JP2018087704A - 粘度測定装置および粘度測定方法 - Google Patents

粘度測定装置および粘度測定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】液体の粘度を、50μL以下かつ10μL以上の微量な試料で短時間に検査する。【解決手段】粘度測定装置30は、複数個の磁性物質が浮遊している液体試料1を格納した試料容器3に対して、特定周波数帯域の交流磁場を印加する励磁コイル4と、磁性物質2に由来する磁気信号を測定する磁気センサ5と、励磁コイル4が印加した交流磁場の周波数および磁気センサ5により測定された磁気信号の関係を解析して液体試料1の粘度を算出する信号解析部22とを有する。【選択図】図1

Description

本発明は、粘性を有する液体中に複数個の磁性物質を混合し、液体中に浮遊している磁性物質に交流磁場を印加することで磁性物質の磁化率を測定し、その磁化率の周波数特性から液体の粘度を算出する非接触式の粘度測定装置および粘度測定方法に関する。
粘度計は、様々な分野で多く使われている技術である。医療分野において、粘度の評価は重要な指標となっている。例えば血液の粘度を測定することで、血栓などの体内の病態を把握することができる。また食品や化粧品の製造と品質管理の指標として、粘度特性の評価が行われている。近年では測定対象となる分野が研究開発段階から製造段階に至るまで拡大し、それに従って測定者も多様化してきていることから、測定手法の改良が求められている。例えば、接着剤が液状から硬化してゆく過程を粘度の変化によって評価するという技術もニーズの一つである。
粘度の評価を行うためには従来から複数の測定方法があり、代表的なものでは回転式、細管式、落体式が知られている。
回転式粘度計は、固定化した内筒および回転駆動される外筒を備えた共軸二重円筒式と呼ばれ、内筒と外筒の空隙部に試料を入れて測定する方式である。外筒を一定の速度で回転し、液体試料の粘性によって内筒に作用する回転トルクを測定することで、試料の粘度を計測する。回転式粘度計は、外筒や回転数を変えることにより、非ニュートン流体や広いレンジでの粘度測定に使用可能である。回転式粘度計の発明の例として、例えば特許文献1に記載の発明が挙げられる。
細管式粘度計は、毛細管に測定対象とする血液試料を大気圧によって通過させ、一定量の血液が流れる時間を目視、または流量センサで測定し、血液の動粘度を算出するものである。
落体式粘度計は、血液を採取して保存する採血管内に、予め粘度測定用の落体が封入されている。血液を採取して採血管内に保存した後、この採血管ごと血液を転倒し、重力によって血液中の落体を採血管内で落下させる。このときの落下速度は血液の粘性によって変動するため、落体の落下速度を測定して血液の粘度を算出することができる。
特許第4675946号公報
回転式粘度計では、1種類の回転子で測定できる粘度範囲が狭く,広い測定範囲をカバーするには数種類の回転子を交換する必要がある。また同じ測定レンジの場合においても、複数の試料を測定する際には内筒および外筒の器具を洗浄・交換する作業が必要となり、検査に長い時間を要する。また試料の量も数100μL〜数mLと多く、少量での計測が求められる血液の検査法としては課題がある。
次に細管式粘度計では、毛細管にタンパク質や脂質の豊富な血液試料を直接通過させるため、細管の内側が汚染されると考えられる。従って、複数の血液試料を測定する場合には、その都度細管内を厳密に洗浄する必要があり、工程が煩雑化し、検査時間の短縮化が難しいことが問題である。
更に落体式粘度計は、落体を封入した特殊な採血管を用いて採血直後に測定することで、抗凝固剤の影響を受けずに血液の粘度測定が可能である。しかしながら、採血した後に保存されている血液では抗凝固剤の影響があるため、測定は困難である。また一定の大きさを持つ落体を血液中で落下させるため、必要とする試料の容量は5mLと多く、少量の試料を評価する場合には適していない。
以上のことから、従来の粘度計は回転体や細管を試料と接触させる方式であるため、複数の試料を測定する場合には器具の洗浄や交換が必要となり、処理工程の煩雑化および検査時間の長時間化が課題である。また落体式では試料の容量が多く必要なため、血液などの希少な試料の検査には問題が多い。更にこれらの粘度計は1回の測定ごとに検査結果を取得するため、時間を経た連続的な粘度の変化を測定することが困難である。
そこで、本発明は、液体の粘度を、50μL以下かつ10μL以上の微量な試料で短時間に検査することを課題とする。
前記した課題を解決するため、本発明の(発明の名称)は、以下のように構成した。
すなわち、本発明の(発明の名称)は、(請求項1の文章修正)、ことを特徴とする。
その他の手段については、発明を実施するための形態の中で説明する。
本発明によれば、本発明によれば、液体の粘度を、50μL以下かつ10μL以上の微量な試料で短時間に検査することが可能である。
第1の実施形態における磁気信号測定装置の構成例を示す図である。 第1の実施形態における計測原理の構成例を示す概念図である。 交流磁化率の実数、虚数、絶対値の周波数依存性を示す概念グラフである。 交流磁化率の位相の周波数依存性を示す概念グラフである。 第1の実施形態で実施される粘度検出処理を示すフローチャートである。 周波数と虚数との関係を示すグラフである。 第1の実施形態で実証される粘度測定値と既知粘度との相関を示すグラフである。 第2の実施形態で実施される粘度検出の手順を示すフローチャートである。 交流磁化率の実数信号に基づく液体の粘度の検量線を示すグラフである。 交流磁化率の虚数信号に基づく液体の粘度の検量線を示すグラフである。 交流磁化率の絶対値信号に基づく液体の粘度の検量線を示すグラフである。 交流磁化率の位相信号に基づく液体の粘度の検量線を示すグラフである。
以降、本発明を実施するための形態を、各図を参照して詳細に説明する。
《第1の実施形態》
図1は、第1の実施形態における粘度測定装置30の構成例を示す図である。
粘度測定装置30は、恒温槽20、交流信号発生器13、磁気センサアンプ14、ロックインアンプ15、振幅位相調整器16、フィルタ回路17、AD変換器18、データ収集器19、信号解析部22を備えている。
恒温槽20は、断熱壁の中に、試料固定台12、励磁コイル4、温度調整部21を有している。恒温槽20は、温度調整部21によって、内部を所定温度(例えば20℃)に保つものである。これにより、液体試料1の温度を所定温度に保ち、温度による液体の粘性の変化を防ぐことができる。
試料固定台12には、複数の試料容器3が設置される円盤11を備える。円盤11は、モータ(不図示)による回転運動、および手作業による垂直方向の移動ができる。なお、試料固定台12は、1個の試料を固定する円柱状のものであってもよい。試料の測定には、試料を動かさずに固定する測定法、回転または垂直運動により試料を移動させる測定法も可能である。
励磁コイル4は、1対のヘルムホルツ型コイルであり、交流信号発生器13からの電気信号出力により、特定の周波数帯域の範囲または1〜2点の周波数の交流磁場を発生する。この励磁コイル4は、液体試料1を格納した試料容器3に対して、特定周波数帯域の交流磁場を印加する励磁機構である。励磁コイル4の1対のコアのギャップ内には、例えば磁気抵抗素子やMR(Magnetic Resistance)センサである磁気センサ5が設置されている。磁気センサ5の端子は、後記する磁気センサアンプ14に接続されている。
交流信号発生器13は、振幅位相調整器16で制御されて、励磁コイル4に電気信号を出力する。交流信号発生器13は更に、同期検波のための参照信号をロックインアンプ15に出力する。
磁気センサアンプ14は、磁気センサ5の出力を増幅するアンプであり、増幅した信号をロックインアンプ15に出力する。磁気センサ5と磁気センサアンプ14の組合せは、磁性物質に由来する磁気信号を測定する測定部である。
ロックインアンプ15は、磁気センサアンプ14の出力信号を、交流信号発生器13の参照信号によって同期検波する。
フィルタ回路17は、同期検波により得た出力信号のうち、所望の周波数領域を通過させるフィルタである。フィルタ回路17は、AD変換器18に信号を出力する。
AD変換器18は、アナログ信号をデジタル信号に変換するものである。AD変換器18は、データ収集器19にデジタル信号を出力する。
データ収集器19は、例えばメモリやストレージであり、AD変換器18が出力したデジタル信号を格納する。
信号解析部22は、例えばCPU(Central Processing Unit)が信号解析プログラムを実行することで具現化される。信号解析部22は、励磁コイル4によって印加した交流磁場の周波数および磁気センサ5により測定された磁気信号の関係を解析して、液体試料1の粘度を算出する。
以下、粘度測定装置30の動作について説明する。
励磁コイル4のギャップ内に試料容器3が配置されたのち、粘度測定装置30は測定を開始する。試料容器3内の磁性粒子は、励磁コイル4から発する交流磁場により磁化され、その磁性粒子からの磁気信号が磁気センサ5によって検出される。磁気センサ5の出力は、磁気センサアンプ14で増幅され、ロックインアンプ15で同期検波される。同期検波のための参照信号は振幅位相調整器16で制御された交流信号発生器13から、ロックインアンプ15に与えられる。同期検波により得た出力信号はフィルタ回路17、AD変換器18を経てデータ収集器19に格納される。
なお、磁気センサ5は、MRセンサの他に、検出コイルやSQUID(Superconducting Quantum Interference Device;超伝導量子干渉素子)磁気センサ等のような他の種類のセンサを用いてもよい。
図2は、第1および第2の実施形態で実施される計測原理の構成例を示す概念図である。
図2に示した液体試料1は、測定対象であり、複数個の磁性物質2が混合している状態で試料容器3の内部に格納される。磁性物質2は、酸化鉄、例えばマグネタイトまたはその他のフェライトを含んで構成される。しかし磁性物質2は、別の磁性材料を含んで構成されてもよい。
磁性物質2は、液体中での分散性を高めるため、磁性体を高分子体で被覆した粒子形状として用いられる。その大きさは直径10〜500nmの範囲であるが、より高い分散性と磁気信号を得るためには30〜200nmの範囲が好ましい。更に対象となる液体試料1の容量としては、10〜300μLの範囲であるが、10〜50μLの容量であっても好適に測定可能である。
試料容器3の側面には、磁性物質2を磁化するための励磁コイル4が設けられている。液体試料1に含まれる磁性物質2は、励磁コイル4から生じる交流磁場によって磁化され、その磁気信号は交流磁化率として磁気センサ5によって検知される。
また励磁コイル4から生じる交流磁場の周波数を変化させることで、交流磁化率の信号成分は、励磁した周波数に依存した特性を示す。
第1および第2の実施形態の粘度検査法では、試料容器3に入れた液体試料1に複数個の磁性物質2を懸濁して交流磁場を印加し、液体の粘性に応じて得られる磁化率を測定する。液体試料1は試料容器3に入れられているので、磁気センサ5と液体試料1は直接接触せずに測定できる。更に検査に用いた磁性物質2は、検査後に廃棄できる。そのため、磁気センサ5の洗浄が不要で、複数の試料を検査するには非常に適している。
第1および第2の実施形態では、試料容器3の容量が10〜50μLであり、液体試料1が微量であっても粘度を測定できる。更に磁性物質2は、蛍光物質のように経時的な退色による信号変化を起こすことはないため、液体の粘性変化に伴う、動的な信号変化を捉えることができる。
以下、第1および第2の実施形態における粘度検査方法の原理について説明する。この粘度検査方法は、磁性物質2の交流磁化率の測定による。液体中に懸濁した磁性物質2が微小なコロイド粒子であるとき、熱雑音の影響によりランダムな回転運動をしながら液体中に浮遊した状態となる。このとき、磁性物質2の持つ磁気モーメントもランダムに回転する。この回転時間は、式(1)に示したブラウン緩和時間τBで表される。
式(1)において、液体の粘度ηが大きくなるほどブラウン緩和時間τBは長くなり、絶対温度Tが上昇するほどブラウン緩和時間τBは短くなる。
液体中の磁性物質2に外部から交流磁場を与えたときに、この磁性物質2が動的に磁化する現象を交流磁化と呼び、磁化の程度は交流磁化率として表すことができる。
交流磁化率は、与えた周波数の交流磁場に追従する実数成分χr(ω)および、これに対して90°位相が遅れる虚数成分χi(ω)として示される。
交流磁化率の実数成分χr(ω)は、以下の式(2)で示される。
交流磁化率の虚数成分χi(ω)は、以下の式(3)で示される。
交流磁化率の虚数成分χiは、中心周波数fcが式(4)を満たすときに最大となり,粒子径の大きさや液体の粘度変化は虚数成分の中心周波数fcのシフトによって観測される。
粒子の半径dから、粒子の体積Vは、以下の式(5)によって算出される。
粒子の半径dと液体の絶対温度Tが一定の場合,式(4)に示した中心周波数fcと、式(5)に示した球の体積Vにより、以下の式(6)によって液体の粘度ηが算出される。
交流磁化率の実数と虚数から求められる数値としては、式(7)に示す絶対値R(ω)の成分がある。
更に式(8)に示す位相θ(ω)の成分も、交流磁化率の実数と虚数から求められる数値である。それぞれの成分値は液体の粘性の影響を受ける。
従って本実施形態では、液体中に浮遊している磁性物質2の交流磁化率から、実数成分χr、虚数成分χi、絶対値Rおよび位相θの4成分を抽出し、この成分から液体の粘度を算出できる。
図3と図4とは本実施形態で測定される交流磁化率の各信号成分を模式化したグラフである。
実数信号6は、交流磁化率の実数成分χr(ω)を示している。虚数信号7は、交流磁化率の虚数成分χi(ω)を示している。絶対値信号9は、交流磁化率の絶対値を示している。グラフの横軸は、共通する周波数を示している。この図3において、粗い破線で実数信号6を示しており、実線で虚数信号7を示しており、更に細かい破線で絶対値信号9を示している。
実数信号6と絶対値信号9は、周波数の増加と共に低減する特性を示すが、虚数信号7は特定の中心周波数fcにおいて極大値を持つ。
第1の実施形態の粘度測定装置30は、虚数信号7の極大点、つまりは中心周波数fcを算出し、式(6)により、液体の粘度ηを求めている。
図4の位相信号10は、交流磁化率の位相θを示している。位相信号10は、周波数の増加と共に自身も増加するシグモイド曲線となる。実数信号6、虚数信号7、および絶対値信号9と同様に、液体の粘性を反映した値を示す。
図5は、第1の実施形態で実施される粘度検出処理を示すフローチャートである。第1の実施形態の粘度測定装置30は、粘度が未知である液体試料1を測定し、その粘度を算出する。
最初、オペレータが試料容器3に粘度が未知の液体試料1を入れ、試料固定台12に、液体試料1が入った試料容器3を設置する(ステップS10)。次いでオペレータは、液体試料1の入った試料容器3に、磁性物質2を加えて混合する(ステップS11)。
以降、ステップS12〜S15では、交流信号発生器13が特定の周波数帯域内で出力周波数を変化させながら処理を繰り返す。
磁性物質2を交流磁化するための励磁周波数の帯域は、磁性粒子の直径が60nmの場合においては1Hz〜100kHzの範囲であるが、好ましくは10Hz〜10kHzの範囲である。また粒子の直径が30nmの場合においては1Hz〜10MHzの範囲であるが、好ましくは10Hz〜100kHzの範囲である。このときの磁場の強度は、磁性物質2が凝集・沈殿しない程度の強さであり、好ましくは20mT以下である。
最初、交流信号発生器13は、当該周波数の信号を励磁コイル4に出力する。励磁コイル4から発生した交流磁場は、液体試料1と磁性物質2の混合試料に印加される(ステップS13)。これにより、液体試料1中の磁性物質2を磁化させる。磁性物質2からは、印加された交流磁場に応答する磁気信号が発生する。磁気センサ5は、発生した磁気信号を検知する(ステップS14)。検知された磁気信号は、粘度測定装置30の信号処理を経て、データ収集器19に収集される。データ収集器19は、主に実数信号6および虚数信号7を収集する。ステップS15において、特定の周波数帯域内の処理を終了したならば、ステップS16の処理に進む。
信号解析部22は、データ収集器19が収集した信号から虚数信号7を抽出する(ステップS16)。この虚数信号7の例を、後記する図6のグラフに示す。信号解析部22は、虚数成分の回帰分析によるピーク検知で、極大値を算出する(ステップS17)。このとき、信号解析部22が用いる分析法は、ガウス曲線による回帰分析、ローレンツ回帰分析などが適している。
次いて、信号解析部22は、極大値を示した中心周波数fcを求め(ステップS18)、更に中心周波数fcと粘度ηを示す式(6)により、液体試料1の粘度を算出する(ステップS19)。
また第1実施形態において、励磁周波数帯域において磁化した磁性物質2に由来の磁化信号は、励磁した周波数帯域に相当する基本波の周波数をロックイン検波する測定方法の他に、励磁した周波数帯域の高調波成分の周波数をロックイン検波する測定方法も可能である。
(実施例1)
本実施例1では第1実施形態に基づき、液体試料1としてグリセリン水溶液を用いて、その粘性を評価した。具体的にはグリセリン水溶液と複数個の磁性物質2と混合し、磁性物質2に由来する交流磁化率の測定を行った。グリセリン水溶液は濃度を10〜60%(w/w%)で作製し、各濃度の粘度を文献値から取得した。
磁性物質2は、造影剤に用いる市販の磁性粒子試薬(粒径60nm)を用いて、超純水およびグリセリン水溶液で濃度1mg/mL(Fe重量相当)に希釈した。
磁性粒子を含んだ液体試料1の容量は、1回の測定で50μL(50μgのFe重量相当)を使用する。液体の粘度は、測定時の温度の影響を受けるため、全ての測定は、20℃の条件下で実施した。
交流磁化率の測定条件は10 Hz〜10kHzの範囲で周波数を変化させ、液体試料中に浮遊する磁性粒子に由来する交流磁化率の周波数依存特性を計測した。交流磁化率の測定値として取得した虚数成分の信号から、回帰分析によるピーク検知によって極大値を求め、その中心周波数fcを検知した。更に温度20℃と粒子の粒径60nmを代入して、検知した中心周波数fcから粘度ηの値を式(6)より算出した。
図6は、各水溶液における周波数と虚数との関係を示すグラフである。
太い線幅を持つ実線は、液体試料1がグリセリン60%水溶液の場合における交流磁化率の虚数成分χi(ω)を示している。
太い線幅を持つ粗い破線は、液体試料1がグリセリン50%水溶液の場合における交流磁化率の虚数成分χi(ω)を示している。
太い線幅を持つ密な破線は、液体試料1がグリセリン40%水溶液の場合における交流磁化率の虚数成分χi(ω)を示している。
太い線幅を持つ一点鎖線は、液体試料1がグリセリン30%水溶液の場合における交流磁化率の虚数成分χi(ω)を示している。
細い線幅を持つ実線は、液体試料1がグリセリン20%水溶液の場合における交流磁化率の虚数成分χi(ω)を示している。
細い線幅を持つ粗い破線は、液体試料1がグリセリン10%水溶液の場合における交流磁化率の虚数成分χi(ω)を示している。
細い線幅を持つ密な破線は、液体試料1が水の場合における交流磁化率の虚数成分χi(ω)を示している。
図6に示したように、グリセリン水溶液の濃度が下がるにつれて、交流磁化率の中心周波数fcは高くなる。また、グリセリン水溶液の濃度が下がるにつれて、グリセリン水溶液の粘性は下がる。よって、交流磁化率の中心周波数fcを算出することにより、グリセリン水溶液の粘性を算出することができる。
図7は、第1の実施形態で実証される粘度測定値と既知粘度との相関を示すグラフである。
図7のグラフの横軸は、文献値の粘度(Pa・s)である。グラフの縦軸は交流磁化率から算出した粘度(Pa・s)である。このグラフにおいて、交流磁化率から算出したグリセリン粘度と文献値との相関は、フィティングの傾きが正の相関を示している。これを一次近似した式を、以下の式(9)に示す。
これにより、本実施形態の磁気的な手法で測定した粘度の値は、文献値と非常に相関性が高いことが分かる。このときの相関値R2は、0.9884であった。
以上から、実施例1において、液体試料1に浮遊する磁性粒子の交流磁化率を測定することによって、グリセリン水溶液の粘度の算出が可能であることを実証した。
《第2の実施形態》
次に、第2の実施形態における手順を説明する。第2実施形態では、予め既知の粘度の液体試料1を測定し、その信号と既知の粘度から検量線を作成する。検量線を作成した後に、粘度が未知の液体試料1を測定し、その信号と、予め作成した検量線を対比し、粘度が未知の液体試料1の粘度を算出する。
図8は、第2の実施形態で実施される粘度検出の手順を示すフローチャートである。
ステップS30〜S37は、既知の粘度の液体試料1に係る測定処理と、検量線の作成処理とを示している。
最初、オペレータが試料容器3に、既知の粘度の液体試料1を入れ、試料固定台12に、液体試料1が入った試料容器3を設置する(ステップS30)。次いでオペレータは、液体試料1の入った試料容器3に、磁性物質2を加えて混合する(ステップS31)。
以降、ステップS32〜S35では、交流信号発生器13が特定の周波数帯域内で出力周波数を変化させながら処理を繰り返す。
最初、交流信号発生器13は、当該周波数の信号を励磁コイル4に出力する。励磁コイル4から発生した交流磁場は、液体試料1と磁性物質2の混合試料に印加される(ステップS33)。これにより、液体試料1中の磁性物質2を磁化させる。磁性物質2からは、印加された交流磁場に応答する磁気信号が発生する。磁気センサ5は、発生した磁気信号を検知する(ステップS34)。検知された磁気信号は、粘度測定装置30の信号処理を経て、データ収集器19に収集される。データ収集器19は、主に実数信号6および虚数信号7を収集する。ステップS35において、特定の周波数帯域内の処理を終了したならば、ステップS36の処理に進む。
信号解析部22は、データ収集器19に収集された実数信号6、虚数信号7から絶対値信号9、位相信号10を解析する(ステップS36)。信号解析部22は、ここで解析した4成分の信号と、液体試料1に係る既知の粘度とを対比させて、検量線を作成する(ステップS37)。この検量線の例を、後記する図9から図12に示す。
以下、ステップS38〜S44は、粘度が未知の液体試料1の測定処理である。
オペレータが試料容器3に粘度が未知の液体試料1を入れ、試料固定台12に、液体試料1が入った試料容器3を設置する(ステップS38)。次いでオペレータは、液体試料1の入った試料容器3に、磁性物質2を加えて混合する(ステップS39)。
次いで交流信号発生器13は、特定の周波数1点の信号を励磁コイル4に出力する。励磁コイル4から発生した交流磁場は、液体試料1と磁性物質2の混合試料に印加される(ステップS40)。これにより、液体試料1中の磁性物質2を磁化させる。磁性物質2からは、印加された交流磁場に応答する磁気信号が発生する。磁気センサ5は、発生した磁気信号を検知する(ステップS41)。検知された磁気信号は、粘度測定装置30の信号処理を経て、データ収集器19に収集される。データ収集器19は、主に実数信号6および虚数信号7を収集する。
信号解析部22は、データ収集器19に収集された実数信号6、虚数信号7から絶対値信号9、位相信号10を解析する(ステップS42)。信号解析部22は、ここで解析した4成分の信号のうちいずれかを、ステップS37で作成した検量線と照合し(ステップS43)、液体の粘度ηを算出する(ステップS44)。
なお第2の実施形態において、磁性物質2を交流磁化するため、液体試料1を格納した試料容器3に印加する交流磁場の周波数は、1Hz〜10MHzの範囲であり、好ましくは10Hz〜100kHzの範囲である。交流磁場の周波数は、商用交流電源の周波数の影響を防ぐため、50Hzおよびその倍数と、60Hzおよびその倍数から最も遠い値が望ましい。交流磁場の周波数は、例えば、60Hzから100Hz(50Hzの2倍の周波数)の間でいうと、70Hzから90Hz、更に好ましくは80Hzの近傍であることが望ましい。これにより、商用交流電源の周波数の影響を防ぐことができる。
また第2実施形態における周波数は1点のみでもよいが、より精度を高めるためには2点以上を測定してもよい。
(実施例2)
実施例2は、第2の実施形態に基づき、粘度が既知の液体試料1を用いて、検量線を作成するものである。実施例2では、対象とする液体試料1は、粘度が既知のグリセリン水溶液である。ここでは濃度0〜70%(w/w%)のグリセリン水溶液に、粒径が30nmの磁性粒子を混合したときの交流磁化率を算出する。このときに印加する磁場の周波数は、例えば80Hzである。
以下、図9〜図12を参照しつつ、4成分それぞれに基づく液体の粘度の検量線について説明する。
図9は、交流磁化率の実数信号に基づく液体の粘度の検量線を示すグラフである。
図10は、交流磁化率の虚数信号に基づく液体の粘度の検量線を示すグラフである。
図11は、交流磁化率の絶対値信号に基づく液体の粘度の検量線を示すグラフである。
図12は、交流磁化率の位相信号に基づく液体の粘度の検量線を示すグラフである。
図9〜図12の横軸は、液体の粘度(mPa・s)である。グラフの結果より、グリセリン水溶液の濃度0〜70%(粘度1〜22.5mPa・s)において、交流磁化率の信号から検量線が作成できる。
以上から、1点の周波数における交流磁化率の測定によって、液体試料の粘度の検量線が作成可能であることを実証した。
(変形例)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば上記した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
上記の各構成、機能、処理部、処理手段などは、それらの一部または全部を、例えば集積回路などのハードウェアで実現してもよい。上記の各構成、機能などは、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈して実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイルなどの情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)などの記録装置、または、フラッシュメモリカード、DVD(Digital Versatile Disk)などの記録媒体に置くことができる。
各実施形態に於いて、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
本発明の変形例として、例えば、次の(a)〜(c)のようなものがある。
(a) 第2の実施形態において、検量線を生成する既知の粘度の液体は、グリセリン水溶液に限られない。
(b) 第2の実施形態のステップS40において、交流信号発生器13が励磁コイル4に出力する信号の周波数は、80Hzに限られず、例えば120Hz(60Hzの2倍)から150Hz(50Hzの3倍)の間の周波数である130Hzから140Hz、更に好ましくは135Hzの近傍であってもよい。
(c) 第2の実施形態のステップS30〜S37の処理は、未知の試料ごとに毎回行う必要はなく、最初の測定時に一度だけ実行して、検量線を設定してもよい。
1 液体試料
2 磁性物質
3 試料容器
4 励磁コイル (励磁機構)
5 磁気センサ (測定部の一部)
6 実数信号
7 虚数信号
9 絶対値信号
10 位相信号
11 円盤
12 試料固定台
13 交流信号発生器
14 磁気センサアンプ (測定部の一部)
15 ロックインアンプ
16 振幅位相調整器
17 フィルタ回路
18 AD変換器
19 データ収集器
20 恒温槽
21 温度調整部
22 信号解析部 (信号解析手段)
30 粘度測定装置

Claims (8)

  1. 粘性を有する液体中に複数個の磁性物質が浮遊している試料を格納した容器に対して、特定周波数帯域の交流磁場を印加する励磁機構と、
    前記磁性物質に由来する磁気信号を測定する測定部と、
    前記励磁機構が印加した交流磁場の周波数および前記測定部により測定された前記磁気信号の関係を解析して前記試料の粘度を算出する信号解析部と、
    を有することを特徴とする粘度測定装置。
  2. 粘性を有する液体中に複数個の磁性物質が浮遊している試料を格納した容器に対して交流磁場を印加する励磁機構と、
    前記磁性物質に由来する磁気信号を測定する測定部と、
    前記測定部により測定された前記磁気信号を解析して前記試料の粘度を算出する信号解析部と、
    を有し、
    前記信号解析部は、既知の粘性を有する試料に対して前記励磁機構が印加した特定周波数帯域の交流磁場の周波数および前記測定部により測定された前記磁気信号の関係から検量線を作成し、粘性が未知の試料に対して前記励磁機構が印加した1点の交流磁場の周波数、前記測定部により測定された前記磁気信号、および前記検量線に基づいて前記試料の粘度を算出する、
    ことを特徴とする粘度測定装置。
  3. 前記交流磁場の強度は、前記磁性物質同士が凝集しない程度の強さであることを特徴とする請求項1または2に記載の粘度測定装置。
  4. 前記交流磁場の周波数は、1Hzから10MHzの範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の粘度測定装置。
  5. 前記信号解析部において解析される信号は、交流磁化率の実数成分、虚数成分、絶対値および位相の4成分のうちいずれかである、
    ことを特徴とする請求項1に記載の粘度測定装置。
  6. 前記励磁機構は、所定温度に保たれている恒温槽に設置されている、
    ことを特徴とする請求項1に記載の粘度測定装置。
  7. 粘度を有する液体の試料と、前記試料に混合した複数個の磁性物質に由来する磁気信号の測定により前記試料の粘度を測定する粘度測定装置が、
    被測定物質である前記磁性物質と前記液体とを混合した前記試料を格納した容器に対して、周波数1Hzから10MHzの範囲、かつ、前記磁性物質同士が凝集しない程度の強度を有する交流磁場を印加し、
    前記交流磁場に応答する前記磁性物質に由来する磁気信号を測定し、
    前記試料に印加した交流磁場の周波数および前記磁気信号より解析される交流磁化率の信号から液体の粘度を算出する、
    ことを特徴とする粘度測定方法。
  8. 前記磁気信号より解析される交流磁化率の信号は、交流磁化率の虚数成分の中心周波数である、
    ことを特徴とする請求項7に記載の粘度測定方法。
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