JP2018087318A - ゴム成分に耐摩耗性及び制動特性を付与するための添加剤、ゴム組成物、並びにタイヤ - Google Patents

ゴム成分に耐摩耗性及び制動特性を付与するための添加剤、ゴム組成物、並びにタイヤ Download PDF

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Abstract

【課題】ゴム成分に耐摩耗性及び制動特性を付与するための添加剤を提供すること。【解決手段】ゴム成分に耐摩耗性及び制動特性を付与するための添加剤であって、下記一般式(1):[式中、X1及びX2は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アルキルチオ基、アラルキル基、アリール基、アリールチオ基、複素環基、又はアミノ基を示す。これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。]で表されるテトラジン化合物又はその塩を含む、添加剤。【選択図】なし

Description

本発明は、ゴム成分に耐摩耗性及び制動特性を付与するための添加剤、ゴム組成物、並びにタイヤに関する。
タイヤにおいて、寿命長期化のために耐摩耗性を向上させること、及び安全性確保のために制動特性(湿潤路面でのグリップ性)を向上させることが求められているが、前記の2つの性能を両立させることが難しい課題となっている。
例えば、制動特性を向上させるために、ゴム主成分として末端変性スチレンブタジエンゴム、末端変性ブタジエンゴム等と、充填剤としてシリカとを組み合わせたものをタイヤトレッドゴムに使用する手法が知られている(特許文献1及び2参照)。しかしながら、この手法では、制動特性は向上するものの、フィラーとゴムとの親和性が十分でないため耐摩耗性に劣り、また、ゴム混練時の加工性にも課題があった。
また、熱可塑性樹脂、チオウレア化合物等をゴム成分に添加する手法も提案されている(特許文献3参照)。しかしながら、この手法では、制動特性は著しく向上するものの、添加剤がゴムと結合していないために、耐摩耗性は不十分であった。
特開2000−344955号公報 特開2014−218549号公報 特開2016−169268号公報
本発明の課題は、ゴム成分に耐摩耗性及び制動特性を付与するための添加剤を提供することである。
本発明の他の目的の一つは、耐摩耗性及び制動特性を発現し得るゴム組成物を提供することである。
本発明の他の目的の一つは、耐摩耗性及び制動特性に優れたタイヤを提供することである。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ジエン系ゴムを主としたゴム組成物に、混合時において、テトラジン系化合物を特定量添加することにより上記の課題を解決できることを見出した。本発明者らは、かかる知見に基づき、さらに検討を行った結果、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下に示す、ゴム成分に耐摩耗性及び制動特性を付与するための添加剤、ゴム組成物、並びにタイヤ等を提供する。
項1.
ゴム成分に耐摩耗性及び制動特性を付与するための添加剤であって、
下記一般式(1):
Figure 2018087318
[式中、X及びXは、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アルキルチオ基、アラルキル基、アリール基、アリールチオ基、複素環基、又はアミノ基を示す。これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。]
で表されるテトラジン化合物又はその塩を含む、添加剤。
項2.
及びXが、複素環基である項1に記載の添加剤。
項3.
ゴム成分、項1又は2に記載の添加剤、並びに無機充填材及び/又はカーボンブラックを含むゴム組成物。
項4.
更に含水酸化チタンを含む項3に記載のゴム組成物。
項5.
ゴム成分100質量部に対して、項1又は2に記載の添加剤を0.1〜10質量部、並びに無機充填材及び/又はカーボンブラックを合計量で20〜150質量部含む項3に記載のゴム組成物。
項6.
ゴム成分100質量部に対して、含水酸化チタンを0.5〜80質量部を含む項4又は5に記載のゴム組成物。
項7.
ゴム成分100質量部中、ジエン系ゴムが50質量部以上含まれる、項5又は6に記載のゴム組成物。
項8.
ジエン系ゴム中の50質量%以上が、ガラス転移点が−70℃から−20℃の範囲にあるジエン系ゴムである項7に記載のゴム組成物。
項9.
ゴム成分に項1又は2に記載の添加剤を処理して得られる変性ポリマー、並びに無機充填材及び/又はカーボンブラックを含むゴム組成物。
項10.
更に含水酸化チタンを含む項9に記載のゴム組成物。
項11.
トレッド部に用いられる項3〜10のいずれか一項に記載のゴム組成物。
項12.
項3〜11のいずれか一項に記載のゴム組成物を用いて作製されたタイヤ。
項13.
ジエン系ゴムが、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、及びブタジエンゴムからなる群より選ばれる少なくとも一つである項7又は8に記載のゴム組成物。
項14.
無機充填材がシリカである項3〜11及び項13のいずれか一項に記載のゴム組成物。
項15.
シリカがBET比表面積(m/g)40〜350の範囲にある湿式シリカである項14に記載のゴム組成物。
項16.
無機充填材の配合量が、ゴム組成物100質量部に対して、20〜150質量部である項5又は6に記載のゴム組成物。
項17.
カーボンブラックの配合量が、ゴム組成物100質量部に対して、2〜150質量部である項5、6又は16に記載のゴム組成物。
項18.
ゴム成分100質量部に項1又は2に記載の添加剤0.1〜10質量部を処理して得られた変性ポリマー100質量部、並びに無機充填材及び/又はカーボンブラックを合計量で20〜150質量部含有するゴム組成物。
項19.
更に含水酸化チタン3〜60質量部含有する項18に記載のゴム組成物。
項20.
無機充填材の配合量が、変性ポリマー100質量部に対して、20〜150質量部である項18又は19に記載のゴム組成物。
項21.
カーボンブラックの配合量が、変性ポリマー100質量部に対して、2〜150質量部である項18〜20のいずれか一項に記載のゴム組成物。
項22.
項3〜11、及び項13〜21のいずれか一項に記載のゴム組成物を用いて作製されたタイヤトレッド。
本発明は、ゴム成分に耐摩耗性及び制動特性を付与するための添加剤を提供することができる。該添加剤は、テトラジン系化合物を含んでおり、該添加剤によって、ゴムの主鎖が変性されることにより、制動特性帯域での高周波数の粘性項の増加による制動特性が向上するとともに、該添加剤と充填剤との親和性向上により耐摩耗性が向上することで、前記2つの性能の両立がなされる。
本発明は、この添加剤と特定のゴム成分とを組み合わせることにより、耐摩耗性及び制動特性を両立し得るゴム組成物を提供することができる。
また、本発明は、上記添加剤と含水酸化チタンとを併用することにより、より優れた耐摩耗性及び制動特性を発現し得るゴム組成物を提供することができる。
以下に、本発明を詳細に説明する。
1.ゴム成分に耐摩耗性及び制動特性を付与するための添加剤
本発明のゴム成分に耐摩耗性及び制動特性を付与するための添加剤(以下、「本発明の添加剤」ということもある)は、下記一般式(1)で表される化合物又はその塩(以下、「テトラジン化合物(1)」ということもある。)を含む。
Figure 2018087318
[式中、X及びXは、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アルキルチオ基、アラルキル基、アリール基、アリールチオ基、複素環基、又はアミノ基を示す。これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。]
本明細書において、「アルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基が挙げられ、具体的には、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、1−エチルプロピル、n−ペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、3−メチルペンチル基等の炭素数1〜6(特に炭素数1〜4)の直鎖状又は分岐状アルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等の炭素数3〜8(特に炭素数3〜6)の環状アルキル基等が挙げられる。好ましいアルキル基としては、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状アルキル基であり、より好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、又はn−ペンチル基であり、特に好ましくはメチル、又はエチル基である。
本明細書において、「アルキルチオ基」としては、特に限定はなく、例えば、直鎖状、分岐状又は環状のアルキルチオ基が挙げられ、具体的には、例えば、メチルチオ、エチルチオ、n−プロピルチオ、イソプロピルチオ、n−ブチルチオ、イソブチルチオ、s−ブチルチオ、t−ブチルチオ、1−エチルプロピルチオ、n−ペンチルチオ、ネオペンチルチオ、n−ヘキシルチオ、イソヘキシルチオ、3−メチルペンチルチオ基等の炭素数1〜6(特に炭素数1〜4)の直鎖状又は分岐状のアルキルチオ基;シクロプロピルチオ、シクロブチルチオ、シクロペンチルチオ、シクロヘキシルチオ、シクロヘプチルチオ、シクロオクチルチオ基等の炭素数3〜8(特に炭素数3〜6)の環状アルキルチオ基等が挙げられる。好ましいアルキルチオ基としては、メチルチオ、エチルチオ、イソプロピルチオ、又はイソブチルチオ基であり、より好ましくはメチルチオ基又はエチルチオ基である。
本明細書において、「アラルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、ベンジル、フェネチル、トリチル、1−ナフチルメチル、2−(1−ナフチル)エチル、2−(2−ナフチル)エチル基等が挙げられる。より好ましいアラルキル基としては、ベンジル基又はフェネチル基であり、より好ましくはベンジル基である。
本明細書において、「アリール基」としては、特に限定はなく、例えば、フェニル、ビフェニル、ナフチル、ジヒドロインデニル、9H−フルオレニル基等が挙げられる。より好ましいアリール基としては、フェニル基又はナフチル基であり、より好ましくはフェニル基である。
本明細書において、「アリールチオ基」としては、特に限定はなく、例えば、フェニルチオ、ビフェニルチオ、ナフチルチオ基等が挙げられる。
本明細書において、「複素環基」としては、特に限定はなく、例えば、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピラジニル、2−ピリミジル、4−ピリミジル、5−ピリミジル、3−ピリダジル、4−ピリダジル、4−(1,2,3−トリアジル)、5−(1,2,3−トリアジル)、2−(1,3,5−トリアジル)、3−(1,2,4−トリアジル)、5−(1,2,4−トリアジル)、6−(1,2,4−トリアジル)、2−キノリル、3−キノリル、4−キノリル、5−キノリル、6−キノリル、7−キノリル、8−キノリル、1−イソキノリル、3−イソキノリル、4−イソキノリル、5−イソキノリル、6−イソキノリル、7−イソキノリル、8−イソキノリル、2−キノキサリル、3−キノキサリル、5−キノキサリル、6−キノキサリル、7−キノキサリル、8−キノキサリル、3−シンノリル、4−シンノリル、5−シンノリル、6−シンノリル、7−シンノリル、8−シンノリル、2−キナゾリル、4−キナゾリル、5−キナゾリル、6−キナゾリル、7−キナゾリル、8−キナゾリル、1−フタラジル、4−フタラジル、5−フタラジル、6−フタラジル、7−フタラジル、8−フタラジル、1−テトラヒドロキノリル、2−テトラヒドロキノリル、3−テトラヒドロキノリル、4−テトラヒドロキノリル、5−テトラヒドロキノリル、6−テトラヒドロキノリル、7−テトラヒドロキノリル、8−テトラヒドロキノリル、1−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル、2−フリル、3−フリル、2−チエニル、3−チエニル、1−イミダゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、5−イミダゾリル、1−ピラゾリル、3−ピラゾリル、4−ピラゾリル、5−ピラゾリル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、3−イソオキサゾリル、4−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル、3−イソチアゾリル、4−イソチアゾリル、5−イソチアゾリル、4−(1,2,3−チアジアゾリル)、5−(1,2,3−チアジアゾリル)、3−(1,2,5−チアジアゾール)、2−(1,3,4−チアジアゾール)、4−(1,2,3−オキサジアゾリル)、5−(1,2,3−オキサジアゾリル)、3−(1,2,4−オキサジアゾリル)、5−(1,2,4−オキサジアゾリル)、3−(1,2,5−オキサジアゾリル)、2−(1,3,4−オキサジアゾリル)、1−(1,2,3−トリアゾリル)、4−(1,2,3−トリアゾリル)、5−(1,2,3−トリアゾリル)、1−(1,2,4−トリアゾリル)、3−(1,2,4−トリアゾリル)、5−(1,2,4−トリアゾリル)、1−テトラゾリル、5−テトラゾリル、1−インドリル、2−インドリル、3−インドリル、4−インドリル、5−インドリル、6−インドリル、7−インドリル、1−イソインドリル、2−イソインドリル、3−イソインドリル、4−イソインドリル、5−イソインドリル、6−イソインドリル、7−イソインドリル、1−ベンゾイミダゾリル、2−ベンゾイミダゾリル、4−ベンゾイミダゾリル、5−ベンゾイミダゾリル、6−ベンゾイミダゾリル、7−ベンゾイミダゾリル、2−ベンゾフラニル、3−ベンゾフラニル、4−ベンゾフラニル、5−ベンゾフラニル、6−ベンゾフラニル、7−ベンゾフラニル、1−イソベンゾフラニル、3−イソベンゾフラニル、4−イソベンゾフラニル、5−イソベンゾフラニル、6−イソベンゾフラニル、7−イソベンゾフニル、2−ベンゾチエニル、3−ベンゾチエニル、4−ベンゾチエニル、5−ベンゾチエニル、6−ベンゾチエニル、7−ベンゾチエニル、2−ベンゾオキサゾリル、4−ベンゾオキサゾリル、5−ベンゾオキサゾリル、6−ベンゾオキサゾリル、7−ベンゾオキサゾリル、2−ベンゾチアゾリル、4−ベンゾチアゾリル、5−ベンゾチアゾリル、6−ベンゾチアゾリル、7−ベンゾチアゾリル、1−インダゾリル、3−インダゾリル、4−インダゾリル、5−インダゾリル、6−インダゾリル、7−インダゾリル、2−モルホリル、3−モルホリル、4−モルホリル、1−ピペラジル、2−ピペラジル、1−ピペリジル、2−ピペリジル、3−ピペリジル、4−ピペリジル、2−テトラヒドロピラニル、3−テトラヒドロピラニル、4−テトラヒドロピラニル、2−テトラヒドロチオピラニル、3−テトラヒドロチオピラニル、4−テトラヒドロチオピラニル、1−ピロリジル、2−ピロリジル、3−ピロリジル、2−テトラヒドロフラニル、3−テトラヒドロフラニル、2−テトラヒドロチエニル、3−テトラヒドロチエニル等が挙げられる。中でも、好ましい複素環基としては、ピリジル、フラニル、チエニル、ピリミジル又はピラジルであり、より好ましくはピリジルである。
本明細書において、「アミノ基」には、−NHで表されるアミノ基だけでなく、例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、n−プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、n−ブチルアミノ、イソブチルアミノ、s−ブチルアミノ、t−ブチルアミノ、1−エチルプロピルアミノ、n−ペンチルアミノ、ネオペンチルアミノ、n−ヘキシルアミノ、イソヘキシルアミノ、3−メチルペンチルアミノ基等の炭素数1〜6(特に炭素数1〜4)の直鎖状又は分岐状のモノアルキルアミノ基;ジメチルアミノ、エチルメチルアミノ、ジエチルアミノ基等の炭素数1〜6(特に炭素数1〜4)の直鎖状又は分岐状のアルキル基を2つ有するジアルキルアミノ基等の置換アミノ基も含まれる。
これらアルキル基、アルキルチオ基、アラルキル基、アリール基、アリールチオ基、複素環基及びアミノ基の各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。該「置換基」としては、特に限定はなく、例えば、ハロゲン原子、アミノ基、アミノアルキル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルボキシル基、カルボキシアルキル基、ホルミル基、ニトリル基、ニトロ基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、水酸基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基等が挙げられる。該置換基は、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個有していてもよい。
本明細書において、「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられ、好ましくは塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子である。
本明細書において、「アミノアルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、アミノメチル、2−アミノエチル、3−アミノプロピル基等のアミノアルキル基等が挙げられる。
本明細書において、「アルコキシカルボニル基」としては、特に限定はなく、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル基等が挙げられる。
本明細書において、「アシル基」としては、特に限定はなく、例えば、アセチル、プロピオニル、ピバロイル基等の炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状アルキルカルボニル基が挙げられる。
本明細書において、「アシルオキシ基」としては、特に限定はなく、例えば、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、n−ブチリルオキシ基等が挙げられる。
本明細書において、「アミド基」としては、特に限定はなく、例えば、アセトアミド、ベンズアミド基等のカルボン酸アミド基;チオアセトアミド、チオベンズアミド基等のチオアミド基;N−メチルアセトアミド、N−ベンジルアセトアミド基等のN−置換アミド基;等が挙げられる。
本明細書において、「カルボキシアルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、カルボキシメチル、カルボキシエチル、カルボキシ−n−プロピル、カルボキシ−n−ブチル、カルボキシ−n−ブチル、カルボキシ−n−ヘキシル基等のカルボキシ−アルキル基(好ましくはカルボキシ基を有する炭素数1〜6のアルキル基)が挙げられる。
本明細書において、「ヒドロキシアルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシ−n−プロピル、ヒドロキシ−n−ブチル基等のヒドロキシ−アルキル基(好ましくはヒドロキシ基を有する炭素数1〜6のアルキル基)が挙げられる。
本明細書において、「アルコキシ基」としては、特に限定はなく、例えば、直鎖状、分岐状又は環状のアルコキシ基が挙げられ、具体的には、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、t−ブトキシ、n−ペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、n−ヘキシルオキシ基の炭素数1〜6(特に炭素数1〜4)の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基;シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、シクロヘプチルオキシ、シクロオクチルオキシ基等の炭素数3〜8(特に炭素数3〜6)の環状アルコキシ基等が挙げられる。
本明細書において、「アリールオキシ基」としては、特に限定はなく、例えば、フェノキシ、ビフェニルオキシ、ナフトキシ基等が挙げられる。
一般式(1)で表されるテトラジン化合物の「塩」としては、特に限定はなく、あらゆる種類の塩が含まれる。このような塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、メタンスルホン酸塩等の有機酸塩;ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩;ジメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム等の第4級アンモニウム塩等が挙げられる。
これらテトラジン化合物(1)の中でも、好ましい化合物は、X及びXが、同一又は異なって、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい複素環基である化合物である。
より好ましいテトラジン化合物(1)は、X及びXが、同一又は異なって、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい複素環基である化合物である。
さらに好ましいテトラジン化合物(1)は、X及びXが、同一又は異なって、置換基を有していてもよいベンジル基、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよい2−ピリジル基、置換基を有していてもよい3−ピリジル基、置換基を有していてもよい4−ピリジル基、置換基を有していてもよい2−フラニル基、置換基を有していてもよいチエニル基、置換基を有していてもよい1−ピラゾリル基、置換基を有していてもよい2−ピリミジル基、又は置換基を有していてもよい2−ピラジル基である化合物であり、これらの中でも、置換基を有していてもよい2−ピリジル基、置換基を有していてもよい3−ピリジル基、又は置換基を有していてもよい2−フラニル基である化合物が特に好ましい。
具体的に、テトラジン化合物(1)としては、例えば、
1,2,4,5−テトラジン、
3,6−ビス(2−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン、
3,6−ビス(3−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン、
3,6−ビス(4−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン、
3,6−ジフェニル−1,2,4,5−テトラジン、
3,6−ジベンジル−1,2,4,5−テトラジン、
3,6−ビス(2−フラニル)−1,2,4,5−テトラジン、
3−メチル−6−(3−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン、
3,6−ビス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)−1,2,4,5−テトラジン、
3,6−ビス(2−チエニル)−1,2,4,5−テトラジン、
3−メチル−6−(2−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン、
3,6−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,2,4,5−テトラジン、
3,6−ビス(3−ヒドロキシフェニル)−1,2,4,5−テトラジン、
3,6−ビス(2−ピリミジニル)−1,2,4,5−テトラジン、
3,6−ビス(2−ピラジル)−1,2,4,5−テトラジン等が挙げられる。
中でも、好ましいテトラジン化合物(1)は、3,6−ビス(2−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン、3,6−ビス(3−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン、3,6−ビス(2−フラニル)−1,2,4,5−テトラジン、3−メチル−6−(3−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン、及び3−メチル−6−(2−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジンであり、さらに好ましいテトラジン化合物(1)は、3,6−ビス(2−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン、及び3,6−ビス(3−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジンである。
なお、本発明の添加剤は、テトラジン化合物(1)のみからなる場合を包含する。
2.ゴム組成物
本発明のゴム組成物は、ゴム成分、上記本発明の添加剤、並びに無機充填材及び/又はカーボンブラックを含んでいる。
上記本発明の添加剤の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して、通常0.1〜10質量部であり、好ましくは0.25〜5質量部であり、より好ましくは0.5〜2質量部である。
無機充填材の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、通常20〜150質量部であり、好ましくは30〜120質量部であり、より好ましくは40〜90質量部である。
カーボンブラックの配合量は、ゴム成分100質量部に対して、通常2〜150質量部であり、好ましくは4〜120質量部であり、より好ましくは6〜100質量部である。カーボンブラックでの配合量が2質量部以上であれば、静電気防止性能及びゴム強度性能を確保する観点から好ましく、150質量部以下であれば、制動特性の観点から好ましい。なお、本発明のゴム組成物において、無機充填材及び/又はカーボンブラックは、両成分の合計量で、例えば、ゴム成分100質量部に対して、通常20〜150質量部、好ましくは40〜130質量部、より好ましくは45〜100質量部となるよう各成分の上記配合量の範囲内で適宜調整すればよい。
無機充填材及び/又はカーボンブラックの合計の配合量が、20質量部以上であれば、ゴム組成物の耐摩耗性向上の観点から好ましく、150質量部以下であれば、制動特性の観点から好ましい。
また、本発明のゴム組成物において、より優れた制動特性及び耐摩耗性を実現するために含水酸化チタンを含むことが好ましい。含水酸化チタンの配合量は、ゴム成分100質量部に対して、通常0.5〜80質量部であり、好ましくは3〜60質量部であり、より好ましくは5〜40質量部である。
なお、無機充填材及び/又はカーボンブラック並びに含水酸化チタンを配合するときは、予めポリマーと湿式または乾式で混合されたマスターバッチポリマーを用いてもよい。
ゴム成分
本明細書において、ゴム成分としては、特に制限はなく、例えば、天然ゴム(NR)、合成ジエン系ゴム、及び天然ゴムと合成ジエン系ゴムとの混合物等のジエン系ゴム、並びにこれら以外の非ジエン系ゴムが挙げられる。
天然ゴムとしては、天然ゴムラテックス、技術的格付けゴム(TSR)、スモークドシート(RSS)、ガタパーチャ、杜仲由来天然ゴム、グアユール由来天然ゴム、ロシアンタンポポ由来天然ゴムなどの天然ゴムに加えて、エポキシ化天然ゴム、メタクリル酸変性天然ゴム、スチレン変性天然ゴムなどの変性天然ゴム等が挙げられる。
合成ジエン系ゴムとしては、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体ゴム(EPDM)、スチレン−イソプレン−スチレン三元ブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレン三元ブロック共重合体(SBS)等、及びこれらの変性合成ジエン系ゴムが挙げられる。変性合成ジエン系ゴムとしては、主鎖変性、片末端変性、両末端変性などの変性手法によるジエン系ゴムが挙げられる。ここで、変性合成ジエン系ゴムの変性官能基としては、エポキシ基、アミノ基、アルコキシ基、水酸基などのヘテロ原子を含有する官能基を1種類以上含むものが挙げられる。また、ジエン部分のシス/トランス/ビニルの比率については、特に制限はなく、いずれの比率においても好適に用いることができる。また、ジエン系ゴムの平均分子量および分子量分布は、特に制限はなく、平均分子量500〜300万が好適に用いることができる。また、合成ジエン系ゴムの製造方法についても、特に制限はなく、乳化重合、溶液重合、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合などで合成されたものが挙げられる。
非ジエン系ゴムとしては、公知のものを広く使用することができる。
ゴム成分は、ジエン系ゴムを含んでいることが好ましく、ゴム成分100質量部中、ジエン系ゴムが50質量部以上含まれることが好ましく、75質量部以上含まれることがより好ましく、80〜100質量部の割合で配合されることが特に好ましい。
また、ジエン系ゴムのガラス転移点においては、−70℃から−20℃の範囲のものが耐摩耗性と制動特性の両立の観点から有効である。本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴム中の50質量%以上が、ガラス転移点が−70℃から−20℃の範囲にあるジエン系ゴムであることが好ましい。
ゴム成分は、1種単独で、又は2種以上を混合(ブレンド)して用いることができる。中でも、好ましいゴム成分としては、天然ゴム、IR、SBR、BR又はこれらから選ばれる2種以上の混合物であり、より好ましくは天然ゴム、SBR、BR又はこれらから選ばれる2種以上の混合物である。また、これらのブレンド比率は、特に制限はないが、ゴム成分100質量部中に、SBR、BR又はこれらの混合物を50〜100質量部の比率で配合することが好ましく、75〜100質量部で配合することがより好ましい。SBR及びBRの混合物を配合する場合には、SBR及びBRの合計量が上記範囲であることが好ましい。また、このときのSBRは50〜100質量部であり、BRが0〜50質量部の範囲であるのが好ましい。
無機充填材
無機充填材としては、ゴム工業界において、通常使用される無機化合物であれば、特に制限はない。使用できる無機化合物としては、例えば、シリカ、γ−アルミナ、α−アルミナ等のアルミナ(Al);ベーマイト、ダイアスポア等のアルミナ一水和物(Al・HO);ギブサイト、バイヤライト等の水酸化アルミニウム[Al(OH)];炭酸アルミニウム[Al(CO]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)]、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO)、タルク(3MgO・4SiO・HO)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO・9HO)、チタン白(TiO)、チタン黒(TiO2n−1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al)、クレー(Al・2SiO)、カオリン(Al・2SiO・2HO)、パイロフィライト(Al・4SiO・HO)、ベントナイト(Al・4SiO・2HO)、ケイ酸アルミニウム(AlSiO、Al・3SiO・5HO等)、ケイ酸マグネシウム(MgSiO、MgSiO等)、ケイ酸カルシウム(Ca・SiO等)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al・CaO・2SiO等)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO)、炭酸カルシウム(CaCO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)・nHO]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO]、各種ゼオライトのように電荷を補正する水素、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む結晶性アルミノケイ酸塩等が挙げられる。これらの無機充填材は、ゴム成分との親和性を向上させるために、該無機充填材の表面が有機処理されていてもよい。
シリカは、ゴム強度を付与することができるため添加することが好ましい。シリカとしては、市販のあらゆるものが使用できる。中でも、好ましいシリカとしては、湿式シリカ、乾式シリカ、又はコロイダルシリカであり、より好ましくは湿式シリカである。これらのシリカは、ゴム成分との親和性を向上させるために、該無機充填材の表面が有機処理されていてもよい。
中でも、無機充填材としては、制動特性の観点からシリカが好ましく、シリカのBET比表面積としては、特に制限はなく、例えば、40〜350m/gの範囲が挙げられる。BET比表面積がこの範囲であるシリカは、ゴム補強性及びゴム成分中への分散性を両立できるという利点がある。該BET比表面積は、ISO 5794/1に準拠して測定される。
この観点から、好ましいシリカとしては、BET比表面積が50〜250m/gの範囲にあるシリカであり、より好ましくは、BET比表面積が100〜270m/gであるシリカであり、特に好ましくは、BET比表面積が110〜270m/gの範囲にあるシリカである。
このようなシリカの市販品としては、Quechen Silicon Chemical Co., Ltd.製の商品名「HD165MP」(BET比表面積 =165m/g)、「HD115MP」(BET比表面積 =115m/g)、「HD200MP」(BET比表面積 =200m/g)、「HD250MP」(BET比表面積 =250m/g)、東ソー・シリカ株式会社製の商品名「ニップシールAQ」(BET比表面積=205m/g)、「ニップシールKQ」(BET比表面積 =240m/g)、デグッサ社製の商品名「ウルトラジルVN3」(BET比表面積 =175m/g)等が挙げられる。
シリカの配合量としては、ゴム成分100質量部に対して、通常20〜120質量部であり、好ましくは30〜100質量部であり、より好ましくは40〜90質量部である。
カーボンブラック
カーボンブラックとしては、特に制限はなく、例えば、市販品のカーボンブラック、Carbon-Silica Dual phase filler等が挙げられる。
具体的に、カーボンブラックとしては、例えば、高、中又は低ストラクチャーのSAF、ISAF、IISAF、N110、N134、N220、N234、N330、N339、N375、N550、HAF、FEF、GPF、SRFグレードのカーボンブラック等が挙げられる。中でも、好ましいカーボンブラックとしては、SAF、ISAF、IISAF、N134、N234、N330、N339、N375、HAF、又はFEFグレードのカーボンブラックである。
カーボンブラックのDBP吸収量としては、特に制限はなく、好ましくは60〜200cm/100g、より好ましくは70〜180cm/100g、特に好ましくは80〜160cm/100gである。
また、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA、JIS K 6217−2:2001に準拠して測定する)は、好ましくは30〜200m/g、より好ましくは40〜180m/g、特に好ましくは50〜160m/gである。
カーボンブラックを配合するゴム組成物において、テトラジン化合物(1)を配合することにより、カーボンブラックの分散性が大幅に向上し、ゴム組成物の耐摩耗性が著しく改良できる。
含水酸化チタン
本明細書において、含水酸化チタンは、「酸化チタン水和物」、「メタチタン酸」、「β−チタン酸」、「水酸化チタン」、「オルソチタン酸」、「α−チタン酸」等と称される化合物と同様の組成を有するものであり、分子式はTiO(OH)、TiO・HO、Ti(OH)、TiO・2HO等で示され、硫酸チタン、塩化チタン等の水溶性チタン化合物の加水分解物として知られている。含水酸化チタンは、X線回折において、アナターゼ型の酸化チタンと似たピークパターンを有するが、酸化チタンとは異なり、低結晶性の化合物である。本明細書において、「低結晶性」とは、X線回折において、アモルファスの場合と異なり、ピークの存在は確認できるものの、結晶性の化合物で示されるような急峻なピークとはピーク幅が異なること、すなわち、アモルファスと結晶性の化合物との中間的なピークを有することをいう。中間的なピークとは、2θ=20°〜30°の範囲内にある酸化チタンの結晶面に対応するピークの半値幅が0.1°以上であるピークをいう。なお、2θ=20°〜30°の範囲内に複数のピークが存在するときは、最大ピークの半値幅が0.1°以上である。半値幅は、好ましくは0.1°〜2°であり、より好ましくは0.45°〜1.8°である。半値幅をこのような範囲に調整することにより、より一層優れた制動特性を有するゴム組成物を得ることができる。なお、本明細書において、「半値幅」とは、X線回折によって得られたピーク強度の1/2の箇所の2θ軸での幅を意味する。
前記含水酸化チタンの形状は特に限定されず、板状、球状、針状、又は不定形状であり、中でも、板状、球状、又は不定形状であることが好ましい。前記含水酸化チタンの平均粒子径は、特に制限されないが、10μm以下が好ましく、0.001〜10μmがより好ましく、0.01〜5μmが更に好ましい。平均粒子径が上記範囲内であることにより、凝集が起こりにくく、加工性に優れるとともに、ゴムの耐破壊性を向上させることができる。前記含水酸化チタンの比表面積(BET法)は、通常、5〜1000m/gであり、好ましくは10〜500m/gであり、より好ましくは30〜200m/gであり、さらに好ましくは50〜150m/gである。比表面積を、このような範囲に調整することにより、ゴム成分中へより良好に分散することができ、より一層優れた制動特性、及び優れた耐摩耗性を有するゴム組成物を得ることができる。
前記含水酸化チタンは、酸又はアルカリを用いて、物質中に含まれる不純物を取り除いてもよい。例えば、硫酸チタンの加水分解から製造される含水酸化チタンの場合、当該含水酸化チタンには不純物として多くの硫酸分を含んでおり、そのままゴムに添加した際にゴム成分の劣化又は使用機材の劣化のおそれがある。そのため、硫酸分を含む含水酸化チタンを水に分散させ、pH値が2〜11、好ましくは4〜8になるように、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等のアルカリを添加し、pH調整をすることにより、過剰な硫酸成分による、ゴム成分の劣化及び使用機器の劣化を防ぐことができる。pH調整後、硫酸分を洗浄し、固形分を濾取、乾燥、及び篩い通しした後に使用するのが好ましい。最終的に得られた含水酸化チタンの水分散液のpH値は、好ましくは2〜11であり、より好ましくは4〜8である。
含水酸化チタンは、分散性の向上、ゴム成分との密着性の向上等を目的として、含水酸化チタンの表面に表面処理剤からなる処理層を形成させてもよい。含水酸化チタンの表面に処理層を形成させるに当たっては、従来より公知の表面処理剤を含水酸化チタン100質量部に対して、0.1〜20質量%使用し、処理層を形成させることができる。処理層を形成させる方法として、従来より公知の方法を適用すればよく、例えば、加水分解を促進する溶媒(例えば、水、アルコール又はこれらの混合溶媒)に表面処理剤を溶解して溶液として、その溶液を含水酸化チタンに噴霧する湿式法、ゴム成分に含水酸化チタンと表面処理剤とを配合して含水酸化チタンの表面に表面処理剤からなる処理層を形成する方法等を用いることができる。
その他の配合剤
本発明のゴム組成物には、上記テトラジン化合物(1)、並びに無機充填材及び/又はカーボンブラック以外にも、ゴム工業界で通常使用される配合剤、例えば、老化防止剤、オゾン防止剤、軟化剤、加工助剤、ワックス、樹脂、発泡剤、オイル、ステアリン酸、亜鉛華(ZnO)、加硫促進剤、加硫遅延剤、加硫剤(硫黄)等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合することができる。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。
また、シリカなどの無機充填材が配合されたゴム組成物においては、シリカによるゴム組成物の補強性を高める目的、又はゴム組成物の耐摩耗性を高める目的で、シランカップリング剤を配合してもよい。
無機充填剤と併用可能なシランカップリング剤としては特に制限されず、市販品を好適に使用することができる。このようなシランカップリング剤として、例えばスルフィド系、ポリスルフィド系、チオエステル系、チオール系、オレフィン系、エポキシ系、アミノ系、アルキル系のシランカップリング剤が挙げられる。
スルフィド系のシランカップリング剤としては、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−メチルジメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−メチルジメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−メチルジメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(3−モノエトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−モノエトキシジメチルシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−モノエトキシジメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−モノメトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−モノメトキシジメチルシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−モノメトキシジメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−モノエトキシジメチルシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2−モノエトキシジメチルシリルエチル)トリスルフィド、ビス(2−モノエトキシジメチルシリルエチル)ジスルフィド等が挙げられる。これらの内、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドが特に好ましい。
チオエステル系のシランカップリング剤としては、例えば、3−ヘキサノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3−オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3−デカノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3−ラウロイルチオプロピルトリエトキシシラン、2−ヘキサノイルチオエチルトリエトキシシラン、2−オクタノイルチオエチルトリエトキシシラン、2−デカノイルチオエチルトリエトキシシラン、2−ラウロイルチオエチルトリエトキシシラン、3−ヘキサノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3−オクタノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3−デカノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3−ラウロイルチオプロピルトリメトキシシラン、2−ヘキサノイルチオエチルトリメトキシシラン、2−オクタノイルチオエチルトリメトキシシラン、2−デカノイルチオエチルトリメトキシシラン、2−ラウロイルチオエチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
チオール系のシランカップリング剤としては、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等を挙げることができる。
オレフィン系のシランカップリング剤としては、例えば、ジメトキシメチルビニルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルエトキシビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−(メトキシジメトキシジメチルシリル)プロピルアクリレート、3−(トリメトキシシリル)プロピルアクリレート、3−[ジメトキシ(メチル)シリル]プロピルメタクリレート、3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、3−[ジメトキシ(メチル)シリル]プロピルメタクリレート、3−(トリエトキシシリル)プロピルメタクリレート、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルメタクリレート等を挙げることができる。
エポキシ系のシランカップリング剤としては、例えば、3−グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、ジエトキシ(3−グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、トリエトキシ(3−グリシジルオキシプロピル)シラン、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらの内、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
アミノ系のシランカップリング剤としては、例えば、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−エトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらの内、3−アミノプロピルトリエトキシシランが好ましい。
アルキル系のシランカップリング剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらの内、メチルトリエトキシシランが好ましい。
これらシランカップリング剤の中でも、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドを特に好ましく使用することができる。
本発明においては、シランカップリング剤は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のゴム組成物のシランカップリング剤の配合量は、無機充填材100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、3〜15質量部であることが特に好ましい。0.1質量部以上であれば、ゴム組成物の耐摩耗性の効果をより好適に発現することができ、20質量部以下であれば、ゴム組成物のコストが低減し、経済性が向上するからである。
また、制動特性を特に重視するケースにおいては、樹脂などを添加してもよい。具体的には、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂などの天然樹脂、石油系樹脂、フェノール系樹脂、石炭系樹脂、キシレン系樹脂といった樹脂が挙げられる。ロジン系樹脂としては、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン、水素添加ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、変性ロジンのグリセリン、ペンタエリスリトールエステルといった樹脂が挙げられ、テルペン系樹脂としては、α−ピネン系、β−ピネン系、ジペンテン系等のテルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、水素添加テルペン樹脂といった樹脂が挙げられる。
ゴム組成物の用途
本発明のゴム組成物の用途としては、タイヤトレッドが挙げられる。
ゴム組成物の製造方法
本発明のゴム組成物の製造方法としては、特に制限されない。本発明のゴム組成物の製造方法は、例えば、ゴム成分、本発明の添加剤、並びに無機充填材及び/又はカーボンブラックを含む原料成分を混練する工程(A)、並びに工程(A)で得られる混合物、及び加硫剤を混練する工程(B)を含んでいる。
工程(A)
工程(A)は、ゴム成分、本発明の添加剤、並びに無機充填材及び/又はカーボンブラック、必要に応じて、含水酸化チタンを含む原料成分を混練する工程であり、加硫剤を配合する前の工程であることを意味している。工程(A)では、さらに必要に応じて、上記のその他の配合剤等を配合することができる。
工程(A)における混練方法としては、例えば、ゴム成分と、本発明の添加剤と、無機充填材及び/又はカーボンブラックとを含む組成物を混練する方法が挙げられる。この混練方法においては、各成分の全量を一度に混練してもよく、粘度調整等の目的に応じて、各成分を分割投入して混練してもよい。また、ゴム成分と無機充填材及び/又はカーボンブラックとを混練した後、本発明の添加剤を投入して混練するか、ゴム成分と本発明の添加剤とを混練した後、無機充填材及び/又はカーボンブラックを投入して混練してもよい。工程(A)は複数回にわたり繰り返し混練されてもよい。含水酸化チタンを投入する場合は、無機充填材及び/又はカーボンブラックと同時に行えばよい。
工程(A)におけるゴム組成物を混合する際の温度としては、特に制限はなく、例えば、ゴム組成物の温度の上限が120〜190℃であることが好ましく、130〜175℃であることがより好ましく、140〜170℃であることがさらに好ましい。
工程(A)における混合時間としては、特に制限はなく、例えば、10秒間から20分間であることが好ましく、30秒間から10分間であることがより好ましく、2分間から7分間であることがさらに好ましい。
工程(A)において、本発明の添加剤であるテトラジン化合物(1)の配合量としては、特に制限はなく、例えば、ゴム成分100質量部に対して、0.1〜10質量部であり、好ましくは0.25〜5質量部であり、より好ましくは0.5〜2質量部である。
工程(A)における無機充填材の配合量としては、ゴム成分100質量部に対して、通常20〜150質量部であり、好ましくは30〜120質量部であり、より好ましくは40〜90質量部である。
工程(A)におけるカーボンブラックの配合量としては、ゴム成分100質量部に対して、通常2〜150質量部であり、好ましくは4〜120質量部であり、より好ましくは6〜100質量部である。 なお、工程(A)において、無機充填材及び/又はカーボンブラックは、両成分の合計量で、例えば、ゴム成分100質量部に対して、通常20〜150質量部となるよう各成分の上記配合量の範囲内で適宜調整すればよい。
工程(A)における、含水酸化チタンの配合量としては、ゴム成分100質量部に対して、通常0.5〜80質量部であり、好ましくは3〜60質量部であり、より好ましくは5〜40質量部である。
また、工程(A)における別の混練方法としては、ゴム成分と本発明の添加剤とを混練する工程(A−1)、並びに工程(A−1)で得られた混合物(変性ポリマー)と無機充填材及び/又はカーボンブラック、並びに必要に応じて含水酸化チタンとを混練する工程(A−2)を含む二段階の混練方法を挙げることができる。工程(A−1)において、ゴム成分と本発明の添加剤とを混練する方法としては、ゴム成分が固体の場合は、該ゴム成分とテトラジン化合物(1)とを加熱条件下で混練する方法(混練方法);
ゴム成分が液状(液体)である場合は、該ゴム成分の溶液又は乳液(懸濁液)と、テトラジン化合物(1)とを加熱条件下で混合する方法(液状混合方法)等が挙げられる。
加熱温度としては、特に制限はなく、例えば、上記混練方法の場合は、ゴム組成物の温度の上限が、80〜190℃であることが好ましく、90〜160℃であることがより好ましく、100〜150℃であることがさらに好ましい。液状混合方法の場合は、液状ゴム組成物の温度の上限が、80〜170℃であることが好ましく、90〜160℃であることがより好ましく、100〜150℃であることがさらに好ましい。
混合時間又は混練時間としては、特に制限はなく、例えば、混練方法の場合は、10秒間から20分間であることが好ましく、30秒間から10分間であることがより好ましく、60秒間から7分間であることがさらに好ましい。液状混合方法の場合は、10秒間から60分間であることが好ましく、30秒間から40分間であることがより好ましく、60秒間から30分間であることがさらに好ましい。液状混合方法による混合反応後は、例えば、減圧下において、混合物中の溶剤を飛ばし(取り除き)、固形のゴム組成物を回収することができる。
工程(A−1)におけるテトラジン化合物(1)の配合量としては、特に制限はなく、例えば、ゴム成分100質量部に対して、通常0.1〜10質量部であり、好ましくは0.25〜5質量部であり、より好ましくは0.5〜2質量部である。
このゴム成分と本発明の添加剤とを混練する工程(A−1)により、ゴム成分中のジエン系ゴムの二重結合と本発明の添加剤に含まれる式(1)で表されるテトラジン化合物とが反応して変性ポリマーを形成する。
工程(A−2)における、工程(A−1)で得られた混合物(変性ポリマー)と無機充填材及び/又はカーボンブラックとを混合する際の温度としては、特に制限はなく、例えば、混合物の温度の上限が120〜190℃であることが好ましく、130〜175℃であることがより好ましく、140〜170℃であることがさらに好ましい。
工程(A−2)における混合時間としては、特に制限はなく、例えば、10秒間から20分間であることが好ましく、30秒間から10分間であることがより好ましく、2分間から7分間であることがさらに好ましい。工程(A−2)における無機充填材の配合量としては、工程(A−1)で得られた混合物(変性ポリマー)100質量部に対して、通常20〜150質量部であり、好ましくは30〜120質量部であり、より好ましくは40〜90質量部である。
工程(A−2)におけるカーボンブラックの配合量としては、工程(A−1)で得られた混合物(変性ポリマー)100質量部に対して、通常2〜150質量部であり、好ましくは4〜120質量部であり、より好ましくは6〜100質量部である。
なお、工程(A−2)において、無機充填材及び/又はカーボンブラックは、両成分の合計量で、例えば、工程(A−1)で得られた混合物(変性ポリマー)100質量部に対して、通常20〜150質量部となるよう各成分の上記配合量の範囲内で適宜調整すればよい。
工程(A−2)において、含水酸化チタンの配合量としては、工程(A−1)で得られた混合物(変性ポリマー)100質量部に対して、通常0.5〜80質量部であり、好ましくは3〜60質量部であり、より好ましくは5〜40質量部である。
工程(A)により、ゴム成分(ジエン系ゴム)の二重結合部と本発明の添加剤に含まれるテトラジン化合物(1)とが反応して変性ポリマーを形成し、無機充填材及び/又はカーボンブラックが好適に分散された混合物を得ることができる。
工程(B)
工程(B)は、工程(A)で得られる混合物、及び加硫剤を混合する工程(B)であり、混練の最終段階を意味している。
工程(B)では、さらに必要に応じて、加硫促進剤等を配合することができる。
工程(B)は、加熱条件下で行うことができる。該工程の加熱温度としては、特に制限はなく、例えば、60〜140℃であることが好ましく、80〜120℃であることがより好ましく、90〜120℃であることがさらに好ましい。
混合(又は混練)時間としては、特に制限はなく、例えば、10秒間から20分間であることが好ましく、30秒間から10分間であることがより好ましく、60秒間から5分間であることがさらに好ましい。
工程(A)から工程(B)に進む際には、前段階の工程終了後の温度より、30℃以上低下させてから次の工程(B)へ進むことが好ましい。
本発明のゴム組成物の製造方法において、通常、ゴム組成物に配合されるステアリン酸、亜鉛華等の加硫促進剤、老化防止剤等の各種配合剤を、必要に応じて、工程(A)又は工程(B)において添加することができる。
上記の工程(A)及び工程(B)により、ゴム成分中のジエン系ゴムにテトラジン化合物(1)を処理して得られた変性ポリマー、無機充填材及び/又はカーボンブラック、並びに、必要に応じて含水酸化チタンを含有するゴム組成物を製造することができる。
3.タイヤ
本発明のタイヤは、上記本発明のゴム組成物を用いて作製されたタイヤである。
本発明のタイヤとしては、例えば、空気入りタイヤ(ラジアルタイヤ、バイアスタイヤ等)、ソリッドタイヤ等のタイヤが挙げられる。
タイヤの用途としては、特に制限はなく、例えば、乗用車用タイヤ、高荷重用タイヤ、モーターサイクル(自動二輪車)用タイヤ、スタッドレスタイヤ等が挙げられ、中でも、乗用車用タイヤに好適に使用できる。
本発明のタイヤの形状、構造、大きさ及び材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
本発明のタイヤにおいて、優れた耐摩耗性及び制動特性を発現させるため、上記本発明の組成物を用いて作製されたタイヤトレッドを構成部材とするのが特に好ましい。
タイヤトレッドとは、トレッドパターンを有し、路面と直接接する部分で、カーカスを保護するとともに摩耗及び外傷を防ぐタイヤの外皮部分であり、タイヤの接地部を構成するキャップトレッド及び/又はキャップトレッドの内側に配設されるベーストレッドをいう。
本発明のタイヤは、タイヤの分野において、これまでに知られている方法に従って製造することができる。
また、タイヤに充填する気体としては、通常の又は酸素分圧を調整した空気;窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
以下、製造例及び実施例を示して、本発明について具体的に説明する。ただし、実施例はあくまで一例であって、本発明は、実施例に限定されない。
製造例1:3,6−ビス(3−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン(1a)の製造
200mL四つ口フラスコに、3−シアノピリジン24g(0.23モル)、水加ヒドラジン15g(1.3当量)、及びメタノール48mLを加え、室温で撹拌した。次いで、この混合物に、硫黄3.6g(15重量%)を加え、還流管を装着して外温70℃にて一晩加熱撹拌した。この反応液を氷冷し、結晶を濾過して少量の冷メタノールで洗浄した。粗結晶を減圧下乾燥し、橙色のジヒドロテトラジン粗結晶19gを得た。
得られた粗結晶17.8gを、酢酸178g(40当量)に溶解し、硫黄を濾去した。1L四つ口ナスフラスコに、ジヒドロテトラジン酢酸溶液、及び蒸留水178mLを加え、氷冷下撹拌した。亜硝酸ナトリウム15.5g(3当量)を蒸留水35mLに溶解し、反応液に1時間程度かけて滴下し、室温で一晩撹拌した。析出した結晶を濾過し、結晶を10%重層水で中和し粗結晶とした。該粗結晶をシリカゲルカラム(酢酸エチル)にて精製し、表題のテトラジン化合物(1a)8.4g(赤紫色、針状結晶)を得た。
融点:200℃、
H−NMR(300MHz,CDCl,δppm):
7.59(ddd,J =0.9,5.1,7.8 Hz,2H),8.92(m,4H),9.88(dd,J =0.9,2.4Hz,2H)
製造例2:変性ポリマーの混練製造
ゴム成分(S−SBR)100部に対してテトラジン化合物(1b)1部を、バンバリーミキサーを用いて混練した。混合物の温度が120〜150℃に達した時点から、その温度を維持するように調整しながら約3分間混練し、その後ロールミルで冷却して変性ポリマーを製造した。
製造例3:含水酸化チタンAの製造
硫酸法酸化チタンの製造工程において得られた含水酸化チタンA’(平均粒子径3μm)100gを脱イオン水10Lに分散し、分散液を得た。得られた分散液に48質量%水酸化カリウム水溶液を分散液のpHが7になるように添加し、撹拌した。撹拌した後、固体を濾取、乾燥、及び篩い通しし、500℃で6時間焼成することで含水酸化チタンAを得た。
製造例4:含水酸化チタンBの製造
硫酸法酸化チタンの製造工程において得られた含水酸化チタンB’(平均粒子径1μm)100gを脱イオン水10Lに分散し、分散液を得た。得られた分散液に48質量%水酸化カリウム水溶液を分散液のpHが7になるように添加し、撹拌した。撹拌した後、固体を濾取、乾燥、及び篩い通しし、500℃で6時間焼成することで含水酸化チタンBを得た。
[表中の記号の説明]
実施例(表中)において使用する原料を以下に示す。
※1: 溶液重合SBR(S−SBR)、PetroChina Dushanzi Petrochemical Company製、商品名「RC2557S」
※2: ブタジエンゴム(BR)、Sinopec Qilu Petrochemical Co., Ltd.製、商品名「BR9000」
※3: 天然ゴム(NR)、GUANGKEN RUBBER社製、商品名「TSR20」
※4: 製造例2で製造した変性S−SBR
※5: Quechen Silicon Chemical Co., Ltd.製、商品名「HD165MP」
※6: Evonik Industries AG社製、商品名「Si69」
※7: カーボンブラック、Cabot社製、商品名「N234」
※8: Kemai Chemical Co., Ltd.製、商品名「6−PPD」
※9: 酸化亜鉛、Dalian Zinc Oxide Co., Ltd.製
※10: ステアリン酸、Sichuan Tianyu Grease Chemical Co., Ltd.製
※11: Hansen & Rosenthal社製、商品名「Vivatec 700」
※12: テトラジン化合物(1a):3,6−ビス(3−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン(製造例1で製造した化合物)
※13: テトラジン化合物(1b):3,6−ビス(2−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン、東京化成工業株式会社製
※14: テトラジン化合物(1c):3,6−ビス(4−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン、東京化成工業株式会社製
※15: 硫黄、Shanghai Jinghai Chemical Co.,Ltd.製
※16: Kemai Chemical Co., Ltd.製、商品名「DPG」
※17: Kemai Chemical Co., Ltd.製、商品名「CBS」
※18: SBR、旭化成株式会社製、商品名「タフデン2000R」
※19: 天然ゴム(NR)、中化国際社製、商品名「RSS#3」
※20: 東ソー・シリカ株式会社製、商品名「Nipsil(銘柄AQ)」
※21: Evonik Industries AG製、商品名「Si75」
※22: カーボンブラック、東海カーボン株式会社製、商品名「シースト3」
※23: 老化防止剤、川口化学工業株式会社製、商品名「Antage 6C」
※24: 酸化亜鉛、堺化学工業株式会社製、銘柄「1種」
※25: 加工助剤、ストラクトール社製、商品名「HT254」
※26: プロセスオイル、三共油化工業社製、商品名「SNH220」
※27: 硫黄、細井化学工業株式会社製、商品名「HK200−5」
※28: 加硫促進剤、大内新興化学工業株式会社製、商品名「ノクセラ−D」
※29: 加硫促進剤、大内新興化学工業株式会社製、商品名「ノクセラ−CZ−G」
実施例1〜9及び比較例1〜6
下記表1〜4の工程(A)に記載の各成分をその割合(質量部)で混合し、バンバリーミキサーで混合物の最高温度が160℃になるように回転数を調整しながら5分間混練した。混合物の温度が80℃以下になるまで養生させた後、表1〜4の工程(B)に記載の各成分をその割合(質量部)で投入し、混合物の最高温度が110℃以下になるよう調整しながら混練して、ゴム組成物を製造した。
制動特性試験
粘弾性測定装置(Metravib社製)を使用し、温度0℃、動歪0.25%、周波数10Hzの条件に低加硫ゴムのtanδ値を測定した。この値から下記式により制動性能指数を算出した。この値が高いほど制動特性に優れていることを示す。
制動性能指数=(本発明のゴム組成物のtanδ)/(対応する比較例ゴム組成物のtanδ)×100
耐摩耗性評価
アクロン式摩耗試験機を使用して、サンプル回転速度76rpm/min、砥石回転速度34rpm/min、傾角15°、及び荷重1700gの条件下で、摩耗量を測定した。この値から下記式により耐摩耗性指数を算出した。この値が大きいほど耐摩耗特性に優れていることを示す。
耐摩耗性指数=(対応する比較例ゴム組成物の摩耗量)/(本発明のゴム組成物の摩耗量)×100
Figure 2018087318
Figure 2018087318
Figure 2018087318
Figure 2018087318
本発明のゴム組成物は、耐摩耗性及び制動性能に優れている。よって、各種自動車の空気入りタイヤのトレッド部(タイヤトレッド)として利用することができる。

Claims (12)

  1. ゴム成分に耐摩耗性及び制動特性を付与するための添加剤であって、
    下記一般式(1):
    Figure 2018087318
    [式中、X及びXは、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アルキルチオ基、アラルキル基、アリール基、アリールチオ基、複素環基、又はアミノ基を示す。これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。]
    で表されるテトラジン化合物又はその塩を含む、添加剤。
  2. 及びXが、複素環基である請求項1に記載の添加剤。
  3. ゴム成分、請求項1又は2に記載の添加剤、並びに無機充填材及び/又はカーボンブラックを含むゴム組成物。
  4. 更に含水酸化チタンを含む請求項3に記載のゴム組成物。
  5. ゴム成分100質量部に対して、請求項1又は2に記載の添加剤を0.1〜10質量部、並びに無機充填材及び/又はカーボンブラックを合計量で20〜150質量部含む請求項3に記載のゴム組成物。
  6. ゴム成分100質量部に対して、含水酸化チタンを0.5〜80質量部含む請求項4又は5に記載のゴム組成物。
  7. ゴム成分100質量部中、ジエン系ゴムが50質量部以上含まれる、請求項5又は6に記載のゴム組成物。
  8. ジエン系ゴム中の50重量%以上が、ガラス転移点が−70℃から−20℃の範囲にあるジエン系ゴムである請求項7に記載のゴム組成物。
  9. ゴム成分に請求項1又は2に記載の添加剤を処理して得られる変性ポリマー、並びに無機充填材及び/又はカーボンブラックを含むゴム組成物。
  10. 更に含水酸化チタンを含む請求項9に記載のゴム組成物。
  11. トレッド部に用いられる請求項3〜10のいずれか一項に記載のゴム組成物。
  12. 請求項3〜11のいずれか一項に記載のゴム組成物を用いて作製されたタイヤ。
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