JP2018080286A - 合成炭化水素油系潤滑剤およびその製造方法、並びに機械部品 - Google Patents

合成炭化水素油系潤滑剤およびその製造方法、並びに機械部品 Download PDF

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【課題】低温での流動性に優れ、かつ、二物体がすべり運動する接触部での水素脆性による早期剥離を基油の改善で効果的に防止できる潤滑剤およびその製造方法、並びに該潤滑剤を利用した機械部品を提供する。【解決手段】二物体がすべり運動する接触部の潤滑に使用される潤滑油であり、上記潤滑油は、ポリ−α−オレフィン油などの合成炭化水素油を含む潤滑油であり、上記合成炭化水素油はその引火点以下の高温で熱履歴(例えば、合成炭化水素油の引火点が200〜300℃であり、上記高温が該引火点の150℃以内であり、上記熱履歴を与える時間が100時間以上)を与えられた合成炭化水素油であり、転がり軸受1に封入されるグリース7の基油などとして利用される。【選択図】図1

Description

本発明は合成炭化水素油系の潤滑剤およびその製造方法に関し、特に、二物体がすべり運動する機械部品において、その接触部の潤滑に使用される潤滑剤およびその製造方法に関する。
転がり軸受や歯車などの機械部品は、特に、すべりを伴う条件下で使用されると、潤滑剤が分解して水素が発生する。この水素が鋼中に侵入することで、水素脆性を起因とする早期剥離を起こすことがある。この理由は、接触要素間の接触面で金属接触が起き、金属新生面が露出すると、潤滑剤の分解による水素の発生、および、該水素の鋼中への侵入が促進されるからである。水素は、鋼の疲労強度を著しく低下させるため、さほど大きくない最大接触面圧でも水素が侵入することで早期剥離を発生させる原因となりうる。なお、鋼中に侵入した水素の中でも、特に拡散性水素が水素脆性の原因と考えられている。
近年、自動車の小型化、軽量化および静粛性向上の要求に伴ない、その電装部品や補機部品の小型化、軽量化およびエンジンルーム内の密閉化が図られている。その一方、装置の性能自体には高出力、高効率化の要求が増大し、エンジンルーム内の電装・補機においては、小型化に伴なって生じる出力の低下を高速回転させることで補う手法が採られている。
このような自動車電装・補機としては、オルタネータ、カーエアコン用電磁クラッチ、ファンカップリング装置、中間プーリ、電動ファンモータなどがあり、これらに用いられる転がり軸受の潤滑には主としてグリースが用いられている。しかし、急加減速や、高温、高速回転など、使用条件が過酷になることで、転がり軸受の転走面に白色組織変化を伴った特異的な剥離が早期に生じるおそれがある。この剥離は、上述の水素脆性による早期剥離と考えられている。例えばグリースが分解して水素が発生し、それが転がり軸受の鋼中に侵入することで、水素脆性を起因とする早期剥離が発生しうる。
このような早期剥離の対策として、所定の亜鉛化合物を潤滑に供するグリースに添加することが提案されている(特許文献1参照)。この技術は、鋼腐食時の反応機構に着目し、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジアルキルジチオカルバミン酸亜鉛、酸化亜鉛などの亜鉛化合物をグリースに配合することで、鋼への水素の吸着を防止して、早期剥離を防止できるとしている。
特開2004−323586号公報
特許文献1のように潤滑剤の添加剤を用途や使用条件に応じて種々検討することで、早期剥離対策を講じることは有効であるといえる。しかし、このような添加剤についての検討は多くされているが、ベースとなる潤滑剤の基油自体の改良は、十分に検討されていない。特に、近年の自動車電装部品・補機では、小型化に伴ない軸受部材に負荷される接触面圧が高くなる傾向にあり、また、アイドリングストップなどの高機能化に伴ない急加減速頻度が増加する傾向にある。転動体と軌道輪との間における面圧の上昇や急加減速によるすべりの増大は、該部分における油膜切れ(潤滑不良)を起こしやすくする。このような過酷化された環境下では、従来の添加剤では、上記早期剥離を防ぐ対策として不十分な場合がある。
また、自動車のエンジンによって駆動されるプーリなどを寒冷時(例えば−40℃)に運転すると、プーリ仕様や運転条件によっては、寒冷時の特異音(笛吹き音)、いわゆる冷時異音が発生する場合がある。この冷時異音の発生原因は、グリースの基油が低温で流動性を失ってグリースが固化し、油膜ムラができ、これにより転動体の振動などが起こるためと推測されている。基油の種類や改質方法によっては、上記早期剥離を防止できても、この冷時異音は改善できないおそれがある。
本発明はこのような問題に対処するためになされたものであり、低温での流動性に優れ、かつ、二物体がすべり運動する接触部での水素脆性による早期剥離を基油の改善で効果的に防止できる潤滑剤およびその製造方法、並びに該潤滑剤を利用した機械部品を提供することを目的とする。
本発明の潤滑剤の製造方法は、二物体がすべり運動する接触部の潤滑に使用される潤滑剤の製造方法であり、上記潤滑剤は、合成炭化水素油を配合してなる潤滑油、または、合成炭化水素油と増ちょう剤とを配合してなるグリースであり、上記合成炭化水素油に対して、上記配合前において、該合成炭化水素油の引火点以下の高温で熱履歴を与えることを特徴とする。特に、上記合成炭化水素油が、ポリ−α−オレフィン(以下「PAO」と記す)油であることを特徴とする。
上記合成炭化水素油の引火点が200〜300℃であり、上記高温が該引火点の150℃以内であり、上記熱履歴を与える時間が100時間以上であることを特徴とする。特に、上記高温が120℃〜180℃であり、上記熱履歴を与える時間が300時間以上であることを特徴とする。
本発明の潤滑油は、二物体がすべり運動する接触部の潤滑に使用される潤滑剤であり、該潤滑剤は、合成炭化水素油を含む潤滑油、または、合成炭化水素油と増ちょう剤とを含むグリースであり、上記合成炭化水素油は、その引火点以下の高温で熱履歴を与えられた合成炭化水素油であることを特徴とする。特に、上記合成炭化水素油が、PAO油であることを特徴とする。
上記合成炭化水素油の引火点が200〜300℃であり、上記高温が該引火点の150℃以内であることを特徴とする。
上記熱履歴後の合成炭化水素油は、赤外吸収スペクトル測定における、1465cm-1のピークAと1719cm-1のピークBとの高さ比(B/A)が0.29以上であることを特徴とする。
本発明の機械部品は、すべり運動して接触する二物体と、これらの接触部を潤滑する潤滑剤とを備えてなる機械部品であって、上記潤滑剤が上記本発明の潤滑剤であることを特徴とする。また、上記機械部品の接触部における表面粗さが0.01μmRa以上0.6μmRa以下であることを特徴とする。
本発明の潤滑剤の製造方法は、合成炭化水素油をベースとする合成炭化水素油系の潤滑剤の製造に際して、この合成炭化水素油に対して予め配合前において、その引火点以下の高温で熱履歴を与えるので、すべり運動する接触部(摺動部)で使用した場合に、潤滑剤からの水素発生量を低減することができる。このため、鋼への水素侵入量を少なくでき、機械部品における該接触部での水素脆性起因の早期損傷を抑制することができる。また、PAO油などの合成炭化水素油は、低温での流動性に優れるので、冷時異音を抑制・軽減できる。これらの結果、本発明の製造方法で得られた潤滑剤を使用することで、耐冷時異音を要求される機械部品(自動車電装・補機用転がり軸受など)に好適に利用でき、かつ、その寿命延長を図ることができる。
合成炭化水素油の引火点が200〜300℃であり、熱履歴処理時の高温が該引火点の150℃以内であり、熱履歴を与える時間が100時間以上であるので、水素発生量をより低減することができる。
本発明の機械部品は、水素発生量を抑制した上記潤滑剤を、すべり運動して接触する二物体の接触部の潤滑に用いるので、該接触部での水素脆性起因の早期損傷を抑制でき、長寿命となる。
本発明の機械部品の一例である深溝玉軸受の断面図である。 図1の軸受を用いたオルタネータを示す断面図である。 図1の軸受を用いたアイドラプーリを示す断面図である。 真空摺動試験(水素発生量の測定)の概要を示す図である。 摩擦係数の経時変化を示す図である。
本発明の潤滑剤は、二物体がすべり運動する接触部の潤滑に使用される合成炭化水素油系の潤滑剤である。ここで、潤滑剤の基油とする合成炭化水素油として、予め、その引火点以下の高温で熱履歴を与えられた合成炭化水素油を用いることに特徴を有する。
熱履歴を与える前の合成炭化水素油としては、脂肪族系炭化水素油が好ましく、脂肪族系炭化水素油の中でもPAO油が好ましい。PAO油は、α−オレフィンまたは異性化されたα−オレフィンのオリゴマーまたはポリマーの混合物である。α−オレフィンの具体例としては、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、1−ドコセン、1−テトラドコセンなどが挙げられ、通常はこれらの混合物が使用される。
基油となる合成炭化水素油の動粘度(混合油の場合は、混合油の動粘度)は、40℃において10〜200mm/sの範囲が好ましく、10〜100mm/sの範囲がより好ましく、20〜60mm/sの範囲がさらに好ましい。動粘度を上記範囲内とすることで、潤滑剤として広く利用できる。
基油となる合成炭化水素油の流動点は、−50℃以下であることが好ましい。流動点が−50℃以下であると、寒冷時(例えば−40℃)においても流動性がよく、冷時異音を抑制できる。なお、ポリメタクリートなどの流動点降下剤を配合し、基油の流動点を下げて上記範囲(−50℃以下)にしてもよい。
合成炭化水素油に熱履歴を与えるとは、合成炭化水素油を所定温度で所定時間、空気中で保持することである。ここでの所定温度は、引火点以下の高温である。これは引火点に近い程度の温度で処理することを意味する。熱履歴を与える際の温度と時間は、熱履歴を与えない場合と比較して、水素発生量を低減させる条件であれば特に限定されない。
熱履歴を与える際の具体的な温度条件は、例えば合成炭化水素油の引火点が200〜300℃である場合には、温度は該引火点の150℃以内とし、好ましくは120℃〜180℃であり、より好ましくは140℃〜160℃である。また、熱履歴を与える際の具体的な時間条件は、例えば100時間以上とし、好ましくは200時間以上とし、より好ましくは300時間以上とする。また、時間上限としては、著しく酸化劣化が進まない範囲であればよく、通常1000時間以内とする。
熱履歴条件が合成炭化水素油中の成分に与える影響を表1に示す。表1は、熱履歴条件(時間)の異なる熱履歴処理済みの合成炭化水素油の赤外分光法(IR)による解析結果である。表1では、IRスペクトル測定における1465cm-1[ピークA]の高さと、1719cm-1[ピークB]の高さと、これらの比を示している。ここで、ピークAはC−Hの変角振動に由来するピークであり、ピークBはカルボキシル基(C=Oの伸縮振動)に由来するピークである。この評価において、熱履歴処理前の合成炭化水素油としては、後述の実施例1で用いたものと同じ合成炭化水素油(PAO油)を用いた。熱履歴処理としては、150℃で表1に示す時間(0時間、20時間、100時間、300時間、500時間、700時間、なお「0時間」は熱履歴なし)の熱履歴を与えて各資料とした。
Figure 2018080286
表1に示すように、熱履歴の処理時間を長くすることで、ピークAが大きくなることが分かる。ピークBとの高さの比(B/A)でみると、処理時間を長くすることで増加し、300時間経過後に0.29となる。後述の表2に示すように、このような熱履歴を与えてB/Aを増加させることで、使用時における水素量の発生を抑制できることが分かる。
本発明の潤滑剤の形態としては、(1)上記合成炭化水素油を含む潤滑油、および、(2)上記合成炭化水素油と増ちょう剤とを含むグリースがある。本発明の潤滑剤は、合成炭化水素油をベースオイルとするものであるので、それぞれの場合において、合成炭化水素油の含有量は他の油との油合計量に対して、50質量%以上とし、好ましくは80質量%以上とし、最も好ましくは合成炭化水素油100質量%とする。
また、(2)のグリースとする場合の増ちょう剤としては、特に限定されず、通常グリースの分野で使用される一般的なものを使用できる。例えば、金属石けん、複合金属石けんなどの石けん系増ちょう剤、ベントン、シリカゲル、ウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物などの非石けん系増ちょう剤を使用できる。金属石けんとしては、ナトリウム石けん、カルシウム石けん、アルミニウム石けん、リチウム石けんなどが、ウレア化合物およびウレア・ウレタン化合物としては、ジウレア化合物、トリウレア化合物、テトラウレア化合物、他のポリウレア化合物、ジウレタン化合物などが挙げられる。これらの中でも、コストや耐熱耐久性に優れるリチウム石けん、ジウレア化合物などの使用が好ましい。
グリースとする場合、基油である合成炭化水素油等と増ちょう剤とからなるベースグリース100重量部中に占める増ちょう剤の配合割合は、1〜40重量部、好ましくは3〜25重量部とする。増ちょう剤の含有量が1重量部未満では、増ちょう効果が少なくなり、グリース化が困難となり、40重量部をこえると得られたベースグリースが硬くなりすぎ、所期の効果が得られ難くなる。
本発明の潤滑剤には、水素脆性による早期剥離を防止し得る公知の添加剤を含有させてもよい。例えば、ジチオリン酸亜鉛、ジチオカルバミン酸亜鉛、亜鉛フェネートなどの有機亜鉛化合物が挙げられる。ジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)としては、ジアルキルジチオジチオリン酸亜鉛、ジアリールジチオリン酸亜鉛などが挙げられる。また、機械部品の摩耗量を安定的に低減させる目的で、モリブデン化合物を配合してもよい。モリブデン化合物としては、ジチオリン酸モリブデン(MoDTP)、ジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)などの有機モリブデン化合物が挙げられる。
また、本発明の潤滑剤には、必要に応じて上記以外の公知の添加剤を含有させてもよい。このような添加剤として、例えば、ジノニルナフタレンスルフォネート、ソルビタンエステルなどの防錆剤、アミン系、フェノール系化合物などの酸化防止剤、亜硝酸ナトリウム、セバシン酸ナトリウムなどの腐食防止剤、グラファイト、二硫化モリブデンなどの固体潤滑剤、脂肪酸アミド、脂肪酸、アミン、油脂類などの油性剤、ポリメタクリレート、ポリスチレンなどの粘度指数向上などが挙げられる。なお、これらは、単独または2種類以上組合せて添加できる。
本発明の機械部品は、すべり運動して接触する二物体と、これらの接触部を潤滑する潤滑剤とを備えてなる機械部品であり、潤滑剤として本発明の潤滑剤を使用するものである。具体的な機械部品としては、転がり軸受、歯車などが挙げられる。機械部品における上記接触部の材質は、鋼材を対象としている。例えば機械部品が軸受である場合、その鋼材材質としては、高炭素クロム軸受鋼(SUJ1、SUJ2、SUJ3、SUJ4、SUJ5など;JIS G 4805)、浸炭鋼(SCr420、SCM420など;JIS G 4053)、ステンレス鋼(SUS440Cなど;JIS G 4303)、高速度鋼(M50など)が挙げられる。
また、機械部品における上記接触部における表面粗さは、水素発生量に影響を与える。水素発生量および加工コストなどを考慮すると、この表面粗さとしては、0.01μmRa以上0.6μmRa以下とすることが好ましく、より好ましくは0.01μmRa以上0.2μmRa以下である。
転がり軸受は、その運動形態から、接触要素間で金属接触が起こり、すべりを伴う条件などで使用されるため、鋼材の部材表面における金属新生面の露出により水素が鋼中に侵入しやすい等、水素の影響を受けやすい部品である。特に、自動車電装部品・補機に使用される転がり軸受では、小型化による接触面圧の増加や、高機能化に伴なう急加減速頻度が増加により、すべりが発生しやすく水素の影響を受けやすい。
本発明の機械部品である転がり軸受の一例を図1に基づいて説明する。図1は転がり軸受(深溝玉軸受)の断面図である。転がり軸受1は、外周面に内輪転走面2aを有する内輪2と内周面に外輪転走面3aを有する外輪3とが同心に配置され、内輪転走面2aと外輪転走面3aとの間に複数個の転動体4が配置される。この転動体4は、保持器5により保持される。また、必要に応じて、内・外輪の軸方向両端開口部8a、8bがシール部材6によりシールされ、転動体4の周囲にグリース7が封入される。グリース7が、内輪2および外輪3と、転動体4との転走面に介在して潤滑される。このグリース7として上述の本発明の潤滑剤(グリース)を使用できる。
上記転がり軸受を適用した自動車のオルタネータを図2により説明する。図2はオルタネータの構造の断面図である。オルタネータは、静止部材であるハウジングを形成する一対のフレーム21a、21bに、ロータ22を装着されたロータ回転軸23が、一対の転がり軸受1、1(図1参照)で回転自在に支持されている。ロータ22にはロータコイル24が取り付けられ、ロータ22の外周に配置されたステータ25には、120 °の位相で3巻のステータコイル26が取り付けられている。ロータ回転軸23は、その先端に取り付けられたプーリ27にベルト(図示省略)で伝達される回転トルクで回転駆動されている。プーリ27は片持ち状態でロータ回転軸23に取り付けられており、ロータ回転軸23の高速回転に伴って振動も発生するため、特にプーリ27側を支持する転がり軸受1は、苛酷な負荷を受ける。
上記転がり軸受を適用したアイドラプーリの一例を図3に示す。図3はアイドラプーリの構造の断面図である。このアイドラプーリは、自動車の補機駆動ベルトのベルトテンショナーとして使用される。このプーリは、鋼板プレス製のプーリ本体28と、プーリ本体28の内径に嵌合された単列の転がり軸受1(図1参照)とで構成される。プーリ本体28は、内径円筒部28aと、内径円筒部28aの一端から外径側に延びたフランジ部28bと、フランジ部28bから軸方向に延びた外径円筒部28cと、内径円筒部28aの他端から内径側に延びた鍔部28dとからなる環体である。内径円筒部28aの内径には、転がり軸受1の外輪3が嵌合され、外径円筒部28cの外径にはエンジンによって駆動されるベルトと接触するプーリ周面28eが設けられている。このプーリ周面28eをベルトに接触させることにより、プーリがアイドラとしての役割を果たす。
本発明の潤滑剤を実施例により具体的に説明するが、これらの例によって何ら限定されるものではない。
実施例1〜実施例3
表2に示すPAO油(引火点:約245℃)に、表2の条件(時間および温度)で恒温槽中で熱履歴を与えて所定の潤滑油とした。この潤滑油について、下記の水素発生量の測定を行なった。
<真空摺動試験(水素発生量の測定)>
真空下の摺動試験中に発生する水素を質量分析計で測定し、潤滑油からの水素発生に及ぼす、該潤滑油への熱履歴の影響を評価した。図4に試験機の概略図を示す。試験片31は直径24mm、厚さ10mmの標準焼入焼戻したSUJ2製の円板とし、表2中の表面粗さに仕上げた。相手材は、SUS440C製の1/4インチの鋼球32である。3つの鋼球32を鋼球ホルダ33に固定し、鋼球ホルダ33ごと真空槽上部の回転シャフトに取り付けた。回転シャフトはモータ34により回転させられる。試験片31は、試験片ホルダ35に固定し、下側に負荷用バネ36を配した後、台座を押し上げて荷重を負荷した。初期面圧は2.0GPa、回転周速は0.1m/sとした。表2中に示す潤滑油37を試験片31に10μL塗布した。摺動試験は、槽内の真空度が約5.0×10Pa程度になってから開始し、3分の摺動、2分の休止を3回繰り返した。発生した水素の測定は、質量分析計38を用いて、m/z=2(m:質量、z:電荷)のイオン電流値を計測することで行ない、摺動時に増加したイオン電流の積分値を水素発生量A・s(A:アンペア、s:秒)とした。結果を表2に示す。
比較例1〜比較例3
表2に示すPAO油に、熱履歴を与えずにそのまま潤滑油とした。この潤滑油について、実施例1と同じ水素発生量の測定を行なった。
比較例4〜比較例9
表2に示す油種の潤滑油(鉱油、エステル油)を用いて、表2の条件(時間および温度)で熱履歴を与えて所定の潤滑油とした。この潤滑油について、実施例1と同じ水素発生量の測定を行なった。
Figure 2018080286
表2に示すように、あえて熱履歴を与えることで、熱履歴を与えない場合と比較して、水素発生量を低減できることが分かる。また、実施例の潤滑油は、比較例の他種の基油を用いたものと比較して流動点が低く、低温での流動性に優れる。
実施例1の潤滑油を用いて、以下に示すSRV摩擦摩耗試験に供し、摩擦係数を測定した。結果を図5に示す。
<SRV摩擦摩耗試験>
テストピース:
ボール直径;10mm(SUJ2)
円盤プレート直径;24mm×7.85mm(SUJ2)
評価条件:
荷重;150N
周波数;10Hz
振幅;1.2mm
時間;30分間
試験温度;40℃
図5に示すように、摩擦係数(測定時間内で一定となった値)は約0.095であった。このため、熱履歴を与えて水素発生量を抑えつつ、十分な潤滑特性も維持していることが分かる。
本発明の潤滑剤は、低温での流動性に優れ、かつ、二物体がすべり運動する接触部での水素脆性による早期剥離を基油の改善で効果的に防止できるので、このような接触部を有する転がり軸受などの機械部品に広く適用できる。特に、該潤滑剤を用いた転がり軸受は、オルタネータ、カーエアコン用電磁クラッチ、ファンカップリング装置、中間プーリ、電動ファンモータなどの自動車電装部品、補機の転がり軸受として好適に使用できる。
1 転がり軸受
2 内輪
3 外輪
4 転動体
5 保持器
6 シール部材
7 グリース
8a、8b 開口部
21a、21b フレーム
22 ロータ
23 ロータ回転軸
24 ロータコイル
25 ステータ
26 ステータコイル
27 プーリ
28 プーリ本体
31 試験片
32 鋼球
33 鋼球ホルダ
34 モータ
35 試験片ホルダ
36 負荷用バネ
37 潤滑油
38 質量分析計

Claims (10)

  1. 二物体がすべり運動する接触部の潤滑に使用される潤滑剤の製造方法であり、
    前記潤滑剤は、合成炭化水素油を配合してなる潤滑油、または、合成炭化水素油と増ちょう剤とを配合してなるグリースであり、
    前記合成炭化水素油に対して、前記配合前において、該合成炭化水素油の引火点以下の高温で熱履歴を与えることを特徴とする潤滑剤の製造方法。
  2. 前記合成炭化水素油の引火点が200〜300℃であり、前記高温が該引火点の150℃以内であり、前記熱履歴を与える時間が100時間以上であることを特徴とする請求項1記載の潤滑剤の製造方法。
  3. 前記高温が120℃〜180℃であり、前記熱履歴を与える時間が300時間以上であることを特徴とする請求項2記載の潤滑剤の製造方法。
  4. 前記合成炭化水素油が、ポリ−α−オレフィン油であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項記載の潤滑剤の製造方法。
  5. 二物体がすべり運動する接触部の潤滑に使用される潤滑剤であり、
    前記潤滑剤は、合成炭化水素油を含む潤滑油、または、合成炭化水素油と増ちょう剤とを含むグリースであり、前記合成炭化水素油は、その引火点以下の高温で熱履歴を与えられた合成炭化水素油であることを特徴とする潤滑剤。
  6. 前記合成炭化水素油の引火点が200〜300℃であり、前記高温が該引火点の150℃以内であることを特徴とする請求項5記載の潤滑剤。
  7. 前記合成炭化水素油が、ポリ−α−オレフィン油であることを特徴とする請求項5または請求項6記載の潤滑剤。
  8. 前記合成炭化水素油は、赤外吸収スペクトル測定における、1465cm-1のピークAと1719cm-1のピークBとの高さ比(B/A)が0.29以上であることを特徴とする請求項5から請求項7までのいずれか1項記載の潤滑剤。
  9. すべり運動して接触する二物体と、これらの接触部を潤滑する潤滑剤とを備えてなる機械部品であって、
    前記潤滑剤が請求項5から請求項8までのいずれか1項記載の潤滑剤であることを特徴とする機械部品。
  10. 前記機械部品の接触部における表面粗さが0.01μmRa以上0.6μmRa以下であることを特徴とする請求項9記載の機械部品。
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