JP2018090466A - シリコン単結晶の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】1000Ωcm以上の高抵抗率のシリコン単結晶であっても、所望の抵抗率を有するシリコン単結晶を精度よく製造可能なシリコン単結晶の製造方法を提供する。【解決手段】CZ法により1000Ωcm以上の高抵抗率のシリコン単結晶を製造する方法であって、予め原料となる多結晶シリコンの表面及びバルク部分の不純物濃度に基づいてドープ剤の投入量を調整して製造したシリコン単結晶の抵抗率と狙い抵抗率の差異を求め、この差異を環境汚染量の影響と定義し、次に前記多結晶シリコンの表面及びバルク部分の不純物濃度と前記環境汚染量に基づいて前記環境汚染量を相殺するように前記ドープ剤の投入量を調整してシリコン単結晶を製造することを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、シリコン単結晶の製造方法に関し、特に、1000Ωcm以上の高抵抗率のシリコン単結晶の製造方法に関する。
近年、CZ法(チョクラルスキー法)によって製造されたシリコン単結晶の品質として、1000Ωcm以上の高抵抗率をもったものの要求が増えてきている。これらの用途としては、今までFZ法(フローティングゾーン法)によって製造されたシリコン単結晶で製造していた品種やRFデバイスといわれる通信用のデバイスなど、様々な用途がある。
通常のCZ法による製造では、リンやボロンといったドープ剤をシリコン原料に添加することにより、目標の抵抗率をもったシリコン単結晶を製造している。
一方で、抵抗率1000Ωcm以上の高抵抗率のシリコン単結晶を製造する場合には、高純度の石英ルツボ(内表面が合成石英でコートされたもの)に高純度の多結晶シリコンを投入し、ドープ剤を添加しない方法、即ち、ノンドープで製造することが一般的である。
多結晶シリコンの純度は、一般的にバルク部分のドナー濃度及びアクセプター濃度を品質保証している。これは、製造した多結晶シリコンのロッドから、FZ法による製造に使われる多結晶シリコンをくりぬき、バルク部分のドナー濃度及びアクセプター濃度を測定するとともに、これを原料にしてFZ法によってシリコン単結晶を製造し、このようにして製造されたシリコン単結晶から切り出したサンプル(以下、FZサンプルと称する)により、多結晶シリコンのバルク部分のドナー、アクセプターが規格値以下の濃度であること、FZサンプルの抵抗率がある値以上であることにより保証している。上記で保証された多結晶シリコンを使うことにより、1000Ωcm以上の高抵抗率のシリコン単結晶を製造することが可能となる。
今までは、抵抗率が1000Ωcm以上であれば、どのような値の抵抗率でも良かったが、最近の品質要求は、例えば、抵抗率が1000Ωcm以上という要求に加えて、導電型がP型、N型の導電型指定であることや、抵抗率の上限を1000〜3000Ωcmに限定されたり、導電型がP型、N型の導電型指定であって、更に抵抗率が5000Ωcm以上という要求がなされたりする。
このような厳しい要求に対して、原料となる多結晶シリコンのドナー、アクセプターの量を的確に把握し、必要なドープ剤(例えば、ボロン)を添加する必要がある。
このような高抵抗率シリコン単結晶の製造方法として、特許文献1では、多結晶シリコンのバルク部分のドナー濃度及びアクセプター濃度(あるいは抵抗率)に加えて、多結晶シリコンの表面部分のドナー濃度及びアクセプター濃度(あるいは抵抗率)を測定し、その測定結果に基づいてドープ剤の投入量を決定し、高抵抗率のシリコン単結晶を製造する方法が提案されている。
特開2014−156376号公報
しかしながら、特許文献1の製造方法では、シリコン単結晶の抵抗率が1000Ωcm以上の高抵抗率になると、狙い抵抗率に対してばらつきが発生する(即ち、精度が悪くなる)という問題があった。
また、最近では、1000Ωcm以上で導電型指定かつ抵抗率規格の狭い品質要求が増加していることから、1000Ωcm以上の高抵抗率であっても、所望の抵抗率を有するシリコン単結晶を精度よく製造できる方法の開発が求められていた。
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、1000Ωcm以上の高抵抗率のシリコン単結晶であっても、所望の抵抗率を有するシリコン単結晶を精度よく製造可能なシリコン単結晶の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を達成するために、本発明では、CZ法により1000Ωcm以上の高抵抗率のシリコン単結晶を製造する方法であって、予め原料となる多結晶シリコンの表面及びバルク部分の不純物濃度に基づいてドープ剤の投入量を調整して製造したシリコン単結晶の抵抗率と狙い抵抗率の差異を求め、この差異を環境汚染量の影響と定義し、次に前記多結晶シリコンの表面及びバルク部分の不純物濃度と前記環境汚染量に基づいて前記環境汚染量を相殺するように前記ドープ剤の投入量を調整してシリコン単結晶を製造するシリコン単結晶の製造方法を提供する。
このようなシリコン単結晶の製造方法であれば、1000Ωcm以上の高抵抗率のシリコン単結晶であっても、所望の抵抗率を有するシリコン単結晶を精度よく製造することができる。
また、前記環境汚染量を相殺するドープ剤の投入量の調整は、前記環境汚染量のドナー濃度又はアクセプター濃度の影響量が、前記狙い抵抗率に対して所定の範囲を超えたときに行うことが好ましい。
このように環境汚染量を相殺するドープ剤の投入量の調整を行えば、狙い抵抗率に対して更に精度よくシリコン単結晶を製造することができる。
また、前記シリコン単結晶として、抵抗率6000Ωcm以上のシリコン単結晶を製造することが好ましい。
本発明のシリコン単結晶の製造方法であれば、製造するシリコン単結晶の抵抗率を6000Ωcm以上とした場合にも、抵抗率規格の狭いシリコン単結晶を精度よく製造することができる。
以上のように、本発明のシリコン単結晶の製造方法であれば、1000Ωcm以上の高抵抗率のシリコン単結晶であっても、所望の抵抗率を有するシリコン単結晶を精度よく製造することができる。また、製造するシリコン単結晶の抵抗率を3000Ωcm以上、あるいは6000Ωcm以上とした場合にも、抵抗率規格の狭いシリコン単結晶を精度よく製造することができる。また、環境汚染量の異なる製造環境であっても、1000Ωcm以上の高抵抗率のシリコン単結晶を精度よく製造することができる。
本発明のシリコン単結晶の製造方法の一例を示すフロー図である。 比較例1において環境汚染量を考慮せずにドープ剤の投入量を決定して製造したシリコン単結晶の計算抵抗率[x軸]と実績抵抗率[y軸]との関係を示すグラフである。 実施例1において環境汚染量を考慮してドープ剤の投入量を決定して製造したシリコン単結晶の計算抵抗率[x軸]と実績抵抗率[y軸]との関係を示すグラフである。 実施例1、比較例1において、狙い抵抗率P型1000〜3000Ωcmでシリコン単結晶を製造した場合の、狙い抵抗率に対するズレ量とそのばらつきを示すヒストグラムである。 実施例1、比較例1において、狙い抵抗率P型6000Ωcmでシリコン単結晶を製造した場合の、狙い抵抗率に対するズレ量とそのばらつきを示すヒストグラムである。 実施例2、比較例2において、狙い抵抗率P型1000〜3000Ωcmでシリコン単結晶を製造した場合の、ドナー濃度とアクセプター濃度の比率、及び製造したシリコン単結晶の実績抵抗率を示すグラフである。 実施例2、比較例2において、狙い抵抗率P型6000Ωcmでシリコン単結晶を製造した場合の、ドナー濃度とアクセプター濃度の比率、及び製造したシリコン単結晶の実績抵抗率を示すグラフである。 実施例2、比較例2において、狙い抵抗率P型10000Ωcm超でシリコン単結晶を製造した場合の、ドナー濃度とアクセプター濃度の比率、及び製造したシリコン単結晶の実績抵抗率を示すグラフである。
上述のように、1000Ωcm以上の高抵抗率であっても、所望の抵抗率を有するシリコン単結晶を精度よく製造できる方法の開発が求められていた。
本発明者らは、原料となる多結晶シリコンの表面やバルク部分の不純物濃度、あるいはドープ剤の投入量以外にも、製造されるシリコン単結晶の抵抗率にばらつきを生む原因があると考えた。この考えに基づいて調査したところ、単結晶製造に必要な環境(例えば、多結晶シリコンの保管場所や単結晶を製造する製造室・製造装置)の影響によって抵抗率にばらつきが発生していることが分かった。そこで、本発明者らは、従来法で考慮されていた多結晶シリコンの表面やバルク部分の不純物濃度に加えて、単結晶製造に必要な環境の影響(即ち、環境汚染量の影響)を考慮してドープ剤の投入量を調整することで、所望の抵抗率を有するシリコン単結晶を精度よく製造できることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、CZ法により1000Ωcm以上の高抵抗率のシリコン単結晶を製造する方法であって、予め原料となる多結晶シリコンの表面及びバルク部分の不純物濃度に基づいてドープ剤の投入量を調整して製造したシリコン単結晶の抵抗率と狙い抵抗率の差異を求め、この差異を環境汚染量の影響と定義し、次に前記多結晶シリコンの表面及びバルク部分の不純物濃度と前記環境汚染量に基づいて前記環境汚染量を相殺するように前記ドープ剤の投入量を調整してシリコン単結晶を製造するシリコン単結晶の製造方法である。
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
図1は、本発明のシリコン単結晶の製造方法の一例を示すフロー図である。図1のシリコン単結晶の製造方法では、まず、原料となる多結晶シリコンを準備し(図1(1))、多結晶シリコンの表面部分の不純物濃度と、多結晶シリコンのバルク部分の不純物濃度を測定する(図1(2)、(3))。次に、測定した多結晶シリコンの表面及びバルク部分の不純物濃度に基づいてドープ剤の投入量を調整して、シリコン単結晶を製造し(図1(4))、製造したシリコン単結晶の抵抗率を測定する(図1(5))。次に、測定した抵抗率と狙い抵抗率との差異を求め、この差異を環境汚染量の影響と定義して(図1(6))、測定した多結晶シリコンの表面及びバルク部分の不純物濃度と環境汚染量に基づいて環境汚染量を相殺するようにドープ剤の投入量を調整する(図1(7))。そして、多結晶シリコンに調整した投入量のドープ剤を投入してシリコン単結晶を製造し(図1(8))、このようにして製造したシリコン単結晶の抵抗率を測定する(図1(9))。なお、連続してシリコン単結晶の製造を行う場合には、このようにして測定した抵抗率を、次回製造時に「予め製造したシリコン単結晶の抵抗率」として利用し、次回製造を図1(6)の工程から開始してもよい。
ここで、多結晶シリコンの表面部分の不純物濃度(より具体的には、ドナー濃度及びアクセプター濃度)の測定方法の一例について、以下に説明する。まず、原料となる多結晶シリコンを、特定の袋から一定量だけサンプリングにより抽出し、この一定量の多結晶シリコンをフッ酸溶液中にいれる。次いで、多結晶シリコンの表面部分が溶解した後に、残った多結晶シリコンをフッ酸溶液中から取り出す。次いで、多結晶シリコンの表面部分が溶解したフッ酸溶液をICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析装置)に投入して、ドーパント元素(例えば、リン、ボロン等)の定量分析を行う。次いで、定量分析によって得られた量のドーパント元素が、上記の一定量の多結晶シリコンに含まれると仮定して、ドーパント元素の濃度を算出する。ドーパント元素がリンのようなN型のドーパントの場合にはドナー濃度とし、ドーパント元素がボロンのようなP型のドーパントの場合にはアクセプター濃度とする。なお、上記の測定方法は一例であり、測定方法はこれに限定されない。
また、多結晶シリコンのバルク部分の不純物濃度(より具体的には、ドナー濃度及びアクセプター濃度)の測定方法の一例について、以下に説明する。まず、原料となる多結晶シリコンを、特定の袋からサンプリングにより抽出し、この多結晶シリコンを粉砕し、中心部分の多結晶シリコンを一定量採取する。次いで、この一定量の多結晶シリコンの表面部分を、フッ硝酸でエッチングする。次いで、表面部分が除去された多結晶シリコンをフッ硝酸ですべて溶解させる。次いで、多結晶シリコンが溶解したフッ硝酸をICP−MSに投入して、ドーパント元素(例えば、リン、ボロン等)の定量分析を行う。次いで、定量分析によって得られた量のドーパント元素が、上記の一定量の多結晶シリコンに含まれると仮定して、ドーパント元素の濃度を算出する。ドーパント元素がリンのようなN型のドーパントの場合にはドナー濃度とし、ドーパント元素がボロンのようなP型のドーパントの場合にはアクセプター濃度とする。なお、上記の測定方法は一例であり、測定方法はこれに限定されない。
また、シリコン単結晶を予め製造する際の、ドープ剤の投入量の決定方法について、以下に説明する。まず、狙い抵抗率(目標抵抗率)に必要なキャリア濃度Aを計算する。次いで、測定した多結晶シリコンの表面部分のドナー濃度の寄与分に、測定した多結晶シリコンのバルク部分のドナー濃度の寄与分を加えて、多結晶シリコンの表面及びバルク部分のドナー濃度Bを算出する。次いで、測定した多結晶シリコンの表面部分のアクセプター濃度の寄与分に、測定した多結晶シリコンのバルク部分のアクセプター濃度の寄与分を加えて、多結晶シリコンの表面及びバルク部分のアクセプター濃度Cを算出する。次いで、多結晶シリコンの表面及びバルク部分のドナー濃度Bと、多結晶シリコンの表面及びバルク部分のアクセプター濃度Cを考慮して、正味のキャリア濃度が目標抵抗率に必要なキャリア濃度Aになるように、ドープ剤の投入量Dを算出する。
例えば、導電型指定がP型で、狙い抵抗率が2000Ωcmの場合には、0.2ppbaのアクセプター濃度(キャリア濃度A)が必要となる。このとき、多結晶シリコンの表面及びバルク部分のドナー濃度Bが0.02ppbaであり、多結晶シリコンの表面及びバルク部分のアクセプター濃度Cが、0.05ppbaとすると、ドープ剤の投入量Dは、0.2ppba(キャリア濃度A)−0.05ppba(アクセプター濃度C)+0.02ppba(ドナー濃度B)=0.17ppbaと算出することができる。つまり、0.17ppbaに相当する量のアクセプタードープ剤を投入すればよい。
本発明のシリコン単結晶の製造方法では、上記のようにして多結晶シリコンの表面及びバルク部分の不純物濃度に基づいて算出した投入量でドープ剤を投入して、予めシリコン単結晶を製造する。そして、このようにして予め製造したシリコン単結晶の抵抗率を測定し、測定した抵抗率と狙い抵抗率の差異を求める。なお、ここでいう「予め製造したシリコン単結晶の抵抗率」は、そのためだけに別途製造されたシリコン単結晶の抵抗率である必要はなく、前回製造時の実績抵抗率であってもよい。
本発明のシリコン単結晶の製造方法では、このようにして求めた予め製造したシリコン単結晶の抵抗率と狙い抵抗率の差異を、環境汚染量の影響と定義する。なお、本発明では、同じ環境下にある多結晶シリコンの表面は等しく汚染されるものと考える。また、ここでいう「環境」とは、単結晶製造に必要な環境(例えば、多結晶シリコンの保管場所や単結晶を製造する製造室・製造装置)のことであり、より具体的には、多結晶シリコンの表面が接触する、石英ルツボ、リチャージ管や引上室などが含まれる。また、製造されるシリコン単結晶の抵抗率に影響するものとして、環境のB(ボロン)及びP(リン)が考えられることから、以下では、環境汚染量として、環境のB及びPの量(以下、「環境B/P量」と称する)を挙げて説明する。
環境B/P量は、予め製造したシリコン単結晶の抵抗率と狙い抵抗率の差異から逆算して求めることができる。また、環境B/P量に係わるイベント時に環境B/P量を逆算し、環境レベルを把握することもできる。具体的な環境B/P量の逆算方法としては、例えば、クリーンルームのフィルター交換をした場合や、多結晶シリコン、石英ルツボ、リチャージ管等の保管場所を変更した場合に、ある程度の期間における実績抵抗率の推移から実績抵抗率と狙い抵抗率の差異の平均値を求め、これから環境B/P量を逆算する方法が挙げられる。このとき、例えば、P型の抵抗率が低くなった場合は環境B量、P型の抵抗率が高くなった場合は環境P量として逆算することができる。
本発明のシリコン単結晶の製造方法では、上述のようにして求めた多結晶シリコンの表面及びバルク部分の不純物濃度と環境B/P量に基づいて環境B/P量を相殺するようにドープ剤の投入量を調整してシリコン単結晶を製造する。
このときのドープ剤投入量の調整は、例えば、多結晶シリコンの表面及びバルク部分の不純物濃度、並びに環境B/P量を入力してドープ剤の投入量を決定する計算シートを作成し、ドープ剤の投入量を決定する方法で行うことができる。また、製造したシリコン単結晶の抵抗率の測定結果から同計算シートを使用して、環境B/P量を逆算し、レベルを把握することもできる。具体的なドープ剤の投入量の計算方法としては、例えば、表計算ソフトに組み込まれているゴールシーク機能を用いて、実績抵抗率と狙い抵抗率の差異の平均値から、環境B/P量の逆算及びドープ剤投入量の算出をすることができる。
本発明のシリコン単結晶の製造方法では、このような方法でドープ剤の投入量を調整するため、環境が異なる場合にもその環境に応じた濃度に合わせることにより、同等の抵抗率を有するシリコン単結晶を製造することができる。つまり、環境が変わった場合にも、所望の抵抗率を有するシリコン単結晶を精度よく製造することができる。
なお、環境汚染量を相殺するドープ剤の投入量の調整は、環境汚染量のドナー濃度又はアクセプター濃度の影響量が、狙い抵抗率に対して所定の範囲を超えたときに行うことが好ましい。より具体的には、環境B/P量の影響で、予め製造したシリコン単結晶の抵抗率が、狙い抵抗率から概ね±5%以上ずれた場合に、ドープ剤の投入量の調整を行うことが好ましい。このようにして環境汚染量を相殺するドープ剤の投入量の調整を行えば、狙い抵抗率に対する精度を更に向上させることができる。
以上のように、本発明のシリコン単結晶の製造方法であれば、1000Ωcm以上の高抵抗率のシリコン単結晶であっても、所望の抵抗率を有するシリコン単結晶を精度よく製造することができる。また、製造するシリコン単結晶の抵抗率を3000Ωcm以上、あるいは6000Ωcm以上とした場合にも、抵抗率規格の狭いシリコン単結晶を精度よく製造することができる。また、環境汚染量の異なる製造環境であっても、1000Ωcm以上の高抵抗率のシリコン単結晶を精度よく製造することができる。
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
まず、環境汚染量(環境B/P量)を考慮してドープ剤の投入量を調整することで、狙い抵抗率に対する精度が向上するか確認を行った。
[比較例1]
原料となる多結晶シリコンを用意し、上述のICP−MSを用いた定量分析によって、多結晶シリコンの表面及びバルク部分のドナー濃度とアクセプター濃度を測定したところ、多結晶シリコンの表面及びバルク部分の合計のドナー濃度は0.03ppba、多結晶シリコンの表面及びバルク部分の合計のアクセプター濃度は0.03ppbaであった。次に、この測定結果に基づいて、狙い抵抗率P型2500Ωcmで、上述のドープ剤の投入量の決定方法によりドープ剤の投入量を求めた。多結晶シリコンに、求めた投入量でドープ剤を投入して、実際に口径600mm(24インチ)の石英ルツボを用いて直径200mmのシリコン単結晶を製造し、製造したシリコン単結晶の抵抗率(実績抵抗率)を測定した。測定した抵抗率は、P型約2800Ωcmであり、狙い抵抗率に対するズレ量は+12%程度であった。
同様にして、環境B/P量を考慮せずに、狙い抵抗率P型50000Ωcm以下でシリコン単結晶を複数製造し、製造したシリコン単結晶の抵抗率を測定した。製造したシリコン単結晶の計算抵抗率(狙い抵抗率)[x軸]と実績抵抗率[y軸]との関係を図2に示す。また、狙い抵抗率P型1000〜3000Ωcmでシリコン単結晶を製造した場合の、狙い抵抗率に対するズレ量とそのばらつきを図4に、狙い抵抗率P型6000Ωcmでシリコン単結晶を製造した場合の、狙い抵抗率に対するズレ量とそのばらつきを図5に、それぞれ示す。
[実施例1]
図2に基づいて、比較例1で製造したシリコン単結晶の実績抵抗率と狙い抵抗率(計算抵抗率)との差異を求め、この差異を環境汚染量(環境1の環境B/P量)の影響と定義し、この差異から環境B量を0.01ppbaと逆算した。次に、上記のようにして測定した多結晶シリコンの表面及びバルク部分のドナー濃度とアクセプター濃度に加えて、上記のようにして求めた環境B量を考慮して、狙い抵抗率P型2500Ωcmで、環境汚染量を相殺するようなドープ剤の投入量を求めた。次に、多結晶シリコンに求めた投入量でドープ剤を投入して、口径600mm(24インチ)の石英ルツボを用いて直径200mmのシリコン単結晶を製造し、製造したシリコン単結晶の抵抗率(実績抵抗率)を測定した。測定した抵抗率は、P型約2600Ωcmであり、狙い抵抗率に対するズレ量は+4%であった。
同様にして、環境B/P量を考慮して、狙い抵抗率P型50000Ωcm以下でシリコン単結晶を複数製造し、製造したシリコン単結晶の抵抗率を測定した。製造したシリコン単結晶の計算抵抗率(狙い抵抗率)[x軸]と実績抵抗率[y軸]との関係を図3に示す。また、狙い抵抗率P型1000〜3000Ωcmでシリコン単結晶を製造した場合の、狙い抵抗率に対するズレ量とそのばらつきを図4に、狙い抵抗率P型6000Ωcmでシリコン単結晶を製造した場合の、狙い抵抗率に対するズレ量とそのばらつきを図5に、それぞれ示す。
図2、3に示されるように、環境B/P量を考慮した本発明の製造方法でシリコン単結晶を製造した実施例1では、環境B/P量を含めて多結晶シリコンの表面及びバルク部分の不純物濃度からドープ剤の投入量を計算した結果、あらゆる狙い抵抗率においてシリコン単結晶の計算抵抗率と近い結果となることが確認された。一方、環境B/P量を考慮しない従来の製造方法でシリコン単結晶を製造した比較例1では、計算抵抗率が実際の抵抗率よりも高くなる場合が多かった。
また、図4、5に示されるように、環境B/P量を考慮した本発明の製造方法でシリコン単結晶を製造した実施例1では、狙い抵抗率P型1000〜3000Ωcm、6000Ωcmのいずれの場合でも、環境B/P量を考慮しない従来の製造方法でシリコン単結晶を製造した比較例1に比べて、狙い抵抗率に対する実際の抵抗率のズレ量が小さく、所望の抵抗率を有するシリコン単結晶を精度よく製造できていた。特に、高抵抗率においての狙い抵抗率に対する精度の向上が顕著であった。
次に、環境が異なる場所(環境2)で保管した多結晶シリコンを用いて、同様に狙い抵抗率に対する精度が向上するか確認を行った。
[比較例2]
環境由来のアクセプター濃度が環境1>環境2である(つまり、アクセプタードープ濃度は環境1>環境2となる)2種類の環境(環境1、2)で保管した多結晶シリコンを用いて、比較例1と同様に環境B/P量を考慮せずに狙い抵抗率P型1000〜3000Ωcm、6000Ωcm、10000Ωcm超でシリコン単結晶を製造し、製造したシリコン単結晶の抵抗率を測定した。また、ドナー濃度の比率を1とした場合の、環境由来のアクセプター濃度と多結晶シリコンのバルク・表面及びドープ剤由来のアクセプター濃度の比率を求めた。結果をそれぞれ図6、7、8に示す。
[実施例2]
上記と同様の2種類の環境(環境1、2)で保管した多結晶シリコンを用いて、実施例1と同様に環境B/P量を考慮して狙い抵抗率P型1000〜3000Ωcm、6000Ωcm、10000Ωcm超でシリコン単結晶を製造し、製造したシリコン単結晶の抵抗率を測定した。また、ドナー濃度の比率を1とした場合の、環境由来のアクセプター濃度と多結晶シリコンのバルク・表面及びドープ剤由来のアクセプター濃度の比率を求めた。結果をそれぞれ図6、7、8に示す。
図6〜8に示されるように、環境B/P量を考慮した本発明の製造方法でシリコン単結晶を製造した実施例2では、いずれの狙い抵抗率においても、環境1、2で実際の抵抗率にほとんど差が生じておらず、また狙い抵抗率に対する精度も良好であった。一方、環境B/P量を考慮しない従来の製造方法でシリコン単結晶を製造した比較例2では、いずれの狙い抵抗率においても、環境1、2で実際の抵抗率に差が生じており、特に狙い抵抗率が高い場合に大きな差が生じていた。なお、比較例2では、アクセプター濃度がより高い環境1で保管した多結晶シリコンを用いてシリコン単結晶を製造した場合には、環境2で保管した多結晶シリコンを用いた場合より、実際の抵抗率が低くなる傾向があった。また、比較例2では、狙い抵抗率に対する精度も実施例2に比べて劣っていた。このことから、本発明の製造方法であれば、環境B/P量が変化しても環境B/P量を把握し、それを考慮したドープ量計算により、狙い抵抗率に対する精度を向上させることが可能であることが示された。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。

Claims (3)

  1. CZ法により1000Ωcm以上の高抵抗率のシリコン単結晶を製造する方法であって、
    予め原料となる多結晶シリコンの表面及びバルク部分の不純物濃度に基づいてドープ剤の投入量を調整して製造したシリコン単結晶の抵抗率と狙い抵抗率の差異を求め、この差異を環境汚染量の影響と定義し、次に前記多結晶シリコンの表面及びバルク部分の不純物濃度と前記環境汚染量に基づいて前記環境汚染量を相殺するように前記ドープ剤の投入量を調整してシリコン単結晶を製造することを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。
  2. 前記環境汚染量を相殺するドープ剤の投入量の調整は、前記環境汚染量のドナー濃度又はアクセプター濃度の影響量が、前記狙い抵抗率に対して所定の範囲を超えたときに行うことを特徴とする請求項1に記載のシリコン単結晶の製造方法。
  3. 前記シリコン単結晶として、抵抗率6000Ωcm以上のシリコン単結晶を製造することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシリコン単結晶の製造方法。
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