JP2018080984A - 腐食センサーおよび腐食モニタリング方法 - Google Patents

腐食センサーおよび腐食モニタリング方法 Download PDF

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Abstract

【課題】評価したい合わせ構造部の隙間の腐食環境を再現でき、かつ、前記合わせ構造部の隙間の腐食環境をモニタリング可能とする腐食センサーを提供すること。【解決手段】板1と板2の2枚の板が重ね合わされて形成された合わせ構造部の隙間の腐食環境をモニタリングする腐食センサーであって、前記板1と前記板2は、0.001〜5mmの間隙をもって対向して配置され、少なくとも前記板1には、2個以上の電極が設けられ、前記2個以上の電極は、互いに絶縁され、かつ、それぞれが板2に対して露出した面で構成される検出部を有することを特徴とする腐食センサー。【選択図】図1

Description

本発明は、腐食センサーおよび腐食モニタリング方法に関する。特に、構造体に存在する合わせ構造部の隙間の腐食環境をモニタリングする腐食センサーおよびこれを用いた腐食モニタリング方法に関する。
自動車、家電、建材など多くの構造体には、材料同士が重なり合い前記材料の間に微小な隙間が形成された合わせ構造部が存在する。このような合わせ構造部の隙間には、自動車や家電などの製造工程で塗装をする際、塗料が入り込まず、無塗装部分が形成される。また、前記合わせ構造部の隙間は、大気に開放された平面部に比べて水分が滞留しやすい。そのため、前記合わせ構造部の隙間に水分が入り込み、前記合わせ構造部の隙間が一度濡れると、この部位で激しい腐食が生じる場合がある。このような部位の腐食環境を把握することは、材料の選定または製品の構造設計上、非常に重要である。
特許文献1には、検出部の一部または全部と所定の間隙をもって対向した隙間形成部材を設けることにより、前記検出部と隙間形成部材との間にセンサー外部と通じた腐食環境の擬似空間を形成した腐食センサーが開示されている。
特許文献2には、自動車ドアに用いられる表面処理鋼板の耐食性評価方法であって、表面処理鋼板に張出し加工、ドロービード加工、平面摺動加工のいずれか1種類以上の加工を付与し、前記加工付与後の異種又は同種の表面処理鋼板を重ね合わせて鋼板合わせ部を形成し、次いで、前記鋼板合わせ部を形成した鋼板を試験片として腐食環境に供して耐食性を評価する表面処理鋼板の耐食性評価方法が開示されている。
しかし、特許文献1に開示された腐食センサーは、検出部と隙間形成部材とを所定の間隙をもって対向させて腐食環境の模擬空間を形成したものであり、当該腐食センサーが、実際の製品の構造体に存在する合わせ構造部の隙間、すなわち、評価したい合わせ構造部の隙間の腐食環境を再現できているかは不明である。
また、特許文献2のような耐食性評価方法では、合わせ構造部を形成した鋼板を分解して、合わせ構造部の隙間の腐食状態を確認する必要がある。そのため、腐食試験が終了し、腐食解析するまで合わせ構造部の隙間の腐食状態はわからないままである。さらに、前記合わせ構造部の隙間における腐食の経時変化を直接観察することができないため、湿潤と乾燥を繰り返す腐食環境下で、前記合わせ構造部の隙間が濡れているか乾燥しているかを確認することは難しい。
特開2005−134161号公報 特開2009−69029号公報
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、評価したい合わせ構造部の隙間の腐食環境を再現でき、かつ、前記合わせ構造部の隙間の腐食環境をモニタリング可能とする腐食センサーを提供することを目的とする。
このような目的を達成するための本発明の特徴は以下の通りである。
[1]板1と板2の2枚の板が重ね合わされて形成された合わせ構造部の隙間の腐食環境をモニタリングする腐食センサーであって、前記板1と前記板2は、0.001〜5mmの間隙をもって対向して配置され、少なくとも前記板1には、2個以上の電極が設けられ、前記2個以上の電極は、互いに絶縁され、かつ、それぞれが板2に対して露出した面で構成される検出部を有することを特徴とする腐食センサー。
[2]前記2個以上の電極のうち少なくとも1個の電極は、板1の面内に設けられた小電極であることを特徴とする[1]に記載の腐食センサー。
[3]前記小電極は、絶縁体を介して前記板1の面内に設けられていることを特徴とする[2]に記載の腐食センサー。
[4]前記小電極の検出部の面積が、0.00007〜100mmであることを特徴とする[2]または[3]に記載の腐食センサー。
[5]前記板1が金属材料で形成され、前記2個以上の電極のうち1個の電極が板1で構成される大電極であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の腐食センサー。
[6]前記2個以上の電極は、面方向で0.001〜10mmの間隔を置いて設けられることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載の腐食センサー。
[7][1]〜[6]のいずれかに記載の腐食センサーを用いて前記合わせ構造部の隙間の腐食環境をモニタリングする腐食モニタリング方法であって、前記電極間のガルバニックカップル電流を測定することで、前記合わせ構造部の隙間の腐食環境をモニタリングすることを特徴とする腐食モニタリング方法。
本発明の腐食センサーによれば、評価したい合わせ構造部の隙間の腐食環境を再現でき、かつ、前記合わせ構造部の隙間の腐食環境をモニタリングすることができる。
本発明の腐食センサーによれば、腐食センサーに設けられた電極間のガルバニックカップル電流を測定することで、腐食環境下における合わせ構造部の隙間の濡れや乾燥状態を把握できる。さらに、前記合わせ構造部の隙間の腐食量、腐食速度等の腐食状態をモニタリングすることができる。本発明の腐食センサーによれば、前記合わせ構造部の隙間の腐食環境を経時でモニタリングすることができる。そして、その結果、材料開発の効率化および腐食試験による材料選定の精度向上が期待される。
図1は、本発明の腐食センサーの一実施形態を示す平面図である。 図2は、図1におけるAA線での切断部端面図である。 図3は、図1に示す腐食センサーの底面図である。 図4は、図3に示す底面図において板2を取り除いた図である。 図5は、図1に示す平面図において小電極が設けられた領域を拡大した図である。
本発明の腐食センサーは、電極間で得られるガルバニックカップル電流を測定するため、少なくとも2個の電極を有する。ここで、ガルバニックカップル電流とは、絶縁された2個以上の電極が溶液または薄い液膜を介して電池を形成することにより発生する電流である。
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施形態に限定されない。
図1は、本発明の腐食センサーの一実施形態を示す平面図であり、図2は、図1におけるAA線での切断部端面図であり、図3は、図1に示す腐食センサーの底面図であり、図4は、図3に示す底面図において板2を取り除いた図であり、図5は、図1に示す平面図において小電極が設けられた領域を拡大した図である。
本発明の一実施形態である腐食センサー10は、板1と板2を備え、前記板1には、10個の小電極4が設けられている(図1)。
図2に示すように、腐食センサー10において、前記板1と前記板2は対向して配置され合わせ構造部を形成している。前記板1と前記板2の材質は、実際の製品の構造体に存在する合わせ構造部等、評価したい合わせ構造部の材質に応じて適宜選択できる。
本実施形態の腐食センサー10においては、前記板1および前記板2の材質として、金属材料を想定している。図1、図3に示すように、腐食センサー10において、前記板1は、金属材料で形成され、平面視長方形の平板状とされている。前記板2は、金属材料で形成され、平面視長方形の平板状とされ、前記板1より表面積が小さく形成されている。前記板1と、前記板2は、溶接あるいはボルトとナット等で接合されることで、所定の間隙Dを保つことができる(図2)。この間隙Dは、板1と板2を重ね合わせて形成された合わせ構造部の隙間の幅に相当する。なお、図1、図3、図4においては、板1と板2を溶接により接合した際の溶接痕3を図示してある。
腐食センサー10において、前記間隙Dは、0.001〜5mmとされている。腐食センサー10は、この間隙Dを有することで、材料同士が重なり合う微小な隙間を再現できる。前記間隙Dが0.001mm未満であると、間隙Dが狭すぎて前記合わせ構造部の隙間が十分に濡れず、ガルバニックカップル電流を測定するのが困難となる。さらに、板1と板2を重ね合わせて0.001mm未満の間隙を有する合わせ構造部を製造することは実質的に困難である。一方、前記間隙Dが5mmより大きくなると、自動車、家電、建材などの多くの構造体に存在する微小な隙間を有する合わせ構造部の実際の腐食環境と異なるようになり、腐食環境の再現性が低下する。
腐食センサー10において、前記板1には、小電極4が、前記板1の面内の略中央の領域に10個設けられている(図1)。前記小電極4は、金属材料(金属電極)で形成され、平面視略正方形の平板状とされている。小電極4はそれぞれが絶縁体8で囲繞されており、前記絶縁体を介して前記板1に配置されることで、小電極4同士が絶縁されており、かつ、前記小電極4と前記板1とが絶縁されている。すなわち、板1に設けられた各電極は互いに絶縁されている。前記絶縁体8としては、特に限定されず、絶縁性を有する接着剤、樹脂成形体等が挙げられる。前記接着剤としては、例えば、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、シリコーン系接着剤等が挙げられる。前記絶縁体8は、接着剤で形成されることが好ましい。前記絶縁体8を接着剤で形成することで、例えば、板1を打ち抜いて形成した孔に、小電極4を接着剤で接合して配置するだけで各電極を互いに絶縁した状態で設けることができ、腐食センサーを簡易に作製できる。さらに、各電極同士の間隔を最適化する等の各電極の配置パターンの変更が容易となり、腐食センサーに各電極を配置する際の設計の自由度が高められる。
図2に示すように、前記小電極4はそれぞれ、板1を貫通するように設けられており、前記小電極4の一方の表面4a(板2に対向する面)と、板1の一方の表面1a(板2に対向する面)とは略面一とされている。前記小電極4の表面4aは板2に対して露出しており、この表面4aが、電極間に生じるガルバニックカップル電流を測定する検出部を構成している。また、小電極4の他方の表面4bには、電流および/または電位を測定するためのリード線6が接続されている。
前記小電極の表面4aの面積(検出部の面積)は、0.00007〜100mmあることが好ましい。前記小電極の表面4aの面積が0.00007mm未満であると、得られる電流値が小さくなり電流値を測定し難くなる。また、前記小電極の表面4a(検出部)でアノード反応とカソード反応の両方が起こっている場合、アノード電流とカソード電流により電流を打ち消しあうためガルバニックカップル電流が小さくなる。後述するように、ガルバニックカップル電流を腐食電流とみなし腐食量を求める場合、アノード電流とカソード電流により電流が打ち消されガルバニックカップル電流が小さくなると、ガルバニックカップル電流を腐食電流とみなして求めた検出部の腐食量が、実際の腐食量より小さくなる。このため、前記小電極の表面4aの面積が100mmより大きくなると、ガルバニックカップル電流から求める腐食量と実際の腐食量の差が大きくなり、ガルバニックカップル電流を腐食電流としてみなすことが難しくなる可能性が高くなる。
本実施形態の腐食センサー10の表面には、塗装が施されている。この塗装は、図1に示す平面図では、絶縁体8以外の領域に施されており、図3に示す底面図では全面に施されている。なお、板1と板2で形成された合わせ構造部の隙間には塗装が施されておらず、図4に示すように、図3に示す底面図において板2を取り除いた場合、板1には塗装が施されていない領域Qが存在する。
このように腐食センサー10の表面に塗装を施すことで、合わせ構造部の隙間以外の金属面の腐食を抑制することができ、合わせ構造部の隙間の腐食環境の測定精度が高められる。なお、本発明において、塗装方法は限定されず、例えば、スプレー塗装、電着塗装等により塗装を施すことができる。また、塗料も限定されず、例えば、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、フッ素系樹脂等の各種塗料を用いることができる。また、本発明において、腐食センサーの表面の塗装は任意であり塗装が施されなくてもよい。
本実施形態の腐食センサー10において、板1は、大電極を構成している。すなわち、板1の表面1a(板2に対向する面)のうち、塗装が施されていない領域Q(板2に対して露出した面)が、ガルバニックカップル電流を測定する検出部を構成している。板1の他方の表面1bには、電流および/または電位を測定するためのリード線7(大電極用リード線)が接続されている(図1、図2)。前記大電極の検出部(領域Q)は、前記板1において、溶液に接する小電極以外の金属面である。前記大電極の検出部(領域Q)は100mmより大きいことが好ましい。腐食センサー10に、このような大電極を設けることで、合わせ構造部の隙間に存在する金属部分の腐食環境を完全にモニタリングすることが可能となる。なお、本発明において、板1の表面1bにリード線7を接続せず、大電極を設けないようにすることも任意である。
図5は、図1に示す平面図において小電極が設けられた領域を拡大した図である。ただし、図5において、小電極4に接続するリード線6は省略している。
図5に示すように、腐食センサー10において、小電極4同士は板1の面方向に間隔Lを置いて設けられている。また、小電極4と板1(大電極)も、板1の面方向に間隔Lを置いて設けられている。すなわち、腐食センサー10において、各電極は、板1の面方向に間隔Lを置いて設けられている。前記電極間の間隔Lが小さいほど、溶液を介して電池を形成しやすくなるため、前記間隔Lは小さい方が好ましい。なお、本発明において、前記間隔Lは、絶縁体8の面方向の幅を調節することで容易に調整できる。
一例として、前記電極間の間隔Lとしては、0.001〜10mmが好ましい。前記間隔Lが0.001mm未満の場合、電極同士を絶縁状態で設けるのが困難となるおそれがある。また、前記合わせ構造部の隙間は溶液が入りづらく溶液量が少ないため、前記間隔Lが10mmより大きくなると溶液を介して電池を形成することが難しくなるおそれがある。
本発明の腐食センサーにおいては、得られたガルバニックカップル電流を各電極の腐食電流とみなし、さらに前記腐食電流を各電極の腐食量(腐食減量)に換算することができる。
前記腐食電流を各電極の腐食減量に換算する方法は、前記腐食電流のうち、電極が溶解したことを示すアノード電流を実際に電極が溶解した電流とみなし、式(1)に示すファラデーの第二法則から腐食減量を求める。このとき、ΔWは腐食減量(g/m)、Iはアノード電流(A)、tはアノード電流が流れた時間(sec)、Sは各電極の面積(m)、Mは各電極を構成する金属の原子量(g)、zは前記金属のイオン価数、Fはファラデー定数96500(C)とする。
ΔW=(I×t×M)/(z×F×S) ・・・(1)
また、前記腐食電流は、内部抵抗による電圧降下が非常に小さい無抵抗電流計を用いて測定することが好ましい。
以上、説明したとおり、本発明の一実施形態の腐食センサー10は、所定の間隔を持って対向する2枚の板からなり、前記2枚の板を溶接あるいはボルトとナット等で接合することで、所定の間隙Dを保つことができる(図1、図2)。また、前記板で大電極を構成することができ(図1、図4)、小電極同士および小電極と板(大電極)の間を絶縁体で隔てることで小電極同士および小電極と板を絶縁することができる(図1、図5)。各電極は、対向する板に対して露出した面で構成される検出部を備え、前記露出した面の反対側の面には電極1つずつにリード線が接続され(図1、図2)、各電極間のガルバニックカップル電流を測定することで、合わせ構造部の隙間で起こる腐食反応をモニタリング可能とする。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されない。
例えば、上記実施形態においては、板1に10個の小電極4と、板1で構成される大電極が設けられたが、これに限定されない。上述したとおり、本発明の腐食センサーは、少なくとも2個の電極を有すればよく、2個以上であれば電極の数は任意である。例えば、板1に小電極4を2個だけ設けてもよいし、板1に小電極4を1個と、板1で構成される大電極を設けてもよい。板1に3〜9個ないし11個以上の小電極4を設けることも任意である。
また、上記実施形態において、前記板1は、金属材料で形成されたが、これに限定されない。板1を非金属材料で形成してもよい。前記非金属材料としては、例えば樹脂等の絶縁性を有する材料が挙げられる。なお、板1が絶縁性を有する材料で形成される場合、板1は大電極を構成しない。また、板1が絶縁性を有する材料で形成される場合には、上述の絶縁体8を設けなくてもよい。この場合、例えば、板1に小電極4に対応する大きさの孔を間隔Lを置いて形成し、この孔に小電極4を嵌め込むことで、板1に小電極4を絶縁した状態で設けることができる。板2についても、板1と同様、非金属材料で形成してもよい。なお、板1と、板2の組み合わせは特に限定されず、板1と板2がともに金属材料で形成されてもよいし、板1と板2のどちらか一方が金属材料で形成され、他方が非金属材料で形成されてもよいし、板1と板2がともに非金属材料で形成されてもよい。
また、上記実施形態において、各電極は、板1にだけ設けられたがこれに限定されない。各電極を、板2にだけ設けてもよいし、板1と板2の両方に設けてもよい。
また、本発明において、板1と、板2の大きさは任意である。例えば、上記実施形態において、板2は板1より小さく形成されたがこれに限定されず、板2を板1より大きく形成してもよいし、板2と板1を同じ大きさに形成してもよい。さらに、板1と、板2の形状も任意である。例えば、上記実施形態において、板1、板2は、平面視形状で長方形とされたがこれに限定されず、楕円等の円形、正方形、菱形等としてもよいし、三角形や五角形以上の多角形としてもよい。小電極4の形状についても任意である。
表1は、上述の腐食センサー10において、板1と板2の間隙D、板1と板2の鋼種、小電極の鋼種、小電極数、大電極の有無、小電極の表面4a(検出部)の面積、各電極間の間隔Lを変更しながら、測定能力を判定した表である。
表1には、腐食センサーの番号、板1と板2の間隙D、板1と板2の鋼種、小電極の鋼種、小電極数、大電極の有無、小電極の表面4a(検出部)の面積、各電極間の間隔L、測定能力の判定および目視による腐食状態(均一腐食もしくは局部腐食)の判定を示している。なお、表1には、従来例として、板1と板2の間隙Dが大きく、検出部の全面が腐食環境に暴露された状態、すなわち、合わせ構造部の隙間の腐食環境を再現したものでない腐食センサーの例(No.18)を追加してある。
測定能力の判定は、以下のとおり行った。
上記各腐食センサー(上述の塗装を施したもの)を、0.5mass%NaCl水溶液(室温)に、168時間浸漬する腐食試験を行った。前記腐食試験中、経時で各電極から得られるガルバニックカップル電流を測定した。そして、前記ガルバニックカップル電流を各電極の腐食電流とみなし、上述の式(1)から腐食減量を求めた。また、これとは別に、前記腐食試験終了後に、腐食センサーを分解して電極の質量を測定し、腐食試験前に測定しておいた電極の質量との差から、腐食減量を実測した。さらに、腐食センサーを分解した後の電極の腐食状態を目視で確認した。
そして、上記測定中、少なくとも1つの電極に1μA/cm以上の出力が得られ、かつ、上記実測した腐食減量が、上記測定したガルバニックカップル電流から式(1)により求めた腐食減量の100倍未満である場合を「A」とし、上記測定中、少なくとも1つの電極に1μA/cm以上の出力が得られたが、上記実測した腐食減量が、上記測定したガルバニックカップル電流から式(1)により求めた腐食減量に対し100倍以上大きい場合を「B」とし、上記測定中、1μA/cm未満の出力しか得られない場合を「C」とし、2個以上の電極から得られる出力が完全に同じになった場合を、電極同士の絶縁が十分ではない可能性が高いと判断して「D」と判定した。なお、本実施例においては、電流計の検出下限から、上記のとおり1μA/cmの出力値を判定基準としているが、この判定基準は特に制限されない。電流計の検出下限がより低ければ、より小さな出力値を判定基準としてもよい。
なお、本実施例では、板1、板2に合金化溶融Znめっき鋼(GA)または炭素鋼(Fe)を用いたが、本発明において鋼種や材質は特に規定しない。また、本実施例では、絶縁体にエポキシ系接着剤を使用し、合わせ構造部の隙間以外の金属面には化成処理を実施した後に電着塗装を施したが、本発明において絶縁体の材質や塗装の種類は特に規定しない。
表1より、本発明例の腐食センサーは、材料同士が重なり合う微小な隙間の腐食電流を測定することが可能であることがわかる。また、本発明例の腐食センサーは、局部腐食を生じ、合わせ構造部の隙間の腐食環境の再現性に優れている。さらに、本発明例の腐食センサーは、検出部の全面が腐食環境に暴露された状態の従来例の腐食センサー(No.18)と比較して遜色のない測定能力を示している。なお、No.15〜No.17は局部腐食であるが、板1と板2の間隙Dが大きくなるにつれて局部腐食のような不均一な腐食状態から均一腐食の状態に近づく傾向となる。また、従来例の腐食センサー(No.18)は、板1と板2の間隙Dが大きいため合わせ構造部の隙間内の溶液が隙間内に滞留することなく隙間外へ拡散できるため、均一腐食となり、合わせ構造部の隙間の腐食環境を再現できていない。
Figure 2018080984
1、2 板
3 溶接痕
4 小電極
6 リード線(小電極用)
7 リード線(大電極用)
8 絶縁体
10 腐食センサー

Claims (7)

  1. 板1と板2の2枚の板が重ね合わされて形成された合わせ構造部の隙間の腐食環境をモニタリングする腐食センサーであって、
    前記板1と前記板2は、0.001〜5mmの間隙をもって対向して配置され、
    少なくとも前記板1には、2個以上の電極が設けられ、
    前記2個以上の電極は、互いに絶縁され、かつ、それぞれが板2に対して露出した面で構成される検出部を有することを特徴とする腐食センサー。
  2. 前記2個以上の電極のうち少なくとも1個の電極は、板1の面内に設けられた小電極であることを特徴とする請求項1に記載の腐食センサー。
  3. 前記小電極は、絶縁体を介して前記板1の面内に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の腐食センサー。
  4. 前記小電極の検出部の面積が、0.00007〜100mmであることを特徴とする請求項2または3に記載の腐食センサー。
  5. 前記板1が金属材料で形成され、前記2個以上の電極のうち1個の電極が板1で構成される大電極であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の腐食センサー。
  6. 前記2個以上の電極は、面方向で0.001〜10mmの間隔を置いて設けられることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の腐食センサー。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の腐食センサーを用いて前記合わせ構造部の隙間の腐食環境をモニタリングする腐食モニタリング方法であって、
    前記電極間のガルバニックカップル電流を測定することで、前記合わせ構造部の隙間の腐食環境をモニタリングすることを特徴とする腐食モニタリング方法。
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