JP2018080117A - 顔料定着用組成物及び固体製剤 - Google Patents

顔料定着用組成物及び固体製剤 Download PDF

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Abstract

【課題】医薬品や食品等の固体製剤表面の印刷画像における顔料の定着性を向上させると共に、当該顔料を被覆して保護することにより、印刷画像の耐擦過性及び耐剥離性を向上させることが可能な顔料定着用組成物及び固体製剤を提供する。【解決手段】本発明に係る顔料定着用組成物は、固体製剤に対するインクジェット方式での印刷に用いられる顔料定着用組成物であって、前記顔料定着用組成物は前記固体製剤に対し浸透可能なものであり、水溶性及び可食性を有する顔料定着成分と、水とを少なくとも含み、かつ、非水溶性成分を実質的に含んでおらず、さらに、前記顔料定着成分は可食性の顔料を前記固体製剤表面に定着させるものであることを特徴とする。【選択図】 なし

Description

本発明は顔料定着用組成物及び固体製剤に関し、より詳細には、医薬品や食品等の錠剤表面に形成された印刷画像に対し優れた耐擦過性及び耐剥離性を付与することができ、かつ、インクジェットヘッドからの飛翔性が良好な顔料定着用組成物及び固体製剤に関する。
錠剤等に印刷するためのインクジェット用インクは、薬事法等に定める基準に適合した原材料で構成されたものである必要がある。そのようなインクジェット用インクとして、例えば、水溶性の食用タール色素等を色材とする染料インクからなるものと、可食性の酸化鉄顔料等を色材とする顔料インクからなるものが製造販売されている。
これらのインクジェット用インクのうち、前者の染料インクは、後者の顔料インクと比較して、光照射により時間の経過と共に色褪せが生じ、耐光性に劣るという問題がある。そのため、耐光性に優れた顔料インクを、錠剤等への印刷に用いるケースが増加しつつある。
しかし、例えば、フィルムコート錠や糖衣錠に対し顔料インクを用いて印刷すると、これらの表面は他の錠剤と比較して平滑であるため、印刷塗膜の顔料が錠剤表面に十分に定着せずに剥がれ、これにより他の錠剤等に剥がれた顔料が転写するという問題がある。その結果、顔料インクを錠剤表面の印刷に使用可能なケースは、現状では限られている。
これらの問題を解決する方法としては、例えば、顔料インクに水不溶性の可食性高分子化合物からなる高分子エマルジョンをバインダーとして添加し、顔料の錠剤表面への定着性を向上させる方法が挙げられる(下記特許文献1参照)。しかし、インクジェット記録方法においては、インク滴の十分な飛翔性を確保する必要があり、この飛翔性確保の観点からは、前記高分子エマルジョンの顔料インクへの添加量が制限される。そのため、高分子エマルジョンを添加する方法においても、印刷塗膜中の顔料を錠剤表面に十分に定着させることが結果として困難となる。
また、水不溶性の可食性高分子化合物を含む顔料インクがインクジェットヘッドの端面で乾燥すると、当該インクジェットヘッドのノズルで顔料インクが固化し目詰まりを生じる場合がある。しかし、水不溶性の可食性高分子化合物を含む顔料インクの固着物は、洗浄液等でも取り除くのが極めて困難であるという問題もある。
特開2016−176016号公報
本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、医薬品や食品等の固体製剤表面の印刷画像における顔料の定着性を向上させると共に、当該顔料を被覆して保護することにより、印刷画像の耐擦過性及び耐剥離性を向上させることが可能な顔料定着用組成物及び固体製剤を提供することにある。
本願発明者等は、前記問題点を解決すべく、顔料定着用組成物及び固体製剤について検討した。その結果、下記構成を採用することにより前記の問題点を解決できることを見出して、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明に係る顔料定着用組成物は、前記の課題を解決する為に、固体製剤に対するインクジェット方式での印刷に用いられる顔料定着用組成物であって、前記顔料定着用組成物は前記固体製剤に対し浸透可能なものであり、水溶性及び可食性を有する顔料定着成分と、水とを少なくとも含み、かつ、非水溶性成分を実質的に含んでおらず、さらに、前記顔料定着成分は可食性の顔料を前記固体製剤表面に定着させるものであることを特徴とする。
前記構成の顔料定着用組成物は、固体製剤表面に可食性の顔料を定着させることにより、印刷画像の耐擦過性及び耐剥離性を向上させる顔料定着処理に用いられるものである。前記構成の顔料定着用組成物は、少なくとも顔料定着成分と水を含み、かつ、非水溶性成分を実質的に含まない組成を有している。一方、前記固体製剤は医薬品や食品等の錠剤又はカプセル剤等からなり、水に対し可溶性を示す。そのため、顔料定着用組成物を固体製剤の表面に接触させると、当該顔料定着用組成物を固体製剤に浸透させることができる。
ここで、本発明の顔料定着用組成物が、固体製剤表面に対する顔料の定着性能の向上を可能にするのは、以下に述べる理由によるものと考えられる。すなわち、第1は、固体製剤に浸透した顔料定着用組成物を乾燥させることにより、固体製剤の表層部分(顔料定着用組成物が固体製剤に浸透した部分)の機械的強度を向上させることができるというものである。これにより、固体製剤が衝撃等の外力を受けても、顔料が固体製剤の表層部分ごと削り取られるのを抑制し、他の固体製剤等に顔料が転写するのを低減することができる。例えば、外力に脆く、その表面が削れやすいような固体製剤の場合には、たとえ固体製剤表面に対する顔料自体の定着が強固であっても、固体製剤の表層部分そのものの剥離により、顔料の転写が発生し得る。本発明の顔料定着用組成物は、そのような固体製剤に対しても、表層部分の機械的強度を向上させることにより顔料の転写を防止することができる。
第2は、固体製剤に浸透した顔料定着用組成物の乾燥により、当該顔料定着用組成物に含まれていた顔料定着成分が、顔料を固体製剤表面に強固に定着させる接着剤として機能するというものである。これにより、顔料が固体製剤表面から剥離するのを防止することができる。
第3は、顔料定着用組成物が固体製剤上の顔料を被覆した状態で乾燥することにより、その乾燥皮膜がオーバーコート層として機能するというものである。これにより、固体製剤の表面に定着した顔料に、他の固体製剤等が接触しても、顔料の転写を抑制することができる。
従って、前記構成の顔料定着用組成物であると、固体製剤の表層部分の機械的強度を向上させると共に、固体製剤表面に顔料を接着させ、さらにオーバーコート層として顔料を被覆し保護することができるので、印刷画像の耐擦過性及び耐剥離性を向上させることが可能になる。
また、前記構成の顔料定着用組成物は、顔料を固体製剤表面に定着させるにあたって、インクジェット方式での印刷を利用するものであるが、本来的に水溶性であり、非水溶性成分を実質的に含まないものであるので、当該顔料定着用組成物が仮にインクジェットヘッドの端面等で乾燥して固着したとしても、水性の洗浄液等で容易に除去することができる。
前記の構成に於いては、前記顔料定着成分が、数平均分子量2000〜200000の範囲内のポリビニルピロリドンであり、前記ポリビニルピロリドンは、顔料定着用組成物の全質量に対し1〜20質量%の範囲で含まれることが好ましい。
ポリビニルピロリドンは水に可溶であり、固体製剤に対し浸透可能であるので、当該固体製剤に浸透したポリビニルピロリドンが乾燥した後は、固体製剤の表層部分(ポリビニルピロリドンが浸透した部分)の機械的強度を向上させることができる。また、ポリビニルピロリドンは接着性機能も有するので、顔料を固体製剤表面に強固に定着させることができる。さらに、ポリビニルピロリドンは、固体製剤表面の顔料を被覆した状態で乾燥塗膜を形成した場合には、オーバーコート層として機能することができる。
ここで、前記の構成においては、ポリビニルピロリドンとして数平均分子量が2000〜200000の範囲のものを用い、かつ、顔料定着用組成物の全質量に対し1質量%以上含有させる。これにより、顔料の固体製剤に対する定着性が過度に低下するのを防止することができる。また、前記数値範囲の数平均分子量のポリビニルピロリドンを、顔料定着用組成物の全質量に対し20質量%以下で含有させるので、顔料定着用組成物の粘度が大きくなり過ぎ、粘性がニュートニアンな状態から大きく逸脱するのを防止することができる。その結果、顔料定着用組成物をインクジェット方式で吐出させる際に、インクジェットヘッドから安定して吐出させることができ、顔料定着用組成物の液滴の飛翔性が低下するのを抑制することができる。
また、本発明に係る固体製剤は、前記の課題を解決する為に、表面に少なくともインク層とオーバーコート層が順次積層された固体製剤であって、前記インク層は、可食性を有する顔料を含むインクジェット用水性インクの乾燥皮膜からなり、前記オーバーコート層は、前記顔料定着用組成物からなる顔料定着液の乾燥皮膜からなり、さらに、前記インク層における前記顔料は、前記固体製剤の表層部分に浸透した前記顔料定着用組成物における顔料定着成分により、当該固体製剤の表面に定着していることを特徴とする。
前記の構成によれば、インク層は、顔料定着液の乾燥皮膜からなるオーバーコート層に被覆されることにより保護されているので、耐擦過性及び耐剥離性に優れている。また、固体製剤の表層部分には、浸透した顔料定着用組成物における顔料定着成分が存在しており、当該顔料定着成分がインク層の顔料を固体製剤表面に強固に定着させている。そのため、例えば、固体製剤がフィルムコート錠や糖衣錠など、顔料が実質的に内部に浸透し難く定着が困難なものであっても、耐擦過性や耐剥離性に優れた印刷画像を備える固体製剤を提供することができる。これにより、例えば製品情報等を固体製剤表面に直接印刷する場合にも、識別性を一層向上させ、調剤ミスや誤飲をさらに防止することが可能な固体製剤を提供することができる。
本発明の顔料定着用組成物は、少なくとも顔料定着成分と水を含み、かつ、非水溶性成分を実質的に含んでおらず、固体製剤に対し浸透可能な組成物である。そのため、顔料のインク層からなる印刷画像に対し、顔料定着用組成物からなる顔料定着液を用いて、インクジェット方式での印刷により顔料定着処理を行うと、固体製剤に浸透した顔料定着成分が、その浸透した部分の機械的強度を向上させることができる。これにより、顔料が固体製剤の表層部分ごと外力等により削られるのを防止することができる。また、顔料定着成分は顔料に対し接着機能も発揮するので、顔料を固体製剤表面に強固に定着させることができる。さらに、顔料定着用組成物からなる顔料定着液の乾燥皮膜がインク層を被覆する結果、オーバーコート層としての機能も発揮し当該インク層を保護する。これにより、固体製造表面に印刷された印刷画像の耐擦過性及び耐剥離性の向上を可能にする。その結果、顔料の剥離やインク層の擦過傷等により、印刷画像の識別性や視認性が低下するのを防止し、調剤ミスや誤飲の発生を防止することができる。
すなわち、本発明によれば、医薬品や食品等の固体製剤に対する顔料の定着性を良好なものにし、かつ、インク層を被覆して保護することにより、印刷画像の耐擦過性及び耐剥離性を向上させることが可能な顔料定着液用組成物、当該顔料定着液用組成物を含む顔料定着液、及び当該顔料定着液により顔料定着処理がなされた固体製剤を提供することができる。
(顔料定着用組成物)
本実施の形態に係る顔料定着用組成物について、以下に説明する。
本実施の形態の顔料定着用組成物は、固体製剤表面に印刷された印刷画像の顔料定着処理に用いられるものであり、画像が印刷された固体製剤に対し顔料定着処理を施すことにより、印刷画像の耐擦過性及び耐剥離性の向上を可能にする。
本明細書において、「耐擦過性」とは、インクジェット方式により顔料インクを用いて固体製剤表面に印刷した場合に、当該固体製剤表面に定着した顔料インクの顔料の一部又は全部が、他の固体製剤との擦れにより剥がされ、又は傷付くのを抑制し得ることを意味する。また、「耐剥離性」とは、インクジェット方式により顔料インクを用いて固体製剤表面に印刷した場合に、当該固体製剤表面に定着した顔料インクの顔料の一部又は全部が剥離するのを抑制し得ることを意味する。
本実施の形態の顔料定着用組成物は、水溶性及び可食性を有する顔料定着成分と、水とを少なくとも含み、かつ、非水溶性成分を実質的に含まない構成を有する。そして、本実施の形態の顔料定着用組成物は、薬事法で定める医薬品添加物、日本薬局方又は食品添加物公定書の基準に適合した材料で構成されることにより可食性を有しており、医薬品や食品等の錠剤又はカプセル剤等からなる固体製剤への使用に適している。
前記顔料定着成分は、固体製剤表面に印刷された印刷画像における顔料の定着に寄与するものであり、水溶性及び可食性を有している。
ここで、本明細書において「水溶性」とは、常温常圧下において水100gに対し1g以上溶解する場合をいう。また、「水溶性成分」とはそのような水溶性を有する成分を意味する。さらに、本明細書において「可食性」とは、医薬品若しくは医薬品添加物として経口投与が認められている物質、及び/又は食品若しくは食品添加物として認められているものをいう。
さらに、前記「常温」とは5℃〜35℃の温度範囲にあることを意味する。また、前記「常圧」とは、大気の標準状態近傍における圧力(標準大気圧)のことを意味し、大気の標準状態とは、約25℃近傍の温度、絶対圧で101kPa近傍の大気圧条件のことを意味する。さらに、前記「常圧」には標準大気圧に対し僅かに陽圧又は陰圧の場合も含み得る。
顔料定着成分としては水溶性及び可食性を有するものであれば特に限定されない。具体的には、例えばポリビニルピロリドン等が挙げられる。ポリビニルピロリドンは水溶性高分子であり、かつ、薬事法で定める医薬品添加物に該当する。また、ポリビニルピロリドンは、顔料等に対する接着性(濡れ性)や被膜形成性を備える。
ポリビニルピロリドンの数平均分子量は2000〜200000の範囲内が好ましく、より好ましくは10000〜160000、さらに好ましくは20000〜50000である。ポリビニルピロリドンの数平均分子量を2000以上にすることにより、常温・常圧下において、単体では固体状に存在することを可能にする。また、常温・常圧下において単独では固体の形態をとる場合でも、印刷後の乾燥皮膜の硬さが、乾燥条件等によって不十分となるのを防止することができる。その一方、ポリビニルピロリドンの数平均分子量を200000以下にすることにより、顔料定着用組成物の粘度が過度に増大し、粘性がニュートニアンな状態から大きく外れ、当該顔料定着用組成物の液滴の飛翔性が低下するのを防止することができる。
尚、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算により求めることができる。例えば、島津製作所製LC−6Aを用いた測定では、分離カラムPolymer Laboratries社製PLゲル5μmMIXEDーC:溶媒、ジメチルフォルムアミド(0.01molLiBr添加):カラム流量1.0ml/min:カラム温度50℃:サンプル濃度0.2%(W/V)の条件下で、RI検出器を用いて測定することができる。
顔料定着成分の含有量は、当該顔料定着成分の種類等に応じて適宜設定することができる。例えば、前記ポリビニルピロリドンを顔料定着成分に用いた場合、その含有量の下限値は、顔料定着用組成物の全質量に対し1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは2質量%以上、特に好ましくは5質量%以上である。また、ポリビニルピロリドンの含有量の上限値は、顔料定着用組成物の全質量に対し20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。ポリビニルピロリドンの含有量の下限値を1質量%以上にすることにより、顔料の定着性を維持することができ、印刷画像の耐擦過性及び耐剥離性の低下を抑制することができる。その一方、ポリビニルピロリドンの含有量の上限値を20質量%以下にすることにより、顔料定着用組成物の粘度が過度に増大し、粘性がニュートニアンな状態から大きく外れ、当該顔料定着用組成物の液滴の飛翔性が低下するのを防止することができる。
本実施の形態の顔料定着用組成物に含まれる水としては、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水等のイオン性不純物を除去したものを用いるのが好ましい。特に、紫外線照射等により滅菌処理した水は、長期間にわたってカビやバクテリアの発生を防止することができるので好適である。また、水の含有量としては特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。
本実施の形態の顔料定着用組成物は、非水溶性成分を実質的に含んでおらず、水溶性である。そのため、本実施の形態の顔料定着用組成物は、当該顔料定着用組成物が乾燥前の液体状であるときは、固体製剤に対し浸透可能である。
ここで、本明細書において「非水溶性」とは、水に実質的に溶解しないことを意味し、より具体的には、常温常圧下における溶解度が水100gに対し1g未満であることをいう。さらに、「非水溶性成分」とはそのような非水溶性を有する成分を意味し、具体的には高分子エマルジョン等が挙げられる。さらに、高分子エマルジョンとしては、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ジメチルアミノメチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル等のポリマーやそれらの共重合体等が例示できる。また、市販品の高分子エマルジョンとしては、オイドラギット E100(アミノアルキルメタクリレートコポリマーE)、オイドラギット EPO(アミノアルキルメタクリレートコポリマーE)、オイドラギット L100(メタクリル酸コポリマーL)、オイドラギット L30D−55(メタクリル酸コポリマーLD)、オイドラギット L100−55(乾燥メタクリル酸コポリマーLD)、オイドラギット S100(メタクリル酸コポリマーS)、オイドラギット RL100(アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー)、オイドラギット RLPO(アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー)、オイドラギット RL30D(アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー分散液)、オイドラギット RS100(アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー)、オイドラギット RSPO(アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー)、オイドラギット RS30D(アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー分散液)、オイドラギット NE30D(アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液)、オイドラギット FS30D(アクリル酸メチル・メタクリル酸メチル・メタクリル酸コポリマー)等が例示できる。これらの市販品は何れもエボニック社製であり、またオイドラギットは登録商標である。
また、顔料定着用組成物が非水溶性成分を実質的に含まないとは、当該非水溶性成分が全く存在しない場合だけでなく、含有量が不純物等として不可避的に存在するような量程度である場合も含む意味である。
また、本実施の形態の顔料定着用組成物には、必要に応じて表面張力調整剤を含有してもよい。当該表面張力調整剤は、薬事法等の基準に適合するものであれば特に限定されず、例えば、カプリル酸デカグリセリル、ラウリン酸ヘキサグリセリンエステル、オレイン酸ヘキサグリセリンエステル、縮合リノレン酸テトラグリセリンエステル、脂肪酸エステルヤシパーム、HLBが15以下のラウリン酸デカグリセリル、HLBが13未満のオレイン酸デカグリセリル等が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を混合して用いてもよい。
前記カプリル酸デカグリセリルとしては、市販品を用いることが可能であり、そのような市販品としては、例えば、リョートー(登録商標)ポリグリエステル CE19D(商品名、三菱化学フーズ(株)製、HLB値15)、SYグリスターMCA750(商品名、阪本薬品工業(株)製、HLB値16)等が挙げられる。
尚、前記HLBの値は、グリフィン法によるHLB値であり、下記式によって得られる値を意味する。
HLB値=20×(親水基の式量の和/分子量)
HLB値は0〜20の範囲内の値となり、HLB値が大きいほど親水性が強くなり、HLB値が小さいほど疎水性が強くなる。
前記ラウリン酸デカグリセリルとしては、HLBが15以下のものを用いることができる。HLBが15を超えるラウリン酸デカグリセリルであると、インクジェットヘッドのノズルの目詰まりに起因してかすれ等が発生するなど、吐出安定性が低下する。HLBの下限は、水溶媒に対する溶解度の観点からは、10以上であることが好ましい。また、HLBが15以下のラウリン酸デカグリセリルとしては、市販品を用いることが可能であり、そのような市販品としては、例えば、NIKKOL(登録商標) DECAGLYN 1−L(商品名、日光ケミカルズ(株)製、HLB値14.5)、SYグリスターML−750(商品名、阪本薬品工業(株)製、HLB値14.8)等が挙げられる。
前記オレイン酸デカグリセリルとしては、HLBが13未満のものを用いることができる。HLBが13以上であると、インクジェットヘッドのノズルの目詰まりに起因してかすれ等が発生するなど、吐出安定性が低下する。尚、HLBの下限は、水溶媒に対する溶解度の観点からは、10以上であることが好ましい。また、HLBが13未満のオレイン酸デカグリセリルとしては、市販品を用いることが可能であり、そのような市販品としては、例えば、NIKKOL(登録商標) DECAGLYN 1−OV(商品名、日光ケミカルズ(株)製、HLB値12)、SYグリスターMO−7S(商品名、阪本薬品工業(株)製、HLB値12.9)等が挙げられる。
前記ラウリン酸ヘキサグリセリンエステルとしては、市販品を用いることが可能であり、そのような市販品としては、例えば、NIKKOL(登録商標) HEXAGLYN 1−L(商品名、日光ケミカルズ(株)製、HLB値14.5)、SYグリスターML−500(商品名、阪本薬品工業(株)製、HLB値13.5)等が挙げられる。
前記オレイン酸ヘキサグリセリンエステルとしては、市販品を用いることが可能であり、そのような市販品としては、例えば、SYグリスターMO−5S(商品名、阪本薬品工業(株)製、HLB値11.6)等が挙げられる。
前記縮合リノレン酸テトラグリセリンエステルとしては、市販品を用いることが可能であり、そのような市販品としては、例えば、SYグリスターCR−310(商品名、阪本薬品工業(株)製)等が挙げられる。
脂肪酸エステルヤシパームとしては、市販品を用いることが可能であり、そのような市販品としては、例えば、チラバゾールW−01(商品名、太陽化学(株)製)等が挙げられる。
表面張力調整剤の含有量は、顔料定着用組成物の全質量に対し、0.5質量%〜5質量%の範囲内であることが好ましく、1質量%〜3質量%の範囲内であることがより好ましい。表面張力調整剤の含有量が0.5質量%以上であると、インクジェット方式で印刷を行った場合に、インクジェットヘッドにおけるノズルでのメニスカス面形成不良等による吐出不良を防止し、当該ノズルの目詰まりが発生するのを防止することができる。その結果、吐出安定性の向上が図れる。その一方、表面張力調整剤の含有量が5質量%以下であると、表面張力調整剤の不溶分や乳化不良による吐出への悪影響を防止することができる。
また、本実施の形態の顔料定着用組成物には、他の添加剤が配合されていてもよい。但し、他の添加剤は、本発明の課題解決を阻害しない範囲内であり、かつ、薬事法で定める医薬品添加物、日本薬局方又は食品添加物公定書の基準に適合するものであることを要する。そのような他の添加剤としては、例えば、界面活性剤、粘度調整剤、防腐剤、滑剤、発泡剤、粘度調整剤、消泡剤等が挙げられる。これらの他の添加剤の含有量は特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。
顔料定着用組成物の粘度は、インクジェットノズルからの吐出安定性を考慮すると、インクジェットノズル吐出時において、2mPa・s〜7mPa・sが好ましく、3mPa・s〜5mPa・sがより好ましい。顔料定着用組成物の粘度を前記数値範囲内にすることにより、インクジェットノズルでの目詰まりの発生を抑制して良好な吐出安定性の維持が図れ、飛翔性の低下を抑制することができる。尚、顔料定着用組成物の粘度は、例えば、粘度計(商品名:VISCOMATE MODEL VM−10A、(株)セコニック製)を用いて、測定温度25℃の条件下で測定することにより得られる。
本実施の形態の顔料定着用組成物は、前述の各成分を適宜な方法で混合することよって製造することができる。各成分の混合方法及び添加順序は特に限定されない。混合後は、十分に撹拌し、必要に応じて目詰まりの原因となる粗大粒子及び異物を除去するための濾過を行う。これにより、本実施の形態に係る顔料定着用組成物を得ることができる。
また、本実施の形態の顔料定着用組成物は、薬事法等で定められている医薬品添加物、日本薬局方又は食品添加物公定書の基準に適合した可食性の顔料定着成分を用いているので、医薬品又はサプリメント等の錠剤やカプセル剤からなる固体性剤の印刷画像上に直接塗布することが可能である。
(顔料定着処理)
本実施の形態の顔料定着用組成物は、固体製剤表面に印刷された印刷画像における顔料の定着処理に用いられる。定着処理は、具体的には、印刷画像に対し顔料定着用組成物からなる顔料定着液を塗布することにより行う。塗布はインクジェット方式により行い、より具体的には、微細なノズルより画像が印刷された固体製剤に顔料定着液を液滴として吐出し、その液滴を印刷画像上に付着させることにより行う。吐出方法として特に限定されず、例えば、連続噴射型(荷電制御型、スプレー型等)、オンデマンド型(ピエゾ方式、サーマル方式、静電吸引方式等)等の公知の方法を採用することができる。
顔料定着滴がノズルから吐出される液滴の吐出量は、固体製剤への顔料定着液の浸透の程度やオーバーコート層の層厚、印刷速度、乾燥時間等を考慮して適宜設定することができる。通常は、1pl〜30plの範囲であり、好ましくは2pl〜20pl、より好ましくは3pl〜10plである。
顔料定着液の液滴を吐出して固体製剤の印刷画像のインク層上に付着させた後は、自然乾燥又は加熱乾燥等を行う。これにより、固体製剤の表層部分に浸透している顔料定着液を乾燥させることができ、当該顔料定着液に含まれていた顔料定着成分が、固体製剤の表面に固着している顔料を当該固体製剤表面に強固に定着させる。また、インク層上に形成された塗膜層は、乾燥により乾燥皮膜となりオーバーコート層として機能する。乾燥時間や乾燥温度については特に限定されず、印刷速度や固体製剤の種類等に応じて適宜設定することができる。
加熱乾燥を行う場合、その方法としては特に限定されず、顔料定着液中の溶媒(水)の蒸発を促進させるものであれば特に限定されない。例えば、顔料定着液の液滴が付着した記録媒体に熱風を吹き付ける方法や、輻射加熱、伝導加熱、高周波乾燥等の温風処理、ヒーターにより加熱する方法が挙げられる。尚、本実施の形態の顔料定着用組成物は非水溶性成分を実質的に含まないので、当該顔料定着用組成物からなる顔料定着液が仮にインクジェットヘッドの端面等で乾燥して固着したとしても、水性の洗浄液等で容易に除去することができる。
(固体製剤)
本明細書において、「固体製剤」とは食品製剤及び医薬製剤を含む意味であり、固体製剤の形態としては、例えばOD錠、素錠、FC錠、糖衣錠等の錠剤又はカプセル剤が挙げられる。
本実施の形態の固体製剤には、表面に少なくともインク層とオーバーコート層が順次積層されている。
前記インク層は可食性を有する顔料を含むインクジェット用水性インクの乾燥皮膜からなり、印刷画像を形成している。
可食性を有する顔料としては、薬事法で定める医薬品添加物、日本薬局方又は食品添加物公定書の基準に適合したカーボンブラックや、黄酸化鉄、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、ベンガラ又は黒色酸化鉄等の酸化鉄、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色40号、食用黄色4号、食用黄色5号、食用青色1号又は食用青色2号等の食用アルミニウムレーキ等が挙げられる。
前記インク層は、任意の条件下で、インクジェット方式で印刷することにより形成可能である。インク層の厚さとしては特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。
前記オーバーコート層は、顔料定着用組成物からなる顔料定着液の乾燥皮膜からなり、インク層を被覆した状態で設けられている。オーバーコート層はインク層を物理的に保護し得るものであり、より具体的には、インク層に対するスクラッチ、摩耗、ブロッキング及びフェロタイピングからの保護を可能にする。
オーバーコート層は、印刷画像(すなわち、インク層)の良好な視認性を確保する観点から、光透明性を有していることが好ましい。但し、オーバーコート層は、当該オーバーコート層を介して印刷画像を視認するにあたって、その視認性に悪影響を与えない範囲内で、色補正やその他の目的のために任意の色を有していてもよい。その場合、オーバーコート層を形成する顔料定着液中には、薬事法等で定める基準に適合した染料等であって、水溶性のものを含有することができる。尚、「光透明性」とは、インク層が形成する印刷画像を、オーバーコート層を介して目視で視認できる程度のことを意味する。
また、固体製剤の表層部分(顔料定着用組成物からなる顔料定着液が浸透した部分)には、顔料定着成分が存在する。この顔料定着成分は顔料定着用組成物に由来するものであり、固体製剤の表層部分に浸透した顔料定着液の、乾燥後の残存成分である。そして、当該顔料定着成分が固体製剤の表層部分に存在することにより、当該表層部分の機械的強度を向上させることができる。その結果、固体製剤が衝撃等の外力を受けても、顔料が固体製剤の表層部分ごと削り取られるのを抑制し、他の固体製剤等に顔料が転写するのを低減することができる。また、表層部分に存在するこの顔料定着成分は、インク層の顔料に対し接着性を発揮するので、当該顔料を固体製剤表面に強固に定着(固着)させる。これにより、インク層の耐擦過性及び耐剥離性を一層向上させている。
以上の通り、本実施の形態の固体製剤は、当該固体製剤上に形成されているインク層の顔料が、当該固体製剤の表層部分に存在する顔料定着成分により強固に定着されており、またオーバーコート層が当該インク層を被覆して保護しているため、耐擦過性及び耐剥離性に優れた印刷画像を備えている。その結果、印刷画像として、固体製剤に関する製品情報等を表示した場合にも、顔料の剥離やインク層の擦過傷等による印刷画像の識別性及び視認性の低下を抑制し、調剤ミスや誤飲の発生を一層防止することができる。
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、下記の実施例に記載されている材料や含有量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定するものではない。
(インクジェット用水性インク組成物の調製)
下記表1に示す通り、顔料としてカーボンブラック25質量%、顔料分散剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル(日光ケミカルズ(株)製)7.5質量%及びイオン交換水67.5質量%を用意し、常温で16時間(分散時間)分散させた。これにより、カーボンブラック顔料濃度が25質量%の顔料分散溶液を得た。
さらに、下記表2に示すとおり、顔料分散溶液、表面張力剤、湿潤剤及びイオン交換水を混合し、顔料濃度が3質量%、表面張力調整剤濃度が2質量%、湿潤剤濃度が40質量%になるようにインクジェット用の水性インク組成物を作成した。表面張力調整剤としてはポリグリセリン脂肪酸エステル(商品名:SYグリスター、阪本薬品工業(株)製)を、湿潤剤としてはプロピレングリコールを用いた。
尚、表1中の数値は、顔料分散溶液の全質量に対する質量%の値であり、表2中の数値は、特に表記がない限り、水性インク組成物の全質量に対する質量%の値である。また、各材料は何れも薬事法で定める医薬品添加物、日本薬局方又は食品添加物公定書の基準に適合するものである。
(インクジェット方式での画像印刷)
前述の水性インク組成物を用いて、インクジェット記録方法により、糖衣錠及びフィルムコート錠(何れも直径約7mm)のそれぞれに対し、一方の面にのみ印刷を行った。印刷は、インクジェットプリンタ(KC 600dpiヘッド搭載印字治具)を用いてシングルパス(ワンパス)方式にて行った。印刷条件は、液滴1滴当たりの質量を5ng、液適量を5plとした。また、印刷後は、印刷画像面を24時間の自然乾燥により乾燥させた。
(実施例1)
下記表3に示す配合組成にて、本実施例に係る顔料定着用組成物を調製した。すなわち、顔料定着成分として数平均分子量が約4000のポリビニルピロリドン K12(BASFジャパン(株)製)20.0質量%、表面張力調整剤としてカプリル酸デカグリセリル(阪本薬品工業(株)製)2.0質量%及びイオン交換水78.0質量%を容器に入れ、撹拌混合することにより、本実施例に係る顔料定着用組成物を作製した。
尚、下記表3中の数値は、特に記載がない限り全て質量%で表したものである。また、各材料は何れも薬事法で定める医薬品添加物、日本薬局方又は食品添加物公定書の基準に適合するものである。
(実施例2)
本実施例においては、顔料定着成分として数平均分子量が約10000のポリビニルピロリドン K17(BASFジャパン(株)製)を用いた。それ以外は実施例1と同様にして、本実施例に係る顔料定着用組成物を作製した。
(実施例3)
本実施例においては、顔料定着成分として数平均分子量が約40000のポリビニルピロリドン K30(BASFジャパン(株)製)を用い、さらにポリビニルピロリドン K30の含有量を顔料定着用組成物の全質量に対し5.0質量%、イオン交換水の含有量を93.0質量%に変更した。それら以外は実施例1と同様にして、本実施例に係る顔料定着用組成物を作製した。
(実施例4)
本実施例においては、顔料定着成分として数平均分子量が約160000のポリビニルピロリドン K60(東京化成工業(株)製)を用い、さらにポリビニルピロリドン K60の含有量を顔料定着用組成物の全質量に対し1.0質量%、イオン交換水の含有量を97.0質量%に変更した。それら以外は実施例1と同様にして、本実施例に係る顔料定着用組成物を作製した。
(比較例1)
本比較例においては、顔料定着成分として数平均分子量が約360000のポリビニルピロリドン K90(BASFジャパン(株)製)を用いた。それら以外は実施例4と同様にして、本比較例に係る顔料定着用組成物を作製した。
(数平均分子量の測定)
ポリビニルピロリドンの数平均分子量は、ポリスチレンを標準品として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより下記の条件で求めた値である。
測定装置:LC−6A(株式会社島津製作所製)
分離カラム:PLゲル5μmMIXEDーC(Polymer Laboratries社製)
溶離液:ジメチルフォルムアミド(0.01molLiBr添加)
カラム流量:1.0ml/min
検出器:RI検出器
カラム温度:50℃
サンプル濃度:0.2%(W/V)
分子量標準:標準ポリスチレン
(粘度の測定)
実施例1〜4及び比較例1の顔料定着用組成物について、それぞれ粘度を測定した。粘度の測定には、粘度計(VISCOMATE MODEL VM−10A、(株)セコニック製)を用いて、測定温度25℃の条件下で行った。結果を前記表3に示す。
(吐出安定性(飛翔性))
記録媒体としてマット紙(商品名:スーパーファイン紙、エプソン(株)製)を用意し、実施例1〜4及び比較例1の顔料定着用組成物をそれぞれ用いて、インクジェット方式による印刷を行った。印刷は、インクジェットプリンタ(KC 600dpiヘッド搭載印字治具)を用いて、シングルパス(ワンパス)方式にて行った。
顔料定着用組成物の飛翔性の評価は、ヘッドから顔料定着用組成物を吐出させた後、インクジェットプリンタを停止させ、その後、再度印刷したときの印刷画像にノズル欠けがどれくらい増加したか、及び寝ぼけが観察されたか否かにより行った。尚、ノズル欠けとは目詰まりが発生したノズルから顔料定着用組成物からなる液滴が吐出されないことを意味する。寝ぼけとは、印刷の初期において、顔料定着用組成物の液滴の不吐出が起こり、印刷画像の書き出し部分が掠れて不鮮明となることを意味する。
飛翔性の評価は、下記の基準を用いて行った。結果を前記表3に示す。
○:寝ぼけ量が1cm未満かつノズル詰まり増加数が0本
×:寝ぼけ量が2cm以上、又はノズル詰まり増加数が10本以上
△:飛翔性の評価が前記○及び×の何れにも該当しない場合
尚、飛翔性の評価は、15分のオープンタイム(最初にヘッドから顔料定着用組成物を吐出させた後に停止し、その後、再度印刷させるまでの時間間隔)後の印字について行った。また、寝ぼけ量とは、シングルパス印刷画像において顔料定着用組成物が吐出されないことによる書き出しの掠れが解消されるまでの長さ(cm)を意味する。ノズル詰まり増加数とは、インクジェットプリンタ停止中に、ヘッド端面での顔料定着用組成物の乾燥固着などにより、当該顔料定着用組成物の吐出が不可能になったノズルの本数のことを意味する。
(耐擦過性・耐剥離性)
実施例3の顔料定着用組成物を用いて、画像印刷済みの糖衣錠及びフィルムコート錠に対し、それぞれ20錠ずつ顔料定着処理を行った。顔料定着処理は、インクジェットプリンタ(KC 600dpiヘッド搭載印字治具)を用いて、シングルパス(ワンパス)方式にて行った。また、顔料定着用組成物の吐出条件は、液滴1滴当たりの質量を7ng、液適量を7plとした。さらに、顔料定着用組成物の吐出後は、室温(25℃)下で24時間の自然乾燥を行った。
顔料定着処理後、瓶振り試験を行うことにより顔料の耐擦過性・耐剥離性を確認した。具体的には、容積が50ccのガラス瓶に、顔料定着処理後の20錠の糖衣錠を投入し、手動で1分間瓶を振盪させた。これにより、印刷面に衝突負荷を加え耐擦過性及び耐剥離性を評価した。また、フィルムコート錠についても同様の瓶振り試験を行った。瓶振り試験後、糖衣錠又はフィルムコート錠のそれぞれについて、印刷面とは反対側の面における顔料の転写の有無を、電子ルーペを用いて観察した。また、顔料定着処理を行っていない、画像印刷済みの糖衣錠及びフィルムコート錠についてもそれぞれ瓶振り試験を行った。結果を下記表4に示す。尚、表4には、顔料の転写の程度が最も大きいものを挙げている。
(結果)
前記表3に示す通り、数平均分子量が2000〜20万の範囲のポリビニルピロリドンを顔料定着成分として含む実施例1〜4の顔料定着用組成物においては、何れも飛翔性が良好であり、吐出性能に優れていることが確認された。その一方、数平均分子量が約36万のポリビニルピロリドンを顔料定着成分として含む比較例1の顔料定着用組成物においては、当該ポリビニルピロリドンの含有量が全質量に対し1.0質量%であっても飛翔性に劣ることが確認された。
また、前記表4に示す通り、実施例3に係る顔料定着用組成物を用いて、糖衣錠及びフィルムコート錠のそれぞれに対し顔料定着処理を行った場合、顔料の剥がれによる転写が大幅に抑制されていることが確認された。その一方、顔料定着処理を行っていない糖衣錠やフィルムコート錠では、顔料の剥がれによる転写の改善は確認できなかった。

Claims (3)

  1. 固体製剤に対するインクジェット方式での印刷に用いられる顔料定着用組成物であって、
    前記顔料定着用組成物は前記固体製剤に対し浸透可能なものであり、
    水溶性及び可食性を有する顔料定着成分と、水とを少なくとも含み、かつ、非水溶性成分を実質的に含んでおらず、
    さらに、前記顔料定着成分は可食性の顔料を前記固体製剤表面に定着させるものである顔料定着用組成物。
  2. 前記顔料定着成分が、数平均分子量2000〜200000の範囲内のポリビニルピロリドンであり、
    前記ポリビニルピロリドンは、顔料定着用組成物の全質量に対し1〜20質量%の範囲で含まれる請求項1に記載の顔料定着用組成物。
  3. 表面に少なくともインク層とオーバーコート層が順次積層された固体製剤であって、
    前記インク層は、可食性を有する顔料を含むインクジェット用水性インクの乾燥皮膜からなり、
    前記オーバーコート層は、請求項1又は2に記載の顔料定着用組成物からなる顔料定着液の乾燥皮膜からなり、
    さらに、前記インク層における前記顔料は、前記固体製剤の表層部分に浸透した前記顔料定着用組成物における顔料定着成分により、当該固体製剤の表面に定着している固体製剤。

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