以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。本発明の第1実施形態について図1ないし図6を参照して説明する。図1は同実施形態に係る配線基板の斜視説明図、図2は同配線基板の配線パターンの説明に供する要部平面説明図、図3は同配線基板の配線パターンの説明に供する保護層を取り除いた状態の平面説明図、図4は配線基板同士の接続状態での図1のA−A線に沿う断面説明図、図5及び図6は端子の配列ピッチの異なる例の説明に供する説明図である。
第1配線基板101は、フィルムなどの基材(ベース部材)111上に複数本の配線パターン116が配置され、各配線パターン116及び配線パターン116、116の間(この例では、基材111表面)を覆う保護層113が設けられている。保護層113は、例えば絶縁フィルムや絶縁材をコーティングして形成することができる。
そして、各配線パターン116に通じて保護層113で覆われていない複数の端子115を有している。この端子115の領域が電気的接続部114となっている。
なお、端子115は配線パターン116に通じていれば、配線パターン116の一部(露出部分)を端子115とする構成としてもよいし、あるいは、配線パターン116とは別の端子115を設けて配線パターン116と接続した構成とすることもできる。
第2配線基板102は、同様に、フィルムなどの基材(ベース部材)121上に複数本の配線パターン(第1配線基板101と同様であるので図示を省略している。)が配置され、各配線パターン及び配線パターンの間(この例では、基材121表面)を覆う保護層113が設けられている。
そして、各配線パターンに通じて保護層113で覆われていない複数の端子125を有している。この端子125の領域が電気的接続部124となっている。
基材111,121は、ここでは、フレキシブルな電気絶縁性のフィルムであり、例えばPET、より好ましくはポリイミドで形成されている。また、端子115、125の表面にはNi/Auメッキ等が施されている。さらに、保護層113、123は、絶縁性フィルム部材を使用しているが、絶縁材をコーティングすることもでき、端子115、125を除く領域で配線パターン116などを覆っている。
ここで、第1配線基板101の隣り合う端子115、115間のピッチ(端子115、115の並び方向における中心間距離)には、図3及び図4に示すように、第1ピッチP1と、第1ピッチP1より広い第2ピッチP2とがある。ここでは、第2ピッチP2は第1ピッチP1のn倍(n=2以上の整数)としているが、これに限るものではない。
第1ピッチP1は、汎用的な検査装置のプローブの配置ピッチや汎用的な等ピッチの配線基板のピッチと同じとすることが好ましい。この汎用的な検査装置を使用する場合には、第2ピッチP2は第1ピッチP1の整数倍であることがこのましい。
具体的には、例えば図5に示すように、端子115a〜115eが並んで配列され、端子115dがGND、端子115a、115b、115eがGNDに対して0〜3.3V、端子115cが同じく37Vとする。
このとき、端子115a−115b間の電位差は0V〜3.3V、端子115b−115c間の電位差は(37−3.3=33.7V)、端子115c−115d間の電位差は37V、端子115d−115e間の電位差は0V〜3.3Vとなる。
そこで、隣り合う端子115bとの間の電位差が大きい端子115cは、端子115bとの間で第1ピッチP1よりも広い第2ピッチP2分の距離を置いて配置している。また、端子115cは、隣り合う端子115dとの間の電位差も大きいので、端子115dとの間で第1ピッチP1よりも広い第2ピッチP2分の距離を置いて配置している。
また、例えば図6に示すように、端子115f〜115jが並んで配列され、端子115iがGND、端子115jがGNDに対して0〜3.3V、端子115f、115g、115hが同じく100Vとする。
このとき、上述した図5で説明したように隣り合う端子間の電位差でピッチを異ならせる場合には、端子115f、115g間の電位差は0Vであるので第1ピッチP1となる。
しかしながら、高い電圧がかかる端子は絶縁性を確保するため、広い第2ピッチP2で配置することが好ましい。そこで、端子115f、115g間の電位差は0Vであるが、高い電圧がかかるため、第2ピッチP2で配置している。
また、ここでは、端子115g、115hは同じ配線パターン116に通じているので、図5の隣り合う端子間の電位差に対応するピッチの割り当てと同様に、第1ピッチP1で配置している。
次に、本実施形態における配線パターンについて図3を参照して説明する。
図3の例では、端子115k、115m、115n、115o1〜115o3、115p1〜115p3が配列されている。
端子115kと115mとの間、端子115mと115nとの間、端子115nと端子115o1との間、端子115o3と端子115p1との間は、それぞれ第2ピッチP2としている。
一方、端子115o1と端子115o2との間、端子115o2と端子115o3との間、端子115p1と端子115p2との間、端子115p2と端子115p3との間は、それぞれ第1ピッチP1としている。
また、隣り合う端子115o1と端子115o2の間隔、端子115o2と端子115o3の間隔、端子115p1と端子115p2の間隔、端子115p2と端子115p3の間隔は、それぞれ間隔g3としている。
端子115k、115m、115nは、それぞれ配線パターン116k、116m、116nに通じている。また、端子115o1〜115o3は1つの配線パターン116oに通じ、端子115p1〜115p3も1つの配線パターン116pに通じている。
ここで、第2ピッチで隣り合う2つの端子にそれぞれ対応する2つの配線パターンのうち少なくとも一方の配線パターン116は、端子幅w1よりも広い幅w2である広幅部116Aを有している。
例えば、第2ピッチP2で隣り合う端子115k、115mが通じる配線パターン116k、116mの一方の配線パターン116mは、端子115の幅w1よりも広い幅w2の広幅部116Aを有している。
そして、一方の配線パターン116の広幅部116Aと他方の配線パターン116との間隔g2は、第2ピッチP2で隣り合う2つの端子間115、115の間隔g1よりも狭い構成としている。
例えば、上記の例において、第2ピッチP2で隣り合う端子115k、115mが通じる配線パターン116k、116mの一方の配線パターン116mの広幅部116Aと他方の配線パターン116kの間隔g2は、第2ピッチP2で隣り合う2つの端子115k、115mの間隔g1よりも狭い構成としている。
同様に、第2ピッチP2で隣り合う端子115o3と端子115p1が通じる配線パターン116o、116pの一方の配線パターン116oの広幅部116Aと他方の配線パターン116pの広幅部116Aとの間隔g2も、第2ピッチP2で隣り合う2つの端子115o3、115p1の間隔g1よりも狭い構成としている。
この場合、第2ピッチP2で隣り合う他方の端子の方向に、一方の配線パターン116mの幅が拡大されて広幅部116Aが形成されている。つまり、第2ピッチP2で隣り合う配線パターン116、116間のスペースに広幅部116Aを形成している。
つまり、保護層113によって配線パターン116及び配線パターン116、116間が覆われて領域では、配線パターン116、116間のショートを防ぐことができるので、配線パターン116、116間の間隔g2は、保護層113で覆われていない端子間115、115間の間隔g1より狭くすることができる。
そこで、保護層113によって覆われている領域では配線パターン116に広幅部116Aを設けて、配線パターン116の抵抗値を低減している。
このように、端子が第2ピッチで隣り合う配線パターンの少なくとも一方の配線パターンは、端子の幅w1よりも広い幅w2の広幅部を有し、広幅部は、幅広部と隣り合う配線パタンとの隙間は、保護層で覆われ、一方の配線パターンの広幅部と他方の配線パターンとの間隔g2が、第2ピッチP2で隣り合う端子間の間隔g1よりも狭い構成とすることで、配線パターンの抵抗値を低減することができる。
また、一方の配線パターン116の広幅部116Aと他方の配線パターン116との間隔g2は、第1ピッチP1よりも狭い構成としている。
ここで、配線パターン116の広幅部116Aと他方の配線パターン116との間は絶縁性の保護層113で覆われるので、配線パターン116の広幅部116Aと他方の配線パターン116との間隔g2を十分狭くすることができ、端子115間の基準ピッチ(第1ピッチ)よりも狭くすることができる。
つまり、配線パターン116の広幅部116Aを広く(太く)することができるので、配線パターン116の抵抗値をより下げることができる。これにより、配線パターン116の発熱量を低減したり、配線パターン116の電流容量を増やすことができる。なお、端子115間の基準ピッチ(第1ピッチP1)は、端子115間の絶縁性を確保するために必要な沿面距離によって決まる。
本実施形態においては、図4に示すように、第1配線基板101と接続する第2配線基板102の端子125のピッチについても、図2に示すように、第1配線基板101の端子115と同じピッチで配置している。
したがって、電気的に接続されない余分な端子、配線パターンを設ける必要がなくなる。
次に、同配線基板の他の異なる例について図7及び図8を参照して説明する。図7は同配線基板の配線パターンの他の第1例の説明に供する保護層を透過状態で示す平面説明図、図8は同じく他の第2例の説明に供する保護層を透過状態で示す平面説明図である。
図7に示す第1例では、端子115k、115m、115n、115o、115p、115q、115sが配列されている。
端子115nと115oとの間、端子115oと115pとの間、端子115pと端子115qとの間は、それぞれ第2ピッチP2とし、それ以外を第1ピッチP1している。
そして、ここでは、両隣りの端子との間が広い第2ピッチP2で配置されている端子115o、115pに通じる配線パターン116o、116pには、端子並び方向において両側に広がって、端子115の幅w1よりも広い幅w2の広幅部116Aを有している。
そして、一方の配線パターン116の広幅部116Aと他方の配線パターン116との間隔g2は、第2ピッチP2で隣り合う2つの端子間115、115の間隔g1よりも狭い構成としている。
これにより、配線基板を屈曲させたときに断線し易くなるパターン屈曲部を少なくでき、信頼性を向上することができる。
図8に示す第2例では、端子115k、115m、115n、115o、115p、115q、115sが配列されている。
端子115nと115oとの間、端子115oと115pとの間、端子115pと端子115qとの間は、それぞれ第2ピッチP2と、それ以外を第1ピッチP1している。
そして、ここでは、隣り合う端子に対して第2ピッチP2で配置する端子(配線パターンの間隔が広くなる端子)である端子115o、115p、115qに通じる配線パターン116o、116p、116qには、端子並び方向において両側に広がって、端子115の幅w1よりも広い幅w2の広幅部116Aを有している。
そして、一方の配線パターン116の広幅部116Aと他方の配線パターン116との間隔g2は、第2ピッチP2で隣り合う2つの端子間115、115の間隔g1よりも狭い構成としている。
これにより、第1例と同様に、配線基板を屈曲させたときに断線し易くなるパターン屈曲部を少なくでき、信頼性を向上することができる。
次に、本発明の第2実施形態について図9及び図10を参照して説明する。図9は同実施形態に係る配線基板の斜視説明図、図10は接続状態での図9のB−B線に沿う断面説明図である。
本実施形態では、第1配線基板101は前記第1実施形態と同じ構成としている。第2配線基板102は、端子125の配列ピッチを第1ピッチP1だけの等ピッチとしている。
ここで、第2配線基板102の端子125の内、第1配線基板101の第2ピッチP2で配置されている端子115、115の間に配置される端子はダミー端子127としている。ダミー端子127は電気的にはどこにも接続されていない。
この場合、第2配線基板102は、端子125及びダミー端子127が等ピッチで連続して規則正しく並んでいるので電気的接続部114のうねりや反りが抑えられる。
次に、本発明の第3実施形態について図11を参照して説明する。図11は同実施形態の説明に供する斜視説明図である。
本実施形態では、前記第2実施形態の第2配線基板102と接続されたプリント基板103を備えている。
プリント基板103には、第2配線基板102の端子125に通じる配線パターンに対応して、電気チェッカーのプローブを接続するためのテストパッド135が設けられている。
そこで、ダミー端子127に導通しているテストパッド137と、ダミー端子127に隣接する端子に導通しているテストパッド139の間で、短絡していないことのチェックを行うことができるようにしている。
ダミー端子127が、隣接する端子125と短絡することにより、高電圧を印加する端子125と高電圧を印加しない端子間の実質的な沿面距離が短くなっていないことを検査でき、不良の発生を防止できる。
次に、本発明の第4実施形態について図12を参照して説明する。図12は同実施形態の説明に供する斜視説明図である。
本実施形態では、前記第3実施形態においてプリント基板103上で第2配線基板102の複数のダミー端子127を相互に接続する接続パターン138を設けている。なお、第2配線基板102上で複数のダミー端子127を相互に接続することもできる。
これにより、ダミー端子127と隣接する端子との短絡チェックの際には、チェッカーのプローブが、ダミー端子127側はダミー端子127に対応するテストパッド137の1つと接触していれば良くなり、コストダウンを図れる。
次に、本発明の第5実施形態について図13を参照して説明する。図13は同実施形態の説明に供する平面説明図である。
本実施形態では、仮想端子位置603は等ピッチ(第1ピッチP1)でマトリクス状に配置されている。そして、低電圧又はGNDレベルを印加する端子602は第1ピッチP1で配置され、高電圧を印加する端子601は第2ピッチP2が確保される端子位置603に配置されている。
ここで、上記各実施形態で説明した第1ピッチ及び第2ピッチと端子に与えられる電圧との関係について図15も参照して説明する。図15は端子に与えられる電圧と必要な沿面距離の関係の一例の説明図である
一般的に、50Vを超える電圧では、エレクトロケミカルマイグレーション(イオンマイグレーション)やトラッキング等を考慮する必要があるので、短絡してはいけない隣接の導体(端子)に対しては、沿面距離を大きく取る。
一方、50V以下の電圧ではエレクトロケミカルマイグレーション(イオンマイグレーション)を考慮する必要は小さいが、絶縁性を確保するため、電位差の大きい隣接の導体間は沿面距離を大きく取る。
この場合、最低限確保する沿面距離の値については、各種基準があるが、例えばUL840(図15)やUL60950などが挙げられる。これらに示された値以上の沿面距離になるように、第2ピッチP2を第1ピッチP1のn倍(n=2以上の整数)とするときの「nの値」を設定する。
なお、上記の説明では、端子間のピッチは2値に限らず、各々電位が大きく異なる3値以上の端子が混在する場合、第2ピッチよりも広い第3ピッチ、第3ピッチよりも広い第4ピッチを設けることもできる。
また、端子間のピッチの設定は、例えば、電位差が最低の端子間に必要な沿面距離を確保できる端子間のピッチを「基準ピッチ」とし、それよりも大きい電位差の端子間は基準ピッチの2倍、それでも必要な沿面距離が確保できない場合は基準ピッチの3倍、4倍・・・というように広くすることができる。
一般的な端子のピッチとしては、例えば1mm、0.5mm、0.3mm、又は0.2mmがある。そこで、これらのいずれかのピッチを基準ピッチとし、基準ピッチの端子間では沿面距離が不足する電位差が生じる端子間は基準ピッチの2倍、それでも必要な沿面距離が確保できない場合は基準ピッチの3倍、4倍・・・というように広くする。
次に、本発明の第6実施形態に係る配線基板について前述した第1実施形態の説明で使用した前記図1ないし図3と図15ないし図17も参照して説明する。なお、図15は同実施形態に係る配線基板の説明に供する比較例1の配線基板の要部平面説明図である。図16は同じく比較例2の配線基板の要部平面説明図、図17は同じく同実施形態の配線基板の要部平面説明図である。
本実施形態における配線基板101は、複数の配線パターン116が配列され、配線パターン116及び配線パターン116、116間を覆う絶縁性の保護層113が設けられ、配線パターン116に通じて保護層113で覆われていない複数の端子115を有している。そして、隣り合う端子115、115間のピッチには、少なくとも、基準ピッチとなる第1ピッチP1と、第1ピッチP1より広い第2ピッチP2とがある。ここで、端子115が第2ピッチP2で隣り合う配線パターン116の少なくとも一方の配線パターン116は、保護層113で覆われた領域内で端子115の幅よりも広い幅の広幅部116Aを有している。さらに、第2ピッチP2が第1ピッチP1のn倍(n=2以上の整数)である構成としている。
つまり、図15(a)に示す配線パターン116の抵抗値を低減するために、図15(b)に示すように、保護層113から露出した端子115も含めて配線パターン116の幅を広く(太く)すると、隣り合う端子115、115間のスペースが小さくなる。隣り合う端子115、115間のスペースが小さくなると、マイグレーションが発生しやすくなり、隣り合う端子115同士でショートするおそれがある。
そこで、図16に示すように、保護層113で覆われた領域内において配線パターン116の広幅部116Aを形成して、保護層113から露出した端子115については必要な沿面距離以上離すことが好ましい。
このとき、図16に示すように、統一なく端子115の間隔を広げてしまうと、配線基板101の基準ピッチで等間隔に端子110aが並んだ汎用的な検査装置のプローブ(あるいは、汎用的な配線基板)110と接続したときに、端子115の位置がズレてしまうことになる。
そこで、本実施形態では、基準ピッチである第1ピッチP1で隣り合う端子115を配置したときに必要な沿面距離を確保できない端子115同士は、基準ピッチのn倍(n=2以上の整数)の第2ピッチ単位で配置している。
これにより、基準ピッチで等間隔に並んだプローブや別の配線基板の端子と接続したとしても、両者の端子の位置ずれは生じない。つまり、配線パターンの抵抗値を低減しつつ、必要な沿面距離を端子間に確保することができ、さらに汎用的な配線基板や検査装置と接続することができる。
次に、本発明の第7実施形態について図16を参照して説明する。図16は本発明に係る配線基板及び配線部材を備える液体吐出ヘッドの一例の分解斜視説明図である。
この液体吐出ヘッドは、ノズル4が形成されたノズル板1と、個別流路及び圧力発生手段としての圧電素子11を含むアクチュエータ基板20と、アクチュエータ基板20に接合される保持基板50と、共通液室を形成する共通液室部材70とを備えている。共通液室部材70はフレーム部材を兼ねている。
保持基板50には共通液室の一部となる開口部51が設けられている。アクチュエータ基板20には開口部51と内部の個別液室を通じる開口9が設けられている。共通液室部材70には外部から液体を供給する供給口部71が設けられている。
アクチュエータ基板20には、圧電素子11を駆動するドライバIC500が搭載されており、アクチュエータ基板20の長手方向の端部にドライバIC500への接続配線パターン18が設けられている。
そして、この接続配線パターン18に、第2配線基板102が接続され、第2配線基板102に第1配線基板101が接続される。第2配線基板102と第1配線基板101とで本発明に係る配線部材100が構成され、第2配線基板102と第1配線基板101との接続部はフィルム部材106で覆われている。
そして、共通液室部材70の長手方向の端部に開口部72が設けられ、第2配線基板102は開口部72を通して引き出されている。
次に、本発明の第8実施形態について図19を参照して説明する。図19は同実施形態に係る液体吐出ヘッドの斜視説明図である。
この液体吐出ヘッド800は、液体を吐出するヘッド本体部801と、ヘッド本体部801内の共通液室10に通じて液体を供給する液体供給流路を有する液体供給部材802とを備えている。
そして、ヘッド本体部801には外部と接続するコネクタ141を有するプリント基板104が液体供給部材802の外面側に沿って立てて配置され、ヘッド本体部801から引き出された第2配線基板102とプリント基板104とを架橋配線部材となる第1配線基板101で接続している。
次に、同第8実施形態におけるヘッド本体部の一例について図20ないし図23を参照して説明する。図20は同じくヘッド本体部の斜視説明図、図21は同ヘッド本体部のノズル配列方向と直交する方向に沿う断面説明図、図22は図21の要部拡大断面説明図、図23は同ヘッド本体部のノズル配列方向に沿う要部断面説明図である。
ヘッド本体部801は、ノズル板1と、流路板2と、壁面部材である振動板3と、圧力発生素子である圧電素子11と、保持基板50と、FPCなどの配線部材である第2配線基板102と、共通液室部材70と、カバー部材45とを備えている。
ここで、流路板2、振動板3及び圧電素子11で構成される部分がアクチュエータ基板20となる。
ノズル板1には、液体を吐出する複数のノズル4が形成されている。ここでは、ノズル4を配列したノズル列を4列配置した構成としている。
流路板2は、ノズル板1及び振動板3とともに、ノズル4が通じる個別液室6、個別液室6に通じる流体抵抗部7、流体抵抗部7が通じる液導入部8を形成している。
この液導入部8は振動板3の開口9と保持基板50の流路となる開口部51を介して共通液室部材70で形成される共通液室10に通じている。
振動板3は、個別液室6の壁面の一部を形成する変形可能な振動領域30を形成している。そして、この振動板3の振動領域30の個別液室6と反対側の面には、振動領域30と一体的に圧電素子11が設けられ、振動領域30と圧電素子11によって圧電アクチュエータ構成している。
圧電素子11は、振動領域30側から下部電極13、圧電層(圧電体)12及び上部電極14を順次積層形成して構成している。この圧電素子11上には絶縁膜21が形成されている。
複数の圧電素子11の共通電極となる下部電極13は、共通配線15を介して共通電極電源配線パターン26に接続されている。なお、下部電極13は、ノズル配列方向ですべての圧電素子11に跨って形成される1つの電極層である。
また、圧電素子11の個別電極となる上部電極14は、個別配線16を介して駆動回路部である駆動IC(以下、「ドライバIC」という。)500に接続されている。個別配線16などは絶縁膜22にて被覆されている。
ドライバIC500は、圧電素子列の列間の領域を覆うようにアクチュエータ基板20にフリップチップボンディングなどの工法により実装されている。
アクチュエータ基板20に搭載されたドライバIC500は、駆動波形(駆動信号)が供給される個別電極電源配線パターン25と接続されている。
第2配線基板102に設けられた配線パターンが、ドライバIC500と電気的に接続されており、第2配線基板102の他端側は前記第1配線基板101を介してプリント基板104に接続され、更に装置本体側の制御部に接続される。
そして、アクチュエータ基板20の振動板3側には、アクチュエータ基板20上の圧電素子11を覆っている保持基板50が接着剤で接合されている。
保持基板50には、共通液室10と個別液室6側を通じる流路の一部となる開口部51と、圧電素子11を収容する凹部52と、ドライバIC500を収容する開口部53が設けられている。開口部51は、ノズル配列方向に亘って延びるスリット状の貫通穴であり、ここでは共通液室10の一部を構成している。
この保持基板50は、アクチュエータ基板20と共通液室部材70との間に介在し、共通液室10の壁面の一部を形成している。
共通液室部材70は、各個別液室6に液体を供給する共通液室10を形成する。なお、共通液室10は4つのノズル列に対応してそれぞれ設けられる。また、液体供給部材802と通じる供給口部71を介して共通液室10に所要の色の液体が供給される。
共通液室部材70には、ダンパ部材90が接合されている。ダンパ部材90は、共通液室10の一部の壁面を形成する変形可能なダンパ91と、ダンパ91を補強するダンパプレート92とを有している。
共通液室部材70はノズル板1の外周部及び保持基板50と接着剤で接合され、アクチュエータ基板20及び保持基板50を収容して、このヘッドのフレームを構成している。
そして、ノズル板1の周縁部及び共通液室部材70の外周面の一部を覆うカバー部材45を設けている。
このヘッド本体部801においては、ドライバIC500から圧電素子11の上部電極14と下部電極13の間に電圧を与えることで、圧電層12が電極積層方向、すなわち電界方向に伸張し、振動領域30と平行な方向に収縮する。これにより、振動領域30の下部電極13側に引っ張り応力が発生し、振動領域30が個別液室6側に撓み、内部の液体を加圧することで、ノズル4から液体が吐出される。
次に、本発明に係る液体を吐出する装置の一例について図24及び図25を参照して説明する。図24は同装置の要部平面説明図、図25は同装置の要部側面説明図である。
この装置は、シリアル型装置であり、主走査移動機構493によって、キャリッジ403は主走査方向に往復移動する。主走査移動機構493は、ガイド部材401、主走査モータ405、タイミングベルト408等を含む。ガイド部材401は、左右の側板491A、491Bに架け渡されてキャリッジ403を移動可能に保持している。そして、主走査モータ405によって、駆動プーリ406と従動プーリ407間に架け渡したタイミングベルト408を介して、キャリッジ403は主走査方向に往復移動される。
このキャリッジ403には、本発明に係る液体吐出ヘッド404及びヘッドタンク441を一体にした液体吐出ユニット440を搭載している。液体吐出ユニット440の液体吐出ヘッド404は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液体を吐出する。また、液体吐出ヘッド404は、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配置し、吐出方向を下方に向けて装着している。
液体吐出ヘッド404の外部に貯留されている液体を液体吐出ヘッド404に供給するための供給機構494により、ヘッドタンク441には、液体カートリッジ450に貯留されている液体が供給される。
供給機構494は、液体カートリッジ450を装着する充填部であるカートリッジホルダ451、チューブ456、送液ポンプを含む送液ユニット452等で構成される。液体カートリッジ450はカートリッジホルダ451に着脱可能に装着される。ヘッドタンク441には、チューブ456を介して送液ユニット452によって、液体カートリッジ450から液体が送液される。
この装置は、用紙410を搬送するための搬送機構495を備えている。搬送機構495は、搬送手段である搬送ベルト412、搬送ベルト412を駆動するための副走査モータ416を含む。
搬送ベルト412は用紙410を吸着して液体吐出ヘッド404に対向する位置で搬送する。この搬送ベルト412は、無端状ベルトであり、搬送ローラ413と、テンションローラ414との間に掛け渡されている。吸着は静電吸着、あるいは、エアー吸引などで行うことができる。
そして、搬送ベルト412は、副走査モータ416によってタイミングベルト417及びタイミングプーリ418を介して搬送ローラ413が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。
さらに、キャリッジ403の主走査方向の一方側には搬送ベルト412の側方に液体吐出ヘッド404の維持回復を行う維持回復機構420が配置されている。
維持回復機構420は、例えば液体吐出ヘッド404のノズル面(ノズルが形成された面)をキャッピングするキャップ部材421、ノズル面を払拭するワイパ部材422などで構成されている。
主走査移動機構493、供給機構494、維持回復機構420、搬送機構495は、側板491A,491B、背板491Cを含む筐体に取り付けられている。
このように構成したこの装置においては、用紙410が搬送ベルト412上に給紙されて吸着され、搬送ベルト412の周回移動によって用紙410が副走査方向に搬送される。
そこで、キャリッジ403を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて液体吐出ヘッド404を駆動することにより、停止している用紙410に液体を吐出して画像を形成
する。
このように、この装置では、本発明に係る液体吐出ヘッドを備えているので、高画質画像を安定して形成することができる。
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの他の例について図26を参照して説明する。図26は同ユニットの要部平面説明図である。
この液体吐出ユニットは、前記液体を吐出する装置を構成している部材のうち、側板491A、491B及び背板491Cで構成される筐体部分と、主走査移動機構493と、キャリッジ403と、液体吐出ヘッド404で構成されている。
なお、この液体吐出ユニットの例えば側板491Bに、前述した維持回復機構420、及び供給機構494の少なくともいずれかを更に取り付けた液体吐出ユニットを構成することもできる。
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの更に他の例について図27を参照して説明する。図27は同ユニットの正面説明図である。
この液体吐出ユニットは、液体供給部材である流路部品444が取付けられた液体吐出ヘッド404と、流路部品444に接続されたチューブ456で構成されている。
なお、流路部品444はカバー442の内部に配置されている。流路部品444に代えてヘッドタンク441を含むこともできる。また、流路部品444の上部には液体吐出ヘッド404と電気的接続を行うコネクタ443が設けられている。
本願において、吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
「液体吐出ユニット」は、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体が含まれる。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
例えば、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
また、液体吐出ユニットとして、ヘッドタンク若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッドに供給される。
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
「液体を吐出する装置」には、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置が含まれる。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を 気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
また、「液体を吐出する装置」としては、他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
なお、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。