JP2018086926A - 鉄道快適性評価方法及び鉄道快適性評価装置 - Google Patents
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Abstract
Description
しかし、アンケート調査を行って得られる回答は主観的なものであり、必ずしも脳が感じている客観的な快適性と合致するとは限らない。
また、アンケート調査は、所定区間ごと、又は所定時間ごとに行うこととなるため、連続的なデータを得ることはできず、調査と調査との間の区間については快適性の評価を得ることができない。
被験者の様々な生体情報を取得したり被験者の行動観察を行う等により、客観的な指標を得て、これをアンケート調査による主観的な評価と組み合わせることができれば評価の妥当性を高めることができる。
例えば、非特許文献1には、被験者にアンケート調査を行うことと並行して、被験者の疲労度を測定するためフリッカー測定器を用いてフリッカー値を取得し、足指の温度を温度センサによって取得し、心拍記録装置によって心拍数を測定して、これらの測定結果に基づいて長時間鉄道の座席に座っていた場合の体の痛みや疲労度等を評価する実験が開示されている。
また、このような客観的な指標を得るためには、被験者の相当量の生体情報等のデータをある程度継続的に取得する必要があるところ、鉄道車両の乗り心地等の評価においてはこのようなデータを取得することが難しかった。
そして近時、非特許文献4にあるような小型軽量な装置で脳血流量を測定することも可能となっている。このような小型軽量な装置であれば、ある程度の時間継続的に装着して脳血流量データを取得し、脳の活動状況の測定を行っても被験者への負担が少ない。
こうした装置で測定可能な脳血流量のデータからは、脳がどの程度ストレスを感じているかの指標であるストレス脳指標を算出することも可能となっている(例えば、非特許文献5参照)。
鉄道車両に乗車している被験者について頭部の脳血流量を測定する脳活動計測手段を用いて脳血流量データを連続的に取得し、
前記脳血流量データに基づいて、鉄道車両に乗車している際に前記被験者が感じる快適性の程度及び快適性の経時的変化の評価に資する情報を取得する。
前記被験者の脳血流量と異なる生体情報を前記脳血流量データに加味して前記快適性の程度及び快適性の経時的変化を評価する。
被験者の頭部に装着して鉄道車両に乗車した環境における脳血流量を連続的に計測する脳活動計測装置と、前記脳活動計測装置で計測した前記脳血流量からの脳血流量データを算出する操作端末装置と、前記操作端末装置の脳血流量データから快適性の程度及び快適性の経時的変化の評価に資する情報を算出する集中制御装置と、を有する。
図1に示すように、本実施形態における脳活動計測手段は、被験者の頭部に装着される携帯型の脳活動計測装置2である。
また、操作端末装置3は、携帯電話端末やタブレット型端末装置等の小型端末装置を想定している。
光トポグラフィ技術は、微弱な近赤外光を用いて大脳皮質部分に対応する前額部の2点を計測する。具体的には、装置装着時に被験者の前額に当たる部分に所定間隔で光源と光検出器である受光センサを配置し、大脳皮質部分の脳血流量を測定する。
近赤外光は人体組織への透過性が高いが、ヘモグロビンには吸収されるという特性がある。脳神経は活動すると酸素とグルコースが必要であるため、脳活動が活発な部位はヘモグロビンが増加し、近赤外光の透過度が減衰する。光トポグラフィ技術はこの近赤外光の透過度の変化量を測定することにより、脳のどの部分が活発に活動しているか等の脳の活動状況を可視化することができる。
このため、鉄道車両の快適性(乗り心地)を評価する場合のように、長時間鉄道に乗車した状態で連続的、継続的に計測を行う必要がある場合にも、計測自体から生じる被験者の負担を軽減して、純粋に鉄道車両に乗車することに由来する快・不快、ストレスの程度を比較的正確に計測することが可能となる。また、光トポグラフィ技術は、注射などでの薬の投与を必要とせず、無侵襲で測定を行うことができる点でも被験者の負担を最小限とすることができる。
なお、被験者の身体的負担をできるだけ軽減するため、脳活動計測装置2はできる限り小型軽量であることが好ましく、本実施形態においては、125g程度の重量の装置を適用している。
また、本実施形態では、図1に示すように、脳活動計測装置2と、これを操作する操作端末装置3とをBluetooth(登録商標)やWiFi(登録商標)、等の無線方式で接続し、光ファイバ等による接続も不要として取り回しのよい構成としている。
なお、各操作端末装置3から集中制御装置4に送られるデータは、各脳活動計測装置2によって計測された脳血流量(脳活動)データそのままであってもよいし、操作端末装置3において各脳活動計測装置2によって計測されたデータについて分析や解析を行った後、その分析結果、解析結果が集中制御装置4に送られてもよい。
また、脳活動計測装置2、操作端末装置3、及び集中制御装置4をネットワークNを介して接続することで鉄道快適性評価システム100が構成されている。
なお、操作端末装置3及び集中制御装置4のうちの一方の装置に、他方の装置の機能を盛り込むようにして、どちらか1つとするようにしてもよい。また、その時にはネットワークNを省略することもできる。
本実施形態では、集中制御装置4は各操作端末装置3から送信されたデータの平均値を算出したり、脳血流量データに基づいて脳が感じているストレスレベルを示すストレス脳指標を算出する。
ここで、脳活動反応は、ストレスが高い被験者ほど脳の右側の反応が大きくなり、ストレスが低い被験者ほど脳の左側の反応が大きくなることが知られている。
ストレス脳指標(Stress Brain Index)は、前頭部の脳活動の左右差から得られる指標であり、右側の活動値(脳血流量)を「R」、左側の活動値(脳血流量)を「L」としたとき、下記の式(1)により定義することができる。
脳血流量データの取得時間は、具体的な時刻そのものでもよいし、例えば、鉄道がスタート駅(例えば図3におけるA駅)を出発した時刻からの経過時間であってもよい。
また、脳血流量データが取得された際の走行位置は、緯度・経度等で示される具体的な位置であってもよいし、例えば、鉄道がスタート駅(例えば図3におけるA駅)を出発した地点からの累積距離等であってもよい。
このように、脳血流量データに、当該脳血流量データの取得時間や当該脳血流量データが取得された際の鉄道車両の走行位置を示す情報を対応付けることにより、集中制御装置4において、複数の被験者に装着された複数の脳活動計測装置2から送られたデータを同期させて1つのデータとしてまとめることが可能となる。
この場合、集中制御装置4は、このアンケート調査の結果を脳血流量データに加味して鉄道車両に乗車している際の快適性の程度及び快適性の経時的変化を評価する。
なお、アンケート調査の結果は、これを集中制御装置4に取り込んで集中制御装置4内の脳血流量データと照らし合わせてもよいし、集中制御装置4には取り込まずに別途集約し、光トポグラフィ技術によって得られた結果(すなわち、脳血流量データ等)と照らし合わせてもよい。
本実施形態では、評価対象となる路線の鉄道車両内に被験者を配置し、各被験者の頭部にそれぞれ脳活動計測装置2を装着する。各脳活動計測装置2には、無線方式にて操作端末装置3が接続される。また、各操作端末装置3は、インターネットN等を介して集中制御装置4に接続される。
そして、鉄道車両の走行が開始されると同時に、当該車両に乗車している被験者に装着されている脳活動計測装置2が脳血流量の計測を開始し、計測結果を計測時間や計測位置の情報とともに操作端末装置3を介して集中制御装置4に送信する。
集中制御装置4では、各脳活動計測装置2によって計測された脳血流量のデータである脳血流量データを脳活動計測装置2によって測定し、脳活動計測装置2から得られた脳血流量から得られる活動量の左右の差からストレス脳指標を算出し、さらに、各走行区間毎に分けて平均値を求めることで、各走行区間毎の乗り心地を評価する。
また、後述する乗り心地レベルのデータについても、各走行区間毎に蓄積される。さらに、所定のタイミングにおいてアンケート用紙などで取得したアンケート調査結果を、集中制御装置4内の脳血流量データと照らし合わせてもよい。
そして、集中制御装置4は、ストレス脳指標に、アンケート調査結果や乗り心地レベル等を加味して分析を行い、鉄道車両に乗車した際の快適性について評価を行う。
計測結果については、走行区間毎に分けて解析を行った。
走行区間に分けるのは、走行区間に存在する、トンネル、鉄橋、軌道の継ぎ目、ポイントなど様々な要因を分析しやすくするためである。走行区間の距離によっては、複数の区間に分割することなく1区間を測定するようにしてもよい。
図3においては、各区間においてトンネル数の「多い」「少ない」、速度の「速い」「遅い」、開業時期の「古い」「新しい」の区別をそれぞれ「○」で示している。
なお、図3において速度が「速い」とされた区間は、評価実験において最高速度で走行した区間を表す。また、開業時期が「古い」とされた区間は、線路の開業時期が比較的「古い」区間であり、「新しい」とされた区間は、線路の開業時期が比較的「新しい」区間である。
以下においては、図3に示すように、A駅→B駅を「往路第1」とし、B駅→C駅を「往路第2」とし、C駅→D駅を「往路第3」とし、D駅→E駅を「往路第4」とし、E駅→F駅を「往路第5」とする。また、F駅→E駅を「復路第5」とし、E駅→D駅を「復路第4」とし、D駅→C駅を「復路第3」とし、C駅→B駅を「復路第2」とし、B駅→A駅を「復路第1」とする。
往路第1と復路第1、往路第2と復路第2、往路第3と復路第3は、往路と復路で速度を変えてある。これは、同じ区間で速度による要因が影響するか否かを測定するためである。
本実施形態では、主として振動乗り心地(縦方向の振動、横方向の振動がある場合の乗り心地)について評価を行うものとし、アンケート調査においては乗り心地を中心に回答を求めた。
アンケート調査を行ったタイミングは、図8に示すように、「往路第1」(A駅→B駅)を通過した後と「往路第3」(C駅→D駅)を通過した後、F駅での折り返し時の休憩前、「復路第4」(E駅→D駅)を通過した後、及び「復路第2」(C駅→B駅)を通過した後である。
図4(a)及び図4(b)において、横軸には走行時間をとり、左側縦軸には脳血流量の値をとり、右側縦軸にはストレス脳指標の値をとっている。
また、図4(a)及び図4(b)において、実線は左側の活動値(脳血流量)を示し、破線は右側の活動値(脳血流量)を示し、点付実線はストレス脳指標を示している。
また、「往路第5」(E駅→F駅)を過ぎて「復路第5」(F駅→E駅)がスタートするまでの折り返しの間に小休憩をとっており、この間も解析対象から除外している。
このため、ストレス脳指標は、図4(a)及び図4(b)において、破線で囲んだ箇所についてのみ算出している。
図5(a)は、図4(a)及び図4(b)において破線で囲んだ箇所(区間)毎の各被験者のストレス脳指標の区間別平均値を求めた後、区間別平均値の全被験者平均を求めた結果を示したものである。
また、図5(b)は、縦方向の振動についての区間ごとの乗り心地レベル(単位:dB)を示し、図5(c)は、横方向の振動についての区間ごとの乗り心地レベル(単位:dB)を示している。
ここで、乗り心地レベルとは、鉄道の乗り心地を左右する様々な要素のうち、特に乗り心地を左右する車両の縦方向及び横方向の振動加速度の大きさと周波数によって乗り心地係数を設定し乗り心地を評価したものである。
具体的には、車体振動加速度を測定し、この測定結果に等感覚曲線を用いた重み付け補正を行い、補正した振動加速度の実効値から乗り心地レベル(単位:dB)を求める。
図5(b)及び図5(c)に示すように、本実施形態において行った試験では、全ての区間において乗り心地レベルが1(83dB未満)または2(83dB以上88dB未満)であり、試験を行った走行区間は振動乗り心地が比較的良好な線区と言える。
図6において矢印は変化の方向を示している。上向きの矢印は、前の区間よりもストレス脳指標が上がり、乗り心地レベルが悪化したことを示し、下向きの矢印は、前の区間よりもストレス脳指標が下がり、乗り心地レベルが改善したことを示す。
図6中、「○」はストレス脳指標と乗り心地レベルとの変化方向が一致していることを示し、「×」は一致していないことを示している。
図6に示すように、縦方向の振動についての乗り心地レベル、横方向の振動についての乗り心地レベルともに、乗り心地レベルの変化方向はストレス脳指標の変化方向とほぼ一致することが分かった(本実施形態では、8区間中7区間で一致)。
いずれの区間も、単線軌道を走行したものではなく、実際に営業運転を行っている複線区間を走行した結果である。
図7に示すように、縦方向の振動、横方向の振動ともに、ストレス脳指標の変化量と乗り心地レベルの変化量との間には高い相関があることが分かる。具体的に、本実施形態の例では、それぞれ相関係数は縦方向が0.72(p=0.04),横方向が0.69(p=0.06)であった。各区間で振動乗り心地が変化することにより、区間前後のストレス脳指標がこれと連動して変化していると評価することができる。
前述のように、本実施形態では、「往路第1」(A駅→B駅)を通過した後と「往路第3」(C駅→D駅)を通過した後、F駅到着前、「復路第4」(E駅→D駅)を通過した後、及び「復路第2」(C駅→B駅)を通過した後の計5回、鉄道車両の乗り心地について被験者にアンケート調査を行っている。
なお、図8に示すように、「往路第1」(A駅→B駅)を通過した後のアンケート調査の結果を「結果1」、「往路第3」(C駅→D駅)を通過した後のアンケート調査の結果を「結果2」、F駅到着前のアンケート調査の結果を「結果3」、「復路第4」(E駅→D駅)を通過した後のアンケート調査の結果を「結果4」、「復路第2」(C駅→B駅)を通過した後のアンケート調査の結果を「結果5」とする(図9において共通)。
なお、図9では、図8に示す5回のアンケート調査について、各区間の変化の向きを図示している。
図9において矢印は変化の方向を示している。上向きの矢印は、前の区間よりもストレス脳指標が上がり、アンケート調査の結果である主観的な乗り心地が悪化したことを示し、下向きの矢印は、前の区間よりもストレス脳指標が下がり、アンケート調査の結果である主観的な乗り心地が改善したことを示す。
図9中、「○」はストレス脳指標と主観的な乗り心地との変化方向が一致していることを示し、「×」は一致していないことを示している。
図9に示すように、本実施形態では、調査対象5区間中、全5区間において、各区間の主観的な乗り心地の変化方向がストレス脳指標の変化方向と一致することが分かった。
すなわち、脳血流量データは、アンケート調査のように所定間隔ごとに行うものではなく、連続的にデータを取得することができ、また、データ取得の際の被験者の負担も少ない。このため、評価対象となる鉄道車両の走行区間の全域にわたって鉄道車両に乗車している際に被験者が感じる快適性の程度及び快適性の経時的変化を分析することができ、客観的な快適性の評価を詳細に取得することができる。
また、上述のように、脳血流量データに基づくストレス脳指標の変化量は、乗り心地レベルや、主観的な評価であるアンケート調査結果とも概ね同じ傾向を示しており、鉄道車両の快・不快(乗り心地の良し悪し)についての客観的な評価指標として信頼性のあるものということができる。
これらの値についても脳活動計測装置2による計測と同じタイミングで開始させ、計測開始時からの経過時間や計測開始位置からの走行距離等を対応付けて蓄積することにより、各要素(被験者の各種生体情報)を組み合わせて脳血流量データに加味することができ、より客観的な評価結果を得ることが期待できる。
また、こうした各種の要素やデータを取得することにより、乗り心地が悪化する要素があった場合に、これを解消するように鉄道車両内の環境を整える(例えば日差しが強く車内が熱くなる時期には、自動的に日よけを下すように設定する)等のように、膨大なデータの蓄積を車両の環境改善のためにフィードバックすることも期待できる。
2 脳活動計測装置
3 操作端末装置
4 集中制御装置
100 鉄道快適性評価システム
Claims (8)
- 鉄道車両に乗車している被験者について頭部の脳血流量を測定する脳活動計測手段を用いて脳血流量データを連続的に取得し、
前記脳血流量データに基づいて、鉄道車両に乗車している際に前記被験者が感じる快適性の程度及び快適性の経時的変化の評価に資する情報を取得することを特徴とする鉄道快適性評価方法。 - 連続的に取得した前記脳血流量データを1又は複数に分割し、分割した脳血流量データに基づいて評価することを特徴とする請求項1に記載の鉄道快適性評価方法。
- 前記脳血流量データは、当該脳血流量データの取得時間、当該脳血流量データが取得された際の前記鉄道車両に係わる情報の少なくともいずれかの情報と対応付けられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の鉄道快適性評価方法。
- 前記脳血流量データの取得と並行して、前記被験者の脳血流量と異なる生体情報を取得し、
前記被験者の脳血流量と異なる生体情報を前記脳血流量データに加味して前記快適性の程度及び快適性の経時的変化を評価することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の鉄道快適性評価方法。 - 被験者の頭部に装着して鉄道車両に乗車した環境における脳血流量を連続的に計測する脳活動計測装置と、
前記脳活動計測装置で計測した前記脳血流量から脳血流量データを算出する操作端末装置と、
前記操作端末装置の脳血流量データから快適性の程度及び快適性の経時的変化の評価に資する情報を算出する集中制御装置と、
を有する鉄道快適性評価装置。 - 前記集中制御装置は、前記快適性の程度及び快適性の経時的変化の評価に資する情報を、前記脳血流量データから算出したストレス脳指標に基づいて算出する請求項5に記載の鉄道快適性評価装置。
- 前記被験者における前記脳血流量とは異なる生体情報を取得するセンサを有する請求項5又は請求項6に記載の鉄道快適性評価装置。
- 前記操作端末と前記集中制御装置とが同一である請求項5から請求項7のいずれか一項に記載の鉄道快適性評価装置。
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