても良い。
上記の特定データVsは、実摩擦平均有効圧Frが標準摩擦平均有効圧Fsよりも小さいものであるため、実摩擦平均有効圧Frと標準摩擦平均有効圧Fsとの差異Dが閾値Pthよりも大きい場合であっても、出力制限は実行されない場合に対応する。このため、この特定データVsにおけるばらつきが実摩擦平均有効圧Frの標準摩擦平均有効圧Fsからのばらつきの程度を示すものとみなすことにより、上記のばらつきを考慮した閾値Pthを簡単な方法で設定することができる。
以下で説明する実施形態では、摩擦異常検出部11は、検出した異常状態の妥当性の再チェックを行う実施形態となる。上述したように、摩擦異常検出装置1は異常状態を検出した後に出力制限を実行するところ、上記の再チェックは、出力制限の実行後に、異常状態が検出されるに至った原因が何らかの理由によって解消される場合を想定したものである。
通常、エンジン2は、エンジン2の駆動部品で生じる摩擦を軽減するために、潤滑装置を用いてエンジン2の各部に潤滑油(エンジンオイル)を循環させる。そして、本実施形態では、エンジン2の運転状態が正常状態である場合において潤滑油が取り得る温度の温度範囲を標準油温範囲Rtとして規定しており、図7に示されるように、標準油温範囲Rtを、外気温Taと、エンジン回転数Ne、エンジン出力Epとに応じて規定する。例えば、図7には、ある外気温Taにおける、エンジン回転数Ne、およびエンジン出力Ep、標準油温範囲Rtとの関係を示した標準油温マップMtが例示されている。例えば、図7には、ある外気温Taにおいて、エンジン回転数NeがNe1であり、エンジン出力EpがEp1である場合には、標準油温範囲Rtは、To3以上、かつ、To4を超えない範囲となることが示されている。
ところが、何らかの原因によってエンジン2の各部における潤滑油量が不足している場合(つまり、エンジン2の運転状態が異常状態の場合)には、摩擦熱によって、潤滑油の実施の温度である実油温Toは標準油温範囲Rtよりも高い温度となる。このことは、エンジン2の温度の低下させるためのエンジン2の出力制限が実行されている場合でも同じであり、実油温Toは、出力制限下の状態で定まる標準油温範囲Rtから外れる。このため、エンジン2の出力制限の実行後に、実油温Toが標準油温範囲Rtに入っていない場合には、摩擦平均有効圧Fに基づいて異常状態と判定されるに至った原因が継続していることが想定される。しかしながら、逆に、実油温Toが標準油温範囲Rtに入っていない場合には、その原因が既に解消していると判定することができる。仮に、エンジン2が既に正常となっている場合には、出力制限を解除することによって、効率の良い運転状態にエンジン2を復帰させることが可能となる。
そこで、幾つかの実施形態では、図4に示されるように、摩擦異常検出装置1は、出力制限部12が出力制限を実行してから所定の待機時間Wの経過後に、エンジン2の潤滑油の温度を計測することによって得られる実油温Toが、エンジン2の出力(エンジン出力Ep)とエンジン2のエンジン回転数Neと外気温Taとに応じた標準油温範囲Rtに入っているか否かを判定する油温異常判定部13と、標準油温範囲Rtに実油温Toが入っている場合に、出力制限部12による出力制限を解除する出力制限解除部14と、をさらに備えていても良い。すなわち、摩擦異常検出装置1は、摩擦平均有効圧Fに基づいて検出された異常状態を、上記の待機時間Wの経過後に、潤滑油の温度に基づいて再チェックするよう構成されている。
上記の待機時間Wについて説明すると、通常、出力制限からの時間の経過に従ってエンジン2の温度は低下していくため、実油温Toも同様に、出力制限下の状態で定まる温度まで時間の経過に従って低下する。そして、仮にエンジン2の運転状態が正常であれば、出力制限下の状態で定まる標準油温範囲Rtまで所定時間の経過後には低下するはずである。そこで、エンジン2が正常であれば、出力制限の実行から、出力制限下におけるエンジン出力Epおよびエンジン回転数Ne、外気温Taで定まる標準油温範囲Rtまで実油温Toが低下していると想定されるような時間間隔を、上記の待機時間Wとして設定し、実油温Toに基づくエンジン2の正常性判定を待機する。
図4〜図5に示される実施形態では、油温異常判定部13は、クランク角センサ4、油温センサ5、外気温センサ7の各々に接続されており、これらのセンサからの入力によって、エンジン回転数Ne、外気温Ta、実油温Toを取得している。また、エンジン出力Epをエンジン制御装置9から取得している。そして、油温異常判定部13は、上記の待機時間Wの経過後に、メモリ18に格納された標準油温マップMt(図7参照)を用いて、エンジン回転数Ne、エンジン出力Ep、外気温Taから標準油温範囲Rtを取得する。その後、実油温Toと標準油温範囲Rtと比較し、標準油温範囲Rtに実油温Toが入っている場合には、エンジン2の運転状態は正常状態にあると判定する。逆に、標準油温範囲Rtに実油温Toが入っていない場合には、エンジン2の運転状態は異常状態にあると判定する。
また、油温異常判定部13は、出力制限解除部14にも接続されており、出力制限解除部14には油温異常判定部13による判定結果が入力されるように構成されている。そして、油温異常判定部13がエンジン2の運転状態が正常状態にあると判定した場合には、出力制限解除部14は出力制限部12に対して出力制限を解除するように命令を出力することによって、出力制限部12が実行している出力制限を解除させるように構成されている。逆に、油温異常判定部13がエンジン2の運転状態が異常状態にあると判定した場合には、出力制限解除部14による出力制限の解除は行われない。なお、図4〜図5に示される実施形態では、出力制限部12は、エンジン制御装置9に対して出力制限の解除を命令すると、エンジン制御装置9は出力制限を解除するように構成されている。
次に、本実施形態に係る摩擦異常検出装置1の制御フロー(摩擦異常検出方法)を、図5のステップに沿って説明する。なお、図5において、図3との同一符号が付されたステップS1〜S6は、既に説明しているため省略する。図5のステップS7において、ステップS6における出力制限の実行から待機時間Wが経過するまで待機する。この待機時間Wの経過後、ステップS8において、実油温Toが、エンジン回転数Ne、エンジン出力Ep、外気温Taから定まる標準油温範囲Rtに入っているか否かを判定する。そして、ステップS9において、実油温Toが標準油温範囲Rtに入っているか否かを確認し、実油温Toが標準油温範囲Rtに入っている場合には、ステップS10において出力制限を解除する。逆に、ステップS9において、実油温Toが標準油温範囲Rtに入っていない場合には、ステップS10を実行せずに、ステップS11で後述する報知部15による報知を実行した後に、図5の制御フローを終了する。なお、ステップS11の実行は任意である。
上記の構成によれば、摩擦平均有効圧Fに基づく異常状態の検出を通して出力制限を実行した後、所定の待機時間Wの経過後に、実油温Toに基づいてエンジン2の正常性の判定がなされる。また、実油温Toが標準油温範囲Rtに入っている場合には、エンジン2の運転状態は正常であるとして、既に実行されている出力制限が解除される。ここで、摩擦平均有効圧Fは1燃焼サイクル毎に算出可能なように異常状態の迅速な検出が可能であるが、その判定は偶発的に生じた事象による影響を受ける恐れがある。これに対して、潤滑油の実油温Toによって異常状態を検出する方法では、異常状態の原因となる事象が継続されることによって標準油温範囲Rtを外れるようになるので、一定のタイムラグが生じるものの、偶発的に生じた事象の影響を受けにくい。このため、摩擦平均有効圧Fに基づく異常状態の判定の後に潤滑油の実油温Toに基づく過熱状態(異常状態)の判定をすることによって、摩擦異常検出部11によって判定された異常状態の原因が継続しているかを判定することができると共に、異常状態が継続していない場合に出力制限を解除することによって、エンジンの効率的な運転に復帰することができる。
また、幾つかの実施形態では、図4に示されるように、摩擦異常検出装置1は、標準油温範囲Rtに実油温Toが入っていない場合に、出力制限の実行を報知する報知部15を、さらに備えていても良い。図4に示される実施形態では、報知部15は、例えば、音による報知が可能なスピーカや、視覚的な報知が可能なディスプレイや点灯装置(例えばLED)などの報知装置8に接続されており、報知装置8を介して報知を行っている。
上記の構成によれば、出力制限の実行が報知されることによって、エンジン2を過熱状態にさせる異常がエンジン2に生じていることをオペレータ等に知らせることができる。
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
1 摩擦異常検出装置
11 摩擦異常検出部
12 出力制限部
13 異常判定部
14 出力制限解除部
15 報知部
18 メモリ
2 エンジン
21 シリンダ
22 ピストン
23 コンロッド
24 クランク軸
25 燃焼室
25a 副室
25b 主室
25c 噴孔
26 給気配管
26v 給気弁
27 排気配管
27v 排気弁
28 点火プラグ
29 ミキサ
29f 燃料供給管
29v 燃料調節弁
3 筒内圧センサ
4 クランク角センサ
5 油温センサ
6 オイルパン
7 外気温センサ
8 報知装置

F 摩擦平均有効圧
Fr 実摩擦平均有効圧
Fs 標準摩擦平均有効圧
D 実摩擦平均有効圧と標準摩擦平均有効圧との差異
Ne エンジン回転数
Ep エンジン出力
P 筒内圧力
Pmax 最大筒内圧力
Pth 閾値
Ed 試験データ
Lc 標準摩擦平均有効圧と実摩擦平均有効圧Frとの一致線
Vs 特定データ(一致線よりも実摩擦平均有効圧が小さい領域試験データ)
Mt 標準油温マップ
Rt 標準油温範囲
To 実油温
Ta 外気温
W 待機時間

Claims (8)

  1. エンジンの運転状態に基づいて算出される実際の実摩擦平均有効圧と標準の標準摩擦平均有効圧との差異が所定の閾値を超えるか否かを判定し、前記差異が前記閾値を超えた場合を異常状態として検出する摩擦異常検出部と、
    前記摩擦異常検出部が前記異常状態を検出した場合、かつ、前記実摩擦平均有効圧が前記標準摩擦平均有効圧よりも大きい場合に、前記エンジンの出力を低下させると共に前記出力を所定の上限出力以下に制限するための出力制限を実行する出力制限部と、を備えることを特徴とするエンジンの摩擦異常検出装置。
  2. 前記摩擦異常検出部は、
    前記標準摩擦平均有効圧を、前記エンジンの最大の筒内圧力である最大筒内圧力と前記エンジンのエンジン回転数とに基づいて算出すると共に、
    前記実摩擦平均有効圧を、前記筒内圧力に基づいて算出するよう構成されることを特徴とする請求項1に記載のエンジンの摩擦異常検出装置。
  3. 前記摩擦異常検出部は、前記エンジン回転数および前記筒内圧力を変数として前記標準摩擦平均有効圧を算出可能な関数を有し、前記関数を用いて前記標準摩擦平均有効圧を算出するよう構成されることを特徴とする請求項2に記載のエンジンの摩擦異常検出装置。
  4. 前記閾値は、前記エンジンの運転状態が正常である場合の試験データにおける前記標準摩擦平均有効圧からの前記実摩擦平均有効圧のばらつき度合に基づいて設定されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のエンジンの摩擦異常検出装置。
  5. 前記閾値は、前記標準摩擦平均有効圧からの前記実摩擦平均有効圧の標準偏差に基づいて設定されることを特徴とする請求項4に記載のエンジンの摩擦異常検出装置。
  6. 前記閾値は、前記試験データのうちの、前記標準摩擦平均有効圧から前記実摩擦平均有効圧を引いた偏差が負の値となる複数の特定データを抽出し、前記複数の特定データに基づいて設定されることを特徴とする請求項4または5に記載のエンジンの摩擦異常検出装置。
  7. 前記出力制限部が前記出力制限を実行してから所定の待機時間の経過後に、前記エンジンの潤滑油の温度を計測することによって得られる実油温が、前記エンジンの出力と前記エンジンのエンジン回転数と外気温とに応じた標準油温範囲に入っているか否かを判定する油温異常判定部と、
    前記標準油温範囲に前記実油温が入っている場合に、前記出力制限部による前記出力制限を解除する出力制限解除部と、をさらに備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のエンジンの摩擦異常検出装置。
  8. 前記標準油温範囲に前記実油温が入っていない場合に、前記出力制限の実行を報知する報知部を、さらに備えることを特徴とする請求項7に記載のエンジンの摩擦異常検出装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2022542647A (ja) * 2019-07-03 2022-10-06 ヤラ・マリーン・テクノロジーズ・アーエス 船舶の推進力出力を制御するための方法及びシステム

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