JP2018087885A - 偏光制御装置および偏光制御方法 - Google Patents

偏光制御装置および偏光制御方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2018087885A
JP2018087885A JP2016230675A JP2016230675A JP2018087885A JP 2018087885 A JP2018087885 A JP 2018087885A JP 2016230675 A JP2016230675 A JP 2016230675A JP 2016230675 A JP2016230675 A JP 2016230675A JP 2018087885 A JP2018087885 A JP 2018087885A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
polarization
light
liquid crystal
optical element
control
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2016230675A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6817623B2 (ja
Inventor
啓介 吉木
Keisuke Yoshiki
啓介 吉木
橋本 守
Mamoru Hashimoto
守 橋本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
University of Hyogo
Original Assignee
University of Hyogo
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by University of Hyogo filed Critical University of Hyogo
Priority to JP2016230675A priority Critical patent/JP6817623B2/ja
Publication of JP2018087885A publication Critical patent/JP2018087885A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6817623B2 publication Critical patent/JP6817623B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Microscoopes, Condenser (AREA)
  • Liquid Crystal (AREA)
  • Optical Modulation, Optical Deflection, Nonlinear Optics, Optical Demodulation, Optical Logic Elements (AREA)

Abstract

【課題】本発明は、ビーム断面内に任意の偏光分布を生成できる低コストかつ小型の偏光制御装置および偏光制御方法を提供する。【解決手段】偏光制御装置1は、光軸に沿って配置された3つのホモジニアス配向の液晶光学素子LC1〜LC3(総称してLC)を備える。液晶光学素子LCの各々は、位相および偏光状態を制御できる放射状に8分割された制御領域Jを有し、各制御領域Jは、他の液晶光学素子LCの各制御領域Jと互いに対応するように光軸に沿って配置されている。各制御領域Jは、入射する光の偏光状態をジョーンズ行列に従って変換する。液晶光学素子LC1は入射された直線偏光の位相を調整し、液晶光学素子LC2は直線偏光を楕円偏光に変換し、液晶光学素子LC3は楕円偏光を他の偏光状態に変換する。【選択図】図1

Description

本発明は、広がりを有して入射する入射光を光軸交差面の各部位毎に制御された偏光状態に変換して出射する偏光制御装置および偏光制御方法に関する。
光のビーム横断面にビーム中心に対して放射状の偏光分布をもつラジアル偏光ビーム、および同心円状の偏光分布をもつアジマス偏光ビームの2種類の偏光ビームが実用化されている。一般に、光のビーム横断面に種々の偏光状態が分布する偏光ビーム(ベクトルビームと呼ばれる)は、通常の一様偏光のビームにはない種々の機能を有し、レーザ加工やレーザ顕微鏡に適用される。このような偏光ビームを集光させると、より小さい焦点の形成、集光軸に沿った光電場の形成(Z偏光)等、通常の偏光ビームでは実現できない種々の機能を有する光を焦点位置に形成できる。このような偏光ビームは、分光分析、光ピンセット、レーザ加工などに応用されている。近年ではさらに複雑な位相分布と偏光分布の生成により、収差補正や偏光計測などへの応用が行われている。
ビームを集光して形成した焦点の特性は、集光前のビーム横断面内の位相と偏光分布の影響を受ける。フォーカスエンジニアリングは、集光前のビームの位相分布や偏光分布を制御し調整することにより、様々な付加機能を生み出す技術である。この技術に関連して、透明基板間に液晶を封入し、放射状に8分割した液晶を制御用の電極を備えて形成した、ラジアル偏光生成用の偏光面回転素子を有する偏光制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、ビーム横断面内の位相や偏光分布を制御し調整するため、放射状に8分割した電極を有する2枚の液晶素子と1枚のλ/4板を順に積重ねて形成した偏光制御装置が知られている(例えば、非特許文献1参照)。この装置は、1枚目の液晶素子で位相を調整し、2枚目の液晶素子と最後のλ/4板とで、各電極に対応する部位を透過する光の偏光面を個別に回転させる。この装置は、各部位ごとに偏光面の回転を自在に制御することができ、ラジアル偏光、アジマス偏光、直線偏光などの偏光パターンをビーム横断面内に生成可能とされている。
国際公開第2011/105619号
ケイ・ヨシキ他(K.Yoshiki et al.)著 「セコンド−ハーモニック−ジェネレーション マイクロスコープ ユージング エイトセグメント−ポーラリゼーション−モード コンバータ トゥー オブザーブ スリー−ディメンショナル モレキュラ オリエンテーション(Second−harmonic−generation microscope using eight−segment polarization−mode converter to observe three−dimensional molecular orientation)」、オプティックス レターズ(Opt.Lett.)、Vol.32,pp.1680−1682(2007)
しかしながら、上述した特許文献1や非特許文献1に示されるような偏光制御装置は、いずれも、直線偏光を直線偏光のまま回転させてラジアル偏光やアジマス偏光とするものであり、光軸交差面内に任意の偏光状態の光を分布させることができない。近年のフォーカスエンジニアリングにおいて、有用な位相分布と偏光分布が理論的に予測される一方で、それらを実現する光学素子としての偏光制御装置の開発や光学機器への実装は、あまり進んでいない。既設の光学機器に実装可能な現状の光学素子は、理論計算が要求する複雑な位相分布や偏光分布をほとんど実現することができず、逆にこれらの分布を実現できる偏光制御装置は、高価であり、また小型化の余地がなく、組込用途に適していない。
本発明は、上記課題を解消するものであって、簡単な構成により、ビーム断面内に任意の偏光分布を生成できる低コストかつ小型の偏光制御装置および偏光制御方法を提供することを目的とする。
上記課題を達成するために、本発明の偏光制御装置は、光軸に沿って入射する入射光を、その光軸交差面の各部位ごとに偏光状態を制御された出射光に変換して出射する偏光制御装置において、光軸に沿って配置された3つ以上の光学素子を備え、光学素子の各々は、光学素子の各々に入射する光をその光軸交差面の各部位において位相および偏光状態を制御できるようにするために、複数の制御領域に分割され、光学素子の各々の各制御領域は、他の光学素子の各制御領域と光軸に沿って互いに対応するように配置され、制御領域の各々は、入射する光の偏光状態をジョーンズ行列に従って変換することを特徴とする。
本発明の偏光制御方法は、上記偏光制御装置を用いて、入射光を光軸交差面の各部位ごとに制御された偏光状態に変換して出射する偏光制御方法において、光学素子を光軸に沿って3つ備え、光の入射側から1番目の光学素子に、直線偏光したレーザ光を入射させ、レーザ光が3つの光学素子の制御領域を順次通過する際に、1番目の光学素子においては、レーザ光に対し、制御領域ごとに所定の位相遅れを与え、光の入射側から2番目の光学素子においては、レーザ光の偏光状態を、制御領域ごとに直線偏光から楕円偏光に変換し、光の入射側から3番目の光学素子においては、レーザ光の偏光状態を、制御領域ごとに楕円偏光から他の偏光状態に変換し、3番目の光学素子の制御領域のそれぞれにおいて楕円率と偏光方向が任意に制御された出射光を得ることを特徴とする。
本発明の偏光制御装置および偏光制御方法によれば、ビーム断面内に任意の偏光分布を生成することができる。
本発明の一実施形態に係る偏光制御装置の模式的分解斜視図。 (a)は同装置に用いられる液晶光学素子の断面図、(b)は(a)の液晶光学素子に電圧を印加したときの断面図。 (a)は同装置の液晶光学素子を順次通過する光の偏光状態の変化を説明するブロック図、(b)は(a)の偏光状態の変化をジョーンズ法によって説明する図。 図3(a)(b)に示される光cのジョーンズベクトルの成分を説明する図。 同装置を用いる本発明の一実施形態に係る偏光制御方法を説明するフローチャート。 同装置および同方法によって光軸交差面の各部位に生成可能な偏光状態を示すマップ図。 同装置および同方法によって生成可能な偏光状態を12ビットの分解能でジョーンズ法によって数値計算し、その離散的な計算結果を楕円方位角と消光比の関係図に示し、LC2による位相差ηを重ねて濃淡表示した図。 図7のLC2による位相差ηに替えて、LC3による位相差ζを濃淡表示した図。 図7と同様の12ビットの計算結果に、消光比が2,5,10の点またはその消光比に近い値を持つ点を重ねてプロットした図。 (a)は同装置によるアジマス偏光の生成を説明する模式的な斜視図、(b)は同装置による他の偏光の生成を説明する模式的な斜視図。 他の実施形態に係る偏光制御装置の液晶光学素子における制御領域の形成例を示す平面図。 (a)は他の実施形態に係る偏光制御装置の液晶光学素子を制御領域のアレイ配置によって形成する例を示す平面図、(b)は(a)の制御領域を組み合わせて8分割扇形の制御領域を形成する例を示す平面図。 他の実施形態に係る偏光制御方法を説明するフローチャート。 偏光制御装置の使用例を示す側面図。 ラジアル偏光を収束させて形成するZ偏光を説明する斜視図。 Z偏光の使用例を説明する断面図。 媒質の影響を説明する断面図。 媒質の影響を相殺して試料観察を行う例を説明する断面図。 一実施形態に係る偏光制御システムのブロック図。 偏光制御装置を反射型の顕微鏡に適用する例を示す側面図。 (a)は偏光制御装置における光の伝搬方向に対する対称性を説明する側面図、(b)は偏光制御装置を偏光状態の検出に適用する例を示す側面図。
(偏光制御装置)
以下、本発明の実施形態に係る偏光制御装置および偏光制御方法について、図面を参照して説明する。図1は、右手直交座標系xyzのx軸方向に直線偏光して光軸z方向に進むビームを、ラジアル偏光ビームに変換して出射する偏光制御装置1を示す。偏光制御装置1は、3つの液晶光学素子LC1,LC2,LC3(総称して、液晶光学素子LC)を光軸zに沿って順番に備えている。液晶光学素子LCの各々は、ホモジニアス配向の液晶素子であり、液晶の配向方向αとこれに直交する方向βの2方向における実効屈折率Nα、Nβを、互いに異なる値となるように制御することができる(図2を参照して後述)。
光の入射側から1番目と3番目の液晶光学素子LC1,LC3は、配向方向αがx軸方向となるように配置されている。言い換えると、入射光は、その直線偏光の方向が配向方向αに一致するように入射される。2番目の液晶光学素子LC2は、その配向方向αが液晶光学素子LC1,LC3の配向方向αに対して角度θ傾くように、配置されている。角度θは、本実施形態ではθ=45°である。
液晶光学素子LC1,LC2,LC3の各々は、放射状に8分割した制御領域Jを有している。制御領域Jの各々は、それぞれ独立に、入射する光の位相および偏光状態を制御できる。液晶光学素子LC1,LC2,LC3の各々の各制御領域Jは、光軸zに沿って互いに対応するように、配置されている。すなわち、ある液晶光学素子LCのある制御領域Jを光軸に沿って平行移動させると、他の液晶光学素子LCの制御領域Jに重なるように、各制御領域Jが形成され、かつ、各液晶光学素子LCが配置されている。このような制御領域Jの各々は、入射する光の位相や偏光状態を、ジョーンズ行列に従って、他の位相や偏光状態に変換することができる(図3参照)。
従って、偏光制御装置1に入射する光は、液晶光学素子LCの各々における光軸交差面の各部位に位置する制御領域Jによって、個々に、位相および偏光状態が制御される。偏光制御装置1は、入射光の光軸交差面z=zinにおいて全ての電界ベクトルEinがx軸方向を向いた直線偏光が入射されると、出射光のある光軸交差面z=zoutにおいて電界ベクトルEoutが半径方向を向いたラジアル偏光ビームを生成する。このような位相および偏光状態の変換のため、入射光には、液晶光学素子LC1の各制御領域Jにおいて個々に所定の位相差(位相遅れ)ξが与えられる。
次の液晶光学素子LC2では、偏光方向xと配向方向αとの間の回転角度θの存在と、各制御領域Jにおいて個々に付与される所定の位相差(位相遅れ)ηによって、各制御領域Jごとに直線偏光から楕円偏光に変換される。最後の液晶光学素子LC3では、各制御領域Jにおいて個々に付与される所定の位相差(位相遅れ)ζによって、各制御領域Jごとに楕円偏光から他の所定の偏光状態に変換される。このような各制御領域Jごとに実行される位相と偏光状態の変換については、図3、図4を参照して詳述する。
図2は、ホモジニアス配向の液晶光学素子LCの構造例と動作原理を示す。図2(a)に示すように、液晶光学素子LCは、2枚の透明基板21の内部に液晶を封止して形成されている。透明基板21の内面には、制御領域Jを規定する形状を有する互いに絶縁された複数の透明電極22が、例えばITO(酸化インジウムスズ)膜によって、形成されている。また、透明基板21の内面には、透明電極22の全体を覆うように塗布された透明の配向膜23が形成されている。配向膜23の表面には、ラビング処理によって、配向用の細かい溝が一方向に形成され、異方性が付与されている。その溝の方向、すなわち異方性の方向が、配向方向αとなる。配向方向αは、両側の配向膜23,23の全面において同じである。液晶の分子Mは、細長い形状を有している。透明基板21,21間に封止された液晶は、透明電極22,22間に電圧が印加されていない状態では、分子Mが長手方向を配向方向αに向けて一様に整列した状態、すなわちホモジニアス配向の状態にある。
液晶光学素子LCにおいて、3つの方向α,γ,βが定義される。これらは、上述の配向方向α、透明基板21に直交する光軸方向γ(光軸zに対応)、および方向α,γの両方に直交する方向βである。配向方向αは低速軸、方向βは高速軸と呼ばれる。これは、液晶光学素子LCが複屈折率の物質と見做されることによる。液晶分子Mは、細長い形状を有することから、誘電異方性と屈折率異方性とを有し、分子長軸方向の屈折率nが分子長軸に直交する方向の屈折率nよりも大きい(n<n)。
図2(b)に示すように、対向する透明電極22,22間に電圧を印加すると、液晶分子Mが誘電異方性を有することにより、液晶分子Mが電界方向(方向γ)に傾く。なお、配向膜23近傍の液晶分子は、配向方向αに留める束縛力を受けており、傾かない。配向方向α(低速軸方向)の平均屈折率すなわち実効屈折率Nαは、電界強度の増加と共に液晶分子Mの傾きが0°から90°に近づくことにより、nから減少してnに近づく。方向β(高速軸方向)の実効屈折率Nβは、液晶分子の傾きにかかわらずnのままである。そこで、液晶光学素子LCは、可変複屈折率構造体と見做され、波数をk、液晶層厚をwとすると、位相差を0からk(n−n)wに近づける位相変調が可能な素子として用いることができる。液晶光学素子LCは、配向方向αを低速軸とし、その複屈折量を電圧によって制御できるアクティブな波長板となる。
次に、偏光制御装置1の動作を、各制御領域Jにおける位相と偏光状態の変換に注目して、ジョーンズの発明による計算方法、すなわちジョーンズ法を用いて説明する。ジョーンズ法では、偏光をベクトル(ジョーンズベクトル)で記述し、光学素子を行列(ジョーンズ行列)で記述する。光学素子に入射した入射光が光学素子を通過して出射光となるとき、出射光の偏光が、光学素子の行列と入射光のベクトルの積として求められる。つまり、入射する光の位相や偏光状態は、ジョーンズ行列に従って、他の位相状態や偏光状態に変換される。
ジョーンズ法の対象となる光は完全偏光に限られ、光学素子は線形光学素子に限られる。偏光制御装置1では、各制御領域Jが個別の光学素子として区別される。光軸z方向に沿って配列された3つで1組の一連の制御領域Jについて、ジョーンズ法が適用される。他の一連の制御領域Jについて、それぞれジョーンズ法が適用される。偏光制御装置1では、ジョーンズ法が適用される一連の制御領域Jが、全部で8組である。
図3(a)(b)は、偏光制御装置1における光軸zに沿ったある1組の制御領域について、ジョーンズ法の行列とベクトルを示している。行列A,B,Cは、それぞれ、液晶光学素子LC1,LC2,LC3の各々から互いに対応する個別の「光学素子」として1つづつ選択された制御領域Jを表す。ベクトルa,b,c,dは、それぞれ、液晶光学素子LC1への入射光a、液晶光学素子LC1から出射して液晶光学素子LC2に入射する光b、液晶光学素子LC2から出射して液晶光学素子LC3へ入射する光c、液晶光学素子LC3からの出射光dを表す。
ジョーンズ行列A,B,Cは、それぞれ下式(1)(2)(3)で表される。行列Aは、液晶光学素子LC1の1つの制御領域Jを表現する。行列Aは、x軸方向すなわち配向方向α(電圧によって屈折率を制御できる可制御軸方向)の光電場にξの位相遅れを与える位相差板として機能する。なお、ジョーンズベクトルは、光のx方向の電界と、y方向の電界に対応する量を、それぞれx成分、y成分とするベクトルである。
行列Bは、液晶光学素子LC2の1つの制御領域Jを表現する。行列Bは、配向方向α(可制御軸)がx軸から角度θ傾いた位相差板であり、可制御軸方向の光電場に位相差ηを与える。行列Bは、位相差板としての行列Mと、位相差板Mを角度θ傾ける回転行列R(θ)とを用いて、B=R(−θ)MR(θ)と表される。行列Bは、直線偏光を楕円偏光に変換する。
行列Cは、液晶光学素子LC3の1つの制御領域Jを表現する。行列Cは、行列Aと同様であり、位相差ζを与えて、楕円偏光を、他の偏光状態に変換する。
ジョーンズベクトルa,bは、それぞれ下式(4)(5)で表される。液晶光学素子LC1への入射光aは、各制御領域Jに共通であり、x方向(配向方向α)の直線偏光である。ベクトルbは、液晶光学素子LC2のある制御領域Jへの入射光bであり、液晶光学素子LC1からの出射光であり、b=Aaである。ベクトルbは、位相がξ遅れたx軸方向の直線偏光(水平偏光)である。
ジョーンズベクトルc,dは、それぞれ下式(6)(7)で表される。
液晶光学素子LC2の回転角度が、θ=45°の場合、ベクトルc,dはそれぞれ下式(8)(9)で表される。
図4を参照して、θ=45°の場合の上式(8)のベクトルc、すなわち液晶光学素子LC2からの出射光cについて説明する。ベクトルcの水平成分と垂直成分、すなわちx成分(1+e−iη)とy成分(1−e−iη)が、位相空間上に示されている。位相差ηが増加すればするほど、x成分およびy成分ともに位相が遅れ、各成分を表示するベクトルの長さが変化する。x成分とy成分の位相差は常にπ/2である(2つの成分ベクトルが互いに直交している)。その結果、位相差ηが、0,π/2,π,3π/2,2πと変化するに従い、出射光cが直線偏光(水平方向)→(楕円偏光(CW))→円偏光(CW)→(楕円偏光(CW))→直線偏光(垂直方向)→(楕円偏光(CCW))→円偏光(CCW)→(楕円偏光(CCW))→直線偏光(水平方向)の順に変化する。
次に、θ=45°の場合の上式(9)のベクトルd、すなわち液晶光学素子LC3からの出射光dについて説明する。位相差ζの変化に伴い、x成分とy成分の位相が変わる。すなわち、入射光cを一般に楕円偏光とすると,位相差ζが、0,π/4,π/2,3π/4,πと変化するに従い、出射光dが楕円偏光(dと同じ回転方向)→直線偏光(-η/2方向)→楕円偏光(逆回転)→直線偏光(η/2方向)→楕円偏光(dと同じ回転方向)と変化する。楕円偏光の長軸方向は、位相差ζに応じて随時変わる。楕円偏光の消光比すなわち楕円率の逆数は、最高で∞(直線偏光)、最低で1/tan(η/2)となる。
なお、従来の偏光制御装置は、位相差ζを制御できる液晶光学素子LC3を用いるものではなく、位相差ζが常にπ/2に固定された波長板を用いているので、得られる出射光dは、直線偏光のままである。
(偏光制御方法)
次に、図5を参照して偏光制御方法を説明する。この偏光制御方法は、図1に示した偏光制御装置を用いて、直線偏光の入射光を光軸交差面の各部位ごとに制御された偏光状態に変換して出射する方法である。
位相と偏光状態とを変換できる複数の制御領域J,j=1〜nを有する3つの液晶光学素子LC1,LC2,LC3を、光軸zに沿って、この順番で配置する(S1)。この実施形態では、n=8である。
光の入射側から1番目の液晶光学素子LC1の各制御領域J ,j=1〜nを、それぞれ、入射する光に所定の位相差ξ,j=1〜nを発生させるように設定する(S2)。
直線偏光を所定の楕円偏光に変換するため、光の入射側から2番目の液晶光学素子LC2を角度θ回転して配置し、各制御領域J ,j=1〜nを、入射する光に所定の位相差η,j=1〜nを発生させるように設定する(S3)。この実施形態では、θ=45°である。
楕円偏光を所定の他の偏光状態にするため、光の入射側から3番目の液晶光学素子LC3の各制御領域J ,j=1〜nを、入射する光に所定の位相差ζ,j=1〜nを発生させるにように設定する(S4)。
光の入射側から1番目の液晶光学素子LC1に、直線偏光したレーザ光R(入射光)を入射させる(S5)。
液晶光学素子LC1,LC2,LC3間の対応する制御領域J ,J ,J ,j=1〜nによって、入射する光の偏光状態を、順次、直線偏光→楕円偏光→他の状態へと変換する(S6)。
光の入射側から3番目の液晶光学素子LC3から、光軸交差面z=zoutの各部位である制御領域J ,j=1〜nごとに、偏光状態を変換するため楕円率と偏光方向が任意に制御された光(出射光)を出射する(S7)。
本実施形態の装置と方法によれば、液晶光学素子LC1は位相を、液晶光学素子LC2,LC3は偏光を、ジョーンズ法に従って制御するので、ビーム断面内に任意の偏光分布を生成することができる。すなわち、本実施形態によれば、ジョーンズ法で記述できる全ての位相・偏光状態をエンコードでき、その結果、任意の楕円率、任意の長軸方向をもった楕円偏光、直線偏光をビーム断面内に任意の分布で生成することができる。
また、ホモジニアス配向の液晶光学素子LCは、液晶ディスプレイの製造技術として完成された技術を用いて容易に製造することができ、例えば、3枚の液晶光学素子LCを重ねて3mm以下の厚みに形成することができる。従って、低コストかつ小型の偏光制御装置を実現でき、既存の光学機器に対し容易に着脱することができる。また、小型化が容易なことにより、例えば、顕微鏡の集光レンズの入射瞳位置に収まる程小型の装置とすることができ、既設の光学機器の僅かな隙間に実装することができる。
制御領域への分割、すなわち、透明電極のセグメント分割は、放射状8分割に限られず、必要とされる偏光分布の形状および複雑さに応じて、同心円方向、放射方向等、適切に設定して配置することができる。放射状8分割では、擬似的なラジアル偏光、およびアジマス偏光を生成する用途に適しているが、原理的に液晶ディスプレイと同程度に微細化する余地があり、必要に応じてほぼ任意の分布を形成することができる。
(実施例)
図6乃至図9を参照して、偏光制御装置1および偏光制御方法の実施例として、計算結果を説明する。図6は、偏光制御装置1からの出射光の光軸交差面における各制御領域に対応する各部位に生成可能な偏光状態を光電場の軌跡で示す。図中の実線は右回り(CW)円偏光、破線は左回り(CCW)円偏光を示す。
ここで、位相差η,ζを制御して任意の楕円方位角Φと楕円率A=tanχを有する偏光を実現できることを説明する。結果だけを示すと、楕円方位角Φと楕円率A=tanχは、下式(10)(11)で表される。楕円方位角Φと楕円率Aの関係は、下式(12)で表される。また、下式(13)は、楕円率Aであるために、Bの値が一定であること、という制限を表す。
上式(12)(13)から位相差ηと楕円方位角Φの取り得る範囲を検証することにより、図6に示すように、位相差η,ζの値を制御して、いかなる楕円率でも自由に制御できることが分かる。この偏光制御装置1および偏光制御方法によれば、液晶光学素子LC2において位相差ηを0°から360°まで変化させ、液晶光学素子LC3において位相差ζを0°から180°まで変化させることにより、任意の完全偏光を実現することができる。
このような任意の完全偏光(すなわち、無偏光ではなく、ランダム偏光でもなく、ジョーンズ法に従って変換可能な偏光)が、出射光の光軸交差面における各制御領域に対応する各部位において実現される。そこで、各液晶光学素子LCの各制御領域J ,i=1〜3,j=1〜8における、位相差ξ,η,ζを個別に制御することにより、入射光である直線偏光から、光軸交差面の各部位ごとに制御され所望の偏光状態に変換された出射光を生成することができる。従来の偏光制御装置は、位相差ηを0°から360°まで変化させるものの、位相差ζをζ=90°に固定したものである。これは、Φ=η/2,tanχ=0の場合に対応し、直線偏光を回転させることしか実現できていない。
図6に示されるように、楕円率のみを変化させる場合は、位相差ζ=0°、位相差η=0°〜360°とすることで実現できる。この場合、液晶光学素子LC2の位相差ηのみで制御されているのは偶然であり、一般には、液晶光学素子LC2,LC3の位相差η,ζの両方を制御する必要がある。
図7、図8は、それぞれ、楕円方位角Φと消光比Rexの関係における位相差ηの関与の様子と、位相差ζの関与の様子とを示す。位相差η,ζをそれぞれ12ビットの分解能で制御すると、組み合わせ数は、2の24乗個(2^24個)となり、それぞれ異なった偏光状態が得られる。偏光状態は、楕円方位角Φと消光比Rex(楕円率の逆数、Rex=1/tanχ)の組み合わせで決まる。図7、図8に示される図形は、2^24個の点をプロットした同じ点描画である。図7、図8は、それぞれ位相差η,ζの値を重ねて濃淡表示した点が異なる。
図7,図8から分かるように、円偏光から直線偏光に近づくとき、消光比10〜100からいきなり無限大に近い消光比(直線偏光)に飛んでいる。これは、12ビットの分解能の限界を示し、ビット数を上げると、より高い消光比を達成できる。偏光の用途によっては、この消光比の値(10なのか100なのか1000なのか)如何で結果が変わることがある。
図9は、上述の図7と同様の点描画を8ビットの分解能で作成し、消光比Rexが2,5,10の値となる点またはその値に近い値を持つ点を選択して、大きな点でプロットしたものである。つまり、消光比を一定にして偏光の楕円方位角Φを回転させようとするときに、辿るべきプロット点を示す。この図により、離散化の影響(離散化による量子化ノイズの発生)を見ることができる。特に楕円偏光の消光比が高い場合に、離散化の影響が顕著である。例えば、楕円方位角Φによっては、適したプロット点がない場合に、なるべく消光比が近い点を選択するというルールで選択すると、消光比が高くなるほど精確に消光比を保ったまま楕円方位角Φを回転させることが難しくなる。この場合、必要に応じて位相差η,ζの分解能を挙げればよく、位相差η,ζの分解能は、液晶光学素子LCの制御領域Jに印加する電圧の分解能を制御することにより、容易に制御することができる。
(他の実施形態)
図10(a)は、出射光の偏光状態をアジマス偏光とした場合の偏光制御装置および偏光制御方法の実施形態を示す。また、図10(b)は、出射光の光軸交差面の各部位ごとに任意の楕円偏光を分布させる偏光状態とした場合の偏光制御装置および偏光制御方法の実施形態を示す。これらの出射光は、位相差ξ,η,ζを各制御領域ごとに制御することにより生成される。
図11の液晶光学素子LCは、光軸を中心とする放射状に、かつ、円環状に形成された制御領域Jを備えている。このような液晶光学素子LCを用いると、放射状に8分割されたセクタ状の制御領域を備える液晶光学素子を用いる場合よりも、より細かく制御した偏光状態分布の出射光が得られる。
図12(a)の液晶光学素子LCは、同じ素子構造を有する制御領域Jをアレイ状に配置して構成されている。この液晶光学素子LCは、例えば、図12(b)に示すように、隣接する複数の制御領域Jをまとめて、放射状に8分割されたセクタ状の合成制御領域ΣJとすることができる。また、この液晶光学素子LCは、上述した図11の円環断片状の制御領域Jや、他の任意形状の制御領域を容易に形成することができる。
(偏光制御方法の他の実施形態)
図13は、より一般的な、偏光制御方法の実施形態を示す。この実施形態は、3以上の任意数の光学素子を用いるものである。まず、複数個(例えばm個、ただし3≦m)の光学素子Lを、光軸に沿って配置する(#1)。複数の光学素子Lの各々は、入射光の位相と偏光状態をジョーンズ法に基づいて変換する複数個(例えばn個)の制御領域J を有している。
次に、各光学素子L,i=1〜mについて実行する光学素子ループ(LP1,ELP1)において、各制御領域数J ,j=1〜nについて制御領域設定ループ(LP2,ELP2)を実行する。制御領域設定ループ(LP2,ELP2)では、光学素子Lの回転位置と、制御領域J による位相制御量とを、所定のジョーンズ行列A ,j=1〜nに対応させて設定する(#2)。
各ループ(LP1,ELP1),(LP2,ELP2)が完了すると、最初(i=1)の光学素子Lに、直線偏光したレーザ光Rを入射させ、各制御領域J ,j=1〜nによる偏光状態の変換を行う(#3)。すなわち、各制御領域J は、入射光r を、ジョーンズ行列A に従って変換し、出射光r =A ・r を生成して出射する(j=1〜n)。
次に、隣接する光学素子L,Li+1 間の、互いに対応する制御領域J ,Ji+1 ,j=1〜nによって、入射する光の位相と偏光状態を線形変換する(#4)。すなわち、光学素子Lにおいて、出射光ri+1 =A ・r を生成する(i=2〜m,j=1〜n)。
最後(i=m)の光学素子Lから、光軸交差面z=zの各部位z ごとに、偏光状態を制御された、すなわち楕円率と偏光方向が任意に制御された、光rm+1 ,j=1〜n(出射光)を、出射する(#5)。
(偏光制御装置の使用例)
図14、図15、図16は、偏光制御装置1の使用例を示す。図14に示すように、偏光制御装置1は、試料9を観測する透過型の顕微鏡の対物レンズ90の直前に、着脱式に挿入して用いることができる。偏光制御装置1には、不図示の制御用装置が接続される。レーザ光Rは、偏光制御装置1と対物レンズ90を通して集光され、上方から試料9に照射される。試料9から発せられる物体光は、試料9の下方に配置した検出器91によって記録され、また、モニタによって観察される。
図15に示すように、偏光制御装置1は、例えば、ラジアル偏光を出力することができる。ラジアル偏光は、対物レンズ90によって集光されることにより、集光点に向かう各光束の電界Erが互いに重ね合わされ、集光点において、光軸方向の電界Ezとして合成される。このように集光した光はZ偏光と呼ばれる。電界Ezの回りにリング状に磁界Hが存在する。
図16に示すように、Z偏光は、試料9中の分子9mの立体的な配向を調べるプローブとして効果的に用いられる。例えば、試料9への入射光Rinと、試料9から放射される物体光Routとを比較することにより、分子9mの光軸方向の配向成分の情報を得ることができる。
(偏光制御装置の応用例)
図17(a)に示すように、偏光制御装置1からの出射光が対物レンズ90を通過し光学的異方性を有する媒体99を通過した後に、観察目的の試料9に照射される場合、試料9中の分子9mに所定のZ偏光を照射することができない。これは、所定の偏光における電界Erが、媒体99からの影響を受けた電界Exに変質してしまうことによる。
図17(b)に示すように、例えば、媒体99が、複屈折層9a、液晶層9b、複屈折層9cなどで構成されている場合、媒体99への入射光Rinの入射方向ごとに媒体99からの擾乱を受けてしまう。収束光中の各光束は全て進行方向が異なるので、例えば、液晶層9bにおける液晶分子Mが一様に配向していると、液晶分子Mによる屈折率異方性の影響を受けることになる。
図18に示すように、偏光制御装置1は、媒体99による擾乱を補償して、電界Ezを有するZ偏光を試料9の位置に生成できる。これは、偏光制御装置1が、出射光の光軸交差面の各部位ごとに偏光状態Psを制御した出射光を生成できることによる。偏光制御装置1は、この特性を活かして、いわば天体観測における補償光学の手順で、媒体99による擾乱を相殺するように各制御領域を制御して擾乱の補償を実現できる。
例えば、偏光制御装置1から目的の試料9上の照射点に至るまでの光路上に介在する媒体99の情報を取得し、偏光制御装置1からの出射光を、光路上の屈折率による影響を相殺するように制御した偏光状態Psにして生成すればよい。媒体99の情報は、例えば複屈折率分布である。媒体99の影響を相殺するための情報は、媒体99のみを透過した偏光を測定することによって得てもよい。
このように、偏光を使用する場所において所定の偏光を存在させるために、補償するための処理を事前に行う方法は、出射光を収束させる場合に限らず、任意の場面で適用することができる。すなわち、出射光が、光学的異方性を有する媒体を通過した後に用いられる場合、制御領域Jに対し、媒体による偏光状態の変化を相殺する補正の制御を加えることができる。
上述のように、対物レンズへの入射偏光であるラジアル偏光に、予め偏光、位相分布に補正を加えた位相、偏光分布を補正パターンとして生成することによって、焦点において所定の偏光制御を行うことができる。補正パターンの自由度は無限であり、あらゆる偏光状態を生成できなければならない。本偏光制御装置1によれば、補正パターンの自由度に対応することができる。顕微観察を例にして、補正パターンを生成して適用する技術を説明したが、この技術は、光路上に偏光、位相を乱す物質が介在しうる全ての応用技術に適用することができる。
(偏光制御システム)
図19は、偏光制御システム100を示す。偏光制御システム100は、偏光制御装置1と、制御部11と、入出力部12と、データベース13とを備えている。
偏光制御装置1は、偏光素子、すなわち入射する光の位相と偏光状態を操作した光を出射する素子である、3個以上のm個の光学素子L1,L2,・・,Lmをケース10に収納して構成されている。各光学素子Lは、それぞれ制御領域J ,J ,・・,J を有している。各光学素子Lは、光軸となる所定の軸、例えばケース10の中心軸回りに、互いに相対的な所定の回転角度を有するようにケース10内に配置されている。この回転位置が固定された状態で、各光学素子L,i=1〜mに属する任意の一連の制御領域、例えば1番目の各制御領域J ,i=1〜mは、ケース10の中心軸方向に沿って直線的に配置されている。他の各制御領域J ,i=1〜m,j≠1についても同様である。
各光学素子Lは、例えば液晶光学素子であり、各制御領域J を電気的に制御するためのフレキシブルケーブル10aとコネクタ10bとを介して、制御部11に接続されている。
制御部11は、一般的な、CPU、OS、メモリ、画像処理アクセラレータ等を備えた、小型のコンピュータである。メモリには、偏光制御装置1を制御するために必要なソフトウエアが記憶されている。入出力部12は、ユーザが偏光制御装置1と制御部11を操作するために必要な、ディスプレイ、マウス、補助記録装置などの一般的な機器を備えている。
データベース13には、所定の偏光状態の出射光が得られるように各制御領域J を制御するため必要な制御用データ、媒体の影響を補償するために必要なデータ、偏光制御装置1を較正するために必要なデータなどが保存されている。
(偏光制御装置の他の使用例)
図20は、偏光制御装置1の他の使用例を示す。この偏光制御装置1は、試料9を観測する反射型の顕微鏡に用いられている。この顕微鏡は、対物レンズ90、ハーフミラーHM、集光レンズ92、遮光板93、検出器91を備えている。ハーフミラーHMは、試料9を照明するレーザ光Rの光路上であって対物レンズ90の手前に配置され、対物レンズ90を通って逆行してくる試料9からの反射光を、集光レンズ92と遮光板93を通して検出器91に送る。
偏光制御装置1は、レーザ光Rの光路上であってハーフミラーHMの手前に、着脱式に挿入配置されている。偏光制御装置1は、液晶光学素子LCを用いるものであり、不図示の制御用装置が接続される。
次に、図21を参照して、偏光制御装置1の特性と他の使用例を説明する。図21(a)において、レーザ光Rの光路上に、ハーフミラーHM、直線偏光を透過する偏光素子L0、偏光制御装置1、対物レンズ90が配置されている。対物レンズ90の焦点位置には、試料9が配置されている。ここで、試料9の表面は、偏光に変化を与えない反射面が想定されている。レーザ光Rは、ハーフミラーHMと偏光素子L0を透過して、偏光制御装置1の液晶光学素子LC1の配向方向に沿った直線偏光a1とされる。直線偏光a1は、偏光制御装置1の制御状態に基づいて、任意の偏光状態に制御された偏光a2なる。偏光a2は、対物レンズ90を通って試料9で反射され、対物レンズ90を逆行した状態で、偏光a2と同じ偏光状態の偏光b2となる。偏光b2は、偏光制御装置1を逆行すると、偏光制御装置1における光の伝搬方向に対する対称性の結果、直線偏光a1と同じ偏光状態の偏光b1となる。偏光b1は、ハーフミラーHMに反射されて反射光Rrとなり、検出器等によって検出される。
図21(b)は、試料9が入射光の偏光状態に作用する物性を有する場合を示す。偏光a2は、偏光制御装置1によって、例えば、直線偏光a1を回転した光である。試料9によって反射されて対物レンズ90を逆行した状態の偏光b2は、試料9の影響を受けて、偏光a2とは異なる偏光状態になる。この偏光b2は、偏光制御装置1を逆行しても、もとの直線偏光a1と同じ偏光状態にはならない。偏光b1は、反射光Rrとなり、検出器等によって検出される。反射光Rrの偏光状態を調べることにより、試料9の光物性の情報を得ることができる。
上述の図21(b)における偏光制御装置1は、試料9からの戻り光に対してパッシブに動作する受動素子として機能している。すなわち、偏光制御装置1は、アクティブに動作して所望の光を生成する能動素子として用いることの他に、受動素子として用いることができる。このような機能を有する偏光制御装置1は、特定の偏光分布の光のみを検出する検出装置として用いることができる。この機能は、例えば、偏光制御装置1そのものの、組み立て時の位置調整や、適宜に行う較正手順の中で、効果的に用いることができる。
なお、本発明は、上記構成に限られることなく種々の変形が可能である。例えば、上述した各実施形態の構成を互いに組み合わせた構成とすることができる。液晶光学素子LC1,LC2,LC3を用いる場合、それぞれの液晶光学素子LCは、各1枚で構成することに限られず、複数枚の液晶光学素子を重ねて構成してもよい。例えば液晶光学素子LC2の場合、位相差ηを2つの液晶光学素子によって分担して、最終的にη=η1+η2の位相差を発生させるようにしてもよい。
また、光学素子は、液晶光学素子に限られず、電気的に複屈折率を制御できる材料によって、それぞれ制御領域を形成して偏光制御装置を構成することができる。各光学素子による位相の制御や偏光状態制御の動作範囲が狭い場合、多数枚の光学素子を重ねて、偏光制御装置を構成すればよい。本願において、光軸の用語は、光学系において系全体を通過する光束の代表となる仮想的な光線を指す、一般的な意味で用いられている。
上述した偏光制御装置は、従来技術では不可能だった以下の特性を同時に満たす。すなわち、(1)既設装置に組み込み可能な小型、かつ低コストな装置であること、(2)機械的動作が必要ない電子制御の装置であること、(3)ジョーンズ法で記述できる全ての位相・偏光状態を液晶ディスプレイと同じ精細さでエンコードできること。
このような特性を有することから、本発明に係る技術は、光学顕微鏡とその関連機器、レーザ加工用機器に適用できる。また、光ビーム内での偏光分布をラジアル偏光やアジマス偏光だけでなく任意かつ動的に制御できるので、それぞれの用途に用いた場合に新たな機能を実現できる可能性がある。
1 偏光制御装置
99 媒体
A,B,C,M ジョーンズ行列
ジョーンズ行列
J,J 制御領域
LC,LC1,LC2,LC3 液晶光学素子
Li 光学素子(偏光素子)
Ps 偏光状態
R レーザ光
z 光軸
z=zin 光軸交差面(入射側)
z=zout 光軸交差面(出射側)
α 配向方向、配向軸
θ 配向軸の回転角
ξ,η,ζ 位相差(位相遅れ)

Claims (9)

  1. 光軸に沿って入射する入射光を、その光軸交差面の各部位ごとに偏光状態を制御された出射光に変換して出射する偏光制御装置において、
    光軸に沿って配置された3つ以上の光学素子を備え、
    前記光学素子の各々は、前記光学素子の各々に入射する光をその光軸交差面の各部位において位相および偏光状態を制御できるようにするために、複数の制御領域に分割され、前記光学素子の各々の各制御領域は、他の光学素子の各制御領域と光軸に沿って互いに対応するように配置され、
    前記制御領域の各々は、入射する光の偏光状態をジョーンズ行列に従って変換することを特徴とする偏光制御装置。
  2. 前記光学素子は、ホモジニアス配向の液晶光学素子であることを特徴とする請求項1に記載の偏光制御装置。
  3. 前記液晶光学素子を光軸に沿って3つ備え、前記3つの液晶光学素子は、光の入射側から1番目と3番目の前記液晶光学素子の配向方向が一致し、2番目の前記液晶光学素子の配向方向が他の2つの前記液晶光学素子の配向方向に対して45°傾いて、配置されていることを特徴とする請求項2に記載の偏光制御装置。
  4. 前記光学素子は、同じ素子構造を有する前記制御領域をアレイ状に配置して構成されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の偏光制御装置。
  5. 前記制御領域は、前記光学素子の光軸を中心として放射状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の偏光制御装置。
  6. 前記制御領域は、前記光学素子の光軸を中心として円環状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の偏光制御装置。
  7. 請求項1に記載の偏光制御装置を用いて、入射光を光軸交差面の各部位ごとに制御された偏光状態に変換して出射する偏光制御方法において、
    前記光学素子を光軸に沿って3つ備え、
    光の入射側から1番目の前記光学素子に、直線偏光したレーザ光を入射させ、前記レーザ光が前記3つの光学素子の前記制御領域を順次通過する際に、
    前記1番目の光学素子においては、前記レーザ光に対し、前記制御領域ごとに所定の位相遅れを与え、
    前記光の入射側から2番目の光学素子においては、前記レーザ光の偏光状態を、前記制御領域ごとに直線偏光から楕円偏光に変換し、
    前記光の入射側から3番目の光学素子においては、前記レーザ光の偏光状態を、前記制御領域ごとに楕円偏光から他の偏光状態に変換し、
    前記3番目の光学素子の前記制御領域のそれぞれにおいて楕円率と偏光方向が任意に制御された出射光を得ることを特徴とする偏光制御方法。
  8. 出射光の偏光状態が、ラジアル偏光またはアジマス偏光であることを特徴とする請求項7に記載の偏光制御方法。
  9. 前記出射光が、光学的異方性を有する媒体を通過した後に用いられる場合、前記制御領域に対し、前記媒体による偏光状態の変化を相殺させるようにすることを特徴とする請求項7に記載の偏光制御方法。
JP2016230675A 2016-11-28 2016-11-28 偏光制御装置および偏光制御方法 Active JP6817623B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016230675A JP6817623B2 (ja) 2016-11-28 2016-11-28 偏光制御装置および偏光制御方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016230675A JP6817623B2 (ja) 2016-11-28 2016-11-28 偏光制御装置および偏光制御方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2018087885A true JP2018087885A (ja) 2018-06-07
JP6817623B2 JP6817623B2 (ja) 2021-01-20

Family

ID=62494322

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016230675A Active JP6817623B2 (ja) 2016-11-28 2016-11-28 偏光制御装置および偏光制御方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6817623B2 (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN111897164A (zh) * 2020-09-07 2020-11-06 合肥工业大学 液晶型径向偏振光转换器及其制备方法
WO2021039900A1 (ja) * 2019-08-28 2021-03-04 公立大学法人兵庫県立大学 試料測定装置および試料測定方法

Citations (12)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH01502462A (ja) * 1987-02-18 1989-08-24 ザ ゼネラル エレクトリック カンパニー,ピー.エル.シー 偏光制御装置
JPH02294617A (ja) * 1989-04-17 1990-12-05 Tektronix Inc 偏光制御装置
US6765635B1 (en) * 2000-12-28 2004-07-20 Coadna Photonics, Inc. Apparatus and method for achromatic liquid crystal electro-optic modulation
JP2009145368A (ja) * 2007-12-11 2009-07-02 Seiko Epson Corp 電気光学装置、投射型表示装置、プロジェクションシステム、受光装置、撮像装置
WO2011105619A1 (ja) * 2010-02-26 2011-09-01 シチズンホールディングス株式会社 偏光変換素子
JP2012190053A (ja) * 2006-10-16 2012-10-04 Asahi Glass Co Ltd 投射型表示装置
JP2013104950A (ja) * 2011-11-11 2013-05-30 Citizen Holdings Co Ltd 位相及び偏光変調デバイス、また、それを用いたレーザー顕微鏡
JP2014021361A (ja) * 2012-07-20 2014-02-03 Stanley Electric Co Ltd 光学系、液晶素子及び液晶素子の製造方法
WO2014027694A1 (ja) * 2012-08-16 2014-02-20 シチズンホールディングス株式会社 収差補正光学ユニット及びレーザー顕微鏡
WO2014084007A1 (ja) * 2012-11-29 2014-06-05 シチズンホールディングス株式会社 光変調素子
WO2016111019A1 (en) * 2015-01-09 2016-07-14 Essilor International (Compagnie Generale D'optique) Liquid-crystal achromatic phase modulator
CN107390376A (zh) * 2016-05-17 2017-11-24 上海科斗电子科技有限公司 液晶多层立体显示器显示方式

Patent Citations (18)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH01502462A (ja) * 1987-02-18 1989-08-24 ザ ゼネラル エレクトリック カンパニー,ピー.エル.シー 偏光制御装置
US5005952A (en) * 1987-02-18 1991-04-09 The General Electric Company, P.L.C. Polarization controller
JPH02294617A (ja) * 1989-04-17 1990-12-05 Tektronix Inc 偏光制御装置
US6765635B1 (en) * 2000-12-28 2004-07-20 Coadna Photonics, Inc. Apparatus and method for achromatic liquid crystal electro-optic modulation
JP2012190053A (ja) * 2006-10-16 2012-10-04 Asahi Glass Co Ltd 投射型表示装置
JP2009145368A (ja) * 2007-12-11 2009-07-02 Seiko Epson Corp 電気光学装置、投射型表示装置、プロジェクションシステム、受光装置、撮像装置
WO2011105619A1 (ja) * 2010-02-26 2011-09-01 シチズンホールディングス株式会社 偏光変換素子
US20120314180A1 (en) * 2010-02-26 2012-12-13 Citizen Holdings Co., Ltd. Polarization conversion element
JP2013104950A (ja) * 2011-11-11 2013-05-30 Citizen Holdings Co Ltd 位相及び偏光変調デバイス、また、それを用いたレーザー顕微鏡
JP2014021361A (ja) * 2012-07-20 2014-02-03 Stanley Electric Co Ltd 光学系、液晶素子及び液晶素子の製造方法
WO2014027694A1 (ja) * 2012-08-16 2014-02-20 シチズンホールディングス株式会社 収差補正光学ユニット及びレーザー顕微鏡
US20150293337A1 (en) * 2012-08-16 2015-10-15 Citizen Holdings Co., Ltd. Aberration correction optical unit and laser microscope
WO2014084007A1 (ja) * 2012-11-29 2014-06-05 シチズンホールディングス株式会社 光変調素子
CN104823096A (zh) * 2012-11-29 2015-08-05 西铁城控股株式会社 光调制元件
US20150338631A1 (en) * 2012-11-29 2015-11-26 Citizen Holdings Co., Ltd. Light modulating device
WO2016111019A1 (en) * 2015-01-09 2016-07-14 Essilor International (Compagnie Generale D'optique) Liquid-crystal achromatic phase modulator
JP2018501524A (ja) * 2015-01-09 2018-01-18 エシロール アンテルナシオナル (コンパニー ジェネラル ドプティック) 液晶色消し位相変調器
CN107390376A (zh) * 2016-05-17 2017-11-24 上海科斗电子科技有限公司 液晶多层立体显示器显示方式

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2021039900A1 (ja) * 2019-08-28 2021-03-04 公立大学法人兵庫県立大学 試料測定装置および試料測定方法
CN111897164A (zh) * 2020-09-07 2020-11-06 合肥工业大学 液晶型径向偏振光转换器及其制备方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP6817623B2 (ja) 2021-01-20

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Chen et al. Liquid‐crystal‐mediated geometric phase: from transmissive to broadband reflective planar optics
US9772484B2 (en) Light modulating device
US9715048B2 (en) Broadband optics for manipulating light beams and images
Chen et al. Integrated plasmonic metasurfaces for spectropolarimetry
US8786759B2 (en) Method and apparatus for auto-focus using liquid crystal adaptive optics
US9557456B2 (en) Broadband optics for manipulating light beams and images
Lei et al. An electrically tunable plenoptic camera using a liquid crystal microlens array
Wang et al. Multichannel spatially nonhomogeneous focused vector vortex beams for quantum experiments
WO2016194018A1 (ja) 照明装置及び計測装置
JP2007040805A (ja) 撮像偏光計測方法
CN109983378B (zh) 光学元件和光学元件制造方法
JPWO2011105618A1 (ja) 顕微鏡装置、光ピックアップ装置及び光照射装置
JP2023543561A (ja) オフアクシス集光型幾何学的位相レンズおよび該レンズを含むシステム
Galvez et al. Poincaré modes of light
JP6817623B2 (ja) 偏光制御装置および偏光制御方法
US20160320677A1 (en) Optical midulator
Xu et al. Coded liquid crystal metasurface for achromatic imaging in the broadband wavelength range
JP2013539061A (ja) 双方向円柱対称の偏光変換器およびデカルト−円柱偏光変換方法
CN109991768B (zh) 用于在液晶可变滞后器上分布光的出瞳扩大器
US10345222B2 (en) Illumination device and method for generating illumination light
Hao et al. A focal spot with variable intensity distribution for optical tweezers
Kim Liquid crystal geometric phase holograms for efficient beam steering and imaging spectropolarimetry
Tabirian et al. High efficiency broadband liquid crystal polymer vector vortex waveplates
JP2020024269A (ja) 光位相変調装置及び照明装置
Zhao et al. Broadband Generation of Fractional Perfect Optical Vortices via Plasmonic Metasurface

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20191023

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20200817

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20200908

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20201106

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20201201

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20201218

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6817623

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250