JP2018084549A - 二次電池の状態推定装置及び二次電池の状態推定方法 - Google Patents

二次電池の状態推定装置及び二次電池の状態推定方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2018084549A
JP2018084549A JP2016229177A JP2016229177A JP2018084549A JP 2018084549 A JP2018084549 A JP 2018084549A JP 2016229177 A JP2016229177 A JP 2016229177A JP 2016229177 A JP2016229177 A JP 2016229177A JP 2018084549 A JP2018084549 A JP 2018084549A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
secondary battery
model
capacity
positive electrode
battery
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2016229177A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6688207B2 (ja
Inventor
侑希 今出
Yuki Imade
侑希 今出
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Honda Motor Co Ltd
Original Assignee
Honda Motor Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Honda Motor Co Ltd filed Critical Honda Motor Co Ltd
Priority to JP2016229177A priority Critical patent/JP6688207B2/ja
Publication of JP2018084549A publication Critical patent/JP2018084549A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6688207B2 publication Critical patent/JP6688207B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/10Energy storage using batteries

Landscapes

  • Tests Of Electric Status Of Batteries (AREA)
  • Charge And Discharge Circuits For Batteries Or The Like (AREA)
  • Secondary Cells (AREA)

Abstract

【課題】正極又は負極における劣化生成物の量を考慮してバッテリの充電率を精度良く推定できる二次電池の状態推定装置及び状態推定方法を提供すること。
【解決手段】バッテリの状態推定装置は、端子電圧を検出する電圧センサ4と、電流を検出する電流センサ3と、電圧センサ4の検出値、電流センサ3の検出値、及びバッテリにおける開放電圧OCVと充電率SOCとの関係を規定した関数g(SOC)を用いることにより、正極容量維持率Cc及び負極容量維持率Ca、組成相対ずれ容量ΔQc−ΔQa、正極劣化生成物量dc、及び充電率SOCの推定値を算出するパラメータ推定部7と、正極容量維持率Cc、負極容量維持率Ca、組成相対ずれ容量ΔQc−ΔQa、及び正極劣化生成物量dcの推定値を用いることによって関数g(SOC)を設定する劣化変動モデル設定部8と、を備える。
【選択図】図5

Description

本発明は、二次電池の状態推定装置及び二次電池の状態推定方法に関する。
ハイブリッド車両(HEV)、プラグインハイブリッド車両(PHEV)、及びバッテリ式電動輸送機器(BEV)等に搭載される二次電池の入出力性能は、充電状態、満充電容量、及び抵抗等の二次電池の内部状態によって変化する。このため二次電池をその入出力性能に適した態様で用いるためには、二次電池の内部状態を高い精度で推定する必要がある。特に二次電池の内部状態を特定するパラメータの1つである充電率(二次電池の残容量の満充電容量に対する割合を百分率で表したものであり、SOC(State Of Charge)ともいう)は、二次電池を制御する上で重要なパラメータであり、高い精度で推定されることが要求される。
二次電池の充電率は、二次電池の充電率と開放電圧との対応関係(以下、「SOC−OCV対応関係」ともいう)を規定したマップを用いて推定する場合が多い。特許文献1には、二次電池の劣化に応じてこのSOC−OCV対応関係を修正する二次電池の状態推定装置が示されている。
特許文献1の状態推定装置では、二次電池の具体的な劣化態様として、二次電池の正極及び負極の各々における単極容量の減少、及び正負極間の組成ずれ量の増加、の3つを想定している。正極又は負極における単極容量の減少は、主に電極に生じるクラックや活物質の剥離等に起因すると考えられる。また正負極間の組成ずれ量の増加は、正極又は負極におけるSEI(Solid Electrolyte Interface)被膜の成長に起因すると考えられる。
特許文献1の状態推定装置では、これら劣化態様に応じて、正極容量維持率と負極容量維持率と組成ずれ容量との3つのパラメータを推定し、これらを用いることによって、正極の単極開回路電位及び単極容量の対応関係と、負極の単極開回路電位及び単極容量の対応関係と、を初期状態のものから修正し、これら修正された対応関係を用いることによってSOC−OCV対応関係を修正している。これにより、二次電池の劣化に応じてその充電率を推定することができる。また特許文献2には、正極容量維持率、負極容量維持率、及び組成ずれ容量を推定するとともに、これらを用いることによって二次電池の劣化を判定する劣化判定装置が示されている。
特開2010−60384号公報 特開2011−220917号公報
以上のように、特許文献1の状態推定装置では、二次電池の劣化態様として単極容量の減少や組成ずれ量の増加を想定してSOC−OCV対応関係を修正しているが、実際の二次電池のSOC−OCV対応関係は、これらとは異なった態様の劣化によっても変化し得る。より具体的には、二次電池の使用によって正極の結晶構造が変化することにより、正極に初期状態とは異なる結晶構造の物質が成長する場合がある。また二次電池の使用によって負極にリチウムが析出する場合もある。これらのように正極や負極に劣化に伴って発生する物質が生成した場合にもSOC−OCV対応関係に変化が生じる場合があるが、従来の技術では、このような劣化生成物によるSOC−OCV対応関係の変化については十分に検討されていない。このため従来の状態推定装置では、二次電池の劣化に応じて十分な精度で充電率を推定できない場合がある。
本発明は、正極又は負極における劣化生成物の量を考慮して二次電池の充電率を精度良く推定できる二次電池の状態推定装置及び状態推定方法を提供することを目的とする。
(1)本発明の二次電池(例えば、後述のバッテリ1)の状態推定装置(例えば、後述の状態推定装置2,2A)は、二次電池の端子電圧(CCV[k])を検出する電圧センサ(例えば、後述の電圧センサ4)と、前記二次電池を流れる電流(I[k])を検出する電流センサ(例えば、後述の電流センサ3)と、を備え、前記電圧センサ及び前記電流センサの検出値を用いることによって前記二次電池の状態を推定する二次電池の状態推定装置であって、前記電圧センサの検出値と、前記電流センサの検出値と、前記二次電池における開放電圧と充電率との関係を規定したSOC−OCVモデル(例えば、後述の近似関数g(SOC))と、を用いることにより、前記二次電池の正極容量維持率(Cc)及び負極容量維持率(Ca)、前記二次電池の組成相対ずれ容量(ΔQc−ΔQa)、前記二次電池の正極及び負極の何れかにおける劣化生成物量(dc,da)、及び前記充電率(SOC)の推定値を算出するパラメータ推定部(例えば、後述のパラメータ推定部7)と、前記正極容量維持率、前記負極容量維持率、前記組成相対ずれ容量、及び前記劣化生成物量の推定値を用いることによって前記SOC−OCVモデルを設定するモデル設定部(例えば、後述の劣化変動モデル8)と、を備えることを特徴とする。
(2)この場合、前記劣化生成物量は、前記正極の結晶構造の初期状態からの変化量に相当することが好ましい。
(3)この場合、前記モデル設定部は、前記正極容量維持率、前記組成相対ずれ容量、及び前記劣化生成物量の推定値を用いることによって、前記二次電池の正極電位と単極容量との関係を規定した正極電位モデル(例えば、後述の関数Pc_d(Q))を設定する劣化後正極電位演算部(例えば、後述の劣化後正極電位演算部81)と、前記負極容量維持率の推定値を用いることによって、前記二次電池の負極電位と単極容量との関係を規定した負極電位モデル(例えば、後述の関数Pa_d(Q))を設定する劣化後負極電位演算部(例えば、後述の劣化後負極電位演算部82)と、を備えることが好ましい。
(4)この場合、前記二次電池は、リチウムイオンバッテリであり、前記劣化生成物量は、前記負極におけるリチウム析出量に相当することが好ましい。
(5)この場合、前記モデル設定部は、前記正極容量維持率、及び前記組成相対ずれ容量の推定値を用いることによって、前記二次電池の正極電池と単極容量との関係を規定した正極電位モデルを設定する劣化後正極電位演算部と、前記負極容量維持率、及び前記劣化生成物量の推定値を用いることによって、前記二次電池の負極電位と単極容量との関係を規定した負極電位モデルを設定する劣化後負極電位演算部と、を備えることが好ましい。
(6)この場合、前記モデル設定部は、前記正極電位モデル及び前記負極電位モデルを用いることによって、前記二次電池の開放電圧と単極容量との関係を規定したQ−OCVモデル(例えば、後述の関数OCV_d(Q))を設定するQ−OCVモデル設定部(例えば、後述のQ−OCVモデル設定部83)と、前記Q−OCVモデルを用いることによって、前記SOC−OCVモデルを設定するSOC−OCVモデル設定部(例えば、後述のSOC−OCVモデル設定部85)と、をさらに備えることが好ましい。
(7)この場合、前記モデル設定部は、前記Q−OCVモデルを用いることによって、前記二次電池の電池容量の推定値を算出する電池容量推定部(例えば、後述の電池容量推定部84)をさらに備え、前記パラメータ推定部は、前記電流センサの検出値と前記電池容量の推定値とを用いることによって、前記正極容量維持率、前記負極容量維持率、前記組成相対ずれ容量、前記劣化生成物量、前記充電率、及び前記二次電池の等価回路モデルに含まれる1つ以上のモデルパラメータの推定値を算出する同定器(例えば、後述のパラメータ同定器71)と、前記モデルパラメータの推定値、及び前記充電率の推定値を前記SOC−OCVモデルに入力することで得られる前記開放電圧の推定値を用いることによって前記端子電圧の推定値を算出する端子電圧演算部(例えば、後述の端子電圧演算部72)と、を備え、前記同定器は、前記端子電圧の推定値と前記電圧センサの検出値との誤差が小さくなるように前記正極容量維持率、前記負極容量維持率、前記組成相対ずれ容量、前記劣化生成物量、前記充電率、及び前記モデルパラメータの推定値を算出することが好ましい。
(8)この場合、前記状態推定装置は、前記パラメータ推定部及び前記モデル設定部における演算の開始時点から現時点までの前記電流センサの検出値を積算することにより前記開始時点から前記現時点までの間に前記二次電池に出入りした電荷量の収支の推定値を算出する電荷量収支演算部(例えば、後述の電荷量収支演算部91A)と、前記開始時点における前記電圧センサの検出値と前記SOC−OCVモデルとを用いることによって、前記開始時点における前記充電率の推定値を算出する初期SOC演算部(例えば、後述の初期SOC演算部92A)と、前記開始時点における前記充電率の推定値と前記電荷量の収支の推定値とを用いることによって前記現時点における前記充電率の推定値を算出する充電率推定部(例えば、後述のSOC演算部93A)と、をさらに備えることが好ましい。
(9)本発明の二次電池の状態推定方法は、二次電池の端子電圧を検出する電圧センサの検出値、及び前記二次電池を流れる電流を検出する電流センサの検出値を用いることによって前記二次電池の状態を推定する方法であって、前記電圧センサの検出値と、前記電流センサの検出値と、前記二次電池における開放電圧と充電率との関係を規定したSOC−OCVモデルと、を用いることにより、前記二次電池の正極容量維持率及び負極容量維持率、前記二次電池の組成相対ずれ容量、前記二次電池の正極及び負極の何れかにおける劣化生成物量、及び前記充電率の推定値を算出するパラメータ推定ステップと、前記正極容量維持率、前記負極容量維持率、前記組成相対ずれ容量、及び前記劣化生成物量の推定値を用いることによって前記SOC−OCVモデルを設定するモデル設定ステップと、を交互に行うことを特徴とする。
(1)パラメータ推定部は、電圧センサ及び電流センサの検出値とSOC−OCVモデルとを用いることによって、充電率の推定値と、二次電池の劣化態様を特定するパラメータである正極容量維持率、負極容量維持率、組成相対ずれ容量、並びに正極及び負極の何れかにおける劣化生成物量の推定値と、を算出する。またモデル設定部では、パラメータ推定部によって算出された正極容量維持率、負極量維持率、組成相対ずれ容量、及び劣化生成物量の推定値を用いることによって、上述のSOC−OCVモデルを設定する。したがって本発明の状態推定装置によれば、充放電や放置等を繰り返すことにより二次電池の正極又は負極における劣化生成物量が増加した場合であっても、この変化に応じた適切なSOC−OCVモデルを設定できるので、これにより充電率を精度良く推定することができる。
(2)充放電や放置等を繰り返すと二次電池の正極の結晶構造が初期状態から変化し、充電率と開放電圧の対応関係が初期状態から変化する場合がある。本発明では、このような正極の結晶構造の初期状態からの変化量を劣化生成物量として推定し、これを用いてSOC−OCVモデルを設定することにより、劣化による正極の変化に合わせて充電率を精度良く推定することができる。
(3)モデル設定部は、正極容量維持率、組成相対ずれ容量、及び劣化生成物量の推定値を用いることによって、正極電位と単極容量との関係を規定した正極電位モデルを設定し、負極容量維持率の推定値を用いることによって、負極電位と単極容量との関係を規定した負極電位モデルを設定する。本発明の状態推定装置によれば、劣化生成物量等によって正極電位モデル及び負極電位モデルを設定することにより、二次電池の正極における劣化生成物量が増加した場合であっても、この変化に応じた適切なSOC−OCVモデルを設定できるので、これにより充電率の推定精度をさらに向上できる。
(4)充放電や放置等を繰り返すとリチウムイオンバッテリである二次電池の負極にはリチウムが析出する場合がある。本発明では、このような負極におけるリチウム析出量を劣化生成物として推定し、これを用いてSOC−OCVモデルを設定することにより、劣化による負極の変化に合わせて充電率を精度良く推定することができる。
(5)モデル設定部は、正極容量維持率及び組成相対ずれ容量の推定値を用いることによって、正極電位と単極容量との関係を規定した負極電位モデルを設定し、負極容量維持率及び劣化生成物量の推定値を用いることによって、負極電位と単極容量との関係を規定した負極電位モデルを設定する。本発明の状態推定装置によれば、劣化生成物量等によって正極電位モデル及び負極電位モデルを設定することにより、二次電池の負極における劣化生成物量が増加した場合であっても、この変化に応じた適切なSOC−OCVモデルを設定できるので、これにより充電率の推定精度をさらに向上できる。
(6)モデル設定部は、上述のように劣化生成物量等によって設定した正極電位モデル及び負極電位モデルを用いることによって開放電圧と単極容量との関係を規定したQ−OCVモデルを設定し、さらにこのQ−OCVモデルを用いることによってSOC−OCVモデルを設定する。これにより、二次電池の劣化に応じた適切なSOC−OCVモデルを設定することができ、ひいてはこれを用いた充電率の推定精度をさらに向上できる。
(7)モデル設定部は、Q−OCVモデルを用いることによって、二次電池の電池容量の推定値を算出する。またパラメータ推定部は、等価回路モデルのモデルパラメータの推定値と、充電率の推定値をSOC−OCVモデルに入力することで得られる開放電圧の推定値とを用いることによって端子電圧の推定値を算出する端子電圧演算部と、電流センサの検出値と電池容量の推定値とを用いることにより、上記端子電圧の推定値と電圧センサの検出値との誤差が小さくなるように正極容量維持率、負極容量維持率、組成相対ずれ容量、劣化生成物量、充電率、及び等価回路モデルのモデルパラメータの推定値を算出する同定器と、を備える。これにより、正極容量維持率や劣化生成物量等の二次電池の劣化態様を特定するためのパラメータの値の推定精度を向上し、劣化態様に応じた適切なSOC−OCVモデルを設定することができ、ひいてはこれを用いた充電率の推定精度をさらに向上できる。
(8)上述のようにパラメータ推定部では充電率の推定値を逐次算出することができるが、適切でない初期値が入力されると、パラメータ推定部による充電率の推定精度は低い。そこで本発明では、演算の開始時点から現時点までの電流センサの検出値を積算することにより二次電池に出入りした電荷量の収支の推定値を算出し、また開始時点における電圧センサの検出値と上述のようにモデル設定部において逐次設定されるSOC−OCVモデルとを用いることによって、開始時点における充電率の推定値を算出する。そして現時点における充電率の推定値は、SOC−OCVモデルに基づいて推定した開始時点における充電率の推定値と、上記のように算出した電荷量の収支の推定値と、を用いることによって算出する。これにより、パラメータ推定部に正確でない初期値が入力された場合であっても、充電率を高い精度で推定することができる。
(9)本発明の二次電池の状態推定方法によれば、上記(1)の発明と同じ理由により、充放電や放置等を繰り返すことにより二次電池の正極又は負極における劣化生成物量が増加した場合であっても、この変化に応じた適切なSOC−OCVモデルを設定できるので、これにより充電率を精度良く推定することができる。
本発明の第1実施形態に係るバッテリ及びその状態推定装置の構成を示す図である。 バッテリシステムの等価回路モデルの構成を示す図である。 初期状態におけるバッテリの正極及び負極の各々の単極電位と単極容量との関係を模式的に示す図である。 要因(A)の劣化に起因する開放電圧の特性及び電池容量の変化を模式的に示す図である。 要因(B)の劣化に起因する開放電圧の特性及び電池容量の変化を模式的に示す図である。 要因(C)の劣化に起因する開放電圧の特性及び電池容量の変化を模式的に示す図である。 充電率変分と電圧オフセット誤差との関係を示す図である。 電池状態推定部においてシステムパラメータベクトルzの推定値を算出する手順を示すブロック図である。 電圧センサ及び電流センサの検出値を用いてシステムパラメータベクトルの推定値等を逐次更新する手順を示すフローチャートである。 劣化後負極電位演算部における演算手順を模式的に示す図である。 劣化後正極電位演算部における演算手順を模式的に示す図である。 劣化後正極電位演算部における演算手順を模式的に示す図である。 Q−OCVモデル設定部における演算手順を模式的に示す図である。 電池容量推定部における演算手順を模式的に示す図である。 SOC−OCVモデル設定部における演算手順を模式的に示す図である。 本実施形態に係る状態推定装置によるSOC−OCVモデルの推定結果を示す図である。 充電率SOCが20%、40%、60%の部分における開放電圧の値の変化を示す図である。 正極容量維持率、負極容量維持率、組成相対ずれ容量、及び正極劣化生成粒相対量の推定値の変化を示す図である。 本発明の第2実施形態に係る電池状態推定部においてシステムパラメータベクトルzの推定値を算出する手順を模式的に示すブロック図である。 充電率の推定値について、第2実施形態の状態推定装置と第1実施形態の状態推定装置とを比較した図である。 要因(D)の劣化に起因する開放電圧の特性及び電池容量の変化を模式的に示す図である。 電池状態推定部においてシステムパラメータベクトルzの推定値を算出する手順を示すブロック図である。 劣化後負極電位演算部における演算手順を模式的に示す図である 劣化後負極電位演算部における演算手順を模式的に示す図である 正極容量維持率、負極容量維持率、組成相対ずれ容量、及び正極劣化生成粒相対量の推定値の変化を示す図である。
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係るバッテリ1及びその状態を推定する状態推定装置2の構成を示す図である。これらバッテリ1及び状態推定装置2は、電気自動車、ハイブリッド車両、及び燃料電池車両など、電気エネルギを用いて走行する車両(図示せず)に搭載される。
バッテリ1は、化学エネルギを電気エネルギに変換する放電、及び電気エネルギを化学エネルギに変換する充電の両方が可能である二次電池である。以下では、バッテリ1として、リチウムイオンバッテリを用いた場合について説明するが、本発明はこれに限らない。バッテリ1としては、ニッケル水素バッテリ等の既知の二次電池を用いてもよい。
バッテリ1は、図示しないPDUを介して、車両の駆動輪を駆動する電気モータや補機等で構成される負荷6に接続されている。PDUは、状態推定装置2によって推定されるバッテリ1の状態や車両の運転状態等に応じて、バッテリ1から負荷6へ電力を供給(放電)したり、電気モータを発電機として機能させることによって得られる電力をバッテリ1に供給(充電)したりする。
状態推定装置2は、電流センサ3と、電圧センサ4と、電池状態推定部5と、を備え、これらによってバッテリ1の状態を推定する。
電流センサ3は、バッテリ1から負荷6へ電力を供給する際にバッテリ1を流れる放電電流や、車両の制動時等において上記負荷6からバッテリ1へ電力を供給する際にバッテリ1を流れる充電電流を検出し、検出値に応じた信号を電池状態推定部5へ送信する。
電圧センサ4は、バッテリ1の端子電圧、すなわちバッテリ1が負荷6に接続され、バッテリ1に電流が流れている状態におけるバッテリ1の正極−負極間の電位差を検出し、検出値に応じた信号を電池状態推定部5へ送信する。
電池状態推定部5は、バッテリ1と電流センサ3と電圧センサ4とを含んで構成されるバッテリシステムを定義し、このバッテリシステムの状態、より具体的にはバッテリシステムの状態を特定する複数のシステムパラメータの値を、バッテリシステムにおいて観測可能なデータ、すなわち電流センサ3及び電圧センサ4の検出値を用いることによって推定する。ここでバッテリ1、電流センサ3及び電圧センサ4の状態を特定する複数のシステムパラメータには、例えば、バッテリ1の充電率、バッテリ1の端子電圧、バッテリ1のバッテリ容量、電流センサ3の検出値に含まれるオフセット誤差(以下、「電流オフセット誤差」ともいう)、及び電圧センサ4の検出値に含まれるオフセット誤差(以下、「電圧オフセット誤差」ともいう)等がある。これら複数のシステムパラメータの具体例については後に詳細に説明する。
電池状態推定部5は、より具体的には、上記バッテリシステムの状態の遷移を記述する状態方程式(後述の式(6)等参照)と、この状態方程式によって表されるバッテリシステムの状態と観測可能データとの関係を記述する観測方程式(後述の式(8)等参照)と、を合せて構成される状態空間モデルを用いることによって、上記複数のシステムパラメータの値を推定する。以下では、電池状態推定部5において構築される状態空間モデルの構成と、この状態空間モデルに基づく具体的な演算手順について、順に説明する。
<等価回路モデル>
電池状態推定部5では、状態空間モデルを構築するにあたり、例えば図2に示すようなバッテリシステムの等価回路モデルを定義する。図2に示すような抵抗値Rの第1内部抵抗と、抵抗値Rの第2内部抵抗及び静電容量値Cの内部コンデンサから成るRC並列回路とを直列に接続して構成される等価回路モデルによれば、バッテリ及び負荷Rを流れる電流をIとすると、バッテリの端子電圧CCVは、バッテリの開放電圧OCVから、第1内部抵抗における第1電圧降下(RI)と、RC並列回路における第2電圧降下(V)とを減算したもので表される(下記式(1−1)参照)。またこの第2電圧降下Vは、通電時間をtとすると、下記式(1−2)によって表される。また図2の等価回路モデルにおける各種物理量のうち、端子電圧CCVは電圧センサによって観測可能であり、電流Iは電流センサによって観測可能である。
Figure 2018084549
<バッテリ劣化モデル>
電池状態推定部5では、状態空間モデルを構築するにあたり、上記等価回路モデルに加えて、バッテリの劣化による特性変化を模したバッテリ劣化モデルを定義する。バッテリは、充放電や放置等を繰り返すと劣化し、これによりバッテリの開放電圧OCVの特性に変化が表れる。バッテリ劣化モデルは、この開放電圧OCVの特性及びその電池容量の劣化による変化を、以下で説明するように複数のパラメータを用いることによって再現するものである。
図3Aは、初期状態(例えば、バッテリの製造直後であってまだ劣化が生じていない状態)におけるバッテリの正極及び負極の各々の単極電位[V]と単極容量[Ah]との関係を模式的に示す図である。図3Aに示すように、正極の単極開回路電位(以下、単に「正極電位」という)OCPcは単極容量Qに応じて変化する特性があり、負極の単極開回路電位(以下、単に「負極電位」という)OCPaは単極容量Qに応じて変化する特性がある。また図3Aにおいて破線で示すように、バッテリの開放電圧OCVは、これら正極電位OCPcと負極電位OCPaとの間の電位差として表される(OCV=OCPc−OCPa)。
この図に示すように、バッテリの開放電圧OCVは、放電が進むにつれて(単極容量Qが低下するにつれて)、低下する特性がある。またこのようなバッテリの開放電圧OCVの特性や、バッテリに蓄えることができる電荷量の最大値に相当する電池容量の大きさは、バッテリの劣化によって変化する。またこのようなバッテリの劣化を引き起こす要因としては、(A)正極又は負極に生じるクラックや活物質の剥離、(B)正極又は負極におけるSEI被膜の成長、(C)正極の結晶構造の変化、及び(D)負極におけるリチウムの析出、の4つがある。本実施形態のバッテリ劣化モデルでは、上記4つの劣化要因のうち(A)〜(C)を想定し、これに起因する開放電圧の特性及び電池容量の変化を扱う。なお劣化要因(D)については、第3実施形態において説明する。
図3Bは、要因(A)の劣化に起因する開放電圧の特性及び電池容量の変化を模式的に示す図である。正極や負極においてクラックが生じたり活物質が剥離したりすると、正極及び負極のそれぞれにおけるリチウムの受け入れ能力が減少し、これにより正極及び負極の単極容量が初期状態から減少する。このため、バッテリの正極電位−単極容量間の対応関係を表した正極電位曲線及び負極電位−単極容量間の対応関係を表した負極電位曲線は、図3Bに示すように、初期状態を示す実線の曲線から縮み、破線の曲線に変化する。したがって要因(A)の劣化による開放電圧の特性及び電池容量の初期状態からの変化は、正極容量維持率Cc[%]及び負極容量維持率Ca[%]の2つのパラメータを導入することによって追跡することができる。正極容量維持率Ccとは、初期状態の正極容量Qc_iに対する劣化後の正極容量Qc_dの割合を百分率で表したものである(Cc=Qc_d/Qc_i×100)。また負極容量維持率Caとは、初期状態の負極容量Qa_iに対する劣化後の負極容量Qa_dの割合を百分率で表したものである(Ca=Qa_d/Qa_i×100)。
より具体的には、要因(A)の劣化に起因する初期状態からの変化は、正極容量維持率Cc及び負極容量維持率Caを用いることによって以下の手順で追跡することができる。先ず、初期状態における正極電位曲線は、単極容量Qに対する関数Pc_i(Q)として表現されており、また初期状態における負極電位曲線は、単極容量Qに対する関数Pa_i(Q)として表現されており、さらにこれら初期状態の関数Pc_i(Q)、Pa_i(Q)の具体的な関数形は、予め実験を行うことによって特定されており、既知であるとする。また劣化後における正極電位及び負極電位を、それぞれ単極容量Qに対する関数Pc_d(Q)、Pa_d(Q)として表現したとする。この場合、劣化後の関数Pc_d(Q)は、初期状態の関数Pc_i(Q)に、正極容量維持率Ccでリスケールした単極容量Q×(100/Cc)を入力し、元の単極容量Qの関数として再定義することによって得られる(下記式(2−1)参照)。また劣化後の関数Pa_d(Q)も、初期状態の関数Pa_i(Q)に、負極容量維持率Caでリスケールした単極容量Q×(100/Ca)を入力し、元の単極容量Qの関数として再定義することによって得られる(下記式(2−2)参照)。
Figure 2018084549
図3Cは、要因(B)の劣化に起因する開放電圧の特性及び電池容量の変化を模式的に示す図である。正極や負極においてSEI被膜が成長すると、組成ずれが発生する。この組成ずれとは、正極及び負極の組を用いて充放電を行うときに、正極の組成及び負極の組成の組み合わせが、初期状態からずれることを意味する。このような組成ずれが生じると、バッテリの正極電位曲線は、図3Cに示すように、初期状態を示す実線の曲線から単極容量の負側へ平行移動し、破線の曲線に変化する。したがって要因(B)の劣化による開放電圧の特性及び電池容量の変化は、負極に対する正極組成のずれ容量(以下、「組成相対ずれ容量」という)ΔQc−ΔQa[Ah]を導入することによって追跡することができる。
より具体的には、要因(B)の劣化に起因する初期状態からの変化は、組成相対ずれ容量ΔQc−ΔQaを用いることによって以下の手順で追跡することができる。先ず、上述のように初期状態における正極電位曲線は、単極容量Qに対する関数Pc_i(Q)として表現されており、さらにこの初期状態の関数Pc_i(Q)の具体的な関数形は、予め実験を行うことによって特定されており、既知であるとする。また劣化後における正極電位曲線を、単極容量Qに対する関数Pc_d(Q)として表現したとする。この場合、劣化後の関数Pc_d(Q)は、初期状態の関数Pc_i(Q)に、組成相対ずれ容量ΔQc−ΔQaだけ正方向にシフトした単極容量Q+(ΔQc−ΔQa)を入力し、元の単極容量Qの関数として再定義することによって得られる(下記式(3)参照)。
Figure 2018084549
図3Dは、要因(C)の劣化に起因する開放電圧の特性及び電池容量の変化を模式的に示す図である。充放電や放置を繰り返すと正極の結晶構造が変化(崩壊)し、これによって開放電圧の特性や電池容量が変化する場合がある。このような正極の結晶構造の変化が生じると、バッテリの正極電位曲線は、初期状態を示す実線の曲線から破線の曲線へ、図3Dに示すように、単極容量Qに対し一様でない態様で変化する。上述のように要因(A)や(B)による劣化は、所定の初期状態に対し、正極容量維持率Cc及び負極容量維持率Caを用いたリスケール操作や、組成相対ずれ容量ΔQc−ΔQaを用いた平行移動操作によって追跡することができる。しかしながら要因(C)による劣化は、これら単純なリスケール操作や平行移動操作では追跡することができない。
本実施形態では、このような要因(C)の劣化に起因する開放電圧の特性等の変化を、図3Dにおいて一点鎖線で示す劣化生成物電位関数mc−1(Q)の逆関数mc(Q)と正極劣化生成物相対量dc[%]とを導入することによって追跡する。劣化生成物電位関数mc−1(Q)とは、正極の結晶構造が全て変化した後におけるバッテリの正極電位曲線を単極容量Qの関数として表現したものであり、その具体的な関数形及びその逆関数の関数形は、予め実験を行うことによって特定されており、既知であるとする。また正極劣化生成物相対量dcとは、正極の結晶構造の初期状態からの変化量を百分率で表したものである。
劣化後における正極電位を、単極容量Qに対する関数Pc_d(Q)として表現したとする。この場合、劣化後の関数Pc_d(Q)は、初期状態の関数Pc_i(Q)に、劣化生成物相対量dc及び単極容量Qに応じて変化する可変シフト容量Qc´だけ負方向にシフトした単極容量Q−Qc´を入力し、元の単極容量Qの関数として再定義することによって得られる(下記式(4−1)参照)。またこの可変シフト容量Qc´は、下記式(4−2)に示すように、劣化生成物電位関数mc−1の逆関数mcに、単極容量Qの時の初期状態における正極電位Pc_i(Q)を入力したものに、正極劣化生成物相対量dcを100で除算したものを乗じたものに相当する。以上のように、要因(C)の劣化に起因する開放電圧の特性等の変化は、単純なリスケール操作や平行移動操作では追跡できないものの、劣化生成物相対量dc及び単極容量Qによって変化する可変シフト容量Qc´を用いた平行移動操作によって追跡することができる。
Figure 2018084549
なお、以上のような正極容量維持率Cc、負極容量維持率Ca、組成相対ずれ容量ΔQc−ΔQa、劣化生成物相対量dc、及び劣化生成物電位関数の逆関数mc(Q)を用いることにより、劣化に応じて開放電圧の特性や電池容量等の変化を追跡する具体的な手順については、後に図7〜図11等を参照して詳細に説明する。
<システムパラメータベクトル>
電池状態推定部5では、バッテリシステムを上記のような等価回路モデル及びバッテリ劣化モデルで表現するとともに、時刻kにおけるバッテリシステムの状態を下記式(5−1)〜(5−3)で表される11成分のシステムパラメータベクトルz[k]によって表現する。なお以下では、現在の時刻を“k”で表し、現在に対し1つ前の周期を“k−1”で表し、現在に対し1つ次の周期を“k+1”で表す。また式(5−1)に示すように、以下では便宜上システムパラメータベクトルz[k]を、式(5−2)で定義される2成分の状態ベクトルx[k]と、式(5−3)で定義される9成分のパラメータベクトルθ[k]と、に分けて扱う。
Figure 2018084549
状態ベクトルx[k]の第1及び第2成分は、以下の通りである。
SOC[k](第1成分)…バッテリの充電率[%]
[k](第2成分)…図2の等価回路モデルにおける第2電圧降下[V]
パラメータベクトルθ[k]の第1〜第9成分は、以下の通りである。
[k](第1成分)…図2の等価回路モデルにおける第1内部抵抗の抵抗値[Ω]
[k](第2成分)…図2の等価回路モデルにおける第2内部抵抗の抵抗値[Ω]
[k](第3成分)…図2の等価回路モデルにおける内部コンデンサの静電容量値[F]
δI[k](第4成分)…電流オフセット誤差[A]
δV[k](第5成分)…電圧オフセット誤差[V]
Cc[k](第6成分)…正極容量維持率[%]
Ca[k](第7成分)…負極容量維持率[%]
ΔQc[k]−ΔQa[k](第8成分)…組成相対ずれ容量[Ah]
dc[k](第9成分)…正極劣化生成物相対量[%]
<状態方程式>
電池状態推定部5では、式(5−1)〜(5−3)によって定められたシステムパラメータベクトルzの離散時刻kからk+1への遷移を、下記式(6)で定義される状態方程式によって表す。下記式(6)において、“v[k]”はシステム雑音でありスカラ量である。“g”はシステム雑音の係数ベクトルであり11成分ベクトルである。また“f(・)”は、2成分ベクトル関数であり、時刻kにおける状態ベクトルx[k]、電流I[k]、及びパラメータベクトルθ[k]の非線形関数である。なお、電流I[k]の具体的な値には、時刻kにおける電流センサの検出値が用いられる。以下では、下記式(6)に示すように、2成分ベクトル非線形関数f(・)及び9成分パラメータベクトルθを成分とする11成分のベクトル非線形関数を“F(・)”と表記する。
Figure 2018084549
ここで、上記状態方程式(6)において、状態ベクトルxの遷移に係る部分のうちシステム雑音v[k]に比例する部分を除いた部分、すなわち2成分ベクトル非線形関数f(・)は、具体的には、以下のように表される。ここで、下記式(7)において、バッテリの充電率SOCの遷移に係る部分、すなわち2成分ベクトル非線形関数f(・)の第1成分には、例えば、サンプル間隔ΔTの間にバッテリに出入りする電荷量を積算することによって導出される式が用いられる。なお、下記式(7)において、“C[k]”は、時刻kにおけるバッテリの電池容量[Ah]であり、その具体的な値には、後述の電池容量推定部84において逐次推定される値が用いられる。また下記式(7)において、第2電圧降下Vの遷移に係る部分、すなわちベクトル非線形関数f(・)の第2成分には、例えば上記等価回路モデルにおける第2電圧降下Vに対する式(1−2)に基づいて導出される式が用いられる。
Figure 2018084549
<観測方程式>
電池状態推定部5では、上記状態方程式(6)に従って遷移するシステムパラメータベクトルzと、電圧センサによって観測可能なデータである端子電圧CCVとの関係を記述する観測方程式として、例えば上記等価回路モデルにおける端子電圧CCVに対する式(1−1)に基づいて導出される下記式(8)が用いられる。下記観測方程式(8)において、“w[k]”は観測雑音でありスカラ量である。
Figure 2018084549
<SOC−OCVモデル>
また電池状態推定部5では、上記観測方程式(8)の右辺のうち開放電圧OCVについては、システムパラメータベクトルzを、バッテリ1の所定のSOC−OCVモデルに入力することによって得られた値を用いる。ここでSOC−OCVモデルとは、バッテリにおける開放電圧OCVと充電率SOCとの対応関係を規定したものである。このSOC−OCVモデルには、バッテリシステムにおいて用いられるバッテリ1の充電率と開放電圧との関係について予め実験を行うことによって構築されたマップや多変数近似関数等が用いられる。以下では、SOC−OCVモデルを多変数近似関数によって具現化した例について説明するが、SOC−OCVモデルは、マップによって具現化してもよい。
下記式(9)は、SOC−OCVモデルを、充電率SOC[k]に後述の充電率変分δSOC[k]を加算したパラメータと、正極容量維持率Cc[k]と、負極容量維持率Ca[k]と、組成相対ずれ容量ΔQc[k]−ΔQa[k]と、正極劣化生成物相対量dc[k]と、の5変数近似関数r(・)として表記した場合の例である。
Figure 2018084549
なお以下では、式(9)に示す5変数近似関数r(・)に対し、正極容量維持率Cc[k]、負極容量維持率Ca[k]、組成相対ずれ容量ΔQc[k]−ΔQa[k]、及び正極劣化生成物相対量dc[k]についての各々の推定値を入力し、1変数関数としたものをg(・)と表記する。
以上のように、SOC−OCVモデルを表す近似関数g(SOC[k]+δSOC[k])によれば、バッテリ1の開放電圧OCV[k]は、充電率SOC[k]に充電率変分δSOC[k]が加算されたパラメータの関数となっている。この充電率変分δSOC[k]は、バッテリ1の電圧の変化によって充電率に発生する変動に相当する。電池状態推定部5では、この充電率変分δSOC[k]を、図4に示すように、バッテリ1の開放電圧OCV[k]に、電圧オフセット誤差δV[k]に相当する変化が生じた場合における充電率SOC[k]の変分として定義する。また下記式(10)に示すように、電圧オフセット誤差δV[k]に応じた充電率変分δSOC[k]は、電圧オフセット誤差δV[k]を、SOC−OCVモデルを表す近似関数g(・)の充電率SOC[k]に関する1階微分で除算したもので近似できる。
Figure 2018084549
以上のように、充電率変分δSOC[k]の推定値は、SOC−OCVモデル式(9)から導出される下記式(10)に、充電率SOC[k]、電圧オフセット誤差δV[k]、その他正極容量維持率Cc[k]の推定値等を入力することによって算出される。なお、以上のようなSOC−OCVモデルを特徴付ける5変数の近似関数g(・)を具体的に導出する手順については、後に図7〜図11等を参照しながら詳細に説明する。
図5は、電池状態推定部5においてシステムパラメータベクトルzの推定値を算出する手順を模式的に示すブロック図である。
電池状態推定部5は、バッテリシステムの状態を特定する複数のシステムパラメータベクトルzの推定値を算出するパラメータ推定部7と、パラメータ推定部7によって算出されたシステムパラメータベクトルzの推定値を用いることによって現在のバッテリの状態に応じたSOC−OCVモデルを設定する劣化変動モデル設定部8と、を備える。
以下では、パラメータ推定部7の構成及びその具体的な演算手順について説明した後、劣化変動モデル設定部8の構成及びその具体的な演算手順について説明する。
パラメータ推定部7は、パラメータ同定器71と、端子電圧推定部72と、推定誤差演算部73と、ゲインベクトル演算部74と、を用いることによって、システムパラメータベクトルzの推定値を算出する。
端子電圧推定部72では、後述の手順によりパラメータ同定器71によって算出されたシステムパラメータベクトルz[k]の推定値等を上記式(9)〜(10)で示す入出力特性を有するSOC−OCVモデル72aが組み込まれた観測方程式(8)に入力することにより、バッテリの端子電圧の推定値を算出する。
より具体的には、SOC−OCVモデル72aは、後述のSOC−OCVモデル設定部85によって設定される近似関数g(・)と、ベクトルz[k]の成分である充電率SOC[k]及び電圧オフセット誤差δV[k]の推定値と、を用いることによって、式(10)に基づいて充電率変分δSOC[k]の推定値を算出する。さらにSOC−OCVモデル72aは、式(9)に示すように、充電率SOC[k]及び充電率変分δSOC[k]の推定値の和を近似関数g(・)に入力することによって、開放電圧OCV[k]の推定値を算出する。
また端子電圧推定部72では、観測方程式(8)に示すように、開放電圧OCV[k]の推定値から、第1電圧降下R[k](I[k]−δI[k])の推定値と、第2電圧降下V[k]の推定値と、を減算し、観測雑音w[k]を加算することにより、バッテリの端子電圧CCV[k]の推定値、すなわち時刻kにおける電圧センサの検出値の推定値を算出する。
推定誤差演算部73では、電圧センサの検出値から端子電圧推定部72によって算出された端子電圧CCV[k]の推定値を減算することにより、推定誤差ε[k]を算出する。
ゲインベクトル演算部74では、推定誤差ε[k]に後に詳述する手順によって算出されるゲインベクトルN[k]を乗算したものを、パラメータ同定器71へ入力する。
パラメータ同定器71では、上述の推定誤差ε[k]が小さくなるように、電流センサの検出値と、ゲインベクトルN[k]と、後述の劣化変動モデル8によって算出されるバッテリの電池容量C[k]と、上述の状態方程式(6)とを用いることにより、上述のように充電率SOC[k]、第2電圧降下V[k]、第1内部抵抗R[k]、第2内部抵抗R[k]、静電容量C[k]、電流オフセット誤差δI[k]、電圧オフセット誤差δV[k]、正極容量維持率Cc[k]、負極容量維持率Ca[k]、組成相対ずれ容量ΔQc[k]−ΔQa[k]、及び正極劣化生成物相対量dc[k]を成分とするシステムパラメータベクトルz[k]の推定値を算出する。
なお、上記式(7)に示すように、状態方程式はシステムパラメータベクトルzの非線形関数となっている。そこでパラメータ同定器71では、状態方程式を局所的に線形化する拡大系拡張カルマンフィルタと呼称されるアルゴリズムを適用することによって、システムパラメータベクトルzの推定値を算出する。なお以下では、状態方程式及び観測方程式を拡大系拡張カルマンフィルタに適用する場合に付いて説明するが、本発明はこれに限らない。すなわち、上記状態方程式及び観測方程式を、他のアルゴリズム、より具体的には、アンセンテッドカルマンフィルタやパーティクルフィルタ等のアルゴリズムに適用してもよい。
なお以下の説明では、システムパラメータベクトルzやその成分等の推定値には、“h”の添え字を付す。
図6は、パラメータ推定部において、電圧センサ及び電流センサの検出値を用いてシステムパラメータベクトルの推定値等を逐次更新する手順を示すフローチャートである。パラメータ推定部では、図6に示す一連の処理を、所定のサンプル間隔ΔTごとに、繰り返し実行する。
図6に示すように、システムパラメータベクトルの推定値を更新する処理は、予測ステップ(S1〜S2)と、フィルタリングステップ(S3〜S6)と、によって構成される。
また以下で説明するように、システムパラメータベクトルzの推定値には、事前推定値z_hと事後推定値z_hとの2種類が存在する。現在の時刻をkとすると、時刻kにおける事前推定値z_h[k]とは、時刻k−1までに利用可能なデータに基づいた時刻kにおけるシステムパラメータベクトルz[k]の予測推定値に相当する。また時刻kにおける事後推定値z_h[k]とは、時刻kまでに利用可能なデータ、すなわち時刻kにおいて取得した最新の電圧センサや電流センサの検出値や上記事前推定値z_h[k]等を含むデータに基づいた、時刻kにおけるシステムパラメータベクトルz[k]のフィルタリング推定値である。なお以下では、事前推定値については“−”の添え字を付し、事後推定値については“+”の添え字を付す。電池状態推定部5では、以下の手順に従って事前推定値z_hと事後推定値z_hとをサンプル間隔ΔTごとに算出するとともに、このうち事後推定値z_hをシステムパラメータベクトルzの推定値として出力する。換言すると、事後推定値z_hが電池状態推定部において最終的に求めたいシステムパラメータベクトルzの推定値に相当する。
予測ステップは、事前推定値の演算(S1)及び事前誤差共分散行列の演算(S2)の2つの演算によって構成される。
S1の事前状態推定値の演算では、上記式(5−1)〜(5−3)によって定義されるシステムパラメータベクトルzの、現在の時刻kにおける事前推定値z_h[k]の値を算出する。下記式(11)に示すように、S1では、電池状態推定部は、例えば前回の時刻k−1における後述のフィルタリングステップにおいて算出された事後推定値z_h[k−1]をそのまま現在の時刻kにおける事前状態推定値z_h[k]とする。
Figure 2018084549
またS2の事前誤差共分散行列の演算では、下記式(12)に基づいて、11行11列の事前誤差共分散行列Σの値を算出する。下記式(12)において、“Σv2”は、上記式(6)におけるシステム雑音の分散であり、“g”及び“g”は、それぞれシステム雑音の係数ベクトル及びその転置ベクトルである。また下記式(12)において“FL[k]”及び“FL[k]”は、それぞれ、状態方程式(6)の11成分ベクトル非線形関数F(z[k])を線形近似した11成分ベクトル線形関数及びその転置ベクトルである。また下記式(12)において“Σ[k−1]”は、前回の時刻k−1における事後誤差共分散行列であり、前回の時刻k−1における後述のフィルタリングステップにおいて算出された値がそのまま用いられる。
Figure 2018084549
なお、上記式(12)におけるベクトル線形関数FL[k]は、具体的には、下記式(13)によって表される。
Figure 2018084549
また、上記式(13)における係数“J”、“L”、“M”、“K”、“N”は、それぞれ、下記式(14−1)〜(14−5)によって表される。
Figure 2018084549
また、上記式(13)における係数“P”、“U”、“R”、“S”は、それぞれ、下記式(15−1)〜(15−4)によって表される。なお下記式(15−1)〜(15−4)において、係数“h”、“h”、“h”、“h”は、それぞれ正極容量維持率Ccの微小変化量、負極容量維持率Caの微小変化量、組成相対ずれ容量ΔQc−ΔQaの微小変化量、正極劣化生成物相対量dcの微小変化量である。
Figure 2018084549
次に、フィルタリングステップは、ゲインベクトルの演算(S3)、予測誤差の演算(S4)、状態推定値の演算(S5)、及び事後誤差共分散行列の演算(S6)の4つの演算によって構成される。
S3のゲインベクトルの演算では、下記式(16)に基づいて、時刻kにおける11成分のゲインベクトルN[k]の値を算出する。下記式(16)において、“Σw2”は、上記観測方程式(8)における観測雑音の分散である。また下記式(16)において、“HL[k]”及び“HL[k]”は、それぞれ、SOC−OCVモデルを含んだ観測方程式(8)の右辺を線形近似して得られる11成分ベクトル線形関数及びその転置ベクトルである。
Figure 2018084549
なお、上記式(16)におけるベクトル線形関数HL[k]は、具体的には、観測方程式(8)の右辺を関数h(x[k],I[k],θ[k])で定義した場合に、下記式(17)によって表される。
Figure 2018084549
上記式(17)における係数“Q”及び“T” は、上記式(9)及び(10)で示すSOC−OCVモデル式に基づいて導出される下記式(18−1)及び(18−2)が用いられる。また上記式(17)における係数“W”、“A”、“B”、“D”は、それぞれ下記式(18−3)〜(18−6)が用いられる。なお下記式(18−1)〜(18−2)において、係数“h”、“h”は、それぞれ充電率変分δSOCの微小変化量、充電率SOCの微小変化量である。
Figure 2018084549
S4の予測誤差の演算では、下記式(19)に示すように、時刻kにおいて取得した電圧センサの検出値CCV[k]から、時刻kにおける電流I[k](時刻kにおいて取得した電流センサの検出値)と、状態ベクトルxの事前推定値x_h[k]と、パラメータベクトルθの事前推定値θ_h[k]と、を観測方程式(8)に基づいて導出される関数h(・)に入力することによって得られる端子電圧の推定値h(x_h[k],I[k],θ_h[k])を減算することにより、時刻kにおける予測誤差ε[k]の値を算出する。
Figure 2018084549
S5の事後推定値の演算では、下記式(20)に示すように、システムパラメータベクトルzの事前推定値z_h[k]に、先に導出したゲインベクトルN[k]に予測誤差ε[k]を乗算したものを加えることにより、予測誤差ε[k]の絶対値が小さくなるようなシステムパラメータベクトルzの事後推定値z_h[k]の値を算出する。
Figure 2018084549
S6の事後誤差共分散行列の演算では、下記式(21)に基づいて、11行11列の事後誤差共分散行列Σの値を算出し、この処理を終了する。ここで算出された時刻kにおける事後誤差共分散行列Σは、次の時刻k+1における事前誤差共分散行列の演算に用いられる。なお以下では、11行11列の単位行列を“I”と表記する。
Figure 2018084549
なお上記の手順に従い繰り返し演算を行うことにより、各時刻で状態推定値を逐次算出する際には、状態パラメータの推定値z_h及び事後誤差共分散行列Σの初期値、すなわち時刻k=0における値が必要となる。これらの初期値は、例えば下記式のように定義する。なお以下では、任意の変数“x”の期待値を“E[x]”と表記する。
Figure 2018084549
次に、図5に戻り、劣化変動モデル設定部8の構成及びその具体的な演算手順について説明する。劣化変動モデル設定部8は、劣化後正極電位演算部81と、劣化後負極電位演算部82と、Q−OCVモデル設定部83と、電池容量推定部84と、SOC−OCVモデル設定部85とを備え、これら用いることにより、パラメータ推定部7における演算で用いられるSOC−OCVモデルを設定する。
劣化後負極電位演算部82は、パラメータ推定部7によって算出された負極容量維持率Caの推定値(より具体的には、上記式(20)によって算出される負極容量維持率の事後推定値Ca_h[k])を用いることによって、バッテリの負極電位と単極容量との関係を規定した負極電位モデルを設定する。より具体的には、劣化後負極電位演算部82では、予め定められた初期状態における負極電位モデルに対し、負極容量維持率Caの推定値を用いたリスケール操作(図3B参照)を行うことにより、負極容量維持率Caの推定値に応じた劣化後の負極電位モデルを設定する。
図7は、劣化後負極電位演算部82における演算手順を模式的に示す図である。図7において、破線は、初期状態における負極電位モデルを単極容量Qの関数Pa_i(Q)として表現したものである。この関数Pa_i(Q)の具体的な関数形は、予め実験を行うことにより定められている。劣化後負極電位演算部82では、この関数Pa_i(Q)に対し、式(2−2)に示すような、負極容量維持率Caの推定値を用いたリスケール操作を行うことにより、図7において実線で示すような劣化後の負極電位モデルに相当する新たな関数Pa_d(Q)を導出する。
図5に戻り、劣化後正極電位演算部81は、パラメータ推定部7によって算出された正極容量維持率Ccの推定値(より具体的には、上記式(20)によって算出される正極容量維持率の事後推定値Cc_h[k])と、組成相対ずれ容量ΔQc−ΔQaの推定値(より具体的には、上記式(20)によって算出される組成相対ずれ容量の事後推定値ΔQc_h[k]−ΔQa_h[k])と、正極劣化生成物相対量dcの推定値(より具体的には、上記式(20)によって算出される正極劣化生成物相対量の事後推定値dc_h[k])と、を用いることによって、バッテリの正極電位と単極容量との関係を規定した正極電位モデルを設定する。より具体的には、劣化後正極電位演算部81では、予め定められた初期状態における正極電位モデルに対し、正極容量維持率Ccの推定値を用いたリスケール操作(図3B参照)と、組成相対ずれ容量ΔQc−ΔQaの推定値を用いた平行移動操作(図3C参照)と、正極劣化生成物相対量dcの推定値を用いて定義される可変シフト容量Qc´を用いた平行移動操作(図3D参照)と、を組み合わせて行うことにより、これら正極容量維持率Ccの推定値等に応じた劣化後の正極電位モデルを設定する。
図8A及び図8Bは、劣化後正極電位演算部81における演算手順を模式的に示す図である。図8Aにおいて、破線は初期状態における正極電位モデルを単極容量Qの関数Pc_i(Q)として表現したものであり、一点鎖線は上述の劣化生成物電位関数mc−1(Q)である。これら関数Pc_i(Q)及びmc−1(Q)の具体的な関数形は、予め実験を行うことによって定められている。劣化後正極電位演算部81では、先ず、この初期状態の関数Pc_i(Q)に対し、式(4−1)及び(4−2)に示すような可変シフト容量Qc´を用いた平行移動操作を行うことにより、図8Aにおいて実線で示すような新たな関数Pc_d´´(Q)を導出する。
次に劣化後正極電位演算部81では、上記新たな関数Pc_d´´(Q)(図8Bにおける一点鎖線参照)に対し、式(2−1)に示すような正極容量維持率Ccの推定値を用いたリスケール操作を行うことにより、図8Bにおいて破線で示すような新たな関数Pc_d´(Q)を導出する。さらに劣化後正極電位演算部81では、導出した新たな関数Pc_d´(Q)(図8Bにおける破線参照)に対し、式(3)に示すような組成相対ずれ容量ΔQc−ΔQaの推定値を用いた平行移動操作を行うことにより、図8Bにおいて実線で示すような劣化後の正極電位モデルに相当する新たな関数Pc_d(Q)を導出する。
図5に戻り、Q−OCVモデル設定部83では、劣化後正極電位演算部81によって設定された正極電位モデル(すなわち、関数Pc_d(Q))及び負極電位モデル(すなわち、関数Pa_d(Q))を用いることによって、バッテリの開放電圧OCVと単極容量Qとの関係を規定した劣化後のQ−OCVモデルを設定する。
図9は、Q−OCVモデル設定部83における演算手順を模式的に示す図である。図9において、破線は劣化後の正極電位モデルに相当し、一点鎖線は劣化後の負極電位モデルに相当する。Q−OCVモデル設定部83では、図9に示すように、正極電位モデルに相当する関数Pc_d(Q)から負極電位モデルに相当する関数Pa_i(Q)を減算することにより、図9において実線で示すような劣化後のQ−OCVモデルに相当する新たな関数OCV_d(Q)を導出する(OCV_d(Q)=Pc_d(Q)−Pa_i(Q))。
図5に戻り、電池容量推定部84では、Q−OCVモデル設定部83によって設定された劣化後のQ−OCVモデル(すなわち、関数OCV_d(Q))を用いることによって、劣化後のバッテリの電池容量の推定値C[k]を算出し、上述のパラメータ同定器71に入力する。
図10は、電池容量推定部84における演算手順を模式的に示す図である。電池容量推定部84では、下記式(23−1)及び(23−2)に示すように、バッテリの開放電圧に対して予め定められた2つの閾値OCV_f,OCV_eを与えるような単極容量Q_f,Q_eの値を算出し、この差Q_f−Q_eを電池容量の推定値C[k]とする。閾値OCV_fは、充電率が100%である状態におけるバッテリの開放電圧に相当し、閾値OCV_eは、充電率が0%である状態におけるバッテリの開放電圧に相当する。したがって、単極容量Q_fは、充電率が100%である状態におけるバッテリの単極容量(以下、「最高容量」ともいう)に相当し、単極容量Q_eは、充電率が0%である状態におけるバッテリの単極容量(以下、「最低容量」ともいう)に相当する。
Figure 2018084549
図5に戻り、SOC−OCVモデル設定部85では、Q−OCVモデル設定部83によって設定された劣化後のQ−OCVモデル(すなわち、関数OCV_d(Q))を用いることによって、劣化後のSOC−OCVモデルを設定する。
図11は、SOC−OCVモデル設定部85における演算手順を模式的に示す図である。SOC−OCVモデル設定部85では、図11に示すように、関数OCV_d(Q)を、最低容量Q_eから最高容量Q_fまでの定義域を100等分するとともに、最低容量Q_eを0%とし、最高容量Q_fを100%とすることにより、関数OCV_d(Q)のX軸を単極容量Qから充電率SOCに変換する。これにより、劣化後のバッテリにおける開放電圧OCVと充電率SOCとの対応関係を規定したSOC−OCVモデルとしての近似関数g(SOC)が導出される。
図5に戻り、以上のような手順により劣化変動モデル設定部8において得られた劣化後のSOC−OCVモデル(すなわち、近似関数g(SOC))は、上述の電池状態推定部5の端子電圧推定部72における演算にフィードバックされる。
次に、以上のように構成された本実施形態の状態推定装置2の効果について説明する。
図12Aは、上記状態推定装置2によるSOC−OCVモデルの推定結果を示す図である。図12Aにおいて、破線は初期状態におけるバッテリのSOC−OCVモデルを示し、一点鎖線は実際に搭載されているバッテリの充電率SOCと開放電圧OCVとの関係を示す。また図12Aにおいて、実線は、上記状態推定装置2において複数回にわたり図6〜図11に示す演算を繰り返し行った後に得られる近似関数g(SOC)を示す。
図12Bは、上段から順に充電率SOCが20%、40%、60%の部分における開放電圧OCVの値の変化を示す図である。
図12Cは、上段から順に正極容量維持率Cc、負極容量維持率Ca、組成相対ずれ容量ΔQc−ΔQa、及び正極劣化生成物相対量dcの推定値の変化を示す図である。
これら図12Bに示すように、状態推定装置2における演算を開始した直後に得られる近似関数g(SOC)は、実際に搭載されているバッテリの充電率SOCと開放電圧OCVとの関係から大きく外れている。しかしながら、図12Cに示すように、パラメータ推定部7における演算を繰り返し行うことにより、正極容量維持率Ccや正極劣化生成物相対量dc等、現在搭載されているバッテリの劣化状態を特定するために必要なパラメータの推定値が次第に一定の値に収束するようになり、この結果、図12A及び図12Bに示すように近似関数g(SOC)は、実際に搭載されているバッテリの充電率SOCと開放電圧OCVとの関係に近づく。以上のように、本実施形態の状態推定装置2によれば、実際に搭載されているバッテリの状態に近い適切なSOC−OCVモデルを設定できることが明らかになった。
本実施形態の状態推定装置2によれば、以下の効果を奏する。
(1)パラメータ推定部7は、電圧センサ4及び電流センサ3の検出値とSOC−OCVモデルを表した近似関数g(SOC)とを用いることによって、充電率SOCの推定値と、バッテリ1の劣化態様を特定するパラメータである正極容量維持率Cc、負極容量維持率Ca、組成相対ずれ容量ΔQc−ΔQa、並びに正極劣化生成物相対量dcの推定値と、を算出する。また劣化変動モデル設定部8では、パラメータ推定部7によって算出された正極容量維持率Cc、負極量維持率Ca、組成相対ずれ容量ΔQc−ΔQa、及び正極劣化生成物相対量dcの推定値を用いることによって、上述の近似関数g(SOC)を設定する。したがって本実施形態の状態推定装置2によれば、充放電や放置等を繰り返すことによりバッテリ1の正極の結晶構造が初期状態から変化し、その充電率SOCと開放電圧OCVとの対応関係が初期状態から変化した場合であっても、この変化を劣化生成物相対量dcの増加としてとらえ、これに応じて適切な近似関数g(SOC)を設定できるので、これにより充電率SOCを精度良く推定することができる。
(2)劣化後正極電位演算部81は、正極容量維持率Cc、組成相対ずれ容量、及び正極劣化生成物相対量dcの推定値を用いることによって、正極電位モデルを表した関数Pc_d(Q)設定し、劣化後負極電位演算部82は、負極容量維持率Caの推定値を用いることによって、負極電位モデルを表した関数Pa_d(Q)を設定する。本実施形態の状態推定装置2によれば、正極劣化生成物相対量dc等によって関数Pc_d(Q)、Pa_d(Q)を設定することにより、バッテリ1の正極における結晶構造の変化量が増加した場合であっても、この変化に応じた適切な近似関数g(SOC)を設定できるので、これにより充電率SOCの推定精度をさらに向上できる。
(3)Q−OCVモデル設定部83は、上述のように正極劣化生成物相対量dc等によって設定した関数Pc_d(Q)、Pa_d(Q)を用いることによって、Q−OCVモデルを表した関数OCV_d(Q)を設定する。またSOC−OCVモデル設定部85は、この関数OCV_d(Q)を用いることによって近似関数g(SOC)を設定する。これにより、バッテリ1の劣化に応じた適切な近似関数g(SOC)を設定することができ、ひいてはこれを用いた充電率SOCの推定精度をさらに向上できる。
(4)電池容量推定部84は、関数OCV_d(Q)を用いることによって、バッテリ1の電池容量Cの推定値を算出する。また端子電圧推定部72は、等価回路モデルの抵抗値R,R等の推定値と、充電率SOCの推定値を近似関数g(SOC)に入力することで得られる開放電圧OCVの推定値とを用いることによって端子電圧CCVの推定値を算出する。パラメータ同定器71は、電流センサ3の検出値と電池容量Cの推定値とを用いることにより、端子電圧CCVの推定値と電圧センサ4の検出値との誤差εが小さくなるように正極容量維持率Cc、負極容量維持率Ca、組成相対ずれ容量ΔQc−ΔQa、正極劣化生成物相対量dc、充電率SOC、及び等価回路モデルの抵抗値R,R等の推定値を算出する。これにより、正極容量維持率Ccや正極劣化生成物相対量dc等のバッテリ1の劣化態様を特定するためのパラメータの値の推定精度を向上し、劣化態様に応じた適切な近似関数g(SOC)を設定することができ、ひいてはこれを用いた充電率SOCの推定精度をさらに向上できる。
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお以下の説明において、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
図13は、本実施形態の状態推定装置2Aの電池状態推定部5Aにおいてシステムパラメータベクトルzの推定値を算出する手順を模式的に示すブロック図である。
本実施形態の電池状態推定部5Aは、図5に示す第1実施形態のパラメータ推定部7及び劣化変動モデル設定部8に加えて、SOC推定部9Aをさらに備える点において第1実施形態の電池状態推定部5Aと異なる。
SOC推定部9Aは、電荷量収支演算部91Aと、初期SOC演算部92Aと、SOC演算部93Aと、を備える。
電荷量収支演算部91Aは、パラメータ推定部7及び劣化変動モデル8における演算の開始時点から現時点までの電流センサ3の検出値を積算することにより、演算の開始時点から現時点までの間にバッテリに出入りした電荷量の収支の推定値を算出する。より具体的には、電荷量収支演算部91Aでは、演算の開始時刻を0とし、現時刻をkとし、時刻kにおいて取得した電流センサ3の検出値をI[k]とし、時刻kにおいてパラメータ推定部7において算出された電流オフセット誤差の推定値(より具体的には、電流オフセット誤差の事後推定値δI_h[k])をδI[k]とした場合、下記式(24)により、電荷量収支の推定値q[k]を、サンプル間隔ΔTごとに算出する。なお、電荷量収支の初期値は0とする(q[0]=0)。
Figure 2018084549
初期SOC演算部92Aは、演算の開始時点において取得した電圧センサ4の検出値と、劣化変動モデル設定部8において逐次設定されるSOC−OCVモデルとを用いることによって、演算の開始時点におけるバッテリの充電率に相当する初期SOCの推定値を算出する。より具体的には、初期SOC演算部92Aでは、下記式(25)に示すように、演算の開始時刻0において取得した電圧センサ4の検出値をCCV[0]とし、この開始時刻0における検出値CCV[0]を、現時刻kにおいてSOC−OCVモデル設定部85において設定された近似関数g(SOC)の逆関数g−1(OCV)に入力することにより、初期SOCの推定値SOC[k]を、サンプル間隔ΔTごとに算出する。
Figure 2018084549
SOC演算部93Aは、下記式(26)に示すように、初期SOC演算部92Aによって算出された初期SOCの推定値SOC[k]と、電荷量収支演算部91Aによって算出された電荷量収支の推定値q[k]と、電池容量推定部84によって算出されたバッテリの電池容量の推定値C[k]とを用いることによって、現時点における充電率の推定値SOC´[k]を算出する。
Figure 2018084549
次に、以上のような本実施形態の状態推定装置2Aの効果について説明する。
図14は、充電率の推定値について、本実施形態の状態推定装置2Aと第1実施形態の状態推定装置2とを比較した図である。図14において、破線は第1実施形態の状態推定装置2のパラメータ同定器71によって算出された充電率の推定値(より具体的には、充電率の事後推定値SOC_h[k])を示し、実線は本実施形態のSOC推定部9Aによって算出された充電率の推定値SOC´[k]を示す。図14において横軸は時間であり、縦軸は充電率SOCの真値と各実施形態による充電率の推定値との誤差である。
図14に示すように、第1実施形態の状態推定装置2によれば、充電率の推定値は、常に一定の誤差を含んでいる。これは、パラメータ同定器71における演算を開始する際にパラメータ同定器71に与えられる初期値(上記式(22−1)及び(22−2)参照)に含まれていた誤差は、パラメータ同定器71における繰り返しの演算では解消できないことを意味する。これに対し本実施形態の状態推定装置2AのSOC推定部9Aでは、パラメータ推定部7及び劣化変動モデル設定部8における繰り返しの演算によって設定される近似関数g(SOC)を用いることによって、繰り返し初期SOCの推定値SOC[k]を演算し直すことから、パラメータ同定器71に与えられる初期値の誤差が徐々に解消されるためである。
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお以下の説明において、第2実施形態と同じ構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
本実施形態は、電池状態推定部において規定されるバッテリ劣化モデルの構成が第1実施形態と異なる。より具体的には、第2実施形態のバッテリ劣化モデルでは、4つの劣化要因のうち(A)〜(C)を想定したものとなっているが、本実施形態のバッテリ劣化モデルでは、4つの劣化要因のうち(A)〜(B)及び(D)を想定する点が異なる。
<バッテリ劣化モデル>
図15は、要因(D)の劣化に起因する開放電圧の特性及び電池容量の変化を模式的に示す図である。充放電や放置を繰り返すと負極にはリチウムが析出し、これによって開放電圧の特性や電池容量が変化する場合がある。このように負極にリチウムの析出が生じると、バッテリの負極電位曲線は、初期状態を示す実線の曲線から破線の曲線へ、図15に示すように、単極容量Qに対し一様でない態様で変化する。この要因(D)の劣化に起因する負極電位曲線の変化は、要因(C)の劣化に起因する正極電位曲線の変化(図3D参照)と同様、所定の初期状態に対する単純なリスケール操作や平行移動操作では追跡することができない。
本実施形態では、このような要因(D)の劣化に起因する開放電圧の特性等の変化を、図15において一点鎖線で示すような劣化生成物電位関数ma−1(Q)の逆関数ma(Q)と負極劣化生成物相対量da[%]とを導入することによって追跡する。劣化生成物電位関数ma−1(Q)とは、負極に所定の上限量のリチウムが析出した状態におけるバッテリの負極電位曲線を単極容量Qの関数として表現したものであり、その具体的な関数形及びその逆関数の関数形は、予め実験を行うことによって特定されており、既知であるとする。また負極劣化生成物相対量daとは、負極におけるリチウムの析出量の、上記劣化生成物電位関数ma−1(Q)を定めるために導入した上限量に対する割合を百分率で表したものである。
劣化後における負極電位を、単極容量Qに対する関数Pa_d(Q)として表現したとする。この場合、劣化後の関数Pa_d(Q)は、初期状態の関数Pa_i(Q)に、劣化生成物相対量da及び単極容量Qに応じて変化する可変シフト容量Qa´だけ負方向にシフトした単極容量Q−Qa´を入力し、元の単極容量Qの関数として再定義することによって得られる(下記式(27−1)参照)。またこの可変シフト容量Qa´は、下記式(27−2)に示すように、劣化生成物電位関数ma−1(Q)の逆関数maに、単極容量Qの時の初期状態における負極電位Pa_i(Q)を入力したものに、負極劣化生成物相対量daを100で除算したものを乗じたものに相当する。以上のように、要因(D)の劣化に起因する開放電圧の特性等の変化は、要因(C)の劣化に起因するものと同様に、可変シフト容量Qa´を用いた平行移動操作によって追跡することができる。
Figure 2018084549
なお、要因(A)及び(B)の劣化に起因する開放電圧の特性及び電池容量の変化を追跡する手順については、図3A〜図3Cを参照して説明した手順と同じであるので、詳細な説明を省略する。
図16は、本実施形態の状態推定装置2Bの電池状態推定部5Bにおいてシステムパラメータベクトルzの推定値を算出する手順を模式的に示すブロック図である。電池状態推定部5Bは、システムパラメータベクトルzの推定値を算出するパラメータ推定部7Bと、パラメータ推定部7Bによって算出されたシステムパラメータベクトルzの推定値を用いることによって現在のバッテリの状態に応じたSOC−OCVモデルを設定する劣化変動モデル設定部8Bと、を備える。
パラメータ同定器71Bは、下記式(28)に示すように、その第9成分を負極劣化生成物相対量da[k]としたものをパラメータベクトルθ[k]として定義し、図6を参照して説明した手順に従って、システムパラメータベクトルzの推定値等を逐次更新する。
Figure 2018084549
劣化変動モデル設定部8Bは、劣化後正極電位演算部81Bと、劣化後負極電位演算部82Bと、Q−OCVモデル設定部83と、電池容量推定部84と、SOC−OCVモデル設定部85とを備え、これら用いることにより、パラメータ推定部7Bにおける演算で用いられるSOC−OCVモデルを設定する。
劣化後正極電位演算部81Bは、パラメータ推定部7Bによって算出された正極容量維持率Ccの推定値(より具体的には、上記式(20)によって算出される正極容量維持率の事後推定値Cc_h[k])と、組成相対ずれ容量ΔQc−ΔQaの推定値(より具体的には、上記式(20)によって算出される組成相対ずれ容量の事後推定値ΔQc_h[k]−ΔQa_h[k])と、を用いることによって、バッテリの正極電位と単極容量との関係を規定した正極電位モデルを設定する。より具体的には、劣化後正極電位演算部81Bでは、予め定められた初期状態における正極電位モデルに対し、正極容量維持率Ccの推定値を用いたリスケール操作(図3B及び図8B等参照)と、組成相対ずれ容量ΔQc−ΔQaの推定値を用いたリスケール操作(図3C及び図8B参照)と、を組み合わせて行うことにより、劣化後の正極電位モデルに相当する新たな関数Pc_d(Q)を導出する。なお、本実施形態の劣化後正極電位演算部81Bにおける演算は、第1実施形態の劣化後正極電位演算部81と、正極劣化生成物相対量dcの推定値を用いた演算を行わない点において異なる。他の正極容量維持率Cc及び組成相対ずれ容量ΔQc−ΔQaの推定値を用いた演算の具体的な手順は、第1実施形態の劣化後正極電位演算部81と同じである。
劣化後負極電位演算部82Bは、パラメータ推定部7Bによって算出された負極容量維持率Caの推定値(より具体的には、上記式(20)によって算出される負極容量維持率の事後推定値Ca_h[k])と、負極劣化生成物相対量daの推定値(より具体的には、上記式(20)によって算出される負極劣化生成物相対量の事後推定値da_h[k])と、を用いることによって、バッテリの負極電位と単極容量との関係を規定した負極電位モデルを設定する。より具体的には、劣化後負極電位演算部82Bでは、予め定められた負極電位モデルに対し、負極容量維持率Caの推定値を用いたリスケール操作(図3B参照)と、負極劣化生成物相対量daの推定値を用いて定義される可変シフト容量Qa´を用いた平行移動操作(図15参照)と、を組み合わせて行うことにより、これら負極容量維持率Caの推定値等に応じた劣化後の負極電位モデルを設定する。
図17A及び図17Bは、劣化後負極電位演算部82Bにおける演算手順を模式的に示す図である。図17Aにおいて、破線は初期状態における負極電位モデルを単極容量Qの関数Pa_i(Q)として表現したものであり、一点鎖線は上述の劣化生成物電位関数ma−1(Q)である。これら関数Pa_i(Q)及びma−1(Q)の具体的な関数形は、予め実験を行うことによって定められている。劣化後負極電位演算部82Bでは、先ず、この初期状態の関数Pa_i(Q)に対し、式(27−1)及び(27−2)に示すような可変シフト容量Qa´を用いた平行移動操作を行うことにより、図17Aにおいて実線で示すような新たな関数Pa_d´(Q)を導出する。
次に劣化後負極電位演算部82Bでは、上記新たな関数Pa_d´´(Q)(図17Bにおける一点鎖線参照)に対し、式(2−2)に示すような負極容量維持率Caの推定値を用いたリスケール操作を行うことにより、図17Bにおいて実線で示すような、劣化後の負極電位モデルに相当する新たな関数Pa_d(Q)を導出する。
なお、劣化変動モデル設定部8BにおけるQ−OCVモデル設定部83、電池容量推定部84、及びSOC−OCVモデル設定部85における具体的な演算手順は、第1実施形態と同じであるので詳細な説明を省略する。
次に、以上のように構成された本実施形態の状態推定装置2Bの効果について説明する。
図18は、上段から順に正極容量維持率Cc、負極容量維持率Ca、組成相対ずれ容量ΔQc−ΔQa、及び負極劣化生成物相対量daの推定値の変化を示す図である。
図18に示すように、パラメータ推定部7Bにおける演算を繰り返し行うことにより、負極容量維持率Caや負極劣化生成物相対量da等、現在搭載されているバッテリの劣化状態を特定するために必要なパラメータの推定値は、次第に一定の値に収束する。この結果、詳細な図示を省略するが、第1実施形態と同様に近似関数g(SOC)は、実際に搭載されているバッテリの充電率SOCと開放電圧OCVとの関係に近づく。以上のように、本実施形態の状態推定装置2Bによれば、実際に搭載されているバッテリの状態に近い適切なSOC−OCVモデルを設定できる。
本実施形態の状態推定装置2Bによれば、上述の効果(1)〜(4)と同様の効果を奏する。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限らない。本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜変更してもよい。
1…バッテリ
2,2A,2B…状態推定装置
3…電流センサ
4…電圧センサ
5,5A,5B…電池状態推定部
6…負荷
7,7B…パラメータ推定部
71,71B…パラメータ同定器
72…端子電圧演算部
73…推定誤差演算部
74…ゲインベクトル演算部
8,8B…劣化変動モデル(モデル設定部)
81,81B…劣化後正極電位演算部
82,82B…劣化後負極電位演算部
83…Q−OCVモデル設定部
84…電池容量推定部
85…SOC−OCVモデル設定部
9A…SOC推定部
91A…電荷量収支演算部
92A…初期SOC演算部
93A…SOC演算部(充電率推定部)

Claims (9)

  1. 二次電池の端子電圧を検出する電圧センサと、
    前記二次電池を流れる電流を検出する電流センサと、を備え、前記電圧センサ及び前記電流センサの検出値を用いることによって前記二次電池の状態を推定する二次電池の状態推定装置であって、
    前記電圧センサの検出値と、前記電流センサの検出値と、前記二次電池における開放電圧と充電率との関係を規定したSOC−OCVモデルと、を用いることにより、前記二次電池の正極容量維持率及び負極容量維持率、前記二次電池の組成相対ずれ容量、前記二次電池の正極及び負極の何れかにおける劣化生成物量、及び前記充電率の推定値を算出するパラメータ推定部と、
    前記正極容量維持率、前記負極容量維持率、前記組成相対ずれ容量、及び前記劣化生成物量の推定値を用いることによって前記SOC−OCVモデルを設定するモデル設定部と、を備えることを特徴とする二次電池の状態推定装置。
  2. 前記劣化生成物量は、前記正極の結晶構造の初期状態からの変化量に相当することを特徴とする請求項1に記載の二次電池の状態推定装置。
  3. 前記モデル設定部は、
    前記正極容量維持率、前記組成相対ずれ容量、及び前記劣化生成物量の推定値を用いることによって、前記二次電池の正極電位と単極容量との関係を規定した正極電位モデルを設定する劣化後正極電位演算部と、
    前記負極容量維持率の推定値を用いることによって、前記二次電池の負極電位と単極容量との関係を規定した負極電位モデルを設定する劣化後負極電位演算部と、を備えることを特徴とする請求項2に記載の二次電池の状態推定装置。
  4. 前記二次電池は、リチウムイオンバッテリであり、
    前記劣化生成物量は、前記負極におけるリチウム析出量に相当することを特徴とする請求項1に記載の二次電池の状態推定装置。
  5. 前記モデル設定部は、
    前記正極容量維持率、及び前記組成相対ずれ容量の推定値を用いることによって、前記二次電池の正極電池と単極容量との関係を規定した正極電位モデルを設定する劣化後正極電位演算部と、
    前記負極容量維持率、及び前記劣化生成物量の推定値を用いることによって、前記二次電池の負極電位と単極容量との関係を規定した負極電位モデルを設定する劣化後負極電位演算部と、を備えることを特徴とする請求項4に記載の二次電池の状態推定装置。
  6. 前記モデル設定部は、
    前記正極電位モデル及び前記負極電位モデルを用いることによって、前記二次電池の開放電圧と単極容量との関係を規定したQ−OCVモデルを設定するQ−OCVモデル設定部と、
    前記Q−OCVモデルを用いることによって、前記SOC−OCVモデルを設定するSOC−OCVモデル設定部と、をさらに備えることを特徴とする請求項3又は5に記載の二次電池の状態推定装置。
  7. 前記モデル設定部は、前記Q−OCVモデルを用いることによって、前記二次電池の電池容量の推定値を算出する電池容量推定部をさらに備え、
    前記パラメータ推定部は、
    前記電流センサの検出値と前記電池容量の推定値とを用いることによって、前記正極容量維持率、前記負極容量維持率、前記組成相対ずれ容量、前記劣化生成物量、前記充電率、及び前記二次電池の等価回路モデルに含まれる1つ以上のモデルパラメータの推定値を算出する同定器と、
    前記モデルパラメータの推定値、及び前記充電率の推定値を前記SOC−OCVモデルに入力することで得られる前記開放電圧の推定値を用いることによって前記端子電圧の推定値を算出する端子電圧演算部と、を備え、
    前記同定器は、前記端子電圧の推定値と前記電圧センサの検出値との誤差が小さくなるように前記正極容量維持率、前記負極容量維持率、前記組成相対ずれ容量、前記劣化生成物量、前記充電率、及び前記モデルパラメータの推定値を算出することを特徴とする請求項6に記載の二次電池の状態推定装置。
  8. 前記パラメータ推定部及び前記モデル設定部における演算の開始時点から現時点までの前記電流センサの検出値を積算することにより前記開始時点から前記現時点までの間に前記二次電池に出入りした電荷量の収支の推定値を算出する電荷量収支演算部と、
    前記開始時点における前記電圧センサの検出値と前記SOC−OCVモデルとを用いることによって、前記開始時点における前記充電率の推定値を算出する初期SOC演算部と、
    前記開始時点における前記充電率の推定値と前記電荷量の収支の推定値とを用いることによって前記現時点における前記充電率の推定値を算出する充電率推定部と、をさらに備えることを特徴とする請求項1から7の何れかに記載の二次電池の状態推定装置。
  9. 二次電池の端子電圧を検出する電圧センサの検出値、及び前記二次電池を流れる電流を検出する電流センサの検出値を用いることによって前記二次電池の状態を推定する二次電池の状態推定方法であって、
    前記電圧センサの検出値と、前記電流センサの検出値と、前記二次電池における開放電圧と充電率との関係を規定したSOC−OCVモデルと、を用いることにより、前記二次電池の正極容量維持率及び負極容量維持率、前記二次電池の組成相対ずれ容量、前記二次電池の正極及び負極の何れかにおける劣化生成物量、及び前記充電率の推定値を算出するパラメータ推定ステップと、
    前記正極容量維持率、前記負極容量維持率、前記組成相対ずれ容量、及び前記劣化生成物量の推定値を用いることによって前記SOC−OCVモデルを設定するモデル設定ステップと、を交互に行うことを特徴とする二次電池の状態推定方法。
JP2016229177A 2016-11-25 2016-11-25 二次電池の状態推定装置及び二次電池の状態推定方法 Expired - Fee Related JP6688207B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016229177A JP6688207B2 (ja) 2016-11-25 2016-11-25 二次電池の状態推定装置及び二次電池の状態推定方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016229177A JP6688207B2 (ja) 2016-11-25 2016-11-25 二次電池の状態推定装置及び二次電池の状態推定方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2018084549A true JP2018084549A (ja) 2018-05-31
JP6688207B2 JP6688207B2 (ja) 2020-04-28

Family

ID=62237644

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016229177A Expired - Fee Related JP6688207B2 (ja) 2016-11-25 2016-11-25 二次電池の状態推定装置及び二次電池の状態推定方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6688207B2 (ja)

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN111251940A (zh) * 2019-01-23 2020-06-09 重庆金康新能源汽车有限公司 管理电池单元劣化的系统和方法
JP2020109367A (ja) * 2019-01-04 2020-07-16 株式会社東芝 内部状態推定装置および方法、ならびに電池制御装置
CN112114255A (zh) * 2020-09-18 2020-12-22 中国计量大学 一种基于联合集合卡尔曼滤波的锂电池荷电状态估计方法
CN113777498A (zh) * 2020-02-28 2021-12-10 株式会社电装 信息计算系统
CN113985298A (zh) * 2021-10-15 2022-01-28 江南大学 一种基于二次更新滤波的电池化成充放状态估计方法
DE102020211764A1 (de) 2020-09-21 2022-03-24 Robert Bosch Gesellschaft mit beschränkter Haftung Elektrischer Energiespeicher, Vorrichtung und Verfahren zur Bestimmung eines Ladezustands eines elektrischen Energiespeichers
WO2023106166A1 (ja) * 2021-12-07 2023-06-15 株式会社レゾナック 解析装置、予測装置、解析方法、予測方法及びプログラム

Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009070778A (ja) * 2007-09-18 2009-04-02 Toyota Motor Corp 二次電池の状態検出装置
US20120105069A1 (en) * 2010-11-01 2012-05-03 Gm Global Technology Operations, Inc. Method and apparatus for assessing battery state of health
JP2014032825A (ja) * 2012-08-02 2014-02-20 Toyota Motor Corp 二次電池の状態推定装置
JP2014032826A (ja) * 2012-08-02 2014-02-20 Toyota Motor Corp 二次電池の状態推定装置
JP2014126411A (ja) * 2012-12-25 2014-07-07 Toyota Motor Corp 二次電池の状態推定装置及び制御装置
JP2015081800A (ja) * 2013-10-21 2015-04-27 カルソニックカンセイ株式会社 バッテリのパラメータ推定装置及びパラメータ推定方法

Patent Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009070778A (ja) * 2007-09-18 2009-04-02 Toyota Motor Corp 二次電池の状態検出装置
US20120105069A1 (en) * 2010-11-01 2012-05-03 Gm Global Technology Operations, Inc. Method and apparatus for assessing battery state of health
JP2014032825A (ja) * 2012-08-02 2014-02-20 Toyota Motor Corp 二次電池の状態推定装置
JP2014032826A (ja) * 2012-08-02 2014-02-20 Toyota Motor Corp 二次電池の状態推定装置
JP2014126411A (ja) * 2012-12-25 2014-07-07 Toyota Motor Corp 二次電池の状態推定装置及び制御装置
JP2015081800A (ja) * 2013-10-21 2015-04-27 カルソニックカンセイ株式会社 バッテリのパラメータ推定装置及びパラメータ推定方法

Cited By (11)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2020109367A (ja) * 2019-01-04 2020-07-16 株式会社東芝 内部状態推定装置および方法、ならびに電池制御装置
JP7039499B2 (ja) 2019-01-04 2022-03-22 株式会社東芝 内部状態推定装置および方法、ならびに電池制御装置
CN111251940A (zh) * 2019-01-23 2020-06-09 重庆金康新能源汽车有限公司 管理电池单元劣化的系统和方法
CN113777498A (zh) * 2020-02-28 2021-12-10 株式会社电装 信息计算系统
CN112114255A (zh) * 2020-09-18 2020-12-22 中国计量大学 一种基于联合集合卡尔曼滤波的锂电池荷电状态估计方法
CN112114255B (zh) * 2020-09-18 2023-02-28 中国计量大学 一种基于联合集合卡尔曼滤波的锂电池荷电状态估计方法
DE102020211764A1 (de) 2020-09-21 2022-03-24 Robert Bosch Gesellschaft mit beschränkter Haftung Elektrischer Energiespeicher, Vorrichtung und Verfahren zur Bestimmung eines Ladezustands eines elektrischen Energiespeichers
CN113985298A (zh) * 2021-10-15 2022-01-28 江南大学 一种基于二次更新滤波的电池化成充放状态估计方法
CN113985298B (zh) * 2021-10-15 2022-07-05 江南大学 一种基于二次更新滤波的电池化成充放状态估计方法
WO2023106166A1 (ja) * 2021-12-07 2023-06-15 株式会社レゾナック 解析装置、予測装置、解析方法、予測方法及びプログラム
JP7298802B1 (ja) * 2021-12-07 2023-06-27 株式会社レゾナック 解析装置、予測装置、解析方法、予測方法及びプログラム

Also Published As

Publication number Publication date
JP6688207B2 (ja) 2020-04-28

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6688207B2 (ja) 二次電池の状態推定装置及び二次電池の状態推定方法
JP6789240B2 (ja) リチウム硫黄電池の健康状態および充電状態を決定するための方法および装置
EP2963434B1 (en) Battery state estimation method and system using dual extended kalman filter, and recording medium for performing the method
US10890625B2 (en) Battery state estimating device
EP2848952B1 (en) Device for estimating state of charge of battery
Zhang et al. An integrated approach for real-time model-based state-of-charge estimation of lithium-ion batteries
Nikolian et al. Complete cell-level lithium-ion electrical ECM model for different chemistries (NMC, LFP, LTO) and temperatures (− 5 C to 45 C)–Optimized modelling techniques
US10408880B2 (en) Techniques for robust battery state estimation
CN105319508B (zh) 用于电池荷电状态估计的方法和系统
EP2615468B1 (en) Parameter estimation device
JP5319854B1 (ja) パラメータ推定装置
Azis et al. State of charge (SoC) and state of health (SoH) estimation of lithium-ion battery using dual extended kalman filter based on polynomial battery model
US20150355283A1 (en) Method and System for Estimating Battery Model Parameters to Update Battery Models Used for Controls
Zhang et al. State-of-charge estimation based on microcontroller-implemented sigma-point Kalman filter in a modular cell balancing system for Lithium-Ion battery packs
JP6711981B2 (ja) バッテリのパラメータ推定装置
US20220365139A1 (en) Method for estimating an operating parameter of a battery unit
WO2008099298A1 (en) Method and apparatus for determination of the state-of-charge (soc) of a rechargeable battery
JP6455914B2 (ja) 蓄電残量推定装置、蓄電池の蓄電残量を推定する方法、及びコンピュータプログラム
Chaoui et al. Accurate state of charge (SOC) estimation for batteries using a reduced-order observer
JP2012225713A (ja) 充電率推定装置
WO2018025350A1 (ja) 推定装置、推定プログラムおよび充電制御装置
JP2013208034A (ja) 開回路電圧推定装置
Rahmoun et al. SOC estimation for Li-Ion batteries based on equivalent circuit diagrams and the application of a Kalman filter
Murawwat et al. State of charge estimation and error analysis of lithium-ion batteries for electric vehicles using Kalman filter and deep neural network
Manthopoulos et al. A review and comparison of lithium-ion battery SOC estimation methods for electric vehicles

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20181127

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20191001

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20190930

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20191129

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20200108

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20200309

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20200324

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20200403

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6688207

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees