JP2018083778A - 濾過胞を維持するための組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 緑内障濾過手術法にて形成された濾過胞を、安全性高く、長く維持するため、角膜上皮細胞の増殖を抑制する活性を有さず、かつ線維芽細胞の増殖を抑制する活性を有する化合物を同定する。【解決手段】 コルヒチン、アムサクリン、メベンダゾール、ミトキサントロン、ニクロサミド、ドキソルビシン、グリセオフルビン、チオリダジン、トリクロサン、リセドロナート、ベニジピン、スルファジメトキシン、リトドリン、エナラプリル、ケトプロフェン、葉酸、トラネキサム酸、セフォキシチン、ベザフィブラート、ゾルミトリプタン、アマンタジン、β‐カロチン、カプレオマイシン等が、角膜上皮細胞の増殖を抑制する活性を有さず、かつ線維芽細胞の増殖を抑制する活性を有することを見出し、緑内障濾過手術法にて形成された濾過胞を、安全性高く、長く維持する上で有用であることも明らかにした。【選択図】 なし

Description

本発明は、角膜上皮細胞の増殖を抑制せず、かつ線維芽細胞の増殖を抑制するための組成物に関し、ひいては、緑内障濾過手術において形成された濾過胞を維持するための医薬組成物に関する。
緑内障は網膜神経節細胞が死滅する進行性の病気であり、視神経の萎縮と視野の喪失とを呈する。基本的には現時点では一度喪失した視野は回復させることが困難なため、失明の原因になり得る。
緑内障発症の一つの要因として眼圧(IOP、眼内圧)の亢進が考えられている。また、この亢進は、眼の中を循環する液体である房水の濾過機構の異常によって生じ得るとも考えられている。すなわち、正常な眼においては、房水は毛様体という組織で作られ、虹彩の裏を通過して前房に至り、線維柱帯を経てシュレム管から排出され、眼外の血管へ流れていくという定まった経路で循環している。そして、この房水の循環によって、ほぼ一定の圧力が眼内に生じ、眼球の形状が保たれている(図1の上部 参照)。しかし、線維柱帯における濾過機構等が不十分となった場合には、前房内の房水量が増加し、眼圧の亢進が引き起こされることにより眼球の形状が変化し、ひいては視神経の乳頭の位置に圧が加えられ、網膜神経節細胞が死滅し、その結果、緑内障の発症に至ると考えられている。
そこで、現在の緑内障治療は、眼圧を下げることを目的として、眼圧下降剤による薬物療法やレーザー治療が先ず行われるが、これらの効果が不十分である場合には、緑内障濾過手術等の外科的手術が行われることもある。
緑内障濾過手術は、眼圧をコントロールするための代表的な手術方法であり、当該手術によって房水を眼から排出する代替経路を提供するものである。当該術法においては、例えば、角膜輪部の結膜(所謂、まぶたの内側)と強膜(所謂、白目)と、さらにこれらの分岐部にある線維柱帯を切開した上で、切開した結膜と強膜とを縫合することによって、前房内の房水は、切開した強膜の隙間から結膜の下へと流出することが可能となり、ひいては眼圧が低下することとなる(図1の下部 参照)。
ここで、結膜下に形成され、眼外の結膜下に創傷を通って流出した房水が一時的に溜まる強膜との隙間(結膜の水疱)は、濾過胞(ブレブ)と称されるが、この濾過胞の維持が、緑内障濾過手術の成功の大きな要因となっている。すなわち、濾過胞においては、術後、結膜における線維芽細胞の増殖と活性化により、瘢痕化組織が形成され、房水流出が阻害されることが多い(非特許文献1及び2)。そのため、当該術による眼圧下降効果が2〜3年程度しか維持されない場合が多い。
この点に関し、瘢痕化組織の形成は、前述の通り、主に線維芽細胞の増殖等とそれに伴うコラーゲン蓄積によることから(非特許文献3)、現状ではこれを最小限にするために、結膜又は強膜の切開部にマイトマイシンC(MMC)が塗布されている(MMC併用線維柱帯切除術、非特許文献4及び5)。しかしながら、MMCの濃度を上げても依然として十分な効果を挙げることが出来ない例もある。例えば、線維化のリスファクター(若年、無水晶体眼、血管新生、炎症等)を保有する患者においては、瘢痕化組織の形成に対してMMCは十分な効果が挙げられないこともあることが報告されている(非特許文献6)。また、その細胞傷害性の高さから、他の組織にも障害が及ぼす可能性が高く、特に、MMC併用緑内障濾過手術においては、当該薬剤による角膜上皮細胞の増殖抑制によって、角膜上皮障害が術後に生じてしまうことが問題になっている(非特許文献7)。
そこで、結膜及び強膜において線維芽細胞の増殖を抑制しつつ、他の組織(角膜等)に障害を及ぼさない化合物が求められている。しかしながら、緑内障濾過手術における、そのような化合物を用いた濾過胞を維持するための方法は、未だ確立されていないのが現状である。
Muckley ED.ら、Optom Vis Sci.、2004年、81巻、7号、499〜504ページ Francis BA.ら、Arch Ophthalmol.、2005年、123巻、2号、166〜170ページ Esson DW.ら、Invest Ophthalmol Vis Sci.、2004年、45巻、2号、485〜491ページ Chen−Wu Chen、Trans Asia Pac Acad Ophthalmol.、1983年、9巻、172〜177ページ Matsuda T.ら、Jpn J Ophthalmol.、1996年、40巻、4号、526〜32ページ Skuta GL.ら、Surv Ophthalmol.、1987年、32巻、3号、149〜170ページ Kremer I.ら、Acta Ophthalmol.,2012年、90巻、3号、271〜276ページ
本発明は、前記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、結膜及び強膜において線維芽細胞の増殖を抑制しつつ、角膜等の他の組織に障害を及ぼさないことを可能とする化合物を見出すことを目的とする。また、そのような化合物を用い、緑内障濾過手術法にて形成された濾過胞を、安全性高く、長く維持するための組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記目的を達成すべく、先ず、様々な疾患の既存薬として知られている1274化合物を対象として、強膜と結膜との間にあるテノン嚢由来の線維芽細胞の増殖に対し、MMCと同等以上の抑制活性を示す化合物のスクリーニングを行い、69種の化合物を選抜した。さらにこれら化合物を対象として、MMC併用線維柱帯切除術後に生じる合併症の1つである角膜上皮障害を考慮し、ヒト由来の角膜上皮細胞への毒性(細胞増殖抑制活性)が低い化合物49種を選抜した。
また、これら化合物に関し、既存の濾過胞維持薬とは、異なる新たな作用メカニズムによって細胞の増殖を抑制できるという観点から、アポトーシス誘導活性についても評価した結果、10種の化合物においてその活性を有していることが明らかになった。
また、前記49種の化合物の中から、テノン嚢線維芽細胞に対する増殖抑制効果を示す濃度範囲(有効域)が狭いものを除外し、さらにステロイド緑内障の発症等を避けるという観点から、ステロイド活性を有するものを除外した。また、非選択的細胞毒性が懸念されるという観点から、界面活性剤に該当する化合物も除外し、さらに、全身毒性が明らかとなっていないことから、上市されていない化合物も除外した。その結果、コルヒチン、アムサクリン、メベンダゾール、ミトキサントロン、ニクロサミド、ドキソルビシン、グリセオフルビン、チオリダジン、トリクロサン等を含む27種の化合物を、結膜及び強膜において線維芽細胞の増殖を抑制しつつ、角膜等の他の組織に障害を及ぼさないことを可能とする化合物として選抜することに成功した。特に、コルヒチン、アムサクリン、メベンダゾール、ミトキサントロン、ニクロサミド、ドキソルビシンは、テノン嚢由来の線維芽細胞の増殖に対して、MMCと同等以上の抑制活性を示した化合物であり、また、グリセオフルビン、チオリダジン、トリクロサンは、テノン嚢由来の線維芽細胞に対するアポトーシス誘導活性も有するため、該活性により濾過胞における瘢痕化組織の形成を抑制することが想定される。
次に、本発明者らは、上記インビトロのスクリーニングによって選抜した化合物に関し、緑内障濾過手術モデルウサギを用い、インビボにて、これら化合物の有効性を確認した。具体的には、緑内障濾過手術において、MMCの代わりに、強膜及び結膜の切開部にアムサクリンを添加した結果、MMCよりも高い眼圧下降効果が安定して持続されることが認められた。また、緑内障濾過手術において、MMCを強膜及び結膜の切開部に添加し、その後、コルヒチンを眼に添加した結果、MMC投与のみでは抑えることができなかった術後の眼圧亢進を抑えられることも見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、角膜上皮細胞の増殖を抑制せず、かつ線維芽細胞の増殖を抑制するための組成物、ひいては、緑内障濾過手術において形成された濾過胞を維持するための医薬組成物に関し、より詳しくは以下の通りである。
<1> コルヒチン、アムサクリン、メベンダゾール、ミトキサントロン、ニクロサミド、ドキソルビシン、グリセオフルビン、チオリダジン、トリクロサン、リセドロナート、ベニジピン、スルファジメトキシン、リトドリン、エナラプリル、ケトプロフェン、葉酸、トラネキサム酸、セフォキシチン、ベザフィブラート、ゾルミトリプタン、アマンタジン、β‐カロチン、カプレオマイシン、カルバマゼピン、セファドロキシル、ジエチルスチルベストロール及びシラザプリルからなる群から選択される、少なくとも1種の化合物を有効成分として含む、角膜上皮細胞の増殖を抑制せず、かつ線維芽細胞の増殖を抑制するための組成物。
<2> 濾過胞を維持するための医薬組成物である、<1>に記載の組成物。
<3> 前記組成物が、濾過胞を形成するために切開した強膜及び結膜の少なくともいずれか一方に添加される、<2>に記載の組成物。
<4> 前記組成物が、濾過胞の形成後に眼に添加される、<2>に記載の組成物。
本発明によれば、線維芽細胞の増殖を抑制することにより、緑内障濾過手術法にて形成された濾過胞を長く維持し、眼圧を低く一定に保つことが可能となる。特に、緑内障濾過手術法にて現在主に用いられているMMCと比較して、同等以上の線維芽細胞増殖抑制効果を発揮することにより、濾過胞をより長く維持することが可能となる。さらに、少なくとも角膜組織に障害を及ぼさないため、安全性高く、濾過胞を維持することもできる。また、本発明によれば、術中に濾過胞を形成するために切開した結膜又は強膜に投与することによって、その維持効果が奏されることのみならず、術後に眼に添加することによっても、濾過胞を安全性高く、長く維持することもできる。
眼における房水循環経路(眼圧維持機構)の概要(図中、上部)、及び緑内障濾過手術の概要(図中、下部)を示す、図である。図中、矢印は、房水の流れを示す。 既存薬1274化合物のテノン嚢線維芽細胞に対する増殖抑制活性を、アラマーブルーアッセイにより解析した結果を示す、グラフである。図中縦軸は、アラマーブルーアッセイにより検出された各化合物における蛍光強度を、MMCにおけるそれを100とした際の相対値を示す。 テノン嚢線維芽細胞に対して増殖抑制活性を示す69種の化合物を対象として、角膜上皮細胞に対する増殖抑制活性を、アラマーブルーアッセイにより解析した結果を示す、グラフである。図中縦軸は、アラマーブルーアッセイにより検出された各化合物における蛍光強度を、DMSOにおけるそれを100とした際の相対値を示す。 テノン嚢線維芽細胞に対して増殖抑制活性を示す一方で、角膜上皮細胞の増殖を抑制しない49種の化合物を対象として、テノン嚢線維芽細胞に対するアポトーシス誘導活性を、アネキシンVアッセイにより解析した結果を示す。図中縦軸は、前記アッセイに供した細胞においてアポトーシスが誘導された細胞の割合(%)を示す。矢印が付している化合物は、アポトーシス誘導活性が認められた10種の化合物を示す。 本発明の化合物(コルヒチン、アムサクリン、メベンダゾール、ミトキサントロン、ニクロサミド、ドキソルビシン)に関し、テノン嚢線維芽細胞に対する細胞増殖抑制活性を、その添加濃度と共に示したグラフである。図中縦軸は、各化合物を添加しなかった場合の細胞数に対する割合を示す。図中横軸は、本発明の化合物のテノン嚢線維芽細胞への添加濃度(0.01〜10μM)を示す(図中の表記については、図6〜9において同じ)。 本発明の化合物(グリセオフルビン、チオリダジン、トリクロサン、リセドロナート、ベニジピン)に関し、テノン嚢線維芽細胞に対する細胞増殖抑制活性を、その添加濃度と共に示したグラフである。 本発明の化合物(スルファジメトキシン、リトドリン、エナラプリル、ケトプロフェン、葉酸)に関し、テノン嚢線維芽細胞に対する細胞増殖抑制活性を、その添加濃度と共に示したグラフである。 本発明の化合物(トラネキサム酸、セフォキシチン、ベザフィブラート、ゾルミトリプタン、アマンタジン)に関し、テノン嚢線維芽細胞に対する細胞増殖抑制活性を、その添加濃度と共に示したグラフである。 本発明の化合物(β‐カロチン、カプレオマイシン、カルバマゼピン、セファドロキシル、ジエチルスチルベストロール)に関し、テノン嚢線維芽細胞に対する細胞増殖抑制活性を、その添加濃度と共に示したグラフである。 緑内障濾過手術モデルウサギにおいて、眼圧差の術後推移を示すグラフである。図中、縦軸は、被術眼における眼圧と非術眼におけるそれとの差(眼圧差)を示す。図中のプロットは各投与群の平均値を示し、それに付したバーは標準誤差を表す。図中のアスタリスク(*)は、スチューデントt検定による対照群(生理食塩水投与群)に対して有意差が認められたことを示す(* P<0.05、** P<0.01)。図中の短剣符(ダガー)は、アスピン・ウェルチ検定によって、対照群に対して有意差が認められたことを示す(短剣符2つ P<0.01)。図中の二重短剣符(ダブルダガー)は、スチューデントt検定によって、MMC投与群に対して有意差が認められたことを示す(二重短剣符 P<0.05)。 緑内障濾過手術モデルウサギにおいて、ブレブ(濾過胞)スコアの術後推移を示すグラフである。図中のプロットは各投与群の平均値を示し、それに付したバーは標準誤差を表す。図中のアスタリスク(*)は、スチューデントt検定による対照群(生理食塩水投与群)に対して有意差が認められたことを示す(*P<0.05、**P<0.01)。 緑内障濾過手術モデルウサギにおいて、眼圧差の術後推移を示すグラフである。図中、縦軸は、被術眼における眼圧と非術眼におけるそれとの差(眼圧差)を示す。図中のプロットは各投与群の平均値を示し、それに付したバーは標準誤差を表す。図中のアスタリスク(*)は、スチューデントt検定によって、生理食塩水投与群に対して有意差が認められたことを示す(** P<0.01)。図中の短剣符(ダガー)は、アスピン・ウェルチ検定によって、生理食塩水投与群に対して有意差が認められたことを示す(短剣符2つ P<0.01)。図中の二重短剣符(ダブルダガー)は、ダンネット多重比較検定によって、生理食塩水投与群に対して有意差が認められたことを示す(二重短剣符1つ P<0.05、二重短剣符2つ P<0.01)。図中の章標(セクション)は、スティール多重比較検定によって、生理食塩水投与群に対して有意差が認められたことを示す(章標1つ P<0.05)。図中の並行符(パラレル)は、スチューデントt検定によって、MMC投与群に対して有意差が認められたことを示す(並行符1つ P<0.05、並行符2つ P<0.01)。図中の段標(パラグラフ)は、アスピン・ウェルチ検定によって、MMC投与群に対して有意差が認められたことを示す(段標1つ P<0.05、段標2つ P<0.01)。 緑内障濾過手術モデルウサギにおいて、ブレブ(濾過胞)スコアの術後推移を示すグラフである。図中のプロットは各投与群の平均値を示し、それに付したバーは標準誤差を表す。図中のアスタリスク(*)は、ウィルコクソン検定による対照群(生理食塩水投与群)に対して有意差が認められたことを示す(* P<0.05、** P<0.01)。図中の短剣符(ダガー)は、スティール多重比較検定によって、対照群に対して有意差が認められたことを示す(短剣符1つ P<0.05、短剣符2つ P<0.01)。図中の二重短剣符(ダブルダガー)は、ウィルコクソン検定によって、MMC投与群に対して有意差が認められたことを示す(二重短剣符1つ P<0.05、二重短剣符2つ P<0.01)。
<濾過胞を維持するための組成物>
後述の実施例に示す通り、既存薬である1274化合物を対象としてスクリーニングを行った結果、線維芽細胞の増殖を抑制する活性を有する一方で、角膜上皮細胞の増殖は抑制しない化合物として、下記表1〜3に示す27種の化合物が同定された。また、これらの化合物を投与することにより、緑内障濾過手術にて形成された濾過胞を、安全性高く、長く維持し、眼圧を低く保つことが可能となることが明らかになった。
したがって、本発明は、コルヒチン、アムサクリン、メベンダゾール、ミトキサントロン、ニクロサミド、ドキソルビシン、グリセオフルビン、チオリダジン、トリクロサン、リセドロナート、ベニジピン、スルファジメトキシン、リトドリン、エナラプリル、ケトプロフェン、葉酸、トラネキサム酸、セフォキシチン、ベザフィブラート、ゾルミトリプタン、アマンタジン、β‐カロチン、カプレオマイシン、カルバマゼピン、セファドロキシル、ジエチルスチルベストロール及びシラザプリルからなる群から選択される、少なくとも1種の化合物を有効成分として含む、角膜上皮細胞の増殖を抑制せず、かつ線維芽細胞の増殖を抑制するための組成物を提供するものである。
本発明の組成物においては、上記27種の化合物のうちの少なくとも1種の化合物を含んでいれば良いが、線維芽細胞の増殖を抑制する活性に関し、既存の濾過胞維持薬として用いられているマイトマイシンC(MMC)よりも高い活性を有しているという観点から、コルヒチン、アムサクリン、メベンダゾール、ミトキサントロン、ニクロサミド及びドキソルビシンのうちの少なくとも1種の化合物を含んでいることが好ましく、また同細胞に対してアポトーシス誘導活性を有するという観点からは、グリセオフルビン、チオリダジン及びトリクロサンのうちの少なくとも1種の化合物を含んでいることが好ましい。
本発明に係るコルヒチン等の化合物(以下、本発明の化合物とも称する)には、線維芽細胞の増殖を抑制する活性を有する一方で、角膜上皮細胞の増殖を抑制しない限り、各化合物の誘導体、類似体、薬理学上許容される塩、又は溶媒和物も含まれる。
本発明の化合物の誘導体、類似体は、当業者であれば、公知の化学反応を適宜利用し、表1〜3に示される化合物における官能基を別の官能基に置換したり、また官能基をさらに導入等することにより、調製することができる。
そして、このようにして調製された誘導体及び類似体が、細胞(線維芽細胞又は角膜上皮細胞)の増殖を抑制する活性を有するか否かは、例えば、対象とする細胞の増殖を、当該化合物の存在下、非存在下にて測定し、前者の測定値(細胞数等)が後者のそれよりも低い場合には、当該細胞に対して増殖を抑制する活性を有すると判定することができ、また前者の測定値が後者のそれと同等である場合には、当該細胞に対して増殖を抑制する活性を有さないと判定することができる。かかる細胞増殖の測定は、特に制限はなく、当業者であれば、公知の手法(例えば、アラマーブルーアッセイ)を適宜選択して行うことができる。また、本発明の化合物において、線維芽細胞の増殖を抑制する活性としては、テノン嚢由来の線維芽細胞を対象とした際に、MMCよりも高い活性を有していることが望ましい。
薬理学上許容される塩としては、特に制限はなく、各化合物の構造等に応じて適宜選択することができ、例えば、無機酸塩(塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩等)、有機酸塩(酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、安息香酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩等)が挙げられる。また、前記溶媒和物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水和物、エタノール和物が挙げられる。
また、本発明の化合物には、互変異性体、幾何異性体、不斉炭素に基づく光学異性体、立体異性体等の総ての異性体及び異性体混合物が含まれる。さらに、本発明の化合物が生体内で酸化、還元、加水分解、アミノ化、脱アミノ化、水酸化、リン酸化、脱水酸化、アルキル化、脱アルキル化、抱合等の代謝を受けてなお所望の活性を示す化合物をも包含し、また本発明は生体内で酸化、還元、加水分解等の代謝を受けて本発明の化合物を生成する化合物(所謂、プロドラッグの形態)をも包含する。
また、本発明の組成物における、本発明の化合物の含有量としては、用いる化合物の種類に合せ、上述の線維芽細胞及び/又は角膜上皮細胞の増殖等を指標にすることにより、適宜調整することができるが、0.005〜50%(w/v)が好ましく、0.001〜30%(w/v)がより好ましく、0.01〜10%(w/v)がさらに好ましい。より具体的に、本発明の組成物におけるコルヒチンの含有量としては、0.005〜0.01%(w/v)が好ましく、また本発明の組成物におけるアムサクリンの含有量としては、0.1〜10%(w/v)が好ましい。
本発明の組成物の形態としては、主として医薬組成物であるが、研究目的(例えば、インビトロやインビボの実験)に用いられる試薬の形態もとり得る。
また、本発明の医薬組成物は、より具体的には以下の通りである。
コルヒチン、アムサクリン、メベンダゾール、ミトキサントロン、ニクロサミド、ドキソルビシン、グリセオフルビン、チオリダジン、トリクロサン、リセドロナート、ベニジピン、スルファジメトキシン、リトドリン、エナラプリル、ケトプロフェン、葉酸、トラネキサム酸、セフォキシチン、ベザフィブラート、ゾルミトリプタン、アマンタジン、β‐カロチン、カプレオマイシン、カルバマゼピン、セファドロキシル、ジエチルスチルベストロール及びシラザプリルからなる群から選択される、少なくとも1種の化合物を有効成分として含む、濾過胞を維持するための医薬組成物。
本発明において、「濾過胞」とは、ブレブとも称され、緑内障濾過手術にて結膜下に形成され、眼外の結膜下に創傷を通って流出した房水が作る結膜の水疱のことを意味する(図1 参照のこと)。濾過胞の維持とは、緑内障濾過手術にて結膜下に形成された濾過胞が塞がることなく、房水を眼内から眼外に流す機能を維持している状態を意味し、より具体的には、緑内障濾過手術後の眼圧が、濾過胞からの房水排出によって、術前のそれより低い状態に維持されることを意味し、ヒトの場合、好ましくは眼圧が12mmHg以下で維持される状態のことであり、より好ましくは10mmHg以下で維持される状態のことである。
また、本発明における「緑内障濾過手術」としては、結膜及び強膜のうちの少なくともいずれか一方を切開することにより、濾過胞を形成する手術を意味し、例えば、線維柱帯切除術(トラベクレクトミー)、非穿孔性線維柱帯切除術、全層濾過手術、インプラント(エクスプレス等)を用いた手術が挙げられる。
また、かかる手術の対象となる緑内障としては、例えば、原発開放隅角緑内障、続発開放隅角緑内障、房水産生過多緑内障、原発閉塞隅角緑内障、続発閉塞隅角緑内障、プラトー虹彩緑内障、混合型緑内障、発達緑内障、ステロイド緑内障、落屑緑内障、アミロイド緑内障、血管新生緑内障、悪性緑内障、水晶体の嚢性緑内障が挙げられる。
本発明の医薬組成物には、上述の本発明の化合物の他、必要に応じて添加剤を用いることができ、添加剤としては、緩衝剤、等張化剤、安定化剤、防腐剤、抗酸化剤、高分子量重合体等を加えることができる。
緩衝剤の例としては、リン酸又はその塩、ホウ酸又はその塩、クエン酸又はその塩、酢酸又はその塩、炭酸又はその塩、酒石酸又はその塩、ε−アミノカプロン酸、トロメタモール等が挙げられる。弱酸性領域での緩衝能の観点から、ホウ酸又はその塩、クエン酸又はその塩、酢酸又はその塩が好ましく、クエン酸又はその塩が特に好ましい。リン酸塩としては、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム等が挙げられ、ホウ酸塩としては、ホウ砂、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム等が挙げられ、クエン酸塩としては、クエン酸ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム等が挙げられ、酢酸塩としては、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等が挙げられ、炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられ、酒石酸塩としては、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム等が挙げられる。本発明の医薬組成物に緩衝剤を配合する場合の緩衝剤の含有量は、緩衝剤の種類等により適宜調整することができるが、0.001〜10%(w/v)が好ましく、0.01〜5%(w/v)がより好ましく、0.1〜3%(w/v)がさらに好ましく、0.2〜2%(w/v)が最も好ましい。
また、緩衝剤の配合により調整される本発明の医薬組成物のpHとしては、4.0〜8.0が好ましく、4.5〜7.5がより好ましく、5.0〜7.0がより好ましく、5.5〜6.5が最も好ましい。
等張化剤の例としては、イオン性等張化剤や非イオン性等張化剤等が挙げられる。イオン性等張化剤としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等が挙げられ、非イオン性等張化剤としてはグリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、マンニトール等が挙げられる。本発明の医薬組成物に等張化剤を配合する場合の等張化剤の含有量は、等張化剤の種類等により適宜調整することができるが、0.01〜10%(w/v)が好ましく、0.02〜7%(w/v)がより好ましく、0.1〜5%(w/v)がさらに好ましく、0.5〜4%(w/v)が特に好ましく、0.8〜3%(w/v)が最も好ましい。
安定化剤の例としては、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。本発明の医薬組成物に安定化剤を配合する場合の安定化剤の含有量は、安定化剤の種類などにより適宜調整することができる。
防腐剤の例としては、ベンザルコニウム塩化物、ベンザルコニウム臭化物、ベンゼトニウム塩化物、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、クロロブタノール等が挙げられる。本発明の医薬組成物に防腐剤を配合する場合の防腐剤の含有量は、防腐剤の種類等により適宜調整することができるが、0.0001〜1%(w/v)が好ましく、0.0005〜0.1%(w/v)がより好ましく、0.001〜0.05%(w/v)がさらに好ましく、0.002〜0.01%(w/v)が最も好ましい。
抗酸化剤の例としては、アスコルビン酸、トコフェノール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、エリソルビン酸ナトリウム、没食子酸プロピル、亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。本発明の医薬組成物に抗酸化剤を配合する場合の抗酸化剤の含有量は、抗酸化剤の種類等により適宜調整することができるが、0.0001〜1%(w/v)が好ましく、0.0005〜0.1%(w/v)がより好ましく、0.001〜0.02%(w/v)がさらに好ましく、0.005〜0.010%(w/v)が最も好ましい。
高分子量重合体を適宜配合することができる。高分子量重合体の例としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール等が挙げられる。本発明の医薬組成物に高分子量重合体を配合する場合の高分子量重合体の含有量は、高分子量重合体の種類等により適宜調整することができるが、0.001〜5%(w/v)が好ましく、0.01〜1%(w/v)がより好ましく、0.1〜0.5%(w/v)がさらに好ましい。
本発明の医薬組成物の投与形態としては特に制限はないが、主として非経口投与され、例えば、後述の実施例に示す通り、緑内障濾過手術の際に、濾過胞を形成するために切開した強膜及び結膜の少なくともいずれか一方に添加してもよい。このような添加の場合、本発明の医薬組成物の好適な剤型としては、点眼剤、液剤、注射剤、眼軟膏剤が挙げられる。また、後述の実施例において示す通り、本発明の医薬組成物は、濾過胞の形成後に眼に添加されてもよい。かかる添加の場合、本発明の医薬組成物の好適な剤型としては、点眼剤、液剤が挙げられる。
点眼剤、液剤又は注射剤は、上述の本発明の化合物を、水性溶媒(生理食塩水、滅菌精製水等)又は非水性溶媒(植物油等)に溶解させ、前記緩衝剤、等張化剤、安定化剤、防腐剤、抗酸化剤等を適宜添加することによって調製することができる。また、眼軟膏剤は、上述の本発明の化合物に、上記高分子量重合体を軟膏基剤として添加し、また必要に応じ、前記緩衝剤、等張化剤、安定化剤、防腐剤、抗酸化剤等を適宜添加することによって調製することができる。
本発明の組成物は、本発明の化合物の他、1又は複数の濾過胞を維持するための他の化合物を含有してもよい。このような他の化合物としては、特に制限は無く、市販又は開発中の濾過胞維持薬が好適に用いられ、より具体的には、MMC、5−フルオロウラシル(5−FU)等の代謝拮抗薬が挙げられる。本発明の医薬組成物における当該化合物の含有量は、化合物の種類等により適宜調整することができるが、0.001〜50%(w/v)が好ましく、0.01〜10%(w/v)がより好ましい。また、MMCを含有する場合は、0.04%(w/v)であることが最も好ましい。
また、本発明の組成物は、1又は複数の緑内障若しくは高眼圧症治療剤又は眼圧下降剤を含有してもよい。緑内障治療剤としては、特に制限はなく、例えば、市販又は開発中の緑内障治療剤等が好適に用いられ、より具体的には、非選択性交感神経作動薬、α2受容体作動薬、α1受容体遮断薬、β受容体遮断薬、副交感神経作動薬、炭酸脱水酵素阻害剤、プロスタグランジン類、Rhoキナーゼ阻害剤が挙げられる。非選択性交感神経作動薬の具体例としては、ジピベフリンが挙げられ、α2受容体作動薬の具体例としては、ブリモニジン、アプラクロニジンが挙げられ、α1受容体遮断薬の具体例としてはブナゾシンが挙げられ、β受容体遮断薬の具体例としては、チモロール、ベフノロール、カルテオロール、ニプラジロール、ベタキソロール、レボブノロール、メチプラノロールが挙げられ、副交感神経作動薬の具体例としてはピロカルピンが挙げられ、炭酸脱水酵素阻害剤の具体例としては、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、アセタゾラミドが挙げられ、プロスタグランジン類の具体例としては、ラタノプロスト、イソプロピルウノプロストン、ビマトプロスト、トラボプロストが挙げられ、Rhoキナーゼ阻害剤の具体例としては、リパスジルが挙げられる。
本発明の組成物は、種々の素材で製造された容器に入れて保存することができる。例えば、ポリエチレン製、ポリプロピレン製等の容器を用いることができ、点眼のし易さ(容器の硬さ)や本発明の化合物の安定性等の観点で、ポリエチレン製の容器に入れて保存するのが好ましい。
本発明の組成物の製品(医薬品、試薬)又はその説明書は、濾過胞を維持するために用いられる旨の表示を付したものであり得る。ここで「製品または説明書に表示を付した」とは、製品の本体、容器、包装等に表示を付したこと、あるいは製品の情報を開示する説明書、添付文書、宣伝物、その他の印刷物等に表示を付したことを意味する。角膜上皮細胞の増殖を抑制せず、かつ線維芽細胞の増殖を抑制するため、または濾過胞を維持するために用いられる旨の表示においては、本発明の組成物を投与等することにより濾過胞を維持する機序についての情報を含むことができる。機序としては、例えば、線維芽細胞の増殖を抑制等することにより、濾過胞の瘢痕化等を抑制することに関する情報が挙げられる。また、濾過胞を維持するために用いられる旨の表示においては、緑内障の治療のため等に用いられることに関する情報を含むことができる。
<濾過胞を維持するための方法>
後述の実施例に示す通り、本発明の化合物を対象に添加等させることにより、濾過胞を維持することができる。したがって、本発明は、本発明の化合物又は組成物を対象に添加する工程を含む、濾過胞を維持する方法をも提供するものである。
本発明の化合物又は組成物は、ヒトを含む動物を対象として使用することができるが、ヒト以外の動物としては特に制限はなく、種々の家畜、家禽、ペット、実験用動物等を対象とすることができる。具体的には、ウサギ、サル、ハムスター、マウス、ラット、ブタ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、カモ、ダチョウ、アヒル、イヌ、ネコが挙げられるが、これらに制限されない。
本発明の方法の一の態様としては、緑内障濾過手術において、濾過胞を形成するために切開した強膜及び結膜の少なくともいずれか一方に、本発明の化合物又は組成物を添加する工程を含む、濾過胞を維持する方法が挙げられる。
当該方法において添加される化合物は、前記27種の化合物のうちから選択される1種の化合物であればよく、また複数の化合物の組み合わせであってもよく、さらに他の濾過胞維持剤(MMC等)との組み合わせであっても良い。
また、本発明の組成物が、点眼剤又は液剤である場合には、手術時に前記切開部に滴下することにより、または吸水紙、脱脂綿、ガーゼ、スポンジ等に含ませたものを前記切開部に一時留置(通常5分程度)することにより、本発明の化合物を前記切開部に直接添加することができる。本発明の組成物が注射剤の場合には、前記切開部に注射することにより、また眼軟膏剤の場合には前記切開部に塗布することにより、添加することができる。また、このような直接添加において、その添加部位は、術後の濾過胞がより維持されるという観点から、強膜及び結膜の両方の切開部であることが好ましい。
また、本発明の方法の別態様としては、緑内障濾過手術において濾過胞を形成した後に、本発明の化合物又は組成物を眼に添加する工程を含む、濾過胞を維持する方法も挙げられる。
当該方法において添加される化合物は、前記27種の化合物のうちから選択される1種の化合物であればよく、また複数の化合物の組み合わせであってもよく、さらに他の濾過胞維持剤(例えば、MMC)との組み合わせであっても良い。
また、本発明の組成物が、点眼剤又は液剤である場合には、本発明の化合物の種類、含有量等にもよるが、1日1〜数回(好ましくは、1日3〜4回、1滴ずつ)眼に添加することができる。また、当該添加の開始時期としては、手術後の治癒状況にもよるが、通常術後6日間経過した後である。また、当該添加開始迄及び/又はその後も、抗菌剤及び/又は抗炎症剤(例えば、ベタメタゾンリン酸ナトリウム溶液、レボフロキサシン水和物溶液)を眼に添加することが望ましい。また、このような化合物を添加する眼の部位としては、例えば、角膜表面、結膜下、テノン嚢下が挙げられる。
さらに、このような本発明の組成物を術後に眼に添加する方法は、既存の緑内障濾過手術(例えば、MMC併用線維柱帯切除術)や、上述の本発明の化合物等を濾過胞を形成するための切開部に添加する工程を含む緑内障濾過手術法と組み合わせて用いることにより、濾過胞をより長く維持し、眼圧をより低く保つことが可能となる。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<線維芽細胞の増殖抑制を指標とした、一次スクリーニング>
緑内障濾過手術においては、その術後に線維芽細胞の増殖等により、形成された濾過胞が瘢痕化組織し、房水流出が阻害されることが多い。そのため、現在は、結膜及び強膜における線維芽細胞の増殖等を抑制するため、マイトマイシンC(MMC)が主に塗布される(MMC併用線維柱帯切除術)。しかしながら、その抑制効果は十分でない例もある。そこで、様々な疾患に対する既存薬として知られている1274化合物を対象として、MMCより線維芽細胞の増殖抑制活性が高い化合物をスクリーニングした。
スクリーニングに用いた既存薬ライブラリーは、慶応大学医学部の佐谷秀行教授から提供を受けたものである。また、これら化合物の増殖抑制活性を評価するために、ヒトに近い小型霊長類であるコモンマーモセット由来のテノン嚢線維芽細胞(以下、mTCFとも称する)を用いた。mTCFの調製方法は以下の通りである。
すなわち先ず、コモンマーモセットの眼球強膜からテノン嚢を、ダルベッコリン酸緩衝液中にてはさみを用いて剥離し、最小量のダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)を添加した10cmディッシュ上に載せた。なお、DMEM(高グルコース、ライフテクノロジー社製)には、1%の抗生物質(ペニシリン及びストレプトマイシン、ライフテクノロジー社製)、また浮き上がりを防止するための10%ウシ胎児血清(バイオロジカルインダストリーズ社製)が添加してある。そして、単離組織からディッシュに線維芽細胞を移した後、37℃にて25日間をかけて組織片培養(explant culture)を行った。なお、以下のスクリーニングに供する前に、線維芽細胞特異的タンパク質−1(FSP−1)を対象とする免疫染色によって、このようにして調製された細胞がFSP−1陽性であったことから、全てmTCFであることは確認してある。
そして、このようにして初代培養したmTCFに対する細胞増殖抑制活性を、アラマーブルーアッセイによって解析した。すなわち、初代培養mTCFを96ウェルプレートに3.0x10個/mmの細胞密度になるよう播種し、そこに各種既存薬を最終濃度10μMとなるように添加して37℃にて24時間培養した。次いで、10%アラマーブルー試薬(ライフテクノロジー社製)を添加したDMEMにおいて、細胞を37℃、2時間、暗所にて更に培養した。そして、蛍光マイクロプレートリーダー(モレキュラーデバイス社製、製品名:Spectra Max Gemini)にて、544nm励起波長及び590nmの発光波長における、各既存薬を添加した細胞が発する蛍光の強度を測定した。
なお、細胞非存在下を0%コントロールとし、細胞存在下を100%コントロールとして、このmTCFを対象とするアラマーブルーアッセイによるスクリーニング系の有効性を事前に評価した。その結果、算出されたCV値、S/B比、Z’値は、各々5.96、7.85、0.79とすべての基準(CV<10,S/B>2,Z’>0.5)を満たしていたことから、この系の有効性が確認されたため、前述の通り、それを用いて薬剤スクリーニングを行った。
そして、このスクリーニングの結果、図2に示す通り、1274の既存薬の中から、同一濃度のMMCと同等又はそれ以上の増殖抑制活性を示す、67種類の化合物を選抜することに成功した。
<角膜上皮細胞への毒性を指標とした、二次スクリーニング>
MMC併用線維柱帯切除術後に生じる合併症の1つに角膜上皮障害が挙げられる。そこで、前記一次スクリーニングによって得られた67種の化合物を対象とし、ヒト由来の角膜上皮細胞への毒性が低い化合物、すなわち当該細胞に対する細胞増殖抑制活性の低い化合物を、以下の通りにして選抜した。
なお、これら化合物の毒性を評価するために用いたヒト角膜上皮細胞は以下の通りにして調製した。すなわち、Hayashi R.ら、Tissue Eng Part C Methods、2010年、16巻、553〜560ページに記載の方法に沿って、Northwest Lions Eye Bankから提供された角膜組織の輪部を、1.82units/ml dispase II(Invitrogen社製)含有DMEM培地、37℃にて1時間培養し、さらにCnT−20培地にて培養した。なお、以下のスクリーニングに供する前に、ヒトケラチン12(K12)を対象とする免疫染色によって、このようにして調製された細胞がK12陽性であったことから、ヒト角膜上皮細胞であることは確認してある。
そして、初代培養ヒト角膜上皮細胞に対する細胞増殖抑制活性は、アラマーブルーアッセイによって解析した。すなわち、96ウェルプレートに2000個/mmの細胞密度になるよう播種したヒト角膜上皮細胞に10μMの67化合物をそれぞれ添加した。なお、対照群として溶媒(DMSO)のみを投与した群も用意した、次いで、上記mTCF同様に、24時間後にアラマーブルーアッセイを用いて細胞毒性を評価した。
その結果、図3に示す通り、溶媒(DMSO)のみを投与した群と比較して毒性を示した18種類の化合物を除外して、49種類の化合物を、テノン嚢線維芽細胞に対する増殖抑制活性を有する一方で、角膜上皮細胞に対する毒性(増殖抑制活性)が低い化合物として選抜した。
<線維芽細胞のアポトーシス誘導活性の評価>
既存の濾過胞維持薬とは異なる作用メカニズムを有する濾過胞維持薬を見出す目的で、アポトーシス誘導活性に着目し、以下に示す方法にて、スクリーニングを行った。
実際、創傷治癒過程において線維芽細胞におけるアポトーシスの阻害が瘢痕組織形成を誘導するという報告もある(赤坂善清ら、「隆起性および扁平瘢痕におけるアポトーシス関連抗原の発現」、Connective Tissue、1998年、30巻、29〜35ページ)。
そこで、上述のスクリーニングによって得られた49種の化合物を対象として、アネキシンVアッセイを用い、これら化合物のmTCFに対するアポトーシス誘導活性を評価した。すなわち、初代培養mTCFに10μMの49種の化合物を各々投与し、24時間後に蛍光色素で標識したアネキシンVを用い、フローサイトメトリー解析を行った。なお、対照としてDMSOのみを添加した細胞も用意し、同様に解析を行った。
その結果、図4に示す通り、49化合物のうち10種類の化合物においてアポトーシス誘導活性が認められた。
<薬効の有効域等を指標とする、三次スクリーニング>
次に、二次スクリーニングで選抜された49種類の化合物に関し、その添加濃度を10μMから0.01〜10μMに代え、前記同様にmTCFに対する細胞増殖抑制活性を評価し、その薬効を示す濃度範囲(有効域)を決定した(それら結果の一部を図5〜9に示す)。そして、その有効域が狭い化合物を除外した。
さらに、その効能(副作用)として眼圧の上昇を引き起こす可能性があるという観点から、ステロイド活性を有するものを除外し、また非選択的細胞毒性が懸念されるという観点から、界面活性剤に該当する化合物も除外した。さらに、全身性の副作用が不明であるという観点から、上市されていない化合物も除外した。
その結果、テノン嚢線維芽細胞の増殖を抑制し、かつ角膜上皮細胞への毒性が低い等の安全性の高い化合物、すなわち濾過胞を維持するために好適な27種類の化合物を選択した。表1〜3に選択した化合物を示す。
なお、表1に示した9化合物のうち、1〜6の化合物(コルヒチン、アムサクリン、メベンダゾール、ミトキサントロン、ニクロサミド、ドキソルビシン)は、テノン嚢線維芽細胞に対する細胞増殖抑制活性が、MMCよりも高い化合物である。また7〜9の化合物(グリセオフルビン、チオリダジン、トリクロサン)は、上記アネキシンVアッセイによって、テノン嚢線維芽細胞に対するアポトーシス誘導活性を有することも明らかになった化合物である。
次に、テノン嚢線維芽細胞に対する細胞増殖抑制活性がMMCよりも高い前記化合物について、以下に示すインビボの系にて薬効評価を行った。
<線維柱帯切除術モデルの確立>
先ず、インビボでの薬効評価を行うにあたり、白色家兎を用いた線維柱帯切除術モデルの確立を行った。具体的には、白色家兎に、ケタミン塩酸塩(40mg/kg)及びキシラジン塩酸塩(4mg/kg)を筋肉注射することにより、全身麻酔を施した後、角膜輪部の結膜、強膜及び線維柱帯を切開し、強膜弁を調製した。次いで、0.4mg/mL(0.04%(w/v)) MMC又は生理食塩水を約100〜200μL浸した吸水紙(株式会社イナミ製、Medical quick absorber)を、結膜下及び強膜弁上に5分間置いた。そして、強膜弁は縫合することなく、結膜と強膜とを10−0縫合糸を用いて縫合した。なお、手術は右眼のみに施行し、左眼は無処置とした。また、前房及び濾過胞への不注意による貫通等の周術期合併症はいずれの眼においても認められなかった。
手術後5日までは、ベタメタゾンリン酸ナトリウム溶液(塩野義製薬株式会社製、製品名:リンデロン(登録商標)0.01%)及びレボフロキサシン水和物溶液(参天製薬株式会社製、製品名:クラビット(登録商標)点眼液0.5%)を1日3回1滴ずつ点眼した。また、手術後1、3、5、7、11、14、21、35、49日に、眼圧測定と濾過胞の観察とを行った。また、いずれの測定日も同一時刻に実施した。
<眼圧測定>
眼圧の測定には圧平式眼圧計(Reichert Technologies社製、製品名:Model 30 Classic Pneumatonometer)を使用し、上記同様に全身麻酔を施した後5〜10分後に両眼の眼圧を測定した。なお、角膜知覚消失のため、オキシブプロカイン溶液(オキシブプロカイン塩酸塩0.4%含有、参天製薬株式会社製、ベノキシール(登録商標)点眼液)を眼圧測定の前に局所的に添加した。また、眼圧測定は3〜7pmにて行った。そして、得られた測定結果に基づき、被手術眼(右眼)と非手術眼(左眼)との眼圧の差を算出した。
<濾過胞の観察>
濾過胞については、スリットランプを介して観察し、Perkinsらの方法(Perkins TWら、Arch Ophthalmol.、2002年、120巻、941〜949ページ 参照)を若干修正した方法にて評価した。すなわち、濾過胞の高さとサイズとを反映して増加する以下のスコアを用いて評価した。
+0:濾過胞が認められない。
+1:結膜に肥厚が認められる。濾過胞は認められない。
+2:75度の範囲にて濾過胞が認められる。
+3:75〜135度の範囲にて濾過胞が認められる。
+4:135度以上の範囲にて濾過胞が認められる。
このような2種類の解析方法を用いて上記手術の成否を評価したところ、図には示さないが、眼圧測定では手術による眼圧下降及びMMC処置による眼圧下降の維持効果が見られた。同様に濾過胞の観察からも、手術により濾過胞が形成され、形成された濾過胞はMMC処理により長時間持続する可能性が示唆された。したがって、眼圧又は濾過胞を指標とした解析によりMMCの薬効が検出できたことから、この評価系にて前記化合物の薬効を以下の通りにして評価した。
<MMC併用濾過手術の眼圧下降維持効果についての評価>
現状行われているMMC併用濾過手術において、その術後に点眼することによって、当該手術の眼圧下降維持効果を増強できるか否か、前記化合物においてコルヒチンを対象と、以下の通り評価した。
すなわち先ず、20羽のウサギを3つのグループに分け、対照群としてウサギ4羽、MMC投与群としてウサギ8羽、MMC及びコルヒチン投与群としてウサギ8羽を用意した。なお、コルヒチン投与開始前の眼圧を計測し、3グループにおけるそれらが同程度であることを確認した。
そして、対照群においては、結膜の下と強膜弁上とに生理食塩水を約100〜200μL添加した吸水紙を5分間置いた以外は、上記同様に緑内障濾過手術を施した。そして、当該術後6〜14日目迄、生理食塩水(50μL)を1日3回点眼した。
また、MMC投与群においては、結膜の下と強膜弁上とに0.4mg/mL MMCを約100〜200μL添加した吸水紙を5分間置いた以外は、対照群同様に緑内障濾過手術を施し、さらに術後6〜14日目迄、生理食塩水を1日3回点眼した。
また、MMC及びコルヒチン投与群においては、MMC投与群同様に緑内障濾過手術を施し、さらに術後6〜14日目迄、生理食塩水の代わりに、1日3回、コルヒチン(0.01%(w/v),50μL)を1滴ずつ点眼した。
なお、全グループにおいて、手術は右眼のみに施行し、左眼は無処置とした。また、前房及び濾過胞への不注意による貫通等の周術期合併症はいずれの眼においても認められなかった。さらに、各化合物の添加濃度は、副作用が忍容できる範囲で薬効を示す濃度に設定した。そして、全てのグループについて、上述の眼圧測定及び濾過胞の観察を、術後3、7、14、21、28、35、42及び49日目に行った。また、いずれの測定日も同一時刻に実施した。得られた結果を図10及び11に示す。
図10に示した結果から明らかな通り、術後3日目迄は3グループにおいて、非手術眼の眼圧と比較して被手術眼のそれの低下が認められた。しかしながら、対照群(生理食塩水添加群)において、それ以降の眼圧の差は縮まり、術後14日目以降はその差は殆ど無くなってしまった。また、MMC投与群においては、術後35日目迄MMCによる眼圧下降作用が認められたものの、それ以降は非手術眼と被手術眼との間の眼圧差は縮まっていってしまった。
一方、MMC及びコルヒチン投与群においては、MMC投与群において認められた術後35日目以降の眼圧下降作用の減弱は認められず、MMC併用濾過手術において、その術後に点眼することによって、当該手術の眼圧下降維持効果を増強する活性をコルヒチンが有していることが明らかになった。
また、図11に示した結果から明らかな通り、ブレブスコア解析においても、術後のコルヒチン点眼によって、形成された濾過胞の消失を抑制し続けられること、特に、術後42日目以降においても濾過胞を維持し続けられることが明らかになった。
<MMCの代用となる術中塗布剤としての眼圧下降維持効果についての評価>
現状行われている濾過手術において塗布剤として用いられているMMCよりも優れた眼圧下降維持効果を有する化合物を見出すべく、すなわち強膜及び結膜の切開部に術中塗布する薬剤としての有用性について、前記化合物においてアムサクリンを対象とし、以下の通り評価した。
先ず、25羽のウサギを5つのグループに分け、対照群としてウサギ5羽、0.4mg/mL(0.04%(w/v)) MMC投与群としてウサギ5羽、0.1%(w/v)、1%(w/v)及び10%(w/v)アムサクリン投与群として各々ウサギ5羽を用意した。なお、緑内障濾過手術を行う前の眼圧を計測し、これらグループにおけるそれらが同程度であることを確認した。
そして、対照群においては、緑内障濾過手術の間、生理食塩水を約100〜200μL浸した吸水紙(株式会社イナミ製、Medical quick absorber)を、結膜下及び強膜弁上に5分間置いた。そして、強膜弁は縫合することなく、結膜と強膜とを10−0縫合糸を用いて縫合した。当該術後5日目迄は、ベタメタゾンリン酸ナトリウム溶液(塩野義製薬株式会社製、製品名:リンデロン(登録商標)0.01%)及びレボフロキサシン水和物溶液(参天製薬株式会社製、製品名:クラビット(登録商標)点眼液0.5%)を1日4回点眼した。
また、MMC投与群においては、0.4mg/mL MMCを約100〜200μL浸した吸水紙を結膜下及び強膜弁上に5分間置いた以外は、前記対照群同様に、緑内障濾過手術を施し、術後5日目迄は、ベタメタゾンリン酸ナトリウム溶液及びレボフロキサシン水和物溶液を1日4回点眼した。
また、アムサクリン投与群においては、0.1%(w/v)、1%(w/v)又は10%(w/v) アムサクリンを約100〜200μL浸した吸水紙を結膜下及び強膜弁上に5分間置いた以外は、前記対照群同様に、緑内障濾過手術を施し、術後5日目迄は、ベタメタゾンリン酸ナトリウム溶液及びレボフロキサシン水和物溶液を1日4回点眼した。
なお、全グループにおいて、手術は右眼のみに施行し、左眼は無処置とした。また、前房及び濾過胞への不注意による貫通等の周術期合併症はいずれの眼においても認められなかった。さらに、各化合物の添加濃度は、副作用が忍容できる範囲で薬効を示す濃度に設定した。そして、全てのグループについて、手術後7、14、21、28、42、56及び70日に、上述の眼圧測定と濾過胞の観察とを行った。また、いずれの測定日も同一時刻に実施した。得られた結果を図12及び13に示す。
図12に示した結果から明らかな通り、術後7日目迄は全てのグループにおいて、非手術眼の眼圧と比較して被手術眼のそれの低下が認められた。しかしながら、対照群(生理食塩水添加群)において、それ以降の眼圧の差は縮まり、術後21日目以降はその差は殆ど無くなってしまった。また、MMC投与群においては、術後70日目迄MMCによる眼圧下降作用が認められたものの、術後28日目以降は非手術眼と被手術眼との間の眼圧差は徐々に低下していく傾向が見られた。
一方、アムサクリン投与群においては、投与濃度を1%とした場合には前記MMC投与群同様の眼圧降下及びその持続効果が認められた。さらに、10%(w/v)のアムサクリンを投与した群においては、術後7日目以降、測定終了日である70日目まで続く、極めて長い眼圧降下作用の持続が確認された。
また、図13に示した結果から明らかな通り、ブレブスコア解析においても、アムサクリン投与によって、極めて長く濾過胞を維持し続けられることが明らかになった。
以上の結果から、アムサクリンは既存薬であるMMCに比べ、より強力な眼圧下降維持作用を有することが明らかになった。
以上説明したように、本発明によれば、角膜上皮細胞の増殖を抑制せず、線維芽細胞の増殖を抑制することができる。そして、線維芽細胞の増殖を抑制することにより、緑内障濾過手術法にて形成された濾過胞を長く維持し、眼圧を低く一定に保つことが可能となる。特に、緑内障濾過手術法にて現在主に用いられているMMCと比較して、同等以上の線維芽細胞増殖抑制効果を発揮することにより、濾過胞をより長く維持することが可能となる。さらに、少なくとも角膜組織に障害を及ぼさないため、安全性高く、濾過胞を維持することもできる。また、本発明によれば、術中に濾過胞を形成するために切開した結膜又は強膜に投与することによって、その維持効果が奏されることのみならず、術後に点眼することによっても、濾過胞を安全性高く、長く維持することもできる。そのため、緑内障濾過手術時又はその術後に投与される、濾過胞を維持するための組成物等として有用である。

Claims (4)

  1. コルヒチン、アムサクリン、メベンダゾール、ミトキサントロン、ニクロサミド、ドキソルビシン、グリセオフルビン、チオリダジン、トリクロサン、リセドロナート、ベニジピン、スルファジメトキシン、リトドリン、エナラプリル、ケトプロフェン、葉酸、トラネキサム酸、セフォキシチン、ベザフィブラート、ゾルミトリプタン、アマンタジン、β‐カロチン、カプレオマイシン、カルバマゼピン、セファドロキシル、ジエチルスチルベストロール及びシラザプリルからなる群から選択される、少なくとも1種の化合物を有効成分として含む、角膜上皮細胞の増殖を抑制せず、かつ線維芽細胞の増殖を抑制するための組成物。
  2. 濾過胞を維持するための医薬組成物である、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記組成物が、濾過胞を形成するために切開した強膜及び結膜の少なくともいずれか一方に添加される、請求項2に記載の組成物。
  4. 前記組成物が、濾過胞の形成後に眼に添加される、請求項2に記載の組成物。
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