JP2018085957A - 育苗用被覆資材 - Google Patents
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Abstract
Description
即ち、800nmの波長の赤外線に対する反射率は、温度に大きな影響を与える近赤外線の領域を反射する目安とすることができ、この反射率を高めることが高温化を効果的に抑制できる。そこで、近赤外線の反射率を高めることが好ましく、800nmの近赤外線の反射率を略42%に調整することで、緑化期(場所にもよるが、水稲の場合、通常は4月)における収容体内の温度を約45℃以内に抑えることができた。
一方、800nmの近赤外線の反射率を大きくし過ぎると、育苗期には未だ涼しい時期もあるため、被覆資材の本来の目的である保温性を損なうことになり、発育の遅れの原因等にもなるため、該反射率は略73%以下が好ましい。実験では、800nmの近赤外線の反射率を略72.2%にすることで、育苗期の収容体内の温度を、熱い日(例えば外気温が25℃の日)でも最高温度を約38℃にできると共に、寒い日でも昼間の平均温度を約20℃にすることができた(なお、800nmの近赤外線の反射率が略42%の場合、略73%の場合に比べて温度が低下することはない)。この点、水稲の場合、場所・時期・苗の種類・農法にもよるが、昼間の温度は概ね20〜32℃に保つ必要がある。以上のことから、育苗用被覆資材の800nmの近赤外線の反射率は略42%〜73%にすることが最も好ましい。
そして、このような数値は、白色顔料を含有する外層と、この外層より内側であって銀色となる金属製粒子を含有する内層とで、達成できることが実験により分かった。即ち、従来のようにシルバーポリと呼ばれる銀色の層だけであると、確かに保温性には優れているが、800nmの波長の赤外線の反射率を約35〜36%程度にしか抑えられない。そこで、この銀の層で保温性の効果を維持させつつ、その上に、反射率に効果の高い白色顔料の含有した白層を設けた。但し、従来の白色顔料では90%以上等の高い遮光性を有しているため、白色顔料の含有量及び厚みを工夫した白層とすることで、800nmの波長の赤外線の反射率を略42〜73%にしている。なお、白層は、1層であっても、或いは、連続した2層以上であっても構わず、白層全体に対して白色顔料が所定の含有量を有すると共に、白層がトータルで所定の厚みを有していればよい。
また、白層における白色顔料の含有率を所定量にすることで、380nm〜750nmの波長領域(以下、「可視光線領域」という)の波長を有する可視光の透過率5〜20%(緑化期に必要とされる公知の透過率)を維持することもできた。この5〜20%の透過率は従来からの育苗用被覆資材で実施されている公知の透過率が属し、これにより、従来の製品と変わりなく、例えば緑化期に必要とされる光量を確保することができる。なお、可視光領域内であれば光の透過率の誤差は小さく、このため、可視光線領域の範囲内の一部の可視光の透過率を略5〜20%となるように白色顔料等の量を設定すればよく、好ましくは、500nmの可視光の透過率が略5〜20%となるように設定するとよい。
これにより、800nmの波長の近赤外線に対する反射率を略42〜73%の範囲に収めることができる。即ち、実験により、酸化チタンを白層に略6重量%配合した場合、800nmの波長の近赤外線の反射率を約42.6%にすることができ、酸化チタンを白層に略24重量%配合した場合、同反射率を約72.2%にすることができた。
なお、実験の結果、金属製粒子がアルミニウムの場合、これを増減しても、800nmの波長の近赤外線の反射率には殆ど影響を及ぼさないことが分かった。このため、近赤外線の上記好ましい反射率を得るためには、白層の所定の厚みにおける酸化チタンの配合だけを考慮すればよい。
ところで、白層に占める酸化チタンの配合は、可視光線領域の波長を有する可視光の透過率に影響を及ぼすことが分かったが、該酸化チタンの割合を略6〜24重量%にすれば、所定のアルミニウムの配合量の下、可視光線領域の波長を有する可視光の透過率を5〜20%にできることも分かった。従って、近赤外線に対する所望の反射率を得るために、酸化チタンの配合を調整し、その調整の結果得られた可視光線領域の波長の透過率については、アルミニウムの配合を調整することで、可視光線領域の波長の所望する透過率を得ることができる。
尚、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、各図において付した同じ符号は同様の構成を有している。
収容体20は樹脂製或いは木製であって、育苗箱とも呼ばれ、上側が開口したトレー状であり、底に複数の小穴が開いている。この収容体20には土CRが入れられ、その上に種(不図示)がまかれ(藩種)、さらにその上に薄く土CRが被せられる。図1の収容体20は2列づつ、計4列に配置されているが、一列〜三列であっても構わず、或いは五列以上であっても構わない。
この被覆資材30は、収容体20の内側空間S2内を保温して、出芽、及び出芽をした後の苗の成長を促すための保温材であり、出芽期と緑化期に続けて使用される。内側空間S2の適切な温度は、育苗の種類・時期・地域などにより異なるが、水稲の場合、概ね、出芽期(4月上旬)の昼は約30〜32℃、緑化期(4月中旬)の昼は約20〜25℃となるように保温するのが好ましい。なお、夜については、出芽期及び緑化期の双方とも概ね15℃以上となるのが好ましい。
また、被覆資材30は、日よけとしても利用される。即ち、光を不要とする出芽期の後、緑化期に移行した際、急に強い光を当てると苗が白化するため、薄暗い曇りのような光を入れるための日よけとなる。従って、出芽期から緑化期にかけて用いられる被覆資材30については、保温性だけでなく、薄暗い光が差し込む程度の光透過性が必要とされる。この光透過性については、公知の事実として可視光線領域の波長の可視光の透過率が略5〜20%であることが好ましいとされている。該透過率が5%を下回ると光合成・保温不足などにより苗の成長に支障が生じ易くなり、20%を上回ると急に強い光が当たることで苗が白化する恐れがあるためである。なお、この20%の透過率を超えると必ず苗の白化が生じるものではないが、保温性と高温障害の防止という相反する観点のバランスを考慮しても20%の透過率を超えない方が好ましい。
この図に示すように、被覆資材30は、白色の層である白層40と、銀色の層である銀層32とからなっている。白層40は図1(A)の収容体20の外側(即ち、内側空間S1)に露出する外層であり、図1(B)の銀層32は図1(A)の収容体20の内側(即ち、内側空間S2)に露出する内層である。
本実施形態の銀層32は、透明度の高い直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)をベースにしている。この直鎖状低密度ポリエチレンは軟質性を有するため取扱い性に優れているが、耐候性に劣る。そこで、この直鎖状低密度ポリエチレンに対して、略透明な耐候剤(紫外線吸収剤)、酸化防止剤、及びメタロセン直鎖状低密度ポリエチレン(M−LLDPE)を配合し、より長期間(育苗期間以外のシート保管状態に左右されるものの10年を越える場合もあり)の使用を可能としている。
さらに、銀層32には、銀色となる金属製粒子が配合されている。金属製粒子にはアルミニウムが好適に用いられ、銀層32に占めるアルミニウムの割合は重量%で略2〜5%の範囲で好ましく適用でき、本実施形態の場合は2%とされている。このアルミニウムの割合は、後述する白層40中の酸化チタンの配合割合に基づいて決めるとよい。
本実施形態の白層40は更に二層に分かれており、このため、被覆資材30は、最も外側の層である第1の白層34と、この第1の白層34と銀層32とに挟まれた第2の白層36と、最も内側の銀層32との三層構造となっている。なお、第1の白層34、第2の白層36、銀層32とは連続して形成され、その間に他の層(空気の層も含む)は介在しない。第1の白層34の厚みD1と第2の白層36の厚みD2と銀層32の厚みD3とは同様の厚みを有し、図の場合は夫々0.015mmである。このため、銀層32の厚みD3に対して、第1及び第2の白層34,36の全体の厚みD4は略2倍とされている。
また、図の第2の白層36も、透明度が高く、軟質性に優れた直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)をベースにして、これに白色を形成するための酸化チタンを配合している。本実施形態の場合、第2の白層36に占める酸化チタンの割合は重量%で略32%とされている。なお、第2の白層36は中間層であり、光の照射が少ないため、耐候剤や酸化防止剤は配合されていない。
図の6番のグラフは図1の被覆資材30を用いたデータである。また、1番から5番のグラフは従来の被覆資材を用いたデータであり、1番では銀色のシートのみからなるシルバーポリと呼ばれるものを用いている。2番では1番のシルバーポリの内側にアイホッカ♯40(商標)と呼ばれる不織布を設けたものを用いている。3番では発泡シートから形成された健苗シート(商標)と呼ばれるものを用いている。4番ではアルミニウムを蒸着した被覆資材でポリシャイン(商標)と呼ばれるものを用いている。5番では1番のシルバーポリの内側にラブシート(商標)と呼ばれる不織布を設けたものを用いている。
先ず、図3を用いて該優位性を説明する。図3は4月14日〜19日(新潟県における一般的な緑化期)に新潟県農業総合試験所において、被覆資材内(図1の内側空間S2)で一時間おきに測定した温度データである。この実験では、通常の育苗と同じ条件にするため、4月12日に播種をし、その後(午前11時に)被覆資材で被覆した。
3番と6番については、日中では概ね25℃〜35℃の範囲にあり、高温化を防止できると共に保温性にも優れている。しかし、3番の被覆資材は発泡材で形成されており、短期間での経年劣化が免れない。即ち、被覆資材は10年は使用されることも多いのに対して、3番の被覆資材は長くても3年でヒビや割れが生じ、そこから日光があたって苗やけをするという問題が生じる。また、3番の被覆資材は厚みもあるため、作業性にも問題がある。この点、6番(本実施形態)の被覆資材は、図1(B)で説明したように、白層40及び銀層32は双方とも、軟質性の高い低密度ポリエチレンをベースにしているため取扱い性に優れ、長期間の使用にも耐え得る。
このように、本実施形態の被覆資材は苗やけを防止できるが、図3からは保温性についても問題なく発揮していることが分かる。図3の時期で日中DYの温度が最も低いのが4月18日であるが、6番(本実施形態)の被覆資材を利用した場合、該18日の日中DYの平均温度は緑化期に必要とされている約20℃を超えている。
従来のこの時期は、新潟県では緑化期後の硬化期に入った時期であるが、今後の温暖化の促進により、この時期の気温が4月に生じる恐れが想定されるし、場所、種苗種類、農法等の条件によって、この時期が緑化期になる場合もある。この点、例えば、図4の5月13日の外気温は最高25℃に達しているが、本実施形態の6番の被覆資材では、根の伸長への悪影響を防止できる40℃未満という結果を唯一得ることができた。
これに対し、3番の発泡シートからなる被覆資材では、外気温が25℃の5月13日に40℃を超えてしまっており、他の日についても、3番の発泡シートに比べて6番の被覆資材の方が温度が低い。この図4と上述した図3により、外気温が高くなるに従って発泡シートよりも本実施形態の被覆資材の方が高温化防止の効果が高くなることが分かる。
なお、夜間の温度については、1番〜6番のいずれの被覆資材を使っても、温度に余り差はない。
図5は被覆資材を図1(B)のように三層構造にした場合のテスト結果であり、図6は図7に示すように被覆資材を白層40と銀層32の二層構造にした場合のテスト結果である。なお、図5及び図6の「反射率」は800nmの波長の近赤外線に対する反射率であり、「透過率」は500nmの波長の可視光の透過率である。500nmの波長を測定対象とするのは、可視光線領域内における各波長の透過率を比較すると、その誤差が数%の範囲に収まることに基づき、基準値として好ましいからである。また、図5の第1の白層、第2の白層、銀層の夫々の厚みは0.015mmであり、図6の白層の厚み(図7のD4)は0.03mm、銀層の厚み(図7のD3)は0.015mmである。また、図5の「白トータル」は第1及び第2の白層の全体に占める酸化チタンの割合を重量%で示している。
このテストを行ったのは、上述したように、少なくとも苗やけを防止するには800nmの波長の近赤外線の反射率を略42%〜略73%に、苗を問題なく成長させるには可視光線領域の波長の可視光の透過率を略5〜20%にするのが好ましく、そのために酸化チタンとアルミニウムの配合をどの程度にすべきかを把握するためである。
なお、これらのテストでは、光を各被覆資材に照射し、紫外可視近赤外分光光度計 V−770ST型(日本分光株式会社製)を用いて上記反射率と透過率を測定した。
先ず、図5のテスト1〜7により、第1及び第2の白層の全体に占める酸化チタンの割合が高くなるに従って近赤外線の反射率が高まることが分かった(把握項目1)。
また、図5のテスト11とテスト12とは、第1の白層と第2の白層の酸化チタンの割合を逆にしたものだが、いずれの場合も反射率は57%前後であり、このことから、外層の酸化チタンの割合と中間層の酸化チタンの割合とは、近赤外線に対する反射率について、略無関係であることも分かった(把握項目2)。
また、例えば図5のテスト1と図6のテスト15とは、共に白層全体に占める酸化チタンの割合が6重量%であり、反射率も同様の43%前後であった。同様にして、図5のテスト3と図6のテスト14とも、白層全体における酸化チタンの割合及び反射率が同様であった。このことから、白層が1層であっても複数層であっても、白層全体として同じ厚みであれば、反射率は左程変わらないことが分かった(把握項目3)
また、図5の白層全体に占める酸化チタンの割合が同じ24重量%であるのに対して、銀層に占めるアルミニウムの割合を変えていったテスト7〜10からは、アルミニウムの重量の割合が増加しても、反射率は左程変わらないことが分かった(把握項目4)。
従って、800nmの波長の近赤外線の反射率を略42%〜略73%にしたい場合は、白層全体に占める酸化チタンの割合を6重量%(図5のテスト1参照)〜24重量%(図5のテスト7参照)にすればよいことが分かった(把握項目5)。
また、図5のテスト1とテスト7を見れば、全体の厚みが0.03mmである白層における酸化チタンを6〜24重量%の範囲内にすれば、銀層におけるアルミニウムを所定量にすることで、透過率を略5〜20%の範囲内にできることが分かる(把握項目7)。
また、図5の白層全体に占める酸化チタンの割合が同じ24重量%であるのに対して、銀層に占めるアルミニウムの重量の割合を変えていったテスト7〜10からは、アルミニウムの重量の割合が増加するに従って、(反射率は左程変わらないが)透過率は下がっていく(2重量%増加するに従って透過率は概ね2%前後下がる)ことが分かった(把握項目8)。
以上のことから、全体の厚みが略0.03mmである白層において、白層全体に占める酸化チタンの割合を6〜24重量%の範囲内にして、略42%〜略73%の反射率を実現すると共に、所定の透過率を得て、その後、所定のアルミニウムが配合された銀層を内側に配設すれば、反射率は変えずに略5〜20%の透過率を得ることができる。この略5〜20%の可視光の透過率は緑化期に必要な透過率と従来から考えられており、図のテスト結果から、白層全体に占める酸化チタンを6〜24重量%の範囲内にした場合、銀層に占めるアルミニウムの割合を2〜5重量%にすることで達成できることが想定できた。
例えば、上述した実施形態では、3層構造(2層の白層と1層の銀層)とからなっているが、図7に示すように、2層構造(1層の白層と1層の銀層)であっても構わない。なお、図7のように2層構造の場合、白層40の厚みD4は銀層32の厚みD3の略2倍であるのが好ましい。
また、上記実施形態では、被覆資材を出芽期と緑化期に続けて使用し、硬化期に取り除く(除幕する)ことを想定して説明したが、本発明の被覆資材の使用方法はこれに限られず、例えば出芽期にのみ使用し、緑化期に除幕しても構わない。例えば、天候により外気温が高くて保温の必要性が低く、かつ、ハウスの位置により内側が薄暗い場合などでは、緑化期であっても被覆資材を使用する必要はなく、本発明の被覆資材は緑化期に必ず必要となるわけではない。
また、好ましい被覆資材の態様として、800nmの波長の近赤外線に対する反射率が略42〜73%である旨を説明をしたが、勿論、その前後の波長の近赤外線も反射している。
また、上述したように、本発明は可視光線領域(380nm〜750nm)の範囲内の一部の可視光の透過率が略5〜20%にあればよい。
さらに、本実施形態の育苗用被覆資材は水稲の育苗管理に好適に用いることができるが、例えば玉ねぎの育苗管理における保温に用いられてもよい。
Claims (2)
- 種苗の育苗期における保温に用いられ、前記種苗を収容した収容体を覆う育苗用被覆資材であって、
前記収容体の外側に露出し、白色顔料が配合された層である白層と、前記収容体の内側に露出し、銀色となる金属製粒子が配合された層である銀層とを有することで、800nmの波長の近赤外線に対する反射率が略42〜73%となるようにした
ことを特徴とする育苗用被覆資材。 - 前記白色顔料は酸化チタンであり、
前記金属製粒子はアルミニウムであり、
前記白層に占める前記酸化チタンの割合が重量%で略6〜24%である
ことを特徴とする請求項1に記載の育苗用被覆資材。
Priority Applications (1)
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