JP2018083824A - ラジカル機能液およびその製造方法並びにラジカル機能液の使用方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】プラズマガス中のラジカルを溶媒に溶解させて、大気中のラジカルの活性の寿命より長く、かつ、そのラジカルの活性が所望の時間で失われるようにコントロールしたラジカル機能液の提供およびこのラジカル機能液の製造方法、並びに、このラジカル機能液の使用方法を提供する。
【解決手段】所定時間で機能液としての機能を失うようにプラズマガスに起因するラジカルを溶媒に溶解した溶液であるラジカル機能液およびこの製造方法、並びにこのラジカル機能液の使用方法。このラジカル機能液は、大気中におけるラジカルの活性の寿命と比較して、溶解したラジカルは長い時間活性状態を保持しており、高い機能性、例えば、殺菌作用や高い親和性を発現することが可能。
【選択図】図2
【解決手段】所定時間で機能液としての機能を失うようにプラズマガスに起因するラジカルを溶媒に溶解した溶液であるラジカル機能液およびこの製造方法、並びにこのラジカル機能液の使用方法。このラジカル機能液は、大気中におけるラジカルの活性の寿命と比較して、溶解したラジカルは長い時間活性状態を保持しており、高い機能性、例えば、殺菌作用や高い親和性を発現することが可能。
【選択図】図2
Description
本発明は、所定時間で機能液としての機能を失うようにプラズマもしくはプラズマを含むガス(以下、これらを合わせてプラズマガスと称する。)に起因するラジカルが溶解されたラジカル機能液およびこのラジカル機能液の製造方法並びにこのラジカル機能液の使用方法に関する。
従来、プラズマガスを利用して対象物を殺菌・消毒する方法が広く知られている。このような方法においては、プラズマ生成用ガスとしての酸素ガスや水素ガスまたは水蒸気などを放電領域に導入し、生成したプラズマガスを対象物に直接照射することによって、対象物の表面に付着した細菌や微生物にプラズマガス中のラジカルを接触させて殺菌するようにされている。
そして、近年、プラズマガス中のラジカルによって、さらに活性種が生成されることを用いて、機能水を製造することが考えられている。
特許文献1には、超純水、イオン交換水、精製水もしくは蒸留水などに対して、希ガスから生成したプラズマガスを照射して、液中の活性酸素量を増大させた機能水の製造方法が記載されている。
また、特許文献2には、液中にプラズマを発生させて、当該液体自体を励起させて酸性水を製造する方法が記載されている。
同様に、特許文献3には、水槽の水面上の空中と水槽内とに対向する電極を配置し、当該対向する電極に高電圧を印加して、空中に配置された電極と水面との間でプラズマ放電を生じさせ、水槽内に貯留された水をオゾン濃度が高いプラズマ放電処理水とすることが記載されている。
特許文献1における機能水においては、製造後、30分を経過してもpH値が殆ど変化せず、弱酸性の性質を保持していることが記載されており、特許文献2における酸性水においては、製造後、1週間を経過しても高い酸性を維持していることが記載されている。
そして、特許文献3におけるプラズマ放電処理水においては、作成から約1ヶ月以上に亘って、水中にオゾンを高い濃度のまま溶解させておくことが記載されている。
プラズマガスは活性が高く、殺菌・消毒などの様々な処理に有効である反面、プラズマガス中のラジカルは寿命が非常に短く、例えば、非特許文献1の表1に記載されているように、一重項酸素ラジカルでは10−5秒、OHラジカルでは10−9秒ほどでその効力を失ってしまい、プラズマガスが生成される場所から対象物までの距離が長いと、プラズマガス中のラジカルの効果が低下して、対象物への処理が不十分となったり、所望の効果が得られるまで長い処理時間を必要とするなどの課題を有していた。
また、対象物へのプラズマガスの照射作業を人の手で行う場合には、周囲に放出されたプラズマガスを呼吸にともなって吸気することになり、化学的活性力が著しく高いラジカル類に人体が暴露されることは、健康上好ましいことではない。特に、プラズマガスにオゾンなどの毒性がある物質を含む場合には、人体への影響が懸念される。またこのとき、プラズマガスが空気と接触することで、新たなラジカル類や、そのラジカル類によって副次的に生成される物質が毒性を有している可能性もあり、これらのラジカル類や副次的に生成される物質に人体が暴露されることも好ましくない。この問題は、作業を行う雰囲気をコントロールすることで解消することも可能であるが、コスト的にも現実的ではない。
特許文献1の機能水、特許文献2の酸性水および特許文献3のプラズマ放電処理水は、長時間に亘ってその性質が失われないように、対象の液体を大きく化学変化させているため、廃水の後処理を必要とする場合がある。
さらに、特許文献3のプラズマ放電処理水においては、長期間に亘って、液中にオゾンを高濃度で保持しているので、例えば、直接人体に触れる医療器具などの殺菌に用いた場合には、オゾンを落とすための仕上げ洗浄や乾燥作業などを必要としていた。
本発明は、上記課題を解決するため、プラズマガス中のラジカルを溶媒に溶解させて、大気中のラジカルの活性の寿命より長く、かつ、そのラジカルの活性が所望の時間で失われるようにコントロールしたラジカル機能液の提供およびこのラジカル機能液の製造方法、並びに、このラジカル機能液の使用方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の第1態様のラジカル機能液の製造方法は、溶媒に対してプラズマガスを接触させてプラズマガスに起因するラジカルを所定時間で処理機能を失うように調整して溶解させたラジカル機能液の製造方法であって、超純水、イオン交換水、精製水、蒸留水、アルコール類、塩素系クリーニング液、テトラクロロエチレン、クリーニングソルベントまたは切削油剤から選択される溶媒中に対して、プラズマガスを空気に触れさせることなく気泡状態で前記溶媒中に導入して接触させるバブリング法によって前記プラズマガスに起因するラジカルを前記溶媒に溶解させるとともに、前記溶媒に対するプラズマガスの接触時間を制御することにより、前記溶媒中のラジカルの濃度を制御して、前記ラジカル機能液が処理機能を失うまでの時間を調整することを特徴とする。
このような、本発明の第1態様のラジカル機能液の製造方法によれば、大気中においてプラズマガス中の有用なラジカルガスが一秒以下から数秒の間で活性を失ってしまうのに対して、処理機能を失うまでの時間を調整して、液中のラジカルの活性が所望の時間保持されているラジカル機能液を提供することができる。また、本発明の第1態様のラジカル機能液の製造方法によって得られたラジカル機能液は液体であるため、プラズマガスのように作業中に吸気する心配が無く、極めて取り扱いが用意である。さらに、所定時間を経過すると処理機能を失うようにされているので、ラジカル機能液を使用した後に排水処理や仕上げ洗浄などを行う必要が無く、高い安全性の実現と低兼化を可能とする。
本発明の第2態様のラジカル機能液の製造方法は、前記溶媒としてpH5.91のイオン交換水を用いることを特徴とする。
このような、本発明の第2態様のラジカル機能液の製造方法によれば、大気中におけるプラズマガス中のラジカルと比較して、ラジカルの寿命を長くすることができるので、ラジカルの効果が失われるまでの所定時間の間、効果的な処理効果を発揮できるラジカル機能液を提供することができる。
本発明の第3態様のラジカル機能液の製造方法は、前記溶媒に対して、ラジカル調整材としての二酸化炭素を予め溶解させて処理機能を失うまでの時間を短縮させるように調整することを特徴とする。
このような、本発明の第3態様のラジカル機能液の製造方法によれば、処理効果の持続時間をより詳細に制御したラジカル機能液を提供することを可能とする。
本発明の第1態様のラジカル機能液の使用方法は、本発明の第1態様乃至第3態様のラジカル機能液の製造方法により得たラジカル機能液を対象物に接触させることを特徴とする。また、本発明の第2態様のラジカル機能液の使用方法は、前記ラジカル機能液を対象物に接触させる方法として、塗布、浸漬、噴霧、噴射または混合から選択して行うことを特徴とする。
このような、本発明の第1態様および第2態様のラジカル機能液の使用方法によれば、効果的に対象物の洗浄、殺菌・消毒、消臭、表面改質、親水化・撥水化処理などを行うことを可能とする。
本発明のラジカル機能液およびこのラジカル機能液の製造方法によれば、プラズマガス中のラジカルを溶媒に溶解させて、大気中のラジカルの活性の寿命より長く、かつ、そのラジカルの活性が所望の時間で失われるようにコントロールされた機能液を提供することを可能とする。
また、本発明のラジカル機能液の使用方法によれば、効率よく対象物の洗浄、殺菌・消毒、消臭、表面改質、親水化・撥水化処理などを行うことを可能とする。
以下に、本発明のラジカル機能液の具体的な実施形態について説明する。
本発明のラジカル機能液は、所定時間で機能液としての機能を失うようにプラズマガスに起因するラジカルを溶媒中に溶解させた溶液とされており、溶媒としては、超純水、イオン交換水、精製水および蒸留水などの水、アルコール類、塩素系クリーニング液であるテトラクロロエチレン、石油系クリーニング液であるクリーニングソルベント、切削油剤などを用いることができる。
また、本発明のラジカル機能液は、溶液中に溶解しているラジカルが、プラズマガス中に含まれるラジカルと、溶媒がプラズマガスによって分解されたことによって生成されたラジカルとからなる。
本発明においてラジカルとは、不対電子をもつ原子、分子またはイオン、その他化学的活性力を持つ分子のことを示す。そして、プラズマガス中に含まれるラジカルは、プラズマガスを生成するためのプラズマ生成用ガスの種類よって異なり、例えば、プラズマ生成用ガスの種類とそのプラズマ生成用ガスから生成されたプラズマガスに含まれるラジカルの種類は以下のものが挙げられる。
酸素ガス:酸素ラジカル類
水素ガス:水素ラジカル類
窒素ガス:窒素ラジカル類
窒素ガス+酸素ガス:窒素酸化物ラジカル類
酸素ガス+水蒸気:酸素ラジカル類、過酸化水素ラジカル、ヒドロキシラジカル、スーパーオキシドなど
酸素ガス:酸素ラジカル類
水素ガス:水素ラジカル類
窒素ガス:窒素ラジカル類
窒素ガス+酸素ガス:窒素酸化物ラジカル類
酸素ガス+水蒸気:酸素ラジカル類、過酸化水素ラジカル、ヒドロキシラジカル、スーパーオキシドなど
また、溶媒がプラズマガスによって分解されたことによって生じるラジカルとは、例えば溶媒を水、プラズマ生成用ガスを酸素とした場合には、主に、一重項酸素ラジカルとヒドロキシラジカル、過酸化水素ラジカルとが生じる。また、溶媒を水、プラズマ生成用ガスを窒素とした場合には、ヒドロキシラジカルと水素ラジカルが生じる。さらに、溶媒を水、プラズマ生成用ガスをアルゴンガスとした場合には、水素ラジカルが生じる。
なお、プラズマガスは、1種類のプラズマ生成用ガスから生成されたものや、複数種類を混合したプラズマ生成用ガスから生成されたものとすることができ、ラジカル機能液の用途に応じて、プラズマ生成用ガスの種類、その組み合わせ、混合比率などを適宜選択することが好ましい。
このような、本発明のラジカル機能液においては、大気中におけるラジカルの活性の寿命と比較して、溶解したラジカルは長い時間活性状態を保持しており、高い機能性、例えば、殺菌作用や高い親和性を発現することを可能とする。
より具体的には、水を溶媒とした本発明のラジカル機能液は、プラズマガス中から溶解したラジカルおよび溶媒としての水がプラズマガスによって分解されたことによって生じたラジカルによってによって殺菌作用を有する機能液とされている。このような水を溶媒とした本発明のラジカル機能液の用途としては、例えば、原液または希釈液を冷却水やバラスト水とすることによって、水中の微生物や細菌を殺菌して水の腐敗や微生物による水環境の汚染を防止することができる。また、直接人体に触れるために安全性の確保が必要不可欠な医療器具や生鮮食品の洗浄水として適用することができる。特に、溶媒として水を用いた場合には、所定時間で機能液としての効果が失われ、その性質はほぼ元の水に回帰するので、残留薬物の問題や使用後の廃水処理の問題が生じず、食料品のように人体に直接影響を及ぼすものの殺菌洗浄に最適である。その他にも、トイレの洗浄水やお風呂の水に混合することによって、消臭やカビの発生の抑制を図ることができる。さらには、水耕栽培の栽培液の希釈水として用いたり、消毒薬や注射液を希釈するための精製水の代替水として用いることができる。
また、水を溶媒とした本発明のラジカル機能液に対して、界面活性剤やアルコールを混合して表面張力を小さくすることで、物体との親和性を向上させたラジカル機能液として、工業用の洗浄水などに用いることができる。
アルコールを溶媒とした本発明のラジカル機能液は、プラズマガス中から溶解したラジカルおよびプラズマガスによって溶媒としてのアルコールが分解されることによって生じたラジカルによって溶媒としてのアルコールよりも高い殺菌作用を有する機能液とされている。このようなアルコールを溶媒とした本発明のラジカル機能液の用途としては、傷口や医療器具などの高い殺菌消毒が求められる部分の洗浄に用いることができる。
また、塩素系クリーニング液であるテトラクロロエチレンや石油系クリーニング液であるクリーニングソルベントを溶媒とした本発明のラジカル機能液は、プラズマガス中から溶解したラジカルによって殺菌作用を有するとともに、溶媒としての塩素系または石油系のクリーニング液が分解されたことによって生じたラジカルによって高い洗浄能力と親水性を有する機能液とされている。このようなクリーニング液を溶媒とした本発明のラジカル機能液をクリーニングに用いることにより、高い洗浄効果と水溶性の汚れの洗浄を行うことができる。
この他にも、例えば、切削油剤を溶媒とした本発明のラジカル機能液とすることにより、プラズマガス中から溶解したラジカルおよび/または溶媒としての切削油剤が分解されたことによって生じたラジカルによって、溶媒へ分散性が向上するとともに、腐敗を防止することができる。
本発明のラジカル機能液の使用方法は、本発明のラジカル機能液を対象物に接触させて行うようにされており、その接触方法としては塗布、浸漬、噴霧、噴射、混合などを行うことが好ましい。
これにより、対象物の洗浄、殺菌・消毒、消臭、表面改質、親水化・撥水化処理などを簡便に行うことを可能とする。特に、本発明のラジカル機能液を用いて洗浄を行う場合には、噴霧または噴射して対象物に接触させることが好ましい。対象物に対して、噴霧または噴射することにより、本発明のラジカル機能液をより効果的に対象物の細部に亘って行き渡らせることができるので、高い殺菌消毒効果を得ることができる。また、水を溶媒とした本発明のラジカル機能液を空気中に噴霧することによって、殺菌消毒効果を有するエアカーテンとして利用することができる。
このような、本発明のラジカル機能液の製造方法は、溶媒に対してプラズマガスを接触させてプラズマガスに起因するラジカルを溶媒中に溶解させたラジカル機能液を製造するラジカル機能液の製造方法であって、特に、溶媒に対するプラズマガスの接触時間を制御して、溶媒中のラジカルの濃度を調整することによってラジカル機能液の機能液としての効果の持続時間が所定の時間となるように制御するようにされている。
なお、溶媒に対してプラズマガスを接触させる方法はいかなるものでもよく、例えば、貯留されている溶媒中に気泡状のプラズマガスを所定時間バブリングさせて溶媒にプラズマガスを接触させるバブリング法、貯留されている溶媒の水面にプラズマガスを照射して溶媒にプラズマガスを接触させる照射法、または、ベンチュリー効果を利用して霧吹きの要領でプラズマガスの流れ内に溶媒を引き込んで溶媒にプラズマガスを接触させるベンチュリー法などを用いることができる。
さらには、溶媒に対してプラズマガスに起因するラジカルを溶解させた後に、ラジカル調整剤としてのpH調整剤、ラジカル安定剤またはラジカル抑制剤などを溶解してラジカル機能液の機能液としての効果の持続時間を制御するようにしてもよい。
このような、本発明のラジカル機能液の製造方法とすることにより、所望の時間の間、機能液としての効果が持続可能なラジカル機能液を容易に製造することができる。また、ラジカル調整剤としてのpH調整剤、ラジカル安定剤またはラジカル抑制剤などを溶解させることで、機能液として効果の持続時間をより細かく制御することを可能とする。
以下に、本発明のラジカル機能液の実施例について説明する。
<実施例1>
実施例1においては、溶媒としてイオン交換水を用い、プラズマ生成用ガスとしてアルゴンガス、窒素ガス、酸素ガス、二酸化炭素ガスまたは空気を用いて生成したプラズマガスを用いて製造したラジカル機能液のpH値およびラジカル機能液中のラジカルの種類とその濃度を検証するべく実験を行った。
実施例1においては、溶媒としてイオン交換水を用い、プラズマ生成用ガスとしてアルゴンガス、窒素ガス、酸素ガス、二酸化炭素ガスまたは空気を用いて生成したプラズマガスを用いて製造したラジカル機能液のpH値およびラジカル機能液中のラジカルの種類とその濃度を検証するべく実験を行った。
本実施例におけるラジカル機能液は、図1に示すラジカル機能液製造装置を用いて作製した。本実施例において用いたラジカル機能液製造装置は、図1(a)に示すように、溶媒を貯留するための貯留部Tと、貯留部Tの底部に接続され溶媒内に所望のガスを導入するガス導入部Iと、プラズマ生成用ガスに放電を生じさせてプラズマガスを発生させるプラズマ源Pとを備えている。貯留部Tとガス導入部Iとの接続部分には、貯留部T内に貯留されている溶媒がガス導入部Iに侵入するのを防ぐとともに、ガス導入部I側からのガスを貯留部T内に気泡状態で導入するための複数の通気孔Faが形成された仕切り板Fが設けられている(図1(b)参照)。なお、本実施例においては、プラズマ源Pとしてマルチガスプラズマジェット(株式会社プラズマコンセプト東京社製)を用い、マルチガスプラズマジェットのプラズマガスの噴射口にガス導入部Iを接続してプラズマガスを溶媒内に導入するようした。本実施例のラジカル機能液製造装置においては、プラズマ源Pからプラズマガスをガス導入部Iを介して貯留部Tに導入し、溶媒中に気泡状のプラズマガスを接触させるバブリング法によって溶液中にプラズマガスに起因するラジカルを溶解させてラジカル機能液を作製するようにされている。
本実施例におけるラジカル機能液のサンプルの作製は、貯留部Tに200mLのイオン交換水を貯留し、プラズマ生成用ガスをアルゴンガス、窒素ガス、酸素ガス、二酸化炭素ガスまたは空気として生成したプラズマガスを3L/minの流量にて10分間導入して行った。また、本発明のラジカル機能液のpH値について検討するため、比較用のサンプルとして、溶媒に単にプラズマガスではないガスを導入したガス導入溶液を作製した。ガス導入溶液のサンプルの作製は、貯留部Tに200mLのイオン交換水を貯留し、ガス導入部Iからアルゴンガス、窒素ガス、酸素ガス、二酸化炭素ガスまたは空気をそれぞれ10分間導入して行った。
作製した各ラジカル機能液および各ガス導入溶液についてpH値の測定を行った。得られた結果を表1に示す。
また、各ラジカル機能液中のラジカル濃度の定量を行うべく、作製した各ラジカル機能液に対してラジカルの測定を補助するためのラジカル補足剤をそれぞれ添加し、電子スピン共鳴法によって定量を行った。なお、ラジカルの種類は、ヒドロキシラジカル(HO・)、水素ラジカル(H・)、一重項酸素ラジカル(1O2)、過酸化水素ラジカル(H2O2)および一酸化窒素ラジカル(NO・)について測定した。得られた結果を図2に示す。
pH値の測定結果は、表1に示すように、全てのガスの種類について、ガスの導入後、イオン交換水のpH値と比較してわずかに変化が認められた。また、生成用ガスとプラズマガスとのpH値は、いずれのガスの種類においても、ほぼ同等の値となった。
また、各ラジカル機能液中の各ラジカルの濃度は、図2に示すように、プラズマ生成用ガスをアルゴンガスとして生成したプラズマガスを導入して作製したラジカル機能液についてはHO・濃度が83.5μmol/L,H・濃度が13.6μmol/L,1O2濃度が10.4μmol/L,H2O2濃度が209μmol/L,NO・濃度が0.5μmol/Lであり、プラズマ生成用ガスを窒素ガスとして生成したプラズマガスを導入して作製したラジカル機能液についてはHO・濃度が134μmol/L,H・濃度が10.7μmol/L,1O2濃度が33.5μmol/L,H2O2濃度が292μmol/L,NO・濃度が0μmol/Lであり、プラズマ生成用ガスを酸素ガスとして生成したプラズマガスを導入して作製したラジカル機能液についてはHO・濃度が32.4μmol/L,H・濃度が0μmol/L,1O2濃度が93.9μmol/L,H2O2濃度が258μmol/L,NO・濃度が0μmol/Lであり、プラズマ生成用ガスを二酸化炭素ガスとして生成したプラズマガスを導入して作製したラジカル機能液についてはHO・濃度が284μmol/L,H・濃度が0μmol/L,1O2濃度が208μmol/L,H2O2濃度が529μmol/L,NO・濃度が0μmol/Lであり、そして、プラズマ生成用ガスを空気として生成したプラズマガスを導入して作製したラジカル機能液についてはHO・濃度が1.87μmol/L,H・濃度が0μmol/L,1O2濃度が4.26μmol/L,H2O2濃度が47.8μmol/L,NO・濃度が1.59μmol/Lであった。
表1および図2に示した結果から、プラズマガスをイオン交換水に接触させることにより、イオン交換水中にプラズマガスに起因するラジカルが溶解することが明らかとなった。また、本発明のラジカル機能液は、特許文献1の機能水や特許文献2の酸性水などと比較して、溶媒としてのイオン交換水からほとんどpH値の変化がないことが明らかとなった。
<実施例2>
実施例2においては、本発明のラジカル機能液とすることによるラジカルの寿命の検討と、溶媒中にラジカル調整剤としての二酸化炭素またはアンモニアを添加することによるラジカル濃度の変化について検討した。
実施例2においては、本発明のラジカル機能液とすることによるラジカルの寿命の検討と、溶媒中にラジカル調整剤としての二酸化炭素またはアンモニアを添加することによるラジカル濃度の変化について検討した。
本実施例においては、溶媒として、イオン交換水、イオン交換水に対してラジカル調整剤としての二酸化炭素ガスを飽和状態まで溶解させた炭酸水およびイオン交換水に対してラジカル調整剤としてのアンモニアを添加した1%濃度のアンモニア水を用いた。ラジカル機能液の作製には、実施例1に記載のラジカル機能液製造装置を用いて、イオン交換水、炭酸水またはアンモニア水200mLに対して、プラズマ生成用ガスを酸素ガスとして生成したプラズマガスを3L/minの流量にて10分間導入して行った。
作製した各ラジカル機能液について、作製から経過時間0分、10分、20分、30分、40分、60分、120分のラジカル機能液に対してラジカル補足剤としての2,2,5,5,−テトラメチル−3−ピロリン−3−カルボキサイド(TPC)をそれぞれ添加し、電子スピン共鳴法にて一重項酸素ラジカルの濃度の定量を行った。得られた定量結果を図3に示す。なお、図3において、□は溶媒としてイオン交換水を用いたラジカル機能液の結果、〇は溶媒として炭酸水を用いたラジカル機能液の結果、×は溶媒としてアンモニア水を用いたラジカル機能液の結果をプロットしたものである。
本実施例においては、図3に示すように、溶媒をイオン交換水としたラジカル機能液については、作製してから経過時間20分までのものは約94μmol/Lを維持しており、その後減少を開始して、経過時間120分で0μmol/Lとなった。溶媒を炭酸水としたラジカル機能液については、作製してから経過時間0分、すなわち、作製直後には93.9μmol/Lの一重項酸素ラジカルを有していたが、経過時間10分には0μmol/Lとなった。溶媒をアンモニア水としたラジカル機能液については、作製直後から一重項酸素ラジカルの濃度は0μmol/Lであった。
この結果から、大気中におけるプラズマガス中の一重項酸素ラジカルの寿命が10−5秒であるのに対して、イオン交換水または炭酸水を溶媒としたラジカル機能液とすることにより一重項酸素ラジカルの寿命を大幅に伸ばすことができることが明らかとなった。また、イオン交換水を溶媒として用いることにより、10分間のバブリングによって約40分間機能液としての効果が得られるラジカル機能液を作製可能であることが明らかとなった。
また、イオン交換水にラジカル調整剤としての二酸化炭素もしくはアンモニアなどを添加することにより、ラジカル機能液中のラジカル濃度およびそのラジカルの寿命を低下させることができることが明らかとなった。このことから、二酸化炭素やアンモニアなどのラジカル調整剤の種類やそその添加量などを適宜変化することにより、ラジカル機能液の機能液として持続時間をより細かく制御することができると考えられる。このような、ラジカルの挙動は、一重項酸素ラジカルに限らず、その他のラジカルについても同様に、一定時間が経過するとラジカルが失われるので、当該ラジカルの寿命を例えば、ラジカル調整剤としてのpH調整剤、ラジカル安定剤、ラジカル抑制剤などを用いることによって短縮または延長して、機能液としての効果の持続時間を制御することができると考えられる。
<実施例3>
実施例3においては、溶媒としてイオン交換水を用い、プラズマ生成用ガスとして酸素ガスを用いて生成したプラズマガスを接触させて製造したラジカル機能液の作製からの時間経過とその際の殺菌効果との関係について検討した。
実施例3においては、溶媒としてイオン交換水を用い、プラズマ生成用ガスとして酸素ガスを用いて生成したプラズマガスを接触させて製造したラジカル機能液の作製からの時間経過とその際の殺菌効果との関係について検討した。
本実施例においては、実施例1に記載のラジカル機能液製造装置を用いてラジカル機能液を作製した。200mLのイオン交換水に対して、プラズマ生成用ガスを酸素ガスとして生成したプラズマガスを3L/minの流量で10分間バブリングしてラジカル機能液を作製した。
ラジカル機能液の殺菌効果を検討するために、大腸菌を含んだ菌液10μLに対して、作製してから経過時間0分、5分、10分、20分、30分、40分、60分、120分のラジカル機能液990μLを混合したものを、10μL分取して寒天培地に塗布して37℃で16時間培養し、残存菌数をコロニーカウント法にて測定した。なお、大腸菌の初期菌数は、9.6×105CFUであった。得られた結果を図4に示す。
本実施例においては、図4に示すように、作製してから経過時間20分のラジカル機能液では0CFUであったが、その後殺菌効果が低下し始めて、経過時間30分のラジカル機能液で5.7×102CFU、経過時間30分のラジカル機能液で4.3×104CFU、経過時間60分のラジカル機能液で4.3×104CFU、経過時間120分のラジカル機能液で9.6×105CFUとなった。
図4の結果から、作製してからの経過時間が短いほど、すなわち、ラジカル機能液中における一重項酸素ラジカルの濃度が高いほど高い殺菌効果が得られ、作製してからの経過時間が長くなって一重項酸素ラジカルが失われるとラジカル機能液の殺菌効果も失われることが明らかとなった。
以上のことから、本発明のラジカル機能液の製造方法によれば、溶媒に対するプラズマガスの接触時間を制御してラジカル機能液中のラジカル濃度を調整し、ラジカルが失われるまでの時間を制御することによって、機能液としての効果の持続時間が所定時間とされたラジカル機能液を得ることができる。また、この方法によって得られたラジカル機能液は、大気中におけるプラズマガス中のラジカルと比較して、長寿命なラジカルとすることができるので、ラジカルの効果が失われるまでの所定時間、例えば、実施例2においては、作製から経過時間20分間までは、効果的な殺菌作用を発現することができる。また、所定時間が経過した後には、ラジカルの効果が失われてもとの溶媒、例えば、実施例2においては、水に戻るので、廃水処理などの必要がなく、高い安全性と低兼化を実現することが可能である。
本発明のラジカル機能液およびその製造方法並びに、ラジカル機能液を用いた洗浄方法は、本実施形態および実施例に限定されるものではなく発明の特徴を損なわない範囲において種々の変更が可能であり、例えば、本実施形態においては、溶媒へのプラズマガスの接触時間を制御して、ラジカル機能液の機能液としての効果の持続時間を制御するようにしているが、ラジカル機能液のラジカルの濃度を直接もしくは副次的に測定して、溶液中のラジカルの濃度を制御して機能液としての効果の持続時間を制御するようにしたり、ラジカルを高濃度に含有するラジカル機能液の原液を作製するとともに、ラジカルが所定の濃度となるまで当該原液を希釈する制御を行って、機能液としての効果の持続時間を制御するようにしてもよい。
また、ラジカル機能液の製造装置は、実施例1に示すバブリング法を用いたもの以外にも、上述の照射法やベンチュリー法を用いた装置としてもよい。これらの方法以外にも、図5に示すように、溶媒を貯留する貯留槽Tと、貯留槽Tに貯留された溶媒内において、溶媒の水面すれすれから貯留槽Tの底面に向かって垂直に設けられたパイプAと、パイプA内に図5において破線で示すような水面から深さ方向への流れを形成する調流部Bと、パイプAの水面付近の開口部Aaにプラズマガスを噴射するプラズマ源Pとを備え、破線で示した調流部Bによって形成される溶媒の流れによって、プラズマガスをパイプAの水面方向の開口部Aaから水底方向の開口部Abに流して、プラズマガスと溶媒とを混合してラジカル機能液を製造するようにしてもよい。このとき、調流部BによってパイプA内に渦を形成するように流れを形成することにより、プラズマガスが渦状でパイプAを流れるので溶媒との接触面積が大きくなるとともに、貯留部Tにおける深さ方向に流すことで、水圧が上昇し、溶媒中へのラジカルの溶解度を高くすることができる。このため、パイプAの開口部Abの深さ方向の位置を貯留槽T内において制御してラジカル機能液中のラジカル濃度を調整し、その結果、機能液としての効果の持続時間を制御するようにすることができる。さらに、貯留部Tに溶媒を連続的に投入するとともに、貯留部Tの一部から作製されたラジカル機能液を排出することで、連続的にラジカル機能液を製造することができる。
T 貯留部
I プラズマガス導入部
F 仕切り板
Fa 通気孔
P プラズマ源
A パイプ
Aa,Ab 開口部
B 調流部
I プラズマガス導入部
F 仕切り板
Fa 通気孔
P プラズマ源
A パイプ
Aa,Ab 開口部
B 調流部
Claims (1)
- 本願明細書に記載の発明。
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JP2017250496A JP2018083824A (ja) | 2017-12-27 | 2017-12-27 | ラジカル機能液およびその製造方法並びにラジカル機能液の使用方法 |
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Family Applications (1)
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